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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023075880
(43)【公開日】2023-05-31
(54)【発明の名称】窒化物膜の成長方法
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/38 20060101AFI20230524BHJP
   C30B 25/18 20060101ALI20230524BHJP
   C23C 16/34 20060101ALI20230524BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20230524BHJP
【FI】
C30B29/38 D
C30B25/18
C23C16/34
H01L21/205
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021210214
(22)【出願日】2021-12-24
(31)【優先権主張番号】10-2021-0160047
(32)【優先日】2021-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】512272731
【氏名又は名称】ルミジエヌテック カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イ ヘヨン
(72)【発明者】
【氏名】チェ ヨンジュン
(72)【発明者】
【氏名】オ ヘコン
【テーマコード(参考)】
4G077
4K030
5F045
【Fターム(参考)】
4G077AA03
4G077AB02
4G077BE13
4G077BE15
4G077DB02
4G077DB04
4G077DB12
4G077EC09
4G077ED04
4G077ED06
4G077EE03
4G077FG12
4G077GA10
4G077HA12
4G077TB02
4G077TK01
4G077TK04
4G077TK06
4G077TK10
4K030AA03
4K030AA13
4K030AA14
4K030AA17
4K030BA02
4K030BA08
4K030BA38
4K030BB02
4K030CA04
4K030CA05
4K030CA17
4K030DA02
4K030FA10
4K030JA01
4K030JA06
4K030LA14
5F045AA03
5F045AB14
5F045AC11
5F045AC12
5F045AC13
5F045AC15
5F045AD08
5F045AD09
5F045AD10
5F045AD12
5F045AD14
5F045AD15
5F045AF09
5F045BB09
5F045DP04
5F045EE12
5F045EE17
5F045EE18
5F045EF02
5F045EF09
5F045EK06
5F045EK22
5F045EK27
(57)【要約】
【課題】窒化物膜の成長方法を提供する。
【解決手段】本発明の実施形態に係る窒化物膜の成長方法は、成長空間に基板を装入する手順及び基板窒化物膜を成長させる手順を含み、窒化物膜を成長させる手順は、第1の反応ガスとソース原料とを反応させて生成されたガスを成長空間に供給する手順と、第2の反応ガスを成長空間に供給する手順及び成長空間に含酸素ガス及び含水素ガスを供給する手順を含んでいてもよい。したがって、本発明の実施形態によれば、たとえ薄肉に窒化物膜を形成するとしても、前記窒化物膜の上部面を平坦化させることができる。したがって、上部面が平坦化されるまで窒化物膜を成長または形成するのにかかる工程時間を短縮することができ、これにより、生産効率が向上するという効果が奏される。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成長空間に基板を装入する手順と、
前記基板の上に窒化物膜を成長させる手順と、
を含み、
前記窒化物膜を成長させる手順は、
第1の反応ガスとソース原料とを反応させて生成されたガスを前記成長空間に供給する手順と、
第2の反応ガスを前記成長空間に供給する手順と、
前記成長空間に含酸素ガス及び含水素ガスを供給する手順と、
を含む、窒化物膜の成長方法。
【請求項2】
前記成長空間に基板を装入する前に、前記成長空間の内部の温度を調節する手順と、
前記窒化物膜を成長させる手順前に、前記成長空間に前記第2の反応ガスを第1の供給量にて供給して前記基板を窒化処理する手順と、
を含む、請求項1に記載の窒化物膜の成長方法。
【請求項3】
前記第1の反応ガスとソース原料とを反応させるに際して、前記成長空間の一方の側に配設され、前記ソース原料が収められている収容部の内部に前記第1の反応ガスを供給し、
前記窒化物膜を成長させる前に、前記収容部に第1の反応ガスを第1の供給量にて供給する手順を含む、請求項2に記載の窒化物膜の成長方法。
【請求項4】
前記窒化物膜を成長させる手順における前記収容部に第1の反応ガスを供給する手順は、
前記第1の供給量に比べて多い第2の供給量にて第1の反応ガスを供給する手順と、
前記第2の供給量に比べて多い第3の供給量にて第1の反応ガスを供給する手順と、
を含む、請求項3に記載の窒化物膜の成長方法。
【請求項5】
前記窒化物膜を成長させる手順における前記成長空間に第2の反応ガスを供給する手順は、
前記第1の供給量に比べて少ない第2の供給量にて第2の反応ガスを供給する手順と、
前記第1の供給量に比べて少なく、かつ、前記第2の供給量に比べて多い第3の供給量にて第2の反応ガスを供給する手順と、
を含む、請求項2に記載の窒化物膜の成長方法。
【請求項6】
前記成長空間に含酸素ガスを供給するに際して、
前記成長空間に供給されるガスの全体の体積のうち、前記含酸素ガスの体積比が0.01vol%~0.1vol%になるように供給する、請求項2に記載の窒化物膜の成長方法。
【請求項7】
前記成長空間に含酸素ガスを供給するに際して、
前記成長空間に基板を装入してから前記窒化物膜の成長が終わる時点まで供給する、請求項6に記載の窒化物膜の成長方法。
【請求項8】
前記成長空間に含酸素ガスを供給するに際して、
前記成長空間に基板を装入してから前記窒化物膜の成長が終わる時点まで同量にて供給する、請求項7に記載の窒化物膜の成長方法。
【請求項9】
前記成長空間に含水素ガスを供給するに際して、
前記成長空間に供給されるガスの全体の体積のうち、前記含水素ガスの体積比が0.7vol%~7vol%になるように供給する、請求項2に記載の窒化物膜の成長方法。
【請求項10】
前記成長空間に含水素ガスを供給するに際して、
前記成長空間に第2の反応ガスを第3の供給量に供給するとき、前記成長空間に含水素ガスを供給する、請求項5に記載の窒化物膜の成長方法。
【請求項11】
前記基板を設ける手順は、
ベース及び前記ベースの上部に突き出た複数の突出部を備える基板を製造する手順を含み、
前記ベースとは反対側の面である前記突出部の上部面は、0を超える長さを有する、請求項1~請求項10のいずれか1項に記載の窒化物膜の成長方法。
【請求項12】
前記基板を設ける手順は、
ベース、前記ベースの上部において互いに離れるように配置されている複数本の孔及び前記ベースの上部において前記複数本の孔同士の間を埋め込むように設けられた突出部を備える基板を製造する手順を含み、
前記ベースとは反対側の面である前記突出部の上部面において、少なくとも前記孔と孔との間の長さは0を超える、請求項1~請求項10のいずれか1項に記載の窒化物膜の成長方法。
【請求項13】
前記窒化物膜は、AlN及びGaN膜のうちのどちらか一方を備え、
前記第1の反応ガスはHClを含有し、前記第2の反応ガスはNHを含有し、
前記ソース原料は、Alを含む金属及びGaを含む金属のうちのどちらか一方を含む、請求項1~請求項10のいずれか1項に記載の窒化物膜の成長方法。
【請求項14】
前記窒化物膜の厚さを2μm~4.5μmに成長させる、請求項1~請求項10のいずれか1項に記載の窒化物膜の成長方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化物膜の成長方法に係り、突出部を有する基板、すなわち、パターン化サファイア基板(PSS:Patterned sapphire substrate)の上に窒化物膜を薄肉に成長させながらも、上部面を平坦化させることのできる窒化物膜の成長方法に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化物系発光ダイオードは、サファイア(sapphire)基板の上に窒化物半導体薄膜、例えば、AlN(窒化アルミニウム)膜を成長させて製造される。このとき、外部に排出される光取出し効率を向上させるために、複数本の突出部を備える基板、いわゆるパターン化サファイア基板(PSS:Patterned sapphire substrate)を用い、このような基板の上にAlN膜を成長させる。
