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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023075864
(43)【公開日】2023-05-31
(54)【発明の名称】噴射容器およびそれを用いた噴射製品
(51)【国際特許分類】
   B65D 83/32 20060101AFI20230524BHJP
   B65D 83/36 20060101ALI20230524BHJP
   B65D 83/54 20060101ALI20230524BHJP
【FI】
B65D83/32
B65D83/36
B65D83/54
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021189041
(22)【出願日】2021-11-19
(71)【出願人】
【識別番号】391021031
【氏名又は名称】株式会社ダイゾー
(74)【代理人】
【識別番号】100100044
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 重夫
(74)【代理人】
【識別番号】100205888
【弁理士】
【氏名又は名称】北川 孝之助
(72)【発明者】
【氏名】夏目 脩平
【テーマコード(参考)】
3E014
【Fターム(参考)】
3E014PA01
3E014PB01
3E014PB08
3E014PC02
3E014PD01
3E014PE01
3E014PE02
3E014PE11
3E014PE30
3E014PF08
(57)【要約】
【課題】噴射剤の充填時や超音波溶着のときにチューブが外れたり緩んだりしにくく、それにより製造が容易な噴射容器およびそれを用いた噴射製品を提供する。
【解決手段】噴射容器1は、原液と噴射剤を含む内容物Cが充填される容器本体2と、容器本体2の開口2dを密封する蓋体3とを備え、前記蓋体3に、チューブ11と、そのチューブ11の下端開口11aを覆う吸液材12とが取り付けられており、前記吸液材12が容器本体2の底部2aに当接している。噴射容器1に内容物Cを充填することにより噴射製品10となる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原液と噴射剤を含む内容物が充填される容器本体と、容器本体の開口を密封する蓋体とを備え、
前記蓋体に、チューブと、そのチューブの下端開口を覆う吸液材とが取り付けられており、
前記吸液材が容器本体の内底に当接している
噴射容器。
【請求項2】
前記蓋体が内容物噴射用のバルブを備えており、そのバルブに前記チューブが連結されている請求項1記載の噴射容器。
【請求項3】
前記バルブが1回の噴射操作でハウジング内の内容物を噴射する定量バルブであり、
前記吸液材の吸液量が定量バルブの噴射容量よりも多い
請求項2記載の噴射容器。
【請求項4】
前記バルブが容器本体の開口に螺着される蓋体に設けられた、ハウジング内の内容物を吐出する加圧式バルブであり、
その加圧式バルブに、外部から空気を導入する空気導入孔がない、もしくは閉鎖されている
請求項2または3記載の噴射容器。
【請求項5】
前記蓋体が容器本体の開口に溶着され、
前記チューブが、蓋体に設けたチューブ取り付け部に嵌合により取り付けられている
請求項1記載の噴射容器。
【請求項6】
前記吸液材が、チューブの下端開口を閉じる底壁と、その底壁の周縁から上に延びてチューブの外周に嵌合する側壁とを有し、
蓋体が容器本体に装着されたとき、チューブが直線状に下方に延びている
請求項1~5のいずれかに記載の噴射容器
【請求項7】
請求項1~6記載の噴射容器と、その噴射容器内に充填された、原液と噴射剤を含む内容物とからなる噴射製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は噴射容器およびそれを用いた噴射製品に関し、とくに容器を下向きや横向きにして使用しても内容物を噴射できる噴射容器およびそれを用いた噴射製品に関する。
【背景技術】
【0002】
容器内に噴射する液体と加圧ガスを充填した噴射製品は、容器の底部の液体を噴射するため、下端を液体に漬けたチューブ(いわゆるディップチューブ)の上端を噴射口に連結している。そのため、容器を下向きや横向きで噴射すると、チューブの下端開口が加圧ガスと連通するため、加圧ガスのみを無駄に噴射してしまい、残っている液体を噴射できなくなる。
【0003】
このような問題を解消するものとして、特許文献1は、バルブにチューブ(吸上げ管)を取り付け、チューブの下端に噴霧液を含浸する多孔質の蓄液体を、器体(缶)の内底との間に通路を形成するように装着したエアゾール噴霧器を開示している。このエアゾール噴霧器は、倒立状態で使用しても、蓄液体が吸上げ管の下端の開口を塞いでいるので、加圧ガスが無駄に噴出しない。そして加圧ガスが蓄液体を加圧するので、蓄圧体に含侵された噴霧液をチューブを通して外部に噴射することができる。
【0004】
特許文献2には、バルブを有しない蓋体を容器に超音波溶着した吐出容器が開示されている。この吐出容器は二重容器であるので、チューブは使用していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭48-84013号公報
【特許文献2】特開2020-19570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のエアゾール噴霧器は、蓄液体と器体の内底との間に通路を形成しているため、ステムから噴射剤を充填する場合は、蓄液体で下端が塞がれているチューブに充填圧力が加わると、チューブが蓋体から外れたり緩んだりしやすい。そのため、エアゾール噴霧器が噴射できなくなるおそれがある。また、蓄液体を装着したチューブを吊り下げて容器内に挿入するとき、蓄液体が緩んだり外れたりするおそれがある。また、特許文献2を参考にしてチューブを備えた蓋体を超音波溶着により容器に固着する場合は、超音波振動によりチューブが外れるおそれがある。
