(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023075940
(43)【公開日】2023-05-31
(54)【発明の名称】ボイド型枠、ボイド型枠付パネル、及びコンクリートスラブ
(51)【国際特許分類】
E04B 5/43 20060101AFI20230524BHJP
E04B 5/38 20060101ALI20230524BHJP
【FI】
E04B5/43 A
E04B5/38 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022184666
(22)【出願日】2022-11-18
(31)【優先権主張番号】P 2021188712
(32)【優先日】2021-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (ウェブサイト1) ウェブサイトの掲載日 令和4年1月28日、ウェブサイトのアドレスhttps://www.fujimori.co.jp/news/53にて公開 (ウェブサイト2) ウェブサイトの掲載日 令和4年1月28日、ウェブサイトのアドレスhttps://www.kumagaigumi.co.jp/news/2022/pr_20220128_1.htmlにて公開 (ウェブサイト3) ウェブサイトの掲載日 令和4年7月15日、ウェブサイトのアドレスhttps://www.youtube.com/watch?v=Sg7zMkxBgX8にて公開 (ウェブサイト4) ウェブサイトの掲載日 令和4年7月15日、ウェブサイトのアドレスhttps://www.youtube.com/watch?v=-XLBL5GIFrYにて公開 (ウェブサイト5) ウェブサイトの掲載日 令和4年7月15日、ウェブサイトのアドレスhttps://www.kumagaigumi.co.jp/company/item/pr_kumagainyu-su2022_2-1_.pdfにて公開 (刊行物1) 建設通信新聞 令和4年1月28日付,第3面にて公開 (刊行物2) 建設通信新聞Digital 令和4年1月28日付,第3面にて公開 (刊行物3) 日刊建設工業新聞 令和4年1月28日付,第3面にて公開 (刊行物4) 日刊建設工業新聞電子版 令和4年1月28日付,第03面No.8にて公開 (刊行物5) 令和3年12月3日、パンフレットにて公開 (刊行物6) 令和4年9月13日、パンフレットにて公開
(71)【出願人】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(71)【出願人】
【識別番号】591029921
【氏名又は名称】フジモリ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】黒木 拓
(72)【発明者】
【氏名】大脇 雅直
(72)【発明者】
【氏名】財満 健史
(72)【発明者】
【氏名】坂上 教夫
(72)【発明者】
【氏名】中村 徹臣
(72)【発明者】
【氏名】谷口 央
(72)【発明者】
【氏名】明石 麗
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 誉
(57)【要約】
【課題】ボイド型枠の表面で生じていた共振現象を確実に抑制することを目的とする。
【解決手段】波型部分11と矩形部分12とを備え、コンクリートスラブ内に埋設される、上面13側に凹凸を有するボイド型枠10において、ボイド型枠10の厚さ方向である上下方向(z軸方向)に垂直な方向の一つを幅方向(x軸方向)、厚さ方向と幅方向の両方に垂直な方向を長さ方向(y軸方向)としたとき、前記凹凸を、ボイド型枠の幅方向に延長する幅方向波形z(x)と長さ方向に延長する長さ方向波形(y)とを重ねた形状とした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートスラブ内に埋設され、上面側に凹凸を有するボイド型枠であって、
前記ボイド型枠の厚さ方向である上下方向に垂直な方向の一つを幅方向、
前記厚さ方向と前記幅方向の両方に垂直な方向を長さ方向としたとき、
前記凹凸が、前記ボイド型枠の幅方向に延長する幅方向波形と長さ方向に延長する長さ方向波形とを重ねた形状であることを特徴とするボイド型枠。
【請求項2】
前記幅方向波形及び長さ方向波形は、波形の一方向に向かうにしたがって厚さが厚くなる一方側凸部と、
前記一方側凸部と所定の間隔を隔てて設けられて前記波形の前記一方向とは反対方向に向かうにしたがって厚さが厚くなる、前記一方側凸部と同一形状の他方側凸部と、
前記一方側凸部と他方側凸部との間に設けられ、前記一方側凸部から前記他方側凸部に向かうにしたがって厚さが減少した後に増加する凹部と、
を備え、
前記一方側凸部と前記他方側凸部のいずれかを山部とし、前記凹部を谷部とする周期関数であることを特徴とする請求項1に記載のボイド型枠。
【請求項3】
前記ボイド型枠の長さ方向に垂直な断面を基準面としたとき、上記基準面から長さ方向に離れた長さ方向に垂直な断面における前記幅方向波形の形状が、
前記基準面における幅方向波形を、前記幅方向波形の山部と谷部との中間点を通り、前記ボイド型枠の幅方向に垂直な断面における前記長さ方向波形に沿って、前記長さ方向に所定距離だけ離れた長さ方向にある垂直な断面まで移動させた形状であることを特徴とする請求項2に記載のボイド型枠。
【請求項4】
前記長さ方向に垂直な断面の波形の前記谷部に長さ方向に延長する凹凸が設けられていることを特徴とする請求項3に記載のボイド型枠。
【請求項5】
前記ボイド型枠の、前記山部の上端部と前記谷部の上端部との中間点を通り、前記上下方向に垂直な面である中間面よりも下側の部分を、前記中間面に対して上下反転させた形状としたことを特徴とする請求項3に記載のボイド型枠。
【請求項6】
前記幅方向波形の波長と前記長さ方向波形の波長とを異なる長さとしたことを特徴とする請求項3に記載のボイド型枠。
【請求項7】
前記幅方向波形を幅方向に延長する複数の波形の和とするとともに、前記長さ方向波形を長さ方向に延長する複数の波形の和としたことを特徴とする請求項3に記載のボイド型枠。
【請求項8】
前記ボイド型枠が発泡樹脂から成ることを特徴とする請求項3に記載のボイド型枠。
【請求項9】
前記ボイド型枠の幅方向波形の波長が前記ボイド型枠の幅方向の長さ寸法に等しく、前記ボイド型枠の長さ方向波形の波長が前記ボイド型枠の長さ方向の長さ寸法に等しいことを特徴とする請求項3に記載のボイド型枠。
【請求項10】
前記長さ方向に垂直な断面の波形の前記谷部に長さ方向に延長する凹凸が設けられていることを特徴とする請求項9に記載のボイド型枠。
【請求項11】
前記ボイド型枠の、前記凸部の上端部と前記凹部の上端部との中間点を通り前記上下方向に垂直な面である中間面よりも下側の部分を、前記中間面に対して上下反転させた形状としたことを特徴とする請求項9に記載のボイド型枠。
【請求項12】
前記ボイド型枠が発泡樹脂から成ることを特徴とする請求項9に記載のボイド型枠。
【請求項13】
パネルと、前記パネル上に互いに間隔を置いて配置された複数のボイド型枠とを備えた型枠付パネルであって、
前記ボイド型枠が請求項1~請求項12のいずれかに記載のボイド型枠であることを特徴とするボイド型枠付パネル。
【請求項14】
コンクリート内にボイド型枠が埋設されたコンクリートスラブであって、
前記ボイド型枠が請求項1~請求項12のいずれかに記載のボイド型枠であることを特徴とするコンクリートスラブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、床スラブのコンクリート内に埋設されるボイド型枠と、コンクリートスラブの構築に用いられるボイド型枠付パネルと、ボイド型枠が埋設されたコンクリートスラブとに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、集合住宅の床スラブのコンクリート内に、合成樹脂などから成るブロック状のボイド型枠を埋設することで、床スラブの軽量化を図る方法が知られている。
ボイド型枠としては、一般に、直方体状のブロックが使用されているが、ブロックの上面が平面であるため、床からの衝撃音がブロック上面で反射される際に共振するため、遮音性能に問題があった。
そこで、ボイド型枠の短編方向の断面形状を正弦曲線とすることで、従来の断面形状が矩形のボイド型枠よりも共振の影響を低減させて遮音性能を向上させる方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1のボイド型枠は、反射の広がりを2次元でシミュレーションしているため、3次元でシミュレーションした場合に比較して設計の自由度が少なかった。その結果、正弦曲線の振幅を必要以上に大きくするなど、余裕をもった設計となっていたおそれがあった。
また、ボイド型枠上面を波形としたことで、コンクリート量が増加し、その結果、スラブの厚さを薄くすることが困難である、といった問題点があった。
【0005】
本発明は、上記点を課題としてなされた発明であって、ボイド型枠の表面で生じていた共振現象を確実に抑制することのできるボイド型枠の構成、このボイド型枠をプレキャストコンクリートに搭載したボイド型枠付パネル、及び、遮音性能に優れたコンクリートスラブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するためのボイド型枠として、コンクリートスラブ内に埋設され、上面側に凹凸を有するボイド型枠であって、前記ボイド型枠の厚さ方向である上下方向に垂直な方向の一つを幅方向、前記厚さ方向と前記幅方向の両方に垂直な方向を長さ方向としたとき、前記凹凸を、幅方向に延長する幅方向波形と長さ方向に延長する長さ方向波形とを重ねた形状である態様とした。
