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特開2023-75910高圧噴射撹拌工法で使用されるモニタリング装置、及びモニタリング方法
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  • 特開-高圧噴射撹拌工法で使用されるモニタリング装置、及びモニタリング方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023075910
(43)【公開日】2023-05-31
(54)【発明の名称】高圧噴射撹拌工法で使用されるモニタリング装置、及びモニタリング方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/12 20060101AFI20230524BHJP
【FI】
E02D3/12 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161290
(22)【出願日】2022-10-05
(31)【優先権主張番号】P 2021188264
(32)【優先日】2021-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】390036504
【氏名又は名称】日特建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】394008846
【氏名又は名称】大起理化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 欣浩
(74)【代理人】
【識別番号】100143786
【弁理士】
【氏名又は名称】根岸 宏子
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 潤
(72)【発明者】
【氏名】竹谷 裕
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 稔
【テーマコード(参考)】
2D040
【Fターム(参考)】
2D040AB03
2D040BA01
2D040FA00
2D040FA17
(57)【要約】
【課題】地盤改良体の有効径をより高い信頼性でもって確認することができるモニタリング装置、及びモニタリング方法を提案する。
【解決手段】モニタリング装置1は、地盤Gに挿入した注入管3のノズル3aから硬化材を噴射させつつ注入管3を回転させながら引き上げることによって地盤改良体Sを造成する高圧噴射撹拌工法において、地盤改良体Sを造成する際に使用されるものであって、ノズル3aから噴射された硬化材を撮像する撮像機構7が設けられたロッド6を備え、ロッド6は、地盤改良体Sにおける計画有効径の外縁部において、撮像機構7がノズル3aから噴射された硬化材により改良される下端と同一深度となるように地盤Gに挿入され、且つ注入管3とともに引き上げられるように構成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に挿入した注入管のノズルから硬化材を噴射させつつ当該注入管を回転させながら引き上げることによって地盤改良体を造成する高圧噴射撹拌工法において、当該地盤改良体を造成する際に使用されるモニタリング装置であって、
前記ノズルから噴射された硬化材を撮像する撮像機構が設けられたロッドを備え、
前記ロッドは、前記地盤改良体における計画有効径の外縁部において、前記撮像機構が前記ノズルから噴射された硬化材により改良される下端と同一深度となるように前記地盤に挿入され、且つ前記注入管とともに引き上げられるように構成される、モニタリング装置。
【請求項2】
前記撮像機構は、
前記ロッドの側面に設けられた開口部と、
前記開口部を閉鎖して前記ロッドの内部を封止する一方、光は透過させるカバーと、
前記カバーの内側に設けられ、光を照射してこの光で前記ノズルから噴射された硬化材を照らす照明部と、
前記照明部で照らされた前記硬化材を撮像可能な視野部を有し、前記カバーの内側において当該視野部の視野範囲の外側に前記照明部が位置するように設けられるカメラと、
不透明又は半透明であって前記照明部の正面に設けられる遮光体と、を備える請求項1に記載のモニタリング装置。
【請求項3】
前記照明部は、前記視野部に対して前記ロッドの中心軸線に沿う方向の両側に設けられる一方、当該視野部に対して当該中心軸線に直交する方向には設けられていない請求項2に記載のモニタリング装置。
