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特開2023-75931害虫用食餌剤、害虫用毒餌剤及び害虫用食餌剤の防腐効果の増強方法
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  • 特開-害虫用食餌剤、害虫用毒餌剤及び害虫用食餌剤の防腐効果の増強方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023075931
(43)【公開日】2023-05-31
(54)【発明の名称】害虫用食餌剤、害虫用毒餌剤及び害虫用食餌剤の防腐効果の増強方法
(51)【国際特許分類】
   A01N 25/00 20060101AFI20230524BHJP
   A01N 43/16 20060101ALI20230524BHJP
   A01N 65/20 20090101ALI20230524BHJP
   A01N 43/40 20060101ALI20230524BHJP
   A01N 47/44 20060101ALI20230524BHJP
   A01N 59/14 20060101ALI20230524BHJP
   A01N 33/12 20060101ALI20230524BHJP
   A01N 37/40 20060101ALI20230524BHJP
   A01N 51/00 20060101ALI20230524BHJP
   A01N 47/22 20060101ALI20230524BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20230524BHJP
   A01P 19/00 20060101ALI20230524BHJP
   A01P 7/04 20060101ALI20230524BHJP
【FI】
A01N25/00 102
A01N43/16 A
A01N65/20
A01N43/40 101K
A01N47/44
A01N59/14
A01N33/12 101
A01N37/40
A01N51/00
A01N47/22 G
A01P3/00
A01P19/00
A01P7/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022183619
(22)【出願日】2022-11-16
(31)【優先権主張番号】P 2021188826
(32)【優先日】2021-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】000100539
【氏名又は名称】アース製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】井口 彰
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 優八
【テーマコード(参考)】
4H011
【Fターム(参考)】
4H011AA02
4H011AC01
4H011AC07
4H011BA06
4H011BA08
4H011BB04
4H011BB06
4H011BB08
4H011BB09
4H011BB11
4H011BB13
4H011BB18
4H011BB22
4H011DA02
4H011DA03
4H011DG13
(57)【要約】
【課題】潮解してもカビ等の微生物の発生を充分に抑制でき、高い喫食性を有する害虫用食餌剤及び害虫用毒餌剤、並びに害虫用食餌剤の防腐効果の増強方法を提供すること。
【解決手段】(A)害虫誘引成分、(B)20℃の水に対する溶解度が350g/L以上
である防腐成分、(C)20℃の水に対する溶解度が150g/L未満である防腐成分を
含有する、害虫用食餌剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)~(C)を含有する、害虫用食餌剤。
(A)害虫誘引成分
(B)20℃の水に対する溶解度が350g/L以上である防腐成分
(C)20℃の水に対する溶解度が150g/L未満である防腐成分
【請求項2】
請求項1に記載の害虫用食餌剤、及び(D)害虫防除成分を含有する、害虫用毒餌剤。
【請求項3】
害虫用食餌剤に、下記成分(B)及び下記成分(C)を含有させる、害虫用食餌剤の防腐効果の増強方法。
(B)20℃の水に対する溶解度が350g/L以上である防腐成分
(C)20℃の水に対する溶解度が150g/L未満である防腐成分
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、害虫用食餌剤、害虫用毒餌剤及び害虫用食餌剤の防腐効果の増強方法に関する。
