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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023075920
(43)【公開日】2023-05-31
(54)【発明の名称】積層セラミック電子部品
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20230524BHJP
   H01F 27/29 20060101ALI20230524BHJP
   H01F 17/04 20060101ALI20230524BHJP
   H01C 7/02 20060101ALN20230524BHJP
   H01C 7/04 20060101ALN20230524BHJP
   H01C 7/10 20060101ALN20230524BHJP
【FI】
H01G4/30 201K
H01G4/30 512
H01G4/30 201C
H01G4/30 513
H01G4/30 201F
H01F27/29 123
H01F17/04 F
H01C7/02
H01C7/04
H01C7/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022178271
(22)【出願日】2022-11-07
(31)【優先権主張番号】10-2021-0160461
(32)【優先日】2021-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リー、テク ジュン
(72)【発明者】
【氏名】リー、サン ムーン
(72)【発明者】
【氏名】セオ、チャン ホ
(72)【発明者】
【氏名】キム、フィ デイ
(72)【発明者】
【氏名】リー、チュル セウン
【テーマコード(参考)】
5E001
5E034
5E070
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AC07
5E001AD01
5E001AD02
5E001AF06
5E034DA07
5E034DC01
5E034DC10
5E070AA01
5E070AB01
5E082AA01
5E082AB03
5E082EE04
5E082FF05
5E082FG18
5E082FG26
5E082GG10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本体と本体の外部に形成された外部電極間の結合力を向上させた積層セラミック電子部品を提供する。
【解決手段】積層セラミック電子部品100は、誘電体層111及び誘電体層を間に挟んで積層された複数の第1内部電極121、第2内部電極122を含む本体110と、本体の外部に形成され、第1内部電極と接続された第1外部電極131と、第2内部電極と接続された第2外部電極132と、を含む。本体は、各外部電極と接する第1領域及び各外部電極と接しない第2領域を含む。第1領域の表面粗さRをR、上記第2領域の表面粗さをRとするとき、R/Rは3~15を満たす。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体層及び前記誘電体層を間に挟んで積層された複数の内部電極を含む本体と、
前記本体の外部に形成され、前記内部電極と接続された外部電極と、を含み、
前記本体は、前記外部電極と接する第1領域及び前記外部電極と接しない第2領域を含み、
前記第1領域の表面粗さRをR、前記第2領域の表面粗さをRとするとき、R/Rは3~15を満たす、積層セラミック電子部品。
【請求項2】
前記第1領域は、規則的な凹凸パターンを有する、請求項1に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項3】
前記凹凸パターンは、前記第1領域にパルスレーザーを照射することにより形成される、請求項2に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項4】
前記第1領域は半導体層を含み、前記半導体層は前記外部電極と接する、請求項1に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項5】
前記外部電極はめっき層である、請求項1に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項6】
前記外部電極は、前記本体上に順に積層して形成されるニッケル(Ni)めっき層及び錫(Sn)めっき層を含む、請求項5に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項7】
前記積層セラミック電子部品は厚さが70μm以下である、請求項1に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項8】
