(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023075842
(43)【公開日】2023-05-31
(54)【発明の名称】建築物の平面形状決定方法および建築物
(51)【国際特許分類】
E04B 1/18 20060101AFI20230524BHJP
E04B 1/00 20060101ALI20230524BHJP
【FI】
E04B1/18 A
E04B1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021189002
(22)【出願日】2021-11-19
(71)【出願人】
【識別番号】000201478
【氏名又は名称】前田建設工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】521509815
【氏名又は名称】株式会社マウントフジアーキテクツスタジオ一級建築士事務所
(71)【出願人】
【識別番号】519051263
【氏名又は名称】原田 真宏
(71)【出願人】
【識別番号】519051285
【氏名又は名称】蒲池 健
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 章夫
(72)【発明者】
【氏名】原田 麻魚
(72)【発明者】
【氏名】原田 真宏
(72)【発明者】
【氏名】蒲池 健
(57)【要約】
【課題】建築物を構成する構成部材の種類を少なくすることができ、複雑な平面形状や多様な平面形状を計画することができる建築物の平面形状決定方法、および該建築物の平面形状決定方法により決定された平面形状を有する建築物を提供する。
【解決手段】建築物の平面形状決定方法は、第1半径を有する複数の第1円弧、第1円弧に接する第1半径よりも小さい第2半径を有する複数の第2円弧、第1円弧や第2円弧に接する第2半径よりも小さい第3半径を有する複数の第3円弧、のそれぞれを所定の縮尺を有する平面上に配置する円弧配置ステップと、第1円弧の中心と第2円弧の中心とを接続する直線である第1直線、第1円弧の中心と第3円弧の中心とを接続する直線である第2直線、及び第2円弧の中心と第3円弧の中心とを接続する直線である第3直線、の少なくとも1つの直線を組み合わせて建築物の平面形状の輪郭線を決定する平面形状決定ステップと、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の平面形状決定方法であって、
第1半径を有する複数の第1円弧、
前記複数の第1円弧の内の少なくとも1つと接する第2円弧であって、前記第1半径よりも小さい第2半径を有する複数の第2円弧、及び
前記複数の第1円弧の内の少なくとも1つ、および前記複数の第2円弧の内の少なくとも1つと接する第3円弧であって、前記第2半径よりも小さい第3半径を有する複数の第3円弧、
のそれぞれを所定の縮尺を有する平面上に配置する円弧配置ステップと、
前記複数の第1円弧の内の少なくとも1つの中心と前記複数の第2円弧の内の少なくとも1つの中心とを接続する直線である第1直線、
前記複数の第1円弧の内の少なくとも1つの中心と前記複数の第3円弧の内の少なくとも1つの中心とを接続する直線である第2直線、及び
前記複数の第2円弧の内の少なくとも1つの中心と前記複数の第3円弧の内の少なくとも1つの中心とを接続する直線である第3直線、
の少なくとも1つの直線を組み合わせて前記建築物の平面形状の輪郭線を決定する平面形状決定ステップと、
を備える建築物の平面形状決定方法。
【請求項2】
前記円弧配置ステップにおいて、
前記複数の第1円弧の各々は、前記平面上に互いに間隔をあけて配置され、
前記複数の第2円弧の内の少なくとも1つは、前記平面上における前記複数の第1円弧の間に配置され、
前記複数の第3円弧の内の少なくとも1つは、前記平面上における前記複数の第2円弧間に配置される、
請求項1に記載の建築物の平面形状決定方法。
【請求項3】
前記円弧配置ステップにおいて、
前記複数の第1円弧の各々は、前記平面上に千鳥状に配置され、
前記複数の第2円弧の内の少なくとも2つは、前記複数の第1円弧の内の3つと接するように配置され、
前記複数の第3円弧の内の少なくとも1つは、前記少なくとも2つの第2円弧と接するように配置される
請求項1又は2に記載の建築物の平面形状決定方法。
【請求項4】
前記第1半径の長さをR1、
前記第2半径の長さをR2、
前記第3半径の長さをR3、とした場合に、下記式(1)および(2)を満たす、
請求項3に記載の建築物の平面形状決定方法。
(2√3-3)×0.95<R2/R1<(2√3-3)×1.05・・・(1)
(2-√3)×0.95<R3/R1<(2-√3)×1.05・・・(2)
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項に記載の建築物の平面形状決定方法により決定された前記平面形状を有する建築物であって、
前記建築物は、
水平方向に沿って延在する第1長さを有する第1水平梁部材であって、前記第1円弧の中心に対して放射状に配置された複数の第1水平梁部材と、
前記水平方向に沿って延在する前記第1長さよりも小さい第2長さを有する第2水平梁部材であって、前記第2円弧の中心に対して放射状に配置された複数の第2水平梁部材と、
前記水平方向に沿って延在する前記第2長さよりも小さい第3長さを有する第3水平梁部材であって、前記第3円弧の中心に対して放射状に配置された複数の第3水平梁部材と、
を備える建築物。
【請求項6】
請求項5に記載の建築物を構成する構成部材の一部を構成部材として再構築された建築物であって、
互いの一端部同士を突き合わせた状態で接続された一対の前記第1水平梁部材を夫々が含む複数の第1再構築パーツ部材、
互いの一端部同士を突き合わせた状態で接続された一対の前記第2水平梁部材を夫々が含む複数の第2再構築パーツ部材、又は
互いの一端部同士を突き合わせた状態で接続された一対の前記第3水平梁部材を夫々が含む複数の第3再構築パーツ部材、
の何れか一つからなる複数の再構築パーツ部材であって、前記再構築パーツ部材の水平方向における延在方向である第1方向とは直交する第2方向に沿って夫々が間隔をあけて配置された複数の再構築パーツ部材と、
前記第2方向に沿って延在して前記第2方向において互いに隣接する一対の再構築パーツ部材同士を接続する少なくとも1つの接続梁部材と、
を備える建築物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、建築物の平面形状決定方法、および該建築物の平面形状決定方法により決定された平面形状を有する建築物に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物は、鉛直方向に沿って延在する複数の柱部材や、水平方向に沿って延在する複数の梁部材により構成された骨組構造を有する。通常の設計では、一つの直交座標系において梁部材を配置することが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
建築物の形状は多様であり、複雑な平面形状や多様な平面形状を有する建築物の設計には多大な労力・時間を要する虞がある。また、建築物を構成する構成部材の種類が多いと、建築物の構造の複雑化を招き、建築物の組立てに多大な労力・時間を要する虞がある。
【0005】
特許文献1には、軸材の接続部をジョイントにより接続する骨組構造であって、ジョイントが体心立方構造を構成する位置に配置された骨組構造が開示されている。この骨組構造は、分解して多様な形状に組み立てることができる。しかしながら、この骨組構造において外側に露出する面は、三角形と正方形のいずれかに限定されるため、骨組構造における外観形状に制約が多く、複雑な平面形状や多様な平面形状を有する建築物を設計できない虞がある。
【0006】
上述した事情に鑑みて、本開示の少なくとも一実施形態の目的は、建築物を構成する構成部材の種類を少なくすることができ、複雑な平面形状や多様な平面形状を計画することができる建築物の平面形状決定方法、および該建築物の平面形状決定方法により決定された平面形状を有する建築物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一実施形態にかかる建築物の平面形状決定方法は、
建築物の平面形状決定方法であって、
第1半径を有する複数の第1円弧、
前記複数の第1円弧の内の少なくとも1つと接する第2円弧であって、前記第1半径よりも小さい第2半径を有する複数の第2円弧、及び
