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特開2023-75854避難経路案内システム及び避難経路案内方法
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  • 特開-避難経路案内システム及び避難経路案内方法 図1
  • 特開-避難経路案内システム及び避難経路案内方法 図2
  • 特開-避難経路案内システム及び避難経路案内方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023075854
(43)【公開日】2023-05-31
(54)【発明の名称】避難経路案内システム及び避難経路案内方法
(51)【国際特許分類】
   A62B 3/00 20060101AFI20230524BHJP
   E06B 7/28 20060101ALI20230524BHJP
【FI】
A62B3/00 B
A62B3/00 E
E06B7/28 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021189022
(22)【出願日】2021-11-19
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】吉田 穂波
(72)【発明者】
【氏名】岡村 吉展
(72)【発明者】
【氏名】篠木 大輔
【テーマコード(参考)】
2E184
【Fターム(参考)】
2E184AA07
2E184AA08
2E184GG04
2E184GG13
(57)【要約】
【課題】階段室の避難口に通じる階のドアにまで移動した避難者を避難口に混乱を生じさせることなく案内することが可能な新たな避難経路案内システム及び避難経路案内方法を提供することである。
【解決手段】建築物2の避難階段4の階段室3から避難口7に避難者を案内する避難経路案内システム1であって、階段室3の避難口7に通じる階に設けられたドア8の階段室3の側を向く内面8aに設けられ、ドア8の下端から上方に向けて延びる鉛直線部21と、鉛直線部21の上端から避難口7の方向に向けて延びる水平線部22と、を備えた案内矢印20を有することを特徴とする避難経路案内システム1。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の避難階段の階段室から避難口に避難者を案内する避難経路案内システムであって、
前記階段室の前記避難口に通じる階に設けられたドアの前記階段室の側を向く内面に設けられ、前記ドアの下端から上方に向けて延びる鉛直線部と、前記鉛直線部の上端から前記避難口の方向に向けて延びる水平線部と、を備えた案内矢印を有することを特徴とする避難経路案内システム。
【請求項2】
前記避難階段及び前記階段室の前記避難口に通じる階の床に避難経路に沿って設けられ、先端が前記鉛直線部の下方に配置された避難経路案内線をさらに有する、請求項1に記載の避難経路案内システム。
【請求項3】
前記ドアのヒンジが、前記ドアの前記避難口とは反対側を向く側縁部に設けられている、請求項1または2に記載の避難経路案内システム。
【請求項4】
建築物の避難階段の階段室から避難口に避難者を案内する避難経路案内方法であって、
前記階段室の前記避難口に通じる階に設けられたドアの前記階段室の側を向く内面に設けられ、前記ドアの下端から上方に向けて延びる鉛直線部と、前記鉛直線部の上端から前記避難口の方向に向けて延びる水平線部と、を備えた案内矢印により、前記避難者に前記ドアを出た後の前記避難口の方向を案内することを特徴とする避難経路案内方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の避難階段の階段室から避難口に避難者を案内する避難経路案内システム及び避難経路案内方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、オフィス、病院、会議場、これらの複合施設等の建築物において、火災、地震等の災害の発生時に、建築物の内部の避難者を避難階段から避難口にまで案内するために、避難階段の階段室に、避難階段から階段室の避難口に通じる階のドアにまで延びる案内線を設けるようにした避難経路案内システムないし避難経路案内方法が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2012-511806号公報(図8
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来の避難経路案内システムないし避難経路案内方法は、避難者を階段室の避難口に通じる階のドアにまで案内するものであるので、避難者は、ドアを出た後の避難口の方向を認識することができず、ドアから出る際に混乱を生じる虞があるという問題点があった。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、階段室の避難口に通じる階のドアにまで移動した避難者を避難口に混乱を生じさせることなく案内することが可能な新たな避難経路案内システム及び避難経路案内方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の避難経路案内システムは、建築物の避難階段の階段室から避難口に避難者を案内する避難経路案内システムであって、前記階段室の前記避難口に通じる階に設けられたドアの前記階段室の側を向く内面に設けられ、前記ドアの下端から上方に向けて延びる鉛直線部と、前記鉛直線部の上端から前記避難口の方向に向けて延びる水平線部と、を備えた案内矢印を有することを特徴とする。