【0007】
本発明は噴射剤の充填時や超音波溶着のとき、あるいはチューブを容器内に挿入するときに、チューブが外れたり緩んだりしにくく、それにより製造が容易な噴射製品を提供することを技術課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の噴射容器1、1A、1Bは、原液と噴射剤を含む内容物Cが充填される容器本体2と、容器本体2の開口2dを密封する蓋体3、53とを備え、前記蓋体3、53に、チューブ11と、そのチューブ11の下端開口11aを覆う吸液材12とが取り付けられており、前記吸液材12が容器本体2の内底(底部2a)に当接していることを特徴としている。
【0009】
このような噴射容器1、1Aにおいては、前記蓋体3が内容物噴射用のバルブ5、21、31を備えており、そのバルブ5、21、31に前記チューブ11が連結されているものが好ましい。その場合、前記バルブ21、31が1回の噴射操作でハウジング15内の内容物を噴射する定量バルブ21、31であり、前記吸液材12の吸液量が定量バルブ21、31の噴射容量よりも多いものが好ましい。
【0010】
さらに前記バルブ31が容器本体2の開口2dに螺着される蓋体3に取り付けた、ハウジング34内の内容物Cを加圧する加圧式バルブ31であり、その加圧式バルブ31に、外部から空気を導入する空気導入孔34hがない、もしくは閉鎖(37a)されているものが好ましい。
【0011】
また、前記蓋体53が容器本体2の開口2dに溶着されており、前記チューブ11が、蓋体53に設けたチューブ接続部53eに嵌合により取り付けられているものであってもよい。
【0012】
前記いずれの噴射容器1、1A、1Bにおいても、前記吸液材12が、チューブ11の下端開口11aを閉じる底壁12bと、その底壁12bの周縁から上に延びてチューブ11の外周に嵌合する側壁12aとを有し、蓋体3が容器本体2に装着されたとき、チューブ11が直線状に下方に延びているものが好ましい。
【0013】
本発明の噴射製品10、20、30、50は、前記のいずれかの噴射容器1、1A、1Bと、その噴射容器1、1A、1Bの容器本体2内に充填された、原液と噴射剤を含む内容物Cとからなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明の噴射容器は、容器本体に噴射剤と原液からなる内容物を充填した噴射製品として用いる。この噴射容器は、チューブの下端開口に吸液材が取り付けられているので、噴射製品を横向きや下向きにして噴射操作しても、噴射剤だけが抜けることがなく、内容物を噴射することができる。また、吸液材が容器本体の内底に当接しているので、製造時、噴射剤の圧力でチューブが下方に押されても、あるいはチューブに振動が加えられても、チューブは内底によって支えられる。そのため、チューブが蓋体から外れたり、緩んだりすることがない。
【0015】
前記蓋体が内容物噴射用のバルブを備えており、そのバルブに前記チューブが連結されている場合は、バルブから噴射剤を充填しても、チューブがバルブから外れたり緩んだりすることがない。また、バルブから充填することにより、アンダーカップ充填に比べて製造時の噴射剤のロスを少なくすることができる。
【0016】
前記バルブが、1回の噴射操作でハウジング内の内容物を噴射する定量バルブであり、前記吸液材の吸液量が定量バルブの噴射容量よりも多い場合は、下向きや横向きで噴射しても、定量バルブによって定まる所定量を噴射することができる。
【0017】
前記バルブが容器本体の開口に螺着され、ハウジング内の内容物を加圧する加圧式バルブであり、その加圧式バルブに、外部から空気を導入する空気導入孔がない、もしくは閉鎖されている場合は、バルブを螺着するときにチューブが外れたり緩んだりすることがない。さらに下向きや横向きで噴射しても、液漏れせずに、バルブのハウジング内の内容物を加圧して噴射することができる。
【0018】
蓋体が容器本体の開口に溶着され、前記チューブが、蓋体に設けたチューブ取り付け部に嵌合により取り付けられている場合は、蓋体を溶着するときにチューブが落下しない。
【0019】
前記吸液材が、チューブの下端開口を閉じる底壁と、その底壁の周縁から上に延びてチューブの外周に嵌合する側壁とを有し、蓋体が容器に装着されたとき、チューブが直線状に下方に延びている場合は、チューブを装着した蓋体を容器本体に装着しやすい。さらにチューブが直線状に延びているので、容器本体の内底によるチューブの支持が確実で、一層外れにくい。
【0020】
本発明の噴射製品は、チューブの下端開口に吸液材が取り付けられているので、噴射製品の向きに関わらず内容物を噴射することができる。また、吸液材が容器本体の内底に当接しているので、製造時にチューブが蓋体から外れたり、緩んだりしにくい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の噴射製品の一実施形態を示す断面図である。
図2図2Aおよび図2Bは噴射製品を上下逆向きおよび横向きにしたときの状態を示す断面図である。
図3】本発明の噴射製品の他の実施形態を示す断面図である。
図4】本発明の噴射製品のさらに他の実施形態を吐出部材と共に示す断面図である。
図5】本発明の噴射製品のさらに他の実施形態を吐出部材と共に示す断面図である。
図6図6Aは本発明の噴射製品のさらに他の実施形態を示す要部断面図、図6B図6Aの噴射容器に吐出部材を装着した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