前記内部電極の積層方向から見たとき、一辺が(250+n×350)μmの-10%と+10%との間に該当する長さを有し、他辺が(250+m×350)μmの-10%と+10%との間に該当する長さを有し、ここでn及びmは自然数である、請求項1に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項9】
前記本体は、複数の内部電極を含む容量形成部と、前記容量形成部の上下部に配置されるカバー部とを含み、
前記カバー部に配置される複数のダミー電極を含む、請求項1に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項10】
前記外部電極は前記本体の側面をカバーし、前記本体において前記内部電極の積層方向を基準にして互いに対向する第1面及び第2面のうち第1面にのみ延びる、請求項1に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項11】
前記外部電極は前記本体の第1面及び第2面に延びる、請求項10に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項12】
前記外部電極は、前記本体において前記内部電極の積層方向に互いに対向する第1面及び第2面のうち第1面にのみ配置され、互いに離隔した第1外部電極及び第2外部電極を含み、
前記第1外部電極は、前記本体の内部に貫通配置された第1連結電極により連結され、前記第2外部電極は、前記本体の内部に貫通配置された第2連結電極により連結される、請求項1に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項13】
前記内部電極は、前記誘電体層を間に挟んで互いに対向するように配置される第1内部電極及び第2内部電極を含み、
前記第1連結電極は前記第1内部電極と連結され、且つ前記第2内部電極と絶縁され、前記第2連結電極は前記第2内部電極と連結され、且つ前記第1内部電極と絶縁された、請求項12に記載の積層セラミック電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層セラミック電子部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、キャパシタ、インダクタ、圧電体素子、バリスタ又はサーミスタなどのセラミック材料を使用する積層セラミック電子部品は、セラミック材料からなるセラミック本体と、本体の内部に形成された内部電極及び上記内部電極と接続されるように本体の表面に設置された外部電極とを備える。
【0003】
積層セラミック電子部品のうち、積層セラミックキャパシタ(MLCC、Multilayer Ceramic Capacitor)は、小型でありながらも高容量が保障され、実装が容易であるという利点により、コンピュータ、PDA、携帯電話などの移動通信装置の部品として広く使用されている。
【0004】
近年では、電子製品の小型化及び多機能化に伴い、チップ部品も小型化及び高機能化する傾向にあるため、積層セラミックキャパシタもそのサイズが小さいながらも容量の大きい高容量製品が求められている。そのため、積層セラミックキャパシタの厚さを薄くするための研究が続けられており、このために積層セラミックキャパシタの外部電極の厚さを減少させようとする努力が続いている。
【0005】
従来の外部電極は、ディッピング(Dipping)工程によってセラミック本体の外側に導電性ペーストを塗布し焼成することにより形成された焼成電極上にめっき層を形成することが一般的であった。ただし、既存のディッピング(Dipping)工程により形成された焼成電極を含む外部電極の厚さを減少させることには限界があった。
【0006】
これを解決するために、セラミック本体の外側に直接的にめっき層を形成して外部電極の厚さを薄層化しようとする試みがあったが、セラミック本体の表面とめっき電極との間の結合力が弱く、本体の表面に直接的にめっき層を形成できないという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明のいくつかの目的の一つは、積層セラミック電子部品の本体と本体の外部に形成された外部電極間の結合力を向上させ、信頼性に優れた積層セラミック電子部品を提供することである。
【0008】
本発明のいくつかの効果の一つは、積層セラミック電子部品の本体に直接的にめっき層を形成することにより、外部電極の厚さを薄く形成して積層セラミック電子部品を小型化することである。
【0009】