本態様によれば、ボイド型枠の上面側に、幅方向に沿った凹凸が形成されているだけでなく、長さ方向に沿った凹凸を形成するようにしたので、幅方向波形の波長や振幅と長さ方向波形の波長や振幅とを異なる値にするなど、設計の自由度を増やすことができる。したがって、ボイド型枠の表面で生じていた共振現象を抑制するための最適設計を行うことが可能となる。また、本態様のボイド型枠をスラブのコンクリート内に埋設すれば、コンクリートスラブの遮音性能を確実にかつ効率よく向上させることができる。
前記幅方向波形及び長さ方向波形としては、波形の一方向に向かうにしたがって厚さが厚くなる一方側凸部と、前記一方側凸部と所定の間隔を隔てて設けられて前記波形の前記一方向とは反対方向に向かうにしたがって厚さが厚くなる、前記一方側凸部と同一形状の他方側凸部と、前記一方側凸部と他方側凸部との間に設けられ、前記一方側凸部から前記他方側凸部に向かうにしたがって厚さが減少した後に増加する凹部と、を備え、前記一方側凸部と前記他方側凸部のいずれかを山部とし、前記凹部を谷部とする周期関数が好適に用いられる。
また、前記ボイド型枠の長さ方向に垂直な断面を基準面としたとき、上記基準面から長さ方向に離れた長さ方向に垂直な断面における前記幅方向波形の形状を、前記基準面における幅方向波形を、前記幅方向波形の山部と谷部との中間点を通り、前記ボイド型枠の幅方向に垂直な断面における前記長さ方向波形に沿って、前記長さ方向に所定距離だけ離れた長さ方向にある垂直な断面まで移動させた形状としたので、ボイド型枠の表面で生じていた共振現象を確実に抑制できる。したがって、本態様のボイド型枠をコンクリートスラブに適用すれば、スラブ厚を変えることなく、共振現象の発生を抑制できる。
また、前記長さ方向に垂直な断面の波形の前記谷部に長さ方向に延長する凹凸を設けてもよい。すなわち、谷部のみを幅方向に延長する幅方向波形と長さ方向に延長する長さ方向波形とを重ねた形状とし、長さ方向に垂直な断面の波形の山部の高さを長さ方向に一定な形状としても、共振現象の発生の抑制は可能である。
また、本発明は、前記ボイド型枠の、前記山部の上端部と前記谷部の上端部との中間点を通り前記上下方向に垂直な面である中間面よりも下側の部分を、前記中間面に対して上下反転させた形状としたものである。これにより共振現象を抑制する効果に加えてボイド型枠の体積を効果的に増加させることができるので、コンクリートスラブの重量を軽量化することができる。また、ボイド型枠の最も厚い部分と最も薄い部分との差が小さくなるので、スラブ厚を薄くすることが可能となる。
また、前記幅方向波形の波長と前記長さ方向波形の波長とを異なる長さとすることで、縦方向の凹凸の間隔と横方向の凹凸の間隔が異なるようにした。これにより、凹凸の縦横の均一性が低下するので、共振現象を効果的に抑制することができる。
また、前記幅方向波形を幅方向に延長する複数の波形の和とするとともに、前記長さ方向波形を長さ方向に延長する複数の波形の和とすることで、凹凸の数を増やすようにしたので、共振現象の抑制効果が更に向上した。
また、前記ボイド型枠の幅方向波形の波長が前記ボイド型枠の幅方向の長さ寸法に等しく、前記ボイド型枠の長さ方向波形の波長が前記ボイド型枠の長さ方向の長さ寸法に等しい形態としてもよい。このような形態は、長さ寸法、及び、幅寸法の小さなボイド型枠に好適に用いられる。
また、ボイド型枠を発泡樹脂から構成したので、ボイド型枠を軽量化できる。
また、請求項1~請求項12のいずれかに記載のボイド型枠を複数個、パネル上に互いに間隔を置いて搭載したボイド型枠付パネルを用いてコンクリートスラブを構築すれば、遮音性能に優れたコンクリートスラブを効率よく構築することができる。
コンクリートスラブのコンクリート内に埋設するボイド型枠を、請求項1~請求項12のいずれかに記載のボイド型枠としたので、衝撃音に対する遮音性能を向上させることができるとともに、コンクリートスラブの厚さを薄くすることができる。
なお、前記発明の概要は、本発明の必要な全ての特徴を列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となり得る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本実施の形態1に係るボイド型枠を示す図である。
【
図2】幅方向波形と長さ方向波形との重ね合わせを説明するためのを示す図である。
【
図3】ボイド型枠が埋設されたコンクリートスラブと型枠付パネルを示す図である。
【
図4】本実施の形態2に係るボイド型枠を示す図である。
【
図5】本実施の形態2に係るボイド型枠の反転前の図である。
【
図6】本実施の形態3に係るボイド型枠を示す図である。
【
図7】本実施の形態4に係るボイド型枠を示す図である。
【
図8】本実施の形態5に係るボイド型枠を示す図である。
【
図9】本実施の形態6に係るボイド型枠を示す図である。
【
図10】本実施の形態7に係るボイド型枠を示す図である。
【
図11】本実施の形態8に係るボイド型枠を示す図である。
【
図12】本実施の形態9に係るボイド型枠を示す図である。
【
図13】本実施の形態10に係るボイド型枠を示す図である。
【
図14】本実施の形態11に係るボイド型枠を示す図である。
【
図15】本発明によるボイド型枠の他の例を示す図である。
【
図16】本発明によるボイド型枠の他の例を示す図である。
【
図17】本発明によるボイド型枠の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
実施の形態1.
[ボイド型枠の概要]
図1は、本実施の形態1に係るボイド型枠10を示す図で、(a)図は斜視図、(b)図は側面図、(c)図は正面図である。また、(d)図は(a)図のA-A断面図、(e)図はA’-A’断面図、(f)図はB-B断面図、(g)図はB’-B’断面図、である。
ボイド型枠10は、床スラブなどのコンクリートスラブ内に埋設されるブロック状の部材で、ポリスチレンやポリエチレンなどの発泡樹脂から構成され、床スラブなどのコンクリートスラブ内に埋設される。
ボイド型枠10は波型部分11と矩形部分12とを備える。
以下、ボイド型枠10の厚さ方向を上下方向(z軸方向)、上下方向に垂直な方向の一つを幅方向(x軸方向)、上下方向と幅方向の両方に垂直な方向を長さ方向(y軸方向)とし、波型部分11の中心(厳密には、波型部分11を直方体と見做したときの中心)を座標の原点Oとする。
また、+x方向を右側、-x方向を左側、+y方向を後側、-y方向を前側、+z方向を上側、-z方向を下側とし、波型部分11の上側を上面13、矩形部分12の下側を下面14、幅方向に垂直な側面のうち右側の側面を長辺側側面15、長さ方向に垂直な側面をのうち前側の側面を短辺側側面16とする。
波型部分11は上面に凹凸が形成されたブロックである。以下、波型部分11の凸部をp、凸部pの最も高い箇所をp
M、凹部をq、凹部qの最も低い箇所をq
mとし、下面14から測ったp
Mの高さとq
mの高さとの差を波型部分11の厚さaとする。また、幅方向の寸法をb、長さ方向の寸法をcとする。
矩形部分12は、波型部分11の下側に位置する厚さ方向の寸法がdの平面視矩形のブロックで、幅方向の寸法と長さ方向の寸法は波型部分11の幅方向の寸法と長さ方向の寸法と同じである。本例では、a=60mm、b=400mm、c=1200mm、d=40mmとした。
なお、(a)図の右下の図の細い一点鎖線で示す面は波型部分11と矩形部分12との境界面17で、細い二点鎖線で示す面は中間面18である。境界面17と中間面18とは、ともに、下面14に平行な面で、中間面18は上記の原点Oを含み、波型部分11を上下方向に二分する。また、上面13の太い一点鎖線は波型部分11の凹凸と中間面18との交線(z=0である点)である。
【0009】
[波型部分について]
波型部分11の形状は、幅方向波形z(x)と長さ方向波形z(y)とを厚さ方向に重ねた形状である。幅方向波形z(x)の形状は長さ方向の位置であるy座標の値に依らない波形であり、長さ方向波形z(y)の形状は幅さ方向の位置であるx座標の位置に依らない波形である。
長さ方向波形z(y)は、
図1(b)に示すように、凸部pとなる山部の頂点と凹部qとなる谷部の頂点との中間点(以下、ゼロクロス点という)が中間面18上にある、ボイド型枠10の長さ方向に延長する波形である。また、幅方向波形z(x)は、
図1(c)の細い破線で示すように、ゼロクロス点が中間面18上にある、ボイド型枠10の幅方向に延長する波形である。幅方向波形z(x)と長さ方向波形z(y)とは、ともに、周期構造を有している。
図1(b)に示すように、長辺側側面15における波型部分11の凹凸の波形をz
15とすると、波形z
15は2波長分の長さ方向波形z(y)から形成されている。具体的には、中央に位置する凸部pが山部の頂点で、かつ、両端部がそれぞれ山部の頂点である。また、中央に位置する山部の頂点と両端に位置する山部の頂点との間には、凹部qである2つの谷部の頂点が位置している。このように、長さ方向波形z(y)は、長辺側側面15の中央と両端とに山部の頂点を有し、中央に位置する山部の頂点から両端に位置する山部の頂点での距離がそれぞれ長さ方向波形z(y)の1波長分の長さとなっている。
なお、長辺側側面15の凹凸の奥側に見える凹凸は、短辺側側面16の右側に位置する山部の頂点P
12を通る幅方向に垂直な面で切ったときの断面(後述するA’-A’断面15b)の凹凸である。
一方、
図1(c)に示すように、短辺側側面16における波型部分11の凹凸の波形をz
16とすると、波形z
16は、同図の細い破線で示す(3/2)波長分の幅方向波形z(x)を上側に(a/4)だけスライドさせた波形から形成されている。幅方向波形z(x)を上側に(a/4)だけスライドさせるとは、幅方向波形z(x)を、その形状を維持したまま、短辺側側面16を含む平面内で+z軸方向へ(a/4)だけ平行移動させることをいう。すなわち、幅方向波形z(x)と波形z
16とは、いずれも、中央に位置する凹部qが谷部の頂点で、両端がそれぞれゼロクロス点となっており、かつ、谷部の頂点とゼロクロス点との間に、凸部pとなる山部の頂点がそれぞれ位置している波形である。
また、本例では、幅方向波形z(x)も波形z
