(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023075890
(43)【公開日】2023-05-31
(54)【発明の名称】モジュール式骨組構造
(51)【国際特許分類】
E04B 1/32 20060101AFI20230524BHJP
E04B 1/342 20060101ALI20230524BHJP
【FI】
E04B1/32 102B
E04B1/32 101B
E04B1/342 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022075736
(22)【出願日】2022-05-02
(62)【分割の表示】P 2021188771の分割
【原出願日】2021-11-19
(71)【出願人】
【識別番号】521507774
【氏名又は名称】梶川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100078695
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 司
(72)【発明者】
【氏名】梶川 泰司
(57)【要約】 (修正有)
【課題】単位モジュールを組み合せてトラス構造物を形成するのに、単位モジュールだけの組み合わせで可能な、モジュール式骨組構造を提供する。
【解決手段】立体トラス構造の単位架構となる単位モジュールを造り、単位モジュールを相互に接合して立体トラス構造物を構築するモジュール式骨組構造であり、単位モジュールは、四面体または八面体の稜線部分を細長接合面を有するフレーム3で形成し、これら細長接合面を有するフレーム3の端部をジョイント部材4で連結して四面体状架構であるテトラモジュール1、または八面体状架構であるオクタモジュールに組み立て、細長接合面を有するフレーム3の相互を細長接合面を接合させて単位モジュールであるテトラモジュール1またはオクタモジュール同士を相互に連結し、単位モジュールのジョイント同士の集合箇所をガセットプレート9で覆って連結し、単位モジュール間の接合を補強する。
【選択図】
図17
【特許請求の範囲】
【請求項1】
立体トラス構造の単位架構となる単位モジュールを造り、単位モジュールを相互に接合して立体トラス構造物を構築するモジュール式骨組構造であり、単位モジュールは、四面体または八面体の稜線部分を細長接合面を有するフレームで形成し、これら細長接合面を有するフレームの端部をジョイント部材で連結して四面体状架構であるテトラモジュール、または八面体状架構であるオクタモジュールに組み立て、細長接合面を有するフレームの相互を細長接合面を接合させて単位モジュールであるテトラモジュールまたはオクタモジュール同士を相互に連結し、単位モジュールのジョイント同士の集合箇所をガセットプレートで覆って連結し、単位モジュール間の接合を補強することを特徴としたモジュール式骨組構造。
【請求項2】
ガセットプレートはディスクプレートによる請求項1記載のモジュール式骨組構造。
【請求項3】
外周部の単位モジュールのジョイント同士の集合箇所を90°に折曲げたディスクプレートで覆って連結し、単位モジュール間の接合を補強する請求項2記載のモジュール式骨組構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体トラスを用いた構造物のモジュール式骨組構造に関する。
【背景技術】
【0002】
単一形状の部材を正四面体又は正八面体に組み合わせた立体トラスのモジュールで構造物の屋根や側壁等を構成するトラス構造体は、形状の部材のみで構成されているので部材の管理や施工手順を簡単化できると共に、部材のモジュール化により施工作業の効率化を図ることができる。
【0003】
例えば、下記特許文献は、リチャードバックミンスター・フラー(Richard Buckminster Fuller)氏によって提案されたもので、単一形状の部材を正四面体又は正八面体に組み合わせた立体トラスのモジュールで構造物の屋根や側壁等を構成するオクテットトラス構造を開示している。
【特許文献1】米国特許第2986241号明細書
【0004】
この特許文献1では平面状または層状になったベクトル平衡体のような構造であるオクテットトラス構造ついて述べられており、
図39、
図40に示すようなB-36爆撃機のドックの屋根と壁を形成する例が示されている。
【0005】
なお、オクテットトラス構造については従来多くの提案がなされており、フレーム(弦材)をジョイント(連結部材)で結合して立体トラス構造の単位架構となる4面体架構を造り、4面体架構を相互に接合して立体トラス構造物を構築する内容は下記特許文献にその例がある。