【背景技術】
【0002】
害虫は、時には食物を求めて家屋内に侵入したり、家具や靴の中に潜んだりし、その際に人を咬んでアレルギー反応を起こす等の被害をもたらすことがあり、防除の対象とされている。
【0003】
従来、害虫の防除のために、害虫誘引成分が含まれる食餌剤を含有する毒餌剤を害虫の発生場所に設置し、害虫に喫食させて防除する方法がある。
【0004】
また、害虫を防除するに際して害虫誘引成分が含まれる食餌剤を含有する毒餌剤を用いる場合、食餌剤又は毒餌剤の腐敗を抑制して効果をより長く持続させるために、防腐成分が用いられることがある。例えば、特許文献1には、匍匐害虫用誘引成分、チアベンダゾール、金属ピリチオンおよび害虫防除剤を含有することを特徴とする匍匐害虫用毒餌剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-132598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、食餌剤又は毒餌剤が潮解すると、喫食性は上がるものの、防腐成分の濃度が低くなりカビ等の微生物が発生しやすくなるという課題があった。一方、カビ等の微生物の発生を防ぐために防腐成分の含有量を増やした場合、害虫の喫食性が低下したり、製剤安定性に悪影響を及ぼしたりするといった課題があった。
【0007】
そこで本発明の課題は、潮解してもカビ等の微生物の発生を充分に抑制でき、高い喫食性を有する害虫用食餌剤及び害虫用毒餌剤、並びに害虫用食餌剤の防腐効果の増強方法を提供することにある。
なお、「潮解」とは、物質が大気中の水分を取り込んで水溶液となる現象のことである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、水に対する溶解度が異なる2つの防腐成分を用いることにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成することができた。
【0009】
すなわち本発明は、以下の(1)~(3)に関するものである。
(1)下記成分(A)~(C)を含有する、害虫用食餌剤。
(A)害虫誘引成分
(B)20℃の水に対する溶解度が350g/L以上である防腐成分
(C)20℃の水に対する溶解度が150g/L未満である防腐成分
(2)(1)に記載の害虫用食餌剤、及び(D)害虫防除成分を含有する、害虫用毒餌剤。
(3)害虫用食餌剤に、下記成分(B)及び下記成分(C)を含有させる、害虫用食餌剤の防腐効果の増強方法。
(B)20℃の水に対する溶解度が350g/L以上である防腐成分
(C)20℃の水に対する溶解度が150g/L未満である防腐成分
【発明の効果】
【0010】
本発明の害虫用食餌剤及び害虫用毒餌剤は、潮解してもカビ等の微生物の発生を充分に抑制でき、高い喫食性を有する。本発明の害虫用食餌剤の防腐効果の増強方法においては、害虫用食餌剤が潮解してもカビ等の微生物の発生を充分に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例で行った防腐試験における、「○:カビの発生が確認できなかった。」の状態の一例を示す図である。
図2】実施例で行った防腐試験における、「△:カビが容器内にのみ発生した。」の状態の一例を示す図である。
図3】実施例で行った防腐試験における、「×:カビが容器内外に発生した。」の状態の一例を示す図である。
図4】実施例で行った防腐試験、喫食性試験、及び匍匐害虫に対する防除効力試験で用いた容器を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳述するが、これらは望ましい実施態様の一例を示すものであり、本発明はこれらの内容に特定されるものではない。
【0013】
[害虫用食餌剤]
本発明の害虫用食餌剤は、下記成分(A)~(C)を含有する。
(A)害虫誘引成分
(B)20℃の水に対する溶解度が350g/L以上である防腐成分
(C)20℃の水に対する溶解度が150g/L未満である防腐成分
【0014】
害虫誘引成分としては、例えば、上白糖、グルコース、果糖、ガラクトース、麦芽糖、ショ糖、デキストリン、グラニュー糖、黒糖等の糖類、アラニン、グリシン、バリン、アスパラギン酸、グルタミン酸等のアミノ酸、さなぎ粉、コーンスターチ、ハチノコ、タマゴ、オキアミ、エビ、チーズ、畜肉、魚肉、澱粉、小麦粉、フスマ、豆、米ぬか、種子、綿実、やし油、オリーブ油、肉油、魚油、ゴマ油、水飴、ピーナッツペースト等が挙げられる。これらの害虫誘引成分は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0015】
