(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023075843
(43)【公開日】2023-05-31
(54)【発明の名称】画像投影装置
(51)【国際特許分類】
G02B 27/01 20060101AFI20230524BHJP
【FI】
G02B27/01
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021189004
(22)【出願日】2021-11-19
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001667
【氏名又は名称】弁理士法人プロウィン
(72)【発明者】
【氏名】豊嶋 隆延
(72)【発明者】
【氏名】村上 一臣
【テーマコード(参考)】
2H199
【Fターム(参考)】
2H199DA03
2H199DA13
2H199DA14
2H199DA15
2H199DA19
2H199DA20
2H199DA42
2H199DA48
(57)【要約】
【課題】投影される画像の品質を維持しながら、外光による画像照射部の温度上昇を効果的に抑制することが可能な画像投影装置を提供する。
【解決手段】画像を照射する画像照射部(10)と、画像照射部(10)からの照射光を表面で反射するとともに裏面からの光を透過する反射透過部(60)と、所定の偏光面における光の透過率が入射角度に依存して変化する角度依存光透過部(40)とを備え、角度依存光透過部(40)は画像照射部(10)から反射透過部(60)までの前記照射光の光路上に配置されている画像投影装置。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を照射する画像照射部と、
前記画像照射部からの照射光を表面で反射するとともに裏面からの光を透過する反射透過部と、
所定の偏光面における光の透過率が入射角度に依存して変化する角度依存光透過部とを備え、
前記角度依存光透過部は、前記画像照射部から前記反射透過部までの前記照射光の光路上に配置されていることを特徴とする画像投影装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像投影装置であって、
前記角度依存光透過部の前記光路に対する角度を変更する角度変更部を備えることを特徴とする画像投影装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の画像投影装置であって、
前記角度依存光透過部は、少なくとも一軸方向に曲げられて保持されていることを特徴とする画像投影装置。
【請求項4】
請求項3に記載の画像投影装置であって、
前記角度依存光透過部は、曲率半径が10mm~1000mmの範囲であることを特徴とする画像投影装置。
【請求項5】
請求項1から4の何れか一つに記載の画像投影装置であって、
透過軸方向の偏光を透過し、前記透過軸方向に直交する偏光を遮断する偏光選択部を備え、
前記偏光選択部は、前記角度依存光透過部から前記反射透過部までの前記光路上に配置されていることを特徴とする画像投影装置。
【請求項6】
請求項5に記載の画像投影装置であって、
前記偏光選択部の前記透過軸方向は、前記所定の偏光面に対応していることを特徴とする画像投影装置。
【請求項7】
請求項1から6の何れか一つに記載の画像投影装置であって、
前記画像照射部から前記反射透過部までの前記光路上に配置され、前記画像照射部からの光を中間結像位置に結像する中間結像光学部を備えることを特徴とする画像投影装置。
【請求項8】
請求項7に記載の画像投影装置であって、
前記角度依存光透過部は、前記中間結像位置よりも前記照射光の前記光路において前記反射透過部に近い位置に配置されていることを特徴とする画像投影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像投影装置に関し、特に画像照射部からの照射光を反射して視点に到達させる画像投影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両内に各種情報を表示する装置として、アイコンを点灯表示する計器盤が用いられている。また、表示する情報量の増加とともに、計器盤に画像表示装置を埋め込むことや、計器盤全体を画像表示装置で構成することも提案されている。
【0003】
