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特開2023-75876シャシダイナモメータで用いられる運転用ロボット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023075876
(43)【公開日】2023-05-31
(54)【発明の名称】シャシダイナモメータで用いられる運転用ロボット
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/007 20060101AFI20230524BHJP
【FI】
G01M17/007 D
G01M17/007 A
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021201222
(22)【出願日】2021-11-19
(71)【出願人】
【識別番号】316005904
【氏名又は名称】サンエンジニアリング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】後藤 昌博
(57)【要約】
【課題】 簡単な構造で、小型かつコンパクトで、コスト的にも安価であり、しかも簡単に持ち運びできるとともに、短時間でのセッティングが可能であり、単純だが画期的な装置であるシャシダイナモメータで用いられる運転用ロボットを得る。
【解決手段】 運転席2前の車室床面3上に設置される箱状本体10と、運転時に踏み込み操作される操作ペダル4,5を自動運転操作するための踏み込み操作手段20と、この踏み込み操作手段を駆動する駆動手段とを備えている。踏み込み操作手段は、基端部が前記箱状本体に対し揺動自在に支持され、自由端部が前記操作ペダル4,5に向かって延びたアーム部21と、このアーム部の長手方向に沿ってスライド可能に設けられた支持部22と、この支持部に回転自在に軸支され転動しながらペダルに踏み込み力を与えるローラ23とによって構成されている
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輌の各種走行試験を行うシャシダイナモメータで用いられる運転用ロボットであって、
運転席前の車室床面上に設置される箱状本体と、
運転時に踏み込み操作される操作ペダルを自動運転操作するための踏み込み操作手段と、
この踏み込み操作手段を駆動する駆動手段とを備え、
前記踏み込み操作手段は、基端部が前記箱状本体に対し揺動自在に支持され、自由端部が前記操作ペダルに向かって延びたアーム部と、このアーム部の長手方向に沿ってスライド可能に設けられた支持部と、この支持部に回転自在に軸支され転動しながらペダルに踏み込み力を与えるローラとによって構成されていることを特徴とするシャシダイナモメータで用いられる運転用ロボット。
【請求項2】
請求項1記載のシャシダイナモメータで用いられる運転用ロボットにおいて、
前記ローラは、前記アーム部が揺動動作したときに前記操作ペダルに当接してこれを所定の速度と所定の踏み込み量で踏み込み操作されるように構成されていることを特徴とするシャシダイナモメータで用いられる運転用ロボット。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載のシャシダイナモメータで用いられる運転用ロボットにおいて、
前記ローラが軸支されている支持部は、前記ローラが前記操作ペダルを所定の速度と所定の踏み込み量で踏み込み操作可能となるように、前記アーム部に対するスライド位置を調整可能に構成されていることを特徴とするシャシダイナモメータで用いられる運転用ロボット。
【請求項4】
請求項1、請求項2または請求項3記載のシャシダイナモメータで用いられる運転用ロボットにおいて、
前記アーム部の自由端部側に軸支されているローラが前記操作ペダルから離れている場合に、前記操作ペダルの下端部を下方に延長させて前記アーム部自由端部側に軸支されているローラから外れないためのペダル延長アダプタを用いることを特徴とするシャシダイナモメータで用いられる運転用ロボット。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のシャシダイナモメータで用いられる運転用ロボットにおいて、
前記踏み込み操作手段と前記駆動手段とを、非常停止時に切り離す非常停止手段を設けていることを特徴とするシャシダイナモメータで用いられる運転用ロボット。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のシャシダイナモメータで用いられる運転用ロボットにおいて、
運転席前の車室床面上の設置スペースが箱状本体の設置大きさよりも狭い場合に、運転席前の車室床面上に、前記操作ペダルを踏み込み操作可能なローラ付きアーム部を有する狭所用の補助アクチュエータを設置し、
これを隣接する広い設置スペースに設置した前記箱状本体にケーブル接続することにより、遠隔操作可能に構成したことを特徴とするシャシダイナモメータで用いられる運転用ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車輌の馬力や燃費の測定等といった各種走行試験等に用いられるシャシダイナモメータにおいて、被試験車輌を運転操作する際に用いられる運転用ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
車輌の各種走行試験を行う際に用いられるシャシダイナモメータは、一般的に、試験室内に搬入した車輌の駆動輪を、当該車輌の幅方向を回転軸方向とするローラ上を載せ、該駆動輪を運転状態と同様に回転駆動させることで、走行状態と同様の状況として各種試験を行うような構成となっている。
【0003】
このようなシャシダイナモメータによる車輌の走行試験時に、運転席や運転席前の車室床面上に設置されることにより、車輌のアクセルペダルやブレーキペダル等を遠隔操作で操作するための運転用ロボットが用いられている。
【0004】