前記複数の第1円弧の内の少なくとも1つ、および前記複数の第2円弧の内の少なくとも1つと接する第3円弧であって、前記第2半径よりも小さい第3半径を有する複数の第3円弧、
のそれぞれを所定の縮尺を有する平面上に配置する円弧配置ステップと、
前記複数の第1円弧の内の少なくとも1つの中心と前記複数の第2円弧の内の少なくとも1つの中心とを接続する直線である第1直線、
前記複数の第1円弧の内の少なくとも1つの中心と前記複数の第3円弧の内の少なくとも1つの中心とを接続する直線である第2直線、及び
前記複数の第2円弧の内の少なくとも1つの中心と前記複数の第3円弧の内の少なくとも1つの中心とを接続する直線である第3直線、
の少なくとも1つの直線を組み合わせて前記建築物の平面形状の輪郭線を決定する平面形状決定ステップと、を備える。
【0008】
本開示の一実施形態にかかる建築物は、
前記建築物の平面形状決定方法により決定された前記平面形状を有する建築物であって、
前記建築物は、
水平方向に沿って延在する第1長さを有する第1水平梁部材であって、前記第1円弧の中心に対して放射状に配置された複数の第1水平梁部材と、
前記水平方向に沿って延在する前記第1長さよりも小さい第2長さを有する第2水平梁部材であって、前記第2円弧の中心に対して放射状に配置された複数の第2水平梁部材と、
前記水平方向に沿って延在する前記第2長さよりも小さい第3長さを有する第3水平梁部材であって、前記第3円弧の中心に対して放射状に配置された複数の第3水平梁部材と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、建築物を構成する構成部材の種類を少なくすることができ、複雑な平面形状や多様な平面形状を計画することができる建築物の平面形状決定方法、および該建築物の平面形状決定方法により決定された平面形状を有する建築物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の一実施形態にかかる建築物の平面形状決定方法の一例を示すフロー図である。
【
図2】円弧配置ステップにおいて配置される複数の円弧を説明するための説明図である。
【
図3A】平面形状決定ステップにおいて決定される建築物の平面形状の一例を説明するための説明図である。
【
図3B】平面形状決定ステップにおいて決定される建築物の平面形状の一例を説明するための説明図である。
【
図3C】平面形状決定ステップにおいて決定される建築物の平面形状の一例を説明するための説明図である。
【
図3D】平面形状決定ステップにおいて決定される建築物の平面形状の一例を説明するための説明図である。
【
図4】骨組構造決定ステップにおいて決定される建築物の骨組構造の一例を説明するための説明図である。
【
図5】円弧配置ステップにおいて配置される複数の円弧の位置関係を説明するための説明図である。
【
図6】本開示の一実施形態にかかる建築物の概略斜視図である。
【
図7】骨組構造決定ステップにおいて決定される建築物の骨組構造の一例を説明するための説明図である。
【
図8】本開示の一実施形態にかかる建築物の概略斜視図である。
【
図9】本開示の一実施形態にかかる建築物の構成部材を概略的に説明するための説明図である。
【
図10A】本開示の一実施形態にかかる建築物の構成部材を再利用した建築物の概略斜視図である。
【
図10B】本開示の一実施形態にかかる建築物の構成部材を再利用した建築物の概略斜視図である。
【
図10C】本開示の一実施形態にかかる建築物の構成部材を再利用した建築物の概略斜視図である。
【
図10D】本開示の一実施形態にかかる建築物の構成部材を再利用した建築物の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本開示の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
なお、同様の構成については同じ符号を付し説明を省略することがある。
【0012】
(建築物の構造設計方法)
図1は、本開示の一実施形態にかかる建築物1の平面形状決定方法2を含む建築物1の骨組構造決定方法3のフロー図である。建築物1の平面形状決定方法2は、
図1に示されるように、所定の縮尺を有する平面上に複数の円弧を配置する円弧配置ステップS1と、複数の円弧の中心同士を接続する複数の直線を組み合わせて建築物1の平面形状の輪郭線OLを決定する平面形状決定ステップS2と、を備える。
【0013】
図示される実施形態では、建築物1の平面形状決定方法2は、建築物1の骨組構造決定方法3に含まれる。建築物1の骨組構造決定方法3は、
図1に示されるように、上述した円弧配置ステップS1と、上述した平面形状決定ステップS2と、平面形状決定ステップS2において決定した輪郭線OLを考慮して、建築物1の骨組構造を決定する骨組構造決定ステップS3と、を備える。
【0014】
(円弧配置ステップ)
図2は、円弧配置ステップS1において配置される複数の円弧を説明するための説明図である。
図2に示されるように、円弧配置ステップS1において、所定の縮尺を有する平面P上に、半径がそれぞれ異なる3種類以上の円弧を配置することが行われる。なお、図示される実施形態では、平面P上に半径がそれぞれ異なる3種類の円弧を配置しているが、円弧配置ステップS1において、平面P上に半径がそれぞれ異なる4種類以上の円弧を配置してもよい。
【0015】
図示される実施形態では、
図2に示されるように、円弧配置ステップS1において、第1半径を有する複数の第1円弧10A、第1半径よりも小さい第2半径を有する複数の第2円弧20A、及び第2半径よりも小さい第3半径を有する複数の第3円弧30A、のそれぞれを平面P上に配置することが行われる。
【0016】
円弧配置ステップS1では、複数の円弧10A、20A、30Aの夫々は、半径が異なる他の円弧の内、少なくとも1つの円弧に接するように配置される。換言すると、複数の第1円弧10Aは、複数の第2円弧20A又は複数の第3円弧30Aの内、少なくとも1つの円弧に接している。複数の第2円弧20Aの夫々は、複数の第1円弧10A又は複数の第3円弧30Aの内、少なくとも1つの円弧に接している。複数の第3円弧30Aの夫々は、複数の第1円弧10A又は複数の第2円弧20Aの内、少なくとも1つの円弧に接している。
【0017】
図示される実施形態では、複数の第2円弧20Aの夫々は、平面P上において、複数の第1円弧10Aの内の少なくとも1つに接するように配置される。複数の第3円弧30Aの夫々は、平面P上において、複数の第1円弧10Aの内の少なくとも1つ、および複数の第2円弧20Aの内の少なくとも1つに接するように配置される。
【0018】
なお、円弧配置ステップS1では、複数の円弧10A、20A、30Aの代わりに、複数の円(第1半径を有する第1円10、第2半径を有する第2円20、第3半径を有する第3円30)を配置してもよい。複数の円弧10A、20A、30Aの夫々は、平面P上において、他の円弧10A、20A、30Aを一部に有する円10、20、30の内部には配置されないようになっている。
【0019】
(平面形状決定ステップ)
図3A~
図3Dの夫々は、平面形状決定ステップS2において決定される建築物1の平面形状の一例を説明するための説明図である。平面形状決定ステップS2では、円弧配置ステップS1において平面P上に配置された複数の円弧の中心同士を接続する複数の直線を組み合わせて、
図3A~
図3Dに示されるような、建築物1の平面形状の輪郭線OLを決定することが行われる。なお、平面形状決定ステップS2において決定される輪郭線OLは、平面P上に配置された複数の円弧の中心同士を接続する複数の直線を組み合わせた形状であればよく、
図3A~
図3Dに示される例に限定されない。
【0020】
図3Aに示されるように、複数の第1円弧10Aの夫々の中心(円弧中心)をC1、複数の第2円弧20Aの夫々の中心(円弧中心)をC2、複数の第3円弧30Aの夫々の中心(円弧中心)をC3と定義する。また、複数の第1円弧10Aの内の少なくとも1つの中心C1と複数の第2円弧20Aの内の少なくとも1つの中心C2とを接続する直線を第1直線SL1、複数の第1円弧10Aの内の少なくとも1つの中心C1と複数の第3円弧30Aの内の少なくとも1つの中心C3とを接続する直線を第2直線SL2、複数の第2円弧20Aの内の少なくとも1つの中心C2と複数の第3円弧30Aの内の少なくとも1つの中心C3とを接続する直線を第3直線SL3と定義する。
【0021】
平面形状決定ステップS2において、第1直線SL1、第2直線SL2および第3直線SL3の内、少なくとも1つの直線を組み合わせて建築物1の平面形状の輪郭線OLを決定することが行われる。
【0022】
