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特開2023-75949ワーキングジョイント用1成分型硬化性組成物の製造方法、目地構造体の製造方法および施工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023075949
(43)【公開日】2023-05-31
(54)【発明の名称】ワーキングジョイント用1成分型硬化性組成物の製造方法、目地構造体の製造方法および施工方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 71/02 20060101AFI20230524BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20230524BHJP
   C08G 65/336 20060101ALI20230524BHJP
【FI】
C08L71/02
C09K3/10 G
C08G65/336
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023022916
(22)【出願日】2023-02-16
(62)【分割の表示】P 2020500522の分割
【原出願日】2019-02-13
(31)【優先権主張番号】P 2018022932
(32)【優先日】2018-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】行本 定生
(72)【発明者】
【氏名】山下 浩平
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 隆博
(57)【要約】      (修正有)
【課題】圧縮復元率、変位追従性および耐久性に優れ、建築物のワーキングジョイントのシーリング材として使用可能な硬化物を提供し得る、硬化性組成物を提供する。
【解決手段】特定の反応性ケイ素基を1分子当たり平均1.2~5個有するポリオキシアルキレン系重合体、特定のシラン化合物、および特定量の4価の有機スズ化合物を含む、ワーキングジョイント用1成分型硬化性組成物とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)一般式(1)で表される反応性ケイ素基を1分子当たり平均1.2~5個有するポリオキシアルキレン系重合体、
(D)反応性ケイ素基を有するアミノシラン化合物同士を一部縮合させたシラン化合物、あるいは、反応性ケイ素基を有するアミノシラン化合物とアミノシラン以外のアルコキシシラン化合物とを一部縮合させたシラン化合物、および
(E)4価の有機スズ化合物を(A)成分100重量部に対して0.05重量部以上1重量部未満を混合し、得られた混合物を混練する工程を有する、ワーキングジョイント用1成分型硬化性組成物の製造方法:
-SiX・・・(1)
(式中、Xはそれぞれ独立に水酸基または加水分解性基を示す)。
【請求項2】
前記工程は、前記(A)成分、前記(D)成分および前記(E)成分に加えて、さらに、(B)一般式(2)で表される反応性ケイ素基を1分子当たり平均0.5~1.2個未満有するポリオキシアルキレン系重合体である反応性可塑剤を混合し、得られた混合物を混練する工程である、請求項1に記載のワーキングジョイント用1成分型硬化性組成物の製造方法:
-SiR 3-a・・・(2)
(式中、Rはそれぞれ独立に炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数7~20のアラルキル基を示す。Xは一般式(1)と同じ。aは1~3の整数を示す。)
【請求項3】
前記(B)成分が、(B1)1分子中に1個の一般式(2)で表される反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体を含む、請求項1または2に記載のワーキングジョイント用1成分型硬化性組成物の製造方法。
【請求項4】
前記(B)成分が、1分子中に水酸基を1個のみ有する開始剤にアルキレンオキシドを反応させて得られる(B’)反応性ケイ素基を導入可能な官能基を1個のみ有するポリオキシアルキレン系前駆重合体に、一般式(2)で表される反応性ケイ素基を導入して得られるものである、請求項1~3のいずれか1項に記載のワーキングジョイント用1成分型硬化性組成物の製造方法。
【請求項5】
前記(B)成分が、(B”)1分子中に水酸基を1個のみ有する開始剤と1分子中に水酸基を2個以上有する開始剤との混合物にアルキレンオキシドを反応させて得られる反応性ケイ素基を導入可能な官能基を有するポリオキシアルキレン系前駆重合体混合物に、一般式(2)で表される反応性ケイ素基を導入して得られるものである、請求項1~4のいずれか1項に記載のワーキングジョイント用1成分型硬化性組成物の製造方法。
【請求項6】
前記(A)成分および前記(B)成分のポリオキシアルキレン系重合体が、ポリオキシプロピレン系重合体である、請求項1~5のいずれか1項に記載のワーキングジョイント用1成分型硬化性組成物の製造方法。
【請求項7】
前記工程は、前記(A)成分、前記(D)成分および前記(E)成分、または前記(A)成分、前記(B)成分、前記(D)成分および前記(E)成分に加えて、さらに、(C1)一般式(1)または一般式(2)で表される反応性ケイ素基を有しないポリエーテル系可塑剤を混合し、得られた混合物を混練する工程である、請求項1~6のいずれか1項に記載のワーキングジョイント用1成分型硬化性組成物の製造方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載のワーキングジョイント用1成分型硬化性組成物の製造方法により得られたワーキングジョイント用1成分型硬化性組成物を、建築物のワーキングジョイントに充填し硬化させる工程を有する、目地構造体の製造方法。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか1項に記載のワーキングジョイント用1成分型硬化性組成物の製造方法により得られたワーキングジョイント用1成分型硬化性組成物を、建築物のワーキングジョイントに充填し硬化させる工程を有する、施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応性ケイ素基(特にトリアルコキシシリル基)を有するポリオキシアルキレン系重合体を含むワーキングジョイント用1成分型硬化性組成物の製造方法、目地構造体の製造方法および施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
「反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体」(「変成シリコーン」とも言う)は、室温においても湿分などによる反応性ケイ素基の加水分解反応などを伴うシロキサン結合の形成によって架橋することにより、ゴム状硬化物が得られるという性質を有することが知られている。反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体は、すでに工業的に生産され、シーリング材、接着剤、塗料などの用途の原料樹脂として広く使用されている。
【0003】
反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体は、反応性可塑剤およびシラン化合物などの種々の化合物を添加することにより、硬化物の物性を改善することが可能である(特許文献1~2)。
【0004】
反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体を含む硬化性組成物は、建築および土木分野において目地部分のシーリング材として広く使用されている。シーリング材はその硬化方法の違いにより、空気中の水分を利用して硬化させる1成分型と、主剤と硬化剤とを混合することにより硬化させる2成分型とがある。
【0005】
このうち1成分型は、主剤と硬化剤とを混合する手間が無く、計量ミスによる硬化不良も無いことから作業性に優れている。
【0006】
一方、建築物において、(a)日照量の変化および気温などの温度変化による外装部材の膨張および収縮、あるいは(b)各種振動および風圧などの影響による外装部材間の変位および動き(ムーブメント)、の大きな目地があり、ワーキングジョイントと呼ばれている。このワーキングジョイント用のシーリング材としては、一般に2成分型が使用されている。これは、2成分型は硬化性組成物全体で硬化が進み、硬化途中で目地が大きく変位しても硬化物の表面および内部に損傷を生じないため、すなわち硬化途中の変位追従性に優れているため、と考えられている。
【0007】
これに対し、1成分型は空気中の水分と接する表面から硬化が進むため、硬化途中で大きな変位を受ける場合、表面の硬化した部分と内部の未硬化部分との間に応力差が生じて、硬化物の亀裂などの損傷につながると考えられている。すなわち、1成分型は、硬化途中の変位追従性が悪いと考えられている。このため、従来、1成分型は変位の大きなワーキングジョイント用のシーリング材としては使用されてこなかった。
【0008】
これまでに、ワーキングジョイントに適用可能な、反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体を含む1成分型または2成分型の硬化性組成物が種々検討されている(特許文献3~12)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】WO2005/073322号公報
【特許文献2】特表2015-508419号公報
【特許文献3】特開2015-089911号公報
【特許文献4】WO2014-175358号公報
【特許文献5】WO2004/031299号公報
【特許文献6】特開2010-001380号公報
【特許文献7】特開2011-256246号公報
【特許文献8】特開2005-306891号公報
【特許文献9】特開2011-153309号公報
【特許文献10】WO2013/042702号公報
【特許文献11】特開2015-010162号公報
【特許文献12】特開2017-214541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述のような従来技術は、圧縮復元率、変位追従性および耐久性という観点からは、十分なものでなく、さらなる改善の余地があった。
【0011】
本発明の一実施形態は、前記問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、圧縮復元率、変位追従性および耐久性に優れ、建築物のワーキングジョイントのシーリング材として使用可能な硬化物を提供し得る、反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体を含む新規の1成分型硬化性組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。
【0013】
即ち、本発明の一実施形態に係る硬化性組成物の製造方法は、(A)一般式(1)で表される反応性ケイ素基を1分子当たり平均1.2~5個有するポリオキシアルキレン系重合体、(D)反応性ケイ素基を有するアミノシラン化合物同士を一部縮合させたシラン化合物、あるいは、反応性ケイ素基を有するアミノシラン化合物とアミノシラン以外のアルコキシシラン化合物とを一部縮合させたシラン化合物、および(E)4価の有機スズ化合物を(A)成分100重量部に対して0.05重量部以上1重量部未満を混合し、得られた混合物を混練する工程を有する、ワーキングジョイント用1成分型硬化性組成物の製造方法である:
-SiX・・・(1)
(式中、Xはそれぞれ独立に水酸基または加水分解性基を示す)。
【0014】
即ち、本発明の一実施形態に係る硬化性組成物は、(A)一般式(1)で表される反応性ケイ素基を1分子当たり平均1.2~5個有するポリオキシアルキレン系重合体、(D)反応性ケイ素基を有するアミノシラン化合物同士を一部縮合させたシラン化合物、あるいは、反応性ケイ素基を有するアミノシラン化合物とアミノシラン以外のアルコキシシラン化合物とを一部縮合させたシラン化合物、および(E)4価の有機スズ化合物を(A)成分100重量部に対して0.05重量部以上1重量部未満、を含むことを特徴とするワーキングジョイント用1成分型硬化性組成物である:
-SiX・・・(1)
(式中、Xはそれぞれ独立に水酸基または加水分解性基を示す)。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一実施形態によれば、圧縮復元率、変位追従性および耐久性に優れ、建築物のワーキングジョイントのシーリング材として適用可能な硬化物を提供し得る、反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体を含む1成分型硬化性組成物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態について詳細に説明する。