【0003】
一方、発光ダイオードの品質または発光効率を向上させるためには、基板の上に形成されるAlN膜の上部面が平坦化される必要がある。ところが、AlN膜が成長する基板は、複数の突出部を備えるように設けられるが故に、上部面が平坦化されるためにはAlN膜を厚肉に形成することを余儀なくされる。すなわち、上部面の平坦化のためにAlN膜を厚肉に形成せざるを得ない。これにより、AlN膜を成長させるのに長時間がかかってしまうという不都合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】大韓民国特許公開第10-2016-0122118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、窒化物膜の成長時間を短縮することのできる窒化物膜の成長方法を提供する。
【0006】
本発明は、突出部を有する基板、すなわち、パターン化サファイア基板(PSS:Patterned sapphire substrate)の上に窒化物膜を薄肉に成長させながらも、上部面を平坦化させることのできる窒化物膜の成長方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態に係る窒化物膜の成長方法は、成長空間に基板を装入する手順と、前記基板の上に窒化物膜を成長させる手順と、を含み、前記窒化物膜を成長させる手順は、第1の反応ガスとソース原料とを反応させて生成されたガスを前記成長空間に供給する手順と、第2の反応ガスを前記成長空間に供給する手順と、前記成長空間に含酸素ガス及び含水素ガスを供給する手順と、を含んでいてもよい。
【0008】
前記窒化物膜の成長方法は、前記成長空間に基板を装入する前に、前記成長空間の内部の温度を調節する手順と、前記窒化物膜を成長させる手順前に、前記成長空間に前記第2の反応ガスを第1の供給量にて供給して前記基板を窒化処理する手順と、を含んでいてもよい。
【0009】
前記窒化物膜の成長方法は、前記第1の反応ガスとソース原料とを反応させるに際して、前記成長空間の一方の側に配設され、前記ソース原料が収められている収容部の内部に前記第1の反応ガスを供給し、前記窒化物膜を成長させる前に、前記収容部に第1の反応ガスを第1の供給量にて供給する手順を含んでいてもよい。
【0010】
前記窒化物膜を成長させる手順における前記収容部に第1の反応ガスを供給する手順は、前記第1の供給量に比べて多い第2の供給量にて第1の反応ガスを供給する手順と、前記第2の供給量に比べて多い第3の供給量にて第1の反応ガスを供給する手順と、を含んでいてもよい。
【0011】
前記窒化物膜を成長させる手順における前記成長空間に第2の反応ガスを供給する手順は、前記第1の供給量に比べて少ない第2の供給量にて第2の反応ガスを供給する手順と、前記第1の供給量に比べて少なく、かつ、前記第2の供給量に比べて多い第3の供給量にて第2の反応ガスを供給する手順と、を含んでいてもよい。
【0012】
前記成長空間に含酸素ガスを供給するに際して、前記成長空間に供給されるガスの全体の体積のうち、前記含酸素ガスの体積比が0.01vol%~0.1vol%になるように供給してもよい。
【0013】
前記成長空間に含酸素ガスを供給するに際して、前記成長空間に基板を装入してから前記窒化物膜の成長が終わる時点まで供給してもよい。
【0014】
前記成長空間に含酸素ガスを供給するに際して、前記成長空間に基板を装入してから前記窒化物膜の成長が終わる時点まで同量にて供給してもよい。
【0015】
前記成長空間に含水素ガスを供給するに際して、前記成長空間に供給されるガスの全体の体積のうち、前記含水素ガスの体積比が0.7vol%~7vol%になるように供給してもよい。
【0016】
前記成長空間に含水素ガスを供給するに際して、前記成長空間に第2の反応ガスを第3の供給量に供給するとき、前記成長空間に含水素ガスを供給してもよい。
【0017】
前記基板を設ける手順は、ベース及び前記ベースの上部に突き出た複数の突出部を備える基板を製造する手順を含み、前記ベースとは反対側の面である前記突出部の上部面は、0を超える長さを有していてもよい。
【0018】
前記基板を設ける手順は、ベース、前記ベースの上部において互いに離れるように配置されている複数本の孔及び前記ベースの上部において前記複数本の孔同士の間を埋め込むように設けられた突出部を備える基板を製造する手順を含み、前記ベースとは反対側の面である前記突出部の上部面において、少なくとも前記孔と孔との間の長さは、0を超えてもよい。
【0019】
前記窒化物膜は、AlN及びGaN膜のうちのどちらか一方を備え、前記第1の反応ガスはHClを含有し、前記第2の反応ガスはNHを含有し、前記ソース原料は、Alを含む金属及びGaを含む金属のうちのどちらか一方を含んでいてもよい。
【0020】
前記窒化物膜の厚さを2μm~4.5μmに成長させてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の実施形態によれば、たとえ薄肉に窒化物膜を形成するとしても、前記窒化物膜の上部面を平坦化させることができる。したがって、上部面が平坦化されるまで窒化物膜を成長または形成するのにかかる工程時間を短縮することができ、これにより、生産率が向上するという効果が奏される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】(a)は、本発明の第1の実施形態に係る基板を示す立体図であり、(b)は、(a)のA-A’に沿って切り取った断面図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係る基板の断面を撮影した走査電子顕微鏡(SEM:scanning electron microscope)写真である。
図3】本発明の第1の実施形態に係る基板の上に窒化物膜が成長する手順を説明するための図である。
図4】本発明の第1の実施形態に係る基板の上に窒化物膜が成長された状態の断面を撮影した走査電子顕微鏡(SEM:scanning electron microscope)写真である。
図5】(a)は、本発明の第2の実施形態に係る基板を示す立体図であり、(b)は、(a)のB-B’に沿って切り取った断面図である。
図6】(a)は、本発明の第2の実施形態に係る基板の断面を撮影した走査電子顕微鏡(SEM:scanning electron microscope)写真であり、(b)は、本発明の第2の実施形態に係る基板を上側から撮影した走査電子顕微鏡(SEM:scanning electron microscope)写真である。
図7】本発明の実施形態に係る方法で基板の上に窒化物膜を成長させる成長装置を示す図である。
図8】本発明の実施形態に係る方法で基板の上に窒化物膜を成長させるとき、チャンバーの内部の複数のゾーンのそれぞれの温度を示すグラフである。
図9】本発明の実施形態に係る方法で基板の上に窒化物膜を成長させる方法を示す手順図である。
図10】本発明の実施形態に係る方法でチャンバーの内部にガスを供給する方法を概念的に示す図である。
図11】(a)は、第1~第5の実験例に係るAlN(窒化アルミニウム)膜の厚さを示すグラフであり(b)は、第1~第5の実験例に係るAlN(窒化アルミニウム)膜の半値全幅(FWHM:full width at half maximum)を示すグラフである。
図12】(a)は、第6~第10の実験例に係るAlN(窒化アルミニウム)膜の厚さを示すグラフであり、(b)は、第6~第10の実験例に係るAlN(窒化アルミニウム)膜の半値全幅(FWHM:full width at half maximum)を示すグラフである。
図13】(a)は、第11~第15の実験例に係るAlN(窒化アルミニウム)膜の厚さを示すグラフであり、(b)は、第11~第15の実験例に係るAlN(窒化アルミニウム)膜の半値全幅(FWHM:full width at half maximum)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施形態をより詳しく説明する。しかしながら、本発明は以下に開示される実施形態に何ら限定されるものではなく、異なる様々な形態に具体化され、単にこれらの実施形態は本発明の開示を完全たるものにし、通常の知識を有する者に発明の範囲を完全に知らせるために提供されるものである。本発明を説明するに当たって、同じ構成要素に対しては同じ参照符号を付し、図面は、本発明の実施形態を正確に説明するために大きさが部分的に誇張されてもよく、図中、同じ符号は、同じ構成要素を指し示す。
【0024】