平面形状決定ステップS2において決定される輪郭線OLは、第1直線SL1、第2直線SL2および第3直線SL3の3つの直線を組み合わせた輪郭形状(
図3A参照)を有していてもよい。また、平面形状決定ステップS2において決定される輪郭線OLは、第1直線SL1、第2直線SL2および第3直線SL3の内、2つの直線(第1直線SL1および第2直線SL2、第1直線SL1および第3直線SL3、第2直線SL2および第3直線SL3)を組み合わせた輪郭形状を有していてもよい。平面形状決定ステップS2において決定される輪郭線OLは、複数の第1直線SL1を組み合わせた輪郭形状(
図3B参照)、複数の第2直線SL2を組み合わせた輪郭形状(
図3C参照)、又は複数の第3直線SL3を組み合わせた輪郭形状(
図3D参照)、を有していてもよい。なお、図示される実施形態では、平面形状決定ステップS2において決定される輪郭線OLは、輪郭線OLの内部に閉鎖空間を形成する閉じた輪郭形状を有しているが、平面形状決定ステップS2において決定される輪郭線OLは、輪郭線OLの内部に閉鎖空間を形成しない開いた輪郭形状を有していてもよい。また、建築物1は、平面形状決定ステップS2において決定された輪郭線OLの外部に建築物1の構成部材の一部が配置されてもよい。
【0023】
図示される実施形態では、第1直線SL1、第2直線SL2および第3直線SL3の夫々は、互いに接する円弧の中心同士を繋ぐ直線からなる。平面形状決定ステップS2において決定される輪郭線OLを有する建築物1の平面形状は、第1直線SL1、第2直線SL2又は第3直線SL3の内、少なくとも1つをそれぞれ含む複数の辺Sを有し、中心C1、C2又はC3の何れかをそれぞれ頂点Vとする多角形状からなる。
【0024】
(骨組構造決定ステップ)
図4は、骨組構造決定ステップにおいて決定される建築物の骨組構造の一例を説明するための説明図である。骨組構造決定ステップS3では、平面形状決定ステップS2において決定した輪郭線OLを考慮して、建築物1の骨組構造を決定することが行われる。図示される実施形態では、骨組構造決定ステップS3は、
図1に示されるように、建築物1の梁構造を決定する梁構造決定ステップS4と、建築物1の柱構造を決定する柱構造決定ステップS5と、を含む。
【0025】
梁構造決定ステップS4では、平面Pの輪郭線OLの内部において、互いに接する円弧の中心同士を繋ぐ複数の直線(第1直線SL1、第2直線SL2および第3直線SL3)の夫々に沿うように、複数の梁部材4を配置することが行われる。なお、平面Pの輪郭線OLの内部には、平面Pの輪郭線OL上が含まれる。すなわち、梁構造決定ステップS4では、輪郭線OLに沿って複数の梁部材4を配置することも行われる。梁構造決定ステップS4では、輪郭線OLの内部における上記複数の直線SL1、SL2、SL3の幾つかに対して梁部材4を選択的に配置してもよいし、輪郭線OLの内部における上記複数の直線SL1、SL2、SL3の全てに対して梁部材4を配置してもよい。
【0026】
図示される実施形態では、複数の梁部材4は、水平方向(平面Pの延在方向)に沿って延在する第1長さL1を有する複数の第1水平梁部材11と、水平方向に沿って延在する第1長さL1よりも小さい第2長さL2を有する複数の第2水平梁部材21と、水平方向に沿って延在する第2長さよりも小さい第3長さL3を有する複数の第3水平梁部材31と、を含む。第1長さL1は、第1半径の長さR1と同様の長さを有する。第2長さL2は、第2半径の長さR2と同様の長さを有する。第3長さL3は、第3半径の長さR3と同様の長さを有する。或る実施形態では、第1長さL1は、R1×0.9<L1<R1×1.1の条件を満たす。第2長さL2は、R2×0.9<L2<R2×1.1の条件を満たす。第3長さL3は、R3×0.9<L3<R3×1.1の条件を満たす。なお、本開示において、2つの長さを比較する際は、実際の長さ同士を比較してもよいし、縮尺後の長さ同士を比較してもよい。
【0027】
梁構造決定ステップS4において、第1円弧10Aの中心C1と第2円弧20Aの中心C2とを接続する直線である第1直線SL1に沿って、第1水平梁部材11(11A)と第2水平梁部材21(21A)とが直列に配置される。第1直線SL1に沿って配置される第1水平梁部材11(11A)は、該第1直線SL1に沿って配置される第2水平梁部材21(21A)よりも中心C1側に配置される。なお、1つの第1直線SL1に沿って配置される第1水平梁部材11(11A)と第2水平梁部材21(21A)は、互いの先端部111、211同士がオーバラップ(重複)するように配置されていてもよい。
【0028】
梁構造決定ステップS4において、第1円弧10Aの中心C1と第3円弧30Aの中心C3とを接続する直線である第2直線SL2に沿って、第1水平梁部材11(11A)と第3水平梁部材31(31A)とが直列に配置される。第2直線SL2に沿って配置される第1水平梁部材11(11A)は、該第2直線SL2に沿って配置される第3水平梁部材31(31A)よりも中心C1側に配置される。なお、1つの第2直線SL2に沿って配置される第1水平梁部材11(11A)と第3水平梁部材31(31A)は、互いの先端部111、311同士がオーバラップ(重複)するように配置されていてもよい。
【0029】
梁構造決定ステップS4において、第2円弧20Aの中心C2と第3円弧30Aの中心C3とを接続する直線である第3直線SL3に沿って、第2水平梁部材21(21A)と第3水平梁部材31(31A)とが直列に配置される。第3直線SL3に沿って配置される第2水平梁部材21(21A)は、該第3直線SL3に沿って配置される第3水平梁部材31(31A)よりも中心C2側に配置される。なお、1つの第3直線SL3に沿って配置される第2水平梁部材21(21A)と第3水平梁部材31(31A)は、互いの先端部211、311同士がオーバラップ(重複)するように配置されていてもよい。
【0030】
柱構造決定ステップS5では、平面Pの輪郭線OLの内部において、互いに接する円弧の中心同士を繋ぐ複数の直線(第1直線SL1、第2直線SL2および第3直線SL3)の夫々の両端部を夫々支持する位置に複数の柱部材5を配置することが行われる。なお、平面Pの輪郭線OLの内部には、平面Pの輪郭線OL上が含まれる。すなわち、柱構造決定ステップS5では、輪郭線OL上に複数の柱部材5を配置することも行われる。
【0031】
図示される実施形態では、複数の柱部材5は、第1水平梁部材11の中心C1側の端部を支持する第1柱部材12と、第2水平梁部材21の中心C2側の端部を支持する第2柱部材22と、第3水平梁部材31の中心C3側の端部を支持する第3柱部材32と、を含む。第1柱部材12、第2柱部材22および第3柱部材32の夫々は、水平方向(平面Pの延在方向)と直交する鉛直方向に沿って延在する。
【0032】
柱構造決定ステップS5において、第1直線SL1の中心C1側の端に第1柱部材12(12A)が配置され、第1直線SL1の中心C2側の端に第2柱部材22(22A)が配置される。柱構造決定ステップS5において、第2直線SL2の中心C2側の端に第2柱部材22(22A)が配置され、第2直線SL2の中心C3側の端に第3柱部材32(32A)が配置される。柱構造決定ステップS5において、第3直線SL3の中心C2側の端に第2柱部材22(22A)が配置され、第3直線SL3の中心C3側の端に第3柱部材32(32A)が配置される。
【0033】
複数の第1水平梁部材11は、第1直線SL1又は第2直線SL2に沿って配置される複数の第1水平梁部材11Aを含む。複数の第1柱部材12は、複数の第1水平梁部材11Aの各々を夫々が支持する複数の第1柱部材12Aを含む。複数の第2水平梁部材21は、第1直線SL1又は第3直線SL3に沿って配置される複数の第2水平梁部材21Aを含む。複数の第2柱部材22は、複数の第2水平梁部材21Aの各々を夫々が支持する複数の第2柱部材22Aを含む。複数の第3水平梁部材31は、第2直線SL2又は第3直線SL3に沿って配置される複数の第3水平梁部材31Aを含む。複数の第3柱部材32は、複数の第3水平梁部材31Aの各々を夫々が支持する複数の第3柱部材32Aを含む。
【0034】
幾つかの実施形態にかかる建築物1の平面形状決定方法2は、
図1に示されるように、上述した円弧配置ステップS1と、上述した平面形状決定ステップS2と、を備える。上記の方法によれば、円弧配置ステップS1および平面形状決定ステップS2により、建築物1の平面形状の輪郭線OLを容易かつ柔軟に決定できるため、建築物の平面形状を効率的に決定可能である。平面形状決定ステップS2において決定される建築物1の平面形状の輪郭線OLは、第1直線SL1、第2直線SL2又は第3直線SL3のうち、少なくとも1つの直線が組み合わされたものである。これらの直線SL1、SL2、SL3は、複数の円弧の中心C1、C2、C3間を接続する直線であるため、上記輪郭線OLを有する建築物1は、建築物1を構成する構成部材(梁部材4や柱部材5など)の種類を少なくすることができ、複雑な平面形状や多様な平面形状を計画することができる。