【0007】
本発明の避難経路案内システムは、上記構成において、前記避難階段及び前記階段室の前記避難口に通じる階の床に避難経路に沿って設けられ、先端が前記鉛直線部の下方に配置された避難経路案内線をさらに有するのが好ましい。
【0008】
本発明の避難経路案内システムは、上記構成において、前記ドアのヒンジが、前記ドアの前記避難口とは反対側を向く側縁部に設けられているのが好ましい。
【0009】
本発明の避難経路案内方法は、建築物の避難階段の階段室から避難口に避難者を案内する避難経路案内方法であって、前記階段室の前記避難口に通じる階に設けられたドアの前記階段室の側を向く内面に設けられ、前記ドアの下端から上方に向けて延びる鉛直線部と、前記鉛直線部の上端から前記避難口の方向に向けて延びる水平線部と、を備えた案内矢印により、前記避難者に前記ドアを出た後の前記避難口の方向を案内することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、階段室の避難口に通じる階のドアにまで移動した避難者を避難口に混乱を生じさせることなく案内することが可能な新たな避難経路案内システム及び避難経路案内方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る避難経路案内システムが設けられた建築物の、階段室及び避難口が設けられた部分の間取り図である。
図2図1に示す建築物の、階段室が設けられた部分の縦断面図である。
図3図1に示す建築物の、避難経路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る避難経路案内システム及び避難経路案内方法について詳細に例示説明する。
【0013】
本実施形態に係る避難経路案内システム1は、例えば、オフィス、病院、会議場、商業施設、これらの複合施設等の建築物に設けられて、火災、地震等の災害の発生時に、建築物の避難階段の階段室から避難口に避難者を案内するものである。本実施形態に係る避難経路案内方法は、建築物2に避難経路案内システム1を設けることで実施することができる。
【0014】
図1図2に示すように、本実施形態に係る避難経路案内システム1が設けられた建築物2は、複数の階を有しており、その一角に階段室3を有している。
【0015】
階段室3は、四方が耐火構造の壁で囲われて建築物2の他の室ないし廊下から区分された平面視で矩形となっており、建築物2の地上階から上層の階にまで上下方向に延びている。
【0016】
階段室3には避難階段4が設置されている。避難階段4は、階段室3の四方の壁に沿う螺旋状となって建築物2の上層の階から地上階の床3aに亘って設けられている。避難階段4の内側縁には手摺り5が設けられている。避難階段4は、階段状部分4aと、階段状部分4aの壁に沿って方向が変わる部分に設けられた踊り場4bとを有している。
【0017】
建築物2が地下階を有する場合には、階段室3及び避難階段4は、地下階にまで延びる構成としてもよい。
【0018】
建築物2の地上階には、階段室3に隣接して廊下ないしホール等の通路6が設けられている。通路6は避難経路Pを構成するものであり、通路6の突当り部分には避難口7が設けられている。避難口7は建築物2の外部に通じる外開きのヒンジドアとなっており、ドアノブ7aを操作することで開くことができる。
【0019】
階段室3の避難口7に通じる階すなわち階段室3の地上階の階段室3と通路6との間の壁には、ドア8が設けられている。ドア8は、通路6の側に向けて開く外開きのヒンジドアとなっており、ドア8の開閉の支点となるヒンジ9はドア8の避難口7とは反対側を向く側縁部に設けられている。すなわち、避難口7は、階段室3のドア8を出た通路6の左側にあり、これに対してヒンジ9は階段室3から見てドア8の右側の側縁部に設けられている。ドア8は、ヒンジ9とは反対の側縁部側にドアノブ8aを備えており、ドアノブ8aを操作することで、ドア8を開くことができる。
【0020】
詳細は図示しないが、階段室3の上層の階には、当該上層の階から階段室3に入るための避難用ドアが設けられている。これらの避難用ドアは、階段室3の側に向けて開く内開きのヒンジドアとなっている。
【0021】
このような構成の階段室3ないし避難階段4が設けられることにより、図3に避難経路Pとして示すように、火災、地震等の災害発生時に、建築物2の上層の階にいる避難者は、避難用ドアを開けて階段室3に入り、避難階段4を下って地上階にまで下り、ドア8を開けて階段室3から通路6に移動し、通路6を通って避難口7から建築物2の外部に出て避難場所にまで避難することができる。
【0022】
本実施形態に係る避難経路案内システム1では、階段室3の地上階のドア8にまで移動した避難者を避難口7に混乱を生じさせることなく案内するために、避難経路案内線10と案内矢印20とを設けるようにしている。
【0023】
避難経路案内線10は、避難階段4及び階段室3の避難口7に通じる階の床3aすなわち避難階段4の階段状部分4a、踊り場4b及び地上階の床3aに設けられており、避難階段4から階段室3の地上階に設けられたドア8にまで、避難経路Pに沿って延びている。本実施形態では、避難経路案内線10は、階段室3の床とは異なる色の所定の一定幅の線となっており、避難階段4の壁の側に偏った位置において、避難階段4の螺旋の方向に沿って隣接する壁に平行となるように直角に曲がりながら延びている。また、避難経路案内線10は、地上階の床3aにおいては、避難階段4の下端からドア8に向けてL字状に直角に曲がってドア8のヒンジ9の側に偏った位置の下端部にまで延びている。