このような運転用ロボットとして、従来一般的には、運転席に装着固定され、人間の足を模したシリンダ・ピストン等を使用した直線運動のアクチュエータを用いた構造のものが主流であった(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実公平6-43722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した従来の運転用ロボットによれば、装置全体の構成が複雑となり、全体も大型化し易く、重量も重くなり、何よりもシャシダイナモメータによる試験時においてのセッティングやティーチングに時間がかかってしまうという問題があった。
【0007】
また、従来の運転用ロボットによれば、シリンダ・ピストンなどによる直線運動はアクチェータと操作ペダルの境界に何らかの工夫をしなければスムーズなペダル動作ができない、という問題があった。さらに、このような直線運動のアクチュエータを、ブレーキペダルやアクセルペダルに正しく位置合わせしたり、所要の状態で踏み込み操作できるように構成する必要があるが、その位置合わせ作業や位置決め作業が面倒かつ煩雑であり、作業性の面でも構造上からも問題であった。
【0008】
また、このような運転用ロボットによれば、車輌の環境試験を行うにあたって電波暗室内で行う際には、電波の反射などの影響がなくなるように、例えば高価な樹脂製のアクチェータを使う必要があるが、このような点にも配慮することが望まれる。
【0009】
さらに、この種の運転用ロボットには、運転席周りで微小な電磁界の変化も許されない電波暗室の中で完全樹脂製の遠隔操作機を使い、電磁界に影響を与えない無人運転が可能になるような構成とすることも望まれており、このような要請を満足し得ることも必要となっている。
【0010】
また、このような運転用ロボットによれば、例えば何らかの引っかかりで車輌が暴走したりするといった非常状態時においては、何らかの非常停止手段を設け、アクチュエータがブレーキペダルやアクセルペダルから開放されることが必要となるものであり、このような問題をも解決し得る何らかの対策を講じることが望まれている。
【0011】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、簡単な構造で、小型かつコンパクトで、コスト的にも安価であり、しかも簡単に持ち運びできるとともに、短時間でのセッティングも可能であり、単純だが画期的な装置であるシャシダイナモメータで用いられる運転用ロボットを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このような目的に応えるために本発明(請求項1記載の発明)に係るシャシダイナモメータで用いられる運転用ロボットは、車輌の各種走行試験を行うシャシダイナモメータで用いられる運転用ロボットであって、
運転席前の車室床面上に設置される箱状本体と、運転時に踏み込み操作される操作ペダルを自動運転操作するための踏み込み操作手段と、この踏み込み操作手段を駆動する駆動手段とを備え、
前記踏み込み操作手段は、基端部が前記箱状本体に対し揺動自在に支持され、自由端部が前記操作ペダルに向かって延びたアーム部と、このアーム部の長手方向に沿ってスライド可能に設けられた支持部と、この支持部に回転自在に軸支したローラとによって構成されていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明(請求項2記載の発明)に係るシャシダイナモメータで用いられる運転用ロボットは、請求項1において、
前記ローラは、前記アーム部が揺動動作したときに前記操作ペダルに当接してこれを所定の速度と所定の踏み込み量で踏み込み操作されるように構成されていることを特徴とする。
【0014】
さらに、本発明(請求項3記載の発明)に係るシャシダイナモメータで用いられる運転用ロボットは、請求項1または請求項2において、
前記ローラが軸支されている支持部は、前記ローラが前記操作ペダルを所定の速度と所定の踏み込み量で踏み込み操作可能となるように、前記アーム部に対するスライド位置を調整可能に構成されていることを特徴とする。
【0015】
また、本発明(請求項4記載の発明)に係るシャシダイナモメータで用いられる運転用ロボットは、請求項1、請求項2または請求項3において、
前記アーム部の自由端部側に軸支されているローラが前記操作ペダルから離れている場合に、前記操作ペダルの下端部を下方に延長させて前記アーム部自由端部側に軸支されているローラから外れないためのペダル延長アダプタを用いることを特徴とする。
【0016】
さらに、本発明(請求項5記載の発明)に係るシャシダイナモメータで用いられる運転用ロボットは、請求項1ないし請求項4のいずれか1項において、
前記踏み込み操作手段と前記駆動手段とを、非常停止時に切り離す非常停止手段を設けていることを特徴とする。
【0017】
また、本発明(請求項6記載の発明)に係るシャシダイナモメータで用いられる運転用ロボットは、請求項1ないし請求項5のいずれか1項において、
運転席前の車室床面上の設置スペースが箱状本体の設置大きさよりも狭い場合に、運転席前の車室床面上に、前記操作ペダルを踏み込み操作可能なローラ付きアーム部を有する狭所用の補助アクチュエータを設置し、
これを隣接する広い設置スペースに設置した前記箱状本体にケーブル接続することにより、遠隔操作可能に構成したことを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、車輌のアクセルペダル、ブレーキペダル、クラッチペダル等の操作ペダルは、車室内において床上か床下かに回転中心がある円運動であるのに対し、揺動運動するアーム部の揺動端に装着したローラによって、操作ペダルが踏み込まれると摩擦で自然に回転し、踏み込みストローク量が可逆的に調整され、良好な動作が確保されることになる。ここで、可逆的とは、押す、戻る動作がヒステリシスを持たない線形的な動作である、ことを言う。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように本発明に係るシャシダイナモメータで用いられる運転用ロボットによれば、運転席前の車室床面上に設置される箱状本体に、操作ペダルの踏み込み操作手段としてローラを有するアーム部を設けるようにしたので、簡単な構造で、小型かつコンパクトで、コスト的にも安価であり、しかも簡単に持ち運びできるとともに、短時間でのセッティングも可能であり、単純だが画期的な装置としてのシャシダイナモメータで用いられる運転用ロボットを得ることができる。