16も、谷部の頂点が短辺側側面16の中央にあるので、谷部の頂点から両端のゼロクロス点までの長さがそれぞれ幅方向波形z(x)の(3/4)波長分の長さとなっている。
なお、上記の幅方向波形z(x)のスライド量である(a/4)は、長辺側側面15の短辺側側面16との交点(x=b/2、y=-c/2)におけるに長さ方向波形z(y)の山部の頂点のz座標の値である。
すなわち、短辺側側面16における波型部分11の凹凸は、幅方向波形z(x)を、長辺側側面15の短辺側側面16との交点におけるに長さ方向波形z(y)の値である(a/4)だけ上側にスライドさせた波形となっている。
【0010】
図1(d)の斜線部はボイド型枠10を短辺側側面16の谷部の頂点P
11を通る幅方向に垂直な面で切ったときの断面である。以下、この断面を断面15aという。断面15aにおける波型部分11の凹凸の波形をz
15aとすると、波形z
15aは長さ方向波形z(y)を下側に(a/4)だけスライドさせた波形である。なお、長さ方向波形z(y)を下側に(a/4)だけスライドさせるとは、長さ方向波形z(y)を、その形状を維持したまま、長辺側側面15を含む平面内で-z軸方向へ(a/4)だけ平行移動させることをいう。すなわち、長さ方向波形z(y)と波形z
15aとは、いずれも、中央に位置する凸部pが山部の頂点で、この山部の頂点の両側に凹部qと成る谷部の頂点がそれぞれ位置し、かつ、長さ方向両端部が山部の頂点となる波形である。
また、奥側に見える凹凸は短辺側側面16の左側に位置する山部の頂点P
13を通る幅方向に垂直な面で切ったときの断面15cの凹凸である。
すなわち、断面15aにおける波型部分11の凹凸の波形をz
15aは、長さ方向波形z(y)を幅方向波形z(x)の谷部の頂点におけるz(x)の値(中間面18からの距離)である(a/4)だけ下側にスライドさせた波形で、山部の頂点が中間面18に下側から接する凸部pで、谷部の頂点が境界面17に上側から接する凹部になっている。この凹部は最も低い凹部q
mである。
また、
図1(e)の斜線部は短辺側側面16の右側に位置する山部の頂点P
12を通る幅方向に垂直な面で切ったときの断面15bである。
断面15bにおける波型部分11の凹凸の波形をz
15bとすると、波形z
15bは、長さ方向波形z(y)を上側に(a/4)だけスライドさせた波形である。すなわち、断面15bにおける波型部分11の凹凸は、長さ方向波形z(y)を幅方向波形z(x)の山部の頂点P
12におけるz(x)の高さである(a/4)だけ上側にスライドさせた波形で、中央と両端とに山部の頂点が位置し、中央の山部の頂点と両端の山部の頂点との間に凹部qである谷部の頂点がある。中央の山部の頂点が最も高い凸部p
Mである。なお、上記の断面15cにおける波型部分11の凹凸の形状は断面15bの凹凸の形状と同じである。
図1(f)の斜線部は長辺側側面15の中央に位置する山部の頂点Q
11を通る長さ方向に垂直な面で切ったときの断面16aである。断面16aにおける波型部分11の凹凸の波形をz
16aとすると、波形z
16aは幅方向波形z(x)を上側に(a/4)だけスライドさせた波形である。すなわち、断面16aにおける波型部分11の凹凸は、幅方向波形z(x)を長さ方向波形z(y)の山部の頂点Q
11における高さである(a/4)だけ上側にスライドさせた波形で、中央の谷部の頂点が中間面18に上側から接する凹部qで、凹部qの左右の二つの山部の頂点が最も高い凸部p
Mになっている。
図1(g)の斜線部は長辺側側面15の谷部の頂点Q
12を通る長さ方向に垂直な面で切ったときの断面16bである。断面16bにおける波型部分11の凹凸の波形をz
16bとすると、波形z
16bは、幅方向波形z(x)を下側に(a/4)だけスライドさせた波形である。また、奥側に見える凹凸は断面16aの凹凸である。断面16bにおける波型部分11の凹凸は、幅方向波形z(x)を長さ方向波形z(y)の谷部の頂点Q
12におけるz(y)の深さである(a/4)だけ下側にスライドさせた波形で、中央の谷部の頂点が境界面17に上側から接する凹部である。この凹部は最も低い凹部q
mである。また、凹部q
mの左右の二つの山部の頂点である凸部pは、それぞれ、下側からが中間面18に接している。
【0011】
[凹凸の式]
図1(c)に示した幅方向波形z(x)と
図1(b)に示した長さ方向波形z(y)は、波形部分11の中心(x,y)を(0,0)とすると、以下の式(1),(2)で表せる。
【数1】
ここで、λxは幅方向波形z(x)の波長で、λx=(2b/3)である。また、λyは長さ方向波形z(y)の波長で、λy=(c/2)である。
波型部分11に形成される凹凸は、幅方向波形z(x)と長さ方向波形z(y)とを上下方向であるz軸方向に重ねた形状であるので、波型部分11の任意の点(x,y)における中間面18から測った高さ(z座標の値)Z1は以下の式(3)で表せる。
【数2】
式(3)からも明らかなように、
図1(b),(d),(e)に示した長辺側側面15、断面15a、断面15bのような、幅方向に垂直な面においては、凹凸の波形は、長さ方向波形z(y)を、当該面における幅方向波形z(x)の大きさだけ上下方向へスライドさせた波形となる。
また、
図1(c),(f),(g)に示した短辺側側面16、断面16a、断面16bのような、長さ方向に垂直な面においては、凹凸の波形は、幅方向波形z(x)を、当該面における長さ方向波形z(y)の大きさだけ上下方向へスライドさせた波形となる。
【0012】
次に、波型部分11の上面に形成される凹凸の形状が、幅方向波形z(x)と長さ方向波形z(y)とを上下方向に重ねたものであることについて説明する。
図2(a)に示す断面16aを基準面にするとともに、断面16aにおける凹凸の波形をz
16aとすると、波形z
16aのゼロクロス点P
0の値は、断面16aにおける長さ方向波形z(y)の値となっていることがわかる。すなわち、断面16aにおける波形z
16aのゼロクロス点P
0は、上記ゼロクロス点P
0を通り幅方向に垂直な平面(以下、重ね面19という)における長さ方向波形z
19と断面16aとの交点でもある。断面16aではy=0であるので、波形z
16aは幅方向波形z(x)を長さ方向波形z(y)のy=0のときの値である(a/2)だけ上側にスライドさせた波形となる。
ここで、断面16aをy
kだけ長さ方向にスライドさせた面を断面16kとすると、断面16kにおける凹凸の波形z
kのゼロクロス点P
kは、上記の重ね面19における長さ方向波形z(y)と断面16kとの交点でもある。断面16kはy=y
kである平面なので、波形z
kは幅方向波形z(x)を長さ方向波形z(y)においてy=y
kとしたときの値であるz(y
k)だけz軸方向にスライドさせた波形となる。
同様に、短辺側側面16における凹凸の波形z
16は、短辺側側面16がy=(-c/2)の平面であるので、幅方向波形z(x)を長さ方向波形z(y)のy=(-c/2)のときの値である(a/4)だけz軸方向にスライドさせた波形となる。また、断面16bにおける凹凸の波形z
16bは、断面16bがy=(-c/4)の平面であるので、幅方向波形z(x)を長さ方向波形z(y)のy=(-c/4)のときの値である(-a/4)だけz軸方向にスライドさせた波形となる。
【0013】
このように、ボイド型枠10の長さ方向に垂直な断面である断面16aを基準面とすると、基準面から長さ方向に任意の距離ykだけ離れた長さ方向に垂直な断面16kにおける凹凸の形状は、基準面における波形z
16aを波形z
16aのゼロクロス点P
0を通る、ボイド型枠10の幅方向に垂直な断面である重ね面19における長さ方向波形z
19に沿って、任意の距離ykだけ離れた長さ方向に垂直な断面までスライドさせた形状であることがわかる。
なお、
図2(b)に示すように、基準面である断面16aを重ね面とし、重ね面19を基準面としてもよい。この場合、重ね面19の断面16aから長さ方向に任意の距離xkだけ離れた長さ方向に垂直な断面15kにおける凹凸の形状は、重ね面19における波形z
19を断面16aに沿って、任意の距離ykだけ離れた長さ方向に垂直な断面までスライドさせた形状となる。
【0014】
図3(a)~(c)は、ボイド型枠10を、コンクリートスラブのコンクリート内に複数個埋設した例を示す図で、(a)図は平面図、(b)図は(a)図のC-C断面図、(c)図は(a)図のC’-C’断面図である。本例では、コンクリートスラブを床スラブ100とした。以下、(a)図の上下方向が前後方向、左右方向が左右方向とする。
床スラブ100は、複数の板材(以下、パネル101という)と、このパネル101上に打設された現場打ちコンクリート層102とを備え、この現場打ちコンクリート層102中に複数のボイド型枠10が埋設されている。
本例では、
図3(d)に示すような、パネル101をプレキャストコンクリートから構成するとともに、このパネル101上に複数のボイド型枠10を互いに間隔を置いて搭載した複数枚の型枠付パネル103を用いてコンクリートスラブを構築した。
型枠付パネル103は、前後方向に配置された3列のボイド型枠10と、3列のボイド型枠10の間に配置された、現場打ちコンクリートを打設する際に設けられる配筋を支持する4列のトラス鉄筋104とを備える。これら複数の型枠付パネル103は、床スラブ100に先行して構築された、図示しない互いに相対する一対の梁に架け渡され、それぞれの側面において互いに突き合わせされる。
型枠付パネル103には、予めボイド型枠10が搭載されているだけでなく、パネル101が現場打ちコンクリート層102を打設する際の型枠として機能するので、床スラブ100を効率よく構築することができる。
なお、コンクリートスラブのコンクリートを現場打ちコンクリートのみとしてもよい。この場合には、各ボイド型枠10を、現場打ちコンクリートを構築するための型枠の底板から所定距離だけ浮かした状態で保持した後、コンクリートを打設すればよい。
また、上記例では、パネル101をプレキャストコンクリートから構成したが、パネル51は、木製または鋼製であってもよい。
【0015】
実施の形態2.