つぎに図面を参照しながら本発明の噴射製品の実施の形態を説明する。図1の噴射製品10は、噴射容器1と、その噴射容器1内に充填された内容物Cとからなる。噴射容器1は、容器本体2と、容器本体2の上端の開口2dを密閉する蓋体3とを備えている。噴射容器1内には、原液と噴射剤を含む内容物(エアゾール組成物)Cが充填されており、内容物Cは容器本体2内で液相Lと気相Gとに分かれている。この実施形態では噴射剤として液化ガスを採用しており、液相Lは原液と液化ガスの液体とからなり、気相Gは液化ガスの気化ガスで構成されている。なお、噴射剤として圧縮ガスを採用する場合は、一部が原液(液相L)に溶解し、大部分が気相Gに存在する。
【0023】
蓋体3にはバルブ5が取り付けられ、バルブ5のハウジング7の下端にはチューブ11が連結されている。チューブ11の周囲には、液相L(原液及び噴射剤の液体部分)を含浸保持する吸液材12が装着されており、吸液材12はチューブ11の下端の開口(導入孔)11aを塞いでいる。バルブ5には、押しボタン等の噴射部材15が取り付けられる。そして噴射部材15を押し下げる等の操作を行うことにより、内容物Cを噴射部材15のノズルから噴射することができる。
【0024】
容器本体2は、例えばアルミニウムやブリキ等の金属製であって、底部2aと、底部2aの外周端から立ち上がる胴部2bと、胴部2bの上端から徐々に縮径しながら上方に延びる肩部2cとを備えている。肩部2cの上端には開口2dが形成され、開口2dの内周には開口2dを取り囲むビード部2eが形成されている。
【0025】
この実施形態では、蓋体3は、底壁3aと、その底壁3aの周囲から立ち上がる周壁3bと、周壁3bの上端に設けられる湾曲フランジ3cと、底壁3aの中央から立ち上がる逆カップ状のバルブ取り付け部3dとからなる。湾曲フランジ3cは、ガスケット4を介してビード部2eに固定され、周壁3bは、ビード部2eの下方にクリンチされる。蓋体3は、例えばアルミニウムやブリキなどの金属製である。
【0026】
バルブ5は、側面にステム孔6aを有するステム6と、ステム6を上下動可能に収容する前述のハウジング7と、ステム6を常時上方に付勢する弾性体(バネ)8と、略ドーナッツ状であって、ステム6が上方に上がっているときは内周面でステム孔6aを塞ぎ、ステム6が下方に押し下げられたときに内周側が撓んでステム孔6aを開放するステムラバー9とを有する。前述の蓋体3はハウジング7との間にステムラバー9を挟着し、固定するので、バルブ3を構成する部品(マウンティングカップ)であると考えることもできる。
【0027】
バルブ5は、ステム6あるいは噴射部材15の押し下げ時にステム孔6aが開いて内容物Cを噴射する所謂エアゾールバルブである。ステム6を離すと弾性体8の付勢力でステム6が上昇し、ステムラバー9が元に戻り、ステム孔6aが塞がれるので噴射が止まる。バルブ5を取り付けた蓋体3は、湾曲フランジ3cをガスケットを介して容器本体2のビード部2eに被せ、周壁3bをビード部2cの下方にかしめ付けることで、容器本体2の開口2dを密に塞いでいる。
【0028】
ハウジング7は、ステム6と弾性体8とを収容する有底筒状の収容部7aと、収容部7aの底部7bから下方に延びる略筒状のチューブ接続部7cとを備えている。収容部7aの底部7bには、収容部7aとチューブ接続部7cとを連通する導入孔7dが設けられている。チューブ接続部7cの下端は開口してチューブ11の上部が嵌合している。収容部7aの上方は開口しており、ステムラバー9とステム6とによって閉じられる。
【0029】
チューブ11は、合成樹脂から形成される従来公知のチューブないしパイプである。金属製であってもよい。この実施形態では上下に真っすぐに延びている。チューブ11を構成する合成樹脂は軟質樹脂でも硬質樹脂でもよい。ただしガス充填時にチューブ接続部7cから抜けたり緩んだりしないように、蓋体3のチューブ接続部7cにしっかりと嵌合し、容器本体2の底部2aを突っ張る程度の剛性を備えているものが好ましい。例えば内径0.5~5mmで外径1~7mmのポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン製で、長さ30~200mmのチューブが好ましい。
【0030】
吸液材12は、円筒状の側壁12aと、チューブ11の底部開口11aを閉じる底壁12bとからなる有底筒状の形態を有する。さらに図1の実施形態では、底壁12bの周囲に環状に拡がる円板状の底板12cを備えている。なお、液相Lの含有量を増やすため、長さ方向に延びる、あるいは周方向に延びる複数本のリブを設けてもよく、螺旋状のリブを設けてもよい。吸液材12は、液相Lを含浸させて保持できる繊維質材料、発泡樹脂、多孔質材料のものが用いられる。
【0031】
繊維質材料としては、たとえば、ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維、ポリアミド繊維、アクリル繊維、アラミド繊維などの合成繊維、とくに熱可塑性樹脂の繊維を集束して繊維体を形成し、得られた繊維体を加熱、圧縮して圧縮綿密化させ、これにポリウレタン樹脂、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂などの樹脂液を含浸させて乾燥、硬化させることにより得ることができる。木綿、麻、絹等の天然繊維を用いることもできる。繊維体は圧縮するときに型に入れることにより、所定の形状に形成することができる。
【0032】
発泡樹脂としては、たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエステル、ポリスチレンなどを発泡させて所定の形状に成形することにより製造された発泡樹脂を用いることができる。多孔質材料としては、たとえば、ゼオライト、活性炭などを用いることができる。
【0033】
また、底壁12bの厚さを側壁12aの厚さTの0.1~10倍程度にするなど、側壁12aと底壁12bで厚さを変えてもよい。吸液材12は繊維の束を糸で縛ることにより構成してもよく、チューブ11に被せた後に糸で縛ってもよい。液相Lの種類によっては、スポンジ状の連通気泡の多孔質材料を採用することができる。