【0020】
特に、本発明によれば、小型の箱状本体内に、サーボモータ、減速機、サーボアンプ等の駆動手段を詰め込み、また箱状本体の外側に揺動運動可能なアーム、非常停止用のエアクラッチを装着することにより、全体が小型かつコンパクトで、軽く持ち運びできるとともに、運転席前の車室床面上に簡単に、しかも安定して設置することができる。
【0021】
また、本発明によれば、設置状態において、アクセルペダル、ブレーキペダル等の操作ペダルとほぼ同じ高さとすることができるから、電波暗室内等でのEMC環境の試験においては、電波の反射などの影響がないばかりでなく、高価な樹脂製のアクチェータを使う必要もない等の利点もある。
【0022】
さらに、本発明によれば、運転席周りの微小な電磁界の変化も許されない電波暗室の中において、たとえば完全樹脂製の遠隔操作機等を用いるとともに、金属製のロボット本体部分は車輌外の電磁波の影響を受けない、床下などに設置することで、無人運転が可能となるような構成とすることもできる。勿論、この場合、操作ワイヤーは樹脂製とするとよい。さらに、極微小な電磁界変化も許されない場合は、樹脂製の遠隔操作機を使うようにすることもできる。
【0023】
さらに、本発明によれば、車輌のアクセルペダル、ブレーキペダル、クラッチペダル等の操作ペダルは、車室内において床上か床下かに回転中心がある円運動であって、従来の運転用ロボットのように、シリンダ・ピストンなどによる直線運動はアクチェータと操作ペダルの境界に何らかの工夫をしなければスムーズなペダル動作ができない、という問題があったが、本発明の運転用ロボットのような揺動運動するアーム部では、ローラが揺動端に装着され、操作ペダルが踏み込まれると摩擦で自然に回転し、踏み込みストローク量が可逆的に調整され、良好な動作が確保されることが実験で実証されている。
【0024】
稀に ブレーキペダルに幅が広く 縦方向の長さが短いものがあるが、その操作ペダルには長いペダルのアダプタを取り付けると、ローラが操作ペダルから外れるといったトラブルが解消されることになる。
【0025】
また、本発明によれば、運転用ロボットで最も重要な装備として、踏み込み操作手段と前記駆動手段とを、非常停止時に切り離す非常停止手段を設けることにより、アクセルペダル、ブレーキペダルを開放するように、駆動手段を切り離し可能となっているので、非常停止にあたって、迅速かつ確実に駆動手段とアクセルペダル、ブレーキペダル等を開放することができる。
【0026】
さらに、本発明によれば、狭所用の補助アクチュエータを用い、別置した運転用ロボットの箱状本体にケーブル接続するようにしているので、車室内のスペース問題にも制約の受けない運転用ロボットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】 本発明に係るシャシダイナモメータで用いられる運転用ロボットの一実施形態を示す概略斜視図。
図2図1の運転用ロボットを平面方向から見た概略図。
図3図1の運転用ロボットの使用状態を示す概略側面図。
図4図1の運転用ロボットを示す概略側面図。
図5】 本発明に係る運転用ロボットにおける踏み込み操作手段のアーム部揺動端に設けたローラによるペダル踏み込み動作を説明するための説明図。
図6】 本発明に係るシャシダイナモメータで用いられる運転用ロボットの他の実施形態を示す概略斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1ないし図5は本発明に係るシャシダイナモメータで用いられる運転用ロボットの一実施形態を示す。
【0029】
これらの図において、全体を符号1で示す運転用ロボットは、車輌の各種走行試験を行うシャシダイナモメータ(図示せず)で用いられるものであって、運転席2前の車室床面3上に設置される箱状本体10を備えている。この箱状本体10は、前記車室床面3上に設置される程度の小さい箱体となるように金属製ボックスとして形成され、その内部に後述する踏み込み操作手段20を駆動する駆動手段を構成するサーボモータ、減速機、サーボアンプ(いずれも図示せず)等が適宜の位置に配置されている。
【0030】
ここで、このような箱状本体10は、できるだけ小型かつコンパクトな構造をもって金属材で形成されるとともに、全体が所要の重量(例えば18Kg程度)をもち、被試験車輌の運転席2前の車室床面(運転者の足下でアクセルペダル4やクラッチペダル5等の操作ペダル近くの床面)上に設置することで、ペダルの戻り力に抗して安定した設置状態を維持できるように構成されている。図中符号12は、箱状本体10の上部に設けられた取っ手であり、箱状本体10の持ち運びを簡単に行えるように構成されている。
【0031】
なお、必要に応じて適宜のウエイト部材を載せるように構成してもよい。さらに、この箱状本体10の設置面にラバーや適宜の係着部材を設け、設置床面3との係着性を維持できるように構成してもよい。
【0032】
なお、上述した操作ペダル4,5の上方には、周知の通り、舵取りハンドル(図示せず)やダッシュボード部6(図3参照)が張り出した状態で設けられているが、運転席2前の車室床面3上に設置した運転用ロボット1によれば、上記操作ペダル4,5の自動的な踏み込み操作などの運転操作が容易に行える。
【0033】
本発明によれば、上述した構成によるシャシダイナモメータで用いられる運転用ロボット1において、運転時に踏み込み操作される操作ペダルとしてのアクセルペダル4、ブレーキペダル5を自動運転操作するための踏み込み操作手段20を、基端部が前記箱状本体10に対し揺動自在に支持され、自由端部(揺動端)が前記操作ペダル4,5に向かって延びたアーム部21と、このアーム部21の長手方向に沿ってスライド可能に設けられた支持部22と、この支持部22に回転自在に軸支したローラ23とによって構成している。
【0034】