【0035】
また、上記1)の方法によれば、建築物1を構成する構成部材(梁部材4や柱部材5など)の種類を少なくすることができるため、建築物1を構成する構成部材(梁部材4や柱部材5など)の再利用が容易である。
【0036】
特に、建築物1の梁構造を、第1直線SL1、第2直線SL2及び第3直線SL3の夫々に沿って、第1水平梁部材11(11A)、第2水平梁部材21(21A)及び第3水平梁部材31(31A)の内、少なくとも二つの水平梁部材を配置するように設計することで、建築物1に用いられる水平梁部材の種類を限定できるため、水平梁部材の再利用が容易である。なお、建築物1を構成する構成部材は、平面形状決定方法2を用いて設計された新たな建築物1に再利用してもよいし、平面形状決定方法2を用いて設計された建築物1以外の建築物に再利用してもよい。また、建築物1を構成する構成部材は、平面形状決定方法2以外の方法で設定された建築物に再利用してもよい。
【0037】
図5は、円弧配置ステップにおいて配置される複数の円弧の位置関係を説明するための説明図である。幾つかの実施形態では、
図5に示されるように、上述した円弧配置ステップS1において、上述した複数の第1円弧10Aの各々は、平面P上に互いに間隔をあけて配置され、上述した複数の第2円弧20Aの内の少なくとも1つは、平面P上における複数の第1円弧10Aの間に配置され、上述した複数の第3円弧30Aの内の少なくとも1つは、平面P上における複数の第1円弧10Aの間に配置される。
【0038】
上記の方法によれば、平面P上に複数の第1円弧10Aを互いに間隔をあけて配置した後に、複数の第1円弧10Aの間に第2円弧20Aや第3円弧30Aを配置できるため、円弧配置ステップS1における複数の円弧の配置を効率的に決定可能である。
【0039】
幾つかの実施形態では、
図5に示されるように、上述した円弧配置ステップS1において、複数の第1円弧10Aの各々は、平面P上に千鳥状に配置され、複数の第2円弧20Aの内の少なくとも2つの第2円弧20B、20Cは、複数の第1円弧10Aの内の3つの第1円弧10Aと接するように配置され、複数の第3円弧30Aの内の少なくとも1つの第3円弧30Bは、上記少なくとも2つの第2円弧20B、20Cと接するように配置される。複数の第1円弧10Aの夫々が千鳥状に配置されるとは、複数の第1円弧10Aが平面P上において複数列に整列して配置され、上記複数列の第1円弧10Aが隣接する列の第1円弧10Aに対してずれた状態となることを意味する。
【0040】
上記の方法によれば、平面P上に第1円弧10Aを含む第1円10、第2円弧20Aを含む第2円20および第3円弧30Aを含む第3円30を敷き詰めることができるため、平面P上における隙間の総面積を小さなものにすることができる。なお、隙間とは、平面P上における全ての円(第1円10、第2円20および第3円30を含む)の範囲外を意味する。上記隙間の総面積を小さなものにすることで、建築物1を構成する構成部材(梁部材4、柱部材5)により、建築物1を強固に支持できる。
【0041】
幾つかの実施形態では、
図5に示されるように、上述した円弧配置ステップS1において、複数の第1円弧10Aの各々は、平面P上に千鳥状に配置され、複数の第2円弧20Aの内の少なくとも2つの第2円弧20B、20Cは、複数の第1円弧10Aの内の3つの第1円弧10Aと接するように配置され、複数の第3円弧30Aの内の少なくとも1つの第3円弧30Bは、上記少なくとも2つの第2円弧20B、20Cと接するように配置される。第1半径の長さをR1、第2半径の長さをR2、第3半径の長さをR3、とした場合に、下記式(1)および(2)を満たす。
(2√3-3)×0.95<R2/R1<(2√3-3)×1.05・・・(1)
(2-√3)×0.95<R3/R1<(2-√3)×1.05・・・(2)
【0042】
図示される実施形態では、複数の第1水平梁部材11の夫々は、複数の第1円弧10Aのうちの何れか一つの第1円弧10Aの中心C1に対して放射状に配置される。複数の第1水平梁部材11のうち、一つの第1円弧10Aの中心C1周りの周方向において互いに隣接する二つの第1水平梁部材11Aのなす角度θ1は、25°<θ1<35°の条件を満たす。複数の第2水平梁部材21の夫々は、複数の第2円弧20Aのうちの何れか一つの第2円弧20Aの中心C2に対して放射状に配置される。複数の第2水平梁部材21のうち、一つの第2円弧20Aの中心C2周りの周方向において互いに隣接する二つの第2水平梁部材21Aのなす角度θ2は、55°<θ2<65°の条件を満たす。複数の第3水平梁部材31の夫々は、複数の第3円弧30Aのうちの何れか一つの第3円弧30Aの中心C3に対して放射状に配置される。複数の第3水平梁部材31のうち、一つの第3円弧30Aの中心C3周りの周方向において互いに隣接する二つの第3水平梁部材31Aのなす角度θ3は、85°<θ3<95°の条件を満たす。
【0043】
上記角度θ1、θ2、θ3の夫々が上記条件を満たす場合には、平面P上において、第1円弧10Aの中心C1、第2円弧20Aの中心C2および第3円弧30Aの中心C3のそれぞれを頂点とする複数の直角三角形RTが形成される。この場合には、平面P上において、第1円弧10Aの中心C1、第2円弧20Aの中心C2および第3円弧30Aの中心C3のそれぞれを各座標軸A1、A2、A3、A4、A5、A6が通る3つの直交座標系が形成される。上記3つの直交座標系は、一つの直角三角形RT1の直角を形成する2辺のうち一方を通過する第1座標軸A1と、上記2辺のうち他方を通過する第2座標軸A2と、を有する第1の直交座標系と、上記一つの直角三角形RT1の斜辺を通る第3座標軸A3と、該第3座標軸A3に直交する第4座標軸A4と、を有する第2の直交座標系と、上記一つの直角三角形RT1とは異なる直角三角形RT2の斜辺を通る第5座標軸A5と、該第5座標軸A5に直交する第6座標軸A6と、を有する第3の直交座標系と、を含む。上記直角三角形RT2は、直角を形成する2辺のうち一方を上記直角三角形RT1と共有している。第1座標軸A1と第3座標軸A3とがなす角度、および第1座標軸A1と第5座標軸A5とがなす角度の夫々は、上記角度θ1と同じ角度になっている。また、第1円弧10Aの中心C1、第2円弧20Aの中心C2および第3円弧30Aの中心C3の夫々を原点とする3つの極座標系が形成される。よって、上記の方法によれば、輪郭線OLを有する建築物1は、その平面形状における各頂点が、上記3つの直交座標系の座標軸上又は座標軸に平行な直線PL上に位置し、且つ3つの極座標系の何れかの原点上に位置しているので、その平面形状が設計や製造が容易な幾何学形状を有する。なお、
図5では、上記3つの直交座標系は、第1円弧10Aの中心C1を原点とする各座標軸が図示されているが、第2円弧20Aの中心C2や第3円弧30Aの中心C3を原点としてもよい。
図5に示されるように、平面P上には、上記3つの直交座標系において各座標軸に平行に配置され、第1円弧10Aの中心C1、第2円弧20Aの中心C2および第3円弧30Aの中心C3のそれぞれを通過する複数の平行線PL(PL2、PL3、PL5など)を引くことができる。
【0044】
なお、上述した円弧配置ステップS1における、複数の第1円弧10A、複数の第2円弧20A、および複数の第3円弧30Aの配置は、図示される実施形態に限定されない。例えば、複数の第1円弧10Aの夫々が、平面P上に格子状に配置されていてもよい。複数の第1円弧10Aの夫々が格子状に配置されるとは、複数の第1円弧10Aが平面P上において複数列に整列して配置され、上記複数列の第1円弧10Aが並列した状態となることを意味する。
【0045】
(建築物)
図6は、本開示の一実施形態にかかる建築物の概略斜視図である。幾つかの実施形態にかかる建築物1は、上述した建築物の平面形状決定方法2により決定された平面形状を有する建築物1である。この建築物1は、
図6に示されるように、水平方向に沿って延在する第1長さL1を有する複数の第1水平梁部材11と、水平方向に沿って延在する第1長さL1よりも小さい第2長さL2を有する複数の第2水平梁部材21と、水平方向に沿って延在する第2長さL2よりも小さい第3長さL3を有する複数の第3水平梁部材31と、を備える。複数の第1水平梁部材11の夫々は、第1円弧10Aの中心C1に対して放射状に配置されている。複数の第2水平梁部材21の夫々は、第2円弧20Aの中心C2に対して放射状に配置されている。複数の第3水平梁部材31の夫々は、第3円弧30Aの中心C3に対して放射状に配置されている。