図1の(a)は、本発明の第1の実施形態に係る基板を示す立体図である。図1の(b)は、図1の(a)のA-A’に沿って切り取った断面図である。図2は、本発明の第1の実施形態に係る基板の断面を撮影した走査電子顕微鏡(SEM:scanning electron microscope)写真である。図3は、本発明の第1の実施形態に係る基板の上に窒化物膜が成長する手順を説明するための図である。図4は、本発明の第1の実施形態に係る基板の上に窒化物膜が成長された状態の断面を撮影した走査電子顕微鏡(SEM:scanning electron microscope)写真である。
【0025】
本発明の第1の実施形態に係る基板10は、サファイア(sapphire)基板であってもよい。また、基板10は、複数の突出部12を備え、前記複数の突出部12が少なくとも一方向に並べられてパターン(pattern)をなす基板であってもよい。すなわち、第1の実施形態に係る基板10は、いわゆる「パターン化サファイア基板(PSS:Patterned sapphire substrate)」と呼ばれる基板であってもよい。
【0026】
このような板10は、図1の(a)及び(b)に示すように、所定の面積及び厚さを有するベース11と、ベース11の上部面から上側に向かって突き出るように設けられた複数の突出部12と、を備える。
【0027】
このように、ベース11及びベース11から突き出るように形成された突出部12を備える基板10は、サファイア(Al)を含むまたはサファイア(Al)からなる母材を用いて設けられたものであってもよい。
【0028】
母材を用いて基板10を設ける方法については、再び後述する。以下、説明のしやすさのために、サファイア(Al)を含むまたはサファイア(Al)からなる母材を「サファイア母材」と称する。
【0029】
ベース11は、例えば、図1に示すように、その横断面の形状が四角形状であってもよい。すなわち、ベース11は、水平方向である第1の方向(X軸方向)及び第2の方向(Y軸方向)に延び、上下方向である第3の方向(Z軸方向)に延びた形状であってもよい。とりもなおさず、ベース11は、第1の方向(X軸方向)への長さ、前記第1の方向(X軸方向)と交差もしくは直交する第2の方向(Y軸方向)への長さ及び上下方向である第3の方向(Z軸方向)への長さを有する四角形状の板(plate)または六面体の形状であってもよい。いうまでもなく、ベース11の形状は、上述した例に何ら限定されるものではなく、円形状、楕円形状、四角未満の多角形状または四角以上の多角形状に設けられてもよい。
【0030】
ベース11は、サファイア母材により設けられたものであるため、ベース11は、母材の材料と同じであってもよい。すなわち、ベース11は、サファイア(Al)を含んでいてもよく、サファイア(Al)から形成されていてもよい。なお、突出部12が形成されるベース11の上部面は、(0001)面であってもよい。
【0031】
突出部12は、ベース11の一方の面、例えば、上部面から上側に向かって突き出るように設けられる。このような突出部12は、所定の面積及び高さを有するようにベース11の上部面に設けられてもよい。より具体的に、突出部12は、ベース11の上部面と接触または接続された下部面12b、下部面12bの上側に位置する上部面12a及び下部面12bと上部面12aとを接続する側面12cを備えていてもよい。
【0032】
そして、このような突出部12は、例えば、図1の(a)に示すように、円筒(cylinder)の形状であってもよい。このため、突出部12は、その上部面12a及び下部面12bの形状が円形状であり、側面12cは、上部面12a及び下部面12bの周りに沿って延びるように曲面状に設けられてもよい。
【0033】
突出部12の上部面12aは、所定の面積を有する平面状に設けられてもよい。すなわち、突出部12は、その上部面12aがベース11の上部面と並ぶような平面状に設けられてもよい。ここで、突出部12の上部面12aが所定の面積を有するように設けられることを他の言葉で言い換えると、上部面12aの長さaが0を超える(a>0)という意味であってもよい。
【0034】
より具体的に説明すれば、突出部12の上部面12aは、第1の方向(X軸方向)及び第2の方向(Y軸方向)のそれぞれの長さが0を超えるように設けられてもよい。このとき、突出部12が円筒(cylinder)の形状である場合、上部面12aは、円形の形状であるため、前記上部面12aの第1の方向(X軸方向)及び第2の方向(Y軸方向)は、直径方向であると説明することができ、第1の方向(X軸方向)及び第2の方向(Y軸方向)の長さaが同じであると説明することができる。
【0035】
また、突出部12の上部面12aの長さaは、0.1μm~2μm(0.1μm以上、かつ、2μm以下)であってもよい。より好ましくは、突出部の上部面12aの長さaは、1.3μm~1.6μmであってもよい。さらに具体的に説明すれば、突出部12の上部面12aにおける第1の方向(X軸方向)の長さa及び第2の方向(Y軸方向)の長さaのそれぞれは、0.1μm~2μmであってもよく、より好ましくは、1.3μm~1.6μmであってもよい。
【0036】
このように、上部面12aの長さaが0を超えるように突出部12を設けるということは、窒化物膜が成長するべき突出部12の上部面12aに(0001)面を持たせるためである。
【0037】
一方、例えば、突出部が円錐(cone)状に設けられる場合、突出部の上部面は、長さ及び面積を有さない(a=0)。すなわち、突出部の最頂部が面積を有する面(face)の形状に存在しない。したがって、円錐(cone)状の突出部は、(0001)面を有することができない。このように、(0001)面を有さない突出部を備える基板の上に窒化物膜を成長させる場合、上部面の平坦化のために窒化物膜を厚肉に成長させなければならない。すなわち、ベースの上部面とは反対の面である窒化物膜の上部面が平坦化されるためには、窒化物膜を厚肉に成長させなければならず、このとき、所要の窒化物膜の厚さは、8μm以上であってもよい。
【0038】
しかしながら、本発明においては、上部面12aの長さaが0を超えるように突出部12を設ける。このため、突出部は、(0001)面である上部面12aを有することになる。このような突出部12を備える基板10の上に窒化物膜を成長させる場合、円錐(cone)状の突出部(a=0)が設けられた基板10の上に成長させる場合に比べて、窒化物膜の厚さを薄肉にしながらその上部面を平坦化させることができる。すなわち、本発明は、たとえ窒化物膜の厚さを2μm~4.5μmと薄肉に形成するとしても、前記窒化物膜の上部面を平坦化させることができる。
【0039】
突出部12は、上述したように、上部面12aと、下部面12b及び側面12cを備える円筒の形状に設けられてもよいが、このとき、下部面12bから上部面12aに向かって進むにつれてその直径が縮径される円筒の形状に設けられてもよい。このため、上部面12aの長さaは、下部面12bの長さbに比べて短くてもよい。これを他の言葉で言い換えると、下部面12bの長さbは、上部面12aの長さaに比べて長くてもよい。
【0040】
このとき、突出部12の下部面12bの長さbは、0.1μm超え、かつ、2μm以下であってもよく、前記範囲(0.1μm超え、かつ、2μm以下)において上部面12aの長さaに比べて長くてもよい。このため、突出部12の断面の形状は、図1の(b)に示すように、台形の形状であってもよい。
【0041】
以上においては、突出部12が、その上部面12aの長さaに比べて下部面12bの長さbの方がさらに長い場合について説明した。しかしながら、本発明はこれに何ら限定されるものではなく、突出部12は、その上部面12aの長さaと下部面12bの長さbとが同じくなるように設けられてもよい。このとき、突出部12の下部面12bの長さは、0.1μm~2μm(0.1μm以上、かつ、2μm以下)であってもよい。
【0042】
このような突出部12は、複数設けられる。そして、複数の突出部12は、図1の(a)に示すように、ベース11の延在方向に並べられて互いに離れるように形成される。すなわち、突出部12は、ベース11の第1の方向(X軸方向)及び第2の方向(Y軸方向)に並べられ、互いに離れるように形成されてもよい。このため、複数の突出部12のそれぞれの上部面12aは、図1に示すように、互いに離間もしくは分離されていてもよい。
【0043】
以下、図1の(a)及び(b)に示す第1の実施形態に係る基板を設ける方法について簡略に説明する。このとき、実施形態においては、フォトリソグラフィ(Photolithography)方法で基板を設ける方法について説明する。
【0044】
まず、サファイア母材を設ける。そして、母材の上部面にフォトレジスト(PR:photo resist)を塗布する。次いで、フォトレジストが塗布された母材の上側にシャドウマスクを配置する。このとき、シャドウマスクは、例えば、母材上において突出部を形成すべき部分が閉止(close)されており、残りの部分が開放(open)されている形状であってもよい。
【0045】