ただし、本発明の目的は上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解することができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態は、誘電体層及び上記誘電体層を間に挟んで積層された複数の内部電極を含む本体と、上記本体の外部に形成されて上記内部電極と接続された外部電極とを含み、上記本体は上記外部電極と接する第1領域及び上記外部電極と接しない第2領域を含み、上記第1領域の表面粗さRをR、上記第2領域の表面粗さをRとするとき、R/Rは3~15を満たす積層セラミック電子部品を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のいくつかの効果の一つは、積層セラミック電子部品の本体と本体の外部に形成された外部電極間の結合力を向上させ、信頼性に優れた積層セラミック電子部品を提供することである。
【0012】
本発明のいくつかの効果の一つは、積層セラミック電子部品の本体に直接的にめっき層を形成することにより、外部電極の厚さを薄く形成して積層セラミック電子部品を小型化することである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態による積層セラミック電子部品を概略的に示す斜視図である。
図2図1のI-I'線に沿った断面図である。
図3】本発明の一実施形態による本体を示す模式図である。
図4】本体の表面にパルスレーザーを照射する工程を概略的に示す模式図である。
図5】本発明の一実施形態による断面図である。
図6】本発明の一実施形態による積層セラミック電子部品を上部から見た平面図である。
図7】本発明の一実施形態による断面図である。
図8】本発明の一実施形態による積層セラミック電子部品を概略的に示す斜視図である。
図9図8のII-II'線に沿った断面図である。
図10】本発明の一実施形態による積層セラミック電子部品を概略的に示す斜視図である。
図11図10のIII-III'線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下では、具体的な実施形態及び添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲は以下で説明する実施形態に限定されるものではない。また、本発明の実施形態は、通常の技術者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどは、より明確な説明のために誇張することができ、図面上の同一の符号で示される要素は同一の要素である。
【0015】
そして、図面において本発明を明確に説明するために説明と関係のない部分は省略し、図面に示した各構成の大きさ及び厚さは説明の便宜上、任意に示しているため、本発明は必ずしも示されたものに限定されない。なお、同一思想の範囲内の機能が同一である構成要素については、同一の参照符号を用いて説明する。さらに、明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」というとき、これは特に反対される記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0016】
図面において、第1方向は積層方向又は厚さT方向、第2方向は長さL方向、第3方向は幅W方向と定義することができる。
【0017】
以下では、図1図2を参照して、本発明の一実施形態による積層セラミック電子部品100について詳細に説明する。
【0018】
本発明の一実施形態による積層セラミック電子部品100は、誘電体層111及び上記誘電体層を間に挟んで積層された複数の内部電極121、122を含む本体110と、上記外部に形成されて上記内部電極と接続された外部電極131、132とを含み、上記本体は上記外部電極と接する第1領域と、上記外部電極と接しない第2領域とを含み、上記領域の表面粗さRをR、上記第2領域の表面粗さをRとするとき、R/Rは3~15を満たすことができる。
【0019】
本体110は、誘電体層111及び内部電極121、122が交互に積層されている。本体110の具体的な形状に特に限定はないが、図示のように本体110は六面体形状又はこれと類似の形状からなることができる。焼成過程で本体110に含まれたセラミック粉末の収縮や角部の研磨により、本体110は完全な直線を有する六面体形状ではないが、実質的に六面体形状を有することができる。
【0020】
本体110は、第1方向に互いに対向する第1面S1及び第2面S2、上記第1面S1及び第2面S2と連結され、第2方向に互いに対向する第3面S3及び第4面S4、第1面S1及び第2面S2と連結され、第3面S3及び第4面S4と連結され、第3方向に互いに対向する第5面S5及び第6面S6を有することができる。
【0021】
本体110を形成する複数の誘電体層111は焼成された状態であって、隣接する誘電体層111の間の境界は走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を利用せずには確認しにくいほど一体化することができる。
【0022】
