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特開2023-75847情報処理装置、予測モデル生成方法、情報処理方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023075847
(43)【公開日】2023-05-31
(54)【発明の名称】情報処理装置、予測モデル生成方法、情報処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/04 20230101AFI20230524BHJP
【FI】
G06Q10/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021189010
(22)【出願日】2021-11-19
(71)【出願人】
【識別番号】507214083
【氏名又は名称】メタウォーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100150360
【弁理士】
【氏名又は名称】寺嶋 勇太
(74)【代理人】
【識別番号】100180655
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 勝
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049AA04
(57)【要約】
【課題】設備の劣化の状態を高精度に予測する情報処理装置、予測モデル生成方法、情報処理方法及びプログラムが提供される。
【解決手段】情報処理装置(10)は、プラントに含まれる複数の設備のうちの予測対象とされた設備に対応する、複数の設備に応じた複数の予測モデルから選択された予測モデルを用いて、予測対象とされた設備の劣化状態を予測する劣化状態予測手段(16)、を備える。複数の予測モデルは、複数の設備の種類及び設置場所の少なくとも1つに応じたものであってよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラントに含まれる複数の設備のうちの予測対象とされた設備に対応する、前記複数の設備に応じた複数の予測モデルから選択された予測モデルを用いて、前記予測対象とされた設備の劣化状態を予測する劣化状態予測手段、を備える、情報処理装置。
【請求項2】
前記複数の予測モデルは、前記複数の設備の種類及び設置場所の少なくとも1つに応じたものであって、
前記設置場所は、具体的な場所及び場所の種別の少なくとも1つを含む、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の情報処理装置の前記劣化状態予測手段で用いられる前記複数の予測モデルを、他のプラントの設備の実績データが有する指標を説明変数とし、前記他のプラントの設備の劣化状態を目的変数とする学習用データを用いて、機械学習によって生成する予測モデル生成手段、を備える、情報処理装置。
【請求項4】
情報処理装置が実行する予測モデル生成方法であって、
請求項1又は2に記載の情報処理装置の前記劣化状態予測手段で用いられる前記複数の予測モデルを、他のプラントの設備の実績データが有する指標を説明変数とし、前記他のプラントの設備の劣化状態を目的変数とする学習用データを用いて、機械学習によって生成する工程、を含む、予測モデル生成方法。
【請求項5】
情報処理装置を、
請求項1又は2に記載の情報処理装置の前記劣化状態予測手段で用いられる前記複数の予測モデルを、他のプラントの設備の実績データが有する指標を説明変数とし、前記他のプラントの設備の劣化状態を目的変数とする学習用データを用いて、機械学習によって生成する予測モデル生成手段、として機能させる、プログラム。
【請求項6】
情報処理装置が実行する情報処理方法であって、
プラントに含まれる複数の設備のうちの予測対象とされた設備に対応する、前記複数の設備に応じた複数の予測モデルから選択された予測モデルを用いて、前記予測対象とされた設備の劣化状態を予測する工程、を含む、情報処理方法。
【請求項7】
情報処理装置を、
プラントに含まれる複数の設備のうちの予測対象とされた設備に対応する、前記複数の設備に応じた複数の予測モデルから選択された予測モデルを用いて、前記予測対象とされた設備の劣化状態を予測する劣化状態予測手段、として機能させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理装置、予測モデル生成方法、情報処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば上下水道施設などのプラントに含まれる複数の設備を維持管理する技術が知られている。設備を維持管理する技術の1つとして、設備の更新計画の立案を支援するシステムが提案されている。例えば特許文献1は、プラント単位で設備のリスク情報を表示できるシステムを開示する。また、例えば特許文献2は、設備保全コストが特定の年度に集中する状態を回避するシステムを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-173575号公報
【特許文献2】特開2014-016691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、設備の劣化状態が高精度に推定されることによって設備の更新計画を正確に立案することが可能になる。しかし、特許文献1の技術は、登録されている過去又は現在の設備の劣化状態を表示できるが、設備の劣化状態を推定するものでない。特許文献2の技術は、理論的な劣化式又は統計的劣化モデルを用いるが、設備の重要度から勘案されるリスクに基づいて劣化曲線をシフトさせる処理を行うものであって、劣化曲線の正確さを重視するものでない。