図4は、本実施の形態2に係るボイド型枠20を示す図で、(a)図は斜視図、(b)図は側面図、(c)図は正面図である。また、(d)図は(a)図のA-A断面図、(e)図はB-B断面図、(f)図は平面図である。
である。
ボイド型枠20は、
図5(a)~(e)に示すボイド型枠20Zの凹凸(波型部分11)の中間面18よりも下側の部分を、中間面18に対して上側に反転させた形状としたものである。
[反転前の波形について]
本例では、ボイド型枠20Zの波型部分11の凹凸を、以下の式(4)で示す幅方向波形z(x)と式(5)で示す長さ方向波形z(y)とを上下方向に重ねた形状とした。
【数3】
ボイド型枠20Zの幅方向波形z(x)と長さ方向波形z(y)は、振幅だけでなく、波長及び位相が同じ波形である。本例では、c=3b、λx=λy=bとした。
ボイド型枠20Zの波型部分11の任意の点(x,y)における中間面18から測った高さ(z座標の値)Z0は以下の式(6)で表せる。
【数4】
図5(a)の斜視図に示すように、ボイド型枠20Zでは、幅方向波形z(x)の波長λxは実施の形態1の波長λxよりも長く、長さ方向波形の波長λyは実施の形態1の波長λyよりも短く設定されている。また、実施の形態1では、点(x,y)=(0,0)でのz座標の値がz=0(中間面18上)であったのに対し、ボイド型枠20Zでは、z=(-a/2)、すなわち、点(0,0)が最も低い凹部q
m(境界面17上)になっている点で実施の形態1と相違する。
また、
図5(b)の側面図に示すように、長辺側側面15側から見た波型部分11の凹凸は、幅方向中央を含む3つの谷部の頂点が凹部qで、幅方向中央の谷部の頂点の両側にはそれぞれ凸部となる山部の頂点が形成されている。また、両端部も山部の頂点となっている。すなわち、長辺側側面15には3波長分の長さの長さ方向波形z(y)が形成されている。なお、長辺側側面15の凹凸の下部の細い一点鎖線の波形は長さ方向波形z(y)で、長辺側側面15の凹凸の波形z
15は、z
15=z(y)+(a/4)である。
一方、
図5(c)の正面図に示すように、短辺側側面16側から見た波型部分11の凹凸も、幅方向波形z(x)の谷部の頂点が凹部qであり、両端部が山部の頂点である波形である。凹部qは、上側から中間面18に接しているので、短辺側側面16側から見た凹凸の波形z
16は、z
16=z(x)+(a/4)である。
【0016】
図5(d)は
図5(a)A-A断面図で、斜線部はボイド型枠10を短辺側側面16の谷部の頂点P
21を通る幅方向に垂直な面で切ったときの断面である。以下、この断面を断面15aという。断面15aにおける波型部分11の凹凸の波形z
15aは、z
15a=z(y)-(a/4)で表せる。なお、奥側に見える凹凸は長辺側側面15に対向する側面である左側の長辺側側面15’の凹凸である。断面15aの凹凸は全て中間面18の下側にあり、谷部の頂点である3つの凹部はそれぞれが最も低い凹部q
mとなっている。
また、
図5(e)は
図5(a)のB-B断面図で、斜線部は長辺側側面15の中央に位置する谷部の頂点Q
21を通る長さ方向に垂直な面で切ったときの断面16aである。断面16aにおける波型部分11の凹凸は幅方向波形z(x)を上側に(a/4)だけスライドさせた波形である。断面16aにおける波型部分11の凹凸の波形z
16aは、z
16a=z(x)-(a/4)である。
なお、奥側に見える凹凸は、長辺側側面15の山部の頂点のうちの後側に位置する山部の頂点Q
23を含む幅方向に垂直な断面26cの凹凸である。断面16aの凹凸も全て中間面18の下側にあり、谷部の頂点である中央の凹部は最も低い凹部q
mとなっている。
後述するように、上記A-A断面の波形z
15aを中間面18に対して上下反転させると最も低い凹部q
mが最も高い凸部p
Mになる。同様に、上記B-B断面の波形z
15bを中間面18に対して上下反転させると、最も低い凹部q
mが最も高い凸部p
Mになる。
【0017】
[反転後の波形について]
次に、ボイド型枠20について、
図4(a)~(f)を参照して説明する。
上述したように、ボイド型枠20の凹凸はボイド型枠20Zの凹凸を中間面18(z=0である平面)よりも下側の部分を中間面18に対して上側に反転させたものであるから、波型部分11の任意の点(x,y)におけるz座標Z2は以下の式(7)で表せる。
【数5】
図4(a)の斜視図に示すように、ボイド型枠20表面の凹凸の形状は、ボイド型枠20Zの中間面18よりも下側の部分の凹凸を上側に反転させた形状なので、波型部分11の厚さ寸法はaから(a/2)と半分になる。一方、矩形部分12の厚さ寸法はdからd+(a/2)に増加する。これにより、ボイド型枠20では、波形部分11と矩形部分12との境界面27の位置が、ボイド型枠20Zの中間面18の位置である、下面14から測ってd+(a/2)の位置になる。すなわち、ボイド型枠20Zの中間面18であった面がボイド型枠20の境界面27となる。
なお、同図の直線で示す区分線はz=0となる位置で、それ以外の場所では、凹凸は中間面18よりも上側にある。但し、中間面18よりも上側にある部分は全て凸部pではなく、例えば、
図4(d)に示す断面25a周辺のように、凸部pと凹部qとが交互に繰り返される部分もある。
図4(b)の側面図に示すように、長辺側側面15の凹凸は、
図5(b)に示した反転前の凹凸と同じであるが、奥側に正弦曲線の山部の頂点である3つの凸部が見える。この凸部は、長辺側側面15の凸部と同じ最も高い凸部p
Mで、後述するA-A断面図に示した断面25aの凹凸である。
また、
図4(c)の正面図に示すように、短辺側側面16の凹凸も、
図5(c)に示した反転前の凹凸と同じであるが、奥側に正弦曲線の山部の頂点である凸部が見える。この凸部は、短辺側側面16の端部と高さが同じ最も高い凸部p
Mで、長辺側側面15の短辺側側面16の前側の山部の頂点Q
22を含む幅方向に垂直な断面26bの凹凸である。
【0018】
図4(d)は
図4(a)A-A断面図で、斜線部は短辺側側面16の谷部の頂点P
21を通る幅方向に垂直な面で切ったときの断面である。以下、この断面を断面25aという。断面25aの凹凸は、
図5(d)に示したボイド型枠20Zの断面15aを中間面18に対して反転させた形状である。断面25aは中央部が山部の頂点となる最も高い凸部p
Mであり、両端部が谷部の頂点となる。反転後凹凸の波形をz
25aとすると、波形z
25aは断面15aの波形z
15aに対して半波長分ずれているので、z
25a=z(y-b/2)+(a/4)となる。なお、奥側に見える凹凸は長辺側側面15に対向する側面である左側の長辺側15’の凹凸である。
また、
図4(e)は
図4(a)のB-B断面図で、斜線部は長辺側側面15の山部の頂点Q
21を通る長さ方向に垂直な面で切ったときの断面26aである。断面26aにおける波型部分11の凹凸は幅方向波形z(x)を上側に(a/4)だけスライドさせた波形である。なお、断面26aの凹凸は、
図5(e)に示したボイド型枠20Zの断面16aを中間面18に対して反転させた形状である。断面26aでは、中央部が山部の頂点となる最も高い凸部p
Mであり、両端部が谷部の頂点となる。反転後凹凸の波形をz
26aとすると、波形z
26aは断面16aの波形z
16aに対して半波長分ずれているので、z
26a=z(x-b/2)+(a/4)となる。なお、左右の奥側に見える凹凸は長辺側側面15の短辺側側面16に対向する短辺側側面16’側に位置する山部の頂点Q
23を含む幅方向に垂直な断面26cの凹凸である。
また、
図4(f)に示すように、ボイド型枠20では、同図の直線で示す菱形(正方形)のライン19が最も低い凹部q
mとなっている。
このように、波型部分11の凹凸の中間面18よりも下側の部分を中間面18に対して上側に反転させた形状とすれば、凹凸の最も高い部分と最も低い部分との差が小さくなる(a=60mmからa/2=30mmになる)ので、矩形部分12の厚さ寸法を減らすことで、スラブの厚さを薄くすることが可能となる。また、そのまま用いた場合には、型枠の体積を効果的に増加させることができるので、コンクリートスラブを軽量化できる。
【0019】
実施の形態3.