そして、シャドウマスクにおいて閉止された領域の形状は、円形状であってもよい。続けて、シャドウマスクの上側において露光を行った後、フォトレジストをエッチングする。このとき、シャドウマスクの開放領域に露出されて露光されたフォトレジストがエッチングされ、閉止された領域と向かい合っていたフォトレジストが残留することになる。すなわち、母材の上部面のうち、突出部を形成すべき部分にフォトレジストが残っているようにパターニングされる。次いで、母材をドライエッチングする。このとき、フォトレジストパターンにより遮られていない母材の領域がエッチングされる。次いで、フォトレジストパターンを除去(strip)する。
【0046】
これにより、図1の(a)及び(b)に示すように、複数の突出部を備える基板が設けられる。すなわち、ベース11及びそれぞれが前記ベース11の上部面12aから上側に向かって突き出、かつ、互いに離れるように並べられた複数の突出部12を備える基板10が設けられる。
【0047】
このようにして設けられた基板10の断面を走査電子顕微鏡(SEM:scanning electron microscope)を用いて撮像すれば、例えば、図2に示すような写真が得られる。図2に示すように、ベース11の上部面に複数の突出部12が設けられており、突出部12の上部面12aの長さaは0を超える(a>0)。なお、例えば、突出部12の上部面12aの長さは、下部面12bの長さに比べて長くてもよく、このため、突出部12の断面の形状は、図2に示すように、台形の形状であってもよい。
【0048】
このように、上部面12aが所定の面積を有するように、または、上部面12aの第1及び第2の方向(X軸方向、Y軸方向)の長さが0を超えるように突出部12を設けることは、シャドウマスクの形状、フォトレジストの種類、露光時間及び光量、フォトレジストパターンが形成された状態での母材のエッチング条件(エッチング材料、時間など)のうちの少なくともいずれか一つを調節することにより成し遂げることができる。
【0049】
基板10が設けられれば、前記基板10の上に窒化物膜、例えば、AlN(窒化アルミニウム)膜を成長させる。より具体的に、Alを含有するソース原料、HClを含有する第1の反応ガス、NHを含有する第2の反応ガス、含酸素(O)ガス及び含水素(H)ガスを用いて、AlN(窒化アルミニウム)膜を成長させる。このとき、イドライド気相エピタキシー(HVPE:Hydride Vapor Phase Epitaxy)成長装置を用いて成長させてもよく、これを用いた成長方法については後述する。
【0050】
複数の突出部12を備える基板10が設けられれば、上述したように、Alを含有するソース原料、HClを含有する第1の反応ガス、NHを含有する第2の反応ガス、含酸素(O)ガス及び含水素(H)ガスを用いて、AlN(窒化アルミニウム)膜を基板10の上に成長させる。
【0051】
このとき、図3の(a)に示すように、ベース11の上部面及び突出部12の上部面12aと突出部12の側面12cのそれぞれにおいて成長が起こる。なお、成長時間が経つにつれて、窒化物膜20が次第に厚くなる。
【0052】
このとき、窒化物膜20が成長する手順において、図3の(b)及び図3の(c)に示すように、窒化物膜の上部面が平らではなくてもよい。しかしながら、窒化物膜20をさらに成長させると、その上部面が図3の(d)及び図4に示すように平坦化される。このように、窒化物膜の上部面が平坦化される厚さ(以下、平坦化厚さと称する。)は、4.5μm以下、より具体的には、2μm~4.5μm(2μm以上、かつ、4.5μm以下)であってもよい。ここで、窒化物膜20の厚さ、すなわち、平坦化厚さとは、ベース11の上部面から窒化物膜20上部面までの長さのことをいう。
【0053】
このように、4.5μm以下の厚さに窒化物膜20を成長させて前記窒化物膜20の上部面を平坦化させることができる理由は、突出部12の上部面12aの長さaが0を超えるように設けられて前記突出部が(0001)面である上部面12aを有するように設けられることにより、窒化物膜20が(0001)面の上において成長するためである。
【0054】
図5の(a)は、本発明の第2の実施形態に係る基板を示す立体図である。図5の(b)は、図5の(a)のB-B’に沿って切り取った断面図である。図6の(a)は、本発明の第2の実施形態に係る基板の断面を撮影した走査電子顕微鏡(SEM:scanning electron microscope)写真である。図6の(b)は、本発明の第2の実施形態に係る基板を上側から撮影した走査電子顕微鏡(SEM:scanning electron microscope)写真である。
【0055】
上述した第1の実施形態においては、複数の突出部12が互いに離れるように設けられて、突出部12の上部面12aが互いに離間もしくは分離される基板10について説明した。しかしながら、本発明はこれに何ら限定されるものではなく、図5の(a)に示す第2の実施形態のように、突出部12の上部面12aが互いにつながるように設けられてもよい。
【0056】
図5の(a)及び(b)に基づいて、第2の実施形態に係る基板10についてより具体的に説明すれば、基板10は、所定の面積と厚さを有するベース11と、ベース11の上側に設けられ、互いに離れるように配置されている複数本の孔13及びベース11の上部面の上において複数本の孔13同士の間を埋め込むように設けられた突出部12を備えていてもよい。
【0057】
孔13は、その横断面の形状が円形の形状であってもよい。また、孔13は、図5の(b)に示すように、下側に向かって進むにつれてその長さまたは直径が次第に小さくなる形状に設けられてもよい。
【0058】
このような孔13は、母材の一部をエッチングして設けられたものであり、突出部12は、ベース11の上側から孔13を取り囲んでいる部位を意味することもある。このため、複数本の孔13のそれぞれは、その周りが突出部により取り囲まれているものであると説明することができる。
【0059】
突出部12は、ベース11の上部において孔13を取り囲むように設けられる。このため、突出部12は、所定の面積及び厚さを有するように設けられる。このような突出部12は、ベース11の上部面と接触または接続された下部面12bと、下部面12bの上側に位置する上部面12a及び下部面12bと上部面12aとを接続する側面12cを備えていてもよい。
【0060】
このとき、突出部12の下部面は、孔13の下端部と同じ高さの面であってもよく、突出部12の上部面12aは、孔13の上端部と同じ高さの面であってもよい。また、突出部12の側面12cにより孔13が画成されるが、孔13が、上述したように、下側に向かって進むにつれてその長さまたは直径が次第に小さくなるように設けられた形状であってもよい。このため、孔に面する突出部12の側面12cは、図5の(b)に示すように、曲面状に設けられてもよい。
【0061】
そして、突出部12の上部面12aは、所定の面積を有する平面であってもよい。すなわち、突出部12は、その上部面12aがベース11の上部面と並ぶような平面状に設けられてもよく、上部面の長さaが0を超え(a>0)てもよい。
【0062】
ここで、突出部12の上部面12aの長さaとは、少なくとも孔13と孔13との間の長さのことを意味することもある。このため、突出部12の上部面12aの長さaが0を超えるということは、突出部12の上部面の上において孔13と孔13との間の長さが0を超えるということを意味することもある。
【0063】
突出部12の上部面の上において孔13と孔13との間の領域は、所定の面積を有するように設けられる。とりもなおさず、突出部12の上部面の上において孔13と孔13との間の領域は、第1の方向(X軸方向)及び第2の方向(Y軸方向)のそれぞれの長さaが0を超えるように設けられる。より具体的に、突出部12の上部面12aの上において孔13と孔13との間の領域は、第1の方向(X軸方向)の長さa及び第2の方向(Y軸方向)の長さaのそれぞれが0.1μm~2μm(0.1μm以上、かつ、2μm以下)であってもよく、より好ましくは、0.1μm~0.5μmであってもよい。
【0064】
このように、突出部12の上部面12aにおいて、孔13と孔13との間の長さaが0を超えるように設けられることにより、窒化物膜が成長するべき突出部12の上部面が(0001)面を有することになる。したがって、このような突出部12を有する基板10の上に窒化物膜を成長させる場合、たとえその厚さを2μm~4.5μmと薄く形成するとしても、前記窒化物膜の上部面を平坦化させることができる。
【0065】
孔13は、上述したように、下側に向かって進むにつれてその直径が次第に縮径されるように設けられてもよく、このため、突出部12の下部面における孔13と孔13との間の長さbは、上部面12aの孔13と孔13との間の長さaに比べて大きくてもよい。例えば、突出部12の下部面12bにおける孔13と孔13との間の長さbは、0.1μm超え、かつ、2μm以下であってもよく、前記範囲(0.1μm超え、かつ、2μm以下)において上部面12aの長さaに比べて大きくてもよい。