【特許文献2】特許第4431805号公報
【特許文献3】特許第4709982号公報
【0006】
単一形状の部材を組み合わせて立体トラス構造物を形成するのにモジュール(ユニット)化が重要な要素となるが、前記特許文献1ではストラットモジュールの代わりに
図41に示すようなシートモジュールを構築したオクテットトラス構造の例が示されている。オクテットトラス構造とは正四面体状架構領域と正八面体状架構領域からなり、そのどちらか一方を相補的な空間領域とするトラス構造である。
【0007】
シートモジュールは
図36に示すようにフランジ40が1つの縁から延びるアルミニウムの薄いシート39であってもよいが、その片方の端から延びるフランジ41と42は、その他の2つのエッジから、適切な角度で延びて、フレームワークシステムの八面体および四面体の面に横たわる。
【0008】
フランジ41はシートの上方および外側方向に向いて、フランジ42は下方および外側に向いている。
【0009】
図38のトラスの八面体の1つは4枚のアルミニウムシート39が組み立てられる。
【0010】
下記特許文献4の構造物のユニット式骨組構造及び骨組部材ユニットはベクトル平衡体形トラスを基本モジュールとすることにより、内部に広い空間を確保できるようにとの提案である。
【特許文献4】特許4889020号公報
【0011】
特許文献4は、同じ長さの骨組部材で構成された複数のベクトル平衡体形トラスのユニットを2ユニットずつ何れかの側面で対向させ、対向する側面の底辺及び頂辺の対応する4節点をそれぞれ骨組部材Aと同じ長さの連結部材Bで架渡して接合すると共に、対向する側面の三角形対の対合節点を相互に接合して側面方向に連結する。
【0012】
この特許文献4によれば、連結するベクトル平衡体形トラスの側面間に四角錐トラスが形成されるので、単一では不安定なベクトル平衡体形トラスのユニットを安定トラス構造として組み立てることができる。
【0013】
また、立方体(正六面体)の各頂点を切り落とした形状のベクトル平衡体形トラスを基本ユニットとするので、各トラス構造の内部に比較的大きな立方体の内部空間を確保できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
前記特許文献1では
図36に示すモジュールでは、シートのフランジのシートの角度は統一されたものではなく、その使用箇所によって適宜変わるもので、すべて同一の部材というものではない。また、
図37のトラスの八面体は4枚のアルミニウムシート39が組み立てられるが、この八面体を単一のモジュールとしてトラス構造物を構築するには難がある。
【0015】
また、特許文献1のトラス構造物では、
図39、
図40に示すように三角形を形成するトラスからなる屋根、壁および床の枠組を形成するのに、屋根に対して壁が斜めに形成されてしまう。
【0016】
前記特許文献4の構造物のユニット式骨組構造及び骨組部材ユニットはベクトル平衡体形トラスのユニットを複数組み合わせて立体トラス構造とするのに、骨組部材Aと同じ長さの連結部材Bで架渡して接合するという2種類の部材の組合せを必要としている。
【0017】
本発明の目的前記従来例の不都合を解消し、単位モジュールを組み合せてトラス構造物を形成するのに、単位モジュール以外の連結部材を用いることなく、単位モジュールだけの組み合わせで可能となり、しかも、ガセットプレートにより単位モジュール間の接合をジョイント部材相互の間で補強することができるモジュール式骨組構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記目的を達成するため本発明は、モジュール式骨組構造としては、第1に、立体トラス構造の単位架構となる単位モジュールを造り、単位モジュールを相互に接合して立体トラス構造物を構築するモジュール式骨組構造であり、単位モジュールは、四面体または八面体の稜線部分を細長接合面を有するフレームで形成し、これら細長接合面を有するフレームの端部をジョイント部材で連結して四面体状架構であるテトラモジュール、または八面体状架構であるオクタモジュールに組み立て、細長接合面を有するフレームの相互を細長接合面を接合させて単位モジュールであるテトラモジュールまたはオクタモジュール同士を相互に連結し、単位モジュールのジョイント同士の集合箇所をガセットプレートで覆って連結し、単位モジュール間の接合を補強することを要旨とするものである。
【0019】