【0034】
チューブ11の上端はハウジング7のチューブ接続部7cに接続され、下端は吸液材12の底壁12bに当接し、底壁12bを介して容器本体2の底部2aに突っ張っている。吸液材12は上部を除き、液相L内に浸されている。従って、噴射製品10が上下逆向き(図2A参照)あるいは横向き(図2B参照)でバルブ5が操作されたときでも、気相Gは、液相Lを含浸している吸液材12によって遮断され、チューブ11内には入らない。そして吸液材12に含侵されている液相Lのみがチューブ11を経由してバルブ5内に導入され、ハウジング7、ステム6を通って容器本体2の外に吐出される。具体的には、チューブ11下端の開口11aからチューブ11内に入り、ハウジング7の導入孔7dを通って収容部7a内に入り、ステム孔6aを通ってステム6内に入り込んだ後、容器本体2の外である噴射部材15を通り、外部に噴射される。また、吐出時に吸液材12の一部が液相Lと触れていれば液相Lが常にチューブ11下端の開口11aに供給される。そのため、チューブ11下端の開口11aが液相Lに浸っている必要はない。
【0035】
ところで液相Lの残量が少なくなり、液面高さが下がったときは、容器本体2が上下逆にされたり横向きにされると吸液材12は気相G内に露出する(図2A図2B参照)。その場合は容器本体2を振れば、液相Lが吸液材12に接触して含浸されるため、再び噴射できるようになる。吸液材12の下端の周囲の底板12cは、容器本体2の正立状態のときに液相Lとの接触面積を広くして吸液量を増やすためのものである。また、横向きのときに液相Lと接触しやすくする部位である。容器本体2を上下逆にして、あるいは横向きにして何度も噴射すると、吸液材12が乾燥し、最終的には気相Gが吸液材12を透過し、外部に噴射される懸念がある。しかし通常は噴射するたびに容器本体2が正立状態に戻されるので、再び吸液材12に液相Lが含浸され、次の噴射に備えることができる。
【0036】
図3に示す噴射製品20は、バルブとして定量バルブ21を採用したものである。他の部分については、吸液材12の形状が異なる以外は図1の噴射製品10と基本的に同一である。そのため、同一部分には同一の符号を付して説明を省略する。噴射製品20は、内容物Cを充填していない状態では噴射容器1である。
【0037】
定量バルブ21のハウジング7は、ステム6を収容する上部材22とチューブ接続部7cを有する下部材23とに分かれている。上部材22は筒状で、上下の中間部にステム挿通孔24aを備えた隔壁24が設けられている。ハウジング7の容積が1回あたりの噴射量であり、液相Lの成分によって異なるが、通常、医薬品、医薬部外品、化粧品などの人体用製品で0.01~1mL程度、殺虫剤、消臭芳香剤、除菌剤などの空間用製品で0.3~3mL程度が採用される。
【0038】
下部材23の上側は上部材22の内周と嵌合している。上部材22の隔壁24と下部材23の上端との間に、リング状のシール材25の周縁が挟まれて固定されている。シール材25は平坦な周縁部と、中央側の円錐台状の部分とを有し、中央にステム嵌合孔25aが形成されている。ステム6が上昇しているときは中央のステム嵌合孔25aが開放され、ステム6が押し下げられてステム嵌合孔25aに嵌合すると、シール材25の上下を遮断する。そのため、ハウジング7内の液相Lがなくなると噴射が止まる。それにより、1回分の噴射量がハウジング7の収容室の容量に制限され、使い過ぎを防止することができる。
【0039】
この噴射製品20では、液相Lの充填量を満注量の50%未満にしておき、蓋体3が上部に位置する上向き状態で吸液材12に液相Lが補充され、下向き状態で噴射する仕様にした場合、噴射するときは吸液材12が気相G中にあり、液相Lを吸液しない。したがって吸液材12に吸液された液相Lのみが噴射され、それ以上、液相Lは噴射されず、定量バルブ21の作用で気相Gも噴射されない。したがって使用量を制限したい医薬品、育毛剤、殺虫剤に向いている。
【0040】
なお、ステムを押している間中、開放されるバルブ5を用いている図1の噴射製品1では、上下逆のまま噴射を継続すると、あるいは何度も噴射すると、吸液材12に含侵されていた液相Lがなくなる。そうすると気相Gが吸液材12を透過し、外部に出てしまう可能性がある。そのため、使用者は吸液材12の液相Lがなくならないように、操作のたびに正立状態に戻し、上下逆のまま長時間の噴射をしないように注意する。
【0041】
定量バルブ21を用いている図3の噴射製品20では、吸液材12の吸液量を定量バルブ21の噴射容量より多くするのが好ましい。それにより定量バルブ21の機能を充分に発揮することができ、さらに気相Gの無駄な噴出を防止できる。すなわち、吸液材12の吸液量が定量バルブ21の噴射容量より少ない場合は、定量バルブ21内に液相Lが供給されると吸液材12に含浸されていた液相Lがほとんどなくなる。そして前述のように液相Lがなくなった後は、吸液材12を通して気相Gを吸い込むことになる。そのような事態を避けるため、吸液材12は充分に厚くするなど、吸液材12の吸液量を多くすることが望まれる。図3の噴射製品20では吸液材12の下端から広がる底板部12cを設けていない。しかし設けてもよい。
【0042】
吸液量を多くするには、吸液材12の厚さを厚くする。たとえば側壁12aの厚さTは1~10mm程度が好ましく、チューブ11の内径の1~5倍程度が好ましい。なお、吸液量が多くても、吸液体12の底壁12bが圧縮されているとチューブ11への吸引に律速になる。そのため、チューブ11の内径を1~5mmと太くしたり、側壁に穴やスリットを形成したりしてもよい。
【0043】