本発明の一実施形態によると、誘電体層111を形成する原料は、十分な静電容量が得られる限り特に限定されない。例えば、チタン酸バリウム系材料、鉛複合ペロブスカイト系材料又はチタン酸ストロンチウム系材料などを使用することができる。上記チタン酸バリウム系材料は、BaTiO系セラミック粉末を含むことができ、上記セラミック粉末の例示として、BaTiO、BaTiOにCa(カルシウム)、Zr(ジルコニウム)等が一部固溶された(Ba1-xCa)TiO、Ba(Ti1-yCa)O、(Ba1-xCa)(Ti1-yZr)O、又はBa(Ti1-yZr)O等が挙げられる。
【0023】
誘電体層111を形成する原料は、チタン酸バリウム(BaTiO)などのパウダーに本発明の目的に応じて様々なセラミック添加剤、有機溶剤、結合剤、分散剤などを添加することができる。
【0024】
このとき、誘電体層111の厚さは積層セラミック電子部品100の容量設計に合わせて任意に変更することができ、本体110の大きさと容量を考慮して1層の厚さは焼成後0.1~10μmとなるように構成することができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0025】
本体110は、本体110の内部に配置され、誘電体層111を間に挟んで積層された内部電極121、122を含み、複数の内部電極121、122が積層された容量形成部と、上記容量形成部の上部及び下部に形成されたカバー部112、113とを含むことができる。
【0026】
上部カバー部112及び下部カバー部113は、単一の誘電体層又は2つ以上の誘電体層を容量形成部の上下面にそれぞれ第1方向又は厚さ方向に積層して形成することができ、基本的に物理的又は化学的ストレスによる内部電極の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0027】
上部及び下部カバー部112、113は、内部電極を含まないことを除いては、上記容量形成部の誘電体層111と同じ材料及び構成を有することができる。
【0028】
誘電体層111及びカバー部112、113は、チタン酸バリウム(BaTiO)等のパウダーを含んで形成されたスラリーをキャリアフィルム(carrier film)上に塗布及び乾燥して複数のセラミックグリーンシートを設けることにより形成することができる。
【0029】
複数の内部電極121、122は、本体110の互いに対向する方向に露出した第1内部電極121及び第2内部電極122を含むことができる。第1内部電極121及び第2内部電極122は、互いに異なる外部電極131、132と連結され、駆動時に互いに異なる極性を有することができ、これらの間に配置された誘電体層111によって互いに電気的に分離されることができる。
【0030】
複数の内部電極121、122は、セラミックグリーンシートの一面に所定の厚さで導電性金属を含むペーストを印刷して形成されることができる。上記ペーストの印刷方法としては、スクリーン印刷法又はグラビア印刷法などを使用することができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0031】
内部電極121、122に含まれる導電性金属は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、錫(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金のうち一つ以上であってよいが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0032】
外部電極131、132は、本体110の外部に形成されて内部電極121、122と接続され、具体的に、本体110において互いに対向する面に配置された第1外部電極131及び第2外部電極132を含むことができる。第1外部電極131及び第2外部電極132は、第1内部電極121及び第2内部電極122とそれぞれ接続されることができる。ただし、外部電極131、132の個数や内部電極121、122との連結方式は実施形態によって変わり得る。
【0033】
本発明の一実施形態によると、本体110は、外部電極131、132と接する第1領域及び上記外部電極と接触しない第2領域とを含み、上記第1領域の表面粗さRをR、第2領域の表面粗さをRとするとき、R/Rは3~15を満たすことができる。
【0034】
表面粗さとは、表面を加工する際に表面に生じる微細な凹凸の程度を指すものであって、積層セラミック電子部品100の表面粗さは本体110の圧着工程時に表面にサポを挿入したり、本体110の外側にパルスレーザーを照射したりすることにより形成されることができる。
【0035】
このとき、上記表面粗さは中心線平均粗さRを意味することができる。中心線平均粗さRとは、表面上に形成されている粗さに対して仮想の中心線を想定し、上記表面粗さの仮想の中心線を基準にしてそれぞれの距離(例えば、r、r、r・・・r)を測定した後、下記式のように各距離の平均値を求めて算出した値を意味する。