第2に、ガセットプレートはディスクプレートによること、第3に、外周部の単位モジュールのジョイント同士の集合箇所を90°に折曲げたディスクプレートで覆って連結し、単位モジュール間の接合を補強することを要旨とするものである。
【0020】
本発明によれば、ブロック的に用いることができる単位モジュールを構築し、この単位モジュールを立体トラス構造物を構築するように組みあわせるのに、四面体または八面体の稜線部分となるフレームを細長接合面を有する部材の細長接合面を接合させて行うことができるので、特に、単位モジュール以外の部材を連結部材として用いることなく、単位モジュールだけの組み合わせで立体トラス構造物を構築することが可能となり、組立を少ない工数で簡易かつ迅速に行うことができ、しかも単位モジュールのみの組みあわせで形成できるので、プレハブ化が向上する。
【0021】
さらに、単位モジュールを組み合わせるのに、四面体または八面体の稜線部分となるフレームは相互に重なり、2重となるので強度が増し、これが立体トラス構造物の斜材の部分であれば立体トラス構造物自体が堅牢なものとなる。
【0022】
さらに、ガセットプレートにより単位モジュール間の接合をジョイント部材相互の間で補強することができる。また、ガセットプレートはディスクプレートによることで、一枚のガセットプレートで4つの単位モジュールの接合を補強することができる。さらに、外周部の単位モジュールのジョイント同士の集合箇所を90°に折曲げたディスクプレートで覆って連結し、単位モジュール間の接合を補強することができる。
【0023】
また、各単位モジュールは稜線部分となるフレームを細長接合面を接合させて行うことにより、側面方向だけでなく上下方向にもモジュールを積み重ねて多層の安定トラス構造を組み立てることができる。
【0024】
このように、単位モジュールを単純に繋ぎ合わせることで形状可変の安定トラス構造を構築できるので、構築後の仕様変更やスペース変化の要求に容易に対処することができる。
【0025】
必要な単位モジュール空間の数に応じてビニールハウス、ロッジ、シェルター等の小規模な組立式構造物からビルディング、橋梁、人工地盤等の大規模構造物まで様々なモジュール空間構造物への適用が可能である。
【0026】
単位モジュールのみの組みあわせで構造物の骨組を構築できるので部材の製作や管理が容易であり、組み立てに当たっても同じ形状のモジュールを同じパターンで連結すれば足りるので施工の効率化・コストダウンが図れる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の骨組構造の1実施形態を示すものでガセットプレートがない状態の平面図である。
【
図2】本発明の骨組構造に用いる単位モジュールが正四面体状架構である場合の単位モジュール相互の組立状態を示すもので、ガセットプレートがない状態の説明図である。
【
図3】本発明の骨組構造で全体が盤状体である状態の
図1の斜視図である。
【
図4】本発明の骨組構造で盤状体を直交させた状態を示す側面図である。
【
図5】本発明の骨組構造で盤状体を直交させた状態を示す斜視図である。
【
図6】本発明の骨組構造に用いる単位モジュールがテトラモジュールである1実施形態を示す斜視図である。
【
図7】本発明の骨組構造に用いる単位モジュールがテトラモジュールである1実施形態を示す平面図である。
【
図8】本発明の骨組構造に用いる単位モジュールに使用するジョイント部材の一例を示す正面図である。
【
図9】本発明の骨組構造に用いる単位モジュールに使用するジョイント部材の一例を示す斜視図である。
【
図10】ジョイント部材相互の結合を示す説明図である。
【
図11】細長接合面を有するフレームに対するジョイント部材の接合を示す説明図である。
【
図12】単位モジュールの相互の接合の一例を示す斜視図である。
【
図13】本発明の骨組構造で、単位モジュールがテトラモジュールの場合に、内部に四角錐状トラス架構領域が形成されることを示す平面図である。
【
図14】本発明の骨組構造で、単位モジュールがテトラモジュールの場合に、内部に四角錐状トラス架構領域が構成れる結合の状態を示す斜視図である。
【
図15】本発明の骨組構造で、単位モジュールがテトラモジュールの場合に、内部に四角錐状トラス架構領域が形成されることを示す説明図である。
【
図16】本発明の骨組構造で、単位モジュールがテトラモジュールの場合に、内部に正八面体状架構領域が形成されることを示す平面図である。
【
図18】ガセットプレートの応用例を示す正面図である。
【
図19】本発明の骨組構造で単位モジュールの組立の展開を示す説明図である。
【
図21】正四面体の中心と頂点の関係を示す説明図である。
【