【請求項4】
地盤に挿入した注入管のノズルから硬化材を噴射させつつ当該注入管を回転させながら引き上げることによって地盤改良体を造成する高圧噴射撹拌工法において、当該地盤改良体を造成する際に用いられるモニタリング方法であって、
前記地盤改良体における計画有効径の外縁部において、前記ノズルから噴射された硬化材を撮像する撮像機構が設けられたロッドを、前記撮像機構が前記ノズルから噴射された硬化材により改良される下端と同一深度となるように前記地盤に挿入する工程と、
前記ノズルから噴射される前記硬化材を前記撮像機構で撮像しつつ前記注入管とともに前記ロッドが引き上げられる工程と、を含むモニタリング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧噴射撹拌工法において地盤改良体を造成する際に使用されるモニタリング装置及びモニタリング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
所望する強度を具備しない軟弱地盤等を高強度に改良するための工法として、高圧噴射撹拌工法が知られている。高圧噴射撹拌工法は、地盤に挿入した注入管のノズルから硬化材を高圧で噴射させつつ注入管を回転させながら引き上げることにより、地盤中に円柱状や扇柱状の地盤改良体を造成する工法である。
【0003】
高圧噴射撹拌工法においては、地盤改良の対象となる土層のせん断強さや硬さ、対象土層の不均一性等によって地盤改良体の有効径にばらつきが生じることがある。このため、地盤改良体が計画した通りの有効径で造成されているかの確認を行う必要がある。従来は、地盤改良体を造成した後に事後調査ボーリングを行って、採取したコアにより確認を行うことが一般的である。しかしこの方法では、コアを採取するに当たって造成した地盤改良体を数日間養生させなければならないため、地盤改良体の有効径の確認に時間を要することになる。
【0004】
一方、コアを採取する確認方法に替わるものとして、特許文献1に示された装置、及びこの装置による方法が知られている。特許文献1に示された装置及び方法では、注入管の周囲に建て込み管を設けるとともに建て込み管内に集音器を配置しておき、この集音器によって、注入管のノズルから噴射させた硬化材が建て込み管に当たる音をモニタリングする。そしてモニタリングした音の音量レベルに基づいて、硬化材が建て込み管に到達しているかを判断している。すなわち特許文献1に示された装置及び方法によれば、注入管のノズルから硬化材を噴射させた際の建て込み管周辺における地盤の切削状態をリアルタイムで把握することが可能であり、これにより地盤改良体の有効径を短時間で確認することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-62626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら特許文献1に示された装置及び方法は、噴射された硬化材の様子を間接的に把握するものであり、硬化材を直接観察しているわけではない。このため、地盤改良体の有効径を確認するにあたり、信頼性向上に関して改善の余地が残されている。
【0007】
このような点に鑑み、本発明では、注入管から噴射された硬化材の様子を直接観察することができ、これにより地盤改良体の有効径をより高い信頼性でもって確認することができるモニタリング装置、及びモニタリング方法を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、地盤に挿入した注入管のノズルから硬化材を噴射させつつ当該注入管を回転させながら引き上げることによって地盤改良体を造成する高圧噴射撹拌工法において、当該地盤改良体を造成する際に使用されるモニタリング装置であって、前記ノズルから噴射された硬化材を撮像する撮像機構が設けられたロッドを備え、前記ロッドは、前記地盤改良体における計画有効径の外縁部において、前記撮像機構が前記ノズルから噴射された硬化材により改良される下端と同一深度となるように前記地盤に挿入され、且つ前記注入管とともに引き上げられるように構成される、モニタリング装置である。
【0009】