図6は、本実施の形態3に係るボイド型枠30を示す図で、(a)図は斜視図、(b)図は側面図、(c)図は正面図である。また、(d)図は(a)図のA-A断面図、(e)図はB-B断面図、(f)図は平面図である。
ボイド型枠30は、実施の形態2の式(4)に示したボイド型枠20の幅方向波形z(x)を式(1)に示したボイド型枠10の幅方向波形z(x)に置き換えるとともに、式(5)に示したボイド型枠20の長さ方向波形z(x)を式(2)に示したボイド型枠10の長さ方向波形z(x)に置き換えたものである。
すなわち、ボイド型枠30は、
図1(a)に示すボイド型枠10の凹凸の中間面18よりも下側の部分を中間面18に対して上側に反転させた形状としたものである。ボイド型枠10の幅方向波形z(x)の波長はλx=(2b/3)で、長さ方向波形z(y)の波長はλy=(c/2)である。すなわち、本例のボイド型枠30は、長さ方向波形z(y)の波長λyが幅方向波形z(x)の波長λxよりも長くなっている点で実施の形態2のボイド型枠20と相違する。
ボイド型枠30の波型部分11の任意の点(x,y)におけるz座標Z3は以下の式(8)で表せる。
【数6】
図6(a)の斜視図に示すように、ボイド型枠30は、ボイド型枠10の凹凸の中間面18よりも下側の部分を反転させたものであるので、ボイド型枠20と同様に、波型部分11の厚さ寸法は(a/2)と半分になり、矩形部分12の厚さ寸法はdからd+(a/2)に増加する。また、実施の形態2のボイド型枠20Zとボイド型枠20との関係と同様に、ボイド型枠10の中間面18がボイド型枠20の境界面37となる。
【0020】
図6(b)の側面図に示すように、長辺側側面15の凹凸は、
図1(b)に示したボイド型枠10の長辺側側面の凹凸を反転させたもので、
図1(b)の凹部qが凸部pになっている。また、奥側の手前側には断面35bの凸部が見える。この断面35bは、短辺側側面16の右側に位置する山部の頂点P
32を含む幅方向に垂直な断面で、実施の形態1の断面15bと同じである。更に、断面35bの奥側には、
図1(b)に示したボイド型枠10のA-A断面である断面15aを中間面18に対して反転させた断面35aの凸部が見える。なお、参考のため、断面15bの波形の隠れている部分である谷部の部分を破線で示した。この谷部の部分は、上側から境界面37に接している。
図6(c)の正面図に示すように、短辺側側面16の凹凸は
図1(c)に示した反転前の凹凸と同じであるが、奥側に見える凹凸は長辺側側面15の前側に位置する山部の頂点Q
32を含む幅方向に垂直な断面36bの凹凸である。この凹凸は、
図1(g)に示したボイド型枠10のB’-B’断面(長辺側側面15の前側に位置する山部の頂点Q
12を含む幅方向に垂直な断面)である断面16bを中間面18に対して反転させたもので、短辺側側面16の中央の凹部が最も低い凹部q
mとなる。
図6(d)は図(a)のA-A断面図で、斜線部は短辺側側面16の谷部の頂点P
31を含む幅方向に垂直な面で切ったときの断面である。以下、この断面を断面35aという。断面35aの凹凸は、
図1(d)に示したボイド型枠10の断面15aを中間面18に対して反転させた形状である。この断面35aでは、中央部と両端部とが谷部の頂点となる最も低い凹部q
mであり、凹部q
m間に山部の頂点なる最も高い凸部p
Mが位置している。反転後凹凸の波形をz
35aとすると、波形z
35aは断面15aの波形z
15aに対して半波長分だけずれているので、z
35a=z(y-c/4)+(a/4)となる。なお、奥側に見える凹凸は短辺側側面16の左側に位置する山部の頂点P
33を含む長さ向きに垂直な断面35cの凹凸である。
また、
図6(e)は
図6(a)のB-B断面図で、斜線部は長辺側側面15の山部の頂点Q
31を通る幅方向に垂直な面で切ったときの断面36aである。断面36aの凹凸は、
図1(f)に示した断面16aと同じであるが、奥側には、長辺側側面15の後側に位置する山部の頂点Q
33を含む幅方向に垂直な断面36cの凸部が見える点で異なる。
また、
図6(f)に示すように、ボイド型枠30でも、同図の直線で示す菱形のライン29が最も低い凹部q
mとなっている。
【0021】
このように、凹凸の中間面18よりも下側の部分を中間面18に対して上側に反転させた形状とすれば、凹凸の最も高い部分と最も低い部分との差が小さくなる(ここでは、半分になる)ので、その分、矩形部分12の厚さ寸法を減らすことで、スラブを薄くすることが可能となる。また、そのまま用いた場合には、型枠の体積を効果的に増加させることができるので、コンクリートスラブを軽量化できる。
また、
図4に示したボイド型枠20と
図6に示したボイド型枠30とを比較すると、ボイド型枠30では、幅方向波形z(x)の波長λxと幅方向波形の波長と長さ方向波形z(y)の波長λyが異なっている。すなわち、ボイド型枠30では、縦方向の凹凸の間隔と横方向の凹凸の間隔とが異なるため、凹凸の縦横の均一性が低下するので、幅方向波形z(x)の波長λxと幅方向波形の波長と長さ方向波形z(y)の波長λyが同じであるボイド型枠20よりも、共振現象の抑制効果が向上する。
【0022】
実施の形態4.
図7は、本実施の形態4に係るボイド型枠40を示す図で、(a)図は斜視図、(b)図は側面図、(c)図は正面図である。また、(d)図は(a)図のA-A断面図、(e)図はB-B断面図である。
ボイド型枠40は、幅方向の寸法b’と長さ方向の寸法c’とを、実施の形態1のボイド型枠10の幅方向の寸法bと長さ方向の寸法cよりも短くするとともに、幅方向波形z(x)の波長λxをボイド型枠40の幅方向の長さ寸法b’と等しくし、長さ方向波形z(y)の波長λyをボイド型枠40の長さ方向の長さ寸法c’と等しくしたものである。なお、本例では、b’=(2b/3)、c’=(c/2)とするとともに、b’=λx、c’=λyとした。
すなわち、
図7(a)の斜視図に示すように、ボイド型枠40は、実施の形態1のボイド型枠10の幅方向の両端部をそれぞれ(b/6)切り取るとともに、長さ方向に2分にしたものの一方である。
ボイド型枠40の波型部分11の任意の点(x,y)における中間面18から測った高さ(z座標の値)Z4は以下の式(9)で表せる。
【数7】
本例のボイド型枠40と実施の形態1のボイド型枠10とは、幅方向波形z(x)の波長λx、長さ方向波形z(y)の波長λy、及び、幅方向波形z(x)の幅方向中心が谷部の頂点である点で一致するが、長さ方向幅波形z(y)の長さ方向中心が谷部の頂点である点で異なっている。
【0023】
また、
図7(b)の側面図に示すように、長辺側側面15側から見た波型部分11の凹凸としては、幅方向中央の谷部の頂点が凹部qで、両端部が山部の頂点となっている。なお、長辺側側面15の凹凸の波形z
15は、z
15=z(y)で、波形z
15の奥側の波形は谷部の頂点P
41を通る幅方向に垂直な面で切ったときの断面(後述するA-A断面45a)の凹凸である。
一方、
図7(c)の正面図に示すように、短辺側側面16側から見た波型部分11の凹凸も、幅方向波形z(x)の谷部の頂点が凹部qであり、両端部が山部の頂点である波形である。凹部qは、上側から中間面18に接しているので、短辺側側面16側から見た凹凸の波形z
16は、z
16=z(x)+(a/4)である。
図7(d)は
図7(a)A-A断面図で、斜線部はボイド型枠40を短辺側側面16の谷部の頂点P
41を通る幅方向に垂直な面で切ったときの断面である。以下、この断面を断面45aという。断面45aにおける波型部分11の凹凸の波形z
45aは、z
45a=z(y)-(a/4)で表せる。なお、奥側に見える凹凸は長辺側側面15に対向する側面である左側の長辺側側面15’の凹凸である。断面15aの凹凸は全て中間面18の下側にあり、谷部の頂点が最も低い凹部q
mとなっている。
また、
図7(e)は
図7(a)のB-B断面図で、斜線部は長辺側側面15の中央に位置する谷部の頂点Q
41を通る長さ方向に垂直な面で切ったときの断面46aである。断面46aにおける波型部分11の凹凸は幅方向波形z(x)を下側に(a/4)だけスライドさせた波形である。断面46aにおける波型部分11の凹凸の波形z
46aは、z
46a=z(x)-(a/4)である。
なお、奥側に見える凹凸は、短辺側側面16に対向する側面である後側の短辺側側面16’の凹凸である。断面46aの凹凸も全て中間面18の下側にあり、谷部の頂点である中央の凹部は最も低い凹部q
mとなっている。
このように、幅方向波形z(x)の波長λxが幅方向の長さ寸法b’に等しく、長さ方向波形z(y)の波長λy長さ方向の長さ寸法c’に等しいボイド型枠40は、長さ寸法、及び、幅寸法の小さなボイド型枠に好適に用いられる。すなわち、長さ寸法、及び、幅寸法の小さい場合に、山部及び谷部の数を多くすると、山部と谷部の間隔が小さくなるので、幅方向も長さ方向も1波長分の波形とすることが好ましい。
【0024】
実施の形態5.
図8は、本実施の形態5に係るボイド型枠50を示す図で、(a)図は斜視図、(b)図は側面図、(c)図は正面図である。また、(d)図は(a)図のA-A断面図、(e)図はB-B断面図、(f)図は平面図である。
図8(a)の斜視図に示すように、ボイド型枠50は、
図7(a)に示した実施の形態4のボイド型枠40の凹凸の中間面18よりも下側の部分を中間面18に対して上側に反転させた形状としたものである。
したがって、ボイド型枠50の波型部分11の任意の点(x,y)におけるz座標Z5は以下の式(10)で表せる。
【数8】
ボイド型枠50は、ボイド型枠40の凹凸の中間面18よりも下側の部分を反転させたものであるので、ボイド型枠20,ボイド型枠30と同様に、波型部分11の厚さ寸法は(a/2)と半分になり、矩形部分12の厚さ寸法はdからd+(a/2)に増加する。
また、ボイド型枠20Zとボイド型枠20との関係、及び、ボイド型枠10とボイド型枠30との関係と同様に、ボイド型枠40Zの中間面18がボイド型枠40の境界面57となる。
【0025】
図8(b)の側面図に示すように、長辺側側面15の凹凸は、
図7(b)に示したボイド型枠40の長辺側側面の凹部qと同じである。また、奥側に見える凸部は左側の長辺側側面15’の凸部である。この凸部は、
図7(b)に示した断面45aを中間面18に対して上側に反転した断面55aの凸部である。
また、
図8(c)の正面図に示すように、短辺側側面16の凹凸は
図7(c)に示した反転前の凹凸と同じであるが、奥側には、長辺側側面15の中央部に位置する山部の頂点Q
41を含む幅方向に垂直な断面の反転した凸部が見える。
図8(d)は
図8(a)のA-A断面図で、斜線部は短辺側側面16の谷部の頂点P
51を含む幅方向に垂直な面で切ったときの断面である。以下、この断面を断面55aという。断面55aの凹凸は、
図7(d)に示したボイド型枠40の断面45aを中間面18に対して反転させた形状である。この断面55aでは、中央部が山部の頂点となる最も高い凸部p
Mとなり、両端部谷部の頂点となる。
断面55aの反転後凹凸の波形をz
55aとすると、波形z
55a は断面45aの波形z
45aに対して半波長分だけずれているので、z
55a =z(y-c’/2)+(a/4)となる。なお、奥側に見える凹凸は左側の長辺側側面15’の凹凸である。
また、
図8(e)は
図8(a)のB-B断面図で、斜線部は長辺側側面15の山部の頂点Q
51を通る幅方向に垂直な面で切ったときの断面56aである。断面56aの凹凸は、
図7(d)に示したボイド型枠40の断面46aを中間面18に対して反転させた形状である。この断面56aでは、中央部が山部の頂点となる最も高い凸部p
Mとなり、両端部谷部の頂点となる。
断面56aの反転後凹凸の波形をz
56aとすると、波形z
56a は断面46bの波形z
46aに対して半波長分だけずれているので、z
56a =z(x-b’/2)+(a/4)となる。なお、奥側に見える凹凸は後側の短辺側側面16’の凹凸である。
また、
図8(f)に示すように、ボイド型枠50でも、ボイド型枠30と同様に、同図の直線で示す菱形のライン59が最も低い凹部q
mとなっている。
このように、ボイド型枠40の凹凸の中間面18よりも下側の部分を中間面18に対して上側に反転させたボイド型枠50も矩形部分12の厚さ寸法を減らせるので、スラブを薄くすることが可能となる。また、そのまま用いた場合には、型枠の体積を効果的に増加させることができるので、コンクリートスラブを軽量化できる。
【0026】
実施の形態6.