【0005】
かかる事情に鑑みてなされた本開示の目的は、設備の劣化の状態を高精度に予測する情報処理装置、予測モデル生成方法、情報処理方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施形態に係る情報処理装置は、
プラントに含まれる複数の設備のうちの予測対象とされた設備に対応する、前記複数の設備に応じた複数の予測モデルから選択された予測モデルを用いて、前記予測対象とされた設備の劣化状態を予測する劣化状態予測手段、を備える。
【0007】
本開示の一実施形態に係る情報処理装置は、
上記の情報処理装置の前記劣化状態予測手段で用いられる前記複数の予測モデルを、他のプラントの設備の実績データが有する指標を説明変数とし、前記他のプラントの設備の劣化状態を目的変数とする学習用データを用いて、機械学習によって生成する予測モデル生成手段、を備える。
【0008】
本開示の一実施形態に係る予測モデル生成方法は、
情報処理装置が実行する予測モデル生成方法であって、
上記の情報処理装置の前記劣化状態予測手段で用いられる前記複数の予測モデルを、他のプラントの設備の実績データが有する指標を説明変数とし、前記他のプラントの設備の劣化状態を目的変数とする学習用データを用いて、機械学習によって生成する工程、を含む。
【0009】
本開示の一実施形態に係るプログラムは、
情報処理装置を、
上記の情報処理装置の前記劣化状態予測手段で用いられる前記複数の予測モデルを、他のプラントの設備の実績データが有する指標を説明変数とし、前記他のプラントの設備の劣化状態を目的変数とする学習用データを用いて、機械学習によって生成する予測モデル生成手段、として機能させる。
【0010】
本開示の一実施形態に係る情報処理方法は、
情報処理装置が実行する情報処理方法であって、
プラントに含まれる複数の設備のうちの予測対象とされた設備に対応する、前記複数の設備に応じた複数の予測モデルから選択された予測モデルを用いて、前記予測対象とされた設備の劣化状態を予測する工程、を含む。
【0011】
本開示の一実施形態に係るプログラムは、
情報処理装置を、
プラントに含まれる複数の設備のうちの予測対象とされた設備に対応する、前記複数の設備に応じた複数の予測モデルから選択された予測モデルを用いて、前記予測対象とされた設備の劣化状態を予測する劣化状態予測手段、として機能させる。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、設備の劣化の状態を高精度に予測する情報処理装置、予測モデル生成方法、情報処理方法及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本開示の一実施形態に係る情報処理装置の構成例を示す図である。
図2図2は、予測モデルの生成を説明するための図である。
図3図3は、設備マップを例示する図である。
図4図4は、更新の緊急度合いを示す画像を例示する図である。
図5図5は、複数のシナリオの画像を例示する図である。
図6図6は、更新コストの画像を例示する図である。
図7図7は、ライフサイクルコストの比較画像を例示する図である。
図8図8は、本開示の一実施形態に係る情報処理方法の処理の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本開示の実施形態に係る情報処理装置、予測モデル生成方法、情報処理方法及びプログラムが説明される。
【0015】
図1は、本実施形態に係る情報処理装置10の構成例を示す図である。情報処理装置10は、プラントに含まれる複数の設備の更新計画の作成を支援するための情報処理を実行する装置である。本実施形態において、プラントは上下水道施設であるが、これに限定されず、例えば工業製品の製造工場などであってよい。プラントに含まれる設備は、例えばポンプ、バルブ、反応タンクの散気装置、流量計などであってよいが、これらに限定されない。また、プラントに含まれる設備は、機械設備又は電気設備に限られず、土木・建築・建築設備などを含む。情報処理装置10は、ハードウェア構成として、例えばパーソナルコンピュータである。ここで、情報処理装置10は、複数のハードウェアで構成されてよく、情報処理システムと称されてよい。
【0016】
まず、情報処理装置10が作成を支援する更新計画で用いられる劣化度について説明する。劣化度は、各設備の劣化度合いを示し、設備の状態、設置からの経過年数などによって変動する定量化された評価値である。劣化度は、例えば健全度又は評価点などであってよい。劣化度は、時間の経過とともに、所定の計算式に従って又はユーザが設定した低下度合いに応じて、値が小さくなるように又は大きくなるように変化する。劣化度の経年変化は、後述する劣化状態予測手段16によって算出可能であり、複数の設備のそれぞれと対応するように管理されて、記憶部12に記憶され得る。
【0017】
劣化度は、一例として複数の設備の健全性を示す健全度であってよい。健全度は、時間の経過とともに、値が小さくなるように変化する。本実施形態において健全度は「1」から「5」で示される。健全度の「5」は、設備が健全な状態であり問題がない状態を示す。健全度の「4」は、劣化が現れ始めた状態を示す。健全度の「3」は、劣化が進行している状態を示す。健全度の「2」は、機能停止があり得るため設備の更新が必要な状態を示す。健全度の「1」は、機能停止の状態を示す。健全度は、設備が更新されると「5」に戻る。
【0018】