【0036】
【数1】
【0037】
上記表面粗さは、後述するように3D光学表面プロファイラ(Optical Surface Profilers)を用いて測定することができる。
【0038】
/Rが3~15を満たす場合、上記第1領域の表面粗さによる表面積の増加及びアンカリング(anchoring)効果により本体110と外部電極131、132との間の機械的結合力が向上することができる。上記R/Rが3未満の場合、上記第1領域の表面積が低下し、アンカリング効果などが弱く、本体110と外部電極131、132との間の機械的結合力が低下する可能性がある。また、後述するように本体110上にめっき層を直接的に形成することができず、積層セラミック電子部品100の外部電極131、132の厚さが増加することができる。
【0039】
上記R/Rが15を超える場合、上記第1領域の表面粗さが過度に増加して本体110のクラック(crack)が発生し、積層セラミック電子部品100が破損するなど、不良が発生する可能性がある。また、外部電極131、132の厚さが過度に薄い部分が発生して水分浸透が発生する可能性がある。特に、本体110上にめっき層を直接的に形成するとき、めっき金属が上記表面粗さによる複数個の凹凸の間に過度に深く浸透しなければならず、これにより、めっき層が均一に形成されず、本体110とめっき層との間の結合力が低下する可能性がある。したがって、R/Rは3~15であることが好ましいが、3.6~14.3であることがさらに好ましい。
【0040】
上記第1領域の表面粗さRは、表面粗さを形成する方法によって異なるが、例えば、0.3~1μmであってよい。上記第2領域の表面粗さRは、例えば、0.1μm以下であってよい。
【0041】
本発明の一実施形態において、上記第1領域は規則的な凹凸パターンを有することができる。これは、上記第1領域に形成された複数個の凹凸の端が一定の方向に配置されたことを意味することができる。例えば、図3を参照すると、上記第1領域に形成された複数個の凹凸の端が第3方向と平行な方向に配置されてよい。このとき、本体110と接する外部電極131、132の表面もこれに対応するパターンを有することができる。
【0042】
上記第1領域に形成された規則的な凹凸パターンによる表面積の増加やアンカリング(anchoring)効果により本体110と外部電極131、132との間の機械的結合力が向上することができる。また、外部電極131、132が本体110の外部に均一に形成されることができる。
【0043】
図3では、上記第1領域に形成された複数個の凹凸の端が第3方向と平行な方向に配置されたことを示しているが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、上記第1領域に形成された複数個の凹凸の端は第1方向と平行な方向に配置されてもよい。
【0044】
本発明の一実施形態において、上記凹凸パターンは上記第1領域にパルスレーザー(Pulsed Laser)を照射することにより形成されることができる。上記第1領域にパルスレーザーを照射する場合、上記第1領域の表面粗さRを容易に形成することができ、これと同時に上記第1領域に規則的な凹凸パターンが形成されることができる。
【0045】
従来の場合、内部電極121、122と誘電体層111間の焼成収縮率の差により内部電極121、122を露出させる工程を別途に行った。ただし、本発明の一実施形態によると、内部電極121、122を露出させる工程を別途に行わなくても、上記第1領域に表面粗さを形成すると同時に、内部電極121、122を露出させることができる。
【0046】
図4は、本体110の表面にパルスレーザーを照射する工程を概略的に示す模式図である。パルスレーザー11は反射ミラー12に向かって出射され、上記反射ミラーは上記パルスレーザーの光路を変更することができる。このとき、反射されたパルスレーザー光をインデクシングするスキャナー13及びパルスレーザー光を集光するレンズ14を経て固定部材15に固定された本体110に照射されることができ、特に、上記外部電極と接する上記第1領域に照射されることができる。その後、洗浄及び乾燥過程を経ると、上記第1領域に表面粗さが形成され、規則的な凹凸パターンが形成された本体110を製造することができる。
【0047】
上記パルスレーザーとしては、例えば、YAGレーザー、YVOレーザー、YLFレーザーなどが使用されることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0048】
本発明の一実施形態において、上記第1領域は半導体層114、115を含むことができ、上記半導体層は上記外部電極131、132と接することができる。具体的に、図5を参照すると、上記半導体層は第1半導体層114及び第2半導体層115を含むことができ、第1半導体層114は第1外部電極131と接することができ、第2半導体層115は第2外部電極132と接することができる。