本発明の害虫用食餌剤における害虫誘引成分の含有量は、特に限定されないが、具体的には、60~99.9質量%が好ましく、60~99質量%がより好ましい。
【0016】
また、本発明の害虫用食餌剤は、20℃の水に対する溶解度が350g/L以上である防腐成分(以下、「成分(B)」と称することがある。)を含有する。成分(B)は20℃の水に対する溶解度が350g/L以上であるので、害虫用食餌剤が潮解したとしても潮解部分に成分(B)が残ることになる。その結果、成分(B)が含まれることによって、本発明の害虫用食餌剤は、防腐成分の濃度が低下しうる潮解部分においても、カビ等の微生物の発生を充分に抑制できると考えられる。
【0017】
成分(B)の20℃の水に対する溶解度は、潮解した部分の水分含量が非常に高く、防腐性を発揮させるためには水への溶解度が高い必要があることから、400g/L以上が好ましく、450g/L以上がより好ましく、500g/L以上がさらに好ましい。
【0018】
成分(B)としては、例えば、ポリヘキサメチレンビグアナイド塩酸塩、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、安息香酸ナトリウム等が挙げられる。これらの中でも、カビ等の微生物の発生抑制の観点から、ポリヘキサメチレンビグアナイド塩酸塩、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムが好ましい。なお、成分(B)としては、上記具体的成分の溶液や水和物を用いることもできる。
【0019】
本発明の害虫用食餌剤における成分(B)の含有量は、0.001~1質量%が好ましく、0.01~0.1質量%がより好ましい。成分(B)の含有量が1質量%より大きければ害虫の喫食性を低下させることがある。成分(B)の含有量が0.001質量%未満であれば十分な防腐効果が得られないことがある。
【0020】
また、本発明の害虫用食餌剤は、20℃の水に対する溶解度が150g/L未満である防腐成分(以下、「成分(C)」と称することがある。)を含有する。成分(C)は20℃の水に対する溶解度が150g/L未満であるので、害虫用食餌剤の一部が潮解したとしても、害虫用食餌剤表面の固形部分に成分(C)が残存する。その結果、潮解によってカビ等の微生物が発生しやすい状況となった場合に、害虫用食餌剤表面の固形部分におけるカビ等の微生物の発生を充分に抑制できると考えられる。
【0021】
成分(C)の20℃の水に対する溶解度は、油分を含む害虫用食餌剤表面の固形部分に残存し、潮解部分への流出を抑制する観点から、140g/L以下が好ましく、130g/L以下がより好ましく、120g/L以下がさらに好ましい。
【0022】
成分(C)としては、例えば、塩化セチルピリジニウム、ホウ酸、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、クロルヘキシジン、チアベンダゾール等が挙げられる。これらの中でも、カビの発生抑制の観点から、塩化セチルピリジニウムが好ましい。なお、成分(B)としては、上記具体的成分の溶液や水和物を用いることもできる。
【0023】
本発明の害虫用食餌剤における成分(C)の含有量は、0.01~1質量%が好ましく、0.05~0.5質量%がより好ましい。成分(C)の含有量が1質量%以上より大きければ害虫の喫食性を低下させることがある。成分(C)の含有量が0.01質量%未満であれば十分な防腐効果が得られないことがある。
【0024】
本発明の害虫用食餌剤は、成分(B)と成分(C)を併用することにより、水分の多い潮解部分と油分の多い固形部分にそれぞれ分配されるため、潮解時にも優れた防腐性を得ることができると考えられる。
【0025】
成分(B)の20℃の水に対する溶解度と成分(C)の20℃の水に対する溶解度の差(以下、「溶解度差」と称することがある。)は、200~4000g/Lが好ましく、200~500g/Lがより好ましい。
【0026】
なお、溶解度差は、下記式によって求められる。
溶解度差=(成分(B)の20℃の水に対する溶解度)-(成分(C)の20℃の水に対する溶解度)
【0027】
成分(B)の20℃の水に対する溶解度と成分(C)の20℃の水に対する溶解度の比(以下、「溶解度比」と称することがある。)は、0.001~0.4が好ましく、0.01~0.3がより好ましい。
【0028】
なお、溶解度比は、下記式によって求められる。
溶解度比=(成分(C)の20℃の水に対する溶解度)/(成分(B)の20℃の水に対する溶解度)
【0029】
本発明において、成分(B)及び成分(C)の20℃の水に対する溶解度は、JIS K 8001:2017の通則に準ずる方法に従って測定することによって求めることができる。
【0030】