一方、評価点は、主に水道アセットマネジメントで用いる指標であり、物理的評価、機能的評価、経済的評価、社会的評価、耐震性評価及び耐用寿命評価を総合的に評価し、0~100点で定量的に評価した値である。評価点は、点数が低いほど、劣化が進行していることを示す。
【0019】
上記の健全度の「5」、「4」、「3」、「2」、「1」を、例えば、それぞれ評価点の「80点以上100点以下」、「60点以上80点未満」、「40点以上60点未満」、「20点以上40点未満」、「0点以上20点未満」に対応させることができる。以下において、劣化度が健全度であるとして実施形態を説明する。
【0020】
情報処理装置10は、以下のようなハードウェア構成を有する。情報処理装置10は、通信部11と、記憶部12と、制御部13と、入力部20と、表示部21と、を備える。
【0021】
通信部11は、入力部20及び表示部21と通信する通信インターフェースを含む。入力部20及び表示部21と通信する通信インターフェースは、例えばUSB及びHDMI(登録商標)などであってよい。
【0022】
通信部11は、インターネット等のネットワークに接続する通信インターフェースを含んでよい。インターネット等に接続する通信インターフェースは、例えば有線又は無線のLAN及びルーターなどを含んでよい。情報処理装置10は、例えばネットワーク経由で、他のプラントの設備の劣化度に関する指標、測定値及び実際の劣化状態などを取得してよい。ここで、他のプラントは、情報処理装置10が更新計画を作成する対象のプラントと異なるプラントを意味する。
【0023】
記憶部12は、1つ以上のメモリである。メモリは、例えば半導体メモリ、磁気メモリ、又は光メモリなどであるが、これらに限られず任意のメモリとすることができる。記憶部12は、例えば情報処理装置10に内蔵されるが、任意のインターフェースを介して情報処理装置10に外部から接続される構成も可能である。
【0024】
制御部13は、1つ以上のプロセッサである。プロセッサは、例えば汎用のプロセッサ又は特定の処理に特化した専用プロセッサであるが、これらに限られず任意のプロセッサとすることができる。制御部13は、情報処理装置10の全体の動作を制御する。
【0025】
情報処理装置10は、以下のようなソフトウェア構成を有する。情報処理装置10の動作の制御に用いられる1つ以上のプログラムが記憶部12に記憶される。記憶部12に記憶されたプログラムは、制御部13によって読み込まれると、制御部13を取得手段14、予測モデル生成手段15、劣化状態予測手段16、画像生成手段17及び出力手段18として機能させる。記憶部12に記憶されたプログラムは、ユーザが入力部20を用いて制御部13に対して処理開始を指示した場合に、制御部13によって読み込まれてよい。
【0026】
各手段の概要は次のとおりである。予測モデル生成手段15は、学習用データを用いて機械学習によって設備の劣化度を予測するための予測モデルを生成する。学習用データは、他のプラントの設備の劣化度に関する指標、測定値及び実際の劣化状態を含んで構成され得る。予測モデル生成手段15は、学習用データ及び予測モデルを記憶部12に記憶させて管理する。詳細について後述するが、予測モデル生成手段15は、プラントに含まれる複数の設備に応じた複数の予測モデルを生成して、記憶部12に記憶させる。
【0027】
劣化状態予測手段16は、プラントに含まれる複数の設備のうちの予測対象とされた設備に対応する予測モデルを、記憶部12に記憶された複数の予測モデルから選択する。劣化状態予測手段16は、選択した予測モデルを用いて、予測対象とされた設備の劣化状態を予測する。劣化状態予測手段16は、設備単位又は部品単位で、設備の劣化状態を予測することができる。劣化状態予測手段16は、プラントに含まれる複数の設備について設備単位で予測を実行する第1モードの場合に、各設備についての更新の緊急度合いを比較して示すことができるように、各設備の劣化度の経年変化を予測する。また、劣化状態予測手段16は、特定の設備について部品単位で予測を実行する第2モードの場合に、特定の設備を構成する部品についての劣化度の変化を、複数のシナリオで予測する。劣化状態予測手段16は予測結果、すなわち予測した設備の劣化状態を記憶部12に記憶させて管理する。第1モードの予測内容と第2モードの予測内容との違いの詳細については後述する。
【0028】
また、劣化状態予測手段16は、プラントに含まれる複数の設備の名称、種類及び位置などの情報を管理する。劣化状態予測手段16は、プラントに含まれる各設備を構成する部品の情報を管理する。また、劣化状態予測手段16は、設備毎の更新にかかるコストの情報も管理してよい。劣化状態予測手段16は、設備の種類、位置、部品、更新コストなどの情報を、設備の名称によって紐づけたテーブルとして管理し、記憶部12に記憶させてよい。テーブルは例えばCSV(Comma-Separated Values)形式であってよい。
【0029】
画像生成手段17は、劣化度を複数の設備又は複数のシナリオについて比較可能なように視覚的に示す画像を生成する。ここで、「比較可能なように」とは、複数の設備の劣化度の変化又は複数のシナリオに従った特定の設備の劣化度の変化が対比される形で表示されることを意味する。本実施形態において、画像生成手段17によって生成される画像は、「更新の緊急度合いを示す画像211(図4参照)」及び「複数のシナリオの画像212(図5参照)」を含む。画像生成手段17は、第1モードの場合に劣化状態予測手段16によって記憶部12に記憶された予測結果を取得して、プラントに含まれる複数の設備の劣化度の経年変化を比較可能な更新の緊急度合いを示す画像211を生成する。また、画像生成手段17は、第2モードの場合に劣化状態予測手段16によって記憶部12に記憶された予測結果を取得して、複数のシナリオに従う特定の設備を構成する部品についての劣化度の変化を比較可能な複数のシナリオの画像212を生成する。