【0017】
本発明の一実施形態について以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能である。また、異なる実施形態または実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態または実施例についても、本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。なお、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。また、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上(Aを含みかつAより大きい)B以下(Bを含みかつBより小さい)」を意図する。
【0018】
〔1.本発明の一実施形態の技術的思想〕
本発明者が鋭意検討した結果、上述した先行技術文献3~12に記載の技術は、変位追従性および耐久性という観点から改善の余地があった。すなわち、十分な変位追従性および耐久性を有し、変位の大きなワーキングジョイントに適用可能なシーリング材は見出されていない。
【0019】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、今回驚くべきことに、上記一般式(1)で表される反応性ケイ素基を1分子当たり平均1.2~5個有するポリオキシアルキレン系重合体、反応性ケイ素基を有するアミノシラン化合物同士を一部縮合させたシラン化合物、あるいは、反応性ケイ素基を有するアミノシラン化合物とアミノシラン以外のアルコキシシラン化合物とを一部縮合させたシラン化合物、および4価の有機スズ化合物を上記ポリオキシアルキレン系重合体100重量部に対して0.05重量部以上1重量部未満を含むことで、1成分型であってもJIS A5758の耐久性区分9030に合格し、圧縮復元率、変位追従性にも優れ、建築物のワーキングジョイントのシーリング材として使用可能な、ワーキングジョイント用1成分型硬化性組成物の作製に成功した。
【0020】
〔2.硬化性組成物〕
本発明の一実施形態に係る硬化性組成物は、(A)一般式(1)で表される反応性ケイ素基を1分子当たり平均1.2~5個有するポリオキシアルキレン系重合体、(D)反応性ケイ素基を有するアミノシラン化合物同士を一部縮合させたシラン化合物、あるいは、反応性ケイ素基を有するアミノシラン化合物とアミノシラン以外のアルコキシシラン化合物とを一部縮合させたシラン化合物、および(E)4価の有機スズ化合物を(A)成分100重量部に対して0.05重量部以上1重量部未満、を含むものである:
-SiX・・・(1)
(式中、Xはそれぞれ独立に水酸基または加水分解性基を示す)。
また、本発明の一実施形態に係る硬化性組成物は、ワーキングジョイント用の1成分型硬化性組成物である。
【0021】
本明細書において、「本発明の一実施形態に係る硬化性組成物」を単に「本硬化性組成物」とも称する。本明細書において、「(A)一般式(1)で表される反応性ケイ素基を1分子当たり平均1.2~5個有するポリオキシアルキレン系重合体」を、単に「(A)成分」とも称する。本明細書において、「(D)反応性ケイ素基を有するアミノシラン化合物同士を一部縮合させたシラン化合物、あるいは、反応性ケイ素基を有するアミノシラン化合物とアミノシラン以外のアルコキシシラン化合物とを一部縮合させたシラン化合物」を、単に「(D)成分」とも称する。本明細書において、「(E)4価の有機スズ化合物」を、単に「(E)成分」とも称する。
【0022】
本硬化性組成物は、上記構成を有するため、1成分型のシーリング材として使用する場合であっても、JIS A5758の耐久性区分9030に合格し、圧縮復元率、および変位追従性にも優れる硬化物を提供できるという利点を有する。そのため、本硬化性組成物は、建築物のワーキングジョイントのシーリング材として好適である。
【0023】
(2-1.(A)成分)
本発明の一実施形態において、(A)成分が有する反応性ケイ素基としては、下記一般式(1)で表される反応性ケイ素基である。
-SiX・・・(1)
(式中、Xはそれぞれ独立に水酸基または加水分解性基を示す。)。
【0024】
加水分解性基としては、特に限定されず、従来公知の加水分解性基であればよい。加水分解性基としては、例えば水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基などがあげられる。これら加水分解性基の中では、水素原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、およびアルケニルオキシ基が好ましい。加水分解性基としては、加水分解性が穏やかで取扱いやすいという観点からアルコキシ基がより好ましい。加水分解性基としては、アルコキシ基の中でも、メトキシ基、エトキシ基、およびイソプロポキシ基がさらに好ましく、メトキシ基が最も好ましい。
【0025】
なお、ケイ素原子に結合する3個の加水分解性基(X)は同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0026】
一般式(1)で表される反応性ケイ素基としては、特に限定されない。一般式(1)で表される反応性ケイ素基としては、活性が高く、良好な硬化性が得られる点から、トリアルコキシシリル基が好ましい。トリアルコキシシリル基としては、具体的には、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリイソプロポキシシリル基がより好ましく、トリメトキシシリル基が最も好ましい。
【0027】
一般式(1)で表される反応性ケイ素基としてトリアルコキシシリル基を使用する場合(場合a)と一般式(1)の範囲外の反応性ケイ素基としてアルキルジアルコキシシリル基を使用する場合(場合b)とについて説明する。場合aでは、場合bと比較して、(A)成分を含む硬化性組成物が1成分型として使用されるときであっても硬化性組成物の内部まで速く硬化が進む。すなわち、アルキルジアルコキシシリル基などの一般式(1)の範囲外の反応性ケイ素基と比較して、トリアルコキシシリル基などの一般式(1)で表される反応性ケイ素基は、復元性、耐久性、および耐クリープ性の改善により寄与する。
【0028】
(A)成分が有する反応性ケイ素基は1分子当たり平均して、1.2~5個存在することが好ましく、1.2~4個存在することがより好ましく、1.2~3個存在することがさらに好ましい。(A)成分中の反応性ケイ素基が1分子あたり平均して1.2個未満である場合、得られる硬化性組成物の硬化性が不十分になる。そのため、当該硬化性組成物が提供し得る硬化物では、良好なゴム弾性が得られず、当該硬化物の復元性、耐久性、耐クリープ性が発現し難くなる。反応性ケイ素基は(A)成分の主鎖末端もしくは側鎖末端にあってもよいし、または、主鎖末端および側鎖末端の両方にあってもよい。特に、反応性ケイ素基が(A)成分の主鎖末端にのみあるときは、最終的に形成される硬化物中における有効網目長が長くなるため、高強度、および高伸びであり、かつ低弾性率を示すゴム状硬化物が得られやすくなるため好ましい。
【0029】
反応性ケイ素基のポリオキシアルキレン系重合体への導入方法は公知の方法で行えばよい。例えば以下の方法I~IIIがあげられる。
【0030】
方法I:水酸基などの官能基を有する有機重合体に、この官能基に対して反応性を示す活性基および不飽和基を有する化合物を反応させ、不飽和基を有する有機重合体を得る。次いで、得られた不飽和基を有する有機重合体に、ヒドロシリル化によって、反応性ケイ素基を有するヒドロシラン化合物を反応させる。
【0031】
方法Iで用いる反応性を示す活性基および不飽和基を有する化合物としては、例えば、塩化アリル、塩化メタリル、およびアリルグリシジルエーテルのような不飽和基含有エポキシ化合物などをあげることができる。
【0032】
方法Iで用いるヒドロシラン化合物としては、例えば、ハロゲン化シラン類、アルコキシシラン類、アシロキシシラン類、ケトキシメートシラン類などをあげることができるが、これらに限定されるものではない。
【0033】
ハロゲン化シラン類としては、例えば、トリクロロシラン、メチルジクロロシラン、ジメチルクロロシラン、フェニルジクロロシランなどをあげることができる。
【0034】
アルコキシシラン類としては、例えば、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリイソプロポキシシラン、1-[2-(トリメトキシシリル)エチル]-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、ジエトキシメチルシラン、ジメトキシメチルシラン、フェニルジメトキシシランなどをあげることができる。
【0035】
アシロキシシラン類としては、例えば、メチルジアセトキシシラン、フェニルジアセトキシシランなどをあげることができる。
【0036】
ケトキシメートシラン類としては、例えば、ビス(ジメチルケトキシメート)メチルシラン、ビス(シクロヘキシルケトキシメート)メチルシランなどをあげることができる。
【0037】
これらヒドロシラン化合物の中で、一般式(1)の反応性ケイ素基を有する(A)成分を得る場合には、加水分解性と反応の穏やかさとの点からトリアルコキシシラン類が好ましく、トリメトキシシラン、トリエトキシシランがより好ましい。
【0038】
なお、トリメトキシシリル基を有する(A)成分を得るためには、WO2007-040143号公報、特開2008-285585号公報に記載の方法により、トリエトキシシランを原料として、トリエトキシシリル基を有する重合体を合成した後、メタノールにより、トリエトキシシリル基をトリメトキシシリル基に変換する方法が好ましい。これは、トリメトキシシランは非常に不安定な化合物であるため、不均化反応を起こし、低沸点かつ自然発火性のモノシランを生成することがあるためである。またトリメトキシシランは人体、特に目に対する危険性が極めて高いために取り扱いが難しく、かつ入手が困難なためでもある。
【0039】
方法II:メルカプト基および反応性ケイ素基を有する化合物を、ラジカル開始剤および/またはラジカル発生源存在下でのラジカル付加反応によって、方法Iと同様にして得られた不飽和基を有する有機重合体の不飽和基部位に導入する方法などをあげることができる。
【0040】
方法IIで用いるメルカプト基および反応性ケイ素基を有する化合物としては、例えば、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、メルカプトメチルトリメトキシシラン、メルカプトメチルトリエトキシシランなどをあげることができるが、これらに限定されるものではない。
【0041】
方法III:分子中に水酸基、エポキシ基またはイソシアネート基などの官能基を有する有機重合体に、この官能基に対して反応性を示す官能基および反応性ケイ素基を有する化合物を反応させる。
【0042】
方法IIIのうち水酸基を有する有機重合体と、水酸基に対して反応性を示すイソシアネート基および反応性ケイ素基を有する化合物と、を反応させる方法としては、例えば、特開平3-47825号に示される方法などがあげられるが、これに限定されるものではない。
【0043】
方法IIIで用いるイソシアネート基および反応性ケイ素基を有する化合物としては、例えば、γ-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、イソシアネートメチルトリメトキシシラン、イソシアネートメチルトリエトキシシランなどがあげられるが、これらに限定されるものではない。
【0044】
γ-メルカプトプロピルトリメトキシシランおよびγ-イソシアネートプロピルトリメトキシシランを使用する場合は、トリメトキシシランを使用した場合のような不均化反応は進行しない。このため、方法Iにおいてトリメトキシシランを使用するよりも方法IIまたは方法IIIの方法を用いることが好ましい。
【0045】
一方、下記一般式(3)で表されるシラン化合物は不均化反応が進まない:
H-(SiR O)SiR -R-SiX・・・(3)
(式中、Xは一般式(1)に同じである。2m+2個のRはそれぞれ独立に炭化水素基を示す。Rは2価の有機基を示す。mは0~19の整数を示す)。
【0046】