ここで、前記ローラ23は、図4図5から明らかなように、前記アーム部21が揺動動作したときに前記操作ペダル4,5に当接してこれを所定の速度と所定の踏み込み量で踏み込み操作されるように構成されている。
【0035】
そして、前記ローラ23が軸支されている支持部22は、前記ローラ23が前記操作ペダル4,5を所定の速度と所定の踏み込み量で踏み込み操作可能となるように、前記アーム部21に対するスライド位置を調整可能に構成されている。これにより、アクセルペダル4、ブレーキペダル5の距離を調節できる。
【0036】
また、前記ローラ23は、支持部22に設けた支軸に対し游転可能に支持され、この支軸上で軸方向に移動可能に構成されている。これにより、ローラ23は、前後、左右に調整できるから、操作ペダル4,5との位置合わせを容易に行える。
【0037】
なお、前記アーム部21の自由端部側に軸支されているローラ23が前記操作ペダル4,5から離れている場合に、前記操作ペダル4,5の下端部を下方に延長させて前記アーム部21自由端部側に軸支されているローラ23との位置関係を調整するために、適宜の形状によるペダル延長アダプタを予め準備し、必要に応じて操作ペダル4,5の先端部分などに装着して用いてもよいことは言うまでもない。
【0038】
稀に ブレーキペダル5に幅が広く 縦方向の長さが短いものがあるが、その操作ペダルには長いペダルの延長アダプタを取り付けると、ローラ23が操作ペダル4,5から外れるといったトラブルが解消されることになる。
【0039】
また、上述した運転用ロボット1において、前記踏み込み操作手段20と前記駆動手段(前記箱状本体10内に設けたサーボモータ等による)とを、非常停止時に切り離すことで車輌の暴走を防止するための非常停止手段として非常停止用のエアクラッチ(24)を設けるように構成している。
【0040】
ここで、図中24は、エアクラッチ付軸支部であり、この部分に供給されているエアの供給を切断することでクラッチを切断し、ペダルを操作するアーム部21をフリーにし、開放した操作ペダル4,5はバネの力で直ぐに元に戻るように構成している。これは、アーム部21、支持部22、ローラ23は樹脂材とジュラルミンなどで形成されるため、軽く、ペダルのバネで簡単に戻る。
【0041】
なお、図中30は非常停止用エア接続口である。ここで、切り離し手段として電磁クラッチを用いることも自由である。
このような非常停止手段を用いると、運転用ロボット1による安全装置を、コストをかけずに、簡単に装着することができ、実用面で有利である。
【0042】
上述した構成によれば、車輌のアクセルペダル4、ブレーキペダル5等の操作ペダルは、車室内において床上か床下かに回転中心がある円運動であるのに対し、揺動運動するアーム部21の揺動端に装着したローラ23によって、操作ペダル4,5が踏み込まれると摩擦で自然に回転し、踏み込みストローク量が可逆的に調整され、良好な動作が確保されることになる。
【0043】
これにより、本発明による運転用ロボット1によれば、従来のように、シリンダ・ピストンなどによる直線運動はアクチェータと操作ペダルの境界に何らかの工夫をしなければスムーズなペダル動作ができない、という問題を解消することができる。
【0044】
稀に ブレーキペダル5に幅が広く 縦方向の長さが短いものがあるが、その操作ペダルには長いペダルのアダプタを取り付けると、ローラが操作ペダルから外れるといったトラブルが解消される。
【0045】
以上のような本発明による運転用ロボット1によれば、運転席2前の車室床面3上に設置される箱状本体10に、操作ペダル4,5の踏み込み操作手段20としてローラ23を有するアーム部21を設けているので、簡単な構造で、小型かつコンパクトで、コスト的にも安価であり、しかも簡単に持ち運びできるとともに、短時間でのセッティングも可能であり、単純だが画期的な装置としてのシャシダイナモメータで用いられる運転用ロボット1を得ることができる。
【0046】
特に、上述した構成によれば、小型の箱状本体10内に、サーボモータ、減速機、サーボアンプ等の駆動手段を詰め込み、また箱状本体の外側に揺動運動可能なアーム部21、非常停止用のエアクラッチ(エアクラッチ付軸支部24)を装着することにより、全体が小型かつコンパクトで、軽く持ち運びできるとともに、運転席2前の車室床面3上に簡単に、しかも安定して設置することができる。
【0047】
また、上述した構成によれば、設置状態において、アクセルペダル4、ブレーキペダル5等の操作ペダルとほぼ同じ高さとすることができるから、電波暗室内等でのEMC環境の試験においては、電波の反射などの影響がないばかりでなく、高価な樹脂製のアクチェータを使う必要もない等の利点もある。
【0048】
なお、本発明は上述した実施の形態で説明した構造には限定されず、運転用ロボット1を構成する各部の形状、構造等を適宜変形、変更し得ることはいうまでもない。
たとえば図6に示すように、運転席2前の車室床面3上の設置スペースが箱状本体10の設置大きさよりも狭い場合に、運転席2前の車室床面3上に、遠隔操作機として、前記操作ペダル4,5を踏み込み操作可能なローラ53付きアーム部51を有する狭所用の補助アクチュエータ50を設置し、これを隣接する広い設置スペースに設置した前記箱状本体10にケーブル56で接続することにより、遠隔操作可能に構成してもよい。ここで、図6中、52は支持部、54はエアクラッチ付軸支部である。
【0049】
このような構成によれば、狭所用の補助アクチュエータ50を用い、別置した運転用ロボット1の箱状本体10にケーブル56で接続しているから、車室内のスペース問題にも制約の受けない運転用ロボットを提供できる。特に、運転席下の隙間が小さい場合でも、本発明の運転用ロボット1を利用して、所要の性能試験を適切かつ円滑に行える。
【0050】
ここで、上述した「隣接する広い設置スペース」には、車輌内の助手席前のスペースに限らず、車輌から離れた別の場所を含むものとする。例えば、試験車輌から離れ電磁界の影響を受けない、床下などの適宜の場所に設置し、ワイヤー等でケーブル接続するようにしてもよい。この場合、操作ワイヤーは、樹脂製のものを用いるとよい。
【符号の説明】
【0051】
1…運転用ロボット
2…運転席