【0024】
案内矢印20は、ドア8の階段室3の側を向く内面8aに設けられており、ドア8の下端から上方に向けて延びる鉛直線部21と、鉛直線部21の上端から避難口7の方向に向けて延びる水平線部22と、を有している。鉛直線部21は、ドア8の幅方向中央位置とドア8のヒンジ9が設けられる側の側縁との間に設けられており、ドア8の上下方向中央位置よりも上側であってドア8の上端縁よりも下方の位置にまで延びている。水平線部22は、鉛直線部21の上端からドア8の幅方向中央位置とドア8のヒンジ9とは反対側の側縁との間にまで延びている。水平線部22の鉛直線部21に連なる部分とは反対側の先端には、案内矢印20の矢印部23が一体に連ねて設けられている。矢印部23は、階段室3の内部から見て避難口7の方向に向けられている。
【0025】
案内矢印20の鉛直線部21、水平線部22及び矢印部23は、それぞれ避難経路案内線10と同一の色(ドア8の内面8bとは異なる色)及び幅の線で構成されている。避難経路案内線10のドア8にまで達した先端は、鉛直線部21の下方に配置されており、避難経路案内線10の先端と鉛直線部21はドア8と床3aとの間の隙間に応じた間隔を空けて連なっている。このような構成により、案内矢印20は、避難経路案内線10に一体的に連なって連続的に延びているように視認される。
【0026】
上記の通り、本実施形態に係る避難経路案内システム1ないし避難経路案内方法は、階段室3の地上階に設けたドア8の階段室3の側を向く内面8bに、ドア8の下端から上方移向けて延びる鉛直線部21と、鉛直線部21の上端から避難口7の方向に向けて延びる水平線部22と、を備えた案内矢印20を設けるようにしたので、避難階段4を下ってドア8にまで移動してきた避難者に、ドア8を出た後、案内矢印20の方向すなわちドア8を出て左側に避難口7があることを瞬時に正確に認識させることができる。これにより、階段室3の避難口7に通じる地上階のドア8にまで移動した避難者が、ドア8を出る際に避難口7の方向が解らずに混乱を生じることを抑制することができる。よって、避難者をより迅速に避難させることができる。
【0027】
また、本実施形態に係る避難経路案内システム1ないし避難経路案内方法では、案内矢印20を、避難経路案内線10の先端部から上方に向けて延びる鉛直線部21と、鉛直線部21の上端から避難口7の方向に向けて延びる水平線部22と、を備えた構成としたので、矢印部23がドア8の内面8bの避難者の視点に近い高さに位置するようにして、避難者がドア8を出た後に進むべき方向を、案内矢印20から、より容易に認識できるようにすることができる。これにより、避難者が、ドア8を出る際に避難口7の方向が解らずに混乱を生じることを、さらに確実に抑制することができる。
【0028】
さらに、本実施形態に係る避難経路案内システム1ないし避難経路案内方法では、避難階段4及び階段室3の避難口7に通じる地上階の床3aに、避難経路Pに沿って延びる避難経路案内線10を設け、この避難経路案内線10の先端を案内矢印20の下方に配置するようにしたので、建築物2の上層の階から階段室3に入った避難者を、避難経路案内線10により避難階段4から地上階のドア8にまで案内することができる。また、ドア8の内面8bに設けられて避難経路案内線10の先端に連なって視認される案内矢印20が、避難経路案内線10とともに避難経路Pを示す表示であることを避難者に容易に認識させることができるので、避難経路案内線10により案内されてドア8にまで移動した避難者が、ドア8を出る際に避難口7の方向が解らずに混乱を生じることを、さらに確実に抑制することができる。
【0029】
さらに、本実施形態に係る避難経路案内システム1ないし避難経路案内方法では、階段室3の地上階に設けたドア8のヒンジ9を、ドア8の避難口7とは反対側を向く側縁部に設けるようにしたので、ドア8の内面8bに設けられた案内矢印20に案内されてドア8を出て避難口7の方向に進む避難者に対して、ドア8が避難口7とは反対側に向けて開くようにして、避難者が避難口7に向けて移動をし易くすることができる。
【0030】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0031】
例えば、前記実施形態では、避難階段4及び階段室3の避難口7に通じる階の床3aに避難経路案内線10を設けるようにしているが、避難経路案内線10を設けない構成としてもよい。
【0032】
また、建築物2が複数の棟からなる場合には、それぞれの棟の階段室3ないし避難階段4に避難経路案内システム1を設けるようにしてもよい。この場合、建築物2のエントランスからそれぞれの棟までの経路を案内する経路案内システムとして、棟ごとに色分けした案内線を用いるとともに、それぞれの棟の階段室3ないし避難階段4に設ける避難経路案内システム1の案内矢印20及び避難経路案内線10を、対応する案内線と同一の色にするのが好ましい。これにより、避難者に、どの棟の避難階段4を用いて避難をしているのかを認識させて、避難者の混乱をより抑制することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 避難経路案内システム
2 建築物
3 階段室
3a 地上階の床
4 避難階段
4a 階段状部分
4b 踊り場
5 手摺り
6 通路
7 避難口
7a ドアノブ
8 ドア
8a ドアノブ
8b 内面
9 ヒンジ
10 避難経路案内線
20 案内矢印
21 鉛直線部
22 水平線部
23 矢印部
P 避難経路
図1
図2
図3