【0049】
半導体層114、115は、本体110の他の領域に比べて酸素空孔(oxygen vacancy)が相対的にさらに多く分布する領域を意味することができる。半導体層114、115に分布された酸素空孔が自由電子を形成し、上記自由電子が半導体層114、115の抵抗減少を誘発することができ、これによって金属-半導体間の電位障壁が低くなることができる。
【0050】
したがって、半導体層114、115上に外部電極131、132、特に電気化学的反応によるめっき層を形成する際に、自由電子が電位障壁を容易に越えることができ、これにより、めっき金属が本体110に容易に析出することができる。半導体層114、115は、上記本体110の第1領域にパルスレーザーを照射又は熱処理して形成されることができる。
【0051】
本発明の一実施形態において、上記外部電極131、132はめっき層であってよい。上記めっき層は、電解めっき法又は無電解めっき法を用いて形成することができ、両方のめっき法を全て用いて形成することができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0052】
上記めっき層は、Ni、Sn、Cu、Pd及びこれらの合金のうち一つ以上を含むことができ、複数の層からなることもできる。
【0053】
本発明の一実施形態において、上記外部電極131、132は、上記本体上に順に積層して形成されるニッケル(Ni)めっき層131a、132a、及び錫(Sn)めっき層131b、132bを含むことができる。
【0054】
ニッケルめっき層131a、132aは本体110の外部に形成され、内部電極121、122と外部電極131、132とを電気的に連結させる役割を果たすことができる。また、ニッケルめっき層131a、132a上に形成される錫めっき層131b、132bは、積層セラミック電子部品100を基板等に実装する際に半田の濡れ性を良好にする役割を果たすことができる。
【0055】
ニッケルめっき層131a、132a及び錫めっき層131b、132bの厚さはそれぞれ1~5μmであってよく、外部電極131、132の厚さの減少により積層セラミック電子部品100のサイズが減少できる。
【0056】
本発明の一実施形態において、上記積層セラミック電子部品100の厚さは70μm以下であってよい。ここで、積層セラミック電子部品100の厚さとは、積層セラミック電子部品100の第1方向への長さ又は内部電極121、122の積層方向への長さを意味する。
【0057】
外部電極131、132がめっき層である場合、従来のディッピング工程によって形成された外部電極に比べてより薄い厚さを有することができる。したがって、積層セラミック電子部品100の全体積に対して容量に寄与する本体110の体積が増加し、厚さが70μm以下でありながらも容量の高い積層セラミック電子部品100を実現することができる。ここで、積層セラミック電子部品100の厚さは、多数の領域で測定された値のうち最大値を意味することができるが、これとは異なり、多数の値を平均した値であってもよい。
【0058】
図6は、本発明の一実施形態による積層セラミック電子部品100を上部から見た平面図である。本発明の一実施形態において、上記内部電極121、122の積層方向から見たとき、一辺A1の長さが(250+n×350)μmの-10%と+10%との間に該当する値を有し、他辺A2の長さが(250+m×350)μmの-10%と+10%との間に該当する値を有し、ここでn及びmは自然数であってよい。
【0059】
上記一辺A1の長さとは、積層セラミック電子部品100の第2方向への長さを意味することができ、上記他辺A2の長さとは、積層セラミック電子部品100の第3方向への長さを意味することができる。例えば、n及びmが1の場合、積層セラミック電子部品100は、600μm×600μmの大きさを有する。ただし、誤差範囲を考慮して、一辺A1の長さは(250+n×350)μmの-10%と+10%との間に該当する値を有することができ、他辺A2の長さは(250+m×350)μmの-10%と+10%との間に該当する値を有することができる。
【0060】
ここで、一辺及び他辺A1、A2の長さが350μmの倍数に大きくなるようにしたのは、実装時の半田ボール等のピッチ値を考慮したものである。一方、積層セラミック電子部品100の一辺及び他辺A1、A2の長さは、多数の領域で測定された値のうち最大値を意味することができ、これとは異なり、多数の値を平均した値であってもよい。
【0061】
図7は、本発明の一実施形態による積層セラミック電子部品100の断面図である。図7を参照すると、本発明の一実施形態において、本体110は、複数の内部電極121、122を含む容量形成部と、上記容量形成部の上下部に配置されるカバー部112、113とを含み、上記カバー部に配置される複数のダミー電極123、124を含むことができる。