3…車室床面
4…アクセルペダル(操作ペダル)
5…ブレーキペダル(操作ペダル)
10…箱状本体
20…踏み込み操作手段
21…アーム部
22…支持部
23…ローラ
24…エアクラッチ付軸支部
30…非常停止用エア接続口
50…狭所用の補助アクチュエータ
51…アーム部
53…ローラ
56…ケーブル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2023-03-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輌の各種走行試験を行うシャシダイナモメータで用いられる運転用ロボットであって、
全体が所要の重量をもち、運転席前の車室床面上に設置することで、前記操作ペダルの戻り力に抗して安定した設置状態を維持できるように構成されている金属製の箱状本体と、
運転時に踏み込み操作される操作ペダルを自動運転操作するための踏み込み操作手段と、
この踏み込み操作手段を駆動する駆動手段とを備え、
前記踏み込み操作手段は、基端部が前記箱状本体に対し揺動自在に支持され、自由端部が前記操作ペダルに向かって延びたアーム部と、このアーム部の長手方向に沿ってスライド可能に設けられた支持部と、この支持部に回転自在に軸支され転動しながら前記操作ペダルに踏み込み力を与えるローラとによって構成されていることを特徴とするシャシダイナモメータで用いられる運転用ロボット。
【請求項2】
請求項1記載のシャシダイナモメータで用いられる運転用ロボットにおいて、
前記ローラは、前記アーム部が揺動動作したときに前記操作ペダルに当接してこれを所定の速度と所定の踏み込み量で踏み込み操作するように構成されていることを特徴とするシャシダイナモメータで用いられる運転用ロボット。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載のシャシダイナモメータで用いられる運転用ロボットにおいて、
前記ローラが軸支されている支持部は、前記ローラが前記操作ペダルを所定の速度と所定の踏み込み量で踏み込み操作可能となるように、前記アーム部に対するスライド位置を調整可能に構成されていることを特徴とするシャシダイナモメータで用いられる運転用ロボット。
【請求項4】
請求項1、請求項2または請求項3記載のシャシダイナモメータで用いられる運転用ロボットにおいて、
前記アーム部の自由端部側に軸支されているローラが前記操作ペダルから離れている場合に、前記操作ペダルの下端部を下方に延長させて前記アーム部自由端部側に軸支されているローラから外れないためのペダル延長アダプタを用いることを特徴とするシャシダイナモメータで用いられる運転用ロボット。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のシャシダイナモメータで用いられる運転用ロボットにおいて、
前記踏み込み操作手段と前記駆動手段とを、非常停止時に切り離す非常停止手段を備え、
この非常停止手段は、前記アーム部の基端部を軸支するエアクラッチ付軸支部を有し、非常停止時において、このエアクラッチ部分に供給されているエアの供給を切断するように構成されていることを特徴とするシャシダイナモメータで用いられる運転用ロボット。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のシャシダイナモメータで用いられる運転用ロボットにおいて、
運転席前の車室床面上の設置スペースが箱状本体の設置大きさよりも狭い場合に、運転席前の車室床面上に、前記操作ペダルを踏み込み操作可能なローラ付きアーム部を有する狭所用の補助アクチュエータを設置し、
これを隣接する広い設置スペースに設置した前記箱状本体にケーブル接続することにより、遠隔操作可能に構成したことを特徴とするシャシダイナモメータで用いられる運転用ロボット。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車輌の馬力や燃費の測定等といった各種走行試験等に用いられるシャシダイナモメータにおいて、被試験車輌を運転操作する際に用いられる運転用ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
車輌の各種走行試験を行う際に用いられるシャシダイナモメータは、一般的に、試験室内に搬入した車輌の駆動輪を、当該車輌の幅方向を回転軸方向とするローラ上を載せ、該駆動輪を運転状態と同様に回転駆動させることで、走行状態と同様の状況として各種試験を行うような構成となっている。
【0003】
このようなシャシダイナモメータによる車輌の走行試験時に、運転席や運転席前の車室床面上に設置することにより、車輌のアクセルペダルやブレーキペダル等を遠隔操作で操作するための運転用ロボットが用いられている。
【0004】
このような運転用ロボットとして、従来一般的には、運転席に装着固定され、人間の足を模したシリンダ・ピストン等を使用した直線運動のアクチュエータを用いた構造のものが主流であった(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実公平6-43722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した従来の運転用ロボットによれば、装置全体の構成が複雑となり、全体も大型化し易く、重量も重くなり、何よりもシャシダイナモメータによる試験時においてのセッティングやティーチングに時間がかかってしまうという問題があった。
【0007】
また、従来の運転用ロボットによれば、シリンダ・ピストンなどによる直線運動はアクチェータと操作ペダルの境界に何らかの工夫をしなければスムーズなペダル動作ができない、という問題があった。さらに、このような直線運動のアクチュエータを、ブレーキペダルやアクセルペダルに正しく位置合わせしたり、所要の状態で踏み込み操作できるように構成する必要があるが、その位置合わせ作業や位置決め作業が面倒かつ煩雑であり、作業性の面でも構造上からも問題であった。
【0008】