図22】本発明の骨組構造に用いる単位モジュールが、正八面体状架構であるオクタモジュールの場合の1実施形態示す斜視図である。
【
図23】本発明の骨組構造に用いる単位モジュールが正八面体状架構であるオクタモジュールの場合の1実施形態示す平面図である。
【
図24】本発明の単位モジュールが正八面体状架構であるオクタモジュールの場合の単位モジュールの組立によるトラス構造物で、内部に正四面体状架構領域が形成されることの1例を示す平面図である。
【
図25】
図23の単位モジュールをさらに増殖させた場合の平面図である。
【
図26】正八面体状架構であるオクタモジュールをテトラモジュール2個で作成することを示す斜視図である。
【
図27】テトラモジュール2個で作成したオクタモジュールの組み合わせを示す斜視図である。
【
図28】単位モジュールの細長接合面を有するフレームをアングル材で作成した例を示す斜視図である。
【
図29】細長接合面を有するフレームをH形鋼で形成したテトラモジュールの実施形態示す斜視図である。
【
図30】細長接合面を有するフレームをH形鋼で形成したテトラモジュールの組み合わせ状態を示す斜視図である。
【
図31】単位モジュールの細長接合面を有するフレームをチャンネル材で作成した例を示す斜視図である。
【
図32】細長接合面を有するフレームをチャンネル材で形成したテトラモジュールの組み合わせ状態を示す斜視図である。
【
図33】テトラモジュール4個の組合せによる正八面体状架構の形成を示す斜視図である。
【
図34】テトラモジュール64個の組合せによる骨組構造の斜視図である。
【
図35】テトラモジュール216個の組合せによる骨組構造の斜視図である。
【
図36】従来例で、バックミンスター・フラーが提案した単位モジュールの一例を示す斜視図である。
【
図37】従来例で、バックミンスター・フラーが提案した提案の単位モジュールで組まれた立体トラス構造物を示す平面図である。
【
図38】従来例で、バックミンスター・フラーが提案した提案の単位モジュールで組まれた八面体の斜視図である。
【
図39】従来例で、バックミンスター・フラーが提案した提案の立体トラス構造物で飛行機ドックの屋根と壁を形成する例を示す正面図である。
【
図40】従来例で、バックミンスター・フラーが提案した提案の立体トラス構造物で飛行機ドックの屋根と壁を形成する例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面について本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の骨組構造の1実施形態を示す平面図で、立体トラス構造の単位架構(単位モジュールと称する)となる4面体架構を造り、4面体架構であるテトラモジュール1を相互に接合して立体トラス構造物を構築する。
【0029】
まず、テトラモジュール1について説明する。テトラモジュール1は正四面体であり、正四面体は
図20に示すように、正三角形の3つの面Aからなるもので、4つの頂点Bと6つの辺Cを有する。さらに、
図21に示すように、正4面体の中心Dと正4面体の頂点Bを結ぶ線Eの相互の角度が109.5度である。
【0030】
フレーム3の細長接合面2は正4面体の辺C(稜線)を平面的に削り取った面であり、その平面のなす角度は正4面体の中心Dに対して細長接合面2の幅方向では傾きのないものである。また、細長接合面2の幅寸は前記削り取った程度によるが、特に限定されるものではない。
【0031】
図6、
図7に示すようにテトラモジュール1は、正四面体であるが、正確には正四面体を想定し、正四面体の稜線部分となるフレームを細長接合面2を有するフレーム3で形成し、これら細長接合面2を有するフレーム3の端部をジョイント部材4で連結して正四面体状架構に組み立てた。正四面体の正三角形は開口面となる。なお、フレーム3はすべて同一の長さである。
【0032】
前記細長接合面2を有するフレーム3は、正四面体状架構の軸材となるものであり、計6本がジョイント部材4で相互に組まれる。前記、正四面体状架構の「状」とは、テトラモジュール1では細長接合面2が計6面あり、また4つの頂点部分にジョイント部材4の天井部である正三角形の平面7があり、全部で14面体であるが、概正四面体状であることによる。
【0033】
前記細長接合面2を有するフレーム3は図示では帯状角材である長方形細長平板であるが、正四面体状架構として組んだ時に外側に向かう面が細長接合面2であれば、軸材としてその断面が蒲鉾形もしくは三角形その他の角形、もそくは中空のパイプ状など特に形状を問わない。
【0034】