【0030】
取得手段14は、予測モデル生成手段15による予測モデルの生成、劣化状態予測手段16による設備の劣化状態の予測及び画像生成手段17による画像の生成に用いられるデータを記憶部12などから取得する手段である。取得手段14は、学習用データを記憶部12などから取得して、予測モデル生成手段15に出力してよい。取得手段14は、劣化状態予測手段16が選択した予測モデルを記憶部12から取得して、劣化状態予測手段16に出力してよい。取得手段14は、設備の種類、位置、部品、更新コストなどの情報を、記憶部12から取得して、劣化状態予測手段16に出力してよい。取得手段14は、劣化状態予測手段16の予測結果を記憶部12から取得して、画像生成手段17に出力してよい。また、取得手段14は、ユーザによる入力部20の操作などに基づいて、ユーザによって設定される劣化状態予測の時間範囲、ユーザによる第1モード又は第2モードの指定などを取得して、劣化状態予測手段16に出力してよい。
【0031】
出力手段18は、画像生成手段17によって生成された画像を表示部21に出力する。
【0032】
入力部20は、情報処理装置10に対するユーザの操作を受け付けるインターフェースである。入力部20は、ハードウェア構成として、例えばキーボード及びマウスなどであってよい。
【0033】
表示部21は、情報処理装置10からのユーザに対する情報を表示するためのインターフェースである。表示部21は、ハードウェア構成として、例えば液晶ディスプレイ又はOEL(Organic Electro-luminescence)ディスプレイなどのディスプレイであってよい。
【0034】
情報処理装置10は、プラントに含まれる複数の設備の更新計画の作成を支援するために用いられるが、この更新計画の作成において設備の劣化度が予測される。劣化度の予測とは、具体的には現在以降の劣化度を計算することである。設備の劣化度の予測には予測モデルが用いられる。劣化度の予測が行われる前に、予測モデルは機械学習によって生成されて、記憶部12に記憶される。
【0035】
図2は、予測モデルの生成を説明するための図である。予測モデル生成手段15は、取得手段14を介して、他のプラントの設備の劣化度に関する指標、測定値及び実際の劣化状態などを取得する。これらの指標などは、通信部11によって、定期的に又は任意のタイミングで受信されて、記憶部12に実績データとして記憶される。予測モデル生成手段15は、取得手段14によって記憶部12から読みだされた実績データを用いて、学習用データを生成して区分する。例えば実績データが有する指標は、図2に示すように、設備の種類、設置場所、経過年数、運転時間、稼働頻度、点検又は調査の状況、修繕又は更新の状況などを含んでよい。
【0036】
設備の種類は、例えばポンプ、バルブ、反応タンクの散気装置、流量計などの区分を示す指標である。設置場所は、設備が配置される場所を示す指標である。設置場所は、例えばA下水処理場、B排水処理施設などの具体的な場所を含んでよく、例えば屋内、屋外、腐食性ガス環境下にあるなどの場所の種別を含んでよい。経過年数は、設備が設置又は更新されてから経過した年数を示す指標である。運転時間は、設備が設置又は更新されてから運転した累積時間を示す指標である。稼働頻度は、例えば1日のうち12時間などの設備が稼働する頻度を示す指標である。点検又は調査の状況は、例えば1か月に一度に点検又は調査を行っているといった設備の検査状況を示す指標である。修繕又は更新の状況は、例えば1年前に一部の部品を修繕した、又は、3年前に更新すなわち新品への交換を行ったといった設備の新しさを示す指標である。これらの指標は設備の劣化度の変化に影響する。例えば、経過年数が長くなれば設備の劣化の状態が大きくなる。また、例えば運転時間が長い設備及び稼働頻度が大きい設備はそうでないものに比べて劣化しやすい。また、例えば点検及び修繕が頻繁であれば設備の劣化を遅らせることができる。
【0037】
ここで、予測モデル生成手段15は、実績データが有する指標の一部によって予測モデルを分けて、複数の予測モデルを生成する。本実施形態において、予測モデル生成手段15は、設備の種類及び設置場所に応じた複数の予測モデルを生成する。つまり、設備の種類及び設置場所の組み合わせ毎に異なる予測モデルが生成される。例えば同じ種類の設備であっても、屋内、屋外、腐食性ガス環境下にあるかといった設置場所によって、劣化度の経年変化が変動し得る。本実施形態において、予測モデル生成手段15は、設置場所によって異なる予測モデルを生成することによって、設備の劣化の状態を高精度に予測(計算)することが可能な予測モデルを用意できる。ここで、予測モデル生成手段15は、設備の種類及び設置場所の少なくとも1つに応じた複数の予測モデルを生成してよい。また、予測モデル生成手段15は、設備の種類及び設置場所にさらに他の指標を加えて、これらの指標の組み合わせ毎に異なる予測モデルを生成してよい。
【0038】
予測モデル生成手段15は、実績データが有する指標を説明変数とし、実際の設備の劣化状態を目的変数として学習用データを生成する。本実施形態において、目的変数は設備の健全度が用いられる。また、説明変数は上記に例示された指標の全てでなく、一部が用いられてよい。予測モデル生成手段15は、生成した学習用データを用いて、機械学習によって、設備の種類及び設置場所に応じた複数の予測モデルを生成する。機械学習の手法は特に限定されない。一例として、図2に例示するようにニューラルネットワークが用いられてよいし、ランダムフォレストなどが用いられてよい。