図9は、本実施の形態6に係るボイド型枠60を示す図で、(a)図は斜視図、(b)図は側面図、(c)図は正面図である。また、(d)図は(a)図のA-A断面図、(e)図はB-B断面図である。
ボイド型枠60は、実施の形態4のボイド型枠40の長さ方向波形z(y)を、後側である+y方向に半波長(λy/2)、すなわち、(c’/2)だけ移動させたものである。したがって、ボイド型枠60の波型部分11の任意の点(x,y)における中間面18から測った高さ(z座標の値)Z6は以下の式(11)で表せる。
【数9】
本例のボイド型枠60と実施の形態4のボイド型枠40とは、長さ方向幅波形z(y)の長さ方向中心が山部の頂点である点で異なっている。
なお、ボイド型枠60の原点を、ボイド型枠50の原点よりも前側である-y方向に(c’/2)だけ移動させた点O’としてもよい。すなわち、ボイド型枠60の波型部分11の任意の点(x,y)における中間面18から測った高さを実施の形態4の式(9)のままにして、原点(0,0,0)を、ボイド型枠50の原点よりも前側に(c’/2)だけ移動させた点O’(0,c’/2,0)としてもよい。
【0027】
また、
図9(b)の側面図に示すように、長辺側側面15側から見た波型部分11の凹凸としては、幅方向中央の山部の頂点が最も高い凸部p
Mで、両端部が谷部の頂点となっている。なお、長辺側側面15の凹凸の波形z
15は、z
15=z(y)+(a/4)である。なお、波形z
15の下部の破線で示す波形は後述する断面65aの波形z
65aで、z
65a=z(y)である。
一方、
図9(c)の正面図に示すように、短辺側側面16側から見た波型部分11の凹凸は、幅方向波形z(x)の谷部の頂点が最も低い凹部q
mとなり、両端部が山部の頂点となる波形である。凹部q
mは、上側から境界面17に接しているので、短辺側側面16側から見た凹凸の波形z
16は、z
16=z(x)-(a/4)である。なお、波形z
16の後方の波形は後述する断面66aの波形z
66aである。
図9(d)は
図9(a)A-A断面図で、斜線部はボイド型枠60を短辺側側面16の中心である谷部の頂点P
61を通る幅方向に垂直な面で切ったときの断面である。以下、この断面を断面65aという。断面65aにおける波型部分11の凹凸の波形z
65aは、z
65a=z(y)-(a/4)で表せる。なお、奥側に見える凹凸は長辺側側面15に対向する側面である左側の長辺側側面15’の凹凸である。断面65aの凹凸は全て中間面18の下側にあり、両端部の2つの谷部の頂点がそれぞれ最も低い凹部q
mとなっている。
また、
図9(e)は
図9(a)のB-B断面図で、斜線部は長辺側側面15の中央に位置する谷部の頂点Q
61を通る長さ方向に垂直な面で切ったときの断面66aである。断面66aにおける波型部分11の凹凸は、幅方向波形z(x)を上側に(a/4)だけスライドさせた波形z
66aで、z
66a=z(x)+(a/4)である。
ボイド型枠40の長さ方向波形z(y)を後側に半波長(λy/2)だけ移動させたボイド型枠60も、ボイド型枠40と同様に、長さ寸法、及び、幅寸法の小さなボイド型枠に好適に用いられる。
【0028】
実施の形態7.
図10は、本実施の形態7に係るボイド型枠70を示す図で、(a)図は斜視図、(b)図は側面図、(c)図は正面図である。また、(d)図は(a)図のA-A断面図、(e)図はB-B断面図、(f)図は平面図である。
図8(a)の斜視図に示すように、ボイド型枠50は、
図9(a)に示した実施の形態6のボイド型枠60の凹凸の中間面18よりも下側の部分を中間面18に対して上側に反転させた形状としたものである。
したがって、ボイド型枠70の波型部分11の任意の点(x,y)におけるz座標Z7は以下の式(10)で表せる。
【数10】
ボイド型枠70は、ボイド型枠60の凹凸の中間面18よりも下側の部分を反転させたものであるので、ボイド型枠20,30,50と同様に、波型部分11の厚さ寸法は(a/2)と半分になり、矩形部分12の厚さ寸法はdからd+(a/2)に増加する。また、ボイド型枠60の中間面18がボイド型枠70の境界面77となる。
【0029】
図10(b)の側面図に示すように、長辺側側面15の凹凸は、
図9(b)の中央部の凸部がそのまま凸部pになっている。また、奥側に見える凸部は
図9(b)の断面を反転させたものである。
また、
図10(c)の正面図に示すように、短辺側側面16の凹凸は
図9(c)に示した反転前の短辺側側面16を反転させたもので、奥側には、長辺側側面15の中央部に位置する山部の頂点Q
71を含む幅方向に垂直な断面の反転した凸部が見える。この凸部は、山部の頂点となる最も高い凸部p
Mになっている。
図10(d)は
図10(a)のA-A断面図で、斜線部は短辺側側面16の山部の頂点P
71を含む幅方向に垂直な面で切ったときの断面である。以下、この断面を断面75aという。断面75aの凹凸は、
図9(d)に示したボイド型枠60の断面65aを中間面18に対して反転させた形状である。この断面75aでは、中央部が谷部の頂点となる最も低い凹部q
mとなり、両端部山部の頂点となる。
断面75aの反転後凹凸の波形をz
75aとすると、波形z
75a は断面65aの波形z
65aに対して半波長分だけずれているので、z
75a =z(y-c’/2)+(a/4)となる。なお、奥側中央に見える凹凸は左側の長辺側側面15’の凹凸である。
また、
図10(e)は
図10(a)のB-B断面図で、斜線部は長辺側側面15の山部の頂点Q
71を通る幅方向に垂直な面で切ったときの断面76aであるが、断面66aは中間面18よりも上側にあるので、断面76aの波形は、断面66aと同じである。すなわち、断面76aの波形も、中央部が谷部の頂点となる最も低い凹部q
mとなり、両端部山部の頂点となる波形である。なお、奥側に見える凹凸は後側の短辺側側面16’の凹凸である。
また、
図10(f)に示すように、ボイド型枠70でも、ボイド型枠50と同様に、同図の直線で示す菱形のライン79が最も低い凹部q
mとなっている。
このように、ボイド型枠60の凹凸の中間面18よりも下側の部分を中間面18に対して上側に反転させたボイド型枠70も矩形部分12の厚さ寸法を減らせるので、スラブを薄くすることが可能となる。また、そのまま用いた場合には、型枠の体積を効果的に増加させることができるので、コンクリートスラブを軽量化できる。
【0030】
実施の形態8.
図11は、本実施の形態8に係るボイド型枠40Lを示す図で、(a)図は斜視図、(b)図は側面図、(c)図は正面図である。また、(d)図は(a)図のA-A断面図、(e)図はB-B断面図である。
ボイド型枠40Lは、幅方向の寸法を実施の形態1のボイド型枠10の幅方向の寸法bと等しくし、長さ方向の寸法を長さ方向の寸法cの半分にするとともに、幅方向波形z(x)の波長λx及び長さ方向波形z(y)の波長λyをボイド型枠40の波長λx及び長さ方向の波長λyと等しくしたものである。すなわち、本例では、b’=b、c’=(c/2)とし、λx=(2b/3)、λy=(c/2)とした。
したがって、ボイド型枠40Lの波型部分11の任意の点(x,y)における中間面18から測った高さ(z座標の値)Z8は以下の式(13)で表せる。
【数11】
なお、本例のボイド型枠40Lでは、幅方向波形z(x)の幅方向中心と、長さ方向幅波形z(y)の長さ方向中心がともに谷部の頂点になっている。
【0031】
また、
図11(b)の側面図に示すように、長辺側側面15側から見た波型部分11の凹凸としては、幅方向中央の谷部の頂点が凹部qで、両端部が山部の頂点となっている。なお、長辺側側面15の凹凸の波形z
15は、z
15=z(y)で、波形z
15の奥側の波形は谷部の頂点P
43を通る幅方向に垂直な面で切ったときの断面の凹凸である。
また、
図11(c)の正面図に示すように、短辺側側面16側から見た波型部分11の凹凸も、幅方向波形z(x)の谷部の頂点が凹部qになっている。また、両端部はゼロクロス点である。凹部qは、上側から中間面18に接しているので、短辺側側面16側から見た凹凸の波形z
16は、z
16=z(x)+(a/4)である。
図11(d)は
図11(a)A-A断面図で、斜線部はボイド型枠40Lを短辺側側面16の谷部の頂点P
42を通る幅方向に垂直な面で切ったときの断面である。以下、この断面を断面45Laという。断面45Laにおける波型部分11の凹凸の波形z
45Laは、z
45La=z(y)-(a/4)で表せる。なお、奥側に見える凹凸は長辺側側面15に対向する側面である左側の長辺側側面15’の凹凸である。断面15aの凹凸は全て中間面18の下側にあり、谷部の頂点が最も低い凹部q
mとなっている。
また、
図11(e)は
図11(a)のB-B断面図で、斜線部は長辺側側面15の中央に位置する谷部の頂点Q
42を通る長さ方向に垂直な面で切ったときの断面46Laである。断面46Laにおける波型部分11の凹凸は幅方向波形z(x)を下側に(a/4)だけスライドさせた波形である。断面46Laにおける波型部分11の凹凸の波形z
46Laは、z
46La=z(x)-(a/4)である。
なお、奥側に見える凹凸は、短辺側側面16に対向する側面である後側の短辺側側面16’の凹凸である。断面46Laの凹凸も全て中間面18の下側にあり、谷部の頂点である中央の凹部は最も低い凹部q
mとなっている。
また、
図11(e)は短辺側側面16の右側に位置する山部の頂点P
43を通る幅方向に垂直な面で切ったときの断面45Lbである。
断面45Lbにおける波型部分11の凹凸の波形をz
45Lbとすると、波形z
45Lbは、長さ方向波形z(y)を上側に(a/4)だけスライドさせた波形である。断面45Lbにおける波型部分11の凹凸の波形z
45Lbは、z
45Lb=z(x)-(a/4)である。
ボイド型枠40Lも、ボイド型枠40と同様に、長さ寸法、及び、幅寸法の小さなボイド型枠に好適に用いられる。
【0032】
実施の形態9.