図4は噴射製品の別の実施形態を示している。図4の噴射製品30は、噴射容器1Aと、その噴射容器1に充填されている内容物Cとからなる。噴射容器1Aは、内容物Cを充填するための容器本体2と、この容器本体2の開口を閉じるネジキャップタイプの蓋体3と、蓋体3に取り付けられる加圧式のバルブ31とを備えている。容器本体2は筒状の首部2fが設けられ、蓋体3の内周には容器1の首部2fの外周の雄ねじ2gと螺合する雌ねじが設けられている。バルブ31には、ステム32を押し下げ操作する噴射部材33が装着されている。
【0044】
容器本体2は、内容物Cを充填するための耐圧容器であり、底部2aと、筒状の胴部2bと、胴部2bよりも小径であって、胴部2bの上部に一体的に設けられた筒状の首部2fとを備えている。首部2fの上端には開口2dが形成されている。また、この容器本体2は、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの合成樹脂、アルミニウム、ブリキなどの金属からなるが、特に限定されるわけではなく、種々の材質から形成される。
【0045】
加圧式のバルブ31は、常時は容器本体2内を密閉し、噴射部材33の操作時に、容器本体2内と外気とを連通し、容器本体2から原液(液相L)を噴射するための部材である。また、圧縮ガス(噴射剤、気相G)の加圧力により液相Lを噴射する第1噴射モードと、ポンプ操作の加圧力により液相Lを噴射する第2噴射モードの切り替えを実現するための部材でもあり、言わばエアゾールバルブとしての機能とポンプとしての機能とを兼ね備えた部材である。ただしエアゾールバルブとしての機能を省き、ポンプ機能のみを有する加圧式のバルブとすることもできる。
【0046】
この加圧式のバルブ31は、ハウジング34と、ハウジング34内に上下動自在に収容されるステム32と、同じくハウジング34内に上下動自在に収容され、ステム32の下動に対して遊びを持って追随するピストン部材35と、ステム32を上方に付勢する弾性体(バネ)8と、ステム32およびピストン部材35の上昇端の位置決めをする位置決め部材36とを有している。
【0047】
ハウジング34は、図4に示すように、上下端が開口した円筒状の部材であって、その内部空間が、ピストン部材35によって第1空間S1と第2空間S2とに区画されている。第1空間S1は、容器本体2から取り込まれる液相Lが通過または一時的に貯留される空間であって、ピストン部材35の下方に形成されており、第2空間S2は、ステム32がピストン部材35と当接するまで下降できる空間であって、ピストン部材35の上方に形成されている。
【0048】
ハウジング34の上端には、径外方向に延出するフランジ部34aが周設されている。フランジ部34aは、容器本体2にハウジング34を位置決めするための部位であり、フランジ部34aの外径は、容器本体2の口部の外径とほぼ同じである。フランジ部34aの下面と容器本体2の首部2fの上端との間には、環状のガスケット37が設けられている。
【0049】
ハウジング34の下端近傍には、弾性体8を挿入状態で支持するために、ハウジング34の胴部34bよりも小径とされたバネ支持部34cが形成されている。また、バネ支持部34cの下方には、チューブ11を接続するためのチューブ接続部34dが形成されている。チューブ11の上部はチューブ接続部34dの内部に嵌合されている。チューブ接続部34dはバネ支持部34cよりも小径とされている。バネ支持部34cとチューブ接続部34dとは液相連通孔34eによって連通している。この液相連通孔34eは、閉止モードにおいて、バネ支持部34c側に設けられたボール弁Bによって閉止されている。
【0050】
ボール弁Bは、容器本体2から第1空間S1への一方的な液相Lの取り込みを行う弁機構(ボール弁機構)を形成するために設けられている。ボール弁機構は、バネ支持部34cとチューブ接続部34dとの境界部近傍の内周面を下方に向かって小径にしてなるテーパー部に対し、ボール弁Bを落とし込むことで形成されている。ボール弁Bは、噴射部材33を操作しないときは、自重により液相連通孔34eを閉塞し、第1空間S1と容器本体2内とを区画する。一方で、第1噴射モードでは、容器本体2内の圧縮ガスの圧力によって浮き上がり、第1空間S1と容器本体2とが連通し、容器本体2内の原液が第1空間S1に導入される。第2噴射モードでは、ピストン部材の降下によりボール弁Bはテーパー部に押し付けられて第1空間S1と容器本体2内とを遮断し、第1空間S1の原液が加圧され、噴射される。第1空間S1の原液を噴射した後でピストン部材が上昇する際にボール弁Bが浮き上がり、次回噴射する原液が第1空間に導入される。
【0051】
ハウジング34の胴部の側面には、容器本体2内にステム32を経由して圧縮ガスや液化ガスなどの噴射剤を充填するための導入孔34hが形成されている。この導入孔34hは、常時はハウジング34の周囲に被せられているゴム製のパッキン37aによって閉じられている。このパッキン37aは、ステム32から圧縮ガスや加圧剤(噴射剤)を充填するときは、拡がって充填を可能とし、通常の状態では、パッキン37aの収縮力と容器本体2内の内圧によって閉じ、導入孔34hを塞ぐ。すなわちパッキン37aと導入孔34hは、逆止弁の作用をする。そのため、噴射製品30を下向きや横向きで噴射する場合も、内容物Cがハウジング34の第2空間S2内に侵入するのを防ぐことができる。パッキン37aは、容器本体2とハウジング34の間をシールするガスケット37と一体にすることもできる。なお、導入孔34hおよびパッキン37aは省略することもできる。その場合はアンダーカップ充填などで圧縮ガスや加圧剤(噴射剤)を充填する。
【0052】
加圧式のバルブ31は、容器本体2から取り込まれた液相Lを噴射部材33に送るための部材であり、上記の通り、ステム32と、ピストン部材35と、弾性体(バネ)8と、位置決め部材36とを備えている。
【0053】