このようにフレーム3は細長接合面2を有するものであれば種々の断面形状のものを用いることができ、平板、中空管材、H形その他の型鋼、アングル材、チャンネル材のいずれかを選択することが可能である。
【0035】
【0036】
また、細長接合面2を有するフレーム3の材質も完成する立体トラス構造物の用途によって種々選択でき、鋼、アルミニュウムなどの金属、木、合成樹脂等である。海洋構造物等を対象とする場合防食性の高いチタンを使用することも可能である。
【0037】
ジョイント部材4の材質も同様であり、用途によって種々選択でき、鋼、アルミニュウムなどの金属、木、合成樹脂等である。
【0038】
細長接合面2を有するフレーム3を組み立てるジョイント部材4はこの細長接合面2を有するフレーム3により正四面体架構に組み立てる事ができるものであれば特に形状を問わないが、細長接合面2を有するフレーム3への接合片部5を3つ平面視で相互に120°の開きで展開し、これら接合片部5は天板もしくは側板6で相互に連結するものが好適である。図示の例は側板6で相互に連結した。側板6はこれがなくてもよい。
【0039】
なお、単位モジュールであるテトラモジュール1の相互の接合に支障をきたさないように、長方形細長平板2の端面はジョイント部材4の天井部には覆い被さらないようにし、ジョイント部材4の天井部7は正三角形の開口面とするとか、図示のように平面視略正三角形状(六角形状)の天板とする。この天井部7の各(辺)縁に接合片部5の端部や側板6が連続的に接続している。ジョイント部材4の拡大を
図8、
図9に示す。
【0040】
図示は省略するが、ジョイント部材4の天井部7を天板で構成する場合は、その中央部にボルト接合用の貫通孔を設けてもよい。
【0041】
また、ジョイント部材4は
図10に示すように、複数個(図示では4個)を溶接やその他の手段で結合させて全体を大きな塊とすることもできる。
【0042】
前記細長接合面2を有するフレーム3とジョイント部材4との結合に関しては、ジョイント部材4の接合片部5と長方形細長平板2の結合箇所では、双方を重ね合わせてから固定することや、細長接合面2を有するフレーム3にスリットを形成し、接合片部5をこのスリットへ差し込んで挟み込むものであり、接合片部5とフレーム3の双方の固定はボルト・ナットによる締結や溶接などによる。
【0043】
図6、
図7はジョイント部材4の接合片部5が細長接合面2を有するフレーム3の外側で接合する例を示したが、これが逆に内側で接合するものでもよい。
図11に内側(
図11a参照)で接合する場合と、外側(
図11b参照)で接合する場合の両方の接合例を示す。
【0044】
なお、接合片部5が細長接合面2を有するフレーム3の外側で接合する場合は細長接合面2に対してジョイント部材4の接合片部5は突出しないように面一を同じくすれば、ジョイント部材4の存在が細長接合面2を有するフレーム3同士の重ね合わせ接合に邪魔になることはない。
【0045】
次にかかるテトラモジュール1により立体トラス構造物を形成することについて説明する。テトラモジュール1は単位モジュールとして相互に接合して組立てられて立体トラス構造物を形成するが、このテトラモジュール1同士の接合は
図2等に示すように細長接合面2を有するフレーム3の相互を細長接合面2で重ね合せて接合する。
【0046】
なお、このテトラモジュール1の相互を接合し、かつ固定するは、細長接合面2を有するフレーム3の相互をフレーム3の部分で固定する行う場合と、細長接合面2を有するフレーム3同士は固定せずにジョイント部材4相互を結合して行う場合と、その両方を採用する場合とがある。
【0047】
また、細長接合面2を有するフレーム3を重ね合わせての相互をこのフレーム3の部分で固定するには、ボルト・ナットによる締結、溶接、凹凸結合、バンド等による加締めなどの手段で結合することが可能である。
【0048】
さらに、フレーム3相互に重ね合わせを強固にするため、
図12に示すように細長接合面2に凹凸8を形成し、この凹凸8による相欠きによる接合としてもよい。
【0049】
かかる凹凸8による相欠きによる接合例としては、
図12の図示の他に細長接合面2を点状の凹凸のエンボスにする場合、歯の波状のギザギザによる場合などが想定できる。
【0050】
テトラモジュール1の相互の接合によって組み立て可能な立体トラス構造物の形態は盤状やキューブ状など種々可能であり、
図1に示すように内部に相補的な四角錐状トラス架構領域Bを構成することができる。
【0051】
テトラモジュール1で組み立てる立体トラス構造物は、テトラモジュール1同士の細長接合面2を有するフレーム3の相互を細長接合面2を接合させた結合の結果、立体トラス構造物の内部に相補的な四角錐状トラス架構領域Bが構成される。