図12は、本実施の形態9に係るボイド型枠50Lを示す図で、(a)図は斜視図、(b)図は側面図、(c)図は正面図である。また、(d)図は(a)図のA-A断面図、(e)図はB-B断面図、(f)図は平面図である。
図12(a)の斜視図に示すように、ボイド型枠50Lは、
図11(a)に示した実施の形態8のボイド型枠40Lの凹凸の中間面18よりも下側の部分を中間面18に対して上側に反転させた形状としたものである。
したがって、ボイド型枠50Lの波型部分11の任意の点(x,y)におけるz座標Z9は以下の式(14)で表せる。
【数12】
ボイド型枠50Lは、ボイド型枠40Lの凹凸の中間面18よりも下側の部分を反転させたものであるので、ボイド型枠20,ボイド型枠30と同様に、波型部分11の厚さ寸法は(a/2)と半分になり、矩形部分12の厚さ寸法はdからd+(a/2)に増加する。
また、ボイド型枠20Zとボイド型枠20との関係、及び、ボイド型枠10とボイド型枠30との関係と同様に、ボイド型枠40Zの中間面18がボイド型枠40Lの境界面57Lとなる。
【0033】
図12(b)の側面図に示すように、長辺側側面15の凹凸は、
図11(b)に示したボイド型枠40Lを中間面18に対して上側に反転したもので、
図11(b)に示した長辺側側面15の谷部の頂点凹部qが山部の頂点pになっている。また、左右の奥側に見える凸部は、短辺側側面16の右側に位置する山部の頂点P
53を通る幅方向に垂直な面で切ったときの断面55Lbの凸部で、中央の奥側に見える凸部は、短辺側側面16の中央に位置する山部の頂点P
52を通る幅方向に垂直な面で切ったときの断面55Lacの凸部である。
また、
図12(c)の正面図に示すように、短辺側側面16の凹凸は
図11(c)に示した反転前の凹凸と同じであるが、奥側には、長辺側側面15の中央部に位置する山部の頂点Q
52を含む長さ方向に垂直な面で切ったときの断面56Laの山部の頂点が見える。この山部の頂点は最も高い凸部p
Mになっている。
図12(d)は
図12(a)のA-A断面図で、斜線部は短辺側側面16の谷部の頂点P
52を含む幅方向に垂直な面で切ったときの断面である。以下、この断面を断面55Laという。断面55Laの凹凸は、
図11(d)に示したボイド型枠40Lの断面45Laを中間面18に対して反転させた形状で、中央部が山部の頂点となる最も高い凸部p
Mとなり、両端部谷部の頂点となっている。
断面55Laの反転後凹凸の波形をz
55Laとすると、波形z
55La は断面45aの波形z
45aに対して半波長分だけずれているので、z
55La =z(y-c/4)+(a/4)となる。なお、奥側に見える凹凸は、短辺側面15の左側に位置する山部の頂点P
54を含む幅方向に垂直な面で切ったときの断面56Lcの凹凸である。
また、
図12(e)は
図12(a)のB-B断面図で、斜線部は長辺側側面15の山部の頂点Q
52を通る幅方向に垂直な面で切ったときの断面56Laである。断面56Laの凹凸は、
図11(e)に示したボイド型枠40Lの断面46Laを中間面18に対して反転させた形状である。断面56Laでは、中央部が山部の頂点となる最も高い凸部p
Mとなり、両端部谷部の頂点となっている。
断面56Laの反転後凹凸の波形をz
56Laとすると、波形z
56a は断面46Laの波形z
46Laに対して半波長分だけずれているので、z
56La =z(x-b/2)+(a/4)となる。なお、奥側に見える凹凸は後側の短辺側側面16’の凹凸である。
また、
図12(f)に示すように、ボイド型枠50Lでも、ボイド型枠30,50と同様に、同図の直線で示す菱形のライン59Lが最も低い凹部q
mとなっている。
このように、ボイド型枠40Lの凹凸の中間面18よりも下側の部分を中間面18に対して上側に反転させたボイド型枠50Lも矩形部分12の厚さ寸法を減らせるので、スラブを薄くすることが可能となる。また、そのまま用いた場合には、型枠の体積を効果的に増加させることができるので、コンクリートスラブを軽量化できる。
【0034】
実施の形態10.
図13は、本実施の形態10に係るボイド型枠60Lを示す図で、(a)図は斜視図、(b)図は側面図、(c)図は正面図である。また、(d)図は(a)図のA-A断面図、(e)図はB-B断面図である。
ボイド型枠60Lは、実施の形態1のボイド型枠10の長さ方向の両端部をそれぞれ(c/4)づつ切り取ったものである(実施の形態8のボイド型枠40Lの長さ方向波形z(y)を、後側である+y方向に半波長(λy/2)、すなわち、(c/2)だけ移動させたものでもある)。したがって、ボイド型枠60Lの波型部分11の任意の点(x,y)における中間面18から測った高さ(z座標の値)Z10は以下の式(15)で表せる。
【数13】
上記の式(15)は、実施の形態1の式Z1の式(3)と同じである。
【0035】
図13(b)の側面図に示すように、長辺側側面15側から見た波型部分11の凹凸としては、幅方向中央が山部の頂点で、両端部が谷部の頂点となっている。また、奥側には、長辺側側面15の右側に位置する山部の頂点P
63を含む幅方向に垂直な断面65Lbの凸部が見える。
長辺側側面15の凹凸の波形z
15は、z
15=z(y)で、断面65Lbの波形z
65Lbの波形z
65Lbは、z
65Lb=z(y)=z(x)+(a/4)である。
一方、
図13(c)の正面図に示すように、短辺側側面16側から見た波型部分11の凹凸は、中央部が谷部の頂点で、両端部が山部の頂点となる波形である。すなわち、短辺側側面16側から見た凹凸の波形z
16は、z
16=z(x)である。なお、波形z
16の後方の波形は後述する断面66Laの波形z
66aである。
図13(d)は
図13(a)A-A断面図で、斜線部はボイド型枠60Lを短辺側側面16の中心である谷部の頂点P
62を通る幅方向に垂直な面で切ったときの断面である。以下、この断面を断面65Laという。断面65Laにおける波型部分11の凹凸の波形z
65Laは、z
65La=z(y)-(a/4)で表せる。なお、奥側に見える凹凸は上記の断面85Lbの凹凸である。断面65Laの凹凸は全て中間面18の下側にあり、両端部の2つの谷部の頂点がそれぞれ最も低い凹部q
mとなっている。
また、
図13(e)は
図13(a)のB-B断面図で、斜線部は長辺側側面15の中央に位置する谷部の頂点Q
62を通る長さ方向に垂直な面で切ったときの断面66Laである。断面66Laにおける波型部分11の凹凸は、幅方向波形z(x)を上側に(a/4)だけスライドさせた波形z
66Laで、z
66La=z(x)+(a/4)である。
ボイド型枠60Lも、ボイド型枠40などと同様に、長さ寸法、及び、幅寸法の小さなボイド型枠に好適に用いられる。
【0036】
実施の形態11.