このため、方法Iで、3個の加水分解性基が1つのケイ素原子に結合している基を導入する場合には、一般式(3)で表されるシラン化合物を用いることが好ましい。入手性およびコストの点から、2m+2個のRはそれぞれ独立に、炭素数1~20の炭化水素基が好ましく、炭素数1~8の炭化水素基がより好ましく、炭素数1~4の炭化水素基がさらに好ましい。Rは炭素数1~12の2価の炭化水素基が好ましく、炭素数2~8の2価の炭化水素基がより好ましく、炭素数2の2価の炭化水素基がさらに好ましい。mは1がもっとも好ましい。
【0047】
一般式(3)で示されるシラン化合物としては、例えば、1-[2-(トリメトキシシリル)エチル]-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1-[2-(トリメトキシシリル)プロピル]-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1-[2-(トリメトキシシリル)ヘキシル]-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンなどがあげられる。
【0048】
上記の方法Iまたは方法IIIの中で末端に水酸基を有する有機重合体とイソシアネート基および反応性ケイ素基を有する化合物とを反応させる方法は、比較的短い反応時間で高い転化率が得られるために好ましい。一方、方法Iで得られた反応性ケイ素基を有する有機重合体は、方法IIIで得られる反応性ケイ素基を有する有機重合体よりも低粘度であり、作業性の良い硬化性組成物が得られる。また、方法IIで得られる反応性ケイ素基を有する有機重合体は、メルカプトシランに基づく臭気が強いことがある。このため方法Iが特に好ましい。
【0049】
本発明の一実施形態において、(A)成分の主鎖構造であるポリオキシアルキレン系重合体は下記一般式(4)で示される繰り返し単位を有する重合体であることが好ましい:
-R-O-・・・(4)
(式中、Rは炭素数1~14の直鎖状または分岐状アルキレン基を示し、炭素数2~4の直鎖状または分岐状アルキレン基がより好ましい)。
【0050】
一般式(4)で示される繰り返し単位としては、例えば、-CHO-、-CHCHO-、-CHCH(CH)O-、-CHCH(C)O-、-CHC(CHO-、-CHCHCHCHO-などをあげることができる。
【0051】
(A)成分において、ポリオキシアルキレン系重合体の主鎖は、1種類だけの繰り返し単位からなっていてもよく、2種類以上の繰り返し単位からなっていてもよい。特に本発明の一実施形態に係る硬化性組成物がシーリング材などに使用される場合には、(A)成分の主鎖構造であるポリオキシアルキレン系重合体が、非晶質かつ比較的低粘度であるポリオキシプロピレン系重合体であることがより好ましい。
【0052】
ポリオキシアルキレン系重合体の合成法としては、例えば、(a)KOHなどのアルカリ触媒による重合法、(b)特開昭61-215623号に示される有機アルミニウム化合物とポルフィリンとを反応させて得られる錯体などの遷移金属化合物-ポルフィリン錯体触媒による重合法、(c)特公昭46-27250号、特公昭59-15336号、US3278457号、US3278458号、US3278459号、US3427256号、US3427334号、US3427335号などに示される複合金属シアン化物錯体触媒(例えば、亜鉛ヘキサシアノコバルテートグライム錯体触媒)による重合法、(d)特開平10-273512号に示されるポリホスファゼン塩からなる触媒を用いる重合法、(e)特開平11-060722号に示されるホスファゼン化合物からなる触媒を用いる重合法、などをあげることがきるが、これらに限定されるものではない。これら合成法の中では、複合金属シアン化物錯体触媒の存在下、開始剤にアルキレンオキシドを反応させる重合法が、分子量分布の狭い重合体を得られることから好ましい。
【0053】
複合金属シアン化物錯体触媒としては、Zn[Co(CN)(亜鉛ヘキサシアノコバルテート錯体)などをあげることができる。また、亜鉛ヘキサシアノコバルテート錯体などにアルコールおよび/またはエーテルが有機配位子として配位した触媒も使用できる。
【0054】
開始剤としては、「少なくとも2個の活性水素基を有する化合物」(以下、「活性水素含有化合物」とも称する。)が好ましい。活性水素含有化合物は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどの多価アルコール、数平均分子量500~20,000の直鎖および/または分岐ポリエーテル化合物などをあげることができる。
【0055】
アルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、イソブチレンオキシドなどをあげることができる。
【0056】
一般式(1)で表される反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体としては、例えば、(a)特公昭45-36319号、特公昭46-12154号、特開昭50-156599号、特開昭54-6096号、特開昭55-13767号、特開昭55-13468号、特開昭57-164123号、特公平3-2450号、US3632557号、US4345053号、US4366307号、US4960844などの各公報に提案されている重合体、および(b)特開昭61-197631号、特開昭61-215622号、特開昭61-215623号、特開昭61-218632号、特開平3-72527号、特開平3-47825号、特開平8-231707号の各公報に提案されている、数平均分子量6,000以上および分子量分布(Mw/Mn)が1.6以下の高分子量であり分子量分布が狭く、反応性ケイ素基を有する、ポリオキシアルキレン系重合体、などをあげることができる。このような反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体は1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0057】
一般式(1)で表される反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体は、直鎖状または分岐状のいずれでもよい。一般式(1)で表される反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体の数平均分子量(Mn)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(Gel permeation chromatography;GPC)(ポリスチレン換算)により測定される値であり、1,000~100,000が好ましく、2,000~50,000がより好ましく、3,000~35,000が特に好ましい。上記数平均分子量が、(a)1,000未満である場合、硬化物の伸びが不充分となる傾向があり、(b)100,000を越える場合、硬化性組成物が高粘度となるために作業性の点で不都合な傾向がある。GPCにより測定される、一般式(1)で表される反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、2以下が好ましく、1.5以下がより好ましく、1.4以下がさらに好ましい。
【0058】
本発明の一実施形態に係る(A)成分中には、本発明の一実施形態に係る効果を損なわない範囲でウレタン結合成分などの他の成分を含んでいてもよい。ウレタン結合成分としては特に限定されないが、イソシアネート基と活性水素基との反応により生成する基(以下、アミド含有基とも言う)をあげることができる。
【0059】
アミド含有基は下記一般式(5)で表される基である。
-NR-C(=O)-・・・(5)
(式中、Rは有機基または水素原子を示す)。
【0060】
アミド含有基は、具体的には、例えば、イソシアネート基と水酸基との反応、イソシアネート基とアミノ基との反応、イソシアネート基とイソシアネート基との反応、イソシアネート基とメルカプト基との反応などにより形成されるものをあげることができる。また、一般式(5)のRに活性水素原子を含むアミド結合部位とイソシアネート基との反応により形成されるものも、一般式(5)で表されるアミド含有基に含まれる。
【0061】
アミド含有基と反応性ケイ素基を有する有機重合体の工業的に容易な製造方法としては、例えば、末端に活性水素含有基を有する有機重合体に、過剰のポリイソシアネート化合物を反応させて、末端にイソシアネート基を有するポリウレタン系重合体とした後、あるいは同時に、該末端のイソシアネート基の全部または一部に下記一般式(6)で表されるケイ素化合物のW基を反応させる方法により製造されるものをあげることができる。
W-R-SiR 3-a・・・(6)
(式中、R、X、aは後述する一般式(2)と同じ。Rは2価の有機基を示し、炭素数1~20の炭化水素基がより好ましい。Wは水酸基、カルボキシ基、メルカプト基およびアミノ基(1級または2級)から選ばれる活性水素含有基を示す)。
【0062】
一般式(6)で表されるケイ素化合物としては、例えば、アミノ基含有シラン化合物、水酸基含有シラン化合物、メルカプト基含有シラン化合物などをあげることができる。
【0063】
これらの中で、一般式(6)のaが3である反応性ケイ素基を有する(A)成分を得る場合には、以下のシラン化合物をあげることができる。
【0064】
アミノ基含有シラン化合物としては、例えば、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、(N-フェニル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-エチルアミノイソブチルトリメトキシシラン、N-シクロヘキシルアミノメチルトリエトキシシラン、N-フェニルアミノメチルトリメトキシシランなどをあげることができる。
【0065】
水酸基含有シラン化合物としては、例えば、γ-ヒドロキシプロピルトリメトキシシランなどをあげることができる。
【0066】
メルカプト基含有シラン化合物としては、例えば、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシランなどをあげることができる。
【0067】
また、特開平6-211879号(US5364955号)、特開平10-53637号(US5756751号)、特開平10-204144号(EP0831108)、特開2000-169544号、特開2000-169545号に記載されている様に、各種のα,β-不飽和カルボニル化合物と一級アミノ基含有シラン化合物とのMichael付加反応物、または、各種の(メタ)アクリロイル基含有シラン化合物と一級アミノ基含有化合物とのMichael付加反応物も一般式(6)で表されるケイ素化合物として用いることができる。
【0068】
この製造方法に関連する文献としては、例えば、特公昭46-12154号(US3632557号)、特開昭58-109529号(US4374237号)、特開昭62-13430号(US4645816号)、特開平8-53528号(EP0676403)、特開平10-204144号(EP0831108)、特表2003-508561(US6197912号)、特開平6-211879号(US5364955号)、特開平10-53637号(US5756751号)、特開平11-100427号、特開2000-169544号、特開2000-169545号、特開2002-212415号、特許第3313360号、US4067844号、US3711445号、特開2001-323040号などをあげることができる。
【0069】
また、アミド含有基と反応性ケイ素基を有する重合体としては、例えば、末端に活性水素含有基を有する有機重合体と、下記一般式(7)で示される反応性ケイ素基含有イソシアネート化合物とを反応させることにより製造される重合体もあげることができる。
O=C=N-R-SiR 3-a・・・(7)
(式中、R、R、X、aは一般式(6)に同じである)。
【0070】
一般式(7)で表される反応性ケイ素基含有イソシアネート化合物としては、例えば、γ-トリメトキシシリルプロピルイソシアネート、γ-トリエトキシシリルプロピルイソシアネート、γ-メチルジメトキシシリルプロピルイソシアネート、γ-メチルジエトキシシリルプロピルイソシアネート、トリメトキシシリルメチルイソシアネート、トリエトキシメチルシリルメチルイソシアネート、ジメトキシメチルシリルメチルイソシアネート、ジエトキシメチルシリルメチルイソシアネートなどをあげることができるが、これらに限定されるものではない。また、特開2000-119365号(米国特許6046270号)に記載されている様に、一般式(6)のケイ素化合物と、過剰の前記ポリイソシアネート化合物を反応させて得られる化合物もまた、一般式(7)で表される反応性ケイ素基含有イソシアネート化合物として用いることができる。