【0046】
或る実施形態では、複数の第1水平梁部材11、複数の第2水平梁部材21および複数の第3水平梁部材31の夫々は、規格化された寸法を有する集成材などの木材(角材)からなる。集成材は、断面寸法の小さい複数の木材を接着剤などにより結合させた木質材料である。或る実施形態では、複数の第1水平梁部材11の夫々は、断面積および長さ(第1長さL1)が同じである。複数の第2水平梁部材21の夫々は、断面積および長さ(第2長さL2)が同じである。複数の第3水平梁部材31の夫々は、断面積および長さ(第3長さL3)が同じである。なお、複数の第2水平梁部材21および複数の第3水平梁部材31の夫々は、複数の第1水平梁部材11の夫々と断面積が同じであってもよい。
【0047】
図示される実施形態では、建築物1は、複数の第1水平梁部材11の夫々の中心C1側の端部(基端部)を支持する複数の第1柱部材12と、複数の第2水平梁部材21の夫々の中心C2側の端部(基端部)を支持する複数の第2柱部材22と、複数の第3水平梁部材31の夫々の中心C3側の端部(基端部)を支持する複数の第3柱部材32と、をさらに備える。複数の第1柱部材12、複数の第2柱部材22および複数の第3柱部材32の夫々は、鉛直方向に沿って延在するように配置されている。
【0048】
或る実施形態では、複数の第1柱部材12、複数の第2柱部材22および複数の第3柱部材32の夫々は、規格化された寸法を有する集成材などの木材(角材)からなる。或る実施形態では、複数の第1柱部材12の夫々は、断面積および長さ(第1柱部材12の全長)が同じである。複数の第2柱部材22の夫々は、断面積および長さ(第2柱部材22の全長)が同じである。複数の第3柱部材32の夫々は、断面積および長さ(第3柱部材32の全長)が同じである。なお、複数の第2柱部材22および複数の第3柱部材32の夫々は、複数の第1柱部材12の夫々と断面積が同じであってもよい。
【0049】
図示される実施形態では、複数の第1水平梁部材11の夫々は、複数の第1柱部材12の夫々に個別に支持されている。複数の第2水平梁部材21の夫々は、複数の第2柱部材22の夫々に個別に支持されている。複数の第3水平梁部材31の夫々は、複数の第3柱部材32の夫々に個別に支持されている。
【0050】
第1水平梁部材11は、該第1水平梁部材11を支持する第1柱部材である対象第1柱部材12に、ボルト締結などの公知の締結手段により着脱可能に締結されていてもよいし、着脱不能に接続されていてもよい。第2水平梁部材21は、該第2水平梁部材21を支持する第2柱部材である対象第2柱部材22に、ボルト締結などの公知の締結手段により着脱可能に締結されていてもよいし、着脱不能に接続されていてもよい。第3水平梁部材31は、該第3水平梁部材31を支持する第3柱部材(対象第3柱部材)32に、ボルト締結などの公知の締結手段により着脱可能に締結されていてもよいし、着脱不能に接続されていてもよい。
【0051】
図示される実施形態では、複数の第1水平梁部材11Aの夫々の中心C1側とは反対側の端部である先端部111A(111)は、複数の第2水平梁部材21Aの夫々の中心C2側とは反対側の端部である先端部211A(211)、又は、複数の第3水平梁部材31Aの夫々の中心C3側とは反対側の端部である先端部311A(311)、の何れかに突き合わされた状態で、ボルト締結などの公知の締結手段により、先端部同士が着脱可能に締結されている。複数の第2水平梁部材21Aの夫々の先端部211Aは、複数の第1水平梁部材11Aの夫々の先端部111A、又は、複数の第3水平梁部材31Aの夫々の先端部311A、の何れかに突き合わされた状態で、ボルト締結などの公知の締結手段により、先端部同士が着脱可能に締結されている。複数の第3水平梁部材31Aの夫々の先端部311Aは、複数の第1水平梁部材11Aの夫々の先端部111A、又は、複数の第2水平梁部材21Aの夫々の先端部211A、の何れかに突き合わされた状態で、ボルト締結などの公知の締結手段により、先端部同士が着脱可能に締結されている。なお、複数の第1水平梁部材11A、複数の第2水平梁部材21Aおよび複数の第3水平梁部材31Aの夫々は、互いの先端部111A、211A、311A同士がオーバラップ(重複)するように配置されていてもよい。
【0052】
上記の構成によれば、各々の長さが異なる3種類の梁部材4(第1水平梁部材11、第2水平梁部材21、第3水平梁部材31)の内、2つの梁部材4を接続することで、複数の円弧の中心間を接続する梁が形成される。建築物の平面形状決定方法2により決定された平面形状を有する建築物1は、建築物(1)を構成する構成部材(梁部材4や柱部材5など)の種類を少なくすることができ、複雑な平面形状や多様な平面形状を有することが可能である。また、上記の構成によれば、建築物(1)を構成する構成部材(梁部材4や柱部材5など)の種類を少なくすることができるため、建築物1を構成する構成部材の再利用が容易である。
【0053】
また、建築物の平面形状決定方法2により決定された平面形状を有する建築物1は、建築物1を構成する構造部材ごと、又は複数の構成部材を組み合わせたパーツ部材ごとに分割することが容易である。このため、上述した建築物1は、その骨組構造の組立や解体が容易であり、建築物1の移設も容易である。このため、上述した建築物1は、パビリオンなどの使用期間が限定された建築物にも好適である。なお、上述した建築物1は、長期間の使用が想定される建築物にも適用可能である。
【0054】
また、建築物1は、少なくとも1つの中心C1の周囲の骨組構造を第1水平梁部材11や第1柱部材12などにより構成でき、少なくとも1つの中心C2の周囲の骨組構造を第2水平梁部材21や第2柱部材22などにより構成でき、少なくとも1つの中心C3の周囲の骨組構造を第3水平梁部材31や第3柱部材32などにより構成できる。このため、建築物1の構造強度の計算が容易になる。また、建築物1は、少なくとも1つの中心C1の周囲の骨組構造、少なくとも1つの中心C2の周囲の骨組構造、および少なくとも1つの中心C3の周囲の骨組構造を、骨組構造毎に分割して再利用できる。このため、建築物1を構成する構成部材の再利用性を向上できる。
【0055】
(三角形の内心と頂点とを繋ぐ直線)
図7は、骨組構造決定ステップにおいて決定される建築物の骨組構造の一例を説明するための説明図である。
図7に示されるように、平面P上において互いに接する第1円弧10A、第2円弧20A、第3円弧30Aの各々の中心C1、C2、C3を頂点とする三角形T1(図示例では、直角三角形RT)の内心をICと定義する。三角形T1の内心ICと該三角形T1の頂点である第1円弧10Aの中心C1とを接続する直線を第4直線SL4、三角形T1の内心ICと該三角形T1の頂点である第2円弧20Aの中心C2とを接続する直線を第5直線SL5、三角形T1の内心ICと該三角形T1の頂点である第3円弧30Aの中心C3とを接続する直線を第6直線SL6と定義する。
【0056】
幾つかの実施形態にかかる建築物1の骨組構造決定方法3では、上述した梁構造決定ステップS4において、平面Pの輪郭線OLの内部に位置する三角形T1の内心ICと該三角形T1の頂点とを繋ぐ複数の直線(第4直線SL4、第5直線SL5および第6直線SL6)の夫々に沿うように、複数の梁部材4(11、21、31)を配置することが行われる。具体的には、梁構造決定ステップS4において、第1水平梁部材11(11B)が第4直線SL4に沿って配置される。第2水平梁部材21(21B)が第5直線SL5に沿って配置される。第3水平梁部材31(31B)が第6直線SL6に沿って配置される。梁構造決定ステップS4では、輪郭線OLの内部における上記複数の直線SL4、SL5、SL6の幾つかに対して梁部材4を選択的に配置してもよいし、輪郭線OLの内部における上記複数の直線SL4、SL5、SL6の全てに対して梁部材4を配置してもよい。
【0057】
幾つかの実施形態にかかる建築物1の骨組構造決定方法3では、上述した柱構造決定ステップS5において、平面Pの輪郭線OLの内部に位置する三角形T1の内心ICと該三角形T1の頂点とを繋ぐ複数の直線(第4直線SL4、第5直線SL5および第6直線SL6)の夫々の基端部(三角形T1の頂点側の端部)を夫々支持する位置に複数の柱部材5(12、22、32)を配置することが行われる。具体的には、柱構造決定ステップS5において、第4直線SL4の中心C1側の端に第1柱部材12(12B)が配置され、第5直線SL5の中心C2側の端に第2柱部材22(22B)が配置され、第6直線SL6の中心C3側の端に第3柱部材32(32B)が配置される。