ステム32は、内部ステム32aと、内部ステム32aの上部に装着され、ハウジング34の上端に形成された開口から突出する外部ステム32bとからなる。内部ステム32aと外部ステム32bは同軸上に配置されて結合され、一体となって上下動するようにハウジング34内に収容されている。ピストン部材35は内部ステム32aと外部ステム32bの間に所定の範囲で上下動可能となるように保持されている。弾性体8はステム32を常時上向きに付勢し、位置決め部材36はステム32の上昇端を規制する。
【0054】
図4の噴射製品30においても、チューブ11の外周に吸液材12が装着されている。吸液材12は図3のものと実質的に同じものであり、取付状態も実質的に同じである。そのため、実質的に同一の作用効果を奏する。例えば、チューブ11の下端が吸液材12を介して容器本体2の底部2aに当接している。この構成により、蓋体3を容器本体2に螺着するとき、チューブ11が外れたり緩んだりすることが防止される。そのため、噴射製品30を下向きにして噴射する場合でも、チューブ11と接続部34dの隙間から液漏れせずに、ハウジング34内の内容物Cを噴射することができる。また、定量バルブの場合と同様に、吸液材12の吸液量は、加圧式のバルブ31の1回当たりの噴射量より多くするのが好ましい。それにより吸液量によって噴射量が制限されなくなる。
【0055】
ピストン部材35は、ハウジング34の内部空間を第1空間S1と第2空間S2とに常に区画しつつも、第1空間S1と外気とを適宜連通するための部材である。このピストン部材35は、下端で内部ステム32aと係合し、上端で外部ステム32bと係合する内側筒状部35aと、この内側筒状部35aの外側に設けられ、ハウジング34の内面に沿って摺動する外側筒状部35bと、内側筒状部35aの下部近傍と外側筒状部35bの中央部近傍とを連結する連結部35cとを有している。
【0056】
そして容器本体2内の噴射剤の残量が多く内圧が高いときは、ステム32を少し下げて内側筒状部35aの下端を内部ステム32aから離すことにより、第1空間S1を外気と連通させて圧縮ガスの加圧力で液相Lを噴射することができる(第1噴射モード、エアゾール作用)。他方、噴射剤の残量が少なく容器本体2の内圧が低いときは、トリガー42aを強くひき、ステム32を大きく押し下げて内側筒状部35aの上端を外部ステム32bの下端で押し下げることにより、第1空間S1内の液相Lを加圧して外部に噴射させることができる(第2噴射モード、ポンプ作用)。
【0057】
噴射部材33は、外部ステム32bに装着される噴射ノズル部材38と、蓋体(ネジキャップ)3に装着される操作部材39と、噴射ノズル部材38をガイドするガイド部材40とを有している。噴射ノズル部材38はL字型の筒状体であり、縦材38aは外部ステム32bの上部に接続されるステム接続部とされ、横材38bは先端ノズル41を取り付けるノズル接続部とされている。また、縦材38aの上端の外周面の左右には、後述するレバー42の軸受に当接する回転軸38cが形成されている。
【0058】
操作部材39は、ステム32を摺動させるための部材であり、蓋体3の装着部に装着されるレバー支持部39aと、レバー支持部39aに軸支されたレバー42とを有する。レバー支持部39aの上端には、レバー42の後端を軸支するための回動軸39a1が形成されている。レバー42は、噴射時に使用者が操作する部位であり、一端が回動軸39a1に軸支され、他端が指を添えるトリガー42aとなっている。レバー42の中央部近傍には、噴射ノズル部材38の回転軸38cに対応する軸受が設けられている。したがってこの操作部材39では、トリガー42aを引くことにより、レバー42を下向きに回動させてステム32を下げることができる。その状態からトリガー42aを引く力を弱めると、ステム32を押し上げる弾性体8の付勢作用でレバー42が元の状態に戻る。
【0059】
上記構成の噴射製品30は、レバー42を操作しない非噴射状態(閉止モード)では、図4に示すように、弾性体8が内部ステム32aを上向きに付勢しているので、内側筒状部35aの下端が内部ステム32aの段部32a1に当接した状態を維持する。すなわち、内側筒状部35aの下端がシール部となっている。従って、液相Lが噴射されることはない。
【0060】
第1噴射モード、すなわち、液相Lを圧縮ガスによる加圧力で噴射する場合は、トリガー42aを引くことで、レバー42を回動軸39a2周りに回動させ、軸受24aを介して噴射ノズルを下方に押し下げる。それにより前述のようにピストン部材と下部ステム32aの間のシールが開放され、液相Lがエアゾール噴射される。
【0061】
第1噴射モードからさらにトリガー42aを引くと、シールの開放を維持したまま、ステム32がさらに下方へ移動する。すると前述のように、内側筒状部35aの上端に外部ステム32bの下端が当接し、ピストン部材35もハウジング34内を下方に向かって摺動し始める。そして第1空間S1内が加圧され、ボール弁Bで容器本体2内への戻りが抑制されるので、第1空間S1内の液相Lがポンプ噴射される。
【0062】
図5は噴射製品および噴射容器の別の実施形態を、噴射製品に着脱自在に装着する吐出部材と共に示している。図5の噴射製品50にはバルブを設けず、吐出部材51にバルブ52を設けている。噴射容器1Bの容器本体2に内容物Cを充填し、蓋体53で密閉することにより噴射製品50となる。そして、吐出部材51を噴射製品50に取り付けたときに、バルブ52のハウジング7の開封部7gで蓋体53を開封できるようにしている。
【0063】
前記噴射容器1Bは、容器本体2と、その容器本体2を封止する蓋体(封盤)53と、蓋体53の下面側に取り付けたチューブ11と、チューブ11の周囲に嵌合した吸液体12と、蓋体53とチューブ11の間に上下移動自在に収容されたボール弁Bとからなる。内容物Cは液相Lと気相Gとからなる。容器本体2は底部2aと、円筒状の胴部2bと、肩部2cと、円筒状の首部2fとからなる。首部2fの外周には雄ねじ2gが形成されている。この実施形態では、容器本体2の底部2aが、下向きに突出する環状の接地面2a1と、その中央に設けられる上向きに突出するドーム部2a2の上面とを備えている。底部2aは平坦にしてもよく、下向きに凸の球面状としてもよい。