図14は、本実施の形態11に係るボイド型枠70Lを示す図で、(a)図は斜視図、(b)図は側面図、(c)図は正面図である。また、(d)図は(a)図のA-A断面図、(e)図はB-B断面図、(f)図は平面図である。
図14(a)の斜視図に示すように、ボイド型枠70Lは、
図13(a)に示した実施の形態10のボイド型枠60Lの凹凸の中間面18よりも下側の部分を中間面18に対して上側に反転させた形状としたものである。
したがって、ボイド型枠70Lの波型部分11の任意の点(x,y)におけるz座標Z7は以下の式(16)で表せる。
【数14】
上記の式(16)は、実施の形態3の式Z3の式(8)と同じである。
ボイド型枠70Lは、ボイド型枠60Lの凹凸の中間面18よりも下側の部分を反転させたものであるので、ボイド型枠20,30,50と同様に、波型部分11の厚さ寸法は(a/2)と半分になり、矩形部分12の厚さ寸法はdからd+(a/2)に増加する。また、ボイド型枠60Lの中間面18がボイド型枠70Lの境界面77Lとなる。
【0037】
図14(b)の側面図に示すように、長辺側側面15の凹凸は、
図13(b)の長さ方向波形の中央部の谷部が、中間面18に対して反転した凸部pになっている。また、奥側中央部に見える凸部p
Mは断面75Lbの山部で、奥側両端部側に見える凸部は、断面65Laを中間面18に対して反転した断面75Laの山部である。なお、断面75Lbの山部は
図13(b)の断面65Lbの山部と同じである。
また、
図14(c)の正面図に示すように、短辺側側面16の凹凸は
図13(c)に示した反転前の短辺側側面16を反転させたもので、奥側には、長辺側側面15の中央部に位置する山部の頂点Q
72を含む幅方向に垂直な断面76Laの凸部が見える。この凸部は、山部の頂点となる最も高い凸部p
Mになっている。
図14(d)は
図14(a)のA-A断面図で、斜線部は短辺側側面16の山部の頂点P
72を含む幅方向に垂直な面で切ったときの断面である。以下、この断面を断面75Laという。断面75Laの凹凸は、
図13(d)に示したボイド型枠60Lの断面65Laを中間面18に対して反転させた形状である。
断面75Laでは、両端部が山部の頂点となる最も高い凸部p
Mとなり、中央部が谷部の頂点である最も低い凹部q
mとなっている。
断面75Laの反転後凹凸の波形をz
75Laとすると、波形z
75La は断面65aの波形z
65Laに対して半波長分だけずれているので、z
75La =z(y-c/4)+(a/4)となる。なお、奥側中央に見える凹凸は左側の長辺側側面15’の凹凸である。
また、
図14(e)は
図14(a)のB-B断面図で、斜線部は長辺側側面15の山部の頂点Q
72を通る幅方向に垂直な面で切ったときの断面76Laであるが、断面66Laは中間面18よりも上側にあるので、断面76Laの波形は、断面66Laと同じである。
断面76Laの波形も、中央部が谷部の頂点となる最も低い凹部q
mとなり、両端部がゼロクロス点で、谷部の頂点とゼロクロス点の間に山部の頂点がある波形である。なお、奥側に見える凹凸は後側の短辺側側面16’の凹凸である。
また、
図14(f)に示すように、ボイド型枠70Lでも、ボイド型枠50と同様に、同図の直線で示す菱形のライン79Lが最も低い凹部q
mとなっている。
このように、ボイド型枠60Lの凹凸の中間面18よりも下側の部分を中間面18に対して上側に反転させたボイド型枠70Lも矩形部分12の厚さ寸法を減らせるので、スラブを薄くすることが可能となる。また、そのまま用いた場合には、型枠の体積を効果的に増加させることができるので、コンクリートスラブを軽量化できる。
【0038】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に記載の範囲には限定されない。前記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者にも明らかである。そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲から明らかである。
【0039】
例えば、前記実施の形態1~11では、幅方向波形z(x)と長さ方向波形z(y)とをそれぞれ一つの正弦曲線としたが、幅方向波形z(x)と長さ方向波形z(y)とをそれぞれ複数の正弦曲線の和としてもよい。
図15はその一例を示す図で、ボイド型枠80は、幅方向波形z(x)を幅方向に延長する2つの波形z
x1,z
x2の和とし、長さ方向波形z(y)を長さ方向に延長する2つの波形の和z
y1,z
y2の和とするとともに、図示しない中間面よりも下側の部分を中間面に対して上側に折り返した形状としたものである。図の境界面87が反転前の中間面であることは、実施の形態2,3,5,7と同じである。
ここで、波形z
x1,z
x2の波長をそれぞれλ
x1,λ
x2、振幅をそれぞれa
x1,a
x2とするとともに、波形z
y1,zy
2の波長をそれぞれλy
1,λ
y2、振幅をそれぞれa
y1,a
y2とすると、波型部分11の任意の点(x,y)におけるz座標Zmは以下の式(14)で表せる。
【数15】
ボイド型枠80では、幅方向でも長さ方向でも凹凸の高さが異なる振幅・波長を有する正弦曲線となるので、同図に示すように、凸部p、凹部qの位置もランダムになり、凹凸の形状も複雑になる。したがって、共振現象の抑制効果を更に向上させることができる。
なお、幅方向波形z(x)を幅方向に延長するn個の波形z
x1~z
xnの和とし、長さ方向波形z(y)を長さ方向に延長するm個の波形の和z
y1~z
ymの和としてもよい。
【0040】
また、前記実施の形態1では、ボイド型枠10の長さ方向に垂直な面に(3b/2)波長分の幅方向波形z(x)を形成し、幅方向に垂直な面に2波長分の長さ方向波形z(y)を形成したが、長さ方向に垂直な面にm波長分の幅方向波形z(x)を形成し、幅方向に垂直な面にn波長分の長さ方向波形z(y)を形成した場合には、波型部分11の任意の点(x,y)におけるz座標Zuは以下の式(14)で表せる。
【数16】
式(14)で第1項が幅方向波形z(x)第2項が長さ方向波形である。なお、幅方向波形z(x)の波長はλx=(b/m)で、長さ方向波形z(y)の波長はλy=(b/n)である。
また、kx,kyは、それぞれ、x方向の位置係数とy方向の位置係数で、0≦kx<1,0≦kx<1である。
kx=(1/4)+Nのときには、幅方向波形z(x)の幅方向中央(x=0)は山部となり、kx=(3/4)+Nのときには、幅方向中央は谷部となる(Nは整数)。
また、kx=Nのときには、幅方向波形z(x)の幅方向中央(x=0)は、谷部から山部に向かうときのゼロクロス点となり、kx=(1/2)+Nのときには、山部から谷部に向かうときのゼロクロス点となる。
y方向の位置係数kyについても同様である。
なお、上記の式(14)においてkxとkyとを固定値、例えば、kx=(3/4)、ky=(1/4)とし、ボイド型枠の原点を、前後方向(±y方向)及び左右方向(±x方向)のいずれか一方または両方に移動させてもよい。すなわち、同じ式でも、原点の位置を波形部分11の中心である(0,0,0)から(b/n′,c/m’,a/l’)にすることによって、ボイド型枠表面の凹部及び凸部の位置を変えることができる(但し、n′,m’,l’は、0でない整数)。
また、上記の式(14)で表される波形のボイド型枠の凹凸の中間面よりも下側の部分を中間面に対して上側に反転させた波形の任意の点(x,y)におけるz座標Zvは以下の式(15)で表せる。
【数17】
【0041】
また、前記実施の形態1~11では、長さ方向に垂直な断面の波形を全幅に亘って長さ方向に変化させたが、谷部のみに長さ方向に延長する凹凸が設けられている形状としてもよい。すなわち、
図16(a)に示すボイド型枠10Lのように、谷部領域R1内の縦断面L1,L2では、上側に凹凸が形成されているが、山部領域R2内での縦断面L3,L4では、断面形状は矩形となる。これにより、
図16(b)に示す、縦断面の形状が全て矩形である従来のボイド型枠10Mに比較して、谷底部分を盛り上げることができる。したがって、ボイド型枠の体積を大きくすることができるので、コンクリートスラブを軽量化できる。なお、谷部のみに長さ方向に凹凸をつけても、反射の広がりを3次元的にできるので、ボイド型枠の表面で生じていた共振現象を効果的に抑制できることはいうまでもない。
ところで、
図16(b)に示した従来のボイド型枠10Mでは、山部の頂点と谷部の頂点との距離である波型部分11の厚さaが、所定の値H
0以上ないと共振現象の抑制効果が十分ではないことが知られている。これに対して、
図16(a)に示したボイド型枠10Lや実施の形態1に示したボイド型枠10などは、幅方向に沿った凹凸だけでなく、長さ方向に沿っても凹凸が形成されているので、波型部分11の厚さaが所定の値H
0よりも小さくても、共振現象を十分に抑制することができる。すなわち、幅方向波形z(x)の振幅(a/2)及び長さ方向波形z(y)の振幅(a/2)を小さくしても共振現象を抑制できるので、スラブの厚さを薄くすることが可能となる。
【0042】
また、前記実施の形態1,3などでは、ボイド型枠10,30の長さ方向の端部が正弦曲線の山部の頂点となり、前記実施の形態2では、ボイド型枠20の長さ方向の端部と幅方向の端部が正弦曲線の山部の頂点となっていたが、
図13に示すように、ボイド型枠10の場合には、山部の頂点をボイド型枠の内側に移動させるとともに、両端部の位置を山部の頂点とゼロクロス点との間の点とすれば、側面の反射における共振についても低減できるので、共振現象の抑制効果が更に向上する。具体的には、幅方向波形z(y)の波長を短くするか、もしくは、長さ方向の寸法を長くするなどすればよい。ボイド型枠20,30等についても同様にすればよい。
【0043】
また、前記実施の形態1~11では、幅方向波形z(x)と長さ方向波形z(y)とを正弦曲線としたが、山部の頂点近傍の形状、もしくは、谷部の頂点近傍の形状、円弧状や二次曲線などから構成してもよい。これにより、正弦曲線の波長を変えることなく、凸部pや凹部qの形状を変えることができる。
また、前記実施の形態1~11では、山部の幅と谷部の幅を同じとしたが、山部の幅を狭くし谷部の幅を広くするなど、山部と谷部の一方を急峻な波形とし他方を緩やかな波形としてもよい。これにより、凹凸の形状が複雑になるので、共振現象の抑制効果を更に向上させることができる。なお、上記「幅」は、山部もしくは谷部の頂点の両側のゼロクロス点間の距離、もしくは、山部もしくは谷部の半値幅などを指す。
また、前記実施の形態1~11では、ボイド型枠10~70、及び、ボイド型枠40L~70Lの形状を全て平面視矩形としたが、正方形や多角形、あるいは、円形や楕円形であってもよい。
また、前記実施の形態1~11では、ボイド型枠10~70、及び、ボイド型枠40L~70Lを発泡樹脂から構成したが、発泡しない樹脂から構成してもよいし、鋼材や木材、紙等から構成してもよい。
【0044】
以上の通り、本態様によれば、ボイド型枠の上面に形成する凹凸を、幅方向に延長する幅方向波形と長さ方向に延長する長さ方向波形とを重ねた形状としたので、このボイド型枠をコンクリートスラブに適用すれば、スラブ厚を変えることなく、共振現象の発生を抑制できる。
【符号の説明】
【0045】
10 ボイド型枠、11 波型部分、12 矩形部分、13 上面、14 下面、
15 長辺側側面、16 短辺側側面、17 境界面、18 中間面、
p 凸部、q 凹部。