【0071】
この製造方法に関連する文献としては、例えば、特開平11-279249号(US5990257号)、特開2000-119365号(US6046270号)、特開昭58-29818号(US4345053号)、特開平3-47825号(US5068304号)、特開平11-60724号、特開2002-155145号、特開2002-249538号、WO03/018658、WO03/059981などをあげることができる。
【0072】
末端に活性水素含有基を有する有機重合体としては、例えば、末端に水酸基を有するポリオキシアルキレン系重合体(ポリエーテルポリオール)、ポリアクリルポリオール、ポリエステルポリオール、末端に水酸基を有する飽和炭化水素系重合体(ポリオレフィンポリオール)、ポリチオール化合物、ポリアミン化合物などをあげることができる。これらの中でも、ポリエーテルポリオール、ポリアクリルポリオール、および、ポリオレフィンポリオールは得られる有機重合体のガラス転移温度が比較的低く、得られる硬化物が耐寒性に優れることから好ましい。特に、ポリエーテルポリオールは得られる有機重合体の粘度が低く、作業性が良好であり、硬化性組成物の深部硬化性および硬化物の接着性が良好であるために特に好ましい。また、ポリアクリルポリオールおよび飽和炭化水素系重合体は得られる硬化物の耐候性、耐熱性が良好であるためにより好ましい。
【0073】
ポリエーテルポリオールとしては、特に限定されることはないが、全分子平均で分子末端当り、少なくとも0.7個の水酸基を有するものが好ましい。ポリエーテルポリオールとしては、例えば、従来のアルカリ金属触媒を使用して製造したポリオキシアルキレン系重合体、複合金属シアン化物錯体触媒またはセシウム触媒の存在下、少なくとも2つの水酸基を有するポリヒドロキシ化合物などの開始剤に、アルキレンオキシドを反応させて製造されるポリオキシアルキレン系重合体などをあげることができる。
【0074】
上記重合法の中でも、複合金属シアン化物錯体触媒を使用する重合法は、より低不飽和度で、分子量分布(Mw/Mn)が狭く、より低粘度でかつ、高耐酸性、および高耐候性のポリオキシアルキレン系重合体を得ることが可能であるため好ましい。
【0075】
前記ポリアクリルポリオールとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(共)重合体を主鎖とし、かつ、分子内に水酸基を有するポリオールをあげることができる。この重合体の合成法は、分子量分布が狭く、低粘度化が可能なことからリビングラジカル重合法が好ましく、原子移動ラジカル重合法がさらに好ましい。また、特開2001-207157号に記載されている重合体、具体的にはアクリル酸アルキルエステル系単量体を高温および高圧で連続塊状重合することによって得られる重合体、を用いるのが好ましい。
【0076】
前記ポリイソシアネート化合物としては、例えば、芳香族系ポリイソシアネート、脂肪族系ポリイソシアネートをあげることができる。
【0077】
芳香族系ポリイソシアネートとしては、例えば、トルエン(トリレン)ジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどをあげることができる。
【0078】
脂肪族系ポリイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどをあげることができる。
【0079】
(2-2.(B)成分)
本硬化性組成物は、さらに、(B)一般式(2)で表される反応性ケイ素基を1分子当たり平均0.5~1.2個未満有するポリオキシアルキレン系重合体である反応性可塑剤を含むことが好ましい:
-SiR 3-a・・・(2)
(式中、Rはそれぞれ独立に炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数7~20のアラルキル基を示す。Xは一般式(1)と同じ。aは1~3の整数を示す。)。
【0080】
上記構成によると、得られる硬化性組成物は低粘度となり、優れた作業性を有するものとなる。本明細書において、「(B)一般式(2)で表される反応性ケイ素基を1分子当たり平均0.5~1.2個未満有するポリオキシアルキレン系重合体である反応性可塑剤」を単に「(B)成分」とも称する。
【0081】
本発明の一実施形態に係る(B)成分は、前記(A)成分中の反応性ケイ素基と架橋構造を形成することにより、(A)成分単独で有する硬化性組成物が提供する硬化物の脆い機械物性を改善することができる。また低分子量の(B)成分を使用することにより、当該(B)成分は反応性可塑剤あるいは希釈剤としての機能を発現し、組成物の低粘度化、組成物の作業性の改善をすることができる。
【0082】
本発明の一実施形態に係る(B)成分中の反応性ケイ素基としては、下記一般式(2)で表される反応性ケイ素基を用いることができる。
-SiR 3-a・・・(2)
(式中、Rはそれぞれ独立に炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数7~20のアラルキル基を示す。Xは一般式(1)と同じ。aは1~3の整数を示す。)
(B)成分中の反応性ケイ素基としては、特に限定されず、具体的には、例えば、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリイソプロポキシシリル基、ジメトキシメチルシリル基、ジエトキシメチルシリル基、ジエトキシエチルシリル基、ジイソプロポキシメチルシリル基、(クロロメチル)ジメトキシシリル基、(メトキシメチル)ジメトキシシリル基、メトキシジメチルシリル基などをあげることができる。
【0083】
一般式(2)においてaが2である反応性ケイ素基は、(A)成分単独で有する硬化性組成物が提供する硬化物の脆さを改善する効果が高く、すなわち、硬化物のモジュラスを適度に低下させ、良好な伸びを確保することができ、硬化性組成物の貯蔵安定性も確保しやすいためより好ましい。一般式(2)においてaが2である反応性ケイ素基としては、具体的には、例えば、ジメトキシメチルシリル基、ジエトキシメチルシリル基、ジエトキシエチルシリル基、ジイソプロポキシメチルシリル基などが好ましく、ジメトキシメチルシリル基、ジエトキシメチルシリル基がより好ましく、ジメトキシメチルシリル基が特に好ましい。
【0084】
一般式(2)においてaが3である反応性ケイ素基は、(A)成分が有する速硬化性を保持したまま、低粘度化および機械的物性のバランスを向上させられるため好ましい。一般式(2)においてaが3である反応性ケイ素基としては、具体的には、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリイソプロポキシシリル基などが好ましく、加水分解活性の高い点からトリメトキシシリル基が特に好ましい。
【0085】
本発明の一実施形態では、硬化物の脆さを改善し、硬化物のモジュラスを適度に低下させ、良好な伸びを確保し、耐久性およびクリープ性を改善する点から、(B)成分としては、一般式(2)においてaが2である反応性ケイ素基が好ましく、特にジメトキシメチルシリル基が好ましい。
【0086】
本発明の一実施形態において、(B)成分の主鎖構造であるポリオキシアルキレン系重合体は前記一般式(4)で示される繰り返し単位を用いることができる。
【0087】
(B)成分において、ポリオキシアルキレン系重合体の主鎖は、1種類だけの繰り返し単位からなっていてもよく、2種類以上の繰り返し単位からなっていてもよい。特に本発明の一実施形態に係る硬化性組成物がシーリング材などに使用される場合には、(B)成分の主鎖構造であるポリオキシアルキレン系重合体が、非晶質かつ比較的低粘度であるポリオキシプロピレン系重合体であることがより好ましい。
【0088】
反応性ケイ素基を(B)成分に導入する方法としては、前述の(A)成分へ反応性ケイ素基を導入する方法(方法I~方法III)と同じ方法で行うことができる。ただし、(B)成分への反応性ケイ素基の導入個数は、1分子当たり平均し0.5~1.2個未満が好ましく、0.5~1.1個がより好ましく、0.5~1個がさらに好ましい。
【0089】
具体的には、方法Iでは、両末端にアリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体に対し、ヒドロシラン化合物を反応させる方法、
方法IIでは、両末端にアリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体に対し、メルカプトシラン化合物を反応させる方法、
方法IIIでは、両末端が水酸基のポリオキシアルキレン系重合体に対し、イソシアネートシラン化合物を反応させる方法があげられる。
【0090】
ただし、前述の(A)成分への導入方法と同様、方法Iが、残留原料の除去性および反応性の点で好ましい。また、得られる有機重合体がウレタン結合およびウレア結合のような耐熱性の低下が懸念される構造を有しない点からも方法Iが好ましい。
【0091】
なお、上記方法で反応性ケイ素基を導入した場合、確率的に一分子中に反応性ケイ素基が平均して複数個導入されたもの、1個導入されたもの、全く導入されないものが同時に生成する。一分子中に反応性ケイ素基が平均して複数個導入されたものには、本発明の一実施形態に係る硬化物の脆さを改善する効果は少なく、(A)成分単独で有する硬化性組成物が提供する硬化物のモジュラスを維持あるいは向上させる場合がある。反応性ケイ素基が1個導入されたものあるいは全く導入されていないものは本発明の一実施形態に係る硬化物に柔軟性を付与でき、(A)成分単独で有する硬化性組成物が提供する硬化物のモジュラスを低下させる効果がある。しかし、全く反応性ケイ素基が導入されていないものは、反応性がなく、本発明の一実施形態に係る硬化性組成物を用いた硬化物から経時的に硬化物表面に流出し、塗膜汚染などの問題を引き起こす可能性がある。
【0092】
このため、本硬化性組成物では、(B)成分が、(B1)1分子中に1個の一般式(2)で表される反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体を含むことが好ましい。(B)成分は、「(B1)1分子中に1個の一般式(2)で表される反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体」が主成分であることがより好ましい。すなわち、好ましい(B)成分は、例えば、前述の反応性シリル基を導入する方法I~方法IIIにおいて、「(B’)反応性ケイ素基を導入可能な官能基を1個のみ有するポリオキシアルキレン系前駆重合体」と、一般式(2)で表される反応性ケイ素基含有化合物1個とを選択的に反応させることにより得ることができる。
【0093】
本明細書において、「(B1)1分子中に1個の一般式(2)で表される反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体」を単に「(B1)成分」とも称する。(B1)成分を得る具体的な方法としては、例えば、1分子中に水酸基を1個のみ有する開始剤を用いて、複合金属シアン化物錯体などの触媒存在下、プロピレンオキシドおよびエチレンエキシドなどのアルキレンオキシドを反応させた「(B’)反応性ケイ素基を導入可能な官能基を1個のみ有するポリオキシアルキレン系前駆重合体」に、一般式(2)で表される反応性ケイ素基を有するヒドロシラン化合物を反応させる方法があげられる。
【0094】
本硬化性組成物では、(B)成分が、1分子中に水酸基を1個のみ有する開始剤にアルキレンオキシドを反応させて得られる(B’)反応性ケイ素基を導入可能な官能基を1個のみ有するポリオキシアルキレン系前駆重合体に、一般式(2)で表される反応性ケイ素基を導入して得られることが好ましい。
【0095】
また、(B1)成分を得る具体的な方法としては、例えば、「(B”)1分子中に水酸基を1個のみ有する開始剤と1分子中に水酸基を2個以上有する開始剤との混合物を用いて、複合金属シアン化物錯体などの触媒存在下、プロピレンオキシドおよびエチレンエキシドなどのアルキレンオキシドを反応させた反応性ケイ素基を導入可能な官能基を有するポリオキシアルキレン系前駆重合体混合物」に、一般式(2)で表される反応性ケイ素基を有するヒドロシラン化合物を反応させる方法があげられる。この方法で(B1)成分を得る場合、得られる反応生成物中、(B1)成分が50%以上含まれていることが好ましく、60%以上がより好ましく、70%以上がさらに好ましい。50重量%未満の場合、硬化物表面の汚染性の改善効果が不十分であったり、もしくは、高モジュラスとなるため建築用シーリング材としては適さない傾向にある。
【0096】