【0058】
複数の第1水平梁部材11は、第4直線SL4に沿って配置される少なくとも1つの第1水平梁部材11Bを含む。複数の第1柱部材12は、少なくとも1つの第1水平梁部材11Bを個別に支持する少なくとも1つの第1柱部材12Bを含む。複数の第2水平梁部材21は、第5直線SL5に沿って配置される少なくとも1つの第2水平梁部材21Bを含む。複数の第2柱部材22は、少なくとも1つの第2水平梁部材21Bを個別に支持する少なくとも1つの第2柱部材22Bを含む。複数の第3水平梁部材31は、第6直線SL6に沿って配置される少なくとも1つの第3水平梁部材31Bを含む。複数の第3柱部材32は、少なくとも1つの第3水平梁部材31Bを個別に支持する少なくとも1つの第3柱部材32Bを含む。
【0059】
図8は、本開示の一実施形態にかかる建築物の概略斜視図である。幾つかの実施形態にかかる建築物1は、
図8に示されるように、上述した少なくとも1つの第1水平梁部材11Bと、上述した少なくとも1つの第2水平梁部材21Bと、上述した少なくとも1つの第3水平梁部材31Bと、をさらに備える。
【0060】
少なくとも1つの第1水平梁部材11Bは、第1円弧10Aの中心C1周りの周方向において互いに隣接する二つの第1水平梁部材11の間に該第1円弧10Aの中心C1に対して放射状に配置される。少なくとも1つの第2水平梁部材21Bは、第2円弧20Aの中心C2周りの周方向において互いに隣接する二つの第2水平梁部材21Aの間に該第2円弧20Aの中心C2に対して放射状に配置される。少なくとも1つの第3水平梁部材31Bは、第3円弧30Aの中心C3周りの周方向において互いに隣接する二つの第3水平梁部材31Aの間に該第3円弧30Aの中心C3に対して放射状に配置される。
【0061】
図示される実施形態では、建築物1は、少なくとも1つの第1水平梁部材11Bの中心C1側の端部(基端部)を個別に支持する少なくとも1つの第1柱部材12Bと、少なくとも1つの第2水平梁部材21Bの中心C2側の端部(基端部)を個別に支持する少なくとも1つの第2柱部材22Bと、少なくとも1つの第3水平梁部材31Bの中心C3側の端部(基端部)を個別に支持する少なくとも1つの第3柱部材32Bと、をさらに備える。
【0062】
図示される実施形態では、第1水平梁部材11Bの中心C1側とは反対側の端部である先端部111B(111)は、第2水平梁部材21Bの中心C2側とは反対側の端部である先端部211B(211)、および第3水平梁部材31Bの中心C3側とは反対側の端部である先端部311B(311)の夫々に突き合わされた状態で、ボルト締結などの公知の締結手段により先端部111B、211B、311B同士が着脱可能に締結されている。なお、他の実施形態では、先端部111B、211B、311B同士が着脱不能に接続されていてもよい。また、複数の第1水平梁部材11B、複数の第2水平梁部材21B、又は複数の第3水平梁部材31Bの少なくとも1つは、先端部111B、211B、311Bが他の水平梁部材の先端部に対してオーバラップ(重複)するように配置されていてもよい。
【0063】
三角形T1の内心ICと頂点とを繋ぐ第4直線SL4が、第1半径の長さをR1よりも長い場合には、第1水平梁部材11Bの長さを第1水平梁部材11Aよりも長くしてもよいし、第1水平梁部材11Bの長さを第1水平梁部材11Aと同じ長さにして、不足する長さを追加部材や接続部材などで補うようにしてもよい。三角形T1の内心ICと頂点とを繋ぐ第5直線SL5が、第2半径の長さをR2よりも長い場合には、第2水平梁部材21Bの長さを第2水平梁部材21Aよりも長くしてもよいし、第2水平梁部材21Bの長さを第2水平梁部材21Aと同じ長さにして、不足する長さを追加部材や接続部材などで補うようにしてもよい。三角形T1の内心ICと頂点とを繋ぐ第6直線SL6が、第2半径の長さをR3よりも長い場合には、第3水平梁部材31Bの長さを第3水平梁部材31Aよりも長くしてもよいし、第3水平梁部材31Bの長さを第3水平梁部材31Aと同じ長さにして、不足する長さを追加部材や接続部材などで補うようにしてもよい。
【0064】
上記の構成によれば、各々の長さが異なる3種類の梁部材4(第1水平梁部材11B、第2水平梁部材21B、第3水平梁部材31B)を接続することで、複数の円弧10A、20A、30Aの各々の中心C1、C2、C3を頂点とする三角形T1の内心ICと各頂点とを接続する梁が形成される。これにより、建築物1を構成する構成部材(梁部材4や柱部材5など)の種類の増大化を抑制しつつ、建築物1屋根面の面内剛性を向上できる。
【0065】
また、上記の構成によれば、上述した建築物1は、建築物1を構成する構造部材ごと、又は複数の構成部材を組み合わせたパーツ部材ごとに分割することが容易である。このため、上述した建築物1は、その骨組構造の組立や解体が容易であり、建築物1の移設も容易である。また、上述した建築物1は、建築物1を構成する構成部材(梁部材4や柱部材5など)の種類を少なくすることができるため、建築物1を構成する構成部材の再利用が容易である。
【0066】
図9は、本開示の一実施形態にかかる建築物の構成部材を概略的に説明するための説明図である。幾つかの実施形態では、上述した建築物1は、
図9に示されるように、上述した第1水平梁部材11と、該第1水平梁部材11を支持する第1柱部材である対象第1柱部材12とを接続する少なくとも1つの第1斜部材13をさらに備えていてもよい。
【0067】
上記少なくとも1つの第1斜部材13は、その一端部が、第1水平梁部材11の予め定められた水平位置HP1に、ボルト締結などの公知の締結手段により着脱可能に締結されていてもよいし、着脱不能に接続されていてもよい。また、上記少なくとも1つの第1斜部材13の他端部が、対象第1柱部材12の予め定められた高さ位置VP1に、ボルト締結などの公知の締結手段により着脱可能に締結されていてもよいし、着脱不能に接続されていてもよい。上記少なくとも1つの第1斜部材13は、規格化された寸法を有する集成材などの木材(角材)からなる。
【0068】
上述した骨組構造決定ステップS3は、
図1に示されるように、建築物1における補剛構造を決定する補剛構造決定ステップS6をさらに含んでいてもよい。補剛構造決定ステップS6では、建築物1における第1斜部材13の配置などが決定される。なお、上述した高さ位置VP1や水平位置HP1は、配置される第1斜部材13などとともに補剛構造決定ステップS6よりも前に予め規格化されていてもよい。
【0069】
上述した建築物1は、上述した第2水平梁部材21と、該第2水平梁部材21を支持する第2柱部材である対象第2柱部材22とを接続する少なくとも1つの第2斜部材23(斜部材、
図10B参照)をさらに備えていてもよい。また、上述した建築物1は、上述した第3水平梁部材31と、該第3水平梁部材31を支持する第3柱部材である対象第3柱部材32とを接続する少なくとも1つの第3斜部材33(斜部材、
図10C参照)をさらに備えていてもよい。上記第2斜部材23や上記第3斜部材33は、規格化された寸法を有する集成材などの木材(角材)からなる。補剛構造決定ステップS6において、建築物1における上記第2斜部材23や上記第3斜部材33の配置を決定してもよい。
【0070】
上記の構成によれば、第1水平梁部材11に作用する荷重を、第1斜部材13を介して第1柱部材12に伝達できるため、第1水平梁部材11を強固に支持できる。
【0071】
(再構築された建築物)
以下、上述した建築物1を構成する構成部材(梁部材4や柱部材5など)の一部を構成部材として再構築された建築物7(7A~7D)を説明する。
図10A~
図10Dの夫々は、本開示の一実施形態にかかる建築物の構成部材木材を再利用した建築物の概略斜視図である。
【0072】
幾つかの実施形態では、
図10A~
図10Cに示されるように、建築物7(7A~7C)は、複数の第1再構築パーツ部材8A(
図10A参照)、複数の第2再構築パーツ部材8B(
図10B参照)、又は複数の第3再構築パーツ部材8C(
図10C参照)、の何れか一つからなる複数の再構築パーツ部材8を備える。
【0073】
建築物7Aは、複数の第1再構築パーツ部材8Aを備える。複数の第1再構築パーツ部材8Aの各々は、互いの先端部(一端部)111、111同士を突き合わせた状態で接続された一対の上述した第1水平梁部材11を含む。一対の第1水平梁部材11は、ボルト締結などの公知の締結手段により互いの先端部111、111同士が着脱可能に締結されていてもよいし、着脱不能に接続されていてもよい。また、一対の第1水平梁部材11は、互いの先端部111、111同士がオーバラップ(重複)するように配置されていてもよい。