このようなモニタリング装置において、前記撮像機構は、前記ロッドの側面に設けられた開口部と、前記開口部を閉鎖して前記ロッドの内部を封止する一方、光は透過させるカバーと、前記ロッドの内部に設けられ前記カバーを透過した光を反射するミラーと、前記ロッドの内部に設けられ前記ミラーに向けて光を照射してこの光で前記ノズルから噴射された硬化材を照らす照明部と、前記照明部で照らされた前記硬化材からの光が前記ミラーで反射されてこの反射した光によって当該硬化材を撮像するカメラと、を備えるものでもよい。
【0010】
またこのモニタリング装置において、前記カバーは平板状であり、前記開口部に取り付けられた前記カバーの内側面と外側面は、前記照明部からの光が前記ミラーで反射された反射光の光軸に対する垂直面に対して傾いているものでもよい。
【0011】
そしてこのようなモニタリング装置において、前記撮像機構は、前記ロッドの側面に設けられた開口部と、前記開口部を閉鎖して前記ロッドの内部を封止する一方、光は透過させるカバーと、前記カバーの内側に設けられ、光を照射してこの光で前記ノズルから噴射された硬化材を照らす照明部と、前記カバーの内側において前記照明部が視野範囲の外側に位置するように設けられ、前記照明部で照らされた前記硬化材を撮像するカメラと、不透明又は半透明であって前記照明部の正面に設けられる遮光体と、を備えることが好ましい。
【0012】
またこのモニタリング装置において、前記照明部は、前記視野部に対して前記ロッドの中心軸線に沿う方向の両側に設けられる一方、当該視野部に対して当該中心軸線に直交する方向には設けられていないことが好ましい。
【0013】
また本発明は、地盤に挿入した注入管のノズルから硬化材を噴射させつつ当該注入管を回転させながら引き上げることによって地盤改良体を造成する高圧噴射撹拌工法において、当該地盤改良体を造成する際に用いられるモニタリング方法であって、前記地盤改良体における計画有効径の外縁部において、前記ノズルから噴射された硬化材を撮像する撮像機構が設けられたロッドを、前記撮像機構が前記ノズルから噴射された硬化材により改良される下端と同一深度となるように前記地盤に挿入する工程と、前記ノズルから噴射される前記硬化材を前記撮像機構で撮像しつつ前記注入管とともに前記ロッドが引き上げられる工程と、を含むモニタリング方法でもある。
【発明の効果】
【0014】
本発明のモニタリング装置及びモニタリング方法によれば、上述したロッドを、地盤改良体における計画有効径の外縁部において、撮像機構がノズルから噴射された硬化材により改良される下端と同一深度となるように地盤に挿入しておき、その後は注入管とともに引き上げることにより、噴射された硬化材を撮像機構によって直接観察することができる。すなわち本発明によれば、挿入されたロッド周辺における地盤の切削状態をリアルタイムで把握することができるとともに、噴射された硬化材の様子を間接的に把握していた従来のものに比して、地盤改良体の有効径をより高い信頼性でもって確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係るモニタリング装置の一実施形態を模式的に示した図である。
図2図1に示したロッドの撮像機構周辺を示した部分拡大図であって、(a)は側面図であり、(b)はA-Aに沿う断面図であり、(c)は(b)のカバー周辺における部分拡大図である。
図3図1に示したモニタリング装置によるモニタリング方法に関する説明図である。
図4】本発明に係るモニタリング装置の他の実施形態に関し、ロッドの撮像機構周辺を模式的に示した図である。
図5図4に示した照明部に関し、矢印Bに沿う向きで模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら本発明に係るモニタリング装置と、このモニタリング装置によるモニタリング方法の一実施形態について説明する。
【0017】
図1は、本実施形態のモニタリング装置1を模式的に示した図である。モニタリング装置1は、施工機2と、施工機2によって地盤Gに垂直に支持される注入管3と、注入管3に接続されるホース4と、ホース4に接続されて硬化材を送給する不図示のプラントを備えている。
【0018】
施工機2は、注入管3を上下方向に移動させ、また注入管3をその中心軸線回りに回転させる、又はその中心軸線を中心として所定の回転角度内で揺動させる機能を有する。
【0019】
注入管3は、単管構造、或いは多重管構造となるものであって、注入管3の内部には、硬化材(例えばセメント系硬化材)を流動させる流路が形成されている。注入管3の下部側面には、この流路に通じるノズル3aが設けられている。そして注入管3の上部には、ホース4が取り付けられていて、ホース4は、硬化材を所定の圧力で送給する不図示のプラントに接続されている。