しかし、計器盤は車両のフロントガラス(ウィンドシールド)より下方に位置しているため、計器盤に表示された情報を運転者が視認するには、運転中に視線を下方に移動させる必要があり好ましくない。そこで、フロントガラスに画像を投影して、運転者が車両の前方を視認したときに情報を読み取れるようにするヘッドアップディスプレイ(以下HUD:Head Up Display)のような画像投影装置が提案されている。
【0004】
図7は、従来の画像投影装置の構成を示す模式図である。
図7に示したように従来の画像投影装置は、画像照射部1と、自由曲面ミラー2,3とを備えている。このような画像投影装置では、画像照射部1が画像を含んだ照射光Lを照射し、自由曲面ミラー2,3で照射光Lを反射させて、ウィンドシールドを介して空間中に画像が結像するように運転者等の視点位置に到達させる。これにより、運転者等は視点に入射した照射光Lによって、奥行き方向における結像位置に画像が表示されているように認識することができる。
【0005】
しかし
図7に示した画像投影装置では、外部から太陽光などが外光Lsとして入射してきた場合に、画像照射部1の表面上に自由曲面ミラー2,3で外光が集光されてしまい、画像照射部1の温度が上昇して劣化する可能性があった。そこで、複数の自由曲面ミラー2,3の間で照射光Lを中間結像させて、中間結像位置の近傍に遮蔽部や赤外光カットフィルターを配置し、外部から画像照射部に到達する外光Lsの影響を低減するものも提案されている。(例えば、特許文献1を参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2017/195740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載された遮光部を用いる構造では、照射光の光路を確保するための空間から外光が画像照射部まで到達することは避けられず、外光の入射を制限するには限界があった。
【0008】
そこで本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであり、投影される画像の品質を維持しながら、外光による画像照射部の温度上昇を効果的に抑制することが可能な画像投影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の画像投影装置は、画像を照射する画像照射部と、前記画像照射部からの照射光を表面で反射するとともに裏面からの光を透過する反射透過部と、所定の偏光面における光の透過率が入射角度に依存して変化する角度依存光透過部とを備え、前記角度依存光透過部は、前記画像照射部から前記反射透過部までの前記照射光の光路上に配置されていることを特徴とする。
【0010】
このような本発明の画像投影装置では、角度依存光透過部で外光をカットしながらも画像照射部からの光(照射光)は透過できるため、投影される画像の品質を維持しながら、外光による画像照射部の温度上昇を効果的に抑制することが可能な画像投影装置を提供することができる。
【0011】
また、本発明の一態様では、前記角度依存光透過部の前記光路に対する角度を変更する角度変更部を備える。
【0012】
また、本発明の一態様では、前記角度依存光透過部は、少なくとも一軸方向に曲げられて保持されている。
【0013】
また、本発明の一態様では、前記角度依存光透過部は、曲率半径が10mm~1000mmの範囲である。
【0014】
また、本発明の一態様では、透過軸方向の偏光を透過し、前記透過軸方向に直交する偏光を遮断する偏光選択部を備え、前記偏光選択部は、前記角度依存光透過部から前記反射透過部までの前記光路上に配置されている。
【0015】
また、本発明の一態様では、前記偏光選択部の前記透過軸方向は、前記所定の偏光面に対応している。
【0016】
また、本発明の一態様では、前記画像照射部から前記反射透過部までの前記光路上に配置され、前記画像照射部からの光を中間結像位置に結像する中間結像光学部を備える。
【0017】
また、本発明の一態様では、前記角度依存光透過部は、前記中間結像位置よりも前記照射光の前記光路において前記反射透過部に近い位置に配置される。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、投影される画像の品質を維持しながら、外光による画像照射部の温度上昇を効果的に抑制することが可能な画像投影装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る画像投影装置100の構成を示す模式図である。