【0039】
また、予測モデル生成手段15は、設備を構成する部品についても予測モデルを生成する。例えば特定の設備が配電盤、保護継電器、計器用変成器及び真空遮断器の部品で構成される場合に、これらの部品のそれぞれについて予測モデルが生成される。部品の予測モデルの生成の手法は、設備の予測モデルの生成の手法と同様である。例えば、予測モデル生成手段15は、部品の種類及び設置場所に応じた複数の部品の予測モデルを生成する。学習用データの生成の手法及び機械学習の手法は、設備の場合と同様の手法を用いることができる。
【0040】
予測モデル生成手段15は、生成した複数の設備についての予測モデル及び複数の部品についての予測モデルを記憶部12に記憶させる。予測モデル生成手段15は、例えば予測モデルの更新などの管理も行う。予測モデル生成手段15は、劣化状態予測手段16による予測が実行される前に、複数の予測モデルを生成して、記憶部12に記憶させる。
【0041】
劣化状態予測手段16は、プラントに含まれる複数の設備のうちの予測対象とされた設備に対応する予測モデルを記憶部12に記憶された複数の予測モデルから選択して、選択した予測モデルを用いて設備の劣化状態を予測する。本実施形態において、劣化状態予測手段16は、予測対象とされた設備又は部品の種類及び設置場所に基づいて、予測モデルを選択する。劣化状態予測手段16は、設備又は部品の種類及び設置場所に応じて適する予測モデルを複数の予測モデルの中から選択することによって、設備の劣化の状態を高精度に予測することができる。
【0042】
ここで、劣化状態予測手段16は、第1モードの場合にプラントに含まれる複数の設備について設備単位で劣化状態を予測し、第2モードの場合に特定の設備について部品単位で予測を実行する。劣化状態予測手段16は、取得手段14を介してユーザによる第1モード又は第2モードの指定などを取得する。劣化状態予測手段16は、第1モードの場合に、プラントに含まれる複数の設備の全てを予測対象としてよいが、取得手段14を介して一部の設備を予測対象とするユーザからの指示を受け取った場合にユーザの指示に従う。劣化状態予測手段16は、第2モードの場合に、取得手段14を介してユーザが指定する特定の設備を取得して、特定の設備を予測対象とする。このとき、劣化状態予測手段16は、記憶部12から特定の設備を構成する部品の種類及び設置場所の情報も取得する。
【0043】
劣化状態予測手段16は、取得手段14を介してユーザによる時間範囲の指定を受け取ってよい。時間は、会計の1年の区切りである年度が用いられてよい。ユーザは例えば2021年度から20年程度を時間範囲として入力してよい(図4参照)。また、ユーザは評価時点から先の年数である経過年数を時間範囲として入力してよい(図5参照)。経過年数は一例として20年まで設定されてよい。劣化状態予測手段16は、指定された時間範囲における設備の劣化状態を予測する。劣化状態予測手段16は、例えば予測モデルへの入力である経過年数を、時間範囲内で現在から進める(1年ずつ加える)ことによって、出力である劣化度の予測を得ることができる。ここで、時間範囲の20年は例示であって、さらに長期に設定されてよいし、短期であってよい。例えば表示部21に設定画面が表示される場合に、ユーザはマウスなどで時間範囲を設定する部分をクリックし、キーボードなどによって時間範囲を入力又は変更可能であってよい。
【0044】
図3は、プラントの設備マップを例示する図である。図3のプラントを例に、劣化状態予測手段16の予測及び画像生成手段17の生成画像についての詳細が以下に説明される。図3に示されるプラントはAからEのエリアを有している。A、B及びDのエリアは屋内にある。また、C及びEのエリアは屋外にある。AからEのエリアに複数の設備が設けられている。A-1、B-1などは設備の名称を示す。例えばB-1及びB-3などは、屋内にあるが、腐食性ガス環境下にある。例えばC-3などは屋外の風雨にさらされる環境下にある。図3の例において、同じ種類の設備には同じように色付けがされている。例えばA-1とC-3は同じ種類の設備である。また、例えばB-1とE-1は同じ種類の設備である。また、例えばB-3とC-1とD-1は同じ種類の設備である。
【0045】
まず、プラントに含まれる複数の設備について設備単位で予測を実行する第1モードの場合が説明される。劣化状態予測手段16は、A-1~E-1の各設備について、設備の種類及び設置場所に応じて、記憶部12の複数の予測モデルの中から予測モデルを選択し、選択した予測モデルを用いて、指定された時間範囲における設備の劣化状態を予測する。例えばA-1とC-3は同じ種類の設備であるが、設置される位置が屋内と屋外とで異なっている。そのため、劣化状態予測手段16はA-1とC-3とで異なる予測モデルを選択する。例えばB-1とE-1は同じ種類の設備であるが、設置される位置が腐食性ガス環境下にあるか否かで異なっている。そのため、劣化状態予測手段16はB-1とE-1とで異なる予測モデルを選択する。例えばB-3とC-1とD-1は同じ種類の設備であるが、同様に設置される位置などが異なる。そのため、劣化状態予測手段16はB-3とC-1とD-1とで異なる予測モデルを選択する。劣化状態予測手段16は、A-1~E-1の各設備についての予測結果を記憶部12に記憶させる。
【0046】