成分(B)の含有量と成分(C)の含有量の比(以下、「含有量比」と称することがある。)は、0.01~100が好ましく、0.1~10がより好ましい。
【0031】
なお、含有量比は、下記式によって求められる。
含有量比=(成分(C)の含有量)/(成分(B)の含有量)
【0032】
本発明の害虫用食餌剤は、上述の成分以外に、必要に応じて、その他の公知成分を含有することができる。その他の公知成分としては、例えば、賦形剤、酸化防止剤、誤食防止剤、溶剤等が挙げられる。
【0033】
賦形剤としては、例えば、寒天、ゼラチン、カラギーナン、ローカストビーンガム、ホワイトカーボン、珪藻土、結晶セルロース、クレー、カオリン、タルク、ベントナイト、シリカ、カルボキシメチルセルロース、パラフィン、ポリエチレングリコール、スチレン樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。
【0034】
酸化防止剤としては、例えば、エリソルビン酸、エリソルビン酸ナトリウム、ジブチルヒドロキシトルエン、dl-α-トコフェロール、ブチルヒドロキシアニソール、没食子酸プロピル等が挙げられる。
【0035】
誤食防止剤としては、例えば、安息香酸デナトニウム、トウガラシ末等が挙げられる。
【0036】
溶剤としては、例えば、水、イソプロピルアルコール、エタノール、グリセリン等のアルコール類、プロピレングリコール、エチレングリコール等のグリコール類、パラフィン類等が挙げられる。
【0037】
この他にも、必要に応じて、香料、着色剤、pH調整剤等を用いることができる。
【0038】
本発明の害虫用食餌剤の製造方法としては、公知の手法が採用され、例えば、原料成分を混合した後、押出、打錠、造粒によって成形する方法等が挙げられる。
【0039】
本発明の害虫用食餌剤の形態としては、固形状であれば特に限定されず、適宜設定すればよい。例えば、顆粒状、粉状、円柱状、円盤状、ブロック状、塊状、ペースト状等が挙げられる。
【0040】
また、本発明の害虫用食餌剤の対象害虫としては特に限定されないが、例えば、ムカデ、蚊、ブユ、アブ、ノミ、イエダニ、マダニ、ハエ、トコジラミ、ヤマビル、ゴキブリ、ヤスデ、ゲジゲジ、ダンゴムシ、ワラジムシ、アリ、クモ、ハチ、蛾、ユスリカ、ヨコバイ、カメムシ、ケムシ、シロアリ、ショウジョウバエ、チョウバエ等が挙げられる。本発明の害虫用食餌剤は、これらの害虫のなかでも、ムカデ、ヤスデ、ゲジゲジ、ダンゴムシ、ワラジムシ、アリ等の匍匐害虫に好ましく用いられる。
【0041】
[害虫用毒餌剤]
本発明の害虫用毒餌剤は、本発明の害虫用食餌剤、及び(D)害虫防除成分を含有する。
【0042】
害虫防除成分としては、例えば、アレスリン、レスメトリン、フラメトリン、フタルスリン、ペルメトリン、フェノトリン、サイパーメスリン、シフェノトリン、プラレトリン、エンペントリン、トランスフルトリン、メトフルトリン、プロフルトリン等のピレスロイド系化合物、ジノテフラン、イミダクロプリド等のネオニコチノイド系化合物、ジクロルボス、フェニトロチオン等の有機リン系化合物、プロポクスル、フェノブカルブ、カルバリル等のカーバメイト系化合物、フィプロニル等のフェニルピラゾール系化合物、ヒドラメチルノン等のフッ素系化合物、その他、アミドフルメト、チオシアノ酢酸イソボルニル、イソボルニルチオシアノエチルエーテル、ブロフラニリド等が挙げられる。
これらの害虫防除成分は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
本発明の害虫用毒餌剤における害虫防除成分の含有量は、力価を考慮して適宜設定することができるが、具体的には、0.01~10質量%が好ましく、0.1~5質量%がより好ましい。
【0044】
本発明の害虫用毒餌剤の製造方法としては、公知の手法が採用され、例えば、原料成分を混合した後、押出、打錠、造粒によって成形する方法等が挙げられる。
【0045】
本発明の害虫用毒餌剤の形態としては、固形状であれば特に限定されず、適宜設定すればよい。例えば、顆粒状、粉状、円柱状、円盤状、ブロック状、塊状、ペースト状等が挙げられる。
【0046】
[害虫用食餌剤の防腐効果の増強方法]
本発明の害虫用食餌剤の防腐効果の増強方法においては、害虫用食餌剤に、成分(B)及び成分(C)を含有させる。
【0047】
害虫用食餌剤、成分(B)及び成分(C)については、上述のとおりである。
【0048】
害虫用食餌剤に、成分(B)及び成分(C)を含有させる方法としては、公知の方法を用いればよく特に限定されないが、例えば、害虫用食餌剤、成分(B)及び成分(C)を混合した後、押出、打錠、造粒によって成形する方法等が挙げられる。
【0049】