【0062】
ダミー電極123、124は、導電性金属を含むペーストを印刷して形成されることができる。上記導電性金属は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、錫(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金のうち一つ以上であってよいが、本発明はこれに限定されるものではない。また、工程効率を考慮して、複数の内部電極121、122を形成するペーストと同じペーストを印刷して形成しても構わない。
【0063】
上部カバー部112に配置された第1ダミー電極123は、上記容量形成部に配置された第1内部電極121と同じ方向に積層された電極からなることができ、第1内部電極121が露出する本体110の側面に同様に露出して第1外部電極131と接続することができる。
【0064】
下部カバー部113に配置された第2ダミー電極124は、上記容量形成部に配置された第2内部電極122と同じ方向に積層された電極からなることができ、第2内部電極122が露出する本体110の側面に同様に露出して第2外部電極132と接続することができる。
【0065】
厚さの薄い積層セラミック電子部品100は脆性が大きく、機械的強度が低いため、積層セラミック電子部品100の測定、選別、及びテーピング工程上における破損及び実装過程における破損の可能性を増大させる。
【0066】
これに対し、本発明の一実施形態に基づきカバー部112、113にダミー電極123、124が配置される場合、積層セラミック電子部品100の剛性が増加することができ、本体110の内部の金属比率が高くなって機械的強度が増加することにより、クラックの発生頻度が減少できる。したがって、厚さの薄い積層セラミック電子部品100の低い機械的強度を改善することができる。
【0067】
一方、図7には、上部及び下部カバー部112、113の両方にダミー電極123、124が配置されることを示したが、これに限定されず、上部カバー部112又は下部カバー部113にのみ上記ダミー電極を形成することができる。
【0068】
本発明の一実施形態によると、外部電極131、132は本体110の側面をカバーし、上記本体において内部電極121、122の積層方向を基準にして互いに対向する第1面、第2面S1、S2のうち第1面にのみ延びることができる。
【0069】
これにより、図2を参照すると、外部電極131、132と接する本体110の第3面及び第4面S3、S4、並びに第1面S1の一部を上記第1領域と見なすことができ、本体110の第2面S2、及び外部電極131、132と接しない第1面S1の一部を上記第2領域と見なすことができる。外部電極131、132が本体110の第1面S1にのみ延びることにより、積層セラミック電子部品100の厚さを薄く形成することができる。
【0070】
図8及び図9を参照すると、本発明の一実施形態において、外部電極231、232は本体210の側面をカバーし、本体210の第1面及び第2面S1、S2に延びることができる。これにより、外部電極231、232と接する本体210の第3面及び第4面S3、S4、並びに第1面及び第2面S1、S2の一部を上記第1領域と見なすことができ、本体210と接しない第1面S1及び第2面S2の一部を上記第2領域と見なすことができる。
【0071】
図10は、本発明の一実施形態による積層セラミック電子部品300を概略的に示す斜視図であり、図11は、図10のIII-III'線に沿った断面図である。
【0072】
図10及び図11を参照すると、積層セラミック電子部品300の外部電極331、332は、本体310において内部電極321、322の積層方向に互いに対向する第1面S1及び第2面S2のうち第1面S1にのみ配置され、互いに離隔した第1外部電極331及び第2外部電極332を含み、第1外部電極331は本体310の内部に貫通配置された第1連結電極341により連結され、第2外部電極332は本体310の内部に貫通配置された第2連結電極342により連結されることができる。このとき、外部電極331、332と接する本体310の第1面S1の一部を上記第1領域と見なすことができ、その他の領域を上記第2領域と見なすことができる。
【0073】
第1連結電極341は第1内部電極321と連結され、且つ第2内部電極322と絶縁され、第2連結電極342は第2内部電極322と連結され、且つ第1内部電極321と絶縁されることができる。すなわち、第1外部電極331は第1内部電極321と電気的と連結され、第2外部電極332は第2内部電極322と電気的と連結されることができる。
【0074】
一方、第1内部電極321及び第2内部電極322は、本体310の一面及び上記一面と対向する他面に露出せず、これにより、第1連結電極341及び第2連結電極342を介して本体310の第1面S1に配置された第1外部電極331及び第2外部電極332とそれぞれ連結されることができる。