【0052】
図13に示すようにテトラモジュール1を頂点を一点に集めるように4個を組み合わせた場合、テトラモジュール1の頂点が対向する面を形成する辺に該当するフレーム3の細長接合面2のうち1つは前記一点に集めるようにした頂点の集合に対してこれを囲むような正方形枠Aを構成し、ここに相補的な四角錐状トラス架構領域Bが形成される。
【0053】
この相補的な四角錐状トラス架構領域Bについて、さらに説明すると、正四面体状架構である単位モジュールのテトラモジュール1を2個稜線部分となるフレーム3の部分で細長接合面2を接合させると、この細長接合面2が重なるフレーム3は斜材となり、一方、他のフレーム3は細長接合面2を外側に向けて水平または垂直にかつ直交方向に並ぶ。これが組み合わさると前記相補的な四角錐状トラス架構領域Bの底辺面の正方形枠Aが形成される。
【0054】
ちなみに、前記相補的な四角錐状トラス架構領域Bの体積はテトラモジュール1を2つ合わせた体積と同一である。
【0055】
このように連結するテトラモジュール1が前後、左右に組まれた場合、単位モジュールの側面間に相補的な四角錐状トラス架構領域Bを形成することができ、テトラモジュールだけで安定したトラス構造を組み立てることができる。
【0056】
さらに、テトラモジュール1を組み合わせるのに、正四面体の稜線部分となるフレーム3は相互に重なり、2重となるので強度が増し、これが斜材の部分であれば立体トラス構造物の斜材が堅牢なものとなる。
【0057】
また、
図14、
図15、
図16に示す様に前記相補的な四角錐状トラス架構領域Bを合体させた正八面体状架構領域Cを内部に組むようにトラス構造物を形成することも可能である。
【0058】
図33は
図14の構造体と同じものであるが、4個のテトラモジュール1から形成される稜線の長さがテトラモジュール1の2倍の正四面体状トラス(グレーで示す)が形成され、その内部に、相補的な正八面体状架構領域Cを形成する。
【0059】
該正四面体状トラスと同じ大きさの正四面体状トラス(白で示す)が正四面体状トラスの互いの中点で交差して、新たな双対の正四面体状トラスを形成する。この場合、双対の正四面体状トラスの外側に位置する4個ずつの頂点は、キューブ状トラス構造の8個の頂点を構成している。該キューブ状トラス構造は、8個の正四面体状モジュールからなる。
【0060】
図15の右側が四角錐状トラス架構領域Bをあわせて内部に正八面体状架構領域Cを構成する場合、左側は四角錐状トラス架構領域Bの底辺面四角形を開放面として外側に向けて正八面体状架構領域Cを構成しない場合である。上側が組立後の状態、下側が組立後の状態である。
【0061】
なお、テトラモジュール1の組合せは比較的自由であり、
図18にその展開の例を示すと、テトラモジュール1の4つを3回転対称で結合させたもの(
図18の左端)を2つ準備し、そのうちの1つを裏返して(
図18の中央)、互いの頂点4箇所が合うようにフレーム3を接合すると平面状の3回回転対称のトラス構造(
図18の右端)が形成できる。
【0062】
図16、
図17に示すように前記正四面体状架構であるテトラモジュール1の頂点のジョイント4同士の集合箇所をガセットプレート9よる連結で被覆した。
【0063】
ガセットプレート9は図示の例では円形のディスクプレートであり、ガセットプレート9により単位モジュール間の接合をジョイント部材相互の間で補強する。
【0064】
また、ガセットプレート9はディスクプレートによることで、一枚のガセットプレートで4つの単位モジュールの接合を補強することができる。
【0065】
さらに、
図18に示すように、外周部の単位モジュールのジョイント同士の集合箇所を90°に折曲げたディスクプレートによるガセットプレート9′で覆って連結し、単位モジュール間の接合を補強する。このようにすれば、ガセットプレート9′が単位モジュール間の接合を補強することができる。
【0066】
図34、
図35にテトラモジュール1の組合せの増殖形態を示す。
図34は正四面体状モジュールの稜線の長さの4倍の正四面体状トラス構造(グレーで示す)は、24個の正四面体状モジュールから形成される。
【0067】
該稜線の長さが4倍の正四面体状トラス構造と同じ大きさの正四面体状トラス構造(白で示す)が互いの稜線の中点で交差して、双対の正四面体状トラス構造を形成する。この場合、双対の正四面体状トラスの外側に位置する4個ずつの頂点は、キューブ状トラス構造の8個の頂点を構成している。最終的にキューブ状トラス構造は、64個の正四面体状モジュールから形成される。