【0074】
複数の第1再構築パーツ部材8Aの各々は、一対の第1水平梁部材11の夫々の基端部を夫々が支持する一対の上述した第1柱部材12をさらに含んでいてもよい。また、複数の第1再構築パーツ部材8Aの各々は、上述した第1斜部材13などの斜部材をさらに含んでいてもよい。複数の第1再構築パーツ部材8Aの各々は、建築物7Aを建築する際にその構成部材である第1水平梁部材11や第1柱部材12を切断することで、第1水平梁部材11の長さや第1柱部材12の高さが所望の寸法に調整されていてもよい。また、複数の第1再構築パーツ部材8Aの各々は、一対の第1水平梁部材11の先端部111、111同士がオーバラップする長さを調整することで、第1再構築パーツ部材8Aの長さが所望の長さに調整されていてもよい。
【0075】
建築物7Bは、複数の第2再構築パーツ部材8Bを備える。複数の第2再構築パーツ部材8Bの各々は、互いの先端部(一端部)211、211同士を突き合わせた状態で接続された一対の上述した第2水平梁部材21を含む。一対の第2水平梁部材21は、ボルト締結などの公知の締結手段により互いの先端部211、211同士が着脱可能に締結されていてもよいし、着脱不能に接続されていてもよい。また、一対の第2水平梁部材21は、互いの先端部211、211同士がオーバラップ(重複)するように配置されていてもよい。
【0076】
複数の第2再構築パーツ部材8Bの各々は、一対の第2水平梁部材21の夫々の基端部を夫々が支持する一対の上述した第2柱部材22をさらに含んでいてもよい。また、複数の第2再構築パーツ部材8Bの各々は、第2水平梁部材21と、該第2水平梁部材21を支持する第2柱部材22とを接続する少なくとも1つの斜部材23をさらに含んでいてもよい。複数の第2再構築パーツ部材8Bの各々は、建築物7Bを建築する際にその構成部材である第2水平梁部材21や第2柱部材22を切断することで、第2水平梁部材21の長さや第2柱部材22の高さが所望の寸法に調整されていてもよい。また、複数の第2再構築パーツ部材8Bの各々は、一対の第2水平梁部材21の先端部211、211同士がオーバラップする長さを調整することで、第2再構築パーツ部材8Bの長さが所望の長さに調整されていてもよい。
【0077】
建築物7Cは、複数の第3再構築パーツ部材8Cを備える。複数の第3再構築パーツ部材8Cの各々は、互いの先端部(一端部)311、311同士を突き合わせた状態で接続された一対の上述した第3水平梁部材31を含む。一対の第3水平梁部材31は、ボルト締結などの公知の締結手段により互いの先端部311、311同士が着脱可能に締結されていてもよいし、着脱不能に接続されていてもよい。また、一対の第3水平梁部材31は、互いの先端部311、311同士がオーバラップ(重複)するように配置されていてもよい。
【0078】
複数の第3再構築パーツ部材8Cの各々は、一対の第3水平梁部材31の夫々の基端部を夫々が支持する一対の上述した第3柱部材32をさらに含んでいてもよい。また、複数の第3再構築パーツ部材8Cの各々は、第3水平梁部材31と、該第3水平梁部材31を支持する第3柱部材32とを接続する少なくとも1つの斜部材33をさらに含んでいてもよい。複数の第3再構築パーツ部材8Cの各々は、建築物7Cを建築する際にその構成部材である第3水平梁部材31や第3柱部材32を切断することで、第3水平梁部材31の長さや第3柱部材32の高さが所望の寸法に調整されていてもよい。また、複数の第3再構築パーツ部材8Cの各々は、一対の第3水平梁部材31の先端部311、311同士がオーバラップする長さを調整することで、第3再構築パーツ部材8Cの長さが所望の長さに調整されていてもよい。
【0079】
複数の再構築パーツ部材8は、再構築パーツ部材8の水平方向における延在方向である第1方向とは直交する第2方向に沿って夫々が間隔をあけて配置されている。建築物7(7A~7C)は、第2方向に沿って延在して第2方向において互いに隣接する一対の再構築パーツ部材8、8同士を接続する少なくとも1つの接続梁部材9と、を備える。少なくとも1つの接続梁部材9は、その両端部の夫々がボルト締結などの公知の締結手段により一対の再構築パーツ部材8、8の夫々に着脱可能に締結されていてもよいし、着脱不能に接続されていてもよい。少なくとも1つの接続梁部材9は、建築物7A~7Cを建築する際に切断された水平梁部材11、21、31や柱部材12、22、32などの端材を再利用したものでもよい。
【0080】
上記の構成によれば、建築物1の構成部材である梁部材11、21、31の何れかを含む再構築パーツ部材8と、接続梁部材9を組み合わせることで、建築物1の構成部材(梁部材など)を再利用した新たな建築物7(7A~7C)を構築できる。
【0081】
幾つかの実施形態では、
図10Dに示されるように、建築物7(7D)は、その平面形状に上述した建築物1の平面形状の一部を有する。具体的には、建築物7(7D)は、第1円弧10Aの中心C1に対して放射状に配置された複数の第1水平梁部材11と、複数の第1水平梁部材11の内、少なくとも1つの第1水平梁部材11に先端部111、211同士が接続された少なくとも1つの第2水平梁部材21と、複数の第1水平梁部材11の内、少なくとも1つの第1水平梁部材11に先端部111、311同士が接続された少なくとも1つの第3水平梁部材31と、を少なくとも備える。
【0082】
建築物7(7D)は、複数の第1水平梁部材11を個別に支持する複数の第1柱部材12と、少なくとも1つの第2水平梁部材21を個別に支持する少なくとも1つの第2柱部材22と、少なくとも1つの第3水平梁部材31を個別に支持する少なくとも1つの第3柱部材32と、をさらに備えていてもよい。
【0083】
建築物7(7D)は、建築物7(7D)を建築する際にその構成部材である水平梁部材11、21、31や柱部材12、22、32を切断することで、水平梁部材11、21、31の長さや柱部材12、22、32の高さが所望の寸法に調整されていてもよい。
【0084】
なお、上述した幾つかの実施形態では、上述した建築物1、7(7A~7D)は、構成部材である梁部材4(11、21、31)や柱部材5(12、22、32)、斜部材(13、23、33)が集成材などの木材からなる木造建築物を例に挙げて説明したが、本開示は、木造建築物以外の建築物にも適用可能である。例えば、建築物1、7(7A~7D)は、木造、S造、RC、SRC、CFT、RCS、又はこれらの構造を組合わせた混合構造等を含んでもよい。また、建築物1、7(7A~7D)の構成部材である梁部材4(11、21、31)や柱部材5(12、22、32)、斜部材(13、23、33)に鉄製や鋼製の部材を用いてもよい。
【0085】
本開示は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0086】
上述した幾つかの実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握されるものである。
【0087】
1)本開示の少なくとも一実施形態にかかる建築物(1)の平面形状決定方法(2)は、
建築物の平面形状決定方法であって、
第1半径を有する複数の第1円弧(10A)、
前記複数の第1円弧(10A)の内の少なくとも1つと接する第2円弧(20A)であって、前記第1半径よりも小さい第2半径を有する複数の第2円弧(20A)、及び
前記複数の第1円弧(10A)の内の少なくとも1つ、および前記複数の第2円弧(20A)の内の少なくとも1つと接する第3円弧(30A)であって、前記第2半径よりも小さい第3半径を有する複数の第3円弧(30A)、
のそれぞれを所定の縮尺を有する平面(P)上に配置する円弧配置ステップ(S1)と、
前記複数の第1円弧(10A)の内の少なくとも1つの中心(C1)と前記複数の第2円弧(20A)の内の少なくとも1つの中心(C2)とを接続する直線である第1直線(SL1)、
前記複数の第1円弧(10A)の内の少なくとも1つの中心(C1)と前記複数の第3円弧(30A)の内の少なくとも1つの中心(C3)とを接続する直線である第2直線(SL2)、及び
前記複数の第2円弧(20A)の内の少なくとも1つの中心(C2)と前記複数の第3円弧(30A)の内の少なくとも1つの中心(C3)とを接続する直線である第3直線(SL3)、
の少なくとも1つの直線を組み合わせて前記建築物の平面形状の輪郭線(OL)を決定する平面形状決定ステップ(S2)と、を備える。
【0088】