画像生成手段17は、第1モードの場合に、劣化状態予測手段16によって記憶部12に記憶された予測結果を取得して、A-1~E-1の各設備の劣化度の経年変化を比較可能な「更新の緊急度合いを示す画像211」を生成する。図4は、更新の緊急度合いを示す画像211を例示する図である。更新の緊急度合いを示す画像211では、複数の設備の健全度が、時間と複数の設備との組み合わせで示されている。更新の緊急度合いを示す画像211は、時間を第1軸(図4の例では横軸)に示し、複数の設備を第1軸に直交する第2軸(図4の例では縦軸)に示している。縦軸と横軸の表示項目は逆であってよい。つまり、更新の緊急度合いを示す画像211は、時間を縦軸に示し、複数の設備を横軸に示してよい。時間の表示部分211Aに示される時間(年度)は、ユーザが指定した時間範囲に対応する。また、複数の設備の名称(A-1~E-1)は、複数の設備の表示部分211Bに示される。
【0047】
また、複数の設備のそれぞれの時間別(年度別)の健全度は、値に応じて異なる色で表示される。本実施形態において、健全度の「5」が白で表示されて、「1」が黒で表示されて、「4」から「2」は値が小さくなるにつれて色が濃くなるグレーで表示される。別の例として、健全度の「5」が緑、「4」が薄緑、「3」が黄色、「2」がオレンジ、「1」が赤で表示されてよい。ここで、表示色は特に限定されない。また、健全度の値である数は表示されなくてよいが、図4のように表示されてよい。
【0048】
図4に示すように、更新の緊急度合いを示す画像211は、劣化状態予測手段16によって算出される年度別の健全度について、機能停止があり得る「2」になるまでの期間をユーザに直観的に把握させることができる。そして、A-1~E-1の各設備が並んで示されることによって、ユーザは各設備の劣化状態について比較可能である。また、図4において、例えば同じ種類の設備であるA-1とC-3について、屋外に設置されるC-3の方が屋内のA-1より健全度の低下のスピードが速いことが直観的に把握される。また、図4において、例えば同じ種類の設備であるB-1とE-1について、屋内に設置されるが腐食性ガス環境下で使用されるB-1の方が屋外のE-1より健全度の低下のスピードがさらに速いことが直観的に把握される。
【0049】
画像生成手段17は、第1モードの場合に、例えば以下のような処理によって更新の緊急度合いを示す画像211を生成する。画像生成手段17は、取得手段14を介して劣化状態予測手段16によって記憶部12に記憶された予測結果を取得して、複数の設備の情報を抽出し、更新の緊急度合いを示す画像211の第2軸に割り当てる。また、画像生成手段17は、予測結果から設定された時間範囲における健全度を抽出して、それぞれの値に対応する色を割り当てる。画像生成手段17は、複数の設備のそれぞれの健全度の経年変化を、割り当てた色を用いて、更新の緊急度合いを示す画像211の第1軸に割り当てる。このような処理によって、画像生成手段17は、図4に示す更新の緊急度合いを示す画像211を生成することができる。
【0050】
ここで、画像生成手段17は、図3に示すような設備マップの画像を生成して、更新の緊急度合いを示す画像211に含めて表示させてよい。設備マップの画像では、プラントにおける複数の設備の位置が、設備の種類応じた色の丸で示される。ユーザは、設備マップの画像によって、設備の種類及び設備の設置場所の環境を容易に把握することができる。
【0051】
画像生成手段17は、例えば以下のような処理によって設備マップの画像を生成する。画像生成手段17は、取得手段14を介して、記憶部12に記憶されているプラントの全体の地図情報、及び、複数の設備のプラントにおける位置、設備の種類の情報を取得する。画像生成手段17は、複数の設備の位置情報から、プラントの全体の地図にマッピングして、その位置に丸を配置する。画像生成手段17は、複数の設備の種類の情報を抽出して、それぞれの種類に対応する色を割り当てる。画像生成手段17は、複数の設備のそれぞれに対応して地図上に配置された丸に、割り当てた色を配色する。このような処理によって、画像生成手段17は、図3に示す設備マップの画像を生成することができる。
【0052】
次に、特定の設備について部品単位で予測を実行する第2モードの場合が説明される。劣化状態予測手段16は、取得手段14を介してユーザが指定する特定の設備を取得して、特定の設備を予測対象とする。例えば特定の設備がD-1であるとすると、劣化状態予測手段16は、記憶部12からD-1を構成する部品の種類及び設置場所の情報を取得する。劣化状態予測手段16は、部品の種類及び設置場所に応じて、記憶部12の複数の予測モデルの中から予測モデルを選択し、選択した予測モデルを用いて、指定された時間範囲における設備の劣化状態を、部品毎に複数のシナリオで予測する。
【0053】
ここで、設備を構成する主要部品は、部品だけでの交換が不可能な根幹部品を含むことがある。根幹部品が故障した場合に、設備の動作を継続させるためには、全ての主要部品をまとめて更新する必要がある。これに対して、根幹部品でない主要部品が故障した場合には、故障したものだけを交換することが可能である。
【0054】
例えば、特定の設備であるD-1は4つの主要部品で構成されるとする。4つの主要部品は、配電盤、保護継電器、計器用変成器及び真空遮断器であるとする。D-1の4つの主要部品のうち、配電盤は根幹部品である。配電盤の健全度が「2」になった場合に、D-1の動作を継続させるために、4つの主要部品の全てが交換される必要がある。これに対して、保護継電器、計器用変成器及び真空遮断器のいずれか1つの健全度が「2」になった場合に、健全度が「2」になった部品だけを交換して、D-1の動作を継続させることが可能である。
【0055】