また、このような運転用ロボットによれば、車輌の環境試験を行うにあたって電波暗室内で行う際には、電波の反射などの影響がなくなるように、例えば高価な樹脂製のアクチェータを使う必要があり、このような点にも配慮することが望まれる。
【0009】
さらに、この種の運転用ロボットには、運転席周りで微小な電磁界の変化も許されない電波暗室の中で完全樹脂製の遠隔操作機を使い、電磁界に影響を与えない無人運転が可能になるような構成とすることも望まれており、このような要請を満足し得ることも必要となっている。
【0010】
また、このような運転用ロボットによれば、例えば何らかの引っかかりで車輌が暴走したりするといった非常状態時においては、何らかの非常停止手段を設け、アクチュエータがブレーキペダルやアクセルペダルから開放されることが必要となるものであり、このような問題をも解決し得る何らかの対策を講じることが望まれている。
【0011】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、簡単な構造で、小型かつコンパクトで、コスト的にも安価であり、しかも簡単に持ち運びできるとともに、短時間でのセッティングも可能であり、単純だが画期的な装置であるシャシダイナモメータで用いられる運転用ロボットを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このような目的に応えるために本発明(請求項1記載の発明)に係るシャシダイナモメータで用いられる運転用ロボットは、車輌の各種走行試験を行うシャシダイナモメータで用いられる運転用ロボットであって、
全体が所要の重量をもち、運転席前の車室床面上に設置することで、前記操作ペダルの戻り力に抗して安定した設置状態を維持できるように構成されている金属製の箱状本体と、運転時に踏み込み操作される操作ペダルを自動運転操作するための踏み込み操作手段と、この踏み込み操作手段を駆動する駆動手段とを備え、
前記踏み込み操作手段は、基端部が前記箱状本体に対し揺動自在に支持され、自由端部が前記操作ペダルに向かって延びたアーム部と、このアーム部の長手方向に沿ってスライド可能に設けられた支持部と、この支持部に回転自在に軸支され転動しながら前記操作ペダルに踏み込み力を与えるローラとによって構成されていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明(請求項2記載の発明)に係るシャシダイナモメータで用いられる運転用ロボットは、請求項1において、
前記ローラは、前記アーム部が揺動動作したときに前記操作ペダルに当接してこれを所定の速度と所定の踏み込み量で踏み込み操作するように構成されていることを特徴とする。
【0014】
さらに、本発明(請求項3記載の発明)に係るシャシダイナモメータで用いられる運転用ロボットは、請求項1または請求項2において、
前記ローラが軸支されている支持部は、前記ローラが前記操作ペダルを所定の速度と所定の踏み込み量で踏み込み操作可能となるように、前記アーム部に対するスライド位置を調整可能に構成されていることを特徴とする。
【0015】
また、本発明(請求項4記載の発明)に係るシャシダイナモメータで用いられる運転用ロボットは、請求項1、請求項2または請求項3において、
前記アーム部の自由端部側に軸支されているローラが前記操作ペダルから離れている場合に、前記操作ペダルの下端部を下方に延長させて前記アーム部自由端部側に軸支されているローラから外れないためのペダル延長アダプタを用いることを特徴とする。
【0016】
さらに、本発明(請求項5記載の発明)に係るシャシダイナモメータで用いられる運転用ロボットは、請求項1ないし請求項4のいずれか1項において、
前記踏み込み操作手段と前記駆動手段とを、非常停止時に切り離す非常停止手段を備え、
この非常停止手段は、前記アーム部の基端部を軸支するエアクラッチ付軸支部を有し、非常停止時において、このエアクラッチ部分に供給されているエアの供給を切断するように構成されていることを特徴とする。
【0017】
また、本発明(請求項6記載の発明)に係るシャシダイナモメータで用いられる運転用ロボットは、請求項1ないし請求項5のいずれか1項において、
運転席前の車室床面上の設置スペースが箱状本体の設置大きさよりも狭い場合に、運転席前の車室床面上に、前記操作ペダルを踏み込み操作可能なローラ付きアーム部を有する狭所用の補助アクチュエータを設置し、
これを隣接する広い設置スペースに設置した前記箱状本体にケーブル接続することにより、遠隔操作可能に構成したことを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、車輌のアクセルペダル、ブレーキペダル、クラッチペダル等の操作ペダルは、車室内において床上か床下かに回転中心がある円運動であるのに対し、揺動運動するアーム部の揺動端に装着したローラによって、操作ペダルが踏み込まれると摩擦で自然に回転し、踏み込みストローク量が可逆的に調整され、良好な動作が確保されることになる。ここで、可逆的とは、押す、戻る動作がヒステリシスを持たない線形的な動作である、ことを言う。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように本発明に係るシャシダイナモメータで用いられる運転用ロボットによれば、全体が所要の重量をもち、運転席前の車室床面上に設置することで、操作ペダルの戻り力に抗して安定した設置状態を維持できるように構成されている金属製の箱状本体に、操作ペダルの踏み込み操作手段としてローラを有するアーム部を設けるようにしたので、簡単な構造で、小型かつコンパクトで、コスト的にも安価であり、しかも簡単に持ち運びできるとともに、運転席前の車室床面上に箱状本体を載せ置き、アーム部に設けたローラを操作ペダルに踏む込み可能に位置させることで、短時間でのセッティングも可能であり、単純だが画期的な装置としてのシャシダイナモメータで用いられる運転用ロボットを得ることができる。
【0020】
特に、本発明によれば、小型の箱状本体内に、サーボモータ、減速機、サーボアンプ等の駆動手段を詰め込み、また箱状本体の外側に揺動運動可能なアーム、非常停止用のエアクラッチを装着することにより、全体が小型かつコンパクトで、軽く持ち運びできるとともに、運転席前の車室床面上に簡単に、しかも安定して設置することができる。