本発明の害虫用食餌剤の防腐効果の増強方法では、成分(B)と成分(C)を併用することにより、水分の多い潮解部分と油分の多い固形部分にそれぞれ分配される。そのため、成分(B)単体での防腐効果及び成分(C)単体での防腐効果からは想像し得ない顕著な防腐効果が発揮される。
【実施例0050】
以下、本発明を以下の試験例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。
【0051】
(食餌剤の作製)
表1、2に記載の処方に従い、各成分を十分に攪拌及び混合し、各食餌剤(実施例1~4、比較例1~7)又は毒餌剤(実施例5)を作製した。実施例5の毒餌剤は、食餌剤に加え、害虫防除成分を含有する。
【0052】
ポリヘキサメチレンビグアナイド塩酸塩の20℃の水に対する溶解度は410g/Lであった。
塩化ベンゼトニウムの20℃の水に対する溶解度は543g/Lであった。
塩化セチルピリジニウムの20℃の水に対する溶解度は111g/Lであった。
ホウ酸の20℃の水に対する溶解度は39.9g/Lであった。
メチルパラベンの20℃の水に対する溶解度は2.5g/Lであった。
【0053】
(防腐試験)
胞子液の調製
1.予めPDA斜面培地にて前培養した供試菌株にTween80(ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル)を0.05%になるよう添加した生理食塩水を加え、白金耳で表面をかきとった。
2.滅菌ガーゼでろ過し、10-6~10-7cfu/mLの胞子液とした。
なお、供試菌は、クロコウジカビ(Aspergillus brasiliensis;NBRC9455)を用いた。
【0054】
防腐試験
1.実施例1~4及び比較例1~7の食餌剤を検体とし、「ムカデコロリ 駆除エサ剤(アース製薬社製)」の容器に各検体1gを充填した。
2.Tween80を0.05%になるよう添加した生理食塩水を用いて10倍希釈した胞子液10μLを検体に滴下し、25℃、相対湿度100%条件下に設置した。
3.11日後、検体の外観を目視で確認した。
【0055】
なお、各食餌剤は、容器に設置後24時間で潮解したことが確認された。
【0056】
下記基準に基づき評価した。結果を表1に示す。
○:カビの発生が確認できなかった。
△:カビが容器内にのみ発生した。
×:カビが容器内外に発生した。
【0057】
また、上記「○」の状態の一例を図1に示す。上記「△」の状態の一例を図2に示す。上記「×」の状態の一例を図3に示す。防腐試験で用いた「ムカデコロリ 駆除エサ剤(アース製薬社製)」の容器を図4に示す。
【0058】
(喫食性試験)
1.予め供試虫を25℃60%RHで1日間絶食させ、飢餓状態とした。
2.縦30cm×横40cm×高さ50cmのプラスチック製バット内に供試虫を静置し、1時間馴化させた。
3.実施例1~4及び比較例1~7の食餌剤を検体とし、「ムカデコロリ 駆除エサ剤(アース製薬社製)」の容器に各検体1gを充填し、予め25℃100%RH下で潮解させたのち、バット内に設置した。
なお、供試虫は、トビズムカデ成虫(n=3)を用いた。
【0059】
トビズムカデ成虫の喫食性を下記基準に基づき評価した。平均喫食時間とともに、結果を表1に示す。
○:3頭中3頭が10分以上喫食した。
×:3頭中少なくとも1頭が、喫食しなかった又は喫食時間が10分未満であった。
【0060】
なお、上記防腐試験後の各食餌剤についても、上記1.~3.の手順と同様にして喫食性試験を行った。その結果、クロゴキブリは、比較例1~3及び比較例5~7の食餌剤は喫食しなかったのに対し、実施例1~4の食餌剤は喫食した。
【0061】
(匍匐害虫に対する防除効力試験)
1.予め供試虫を25℃60%RHで1日間絶食させ、飢餓状態とした。
2.縦30cm×横40cm×高さ50cmのプラスチック製バット内に供試虫を静置し、1時間馴化させた。
3.実施例5の毒餌剤を検体とし、「ムカデコロリ 駆除エサ剤(アース製薬社製)」の容器に検体1gを充填し、予め25℃100%RH下で潮解させたのち、バット内に設置した。
なお、供試虫は、クロヤマアリ、ダンゴムシ、クロゴキブリ、トビズムカデ成虫(いずれもn=3)を用いた。
4.検体設置後の喫食行動の有無を目視で確認した。また、検体設置後24時間が経過した時点での致死頭数を確認した。
喫食行動と致死率の評価結果を表2に示す。
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
表1の結果から、実施例1~4の食餌剤は、潮解してもカビの発生を充分に抑制でき、高い喫食性を有することが分かった。
表2の結果から、実施例5の毒餌剤は、供試虫の種類によらず、全頭が喫食行動を示し、また、24時間後には致死しており、致死率が100%であることが確認できた。
図1
図2
図3
図4