本実施形態において、複数のシナリオは第1シナリオと第2シナリオとを含む。第1シナリオは、どれか1つの部品の健全度が「2」になった場合に、全ての部品を交換する「更新シナリオ」である。第2シナリオは、健全度が「2」になった部品がある場合に、健全度が「2」になった部品だけを交換する「長寿命化シナリオ」である。ただし、第2シナリオであっても、根幹部品の健全度が「2」になった場合に、全ての部品が交換される。
【0056】
劣化状態予測手段16は、選択した予測モデルを用いて、指定された時間範囲における設備の劣化状態を、第1シナリオに従って、4つの部品のそれぞれについて予測する。劣化状態予測手段16は、4つの部品のそれぞれについての予測結果を、第1シナリオと関連付けて記憶部12に記憶させる。また、劣化状態予測手段16は、選択した同じ予測モデルを用いて、指定された時間範囲における設備の劣化状態を、第2シナリオに従って、4つの部品のそれぞれについて予測する。劣化状態予測手段16は、4つの部品のそれぞれについての予測結果を、第2シナリオと関連付けて記憶部12に記憶させる。また、劣化状態予測手段16は、少なくとも1つの部品が交換された年度に対応させて、費用(更新コスト)を計算してよい。劣化状態予測手段16は、記憶部12に記憶された設備の部品毎の更新コストを取得し、交換された部品に対応する更新コストを積算することによって、更新年度における更新コストを計算してよい。劣化状態予測手段16は、計算した更新コストを更新年度に対応付けて、予測結果の一部として、記憶部12に記憶させてよい。
【0057】
画像生成手段17は、第2モードの場合に、劣化状態予測手段16によって記憶部12に記憶された予測結果を取得して、異なるシナリオに従った場合の特定の設備の劣化度の経年変化を比較可能な「複数のシナリオの画像212」を生成する。図5は、複数のシナリオの画像212を例示する図である。複数のシナリオの画像212では、特定の設備の健全度が、特定の設備を構成する部品の健全度の積み上げ棒グラフで示されて、評価時すなわち現在からの経過年数に応じて変化が示されている。ここで、特定の設備であるD-1は4つの主要部品で構成され、D-1の健全度を各部品の健全度の平均で示すことができる。そのため、図5の例では各部品の健全度は部品総数の4で割った値で示され、この値の積み上げ棒グラフでD-1の健全度が示されている。以下において、このように各部品の健全度の値を調整して積算することによって特定の設備の健全度が示されるように処理することは、正規化と称される。
【0058】
第1シナリオでは、保護継電器、計器用変成器及び真空遮断器の健全度が「2」になったため、経過年数が5年目のタイミングで全ての部品を更新している。5年目のタイミングで大きな更新コストを要するが、その後に経過年数が20年になるまで、全ての部品について更新の必要がない。また、第2シナリオでは、保護継電器、計器用変成器及び真空遮断器の健全度が「2」になったため、経過年数が5年目のタイミングでこれらの部品のみを交換している。つまり、経過年数が5年目のタイミングで、根幹部品である配電盤は交換されない。第2シナリオでは、経過年数が14年目のタイミングで配電盤の健全度が「2」になったため、全ての部品を更新している。つまり、第2シナリオでは、5年目のタイミングでの更新コストを抑えることができるが、14年目のタイミングで大きな更新コストを要する。このように、ユーザは特定の設備の劣化状態について、複数のシナリオを比較可能である。
【0059】
画像生成手段17は、第2モードの場合に、例えば以下のような処理によって複数のシナリオの画像212を生成する。画像生成手段17は、取得手段14を介して、劣化状態予測手段16によって記憶部12に記憶された第1シナリオの各部品の予測結果を取得する。画像生成手段17は、経過年数毎に、各部品の予測結果について正規化を行う。そして、画像生成手段17は、経過年数毎に、各部品に対応する色を割り当てて、積み上げ棒グラフとして特定の設備の健全度を表示する。画像生成手段17は、取得手段14を介して、劣化状態予測手段16によって記憶部12に記憶された第2シナリオの各部品の予測結果も取得して、第1シナリオの場合と同様の処理を行う。このような処理によって、画像生成手段17は、図5に示す複数のシナリオの画像212を生成することができる。
【0060】
ここで、画像生成手段17は、図6に示すような更新コストの画像213を生成して、複数のシナリオの画像212に含めて表示させてよい。劣化状態予測手段16が、計算した更新コストを更新年度に対応付けて記憶部12に記憶させた場合に、画像生成手段17は更新コストの情報を取得可能である。このとき、画像生成手段17は、現在(評価時点)からの経過年数を横軸にとり、更新コストの数値を縦軸にとった棒グラフを生成して、第1シナリオと第2シナリオとで対比可能に配置する処理によって、更新コストの画像213を生成してよい。更新コストの画像213は、複数のシナリオの画像212の一部として表示されてよいし、ユーザの指示に従って複数のシナリオの画像212と切り替えて表示されてよい。例えば第1シナリオにおいて5年目のタイミングで2800万円の更新コストが発生し、第2シナリオにおいて5年目、14年目のタイミングでそれぞれ550万円、2800万円の更新コストが発生する。更新コストの画像213を示すことによって、直接的に更新コストをユーザに示すことができ、更新の予算との対応を正確に把握させることが可能になる。
【0061】