【0021】
また、本発明による運転用ロボットによれば、設置状態において、アクセルペダル、ブレーキペダル等の操作ペダルとほぼ同じ高さとすることができるから、電波暗室内等でのEMC環境の試験においては、電波の反射などの影響がないばかりでなく、高価な樹脂製のアクチェータを使う必要もない等の利点もある。
【0022】
さらに、本発明によれば、運転席周りの微小な電磁界の変化も許されない電波暗室の中において、たとえば完全樹脂製の遠隔操作機等を用いるとともに、金属製のロボット本体部分は車輌外の電磁波の影響を受けない、床下などに設置することで、無人運転が可能となるような構成とすることもできる。勿論、この場合、操作ワイヤーは樹脂製とするとよい。さらに、極微小な電磁界変化も許されない場合は、樹脂製の遠隔操作機を使うようにすることもできる。
【0023】
さらに、本発明によれば、車輌のアクセルペダル、ブレーキペダル、クラッチペダル等の操作ペダルは、車室内において床上か床下かに回転中心がある円運動であって、従来の運転用ロボットのように、シリンダ・ピストンなどによる直線運動はアクチェータと操作ペダルの境界に何らかの工夫をしなければスムーズなペダル動作ができない、という問題があったが、本発明の運転用ロボットのような揺動運動するアーム部では、ローラが揺動端に装着され、操作ペダルが踏み込まれると摩擦で自然に回転し、踏み込みストローク量が可逆的に調整され、良好な動作が確保されることが実験で実証されている。
【0024】
稀に、ブレーキペダルに幅が広く、縦方向の長さが短いものがあるが、その操作ペダルには長いペダルのアダプタを取り付けると、ローラが操作ペダルから外れるといったトラブルが解消されることになる。
【0025】
また、本発明によれば、運転用ロボットで最も重要な装備として、踏み込み操作手段と前記駆動手段とを、非常停止時に切り離す非常停止手段として、アーム部の基端部を軸支するエアクラッチ付軸支部を有し、非常停止時において、このエアクラッチ部分に供給されているエアの供給を切断するように構成されていることにより、アクセルペダル、ブレーキペダルを開放するように、駆動手段を切り離し可能となっているので、非常停止にあたって、エア供給を切断するだけで、迅速かつ確実に駆動手段とアクセルペダル、ブレーキペダル等を開放することができる。
【0026】
さらに、本発明によれば、狭所用の補助アクチュエータを用い、別置した運転用ロボットの箱状本体にケーブル接続するようにしているので、車室内のスペース問題にも制約の受けない運転用ロボットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】 本発明に係るシャシダイナモメータで用いられる運転用ロボットの一実施形態を示す概略斜視図。
図2図1の運転用ロボットを平面方向から見た概略図。
図3図1の運転用ロボットの使用状態を示す概略側面図。
図4図1の運転用ロボットを示す概略側面図。
図5】 本発明に係る運転用ロボットにおける踏み込み操作手段のアーム部揺動端に設けたローラによるペダル踏み込み動作を説明するための説明図。
図6】 本発明に係るシャシダイナモメータで用いられる運転用ロボットの他の実施形態を示す概略斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1ないし図5は本発明に係るシャシダイナモメータで用いられる運転用ロボットの一実施形態を示す。
【0029】
これらの図において、全体を符号1で示す運転用ロボットは、車輌の各種走行試験を行うシャシダイナモメータ(図示せず)で用いられるものであって、運転席2前の車室床面3上に設置される箱状本体10を備えている。この箱状本体10は、前記車室床面3上に設置される程度の小さい箱体となるように金属製ボックスとして形成され、その内部に後述する踏み込み操作手段20を駆動する駆動手段を構成するサーボモータ、減速機、サーボアンプ(いずれも図示せず)等が適宜の位置に配置されている。
【0030】
ここで、このような箱状本体10は、できるだけ小型かつコンパクトな構造をもって金属材で形成されるとともに、全体が所要の重量(例えば18Kg程度)をもち、被試験車輌の運転席2前の車室床面(運転者の足下でアクセルペダル4やクラッチペダル5等の操作ペダル近くの床面)上に設置することで、ペダルの戻り力に抗して安定した設置状態を維持できるように構成されている。図中符号12は、箱状本体10の上部に設けられた取っ手であり、箱状本体10の持ち運びを簡単に行えるように構成されている。
【0031】
なお、必要に応じて適宜のウエイト部材を載せるように構成してもよい。さらに、この箱状本体10の設置面にラバーや適宜の係着部材を設け、設置床面3との係着性を維持できるように構成してもよい。
【0032】
なお、上述した操作ペダル4,5の上方には、周知の通り、舵取りハンドル(図示せず)やダッシュボード部6(図3参照)が張り出した状態で設けられているが、運転席2前の車室床面3上に設置した運転用ロボット1によれば、上記操作ペダル4,5の自動的な踏み込み操作などの運転操作が容易に行える。
【0033】
本発明によれば、上述した構成によるシャシダイナモメータで用いられる運転用ロボット1において、運転時に踏み込み操作される操作ペダルとしてのアクセルペダル4、ブレーキペダル5を自動運転操作するための踏み込み操作手段20を、基端部が前記箱状本体10に対し揺動自在に支持され、自由端部(揺動端)が前記操作ペダル4,5に向かって延びたアーム部21と、このアーム部21の長手方向に沿ってスライド可能に設けられた支持部22と、この支持部22に回転自在に軸支したローラ23とによって構成している。
【0034】
ここで、前記ローラ23は、図4図5から明らかなように、前記アーム部21が揺動動作したときに前記操作ペダル4,5に当接してこれを所定の速度と所定の踏み込み量で踏み込み操作されるように構成されている。
【0035】