【0075】
第1連結電極341及び第2連結電極342は、本体310及び第1内部電極321及び第2322にホールを形成し、これに導電性物質を充填して形成することができ、このような導電性物質は導電性ペーストを塗布したり、めっき等の方法を用いたりすることができる。この場合、本体310のホールは、セラミックグリーンシートにレーザー工法又はパンチング等により形成されるか、焼成後の積層体にホール加工して得られることができる。
【0076】
図10及び図11によると、第1連結電極341及び第2連結電極342が本体310の第2面S2を介して露出しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、内部電極321、322が配置されていない上部のカバー部により第1連結電極341及び第2連結電極342の端部がカバーされることもできる。
【0077】
外部電極331、332が本体310の第1面S1にのみ配置されることにより、厚さの薄い積層セラミック電子部品300を容易に実現することができ、第1連結電極341及び第2連結電極342を介して同じ種類の第1内部電極321及び第2内部電極322が互いに電気的に連結されるため、内部電極321、322の連結性をさらに向上させることができる。
【0078】
<実験例>
以下、実施例及び比較例により本発明をより詳細に説明するが、これは発明の具体的な理解を助けるためのものであり、本発明の範囲が実施例によって限定されるものではない。
【0079】
セラミックグリーンシート上に内部電極用導電性ペーストを印刷した後、圧着及び焼成して複数の誘電体層及び内部電極を含む本体を形成し、外部電極が形成される本体の表面にパルスレーザーを照射し、上記本体の表面粗さを測定した。
【0080】
このとき、表面粗さとは、上述した中心線平均粗さRを意味し、上記パルスレーザーが照射された第1領域の表面粗さR及びそれ以外の第2領域の表面粗さRを3D光学表面プロファイラ(Optical Surface Profilers)を用いて測定した。ここで、Rは、各試料の上記第1領域のうち任意の5地点における中心線表面粗さを測定した後の平均値であり、Rは、各試料の上記第2領域のうち任意の5地点における中心線表面粗さを測定した後の平均値である。
【0081】
上記のように試料番号1~12についてR/Rの値を測定した後、電解めっき法により上記パルスレーザーが照射された本体の表面に直接的にめっき層を形成した。このとき、パルスレーザーの照射により内部電極が上記本体の表面に露出するか否か及び本体の表面にめっき層が均一に形成されるか否かを評価した。このとき、内部電極露出及びめっき層形成が良好(○)の場合、普通(△)の場合、及び不良(X)の場合を下記の表1に示した。
【0082】
【表1】
*は比較例
【0083】
試料1*~3*はR/Rが3未満であって、内部電極が本体の表面に露出せず、表面積が低下してアンカリング効果が不十分であり、めっき層が良好に形成されないことが確認できる。また、試料9*~12*はR/Rが15超過であって、めっき層が均一に形成されないことが確認できる。特に、試料11*及び12*の場合、本体に発生したクラック等により積層チップが破壊されるなど不良が発生することが確認できる。試料4~8によると、R/Rが3~15の範囲を満たす場合、内部電極が本体の表面に露出することができ、めっき層が本体の表面に均一に形成されることが確認できる。
【0084】
本発明は、上述した実施形態及び添付の図面によって限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって限定されるものとする。したがって、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から逸脱しない範囲内で、当該技術分野における通常の知識を有する者により様々な形態の置換、変形及び変更が可能であり、これも本発明の範囲に属すると言える。
【符号の説明】
【0085】
11:パルスレーザー
12:反射ミラー
13:スキャナー
14:レンズ
15:固定部材
100、200、300:積層セラミック電子部品
110、210、310:本体
111、211、311:誘電体層
112、212:上部カバー
113、213:下部カバー
114:第1半導体層
115:第2半導体層
121、221、321:第1内部電極
122、222、322:第2内部電極
123:第1ダミー電極
124:第2ダミー電極
131、231、331:第1外部電極
132、232、332:第2外部電極
131a、231a、331a、132a、232a、332a:ニッケルめっき層
131b、231b、331b、132b、232b、332b:錫めっき層
341:第1連結電極
342:第2連結電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11