【0068】
図35では、双対の正四面体状トラスの外側に位置する4個ずつの頂点は、キューブ状トラス構造の8個の頂点を構成している。すべて正四面体状モジュールからなるキューブ状トラス構造は、216個の正四面体状モジュールから形成される。
【0069】
本発明のモジュール式骨組構造で、その構築物として床X・壁Yや屋根Zのあるものを構築する場合は、前記四角錐状トラス架構領域Bの底辺面四角形が水平または垂直に並び、構築面を形成するようにすればよい。
【0070】
図3は全体が盤状体である状態の斜視図で、水平にテトラモジュール1が相互に結合するための接合面aとテトラモジュール1を相互に接合するための接合面bとが形成される。
【0071】
前記盤状体を直交させた状態を
図4、
図5に示す。
図4,
図5に示すように床X部分と壁Y部分の結合、もしくは壁Yと屋根Z部分の接合は水平または垂直にかつ直交方向に並ぶフレーム同士の接合となり、床X・壁Yや屋根Zとしての立体トラス構造物を直角に組むことができ、床や屋根Zに対して直角に立ち上がる(または立ち下がる)壁Yを形成することができる。
【0072】
図4において、cは水平にテトラモジュール1を相互に接合するための該モジュールの接合面で床Xの拡張となる。dは垂直にテトラモジュール1を相互に接合するための該モジュールの接合面で、壁Yの拡張となる。eは水平にテトラモジュール1を相互に接合するための該モジュールの接合面で、屋根Zの拡張となる。
【0073】
このようにして構築された立体トラス構造物の耐力・変形形状については、テトラモジュールによる相補的な四角錐トラスである四角錐状トラス架構領域Bの効用について説明する。
【0074】
立体トラス構造は軽量で大径間を形成できることから屋根構造等に用いられることが多い 。したがって、荷重は雪荷重や風荷重等の鉛直荷重が支配的であり、設計上は強度設計により検討が行われる。平面的に大径間を形成する立体トラス構造 を長期にわたり極めて大きな鉛直荷重を支持する構造物に適用することを考える 。この場合、地震による影響も考慮しなければならず、水平荷重に対する 立体トラスの保有耐力や塑性変形能力が要求される。
【0075】
図1に示す立体トラスをラチス形式として見れば、テトラモジュールによる相補的な四角錐状領域が構成される立体トラスは上面、下面を正方形のラチスとし,斜材を下面を構成する下弦材への投影面で重ね合わせる部材構成として見立てられる。この場合、相補的な四角錐状トラス架構領域を形成する各個材は、3次元方向の部材を構成している。
【0076】
したがって、立体トラス構造を構成するトラス個材が座屈しても応力の再配分が考えられ、地震力に対する靱性が期待できる。また、テトラモジュールによる相補的な四角錐状トラス架構領域を構成するトラス構造は他の立体トラスの部材構成と比較すると、部材数と節点数が最小限のテトラモジュールによるプレハブ化によって経済性に富む立体トラスが形成可能である。
【0077】
次に本発明の第2実施形態として、
図22、
図23に示すように立体トラス構造の単位架構となる単位モジュールを正八面体状架構であるオクタモジュール10とした場合について説明する。正八面体とは正多面体の一種であり、空間を8枚の正三角形で囲んだ立体である。正四面体の各頂点を辺の中心まで切り落とした形でもある。
【0078】
本発明のオクタモジュール10の場合も前記テトラモジュール1と同じく、正確には正八面体を想定し、八面体の稜線部分となるフレームを細長接合面2を有するフレーム3で形成し、これら細長接合面2を有するフレーム3の端部をジョイント部材4で連結して正八面体状架構に組み立てた。
【0079】
フレーム3はすべて同一の長さである。オクタモジュールは2つの四角錐状フレームが正方形フレームを共通にして上下に構成されたもので、3組の正方形のフレームが相互に交差して8個の三角形格子を形成するものである。
【0080】
図示は省略するが、ジョイント部材4は、細長接合面を有するフレームへの接合片部を3つ平面視で相互に90°の開きで展開し、これら接合片部は天板もしくは側板で相互に連結してなる。
【0081】
細長接合面2を有するフレーム3は、正八面体状架構の軸材となるものであり、ジョイント部材4で計12本が組まれ、正八面体状架構の「略」とは、細長接合面2が12面あり、また6つの頂点部分には正四角形の平面があり、側面である正三形のトラス面の8個にこれらが加わり全部で26面体であることによる。
【0082】