上記1)の方法によれば、円弧配置ステップ(S1)および平面形状決定ステップ(S2)により、建築物の平面形状の輪郭線(OL)を容易かつ柔軟に決定できるため、建築物の平面形状を効率的に決定可能である。平面形状決定ステップ(S2)において決定される建築物の平面形状の輪郭線(OL)は、第1直線(SL1)、第2直線(SL2)又は第3直線(SL3)のうち、少なくとも1つの直線が組み合わされたものである。これらの直線(SL1、SL2、SL3)は、複数の円弧の中心(C1、C2、C3)間を接続する直線であるため、上記輪郭線(OL)を有する建築物(1)は、建築物(1)を構成する構成部材の種類を少なくすることができ、複雑な平面形状や多様な平面形状を計画することができる。
【0089】
また、上記1)の方法によれば、建築物(1)を構成する構成部材(梁部材4や柱部材5など)の種類を少なくすることができるため、建築物(1)を構成する構成部材の再利用が容易である。
【0090】
2)幾つかの実施形態では、上記1)に記載の建築物(1)の平面形状決定方法(2)であって、
前記円弧配置ステップ(S1)において、
前記複数の第1円弧(10A)の各々は、前記平面(P)上に互いに間隔をあけて配置され、
前記複数の第2円弧(20A)の内の少なくとも1つは、前記平面(P)上における前記複数の第1円弧(10A)の間に配置され、
前記複数の第3円弧(30A)の内の少なくとも1つは、前記平面(P)上における前記複数の第1円弧(10A)の間に配置される。
【0091】
上記2)の方法によれば、平面(P)上に複数の第1円弧(10A)を互いに間隔をあけて配置した後に、複数の第1円弧(10A)の間に第2円弧(20A)や第3円弧(30A)を配置できるため、円弧配置ステップ(S1)における複数の円弧の配置を効率的に決定可能である。
【0092】
3)幾つかの実施形態では、上記1)又は2)に記載の建築物(1)の平面形状決定方法(2)であって、
前記円弧配置ステップ(S1)において、
前記複数の第1円弧(10A)の各々は、前記平面(P)上に千鳥状に配置され、
前記複数の第2円弧(20A)の内の少なくとも2つは、前記複数の第1円弧(10A)の内の3つと接するように配置され、
前記複数の第3円弧(30A)の内の少なくとも1つは、前記少なくとも2つの第2円弧(20A)と接するように配置される。
【0093】
上記3)の方法によれば、平面(P)上に第1円弧(10A)を含む第1円(10)、第2円弧(20A)を含む第2円(20)および第3円弧(30A)を含む第3円(30)を敷き詰めることができるため、平面(P)上における隙間の総面積を小さなものにすることができる。なお、上記隙間とは、平面(P)上における全ての円(第1円10、第2円20および第3円30を含む)の範囲外を意味する。上記隙間の総面積を小さなものにすることで、建築物(1)を構成する構成部材(梁部材4、柱部材5)により、建築物(1)を強固に支持できる。
【0094】
4)幾つかの実施形態では、上記2)に記載の建築物(1)の平面形状決定方法(2)であって、
前記第1半径の長さをR1、
前記第2半径の長さをR2、
前記第3半径の長さをR3、とした場合に、下記式(1)および(2)を満たす。
(2√3-3)×0.95<R2/R1<(2√3-3)×1.05・・・(1)
(2-√3)×0.95<R3/R1<(2-√3)×1.05・・・(2)
【0095】
上記4)の方法によれば、平面(P)上において、第1円弧の中心(C1)、第2円弧の中心(C2)および第3円弧の中心(C3)のそれぞれを頂点とする複数の直角三角形(RT)が形成される。この場合には、平面(P)上において、第1円弧の中心(C1)、第2円弧の中心(C2)および第3円弧の中心(C3)のそれぞれを各座標軸(A1、A2、A3、A4、A5、A6)が通る3つの直交座標系が形成される。また、第1円弧の中心(C1)、第2円弧の中心(C2)および第3円弧の中心(C3)の夫々を原点とする3つの極座標系が形成される。輪郭線(OL)を有する建築物(1)は、その平面形状における各頂点が、上記3つの直交座標系の座標軸上又は座標軸に平行な直線(PL)上に位置し、且つ3つの極座標系の何れかの原点上に位置しているので、その平面形状が設計や製造が容易な幾何学形状を有する。
【0096】
5)本開示の少なくとも一実施形態にかかる建築物(1)は、
上記1)から上記4)までの何れかに記載の建築物(1)の平面形状決定方法(2)により決定された前記平面形状を有する建築物(1)であって、
前記建築物(1)は、
水平方向に沿って延在する第1長さ(L1)を有する第1水平梁部材(11)であって、前記第1円弧(10A)の中心(C1)に対して放射状に配置された複数の第1水平梁部材(11)と、
前記水平方向に沿って延在する前記第1長さ(L1)よりも小さい第2長さ(L2)を有する第2水平梁部材(21)であって、前記第2円弧(20A)の中心(C2)に対して放射状に配置された複数の第2水平梁部材(21)と、
前記水平方向に沿って延在する前記第2長さ(L2)よりも小さい第3長さ(L3)を有する第3水平梁部材(31)であって、前記第3円弧(30A)の中心(C3)に対して放射状に配置された複数の第3水平梁部材(31)と、
を備える。
【0097】
上記5)の構成によれば、各々の長さが異なる3種類の梁部材(11、21、31)の内、2つの梁部材を接続することで、複数の円弧の中心間を接続する梁が形成される。平面形状決定方法(2)により決定された平面形状を有する建築物(1)は、建築物(1)を構成する構成部材(梁部材4や柱部材5など)の種類を少なくすることができ、複雑な平面形状や多様な平面形状を有することが可能である。また、上記4)の構成によれば、建築物(1)を構成する構成部材(梁部材4や柱部材5など)の種類を少なくすることができるため、建築物(1)を構成する構成部材(特に梁部材)の再利用が容易である。
【0098】
6)本開示の少なくとも一実施形態にかかる建築物(7)は、
上記5)に記載の建築物(1)を構成する構成部材の一部を構成部材として再構築された建築物(7)であって、
互いの一端部(111、111)同士を突き合わせた状態で接続された一対の前記第1水平梁部材(11)を夫々が含む複数の第1再構築パーツ部材(8A)、
互いの一端部(211、211)同士を突き合わせた状態で接続された一対の前記第2水平梁部材(21)を夫々が含む複数の第2再構築パーツ部材(8B)、又は
互いの一端部(311、311)同士を突き合わせた状態で接続された一対の前記第3水平梁部材(31)を夫々が含む複数の第3再構築パーツ部材(8C)、
の何れか一つからなる複数の再構築パーツ部材(8)であって、前記再構築パーツ部材(8)の水平方向における延在方向である第1方向とは直交する第2方向に沿って夫々が間隔をあけて配置された複数の再構築パーツ部材(8)と、
前記第2方向に沿って延在して前記第2方向において互いに隣接する一対の再構築パーツ部材(8、8)同士を接続する少なくとも1つの接続梁部材(9)と、を備える。
【0099】
上記6)の構成によれば、建築物(1)の構成部材である梁部材(11、21、31)の何れかを含む再構築パーツ部材(8)と、接続梁部材(9)を組み合わせることで、建築物(1)の梁部材などの構成部材を再利用した新たな建築物(7)を構築できる。
【符号の説明】
【0100】
1,7,7A~7D 建築物
2 平面形状決定方法
3 骨組構造決定方法
4 梁部材
5 柱部材
8 再構築パーツ部材
8A 第1再構築パーツ部材
8B 第2再構築パーツ部材
8C 第3再構築パーツ部材
9 接続梁部材
10 第1円
10A 第1円弧
11,11A,11B 第1水平梁部材
12,12A,12B 第1柱部材
13 第1斜部材
20 第2円
20A,20B,20C 第2円弧
21,21A,21B 第2水平梁部材
22,22A,22B 第2柱部材
23 第2斜部材
30 第3円
30A,30B 第3円弧
31,31A,31B 第3水平梁部材
32,32A,32B 第3柱部材
33 第3斜部材
111,211,311 先端部
C1 第1円弧の中心
C2 第2円弧の中心
C3 第3円弧の中心
HP1 水平位置
IC 内心
L1 第1長さ
L2 第2長さ
L3 第3長さ
OL 輪郭線
P 平面
R1 第1半径の長さ
R2 第2半径の長さ
R3 第3半径の長さ
RT,RT1,RT2 直角三角形
S 辺
S1 円弧配置ステップ
S2 平面形状決定ステップ
S3 骨組構造決定ステップ
S4 梁構造決定ステップ
S5 柱構造決定ステップ
S6 補剛構造決定ステップ
SL1 第1直線
SL2 第2直線
SL3 第3直線
SL4 第4直線
SL5 第5直線
SL6 第6直線
T1 三角形
V 頂点
VP1 高さ位置