【0066】
このように、第2の実施形態に係る基板10は、ベース11の上部面12aの上において複数本の孔13同士の間を埋め込むように設けられた突出部12を備える。このため、突出部12は、その上部面12aが、図5の(a)及び図6の(b)に示すように、少なくとも孔13と孔13との間の領域が分離されておらず、つながっている。より具体的に、突出部12は、孔13が形成された領域を除いて、第1の方向(X軸方向)及び第2の方向(Y軸方向)に分離されずに連続するように設けられたものであると説明され得る。このため、突出部12は、一つの団塊状のものであると説明され得る。
【0067】
このような基板は、第1の実施形態において説明したように、フォトリソグラフィ(Photolithography)方法によるものであると説明することができる。
【0068】
ただし、第2の実施形態に係る基板の場合、第1の実施形態に係る基板を設けるときとは異なるシャドウマスクを用いてもよい。すなわち、シャドウマスクは、例えば、母材の上において孔を形成すべき部分が開放されており、残りの部分が閉止(close)されている形状であってもよい。なお、シャドウマスクにおいて開放された領域の形状は、円形状であってもよい。
【0069】
これにより、図5の(a)及び(b)に示すように、複数本の孔13及び孔13の間を埋め込むように設けられた突出部12を備える基板10が設けられる。
【0070】
このようにして設けられた基板10の断面を走査電子顕微鏡(SEM:scanning electron microscope)を用いて撮像すれば、例えば、図6に示すようになる。図6の(a)を参照すると、孔13の周りを埋め込むように突出部12が設けられており、突出部12の上部面12a、すなわち、孔13と孔13との間は、所定の面積を有する平面状に設けられる。すなわち、孔13と孔13との間に相当する突出部12の上部面12aの長さは0を超え、0.1μm~0.5μmであってもよい。なお、突出部12の上部面において、図6の(b)に示すように、孔と孔との間の領域が分離されておらず、つながっている。
【0071】
図7は、本発明の実施形態に係る方法で基板の上に窒化物膜を成長させる成長装置を示す図である。図8は、本発明の実施形態に係る方法で基板の上に窒化物膜を成長させるとき、チャンバーの内部の複数のゾーンのそれぞれの温度を示すグラフである。
【0072】
成長装置は、例えば、イドライド気相エピタキシー(HVPE:Hydride Vapor Phase Epitaxy)成長装置であってもよい。このような成長装置は、図7に示すように、反応空間を有するチャンバー100と、チャンバー100の内部に配設され、固体の状態のソース原料を収める内部空間を有する収容部200と、チャンバー100の内部において収容部200の前方に配置され、基板10が載置可能な支持台600と、収容部200に第1の反応ガスを供給するように前記収容部200の一方の端に連結された第1の配管311と、収容部200において発生されたガスを与えられるように前記収容部200の他方の端に連結された第2の配管312と、チャンバー100の内部に第2の反応ガスを供給できるように前記チャンバー100に配設された第3の配管313と、チャンバー100の内部に含酸素(O)ガスを供給できるように前記チャンバー100に配設された第4の配管314と、チャンバー100の内部に含水素(H)ガスを供給できるように前記チャンバー100に配設された第5の配管315と、を備えていてもよい。
【0073】
また、成長装置は、チャンバー100の外側において前記チャンバー100を取り囲むように配設された第1及び第2の加熱部510a、510bを備えていてもよい。
【0074】
まず、第1及び第2の加熱部510a、510bについて説明する。第1及び第2の加熱部510a、510bは、チャンバー100の内部を加熱する手段であって、第1及び第2の加熱部510a、510bのそれぞれは、チャンバー100を取り囲むように配設される。
【0075】
そして、第1の加熱部510aと第2の加熱部510bは、図7に示すように、チャンバー100の延在方向に並べられて配設され、第1の加熱部510aと第2の加熱部510bは、それぞれ別々に駆動されてもよい。
【0076】
また、第1及び第2の加熱部510a、510bのそれぞれは、複数の発熱体を備えるように設けられる。すなわち、第1の加熱部510aは、チャンバー100の延在方向に並べられて配設された複数の発熱体を備え、複数の発熱体は、それぞれ別々に駆動されてもよい。このとき、第1の加熱部510aの発熱体は4個設けられてもよく、4個の発熱体511~514がチャンバー100の延在方向に並べられて配設されてもよい。また、第2の加熱部510bは、チャンバー100の延在方向に並べられて配設された複数の発熱体を備え、複数の発熱体は、それぞれ別々に駆動されてもよい。このとき、第2の加熱部510bの発熱体は、例えば、3個設けられてもよく、3個の発熱体515~517が第1の加熱部510aの一方の側においてチャンバー100の延在方向に並べられて配設されてもよい。
【0077】
以下、説明のしやすさのために、第1の加熱部510aが4個の発熱体511~514を備え、第2の加熱部510bが3個の発熱体515~517を備える場合を例にとって説明する。また、第1の加熱部510aの4個の発熱体511~514を第1~第4の発熱体511~514と称し、第2の加熱部510bの3個の発熱体515~517を第5~第7の発熱体515~517と称する。
【0078】
このように、チャンバー100の延在方向に並べられて配設された第1の加熱部510aと第2の加熱部510bの配設位置を用いて、チャンバー100の内部を2つの区域に仕切ることができる。すなわち、チャンバー100の内部は、第1の加熱部510aにより取り囲まれた第1の区域110aと、第1の区域110aの一方の側の領域であり、第2の加熱部510bにより取り囲まれた第2の区域110bとに仕切られてもよい。このとき、チャンバー100の内部の第1の区域110aと第2の区域110bは、物理的に分離される空間ではなく、互いに連通される、または互いに連続している空間である。
【0079】
そして、第1の加熱部510aは、上述したように、チャンバー100の延在方向に並べられた第1~第4の発熱体511~514を備える。このため、チャンバー100の内部の第1の区域110aは、第1~第4の発熱体511~514の位置を基準として複数の区域(以下、ゾーン(zone)と称する。)に仕切られてもよい。すなわち、チャンバー100の内部の第1の区域110aは、第1の発熱体511により取り囲まれた第1のゾーン111と、第2の発熱体512により取り囲まれた第2のゾーン112と、第3の発熱体513により取り囲まれた第3のゾーン113と、第4の発熱体514により取り囲まれた第4のゾーン114と、に仕切られてもよい。
【0080】
また、第2の加熱部510bは、チャンバー100の延在方向に並べられた第5~第7の発熱体515~517を備える。このため、チャンバー100の内部の第2の区域110bは、第5の発熱体515により取り囲まれた第5のゾーン115と、第6の発熱体516により取り囲まれた第6のゾーン116と、第7の発熱体517により取り囲まれた第7のゾーン117と、に仕切られてもよい。
【0081】
このような第1及び第2の加熱部510a、5010bを備える成長装置を用いて基板10の上に窒化物膜20を成長させるに際して、上述した複数のゾーン111~117に応じてその温度を調節する。
【0082】
例えば、第1の加熱部510aを用いてチャンバー100の内部の第1の区域110aは430℃~870℃に調節する。このとき、第1の区域110aは、図8に示すように、第1のゾーン111から第4のゾーン114に向かって進むにつれて温度が次第に上がるように調節されてもよい。例えば、第1のゾーン111は430℃~470℃、第2のゾーン112は530℃~570℃、第3のゾーン113は630℃~670℃、第4のゾーン114は830℃~870℃に調節されてもよい。
【0083】
そして、第2の区域110bは、第1の区域110aに比べて高い温度に調節されてもよく、1030℃~1170℃の温度に調節されてもよい。このとき、図8に示すように、第2の区域110bの第5のゾーン115と第6のゾーン116は同じ温度に調節されてもよく、第7のゾーン117は、第5及び第6のゾーン115、116に比べて低い温度になるように調節されてもよい。例えば、第5のゾーン115及び第6のゾーン116は1130℃~1170℃、第7のゾーン117は1030℃~1070℃の温度に調節されてもよい。
【0084】
このようなチャンバー100の内部空間において、第2の区域110bにおいては基板10の上に窒化物膜が成長するため、基板10が位置している前記第2の区域110bは成長空間と称することができる。
【0085】
図7に戻り、成長装置の残りの構成要素について説明する。