【
図2】画像投影装置100における各光学部材の位置関係を示す模式図であり、
図2(a)は側面図であり、
図2(b)は上面図である。
【
図3】画像投影装置100において画像照射部10から照射された照射光Lをライトコーンとして示す模式図であり、
図3(a)は上面図であり、
図3(b)は側面図である。
【
図4】角度依存光透過部40の入射角度と反射率の関係を示すグラフである。
【
図5】本発明の第2実施形態に係る画像投影装置110の構成を示す模式図である。
【
図6】本発明の第3実施形態に係る画像投影装置120の構成を示す模式図である。
【
図7】従来の画像投影装置の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付すものとし、適宜重複した説明は省略する。
図1は、本実施形態に係る画像投影装置100の構成を示す模式図である。
図2は、画像投影装置100における各光学部材の位置関係を示す模式図であり、
図2(a)は側面図であり、
図2(b)は上面図である。
図3は、画像投影装置100において画像照射部10から照射された照射光Lをライトコーンとして示す模式図であり、
図3(a)は上面図であり、
図3(b)は側面図である。
【0021】
図1から
図3に示すように画像投影装置100は、画像照射部10と、自由曲面ミラー20,30と、角度依存光透過部40と、偏光選択部50とを備えている。また
図1では太陽光などの外光Lsの代表的な光路を矢印で示している。また、
図3に示すように、画像投影装置100の外部には車両のウィンドシールド60が設けられており、運転者等は視点位置からウィンドシールド60を介して照射光Lによる画像を視認する。
【0022】
画像照射部10は、情報処理部(図示省略)から画像情報を含んだ信号が供給されることで画像情報を含んだ照射光を照射する装置である。画像照射部10から照射された照射光は自由曲面ミラー20に入射する。画像照射部10としては、液晶表示装置、有機EL表示装置、マイクロLED表示装置、DMD(Degital Micro-mirror Device)、レーザ光源を用いたプロジェクター装置等が挙げられる。
【0023】
自由曲面ミラー20は、画像照射部10から照射された照射光Lが入射し、角度依存光透過部40を介して自由曲面ミラー30方向に反射する鏡である。自由曲面ミラー20の反射面形状は、曲率が一定ではなく二次元的に変化する自由曲面で構成されている。
図1では自由曲面ミラー20の形状として凹面鏡を示しているが、
図2および
図3に示したように凸面鏡を用いるとしてもよく、平面鏡を用いるとしてもよい。
【0024】
自由曲面ミラー30は、自由曲面ミラー20で反射された照射光Lが入射し、偏光選択部50を介してウィンドシールド60方向に反射する凹面鏡である。自由曲面ミラー30の反射面形状は、曲率が一定ではなく二次元的に変化する自由曲面で構成されている。
図1では自由曲面ミラー30の形状として凹面鏡を示しているが、凸面鏡を用いるとしてもよく、平面鏡を用いるとしてもよい。
【0025】
角度依存光透過部40は、所定の偏光面(偏光方向)における光の透過率が入射角度に依存して変化する光学特性を有する光学部材である。また角度依存光透過部40は、自由曲面ミラー20と自由曲面ミラー30の間に配置されている。
図1から
図3では角度依存光透過部40を自由曲面ミラー20と自由曲面ミラー30の間に配置した例を示したが、角度依存光透過部40の位置は、画像照射部10からウィンドシールド(反射透過部)60までの光路上であり、画像照射部10から照射された照射光Lが角度依存光透過部40を透過した後にウィンドシールド60に到達するものであれば限定されない。角度依存光透過部40の構造や光学特性については、
図4等を用いて詳細を後述する。
【0026】
偏光選択部50は、透過軸方向の偏光を透過し、透過軸方向に直交する偏光を遮断する光学特性を有する光学部材であり、公知の偏光板または偏光フィルムを用いることができる。また偏光選択部50は、自由曲面ミラー30とウィンドシールド60の間に配置されている。
図1から