【0064】
チューブ11の下端は吸液材12を介して容器本体2の底部2a、とくにドーム部2a2と当接しており、蓋体53を容器本体2に溶着する前は、蓋体53のフランジ部53bと容器本体2の上端面の間に隙間を確保できるように保持している。また、加圧剤(噴射剤)を充填し、蓋体53を容器本体2に押圧しながら超音波溶着するときに、チューブ11が下がって蓋体53から外れたり緩んだりしないように支持する。とくに超音波溶着のときは、振動でチューブ11が外れたり緩んだりしやすいが、チューブ11の下端を吸液材12を介して容器本体2の底部2aで支持するので、外れたり緩んだりしにくい。また、ドーム部2a2は弾性変形するので、チューブ11を上向きに押し上げる。それによりチューブ11は一層蓋体53から外れにくい。この実施形態では、吸液材12が液相L中に沈んでおり、吸液材12の上端が液面より下側に来ている。
【0065】
容器本体2はポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロンなどの熱可塑性樹脂製である。容器本体2は、たとえば容器用のプリフォームを製造し、首部2fの下端より下側の範囲をブロー成形することにより製造することができる。とくに所定形状のプリフォームをインジェクション成形し、ついでブロー成形するインジェクション・ブロー成形法が好ましい。インジェクション・ブロー成形の場合は、首部2fは延伸されないので厚く、強度が高い。そして肩部2cから胴部2bにかけては、首部2fよりは薄く、しかし耐圧性を有する肉厚(たとえば0.3~1mm)になるように成形する。
【0066】
前記蓋体53は図6Aに示すように、容器本体2の首部2f内に挿入される有底筒状の封止部53aと、その上端に連続する環状のフランジ53bとからなる。フランジ53bは、容器本体2の首部2fの上端面に超音波溶着される部位である。封止部53aは下方まで延びており、その封止部53aの周壁の内側に嵌合筒部53a1が同心状に設けられている。容器本体2の首部2fの上端面はフランジ53bを溶着しやすいように、断面が三角形状の溶着リブを環状に設けている。容器本体2の首部2fの内面は滑らかな円筒面である。
【0067】
嵌合筒部53a1の内部は、下端よりいくらか上で底部53cによって閉じられている。いくらか上にするのは、蓋体53を容器本体2に超音波溶着するとき、フランジの上面から付加する超音波振動で後述する切断線(薄肉部53f)が破断しないようにするためである。封止部53aの下端と嵌合筒部53a1の下端は環状の連結部53a2で連結されている。
【0068】
前記底部53cの中央に、破断により開封される閉鎖部53dが設けられており、閉鎖部53dは環状溝などの破断容易な薄肉部(破断部、弱め線)53fで囲まれている。閉鎖部53dの上面には、周囲に比して厚肉にされた受圧部53d1が設けられている。閉鎖部53dおよび受圧部53d1は通常は平面視円形である。ただし矩形など、他の形状を採用することもできる。
【0069】
受圧部53d1は閉鎖部53dの上面の略全体に設けられ、薄肉部53fは底部53cの上面に形成されている。なお、薄肉部53fは下面に形成してもよい。薄肉部53fはたとえばV溝からなる。薄肉部53fは破断した際に閉鎖部53dが落下しないように、一部に設けずに不連続にしてもよい。また、閉鎖部53dを落下させるために受圧部53d1の外周全体に連続してもよい。
【0070】
蓋体53の材料は容器本体2との熱接合性が高い熱可塑性樹脂が用いられ、溶着強度を高くするため、容器本体2と同じ材料を用いることが好ましい。図6Aあるいは図6Bに示すように、蓋体53で容器本体2を封止すると共に、容器本体2に溶着することにより、内容物C(液相Lおよび気相G)を長期間安全に、漏れないように保管しておくことができる。薄肉部53fは未開封では充分なシール機能があり、かつ、容易に破断できる形状とする。
【0071】
蓋体53の下面側には、筒状のチューブ接続部53eが設けられ、その内部にチューブ11の上端が嵌合されている。チューブ接続部53eの内面は、下端がチューブ11と嵌合する径が大きい部位で、つぎにボール弁Bが収容される部位で、その上側にはボール弁Bの径より小さい内径の段部53e1が形成されている。チューブ接続部53eの内部にはボール弁Bが上下動自在に収容されている。ボール弁Bはチューブ11や段部53e1の内径よりも大きい径を有する。このボール弁Bは、内容物Cが残った状態で吐出部材51を取り外しても、圧縮ガスの圧力によりボール弁Bが段部53e1に当接して内容物Cが飛び出さないようにするためのものである。
【0072】
図5の吐出部材51は、容器本体2の首部2fの雄ねじ2gと螺合するキャップ(装着部)54と、そのキャップ54に覆われたバルブ5と、バルブ5のステム6に装着される、吐出用ノズルを備えた噴射部材(操作部材)15とからなる。噴射部材15としては、押しボタンのほか、操作レバーなどを用いることができる。図5に示すように、キャップ20は有底筒状で、内周面に雌ねじが形成された、いわゆるネジキャップである。
【0073】
キャップ54とバルブ5とは一体化されており、バルブ5は、キャップ54の締め具合に連動して嵌合筒部53a1内を移動する。すなわち、図6Bに示す装着状態でキャップ54を締めれば、バルブ5は嵌合筒部53a1内に押し込まれ、キャップ54を緩めれば、バルブ5は嵌合筒部53a1から抜き出される方向に移動する。キャップ54の上底の中央には、ステム6を通す開口54aが形成されている。噴射部材15を装着していないキャップ54とバルブ5とは、バルブユニットないしバルブアッセンブリとして扱われる。
【0074】