本硬化性組成物では、(B)成分が、(B”)1分子中に水酸基を1個のみ有する開始剤と1分子中に水酸基を2個以上有する開始剤との混合物にアルキレンオキシドを反応させて得られる反応性ケイ素基を導入可能な官能基を有するポリオキシアルキレン系前駆重合体混合物に、一般式(2)で表される反応性ケイ素基を導入して得られることが好ましい。
【0097】
1分子中に水酸基を1個のみ有する開始剤としては、例えば、(a)メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノールなどの一価の1級、2級、3級アルコール;(b)アリルアルコール、メタリルアルコール、プロペニルアルコールなどの1価の不飽和基含有アルコールをあげることができる。また、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオールなどのジオール系化合物をモノアリルエーテル化した上記ジオール系化合物のモノアリルエーテル化体、上記ジオール系化合物をモノビニルエーテル化した上記ジオール系化合物のモノビニルエーテル化体、などの1価の不飽和基含有アルコール、および上記ジオール系化合物をモノアルキルエーテル化した上記ジオール系化合物のモノアルキルエーテル化体などの1価の飽和アルコール、などをあげることができるが、これらに限られるものではない。
【0098】
上記の1価の不飽和基含有アルコールを使用する場合、具体的には、別々の末端に不飽和基および水酸基をそれぞれ有するポリオキシアルキレン系前駆重合体を使用する場合について説明する。この場合は、例えば、(a)イソシアネートシランを水酸基へ反応させるか、または(b)ヒドロシラン化合物をほぼ定量的に不飽和基へ反応させることにより、それぞれ1分子に1個の反応性ケイ素基が導入されたポリオキシアルキレン系重合体を得ることができる。なお、別々の末端に不飽和基および水酸基をそれぞれ有するポリオキシアルキレン系前駆重合体とヒドロシラン化合物との反応では、ヒドロシラン化合物は、わずかに水酸基への導入(水酸基との反応)があるものの、ほぼ定量的に不飽和基と反応し得る。
【0099】
開始剤の種類としては、反応性および入手性に優れることから、アルコールが好ましく、特に炭素数が3~7のアルコールが最も好ましい。炭素数が1ないし2のアルコールは沸点が低く、液体として安定になりにくいため開始剤としては適さない。一方、炭素数が8以上のアルコールの場合、得られた前駆重合体に反応性ケイ素基を導入する場合に反応性が低くなる傾向がある。アルコールの中では、n-ブタノールが最も好ましい。
【0100】
1分子中に水酸基を2個以上有する開始剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどの多価アルコール、数平均分子量500~20,000の直鎖および/または分岐ポリエーテル化合物などをあげることができる。
【0101】
反応性ケイ素基を有するヒドロシラン化合物としては、例えば、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、ジメトキシメチルシラン、ジエトキシメチルシランなどをあげることができる。
【0102】
(B)成分の数平均分子量には制限はないが、1,000~15,000が好ましく、3,000~10,000がより好ましく、3,000~8,000以下が特に好ましい。(B)成分の数平均分子量が、(a)1,000未満である場合、硬化物の表面に流出し塗膜表面を汚染する場合があり、(b)15,000超えである場合、組成物の低粘度化、作業性改善の効果が少なくなる場合がある。また、低粘度化の効果から、(B)成分の数平均分子量は、(A)成分の数平均分子量よりも1,000以上小さいことが好ましく、3,000以上小さいことがより好ましい。なお、(B)成分の数平均分子量は、GPC(ポリスチレン換算)により測定される値である。
【0103】
(B)成分の使用量は特に限定はないが、(A)成分100重量部に対し15~200重量部が好ましく、20~100重量部がより好ましく、25~80重量部が特に好ましい。(B)成分の使用量が(A)成分100重量部に対し、(a)15重量部未満である場合、本発明の一実施形態に係る効果が得られない場合があり、(b)200重量部超えである場合、硬化性組成物の復元性、耐久性、耐クリープ性を損なう場合がある。
【0104】
(B)成分は(A)成分と反応性を有し、架橋構造を形成することが可能なため、低分子量の(B)成分を使用した場合は、従来の可塑剤を多く使用する場合に比べてシーリング材の可塑剤汚染性を改善する効果が期待できる。また、硬化物表面のタックを低減し、表面に埃や塵が付着し難くする効果が期待できる。また、組成物の作業性を改善し、特に低温での糸引き性を改善する効果が期待できる。
【0105】
本硬化性組成物では、(A)成分および(B)成分のポリオキシアルキレン系重合体が、ポリオキシプロピレン系重合体であることが好ましい。
【0106】
(2-3.(C)成分)
本発明の一実施形態に係る硬化性組成物には、粘度調整、作業性改善などのために、「(C)一般式(1)または一般式(2)で表される反応性ケイ素基を有しない可塑剤」を添加することができる。本明細書において、「(C)一般式(1)または一般式(2)で表される反応性ケイ素基を有しない可塑剤」を単に「(C)成分」とも称する。
【0107】
(C)成分としては、例えば、「(C1)一般式(1)または一般式(2)で表される反応性ケイ素基を有しないポリエーテル系可塑剤」、「(C2)フタル酸エステル系可塑剤」、および高分子可塑剤などをあげることができる。本明細書において、「(C1)一般式(1)または一般式(2)で表される反応性ケイ素基を有しないポリエーテル系可塑剤」を単に「(C1)成分」とも称する。本明細書において、「(C2)フタル酸エステル系可塑剤」を単に「(C2)成分」とも称する。
【0108】
(C1)成分としては、例えば、(a)ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリエーテルポリオール、あるいは(b)これらポリエーテルポリオールのヒドロキシ基をエステル基、エーテル基などに変換した誘導体、などがあげられる。これら(C1)成分を使用すると、得られる硬化性組成物の表面硬化性、および深部硬化性が改善され、当該硬化性組成物の貯蔵後の硬化遅延も抑制されることから好ましい。これら(C1)成分の中でもポリプロピレングリコールが特に好ましい。
【0109】
(C2)成分としては、例えば、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジノルマルヘキシル、フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)、フタル酸ジノルマルオクチル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジイソウンデシル、フタル酸ビスブチルベンジルなどがあげられる。
【0110】
高分子可塑剤としては、例えば、(a)ビニル系モノマーを種々の方法で重合して得られるビニル系重合体;(b)ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールエステルなどのポリアルキレングリコールのエステル類;(c)セバシン酸、アジピン酸、アゼライン酸、フタル酸などの2塩基酸とエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールなどの2価アルコールから得られるポリエステル系可塑剤;(d)ポリスチレンやポリ-α-メチルスチレンなどのポリスチレン類;(e)ポリブタジエン、ポリブテン、ポリイソブチレン、ブタジエン-アクリロニトリル、ポリクロロプレンなどがあげられる。
【0111】
高分子可塑剤の中では、(A)成分および(B)成分の重合体と相溶するものが好ましく、また、耐候性および耐熱性の点からビニル系重合体が好ましい。ビニル系重合体の中でもアクリル系重合体および/またはメタクリル系重合体がより好ましく、ポリアクリル酸アルキルエステルなどアクリル系重合体が特に好ましい。これらの重合体の合成法としては、分子量分布が狭く、低粘度化が可能なことからリビングラジカル重合法が好ましく、原子移動ラジカル重合法が更に好ましい。また、特開2001-207157号公報に記載されているアクリル酸アルキルエステル系単量体を高温および高圧で連続塊状重合することによって得た、いわゆるSGOプロセスによる重合体を用いるのが好ましい。このSGOプロセスによる重合体(可塑剤)は、東亞合成株式会社からアルフォンという商品名で販売されている。
【0112】
本硬化性組成物は、さらに、(C1)一般式(1)または一般式(2)で表される反応性ケイ素基を有しないポリエーテル系可塑剤を含むことが好ましい。(C1)成分または高分子可塑剤を使用する場合(場合c)について説明する。場合cでは、重合体成分を分子中に含まない可塑剤である低分子可塑剤を使用した場合と比較して、初期の物性を長期にわたり維持することができる。さらに、場合cでは、本発明の一実施形態に係る硬化性組成物の硬化物にアルキド塗料を塗布した場合の乾燥性(塗装性ともいう)を改良することができる。
【0113】
(C1)成分または高分子可塑剤の数平均分子量は500~15,000が好ましく、800~10,000がより好ましく、1,000から8,000がさらに好ましく、1,000~5,000が特に好ましく、1,000~3,000が最も好ましい。(C1)成分または高分子可塑剤の数平均分子量が低すぎる(例えば500未満である)場合、熱や降雨により可塑剤が経時的に流出し、初期の物性を長期にわたり維持できず、アルキド塗装性が改善できない。また、(C1)成分または高分子可塑剤の数平均分子量が高すぎる(例えば15,000を超える)場合、粘度が高くなり、作業性が悪くなる。(C1)成分または高分子可塑剤の分子量分布は特に限定されないが、1.8未満が好ましく、1.6以下がより好ましく、1.5以下がさらに好ましく、1.4以下が特に好ましく、1.3以下が最も好ましい。
【0114】
(C1)成分または高分子可塑剤の使用量は、(A)成分と(B)成分との合計量100重量部に対して0~200重量部が好ましく、30~170重量部がより好ましく、50~150重量部が特に好ましい。
【0115】
(C)成分の数平均分子量はビニル系重合体の場合はGPC法(ポリスチレン換算)で、ポリエーテル系重合体の場合は末端基分析法で測定される。また、分子量分布(Mw/Mn)はGPC法(ポリスチレン換算)で測定される。
【0116】
上記以外の(C)成分としては、例えば、(a)ジオクチルアジペート、ジオクチルセバケート、ジブチルセバケート、コハク酸ジイソデシルなどの非芳香族二塩基酸エステル類;(b)オレイン酸ブチル、アセチルリシリノール酸メチルなどの脂肪族エステル類;(c)トリクレジルホスフェート、トリブチルホスフェートなどのリン酸エステル類;(d)トリメリット酸エステル類;(e)塩素化パラフィン類;(f)アルキルジフェニル、部分水添ターフェニルなどの炭化水素系油;(g)プロセスオイル類;(h)エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸ベンジルなどのエポキシ可塑剤類;(i)上記のフタル酸エステル類を水素添加して得られるシクロヘキサンジカルボキシレート類をあげることができる。
【0117】
上記であげた比較的低分子量の可塑剤は、硬化性組成物を施工した周辺の基材を汚染することがあるため、使用量は少ない方が望ましい。特に多孔質の石材において汚染が発生し易い傾向にあり、御影石、大理石、サイディングボードなどは可塑剤の染み出しが生じ易く、美観を損なうことがある。このような美観の低下を抑えるためには、「(C2)フタル酸エステル系可塑剤」のような低分子量可塑剤の使用量は、(A)成分と(B)成分との合計量100重量部に対して200重量部以下が好ましく、100重量部以下がより好ましく、50重量部以下がさらに好ましい。汚染性を生じない硬化性組成物を得たい場合は、低分子量可塑剤は全く使用しないことが最も望ましい。
【0118】
硬化性組成物上に塗料を塗布する場合は、汚染性を低下させない範囲で(C2)フタル酸エステル系可塑剤を使用することが好ましい。(C2)フタル酸エステル系可塑剤を使用することで、硬化性組成物から得られる硬化物と塗膜との密着性が向上し、剥がれの問題が改善できるためである。(C2)フタル酸エステル系可塑剤の使用量は、具体的には、(A)成分と(B)成分との合計量100重量部に対して1~30重量部が好ましく、2~25重量部がより好ましく、3~20重量部が特に好ましい。
【0119】
なお、これら(C)成分は、硬化性組成物の製造時または重合体の製造時のいずれでも添加することが可能である。
【0120】