図3では偏光選択部50を自由曲面ミラー30とウィンドシールド60の間に配置した例を示したが、偏光選択部50の位置は、角度依存光透過部40からウィンドシールド60までの照射光Lの光路上であれば限定されない。また、偏光選択部50の透過軸は、ウィンドシールド60に対するS偏光を透過するように配置されている。偏光選択部50の透過軸方向は、角度依存光透過部40の曲げ方向に対応しており、ウィンドシールド60に対するS偏光に対応している。
図1では、角度依存光透過部40の曲げ方向に対応させた偏光のみを透過させるために、偏光選択部50を設けた例を示しているが、偏光選択部50を設けない構成としてもよい。
【0027】
ウィンドシールド60は、車両の運転席前方に設けられており、車両の内側面では自由曲面ミラー30から入射した照射光Lを視点の方向に対して反射し、車両の外部からの光を視点の方向に対して透過する反射透過部としての機能を有している。ここでは反射透過部としてウィンドシールド60を用いた例を示したが、ウィンドシールド60とは別に反射透過部としてコンバイナーを用意し、自由曲面ミラー30からの光を視点方向に反射するとしてもよい。また、車両の前方に位置するものに限定されず、搭乗者の視点に対して画像を投影するものであれば側方や後方に配置するとしてもよい。視点は、車両の運転者または搭乗者の目(アイボックス)であり、照射光がアイボックスに入射して網膜に光が到達することで、運転者または搭乗者は結像された虚像を視認する。
【0028】
虚像は、ウィンドシールド60で反射された照射光が運転者等の視点(アイボックス)に到達した際に、空間中に結像されたように表示される。虚像が結像される位置は、画像照射部10から照射された光が、自由曲面ミラー20,30およびウィンドシールド60で反射された後に視点方向に進行する際の拡がり角度によって決まる。このとき運転者または搭乗者は、ウィンドシールド60よりも遠方の結像位置に虚像が存在するように認識する。ここで、虚像の結像位置は、主として自由曲面ミラー20および自由曲面ミラー30の合成焦点距離に依存する。ウィンドシールド60が平坦面ではなく曲面形状であったとしても、曲率半径が自由曲面ミラー20および自由曲面ミラー30と比較して大きいため、ウィンドシールド60による光学的パワーの影響は無視できる程度である。
【0029】
図4は、角度依存光透過部40の入射角度と反射率の関係を示すグラフである。グラフの横軸は角度依存光透過部40の表面に垂直な方向を0度とし、0度から傾斜した角度を入射角度として示している。またグラフの縦軸は、角度依存光透過部40の0度方向と光の入射方向を含む面内方向での偏光(P偏光)の反射率を示している。
図4に示すように角度依存光透過部40は、入射角度が小さく垂直方向に近く入射した光に対しては反射率が小さく(透過率が大きく)、入射角度が増加するにしたがって反射率が増加し(透過率が低下し)、所定の入射角度以上では反射率が100%に近くなる光学特性を有している。
【0030】
図4に示したような光学特性を有する角度依存光透過部40としては、東レ株式会社製の積層フィルム(商品名「PICASUS(登録商標) VT」)や、特開2021-54061号公報等に記載された積層フィルムを用いることができる。
図4に示した例では入射角度が40度近辺で反射率が最大値の100%となる例を示しているが、最大値の反射率と最大値に到達する入射角度はこれに限定されない。
【0031】
また角度依存光透過部40は、
図1から
図3に示したように、略平板状のフィルム形状として構成されており、少なくとも一軸方向に曲げられて保持されている。ここで角度依存光透過部40の曲げ方向は、ウィンドシールド60に対するP偏光に対応している。また、
図4に示した角度依存光透過部40の光学特性は、角度依存光透過部40の曲げ方向における偏光(P偏光)に対してのものである。
【0032】
図1に示したように、太陽光などの外光Lsはウィンドシールド60の上方から入射してくるため、照射光Lが構成するライトコーンの範囲内においても、照射光Lの光路とは異なる角度で画像照射部10に向けて逆方向に進行する。また、偏光選択部50の透過軸方向は、角度依存光透過部40の曲げ方向に対応しており、偏光選択部50を透過した外光LsはP偏光のみとなり、角度依存光透過部40の光学特性の影響を受けることになる。このとき、角度依存光透過部40を曲げることで、角度依存光透過部40に対する外光Lsの入射角度を大きくすることができる。したがって、角度依存光透過部40に対する照射光Lの入射角度は外光Lsの入射角度よりも小さくなり、ウィンドシールド60に対するP偏光の方向に曲げられているため、照射光Lと外光Lsは