そして、前記ローラ23が軸支されている支持部22は、前記ローラ23が前記操作ペダル4,5を所定の速度と所定の踏み込み量で踏み込み操作可能となるように、前記アーム部21に対するスライド位置を調整可能に構成されている。これにより、アクセルペダル4、ブレーキペダル5の距離を調節できる。
【0036】
また、前記ローラ23は、支持部22に設けた支軸に対し游転可能に支持され、この支軸上で軸方向に移動可能に構成されている。これにより、ローラ23は、前後、左右に調整できるから、操作ペダル4,5との位置合わせを容易に行える。
【0037】
なお、前記アーム部21の自由端部側に軸支されているローラ23が前記操作ペダル4,5から離れている場合に、前記操作ペダル4,5の下端部を下方に延長させて前記アーム部21自由端部側に軸支されているローラ23との位置関係を調整するために、適宜の形状によるペダル延長アダプタを予め準備し、必要に応じて操作ペダル4,5の先端部分などに装着して用いてもよいことは言うまでもない。
【0038】
稀に、ブレーキペダル5に幅が広く、縦方向の長さが短いものがあるが、その操作ペダルには長いペダルの延長アダプタを取り付けると、ローラ23が操作ペダル4,5から外れるといったトラブルが解消されることになる。
【0039】
また、上述した運転用ロボット1において、前記踏み込み操作手段20と前記駆動手段(前記箱状本体10内に設けたサーボモータ等による)とを、非常停止時に切り離すことで車輌の暴走を防止するための非常停止手段として非常停止用のエアクラッチ(24)を設けるように構成している。
【0040】
ここで、図中24は、エアクラッチ付軸支部であり、この部分に供給されているエアの供給を切断することでクラッチを切断し、ペダルを操作するアーム部21をフリーにし、開放した操作ペダル4,5はバネの力で直ぐに元に戻るように構成している。これは、アーム部21、支持部22、ローラ23は樹脂材とジュラルミンなどで形成されるため、軽く、ペダルのバネで簡単に戻る。
【0041】
なお、図中30は非常停止用エア接続口である。
このような非常停止手段を用いると、エアの供給遮断で操作ペダル4,5を切り離し可能であるから、運転用ロボット1による安全装置を、コストをかけずに、簡単に装着することができ、実用面で有利である。
【0042】
上述した構成によれば、車輌のアクセルペダル4、ブレーキペダル5等の操作ペダルは、車室内において床上か床下かに回転中心がある円運動であるのに対し、揺動運動するアーム部21の揺動端に装着したローラ23によって、操作ペダル4,5が踏み込まれると摩擦で自然に回転し、踏み込みストローク量が可逆的に調整され、良好な動作が確保されることになる。
【0043】
これにより、本発明による運転用ロボット1によれば、従来のように、シリンダ・ピストンなどによる直線運動はアクチェータと操作ペダルの境界に何らかの工夫をしなければスムーズなペダル動作ができない、という問題を解消することができる。
【0044】
稀に、ブレーキペダル5に幅が広く、縦方向の長さが短いものがあるが、その操作ペダルには長いペダルのアダプタを取り付けると、ローラが操作ペダルから外れるといったトラブルが解消される。
【0045】
以上のような本発明による運転用ロボット1によれば、運転席2前の車室床面3上に設置される箱状本体10に、操作ペダル4,5の踏み込み操作手段20としてローラ23を有するアーム部21を設けているので、簡単な構造で、小型かつコンパクトで、コスト的にも安価であり、しかも簡単に持ち運びできるとともに、短時間でのセッティングも可能であり、単純だが画期的な装置としてのシャシダイナモメータで用いられる運転用ロボット1を得ることができる。
【0046】
特に、上述した構成によれば、小型の箱状本体10内に、サーボモータ、減速機、サーボアンプ等の駆動手段を詰め込み、また箱状本体の外側に揺動運動可能なアーム部21、非常停止用のエアクラッチ(エアクラッチ付軸支部24)を装着することにより、全体が小型かつコンパクトで、軽く持ち運びできるとともに、運転席2前の車室床面3上に簡単に、しかも安定して設置することができる。
【0047】
また、上述した構成によれば、設置状態において、アクセルペダル4、ブレーキペダル5等の操作ペダルとほぼ同じ高さとすることができるから、電波暗室内等でのEMC環境の試験においては、電波の反射などの影響がないばかりでなく、高価な樹脂製のアクチェータを使う必要もない等の利点もある。
【0048】
なお、本発明は上述した実施の形態で説明した構造には限定されず、運転用ロボット1を構成する各部の形状、構造等を適宜変形、変更し得ることはいうまでもない。
たとえば図6に示すように、運転席2前の車室床面3上の設置スペースが箱状本体10の設置大きさよりも狭い場合に、運転席2前の車室床面3上に、遠隔操作機として、前記操作ペダル4,5を踏み込み操作可能なローラ53付きアーム部51を有する狭所用の補助アクチュエータ50を設置し、これを隣接する広い設置スペースに設置した前記箱状本体10にケーブル56で接続することにより、遠隔操作可能に構成してもよい。ここで、図6中、52は支持部、54はエアクラッチ付軸支部である。
【0049】
このような構成によれば、狭所用の補助アクチュエータ50を用い、別置した運転用ロボット1の箱状本体10にケーブル56で接続しているから、車室内のスペース問題にも制約の受けない運転用ロボットを提供できる。特に、運転席下の隙間が小さい場合でも、本発明の運転用ロボット1を利用して、所要の性能試験を適切かつ円滑に行える。
【0050】
ここで、上述した「隣接する広い設置スペース」には、車輌内の助手席前のスペースに限らず、車輌から離れた別の場所を含むものとする。例えば、試験車輌から離れ電磁界の影響を受けない、床下などの適宜の場所に設置し、ワイヤー等でケーブル接続するようにしてもよい。この場合、操作ワイヤーは、樹脂製のものを用いるとよい。
【符号の説明】
【0051】
1…運転用ロボット
2…運転席
3…車室床面
4…アクセルペダル(操作ペダル)
5…ブレーキペダル(操作ペダル)
10…箱状本体
20…踏み込み操作手段
21…アーム部
22…支持部
23…ローラ
24…エアクラッチ付軸支部
30…非常停止用エア接続口
50…狭所用の補助アクチュエータ
51…アーム部
53…ローラ
56…ケーブル