図6Bに示すように、バルブ5は、有底筒状のハウジング7と、その内部に上下移動自在に収容されるステム6と、そのステム6を上向きに付勢する弾性体(バネ)8と、ステムラバー9と、ハウジング7の上部を保持する筒状のバルブ保持部55aを備えたバルブホルダ55とからなる。ステム6と、弾性体8と、ステムラバー9とで、吐出内容物の吐出状態と非吐出状態とを切り替えるバルブ機構が構成され、ハウジング7と、バルブホルダ55とでこのバルブ機構を収容する収容空間を構成している。
【0075】
この実施形態では、ハウジング7の下端に、下向きに突出する円柱状の開封部7gが設けられており、ハウジング7の下部外周にOリングなどのシール部材7hが装着されている。このシール部材7hは、開封時および開封後に蓋体53の嵌合筒部53a1の内周面とハウジング7の間をシールするものである。
【0076】
ハウジング7には、ハウジング7の内部と容器本体2内とを連通する通路として、ハウジング7の底部7bを上下に貫通する導入孔7dが設けられている。開封部7gの底面の高さ方向の位置は、キャップ54を容器本体2の雄ねじ2gに1~2回程度螺合させたときに受圧部53d1と当接する位置である。したがって出荷時、流通時にはキャップ54を緩く螺合させて閉鎖部53dを破断せず、シール状態のまま吐出部材51と容器本体2とを仮に結合させておくことができる。
【0077】
バルブホルダ55は、バルブ保持部55aと、バルブ保持部55aの上端から内側に延びる環状のラバー押さえ55bと、外側に拡がるフランジ55cとを備えており、ラバー押さえ55bの中央にステム6を通す孔55dが形成されている。
【0078】
使用者が購入した噴射製品50を使用する場合、まずキャップ54を容器本体2の雄ねじ2gにねじ込む。それによりキャップ54全体およびバルブ5が下降し、開封部7gが閉鎖部53dを押し下げる。それにより薄肉部53fが破断され容器本体2が開封される。閉鎖部53dは、一部が底部53cと繋がったままとなる(図6B参照)か、もしくは底部53cからちぎり取られ、分離されて脱落する。そして開封部7gが嵌合筒部53a1の底部53cを突き破り、ハウジング24内と容器本体2内とを連通させる(図6B参照)。
【0079】
吐出部材51を装着した後、使用者がステム6に取り付けた噴射部材15を押すと、ステム6が下降してステムラバー9が撓み、ステム孔6aが開く。容器本体2内の原液は圧縮ガスによって加圧されているので、開封部7g、ハウジング34、ステム32および操作部材15を経由して外部に吐出される。操作部材15から指を離すとステム6が上昇し、吐出が停止する。容器本体2の内部と外部とを連通するチューブ11の下端開口11aは、吸液材12で覆われているので、容器を下向きや横向きにして噴射操作されても、吸液剤12に保持されている原液を噴射することができ、圧縮ガス(気相G)が外部に漏れにくい。
【0080】
原液(液相L)を全量吐出した後は、キャップ54を回し、吐出部材51を容器本体2から取り外す。そして取り外した吐出部材51は新しい噴射製品50に取り付ける。液相Lが全量吐出された噴射製品50は、吸液体12に原液が保持されて濡れている間は気相Gの放出が妨げられるが、吸液体12が乾燥すると気相Gが透過しやすくなり、外部に放出され、容器本体2の内部は大気圧に戻る。そのため、安全にリサイクルすることができる。また、容器本体2と蓋体3を単一素材にすることができるため、リサイクルする際には分別しなくてもよく、リサイクルしやすい。
【0081】
以上に、この発明の実施形態について説明したが、この発明は上記実施形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することが可能である。バルブ5としては、ステム6を押し下げることで吐出するものの他、ステム6を傾倒させることで吐出するものを採用してもよい。
【符号の説明】
【0082】
10 噴射製品
1 噴射容器
2 容器本体
2a 底部
2b 胴部
2c 肩部
2d 開口
2e ビード部
2f 首部
2g 雄ネジ部
3 蓋体
3a 底壁
3b 周壁
3c 湾曲フランジ
3d バルブ取り付け部
4 ガスケット
C 内容物
G 気相
L 液相
5 バルブ
6 ステム
6a ステム孔
7 ハウジング
7a 収容部
7b 底部
7c チューブ接続部
7d 導入孔
7f バネ支持部
7g 開封部
7h シール部材
8 弾性体(バネ)
9 ステムラバー
11 チューブ
11a 開口(導入孔)
12 吸液材
12a 側壁
12b 底壁
12c 底板
T (側壁の)厚さ
15 噴射部材
20 噴射製品
21 定量バルブ
22 上部材
23 下部材
24 隔壁
24a ステム挿通孔
25 シール材
25a ステム嵌合孔
30 噴射製品
1A 噴射容器
31 (加圧式の)バルブ
32 ステム
32a 内部ステム
32a1 段部
32b 外部ステム
33 噴射部材
34 ハウジング
34a フランジ部
34b 胴部
34c バネ支持部
34d チューブ接続部
34e 液相連通孔
34h 導入孔
B ボール弁
35 ピストン部材
35a 内側筒状部
35b 外側筒状部
35c 連結部
36 位置決め部材
37 ガスケット
37a パッキン
38 噴射ノズル部材
38a 縦材
38b 横材
38c 回転軸
39 操作部材
39a レバー支持部
39a1 回動軸
40 ガイド部材
41 先端ノズル
42 レバー
42a トリガー
50 噴射製品
1B 噴射容器
2a1 接地面
2a2 ドーム部
51 吐出部材
52 バルブ
53 蓋体
53a 封止部
53a1 嵌合筒部
53a2 連結部
53b フランジ部
53c 底部
53d 閉鎖部
53d1 受圧部
53f 薄肉部
53e チューブ接続部
53e1 段部
54 キャップ
54a 開口
55 バルブホルダ
55a バルブ保持部
55b ラバー押さえ
55c フランジ
55d 孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6