図4に示した反射率特性の反射率で反射(透過)される。
【0033】
したがって、角度依存光透過部40の曲率半径rと照射光Lの光路に対する傾斜角度を適切に設定することで、照射光Lに対する反射率は小さく、外光Lsに対する反射率は大きくすることができる。つまり、画像照射部10から照射された照射光Lは良好に角度依存光透過部40を透過して虚像の投影に用いながら、外光Lsは角度依存光透過部40を反射して画像照射部10に到達する光量を抑制することができる。これにより、外光Lsが画像照射部10に到達することによる温度上昇を抑制して劣化を防止することができる。
【0034】
図4では、黒塗りの棒グラフで示した入射角度15度前後の範囲に照射光Lが入射し、白抜きの棒グラフで示した入射角度35度程度に外光Lsが入射する例を示している。この例では、照射光Lの反射率は20%程度であり80%程度が透過する。また、外光Lsの反射率は80%程度であり20%程度しか透過しない。
図4に示した入射角度は一例であり、照射光Lの反射率が30%以下で、外光Lsの反射率が70%以上となるように設定することが好ましい。したがって、角度依存光透過部40の曲率半径を10mm~1000mmの範囲とすることが好ましい。
【0035】
角度依存光透過部40の曲率半径rが10mmよりも小さいと、角度依存光透過部40と空気の屈折率差によって、透過する照射光Lに生じる収差が大きくなり、投影される画像の質が低下する可能性もあり好ましくない。また、曲率半径rが小さすぎると、画像投影装置100で投影できる画像サイズが小さくなり、画像サイズを大きくするためには筐体サイズを大型化する必要があるため好ましくない。また、角度依存光透過部40の曲率半径が1000mmよりも大きいと、照射光Lと外光Lsの入射角度に差を生じさせることが困難となり、装置の小型化も困難になる。したがって、曲率半径rを10mm~1000mmの範囲とすることで、角度依存光透過部40に対する照射光Lと外光Lsの入射角度に20~30度程度の差を設けて、反射率の差を確保することができる。
【0036】
自由曲面ミラー30で反射されてウィンドシールド60に向かう照射光Lは平行光に近くなるので、自由曲面ミラー30を楕円形状に近似して考える。
図1に示したように、外光Lsは自由曲面ミラー30の端部領域に入射し、中央領域で反射される照射光Lの光路とは数度(一例として2.5度)の差が生じる。このような数度の光路差を上述したように20~30度程度の入射角度の差まで拡大するためには、自由曲面ミラー30を構成する曲面のうち曲率半径が最大となる値をRとすると、R≧rとすることが好ましい。
【0037】
また、角度依存光透過部40の好ましい光学特性としては、P波またはS波の入射角度が20度、40度、70度における反射率をそれぞれR20,R40,R70とすると、R20< R40<R70であり、R70が30%以上である。入射角度と反射率の関係がこれらの条件を満たすことで、良好に照射光Lを透過し外光Lsを反射することができる。
【0038】
また、角度依存光透過部40の彩度は20以下であることが好ましい。彩度がこの条件を満たすことで、照射光Lの色彩を悪化させず、投影される虚像の品質劣化を抑制することができる。
【0039】
また、入射角70度で入射したときの可視光範囲(450~650nm)における反射率の最大値と最小値の差は40%未満であることが好ましい。可視光範囲での反射率差がこれらの条件を満たすことで、太陽光などの外光Lsに含まれる広い波長範囲に対する反射率を高くして、画像照射部10まで到達する外光Lsの光量を低減し、温度上昇を抑制することができる。
【0040】
本実施形態の画像投影装置100では、画像照射部10から照射された照射光Lは、自由曲面ミラー20、角度依存光透過部40、自由曲面ミラー30、偏光選択部50およびウィンドシールド60を経由して視点に到達する。これにより運転者または搭乗者は、ウィンドシールド60を介した背景と、画像投影装置100から投影された画像の虚像が重ねあわされた状態で視認することができる。また、外光Lsは偏光選択部50でP偏光のみが透過され、自由曲面ミラー30で反射されて角度依存光透過部40まで到達する。上述したように、角度依存光透過部40では外光Lsの入射角度における反射率が高いため、角度依存光透過部40を透過して画像照射部10まで到達する外光Lsの強度は低下する。これにより、画像照射部10の温度上昇による劣化を抑制することができる。