本硬化性組成物をワーキングジョイント用に用いる場合、(C)成分の使用量は、(A)成分と(B)成分との合計量100重量部に対して10~200重量部が好ましく、30~170重量部がより好ましく、50~150重量部が特に好ましい。(C)成分の使用量が上記範囲内である場合、(C2)成分の使用量は、(A)成分と(B)成分との合計量100重量部に対して10~200重量部が好ましく、10~170重量部がより好ましく、15~150重量部が特に好ましい。
【0121】
(C)成分は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、(C1)成分および/または高分子可塑剤と(C2)成分とを併用してもよい。2種以上併用する場合、(C1)成分と(C2)成分との組合せが特に好ましい。この場合、硬化性および可塑剤の表面への移行を抑える点から(C2)成分よりも、(C1)成分および/または高分子可塑剤を多く添加することが好ましい。
【0122】
(2-4.(D)成分)
本発明の一実施形態に係る(D)成分は、硬化性組成物の復元性を改善する効果がある。
【0123】
(D)成分は、(D)アミノシランの反応性ケイ素基を単独あるいはその他のアルコキシシラン化合物と一部縮合させたシラン化合物、ともいえる。
【0124】
(D)成分は、「(D1)反応性ケイ素基を有するアミノシラン化合物同士を一部縮合させて得られるシラン化合物」(以下、「(D1)成分」とも称する。)、または、「(D2)反応性ケイ素基を有するアミノシラン化合物とアミノシラン以外のアルコキシシラン化合物とを一部縮合させて得られるシラン化合物」(以下、「(D2)成分」とも称する。)の何れか1つを含むシラン化合物であってもよい。(D1)成分において、反応性ケイ素基を有するアミノシラン化合物は1種類の使用でもよく、2種類以上を併用してもよい。(D1)成分の縮合は、反応性ケイ素基を有するアミノシラン化合物の反応性ケイ素基同士の一部縮合であることが好ましい。(D2)成分において、反応性ケイ素基を有するアミノシラン化合物は1種類の使用でもよく、2種類以上を併用してもよい。(D2)成分において、アルコキシシラン化合物は1種類の使用でもよく、2種類以上を併用してもよい。(D2)成分の縮合は、反応性ケイ素基を有するアミノシラン化合物の反応性ケイ素基と、アルコキシシラン化合物のアルコキシ基との一部縮合であることが好ましい。
【0125】
(D)成分は、前述の一般式(2)で表される反応性ケイ素基を有するアミノシラン化合物同士を一部縮合させたシラン化合物、あるいは、前述の一般式(2)で表される反応性ケイ素基を有するアミノシラン化合物とアミノシラン以外のアルコキシシラン化合物とを一部縮合させたシラン化合物であることが好ましい。
【0126】
反応性ケイ素基を有するアミノシラン化合物としては、例えば、N-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-2-アミノエチル-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-1-アミノメチルトリエトキシシラン、N-n-ブチル-3-アミノプロピルトリメトキシシランなどがあげられる。反応性ケイ素基を有するアミノシラン化合物としては、これらの中から1種を使用してもよく、または2種以上を併用することもできる。
【0127】
アルコキシシラン化合物としては、例えば、(a)メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、メチルトリアセトキシシランなどの炭化水素基含有シラン類;(b)オルトケイ酸テトラメチル(テトラメトキシシランないしはメチルシリケート)、オルトケイ酸テトラエチル(テトラエトキシシランないしはエチルシリケート)、オルトケイ酸テトラプロピル、オルトケイ酸テトラブチルなどのシリケート化合物類;(c)3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシランなどのエポキシ基含有シラン類;(d)ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-アクリロオキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロイルオキシメチルトリメトキシシランなどのビニル型不飽和基含有シラン類;(e)3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、メルカプトメチルトリメトキシシラン、メルカプトメチルトリエトキシシランなどのメルカプト基含有シラン類;(f)1,3,5-トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートなどのイソシアヌレートシラン類;(g)またはこれらの部分加水分解縮合物、などがあげられる。アルコキシシラン化合物としては、これらの中から1種または2種以上を併用することもできる。
【0128】
(D)成分の具体例としては、例えば、X-40-2651(信越化学工業株式会社製)、MS3301(JNC株式会社製)、MS3302(JNC株式会社製)、DYNASYLAN1146(EVONIK社製)などがあげられる。
【0129】
(D)成分の使用量は(A)成分と(B)成分との合計100重量部に対し、0.1~10重量部が好ましく、0.2~5重量部がより好ましく、0.5~4重量部がさらに好ましい。(D)成分の使用量が(A)成分と(B)成分との合計100重量部に対し、(a)0.1重量部未満である場合、復元性が不十分となる傾向があり、(b)10重量部を超える場合、硬化性が低下する傾向がある。
【0130】
(2-5.(E)成分)
本発明の一実施形態に係る(E)成分は(A)成分の硬化触媒(シラノール縮合触媒)として使用される。4価の錫化合物を使用することにより、硬化速度および貯蔵安定性に優れた1成分型硬化性組成物を容易に得ることができる。
【0131】
(E)成分の具体例としては、例えば、ジメチル錫ジアセテート、ジメチル錫ビス(アセチルアセトナート)、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫マレエート、ジブチル錫フタレート、ジブチル錫ジオクタノエート、ジブチル錫ビス(2-エチルヘキサノエート)、ジブチル錫ビス(メチルマレエート)、ジブチル錫ビス(エチルマレエート)、ジブチル錫ビス(ブチルマレエート)、ジブチル錫ビス(オクチルマレエート)、ジブチル錫ビス(トリデシルマレエート)、ジブチル錫ビス(ベンジルマレエート)、ジブチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ビス(エチルマレエート)、ジオクチル錫ビス(オクチルマレエート)、ジブチル錫ジメトキサイド、ジブチル錫ビス(ノニルフェノキサイド)、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ビス(アセチルアセトナート)(「ジブチル錫ジアセチルアセトナート」とも称する。)、ジブチル錫ビス(エチルアセトアセトナート)、ジブチル錫オキサイドとシリケート化合物との反応物、ジブチル錫オキサイドとフタル酸エステルとの反応物、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ビス(アセチルアセトナート)、ジオクチル錫オキサイドとシリケート化合物との反応物、などの4価の有機錫化合物があげられるが、これらに限定されるものではない。
【0132】
これら4価の有機錫化合物の中で、入手性、硬化性、接着性等に優れることから、ジブチル錫系化合物もしくはジオクチル錫系化合物が好ましく、毒性が低いとされる点からジオクチル錫系化合物がより好ましい。ジオクチル錫系化合物の中でも、作業性の点からジオクチル錫ジカルボキシレートがさらに好ましく、ジオクチル錫ジラウレートが特に好ましい。
【0133】
(E)成分の使用量は(A)成分と(B)成分との合計100重量部に対して0.05重量部以上1重量部未満が好ましく、0.1~0.7重量部がより好ましく、0.1~0.5重量部がさらに好ましい。(E)成分の使用量が(A)成分と(B)成分との合計100重量部に対して、(a)0.05重量部未満である場合、触媒としての機能が十分発現しない場合、および計量誤差により硬化速度に影響を与える虞があり、(b)1重量部以上である場合、得られる硬化性組成物の表面の硬化が速くなり、硬化途中で大きな変位を受けた場合、硬化性組成物の表面と内部との間に歪が生じ、硬化物の亀裂の原因となる場合がある。
【0134】
(2-6.各種添加剤)
本発明の一実施形態に係る硬化性組成物には、硬化性組成物または硬化物の諸物性を調整する目的で、上記以外の各種添加剤を配合することができる。各種添加剤としては、例えば、充填剤、接着性付与剤、溶剤、希釈剤、タレ防止剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、物性調整剤、粘着付与樹脂、エポキシ基を含有する化合物、光硬化性物質、酸素硬化性物質、エポキシ樹脂、表面性改良剤、発泡剤、硬化性調整剤、難燃剤、シリケート、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、オゾン劣化防止剤、リン系過酸化物分解剤、滑剤、顔料、発泡剤、防蟻剤、防かび剤などをあげることができる。
【0135】
本発明の一実施形態に係る硬化性組成物には充填剤を添加することができる。充填剤としては、フュームシリカ、沈降性シリカ、結晶性シリカ、溶融シリカ、ドロマイト、無水ケイ酸、含水ケイ酸、およびカーボンブラックなどの補強性充填剤;重質炭酸カルシウム、膠質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイソウ土、焼成クレー、クレー、タルク、酸化チタン、ベントナイト、有機ベントナイト、酸化第二鉄、アルミニウム微粉末、フリント粉末、酸化亜鉛、活性亜鉛華、シラスバルーン、ガラスミクロバルーン、フェノール樹脂および塩化ビニリデン樹脂の有機ミクロバルーン、並びにPVC粉末およびPMMA粉末のような樹脂粉末などの充填剤;ガラス繊維およびフィラメントのような繊維状充填剤、などがあげられる。
【0136】
充填剤を使用する場合、充填剤の使用量は(A)成分と(B)成分との合計100重量部に対して1~250重量部が好ましく、10~200重量部がより好ましい。
【0137】
これら充填剤の使用により強度の高い硬化物を得たい場合には、主にヒュームシリカ、沈降性シリカ、結晶性シリカ、溶融シリカ、ドロマイト、無水ケイ酸、含水ケイ酸およびカーボンブラック、表面処理微細炭酸カルシウム、焼成クレー、クレー、および活性亜鉛華などから選ばれる充填剤が好ましく、そのような充填剤を(A)成分と(B)成分との合計100重量部に対し1~200重量部使用すれば好ましい結果が得られる。
【0138】
また、低強度で破断伸びが大である硬化物を得たい場合には、主に酸化チタン、重質炭酸カルシウムなどの炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、酸化第二鉄、酸化亜鉛、およびシラスバルーンなどから選ばれる充填剤を、(A)成分と(B)成分との合計100重量部に対して5~200重量部使用すれば好ましい結果が得られる。
【0139】
なお、一般的に炭酸カルシウムは、比表面積の値が大きいほど硬化物の破断強度、破断伸び、および接着性の改善効果は大きくなる。これら充填剤は1種類のみで使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0140】
炭酸カルシウムを使用する場合、表面処理微細炭酸カルシウムと重質炭酸カルシウムなどの粒径が大きい炭酸カルシウムとを併用することが望ましい。表面処理微細炭酸カルシウムの粒径は0.5μm以下が好ましく、表面処理は脂肪酸および/または脂肪酸塩で処理されていることが好ましい。また、粒径が大きい炭酸カルシウムの粒径は1μm以上が好ましく、表面処理されていないものを用いることができる。
【0141】
本発明の一実施形態に係る硬化性組成物にはバルーン(好ましくは平均粒径が0.1mm以上)を使用することができる。バルーンを使用することにより砂まき調あるいは砂岩調のざらつき感がある表面になり、かつ軽量化を図ることができる。
【0142】
バルーンは、球状体充填剤で内部が中空のものである。このバルーンの材料としては、ガラス、シラス、シリカなどの無機系の材料、および、フェノール樹脂、尿素樹脂、ポリスチレン、サランなどの有機系の材料があげられるが、これらに限定されるものではなく、無機系の材料と有機系の材料とを複合させたり、また、積層して複数層を形成させたりすることもできる。また、使用するバルーンは、同一のバルーンを使用してもよく、異なる材料のバルーンを複数種類併用してもよい。さらに、バルーンは、その表面を加工ないしコーティングしたものを使用することもできるし、またその表面を各種の表面処理剤で処理したものを使用することもできる。例えば、有機系のバルーンを炭酸カルシウム、タルク、酸化チタンなどでコーティングすること、無機系のバルーンを接着性付与剤で表面処理することなどがあげられる。