【0086】
支持台600は、基板10を支持する手段であって、図7に示すように、チャンバー100の内部の第2の区域110bに位置するように配設されてもよい。より具体的な例を挙げると、支持台600は、一部が第5のゾーン115に位置し、残りが第6のゾーン116に位置するように配設されてもよく、支持台600の全体が第5のゾーン115または第6のゾーン116に位置するように配設されてもよい。
【0087】
収容部200は、その内部にソース原料Sを収める手段であって、第1の配管311に面する一方の端と支持台600に面する他方の端が開口されている筒状であってもよい。このため、第1の配管311から与えられたガスは、収容部200の一方の端に設けられた開口を介して流れ込み、収容部200の内部のガスは、他方の端に設けられた開口を介して第2の配管312に流れ込む。このような収容部200は、図7に示すように、第1の区域110aに位置するように配設されてもよい。より具体的な例を挙げると、収容部200は、第2のゾーン112に位置するように配設されてもよい。いうまでもなく、収容部200は、これに何ら限定されるものではなく、その一部が第2のゾーン112に位置し、残りが第3のゾーン113に位置するように配設されてもよい。
【0088】
第1~第5の配管311~315のそれぞれは、内部にガスが通過可能なパイプ(pipe)であってもよい。
【0089】
第1の配管311は、チャンバー100の延在方向に延びるように設けられて、チャンバー100の内部の第1の区域110aに位置するように配設されてもよい。このとき、第1の配管311の一方の端は、例えば、チャンバー100の外に突き出るように設けられてもよく、前記一方の端は、例えば、第1の反応ガス貯留部と連結されてもよい。そして、第1の配管311の他方の端は、収容部200の一方の端と連結されてもよい。このため、第1の反応ガス貯留部から与えられた第1の反応ガス、例えば、含HClガスは、第1の配管311の一方の端の開口を介して流れ込んで第1の配管311の内部を通過した後、他方の端開口を介して収容部200の内部に供給されてもよい。このように、第1の配管311に第1の反応ガスを供給するとき、キャリアガス、例えば、窒素ガスを一緒に供給してもよい。
【0090】
第2の配管312は、チャンバー100の延在方向に延びるように設けられ、その一方の端が収容部200の他方の端と連結され、他方の端が第2の区域110bに面するように配設されてもよい。このとき、第2の配管312は、その他方の端が、例えば、第2の区域110bの第5のゾーン115に位置するように配設されてもよい。いうまでもなく、本発明はこれに何ら限定されるものではなく、第2の配管312は、その他方の端が第4のゾーン114と第5のゾーン115との境界に位置するように配設されてもよい。
【0091】
第3の配管313は、第1の配管311と、収容部200及び第2の配管312が並べられて配置された方向に延びるように設けられてもよい。このような第3の配管313は、その一方の端がチャンバー100の外に突き出るように設けられてもよく、前記一方の端は、第2の反応ガス貯留部と連結されてもよい。また、第3の配管は、その他方の端が、例えば、第2の区域110bの第5のゾーン115に位置するように配設されてもよい。いうまでもなく、本発明はこれに何ら限定されるものではなく、第3の配管313は、その他方の端が第4のゾーン114と第5のゾーン115との境界に位置するように配設されてもよい。このため、第2の反応ガス貯留部から与えられた第2の反応ガス、例えば、含NHガスは、第3の配管313の一方の端の開口を介して流れ込んで第3の配管313の内部を通過した後、他方の端の開口を介して第2の区域110bに排出されてもよい。このように、第3の配管313に第2の反応ガスを供給するとき、キャリアガス、例えば、窒素ガスを一緒に供給してもよい。
【0092】
このような第3の配管313は、複数本設けられてもよく、図7に示すように、第1の配管311または収容部200または第2の配管312を間に挟んで離れるように配設されてもよい。
【0093】
第4の配管314は、含酸素ガスをチャンバー100の内部に与える手段であって、第3の配管313の延在方向に延びるように設けられてもよい。そして、第4の配管314の一方の端は、チャンバー100の外に突き出て含酸素ガス貯留部と連結されてもよい。また、第4の配管314は、その他方の端が、例えば、第2の区域110bの第5のゾーン115に位置したり、第4のゾーン114と第5のゾーン115との境界に位置したりするように配設されてもよい。
【0094】
第5の配管315は、含水素ガスをチャンバーの内部に与える手段であって、第4の配管314の延在方向に延びるように設けられてもよい。そして、第5の配管315の一方の端は、チャンバー100の外に突き出て含水素ガス貯留部と連結されてもよい。また、第5の配管315は、その他方の端が、例えば、第2の区域110bの第5のゾーン115に位置したり、第4のゾーン114と第5のゾーン115との境界に位置したりするように配設されてもよい。
【0095】
本発明の実施形態においては、基板の上に窒化物膜を成長させるに際して、ソースガスと、第1及び第2の反応ガス及びキャリアガスの他に、含酸素ガスと含水素ガスをさらに用いる。
【0096】
このとき、チャンバー100の内部に供給される全体のガスのうち、含酸素ガスの体積比及び含水素ガスの体積比を調節する。すなわち、チャンバー100の内部に供給される全体のガスのうち、含酸素ガスの体積比が0.01vol%~0.1vol%、好ましくは、0.03vol%~0.07vol%になるように供給する。さらに好ましくは、含酸素ガスの体積比が0.04vol%~0.06vol%になるように供給する。また、チャンバー100の内部に供給される全体のガスのうち、含水素ガスの体積比が0.7vol%~7vol%、好ましくは、3.5vol%~7vol%になるように供給する。さらに好ましくは、含水素ガスの体積比が4.5vol%~5.5vol%になるように供給する。
【0097】
このように、チャンバー100の内部に供給される含酸素ガス及び含水素ガスのそれぞれの比率を調節することにより、たとえ2μm~4.5μmといったように薄肉に窒化物膜を形成するとしても、前記窒化物膜の上部面を平坦化させることができる。
【0098】
以下、図7から図10に基づいて、本発明の実施形態に係る方法で基板の上に窒化物膜を成長させる方法について説明する。このとき、基板の上にAlN(窒化アルミニウム)を成長させる場合を例にとって説明する。
【0099】
図9は、本発明の実施形態に係る方法で基板の上に窒化物膜を成長させる方法を示す手順図である。図10は、本発明の実施形態に係る方法でチャンバーの内部にガスを供給する方法を概念的に示す図である。
【0100】
まず、チャンバー100の内部に不活性ガス、例えば、窒素ガスを供給する。すなわち、第1の反応ガス、第2の反応ガスの供給に際して、キャリアガスとして供給される窒素ガスとは別途に、チャンバー100の内部に窒素ガスを供給する。このとき、チャンバー100の内部から収容部200、第1~第5の配管311~315の外側に向かって窒素ガスを供給することが好ましい。そして、このような窒素ガスの供給は、成長装置が動作する間に連続して行われてもよい。
【0101】
次いで、チャンバー100の内部の温度を調節する(S10)。すなわち、第1の加熱部510aの第1~第4の発熱体511~514と第2の加熱部510bの第5~第7の発熱体515~517のそれぞれをそれぞれ別々に動作させて、チャンバー100の内部の第1~第7のゾーン111~117の温度をそれぞれ別々に調節する。このとき、例えば、図8に示すように、第1の区域110aの第1のゾーン111は430℃~370℃、第2のゾーン112は530℃~570℃、第3のゾーン113は630℃~670℃、第4のゾーン114は830℃~870℃に調節してもよい。また、第5のゾーン115及び第6のゾーン116は1130℃~1170℃、第7のゾーン117は1030℃~1070℃の温度に調節してもよい。
【0102】
チャンバー100の内部の温度の調節が終わると、チャンバー100の第2の区域110bに基板10を装入する(S20)。すなわち、第2の区域110bの第5のゾーン115及び第6のゾーン116にまたがって配置された支持台600の上に基板10を載置する。
【0103】
チャンバー100の内部に基板10が装入されれば、チャンバー100の内部への含酸素ガスの供給を開始する(S30)。このために、第4の配管314に含酸素ガスを流れ込ませると、前記含酸素ガスは、第4の配管314を介して移動して第2の区域110b、例えば、第5のゾーン115に排出される。第5のゾーン115に排出された含酸素ガスは、少なくとも第2の区域110bの第5~第7のゾーン515~517に行き渡ることができる。このように、チャンバー100の第2の区域110bに含酸素ガスを供給するということは、チャンバー100の内部に基板10が装入されてから窒化物膜の成長(S60)が終わる時点まで行ってもよい。他の例によれば、窒化物膜を成長させる間(S60:S61、S62)にのみ含酸素ガスを供給してもよい。