【0020】
上述した施工機2とプラントを作動させることにより、注入管3は回転しながら引き上げられ、プラントから送給された硬化材は、ホース4と注入管3の内部を流動してノズル3aから高圧で噴射される。すなわち、高圧噴射された硬化材によって地盤Gは切削崩壊され、更に硬化材とともに撹拌混合されるため、地盤G中に円柱状又扇柱状の地盤改良体Sを造成することができる。
【0021】
またモニタリング装置1は、昇降機5と、昇降機5によって上下方向に移動するロッド6を備えている。ロッド6には、ノズル3aから噴射された硬化材を撮像可能な撮像機構7が設けられている。なお本実施形態の昇降機5は、図3に示したケーシングパイプCを上下方向に移動させるとともにその中心軸線回りに回転させて、地盤Gを削孔する機能も有している。
【0022】
ロッド6は、中空状で所定の長さで形成されていて、直列状に継ぎ足すことができるように構成されている。ロッド6を継ぎ足すための構成としては、例えば接続元となるロッド6の上端部に雌ねじ部を設け、新たに継ぎ足すロッド6の下端部に雄ねじ部を設けることが挙げられる。また図2に示すように地盤Gに対して最初に挿入されるロッド6の下部側面には、ロッド6の内部につながる開口部6aが設けられている。またロッド6の側面には、開口部6aが設けられた位置を基準として周方向に同位置に、マーク6bが設けられている。なお継ぎ足される新たなロッド6の側面にも、マーク6bが設けられていて、ロッド6を複数本継ぎ足した状態でも、全てのマーク6bは、周方向において開口部6aと同位置にある。
【0023】
本実施形態の撮像機構7は、ロッド6に設けた開口部6aと、カバー8と、ミラー9と、照明部10と、カメラ11により構成されている。
【0024】
カバー8は、正面視で円形になる平板状であって、開口部6aに取り付けられる。開口部6aにカバー8を取り付けることにより、中空状になるロッド6の内部は封止される。カバー8は、透明又は半透明の素材で形成されていて、光を透過させることが可能である。本実施形態のカバー8は、石英ガラスにより形成されているが、他の素材を使用してもよい。
【0025】
本実施形態のカバー8は、ロッド6の中心軸線CAに対して傾いた状態(後述するように、照明部10からの光がミラー9で反射されてカバー8に向けて進行する際の反射光に関し、この反射光の光軸に対する垂直面に対してカバー8の内側面8aと外側面8bが傾いた状態)でロッド6に取り付けられている。カバー8の傾く向きは、本実施形態では、下方から上方に向かうにつれて中心軸線CAに近づく向きである。
【0026】
ミラー9は、ロッド6の内部において、開口部6aと略同高さになる位置に設けられている。図示したようにミラー9は、ロッド6の中心軸線CAに対して45°傾いた状態でロッド6に取り付けられている。
【0027】
照明部10は、ロッド6の内部において、ミラー9の上方に設けられていて、ミラー9に向けて下向きに光を照射する。本実施形態の照明部10はLEDであって、カメラ11の周囲に複数配置されている。また照明部10の光軸は、中心軸線CAに沿う向きに合せられている。
【0028】
カメラ11は、例えばCCD素子を含んで構成されるものであり、カメラ11にあたる光を電気信号に変換する機能を有する。本実施形態のカメラ11は、ロッド6の内部に配されたケーブルを介して地上に設置された不図示の表示装置と接続されていて、この表示装置によりカメラ11で撮像した物体を確認することができる。
【0029】
次に、このようなモニタリング装置1を使用した地盤改良体Sを造成する際のモニタリング方法について説明する。
【0030】
まず、図1に示すように造成する地盤改良体Sの中心となる地点に設けた縦孔H1に注入管3を挿入する。本実施形態においては、地盤改良体Sの中心となる地点に施工機2を設置し、施工機2によって注入管3を回転させつつ下降させ、これにより縦孔H1を削孔しつつ縦孔H1に注入管3が挿入されるようにしている。なお、予めボーリングマシン等で縦孔H1を削孔し、その後、施工機2を設置して施工機2で注入管3を挿入してもよい。
【0031】