【0143】
砂まき調あるいは砂岩調のざらつき感がある表面を得るには、バルーンは粒径が0.1mm以上であることが好ましく、0.2~5.0mmがより好ましく、0.5~5.0mmがさらに好ましい。バルーンの粒径が0.1mm未満では多量に配合しても組成物の粘度を上昇させるだけで、ざらつき感が得られない場合がある。バルーンの配合量は目的とする砂まき調あるいは砂岩調のざらつき感の程度によって容易に定めることができる。通常、粒径が0.1mm以上のバルーンを硬化性組成物中の容積濃度で5~25vol%配合することが好ましく、8~22vol%がより好ましい。バルーンの容積濃度が5vol%未満の場合、ざらつき感がなく、また25vol%を超えると、硬化性組成物の粘度が高くなり作業性が悪く、硬化物のモジュラスも高くなり、硬化性組成物の基本性能が損なわれる傾向にある。なお、「vol%」は「体積%」を意図する。
【0144】
バルーンを用いる際には特開2000-154368号公報に記載されているようなスリップ防止剤、特開2001-164237号公報に記載されているような硬化物の表面を凹凸状態に加えて艶消し状態にするためのアミン化合物、特に融点35℃以上の第1級および/または第2級アミンを添加することができる。
【0145】
バルーンの具体例は特開平2-129262号、特開平4-8788号、特開平4-173867号、特開平5-1225号、特開平7-113073号、特開平9-53063号、特開平10-251618号、特開2000-154368号、特開2001-164237号、WO97/05201号などの各公報に記載されている。
【0146】
本発明の一実施形態に係る硬化性組成物には直径が0.1mm以上、好ましくは0.1から5.0mm程度の鱗片状または粒状の物質を使用することができる。鱗片状の物質を使用すると鱗片状に起因する凹凸状の表面となる。また、粒状の物質を使用すると砂まき調あるいは砂岩調のざらつき感がある表面となる。
【0147】
鱗片状または粒状の物質の好ましい直径、配合量、材料などは特開平9-53063号公報に記載されているものを適宜援用できる。
【0148】
鱗片状または粒状の物質の直径は0.1mm以上が好ましく、0.1~5.0mmがより好ましく、0.2~5.0mmがさらに好ましく、0.5~5.0mmが特に好ましい。外壁の材質、模様などに合わせて最適な大きさのものが使用される。鱗片状の物質の場合には厚さが直径の1/10~1/5の薄さ(0.01~1.00mm)が好ましい。
【0149】
鱗片状または粒状の物質は硬化性組成物100重量部に対して1~200重量部使用することが好ましい。鱗片状または粒状の物質の配合量は個々の鱗片状または粒状の物質の大きさ、外壁の材質、模様などによって、適宜選定される。鱗片状または粒状の物質としては、ケイ砂、マイカなどの天然物、合成ゴム、合成樹脂、アルミナなどの無機物が使用される。目地部に充填した際の意匠性を高めるために、外壁の材質、模様などに合わせて、最適な色に着色される。
【0150】
本発明の一実施形態に係る硬化性組成物が硬化性組成物の硬化物粒子を含む場合も硬化物表面に凹凸を形成し意匠性を向上させることができる。硬化性組成物の硬化物粒子の好ましい直径、配合量、材料などは特開2001-115142号公報に記載されているように次の通りである。硬化性組成物の硬化物粒子の直径は0.1~1mmが好ましく、0.2~0.5mmがより好ましい。硬化性組成物の硬化物粒子の配合量は硬化性組成物中に5~100重量%が好ましく、20~50重量%がより好ましい。
【0151】
本発明の一実施形態に係る硬化性組成物にはシリケートを使用することができる。シリケートは架橋剤として作用し、本発明の一実施形態に係る(A)成分である有機重合体の復元性、耐久性、および、耐クリープ性を改善する機能を有する。またシリケートは、硬化物の接着性および耐水接着性、高温高湿条件での接着耐久性を改善する効果も有する。
【0152】
シリケートの具体例としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、エトキシトリメトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、メトキシトリエトキシシラン、テトラ-n-プロポキシシラン、テトラ-i-プロポキシシラン、テトラ-n-ブトキシシラン、テトラ-i-ブトキシシラン、テトラ-t-ブトキシシランなどのテトラアルコキシシラン(テトラアルキルシリケート)、および、それらの部分加水分解縮合物があげられる。
【0153】
テトラアルコキシシランの部分加水分解縮合物は復元性、耐久性、および、耐クリープ性の改善効果がテトラアルコキシシランよりも大きいためより好ましい。
【0154】
前記テトラアルコキシシランの部分加水分解縮合物としては、例えば、通常の方法でテトラアルコキシシランに水を添加し、部分加水分解させて縮合させたものがあげられる。
【0155】
シリケートを使用する場合、その使用量は(A)成分と(B)成分との合計100重量部に対して0.1~8重量部が好ましく、0.5~3重量部がより好ましい。
【0156】
本発明の一実施形態に係る硬化性組成物には(D)成分以外の接着性付与剤を使用してもよい。接着性付与剤としてはシランカップリング剤を添加することができる。
【0157】
シランカップリング剤の具体例としては、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-β-アミノエチル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-アミノエチル-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、(2-アミノエチル)アミノメチルトリメトキシシランなどのアミノ基含有シラン類;γ-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ-イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン、α-イソシアネートメチルトリメトキシシラン、α-イソシアネートメチルジメトキシメチルシランなどのイソシアネート基含有シラン類;γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジメトキシシランなどのメルカプト基含有シラン類;γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有シラン類があげられる。
【0158】
上記接着性付与剤は1種類のみで使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0159】
接着性付与剤の使用量は(A)成分と(B)成分との合計100重量部に対して、0~10重量部が好ましく、0~5重量部がより好ましく、0~3重量部がさらに好ましい。接着性付与剤は硬化物の耐久性を低下させる傾向があるため、使用量は少ないほうが好ましく、実質含まないことが好ましい。
【0160】
本発明の一実施形態に係る硬化性組成物には酸化防止剤(老化防止剤)を使用することができる。酸化防止剤を使用すると硬化物の耐熱性を高めることができる。
【0161】
酸化防止剤としてはヒンダードフェノール系、モノフェノール系、ビスフェノール系、ポリフェノール系などをあげることができる。酸化防止剤としては特にヒンダードフェノール系が好ましい。酸化防止剤の具体例は特開平4-283259号公報および特開平9-194731号公報にも記載されている。
【0162】
酸化防止剤の使用量は、(A)成分と(B)成分との合計100重量部に対して0.1~10重量部が好ましく、0.2~5重量部がより好ましい。
【0163】
本発明の一実施形態に係る硬化性組成物には光安定剤を使用することができる。光安定剤を使用すると硬化物の光酸化劣化を防止できる。
【0164】
光安定剤としてはベンゾトリアゾール系、ヒンダードアミン系、ベンゾエート系化合物などをあげることができる。光安定剤としては特にヒンダードアミン系が好ましい。
【0165】
光安定剤の使用量は、(A)成分と(B)成分との合計100重量部に対して0.1~10重量部が好ましく、0.2~5重量部がより好ましい。光安定剤の具体例は特開平9-194731号公報にも記載されている。
【0166】
本発明の一実施形態に係る硬化性組成物には紫外線吸収剤を使用することができる。紫外線吸収剤を使用すると硬化物の表面耐候性を高めることができる。
【0167】
紫外線吸収剤としてはベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリシレート系、置換トリル系及び金属キレート系化合物などをあげることができる。紫外線吸収剤としては特にベンゾトリアゾール系が好ましい。
【0168】
紫外線吸収剤の使用量は、(A)成分と(B)成分との合計100重量部に対して0.1~10重量部が好ましく、0.2~5重量部がより好ましい。
【0169】
本発明の一実施形態に係る硬化性組成物には光硬化性物質を使用することができる。光硬化性物質を使用すると硬化物表面に光硬化性物質の皮膜が形成され、硬化物のべたつきおよび耐候性を改善できる。光硬化性物質とは、光の作用によってかなり短時間に分子構造が化学変化をおこし、硬化などの物性的変化を生ずるものである。この種の化合物には有機単量体、オリゴマー、樹脂或いはそれらを含む組成物など多くのものが知られており、市販の任意のものを使用することができる。代表的なものとしては、不飽和アクリル系化合物、ポリケイ皮酸ビニル類あるいはアジド化樹脂などをあげることができる。
【0170】
不飽和アクリル系化合物としては、アクリル系またはメタクリル系不飽和基を1ないし数個有するモノマー、オリゴマー或いはそれらの混合物であって、プロピレン(またはブチレン、エチレン)グリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートなどの単量体または分子量10,000以下のオリゴエステルが例示される。具体的には、例えば特殊アクリレート(2官能)のアロニックスM-210,アロニックスM-215,アロニックスM-220,アロニックスM-233,アロニックスM-240,アロニックスM-245;(3官能)のアロニックスM-305,アロニックスM-309,アロニックスM-310,アロニックスM-315,アロニックスM-320,アロニックスM-325,および(多官能)のアロニックスM-400などをあげることができる。特にアクリル官能基を含有する化合物が好ましく、また1分子中に平均して3個以上の同官能基を含有する化合物が好ましい。(以上アロニックスはいずれも東亞合成株式会社の製品である。)。
【0171】
ポリケイ皮酸ビニル類としては、シンナモイル基を感光基とする感光性樹脂でありポリビニルアルコールをケイ皮酸でエステル化したものの他、多くのポリケイ皮酸ビニル誘導体をあげることができる。
【0172】
アジド化樹脂は、アジド基を感光基とする感光性樹脂として知られており、通常はジアジド化合物を感光剤として加えたゴム感光液の他、「感光性樹脂」(昭和47年3月17日出版、印刷学会出版部発行、第93頁から、第106頁から、第117頁から)に詳細な例示があり、これらを単独または混合し、必要に応じて増感剤を加えて使用することができる。なお、ケトン類、ニトロ化合物などの増感剤やアミン類などの促進剤を添加すると、効果が高められる場合がある。
【0173】
光硬化性物質の使用量は、(A)成分と(B)成分との合計100重量部に対して0.1~20重量部が好ましく、0.5~10重量部がより好ましい。光硬化性物質の使用量が0.1重量部未満では耐候性を高める効果はなく、20重量部超えでは硬化物が硬くなりすぎて、亀裂を生じる場合がある。
【0174】
本発明の一実施形態に係る硬化性組成物には酸素硬化性物質を使用することができる。酸素硬化性物質には空気中の酸素と反応し得る不飽和化合物を例示でき、空気中の酸素と反応して硬化物の表面付近に硬化皮膜を形成し表面のべたつきや硬化物表面へのゴミやホコリの付着を防止するなどの作用をする。
【0175】