【0104】
また、チャンバー100の内部に供給される全体のガスの体積において、含酸素ガスの体積比(Vol%)が0.01vol%~0.1vol%、好ましくは、0.03vol%~0.07vol%、さらに好ましくは、0.04vol%~0.06vol%になるように供給する。
【0105】
次いで、基板10を窒化処理する(S40)。このために、第3の配管313に含NHガス、すなわち、第2の反応ガスを流れ込ませる。
【0106】
第3の配管313に流れ込んだ含NHガス(第2の反応ガス)は、前記第3の配管313の内部を通過した後、第2の区域110bの第5のゾーン115に排出される。このとき、第2の区域110bに排出された第2の反応ガス、すなわち、含NHガスにより基板10が窒化処理される。基板10の窒化処理の際に供給される第2の反応ガスの供給量(以下、第1の供給量B-1または体積比と称する。)は、後続して窒化物膜の成長の際に供給される第2及び第3の供給量B-2、B-3に比べて多い量にて供給されてもよい。
【0107】
基板10の窒化処理が終わると、第2の反応ガスの供給を止める。そして、含HClガス、すなわち、第1の反応ガスを供給する(S50)。このために、第1の配管311に第1の反応ガスを流れ込ませると、前記第1の反応ガスは、第1の配管311を介して移動して収容部200の内部に流れ込む。収容部200の内部に流れ込んだ第1の反応ガスは、ソース原料S、すなわち、Al金属と反応し、この反応によりAlClガスが生成される(反応式1を参照されたい)。収容部200の内部において生成されたAlClガスは、前記収容部200に連結された第2の配管312を介して第2の区域110bの第5のゾーン115に排出される。
【0108】
第1の反応ガスの供給が開始されてから所定の時間の間に第2の反応ガスは供給されず、このときに供給される第1の反応ガスの供給量を第1の供給量A-1と称する。
【0109】
反応式1:Al(S)+3HCl(g)-→AlCl(g)+3/2H(g)
【0110】
所定の時間の間に第1の供給量A-1にて第1の反応ガスが供給されてから、第2の反応ガスの供給を開始して基板10の上に窒化物膜20を成長させる(S60)。より具体的に説明すれば、所定の時間の間に第1の供給量A-1にて第1の反応ガスが供給された後に、第1の反応ガスの供給量を第1の供給量A-1に比べて多い第2の供給量A-2まで増やす(図10におけるS61を参照されたい)。そして、第1の反応ガスが第2の供給量A-2にて供給され始めると、第2の反応ガスの供給を開始する(図10におけるS61を参照されたい)。このとき、第2の反応ガスは、基板10の窒化処理(S40)の際に供給された第1の供給量B-1に比べて少ない第2の供給量B-2にて供給されてもよい。また、所定の時間の間に第1及び第2の反応ガスのそれぞれが第2の供給量A-2、B-2にて供給されてから、第1及び第2の反応ガスの供給量を第2の供給量A-2、B-2に比べて多い第3の供給量A-3、B-3まで増やす(図10におけるS62を参照されたい)。
【0111】
このように、第1の反応ガスと第2の反応ガスとが同時に供給される間に(S60:S61、S62)、基板10の上に窒化物膜20、すなわち、AlN(窒化アルミニウム)膜を成長させる。すなわち、収容部200において生成されたAlClガスは、第2の配管312を介して第2の区域110bに排出され、NHを含有する第2の反応ガスは、第3の配管313を介して第2の区域110bに排出される。このため、第2の区域110bにおけるAlClとNHとの間の反応によりAlNgが生成され(反応式2を参照されたい)、生成されたAlNが基板10の上に成膜される。
【0112】
反応式2:AlCl(g)+NH(g)-→AlN(g)+3HCl
【0113】
このように、第1の反応ガスと第2の反応ガスを供給する間に、第5の配管315を介して含水素(H)ガスをチャンバー100の第2の区域110bに供給する(S70)。このとき、チャンバー100の内部に供給される全体のガスの体積のうち、含水素ガスの体積比が0.7vol%~7vol%、好ましくは、3.5vol%~7vol%、さらに好ましくは、4.5vol%~5.5vol%になるように供給する。
【0114】
また、含水素ガスの供給は、基板10の上に窒化物膜が成長する間に一部の区間においてのみ行われてもよい。とりもなおさず、第1の反応ガスと第2の反応ガスが同時に供給される区間(S60:S61、S62)のうち、一部の区間においてのみ含水素ガスを供給してもよい。例えば、第1及び第2の反応ガスを第2の供給量A-2、B-2にて供給する間(S61)には含水素ガスを供給せず、第1及び第2の反応ガスを第3の供給量A-3、B-3にて供給する間(S62)に含水素ガスを供給してもよい。いうまでもなく、逆に、第1及び第2の反応ガスを第2の供給量A-2、B-2にて供給する間(S61)に含水素ガスを供給し、第1及び第2の反応ガスを第3の供給量A-3、B-3にて供給する間(S62)に含水素ガスを供給しないこともある。他の例を挙げると、第1及び第2の反応ガスを第2の供給量A-2、B-2及び第3の供給量A-3、B-3にて供給する間(S61、S62)に含水素ガスを供給し続けてもよい。
【0115】
第2の供給量A-2、B-2にて第1及び第2の反応ガスが供給され始める時点からすでに設定された時間が経つと、第1及び第2の反応ガス、含水素ガスの供給を止め、成長を終える。このとき、すでに設定された時間は、基板10のベース11の上に形成される窒化物膜20の目標厚さに応じて決定されてもよい。そして、目標厚さは4.5μm以下、より具体的には、2μm~4.5μmであってもよい。
【0116】
このため、第2の供給量A-2、B-2にて第1及び第2の反応ガスが供給され始める時点からすでに設定された時間が経つと、第1及び第2の反応ガス、含水素ガスの供給を止め、基板10をチャンバー100の外部に搬出する(S80)。
【0117】
このようにして窒化物膜の成長が終わると、化学機械的な研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)方法で前記窒化物膜の上部面を研磨する。
【0118】
研磨加工が終わった窒化物膜に対する貫通電位密度(TDD:Threading Dislocation Density)は、5*10以下である。すなわち、実施形態に係る基板を用いて、実施形態に係る成長方法で成長させた窒化物膜を研磨したとき、窒化物膜の貫通電位密度(TDD)は、5*10以下と低い。
【0119】
以上においては、基板10の上に窒化物膜を形成するに際してAlN膜を形成することについて説明したが、本発明はこれに何ら限定されるものではなく、種々の窒化物膜を形成することができる。例えば、GaN(窒化ガリウム)膜を形成してもよい。この場合、収容部200に装入されるソース原料は、Ga金属であってもよい。
【0120】
図11の(a)は、第1~第5の実験例に係るAlN(窒化アルミニウム)膜の厚さを示すグラフであり、図11の(b)は、第1~第5の実験例に係るAlN(窒化アルミニウム)膜の半値全幅(FWHM:full width at half maximum)を示すグラフである。
【0121】
第1~第5の実験例は、突出部12及び孔13を有さない平坦基板(Plain substrate)の上にAlN膜を成長させた場合である。また、第1~第5の実験例においては、チャンバー100の内部にHClを含有する第1の反応ガスとNHを含有する第2の反応ガスを供給し、含水素ガスは供給しなかった。そして、第1の実験例においては、含酸素ガスを供給せず、第2~第5の実験例のそれぞれにおいては、含酸素ガスを供給してAlN膜を形成した。このとき、チャンバー100内に供給された複数類のガスのうち、含酸素ガスが占める体積比(vol%)において、第2の実験例は0.015vol%(2sccm)、第3の実験例は0.037vol%(5sccm)、第4の実験例は0.052vol%(7sccm)、第5の実験例は0.067vol%(9sccm)になるように供給してAlN膜を形成した。
【0122】
図11の(a)において、第1~第5の実験例に係るAlN膜の厚さは、AlN膜の上部面の上部の表面が平坦化される厚さである。また、突出部12及び孔13を有さない基板の上部面からAlN膜の上部面までの距離を厚さとして測定した。
【0123】
図11の(b)において、半値全幅は、X線回折装置(XRD:X-Ray Differactometer)を用いて測定した第1~第5の実験例に係るAlN膜の(102)結晶面に対する半値全幅(FWHM)(arcsec)である。すなわち、X線回折スペクトルにおける(102)面に対するピーク(peak)幅の半分(1/2)が半値全幅(FWHM)である。半値全幅が小さくなれば小さくなるほど、貫通電位密度(TDD:Threading Dislocation Density)が小さく、しかも、窒化物膜の結晶性に優れていると解釈され得る。