また、地盤改良体Sにおける計画した有効径の外縁部(地盤改良体Sにおける計画有効径の外縁部)に設けた縦孔H2には、ロッド6を挿入する。本実施形態においては、地盤改良体Sにおける計画有効径の外縁部に昇降機5を設置し、図3(a)に示すように中空状のケーシングパイプCで縦孔H2を削孔する。なお縦孔H2の深さは、縦孔H1と同等又はそれ以上とする。そして図3(b)に示すようにロッド6をケーシングパイプCに挿入し、更に縦孔H1に挿入した注入管3のノズル3aが位置する深さに対して開口部6aが同程度の深さに位置するまで(より詳細には、ノズル3aから噴射された硬化材により改良される下端と開口部6aが同一深度となる位置まで)、ロッド6を降下させる。その後、図3(c)に示すようにケーシングパイプCを引き上げることにより、ロッド6を縦孔H2に挿入することができる。このときロッド6に設けたマーク6bの向きを手掛かりとして、開口部6aが注入管3に対向するようにロッド6の向きを合せておく。
【0032】
このようにして注入管3を所定の深さまで挿入し、またノズル3aが位置する深さと開口部6aが位置する深さが同程度となるところまでロッド6を挿入し、且つ開口部6aを注入管3に対向させた後は、上述した施工機2とプラントを作動させることにより、ノズル3aから硬化材を高圧で噴射させつつ注入管3を回転させながら引き上げる。これにより、地盤Gは切削崩壊され、更に硬化材とともに撹拌混合されるため、地盤G中に地盤改良体Sが造成されていく。
【0033】
地盤改良体Sを造成する際は、撮像機構7も作動させる。撮像機構7を作動させることによって、図2(c)に示すように照明部10からミラー9に向けて中心軸線CAに沿って光が照射される。そしてミラー9で反射した光は、中心軸線CAに対して垂直方向に進行して、カバー8を透過する。ここで、ノズル3aから噴射された硬化材がロッド6まで届いている場合は、カバー8を透過した光によって硬化材が照らされることになる。そして照らされた硬化材からの光は、カバー8を透過した後、ミラー9によって反射されて中心軸線CAに沿う向きに進行するため、カメラ11によって硬化材を撮像することができる。
【0034】
また地盤改良体Sを造成する際は、昇降機5も作動させて、注入管3の引き上げにあわせてロッド6も引き上げる。すなわち、地盤改良体Sが造成されていく間、ノズル3aから噴射された硬化材の様子をカメラ11で直接観察し続けることができるため、造成される地盤改良体Sの有効径を高い信頼性でもって確認することができる。なお施工機2と昇降機5は、それぞれ単独で注入管3とロッド6を引き上げる(施工機2がロッド6を引き上げる動作タイミングと動作速度に合わせて、昇降機5を動作させる)ようにしてもよいし、施工機2と昇降機5を電気的に接続し、注入管3の引き上げとロッド6の引き上げが同期した状態で行われるようにしてもよい。
【0035】
ところで本願発明者は、カメラ11による硬化材の撮像においては、照明部10からの光に対するカバー8の傾きが重要であることを見出した。以下、この点について詳細に説明する。
【0036】
カバー8が、中心軸線CAが伸延する向きと平行である場合(すなわち、照明部10からの光がミラー9で反射されてカバー8に向けて進行する際の反射光に関し、この反射光の光軸に対する垂直面に対してカバー8の内側面8aと外側面8bが平行である場合)において、ミラー9からの反射光は、カバー8の内側面8aでもその一部が反射される。すなわち、このような位置関係でカバー8がロッド6に取り付けられている場合、カバー8の内側面8aで反射した光は、中心軸線CAに対して垂直方向に進行してミラー9にあたり、その後、中心軸線CAに沿って進行してカメラ11に入ることになる。またノズル3aから噴射された硬化材がロッド6まで届いている状態において、カバー8の外側面8bには硬化材があたるため、カバー8を透過したミラー9からの反射光は、カバー8の外側面8bにあたる硬化材が影になってカバー8の外側面8bでも反射し、同じようにしてカメラ11に入ることになる。すなわち、カバー8の内側面8aと外側面8bでの反射光の影響により、カメラ11で硬化材の撮像が行い難いことがあった。
【0037】