また、画像生成手段17は、図7に示すようなライフサイクルコスト(LCC)の比較画像を生成して、複数のシナリオの画像212に含めて表示させてよい。画像生成手段17は、図6の更新コストの画像213に代えて、ライフサイクルコストの比較画像を表示させてよい。画像生成手段17は、図6の場合と同様に更新コストの情報を取得して、設備を設置した年度又は直前の更新年度を基準とした経過年数を横軸にとり、更新コストの数値を縦軸にとった棒グラフを生成してよい。画像生成手段17は、図6の場合と同様に、第1シナリオと第2シナリオとで対比可能に配置する処理を実行する。さらに、画像生成手段17は、各シナリオにおいて、設備の全ての部品の更新までの時間を使用年数として抽出し、現在(評価時点)から使用年数と同じ年数を評価期間として定めて画像上に表示することによって、ライフサイクルコストの比較画像を生成する。ライフサイクルコストの比較画像によって、ユーザは更新頻度及び設備のライフサイクルコストの観点から、どちらのシナリオが有利かを直観的に把握することができる。
【0062】
図7の例において、第1のシナリオでは、使用年数が15年で、評価期間において発生する費用が更新のみの2800万円である。第2のシナリオでは、使用年数が24年で、評価期間において発生する費用が長寿命化及び更新を合わせた3350万円である。この例において、第1のシナリオでは、使用年数の1年あたりの費用が約187万円になる。これに対し、第2のシナリオでは、使用年数の1年あたりの費用が約140万円になる。したがって、図7の例において、ライフサイクルコストの観点からは、第2シナリオが有利になることがわかる。ここで、更に設備の維持費用が考慮されてよい。画像生成手段17は、使用年数を抽出した場合に、使用年数に1年あたりの維持費用を乗じて、更新時の棒グラフに追加してよい。例えば、1年あたりの維持費用を10万円とすると、第1のシナリオでは、使用年数の1年あたりの費用が約197万円になる。これに対し、第2のシナリオでは、使用年数の1年あたりの費用が約150万円になる。
【0063】
図8は、情報処理装置10が実行する情報処理方法の処理の例を示すフローチャートである。情報処理装置10は、例えばユーザが入力部20によって開始を指示したことを受けて、以下の処理を開始してよい。
【0064】
劣化状態予測手段16は、取得手段14を介して、プラントに含まれる複数の設備のうちの予測対象とされた設備の情報を取得する(ステップS1)。劣化状態予測手段16は、第1モードの場合に、プラントに含まれる複数の設備の全てを予測対象としてよいが、取得手段14を介してユーザによる一部の設備を予測対象とする指示を受け取った場合にユーザの指示に従う。劣化状態予測手段16は、第2モードの場合に、取得手段14を介してユーザが指定する特定の設備を取得して、特定の設備を予測対象とする。予測対象とされた設備の情報は、少なくとも設備又は部品の種類及び設置場所を含み、例えば更新コストなどの情報を更に含み得る。
【0065】
劣化状態予測手段16は、予測対象とされた設備又は部品の種類及び設置場所に基づいて、記憶部12に記憶された複数の予測モデルの中から、適する予測モデルを選択する(ステップS2)。
【0066】
劣化状態予測手段16は、ユーザによって設備単位で予測する第1モードが指定された場合に(ステップS3のYes)、プラントに含まれる複数の設備について設備単位で予測する(ステップS4)。劣化状態予測手段16は、各設備についての予測結果を記憶部12に記憶させる。
【0067】
画像生成手段17は、劣化状態予測手段16によって記憶部12に記憶された予測結果を取得して、プラントに含まれる複数の設備の劣化度の経年変化を比較可能な「更新の緊急度合いを示す画像211」を生成する(ステップS5)。
【0068】
劣化状態予測手段16は、ユーザによって特定の設備について部品単位で予測を実行する第2モードが指定された場合に(ステップS3のNo)、複数のシナリオの部品単位での劣化状態を予測する(ステップS6)。劣化状態予測手段16は、各部品についての予測結果を、複数のシナリオのそれぞれに関連付けて、記憶部12に記憶させる。
【0069】
画像生成手段17は、劣化状態予測手段16によって記憶部12に記憶された予測結果を取得して、異なるシナリオに従った場合の特定の設備の劣化度の経年変化を比較可能な「複数のシナリオの画像212」を生成する(ステップS7)。
【0070】
出力手段18は、画像生成手段17によって生成された画像を表示部21に出力し(ステップS8)、一連の処理が終了する。
【0071】
以上のように、本実施形態に係る情報処理装置10、情報処理方法及びプログラムは、上記の構成によって、設備の劣化の状態を高精度に予測することができる。
【0072】
本開示を諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形及び修正を行うことが容易であることに注意されたい。したがって、これらの変形及び修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各手段、各ステップなどに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の手段又はステップなどを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0073】
10 情報処理装置
11 通信部
12 記憶部
13 制御部
14 取得手段
15 予測モデル生成手段
16 劣化状態予測手段
17 画像生成手段
18 出力手段
20 入力部
21 表示部
211 更新の緊急度合いを示す画像
211A 時間の表示部分
211B 複数の設備の表示部分
212 複数のシナリオの画像
213 更新コストの画像
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8