ジョイント部材4はこの細長接合面2を有するフレーム3により正八面体状架構に組み立てる事ができるものであれば特に形状を問わないが、細長接合面2を有するフレーム3への接合片部5の4個を平面視で相互に90°の開きで展開し、これら接合片部5は天板もしくは側板で相互に連結してもよい。
【0083】
前記細長接合面2を有するフレーム3は図示では帯状角材である長方形細長平板であるが、正八面体状架構として組んだ時に外側に向かう面が細長接合面2であれば、軸材としてその断面が蒲鉾形もしくは三角形その他の角形、もそくは中空のパイプ状など特に形状を問わない。
【0084】
前記テトラモジュール1の場合と同じく、細長接合面2を有するフレーム3は、平板、中空管材、H形その他の型鋼、アングル材、チャンネル材のいずれかを選択することができる。
【0085】
また、細長接合面2を有するフレーム3の材質も完成する立体トラス構造物の用途によって種々選択でき、鋼、アルミニュウムなどの金属、木、合成樹脂等である。海洋構造物等を対象とする場合防食性の高いチタンを使用することも可能である。
【0086】
ジョイント部材4の材質も同様であり、用途によって種々選択でき、鋼、アルミニュウムなどの金属、木、合成樹脂等である。
【0087】
フレーム3の細長接合面2は正八面体の辺C(稜線)を平面的に削り取った面であり、その平面のなす角度は正八面体の中心に対して細長接合面2の幅方向では傾きのないものである。また、細長接合面2の幅寸は前記削り取った程度によるが、特に限定されるものではない(図示しない。)。
【0088】
ジョイント部材4の接合片部5と長方形細長平板2の結合は、重ね合わせ、もしくは差し込みであり、固定はボルト・ナットによる締結、溶接などであり、ジョイント部材4の接合片部5が細長接合面2を有するフレーム3の内側で接合する場合、外側で接合する場合、また、差込による場合など前記テトラモジュール1と同じである。
【0089】
次にかかるオクタモジュール10により立体トラス構造物を形成することについて説明する。オクタモジュール10は相互に接合して立体トラス構造物を形成するが、前記テトラモジュール1と同じくこの接合は細長接合面2を有するフレーム3の相互を細長接合面2で重ね合せて接合する。
【0090】
なお、このオクタモジュール10の相互の接合には、細長接合面2を有するフレーム3の相互の固定を行う場合と細長接合面2を有するフレーム3同士は固定せずにジョイント部材4相互の結合で行う場合と、その両方を採用する場合がある。
【0091】
また、細長接合面2を有するフレーム3を重ね合わせての相互をこのフレーム3部分で固定するには、ボルト・ナットによる締結、溶接、凹凸結合、バンド等によるカシメなどの手段で結合することが可能であるが、細長接合面2に凹凸を形成し、相欠きによる接合としてもよい。
【0092】
前記のように、内部に四角錐トラスの2つを底辺面四角形を共通にして有するオクタモジュール10は、
図24に示すように、3回回転対称性で組んだ場合に、立体トラス構造物内部に相補的正四面体状架構領域Dが形成される。
【0093】
図25はさらにオクタモジュール10の組合せを展開して盤体を構成した場合であり、細長接合面2を有するフレーム3の細長接合面2を接合させると、この細長接合面2が重なるフレームは斜材となる。立体トラス構造物の内部に相補的な正四面体状架構領域Dが形成されることについては、
図24と同様である。
【0094】
このようにオクタモジュールのみによって形成される相補的正四面体状架構領域を有する立体トラス構造物の耐力・変形形状については、前記説明した通りである。
【0095】
本発明の第3実施形態として、
図26に示すように、前記オクタモジュール10をテトラモジュール2個を相互に連結し、かつ、フレーム3の√2の長さを有するフレーム3aを追加して形成した。
【0096】
図27に示すようにこのオクタモジュール10を相互に連結することによって、√2の長さを有するフレーム3aによって形成される相補的な四面体状架構領域Dが形成できる。
【0097】
図示は省略するが、前記オクタモジュール10の場合も
図36、
図38に示す一体型のテトラモジュール1と同様にショイント部材を用いない一体型のモジュールとして構成してもよい。
【符号の説明】
【0098】
1…テトラモジュール 2…細長接合面
3,3a…フレーム 4…ジョイント部材
5…接合片部 6…側板
7…天井部 8…凹凸
9,9′…ガセットプレート
10…オクタモジュール 11…アングル材
13…H形鋼 14…チャンネル材
39…アルミニウムシート 40,41,42…フランジ
A…正方形枠 B…四角錐状トラス架構領域
C…正八面体状架構領域 D…正四面体状架構領域
X…床 Y…壁
Z…屋根
a,b,c,d,e…正方形枠の一部