一方、本実施形態のように、カバー8が中心軸線CAに対して傾いた状態でロッド6に取り付けられている場合(すなわち、照明部10からの光がミラー9で反射されてカバー8に向けて進行する際の反射光に関し、この反射光の光軸に対する垂直面に対してカバー8の内側面8aと外側面8bが傾いた状態である場合)において、図2(c)に示すように、照明部10からの光がミラー9で反射されてカバー8に向けて進行する際の反射光は、カバー8の内側面8aで反射された後は、中心軸線CAの垂直方向に対して傾いて進行するため、その後、ミラー9で反射された後は、カメラ11からずれた位置に向けて進行する(図2(c)における細い実線を参照)。また、カバー8に向けて進行するミラー9からの反射光のうち、カバー8を透過してカバー8の外側面8bで反射された光も、中心軸線CAの垂直方向に対して傾いて進行するため、その後、ミラー9で反射された後は、カメラ11からずれた位置に向けて進行する(図2(c)における細い破線を参照)。従って、カバー8を中心軸線CAに対して傾いた状態でロッド6に取り付けることにより、カバー8の内側面8aと外側面8bでの反射光の影響を抑えて硬化材を良好に撮像することができる。
【0038】
なお、カバー8の内側面8aと外側面8bでの反射光の影響を抑えるにあたり、カバー8の傾く向きは、本実施形態のように下方から上方に向かうにつれて中心軸線CAに近づく向きでもよいし、下方から上方に向かうにつれて中心軸線CAから離れる向きでもよいが、ロッド6を縦孔H2に挿入する際にカバー8に加わる地盤Gからの貫入抵抗を抑える(惹いてはカバー8への抵抗を抑えてカバー8への傷付き等を防止する)には、本実施形態の向きに傾ける方が好ましい。
【0039】
本発明に係るモニタリング装置と、このモニタリング装置によるモニタリング方法は、図1図3に示したモニタリング装置1の撮像機構7に替えて、図4図5に示した撮像機構7Aを用いることによっても具現化される。
【0040】
図4図5に示した撮像機構7Aは、上述したロッド6に設けた開口部6aと、上述したカバー8と、照明部10Aと、カメラ11Aと、遮光体12により構成されている。なお撮像機構7Aにおけるカバー8は、ロッド6の中心軸線CAに対して平行になる状態でロッド6に取り付けられている。
【0041】
まずカメラ11Aについて説明する。カメラ11Aは、例えばCCD素子を含んで構成されるものであり、カメラ11Aにあたる光を電気信号に変換する機能を有する。本実施形態のカメラ11Aは、図2に示したカメラ11と同様に、ロッド6の内部に配されたケーブルを介して地上に設置された表示装置と接続されていて、この表示装置によりカメラ11Aで撮像した物体を確認することができる。なお図2に示したカメラ11は、ロッド6に取り付けた状態において、撮像可能な視野部がロッド6の下方に向けられていたが、図4に示すようにカメラ11Aの視野部11aは、ロッド6に取り付けた状態においてロッド6の側方に向けられている。またカメラ11Aは、視野部11aの焦点がカバー8の表面と一致する状態でロッド6に取り付けられている。
【0042】
照明部10Aは、本実施形態では基板10aに設けられたLED10bである。LED10bは、図5に示すように基板10aに複数(本実施形態では合計6個)設けられている。基板10aは、ロッド6の内部に配されたケーブルを介して地上に設置された制御装置と接続されていて、制御装置及び基板10aによって発光する。基板10aには、図4図5に示すように円形状の開口10cが設けられている。基板10aは、視野部11aの中心CA1に対して開口10cの中心が一致するようにロッド6に取り付けられる。なお開口10cの大きさは、視野部11aの視野範囲よりも大きくなっている。またLED10bは、開口10cよりも外側に設けられている。すなわちLED10bは、視野部11aの視野範囲よりも外側に設けられている。
【0043】
なお本実施形態のLED10bは、図4に示すように視野部11aに対してロッド6の中心軸線CAに沿う方向の両側(基板10aをロッド6に取り付けた状態において、視野部11aを中心として上側90°の範囲と下側90°の範囲)に設けられているが、視野部11aに対してロッド6の中心軸線CAに直交する方向(基板10aをロッド6に取り付けた状態において、視野部11aを中心として右側90°の範囲と左側90°の範囲)には設けられていない。この点については後述する。
【0044】