【0124】
図11の(a)を参照すると、第1の実験例に比べて、第2~第5の実験例に係るAlN膜の厚さが薄い。換言すれば、含酸素ガスを用いなかった第1の実験例のAlN膜が平坦化された厚さに比べて、含酸素ガスを用いた第2~第5の実験例のAlN膜が平坦化された厚さの方が薄い。
【0125】
また、図11の(b)を参照すると、第1の実験例に係るAlN膜に対する半値全幅に比べて、第2~第5の実験例に係るAlN膜の半値全幅の方が小さい。すなわち、含酸素ガスを用いなかった第1の実験例(AlN膜)に比べて、含酸素ガスを用いた第2~第5の実験例(AlN膜)の方の貫通電位密度が小さく、しかも、窒化物膜の結晶性に優れている。
【0126】
このような実験結果から、第1及び第2の反応ガスと一緒に含酸素ガスを供給する場合、たとえ窒化物膜、すなわち、AlN膜を薄く形成するとしても、上部面を平坦化させることができるということがわかる。すなわち、含酸素ガスを用いない場合に比べて、含酸素ガスを用いる場合、AlN膜の平坦化厚さを薄くすることができるということがわかる。また、含酸素ガスを用いない場合に比べて、含酸素ガスを用いる場合、AlN膜の貫通電位密度が小さく、しかも、窒化物膜の結晶性がさらに良好になるということがわかる。
【0127】
図12の(a)は、第6~第10の実験例に係るAlN(窒化アルミニウム)膜の厚さを示すグラフであり、図12の(b)は、第6~第10の実験例に係るAlN(窒化アルミニウム)膜の半値全幅(FWHM:full width at half maximum)を示すグラフである。
【0128】
第6~第10の実験例は、第1~第5の実験例と同様に、突出部12及び孔13を有さない平坦基板(Plain substrate)の上にAlN膜を成長させた場合である。
【0129】
また、第6~第10の実験例においては、チャンバー100の内部にHClを含有する第1の反応ガスとNHを含有する第2の反応ガスを供給し、これとともに、含酸素ガス及び含水素ガスを供給してAlN膜を形成した。
【0130】
このとき、第6~第10の実験例において含酸素ガスを同じ量にて供給し、含水素ガスの供給量が異なるように調節した。すなわち、第6~第10の実験例においては、チャンバーの内部に供給される全体のガスのうち、含酸素ガスの体積比が0.052vol%になるように供給した。そして、チャンバー内に供給された複数種のガスのうち、含水素ガスが占める体積比(Vol%)において、第6の実験例は0.74vol%(100sccm)、第7の実験例は2.22vol%(300sccm)、第8の実験例は3.70vol%(500sccm)、第9の実験例は5.18vol%(700sccm)、第10の実験例は6.66vol%(900sccm)になるように供給してAlN膜を形成した。
【0131】
図12の(a)におけるAlN膜の厚さは、図11の(a)において説明したように、AlN膜の上部面の上部の表面が平坦化される厚さである。また、図12の(b)における半値全幅は、図11の(b)において説明した方法と同じ方法で測定したものである。
【0132】
図12の(a)を参照すると、含水素ガスの体積比が上がれば上がるほど、AlN膜が平坦化される厚さが次第に薄くなる。すなわち、第6の実験例から第10の実験例に向かって進むにつれて、AlN膜の平坦化厚さが減る。
【0133】
また、図12の(b)に示すように、5.18vol%(700sccm)以下の範囲において含水素ガスの体積比が上がれば上がるほど、半値全幅(arcsec)が小さくなる。とりもなおさず、5.18vol%(700sccm)以下の範囲において含水素ガスの体積比が上がれば上がるほど、AlN膜の貫通電位密度が小さく、しかも、結晶性に優れている。そして、第10の実験例の場合、第9の実験例に比べて半値全幅が大きいものの、第6~第8の実験例に比べて小さい。
【0134】
これより、含水素ガスの体積比、すなわち、供給量を調節することにより、AlN膜が平坦化される厚さ、貫通電位密度及び結晶性を調節することができるということがわかる。
【0135】
図13の(a)は、第11~第15の実験例に係るAlN(窒化アルミニウム)膜の厚さを示すグラフであり、図13の(b)は、第11~第15の実験例に係るAlN(窒化アルミニウム)膜の半値全幅(FWHM:full width at half maximum)を示すグラフである。
【0136】
第11~第15の実験例は、図1の(a)及び(b)に示す第1の実施形態に係る基板の上にAlN膜を成長させた場合である。すなわち、第11~第15の実験例に供された基板は、図1に示すように、ベース11及びベース11の上部面から突き出た複数の突出部12を備える。そして、突出部12の上部面の長さaは、0を超える(a>0)。とりもなおさず、突出部12の上部面12aは、第1の方向(X軸方向)及び第2の方向(Y軸方向)のそれぞれの長さaが0を超える。このため、突出部12の上部面は所定の面積を有し、これにより、突出部12の上部面は(0001)面を有する。
【0137】
そして、第11~第15の実験例においては、上述した第6~第10の実験例と同じ条件下でガスを供給してAlN膜を形成した。もう一回説明すれば、第11~第15の実験例においては、チャンバーの内部にHClを含有する第1の反応ガスとNHを含有する第2の反応ガスを供給し、これとともに含酸素ガス及び含水素ガスを供給してAlN膜を形成した。
【0138】
このとき、第11~第15の実験例においては、チャンバーの内部に供給される全体のガスのうち、含酸素ガスの体積比が0.052vol%になるように同一に供給し、含水素ガスの体積比が異なるように調節した。すなわち、含水素ガスの体積比が第11の実験例は0.74vol%(100sccm)、第12の実験例は2.22vol%(300sccm)、第13の実験例は3.70vol%(500sccm)、第14の実験例は5.18vol%(700sccm)、第15の実験例は6.66vol%(900sccm)になるように供給してAlN膜を形成した。
【0139】
そして、第11~第15の実験例に係るAlN膜のそれぞれに対して、平坦化される厚さ及び半値全幅を測定した。このとき、AlN膜の厚さは、ベースの上部面からAlN膜の上部面までの距離である。
【0140】
図13の(a)を参照すると、第11及び第12の実験例に比べて、第13~第15の実験例に係るAlN膜の平坦化厚さが薄い。すなわち、含水素ガスが3.5vol%未満にて供給される第11及び第12の実験例に比べて、含水素ガスが3.5vol%以上にて供給される第13~第15の実験例の平坦化厚さが薄い。
【0141】
そして、図13の(b)を参照すると、第11~第15の実験例の半値全幅は、570arcsec以下、すなわち、430arcsec~570arcsecと小さい。また、第11及び第12の実験例に比べて、第13~第15の実験例に係るAlN膜の半値全幅が小さい。すなわち、含水素ガスが3.5vol%未満にて供給される第11及び第12の実験例に比べて、含水素ガスが3.5vol%以上にて供給される第13~第15の実験例の半値全幅が小さい。これより、含水素ガスの体積比が0.7vol%~7vol%になるように供給するに際して、3.5vol%以上、かつ、7vol%以下にて供給することがさらに好ましいということがわかる。すなわち、含水素ガスの体積比が0.7vol%~7vol%になるように供給する場合に比べて、3.5vol%以上、かつ、7vol%以下にて供給する場合に、貫通電位密度をさらに効率よく低減することができ、しかも、結晶性を向上させることができるということがわかる。
【0142】
このように、本発明の実施形態によれば、上部面12aの長さaが0を超える突出部12を有するように基板10を設ける。すなわち、突出部12を備える基板10を設けるが、上部面12aが所定の面積を有する突出部12を設ける。そして、このような基板10の上に窒化物膜20を形成するに際して、ソース原料、第1及び第2の反応ガスの他に含酸素ガス及び含水素ガスをさらに供給して窒化物膜を形成する。
【0143】
これにより、たとえ窒化物膜20の厚さを2μm~4.5μmと薄く形成するとしても、窒化物膜の上部面を平坦化させることができる。すなわち、たとえ薄肉に窒化物膜を形成するとしても、半値全幅が570arcsec以下になるように前記窒化物膜の上部面を平坦化させることができる。したがって、上部面が平坦化されるまで窒化物膜を成長または形成するのにかかる工程時間を短縮することができ、これにより、生産効率が向上するという効果が奏される。
【符号の説明】
【0144】
10:基板
11:ベース
12:突出部
12a:突出部の上部面
13:孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13