【0041】
上述したように、本実施形態の画像投影装置100では、角度依存光透過部40で外光Lsをカットしながらも画像照射部10からの照射光Lは透過できるため、投影される画像の品質を維持しながら、外光Lsによる画像照射部10の温度上昇を効果的に抑制することができる。
【0042】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について
図5を用いて説明する。第1実施形態と重複する内容は説明を省略する。
図5は、本実施形態に係る画像投影装置110の構成を示す模式図である。
図5に示すように、画像投影装置110は画像照射部10と、自由曲面ミラー20,30と、角度依存光透過部40と、偏光選択部50とを備えている。
【0043】
第1実施形態とは異なり、自由曲面ミラー20で反射された照射光Lは、自由曲面ミラー30との間である所定の中間結像位置41に集光され、中間結像位置41で結像された後に自由曲面ミラー30に到達する。したがって、本実施形態における自由曲面ミラー20は本発明における中間結像光学部に相当している。また角度依存光透過部40は、自由曲面ミラー20と自由曲面ミラー30の間において、中間結像位置41よりも照射光Lの光路上におけるウィンドシールド60に近い位置に配置されている。したがって、照射光Lは中間結像位置41に集光された後に光径を拡大しながら角度依存光透過部40を透過する。
【0044】
本実施形態の画像投影装置110でも、角度依存光透過部40で外光Lsをカットしながらも画像照射部10からの照射光Lは透過できるため、投影される画像の品質を維持しながら、外光Lsによる画像照射部10の温度上昇を効果的に抑制することができる。また、照射光Lが中間結像位置41に集光され、角度依存光透過部40が中間結像位置41に配置されているため、角度依存光透過部40の面積を小さくして装置の小型化と軽量化を図ることができる。
【0045】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について
図6を用いて説明する。第1実施形態と重複する内容は説明を省略する。
図6は、本実施形態に係る画像投影装置120の構成を示す模式図である。
図6に示すように、画像投影装置120は画像照射部10と、自由曲面ミラー20,30と、角度依存光透過部40と、偏光選択部50とを備えている。第1実施形態とは異なり、角度依存光透過部40は画像照射部10と自由曲面ミラー20の間に配置されている。
【0046】
本実施形態の画像投影装置120でも、角度依存光透過部40が配置されていることで照射光Lを良好に透過して画像を投影しつつ、外光Lsをカットして画像照射部10の温度上昇を抑制することができる。また、角度依存光透過部40を画像照射部10に近い位置に設けることで、角度依存光透過部40の面積を必要最低限にして省スペース化を図ることができる。また、自由曲面ミラー20と自由曲面ミラー30の間に照射光Lの光路を十分に確保でき、設計の自由度を向上させることができる。
【0047】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について説明する。第1実施形態から第3実施形態では、照射光Lの光路に対する角度依存光透過部40の角度が固定された例を示しているが、角度依存光透過部40の角度を機械的に変更する角度変更部を備えるとしてもよい。角度変更部の具体的な構成は限定されないが、角度依存光透過部40の外周を保持具で保持し、別途設けた動力源を用いて保持具の位置を変更する構成等が挙げられる。
【0048】
また、第1実施形態から第3実施形態では、自由曲面ミラー20,30で構成される投影光学系によって、照射光Lをウィンドシールド60よりも画像照射部10側で結像させて、ウィンドシールド60よりも遠方に虚像を投影する例を示した。しかし、投影される画像の結像位置は限定されず、自由曲面ミラー20,30で構成される投影光学系によって、照射光Lをウィンドシールド60と視点の間に結像させて、ウィンドシールド60よりも視点に近い側に実像を投影するとしてもよい。
【0049】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0050】
100,110,120…画像投影装置
10…画像照射部
20,30…自由曲面ミラー
40…角度依存光透過部
41…中間結像位置
50…偏光選択部
60…ウィンドシールド