遮光体12は、不透明又は半透明であって、LED10bからの光を遮る又は抑制する効果を有している。本実施形態の遮光体12は不透明であり、また円環板状をなすように形作られていて、円形の貫通孔12aを備えている。遮光体12は、図4に示すようにLED10bの正面において、視野部11aの中心CA1に対して貫通孔12aの中心が一致する状態でLED10bとカバー8に接するようにして設けられている。なお貫通孔12aの半径は、開口10cの中心からLED10bの内縁部までの距離と同一又はそれよりも小さくなっていて、遮光体12の外縁部における半径は、開口10cの中心からLED10bの内縁部までの距離と同一又はそれよりも大きくなっている。すなわち遮光体12は、LED10bの正面を全面的に覆っているため、LED10bの正面からの光は遮光体12によって遮られてカバー8には直接届かず、LED10bの側面からの光がカバー8を透過する状態にある。
【0045】
このような撮像機構7Aを備えるモニタリング装置1も、図1図3を参照しながら説明した上述したモニタリング方法と同様の手順によって、地盤改良体Sを造成する際の硬化材を撮像することができる。
【0046】
ところでカメラ11Aによる硬化材の撮像においては、照明部10Aの正面に遮光体12を設けることが重要である。遮光体12を設けずにカメラ11Aで撮像を行ったところ、撮像した対象物の上下部分は明るくなる一方、上下方向中間部分は暗くなっていて、明るさにムラが認められた。このような明るさのムラは、カメラ11Aでの硬化材の撮像に影響を及ぼすことがある。一方、LED10bの正面に遮光体12を設け、これによりLED10bの正面からの光を遮ってLED10bの側面からの光がカバー8を透過するようにすると、対象物をほぼ均等の明るさで撮像することが可能であった。なお、LED10bの光量によっては、半透明の遮光体12を用いてLED10bの正面からの光を抑制することでも、対象物をほぼ均等の明るさで撮像することが可能である。
【0047】
またLED10bは、開口10cの全周に亘って設けてもよいが、特に地盤改良体Sを地盤の深いところに造成する場合には、本実施形態のように視野部11aに対してロッド6の中心軸線CAに沿う方向の両側に設ける一方、視野部11aに対してロッド6の中心軸線CAに直交する方向には設けないことが有用である。すなわち、地盤改良体Sを地盤の深いところに造成する場合、基板10aと地上に設置された制御装置とをつなぐケーブルは長くなる(一例として50mを超える長さになる)ため、LED10bの数が増えると電力不足の問題につながることがある。この点につき本願発明者が検討を重ねたところ、LED10bの数を減らして本実施形態のように配置する場合は、電力不足の問題が解消されるとともに対象物をほぼ均等の明るさで撮像することが可能であった。
【0048】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、上記の説明で特に限定しない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。また、上記の実施形態における効果は、本発明から生じる効果を例示したに過ぎず、本発明による効果が上記の効果に限定されることを意味するものではない。
【0049】
例えば、本実施形態のカメラ11、11Aや基板10aは、ロッド6の内部に配されたケーブルを介して不図示の表示装置や制御装置と接続されるものであったが、無線により表示装置や制御装置と接続されるものでもよい。ロッド6の内部にケーブルを配している場合は、ロッド6を回転させるとケーブルの断線につながるおそれがあるが、カメラ11、11A等と表示装置等とを無線で接続する場合は、上述したケーシングパイプCで縦孔H2を先行して削孔せずとも、ロッド6を下降させつつ回転させて縦孔H2を削孔することができるため、縦孔H2を削孔しつつロッド6をこれに挿入した状態にすることができる。なお無線による接続を採用する場合、カメラ11、11Aや基板10aに供給される電力は、ロッド6内にバッテリーを設け、このバッテリーから電力を供給すればよい。
【0050】
またカメラ11、11Aによる撮像データと撮像を行った際の深度とを関係づけて記憶させるようにしてもよい。このように構成する場合は、造成される地盤改良体Sの深さ毎の状態を記録として残しておくことができる。また撮像機構7、7Aによる撮像は、地盤改良体Sにおける計画有効径の外縁部のうち1ヶ所のみで行ってもよいし、複数箇所のそれぞれにロッド6を挿入して複数箇所で撮像してもよい。
【符号の説明】
【0051】
1:モニタリング装置
3:注入管
3a:ノズル
6:ロッド
6a:開口部
7、7A:撮像機構
8:カバー
8a:カバーの内側面
8b:カバーの外側面
9:ミラー
10、10A:照明部
11、11A:カメラ
12:遮光体
G:地盤
S:地盤改良体
図1
図2
図3
図4
図5