酸素硬化性物質としては、例えば、キリ油、アマニ油などで代表される乾性油や、該化合物を変性してえられる各種アルキッド樹脂;乾性油により変性されたアクリル系重合体、エポキシ系樹脂、シリコン樹脂;ブタジエン、クロロプレン、イソプレン、1,3-ペンタジエンなどのジエン系化合物を重合または共重合させてえられる1,2-ポリブタジエン、1,4-ポリブタジエン、C5~C8ジエンの重合体などの液状重合体や、これらジエン系化合物と共重合性を有するアクリロニトリル、スチレンなどの単量体とをジエン系化合物が主体となるように共重合させてえられるNBR、SBRなどの液状共重合体や、さらにはそれらの各種変性物(マレイン化変性物、ボイル油変性物など)などがあげられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。これらのうちではキリ油や液状ジエン系重合体がとくに好ましい。又、酸化硬化反応を促進する触媒や金属ドライヤーを併用すると効果が高められる場合がある。これらの触媒や金属ドライヤーとしては、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸鉛、ナフテン酸ジルコニウム、オクチル酸コバルト、オクチル酸ジルコニウム等の金属塩や、アミン化合物などがあげられる。
【0176】
酸素硬化性物質の使用量は、(A)成分と(B)成分との合計100重量部に対して0.1~20重量部が好ましく、0.5~10重量部がより好ましい。酸素硬化性物質の使用量が0.1重量部未満になると汚染性の改善が充分でなくなり、20重量部を超えると硬化物の引張り特性などが損なわれる場合がある。
【0177】
本発明の一実施形態に係る硬化性組成物には、垂れを防止し、作業性を良くする目的のためにチクソ性付与剤(垂れ防止剤)を使用することができる。
【0178】
垂れ防止剤としては特に限定されないが、例えば、ポリアミドワックス類;水添ヒマシ油誘導体類;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸バリウムなどの金属石鹸類などがあげられる。また、特開平11-349916号公報に記載されているような粒子径10~500μmのゴム粉末や、特開2003-155389号公報に記載されているような有機質繊維を用いると、チクソ性が高く作業性の良好な組成物が得られる。これらチクソ性付与剤(垂れ防止剤)は1種を単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0179】
チクソ性付与剤の使用量は(A)成分と(B)成分との合計100重量部に対して0.1~20重量部が好ましい。
【0180】
本発明の一実施形態に係る硬化性組成物には1分子中にエポキシ基を含有する化合物を使用できる。エポキシ基を有する化合物を使用すると硬化物の復元性を高めることができる。
【0181】
エポキシ基を有する化合物としては、例えば、エポキシ化不飽和油脂類、エポキシ化不飽和脂肪酸エステル類、脂環式エポキシ化合物類、エピクロルヒドリン誘導体に示す化合物およびそれらの混合物などがあげられる。具体的には、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、ビス(2-エチルヘキシル)-4,5-エポキシシクロヘキサン-1,2-ジカーボキシレート(E-PS)、エポキシオクチルステアレ-ト、エポキシブチルステアレ-トなどがあげられる。エポキシ基を有する化合物としては、これらのなかではE-PSが特に好ましい。
【0182】
エポキシ化合物の使用量は、(A)成分と(B)成分との合計100重量部に対して0.5~50重量部が好ましい。
【0183】
本発明の一実施形態に係る硬化性組成物には、ポリリン酸アンモニウム、トリクレジルホスフェートなどのリン系可塑剤、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、および、熱膨張性黒鉛などの難燃剤を添加することができる。上記難燃剤は1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0184】
難燃剤の使用量は、(A)成分と(B)成分との合計100重量部に対して5~200重量部が好ましく、10~100重量部がより好ましい。
【0185】
本発明の一実施形態に係る硬化性組成物には粘着性付与剤を使用することができる。粘着性付与樹脂としては、常温で固体、液体を問わず通常使用されるものであれば特に限定されない。具体的には、例えば、スチレン系ブロック共重合体、その水素添加物、フェノール系樹脂、変性フェノール系樹脂(たとえば、カシューオイル変性フェノール系樹脂、トール油変性フェノール系樹脂など)、テルペンフェノール系樹脂、キシレン-フェノール系樹脂、シクロペンタジエン-フェノール系樹脂、クマロンインデン系樹脂、ロジン系樹脂、ロジンエステル系樹脂、水添ロジンエステル系樹脂、キシレン系樹脂、低分子量ポリスチレン系樹脂、スチレン共重合体樹脂およびその水素添加物(たとえばスチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン-エチレンブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-エチレンプロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体(SIBS)など)、石油樹脂(たとえば、C5炭化水素系樹脂、C9炭化水素系樹脂、C5C9炭化水素共重合樹脂など)、水添石油樹脂、テルペン系樹脂、DCPD樹脂石油樹脂などがあげられる。これらは1種類のみを添加してもよく、複数種を組み合わせて添加しても良い。
【0186】
粘着性付与剤の使用量は、(A)成分と(B)成分との合計100重量部に対して5~100重量部が好ましい。
【0187】
本発明の一実施形態に係る硬化性組成物には、組成物の粘度を低減し、チクソ性を高め、作業性を改善する目的で、溶剤を使用することができる。溶剤としては、特に限定は無く、各種の化合物を使用することができる。溶剤の具体例としては、トルエン、キシレン、ヘプタン、ヘキサン、石油系溶媒などの炭化水素系溶剤、トリクロロエチレンなどのハロゲン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶剤、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサンなどのシリコーン系溶剤があげられる。これらの溶剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0188】
溶剤の配合量が多い場合には、人体への毒性が高くなる場合があり、また、硬化物の体積収縮などが見られる場合がある。従って、溶剤の配合量は、(A)成分と(B)成分との合計100重量部に対して3重量部以下であることが好ましく、1重量部以下であることがより好ましく、実質的に含まないことが最も好ましい。
【0189】
本発明の一実施形態に係る硬化性組成物には、硬化物の引張特性や硬度を調整する目的で物性調整剤を使用することができる。物性調整剤としては特に限定されないが、例えば、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシランなどのアルキルアルコキシシラン類;ジメチルジイソプロペノキシシラン、メチルトリイソプロペノキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジイソプロペノキシシランなどのアルキルイソプロペノキシシラン;シリコーンワニス類;ポリシロキサン類などがあげられる。物性調整剤は1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0190】
本発明の一実施形態に係る硬化性組成物には、「加水分解により分子内に1価のシラノール基を有する化合物を生成する化合物」を使用することができる。該化合物を使用することにより、硬化物の表面のべたつきを悪化させずに硬化物のモジュラスを低下させることができえる。特にトリメチルシラノールを生成する化合物が好ましい。加水分解により分子内に1価のシラノール基を有する化合物を生成する化合物としては、特開平5-117521号公報に記載されている化合物をあげることができる。また、ヘキサノール、オクタノール、デカノールなどのアルキルアルコールの誘導体であって加水分解によりトリメチルシラノールなどのRSiOHを生成するシリコン化合物、特開平11-241029号公報に記載されているトリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトールあるいはソルビトールなどのヒドロキシ基数が3以上の多価アルコールの誘導体であって加水分解によりトリメチルシラノールなどのRSiOHを生成するシリコン化合物をあげることができる。
【0191】
また、特開平7-258534号公報に記載されているようなオキシプロピレン重合体の誘導体であって加水分解によりトリメチルシラノールなどのRSiOHを生成するシリコン化合物もあげることができる。さらに特開平6-279693号公報に記載されている架橋可能な反応性ケイ素含有基と加水分解によりモノシラノール含有化合物となりうるケイ素含有基を有する重合体を使用することもできる。
【0192】
加水分解により分子内に1価のシラノール基を有する化合物を生成する化合物の使用量は、(A)成分と(B)成分の合計100重量部に対して0.1~20重量部が好ましく、0.5~10重量部がより好ましい。
【0193】
本発明の一実施形態に係る硬化性組成物は、すべての配合成分を予め配合密封保存し、施工後空気中の湿気により室温で硬化する1成分型として調製することが可能である。
【0194】
前記硬化性組成物が1成分型の場合、すべての配合成分が予め配合されるため、水分を含有する配合成分は予め脱水乾燥してから使用するか、また配合混練中に減圧などにより脱水するのが好ましい。前記硬化性組成物が2成分型の場合、反応性ケイ素基を有する重合体を含有する主剤に硬化触媒を配合する必要がないので配合剤中には若干の水分が含有されていてもゲル化の心配は少ないが、長期間の貯蔵安定性を必要とする場合には脱水乾燥するのが好ましい。
【0195】
脱水、乾燥方法としては粉状などの固状物の場合は加熱乾燥法または減圧脱水法、液状物の場合は減圧脱水法または合成ゼオライト、活性アルミナ、シリカゲル、生石灰、酸化マグネシウムなどを使用した脱水法が好ましい。かかる脱水乾燥法に加えて、n-プロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、メチルシリケート、エチルシリケート、γ-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどのアルコキシシラン化合物を添加し、水と反応させて脱水してもよい。また、3-エチル-2-メチル-2-(3-メチルブチル)-1,3-オキサゾリジンなどのオキサゾリジン化合物を配合して水と反応させて脱水してもよい。また、イソシアネート化合物を少量配合してイソシアネート基と水とを反応させて脱水してもよい。アルコキシシラン化合物やオキサゾリジン化合物、および、イソシアネート化合物の添加により、硬化性組成物の貯蔵安定性が向上する。
【0196】
本発明の一実施形態に係る硬化性組成物の調製法には特に限定はなく、例えば(1)上記した各成分を配合し、ミキサー、ロールおよびニーダーなどを用いて常温または加熱下で混練する方法、または(2)適した溶剤を少量使用して各成分を溶解させ、各成分の溶解物を混合する方法、などの通常の方法を使用することができる。
【0197】
本発明の一実施形態に係る硬化性組成物は、大気中に暴露された後、大気中等の水分の作用により、三次元的に網状組織を形成し、ゴム状弾性を有する固体(硬化物)へと硬化する。
【0198】
本発明の一実施形態に係る硬化性組成物は、粘着剤、シーリング材、接着剤、型取剤、防振材、制振材、防音材、発泡材料、塗料、吹付材などに使用できる。上記シーリング材としては、建造物用、船舶用、自動車用、道路用などのシーリング材が挙げられる。本発明の一実施形態に係る硬化性組成物を硬化して得られる硬化物は、低モジュラス高伸びで復元性が高いことから、本硬化性組成物は、これらの中でも、建築用シーリング材、特にワーキングジョイント用シーリング材として好適に使用できる。
【0199】
本発明の一実施形態に係る1成分型硬化性組成物は、カーテンウォール用のシーリング材、ベランダ窓枠用シーリング材、石材用のシーリング材、橋梁用のシーリング材にも適している。また建築用に幅広く使用されているサイディングボードなどの外装材の目地用シーリング材にも適している。
【0200】
本硬化性組成物は、圧縮復元率に優れるものである。本硬化性組成物を、1成分型硬化性組成物として、ワーキングジョイントに用いる場合、圧縮復元率の値は大きいほうが好ましい。本硬化性組成物の圧縮復元率は、10%以上がより好ましく、10%を超えることがさらに好ましく、15%以上が特に好ましい。圧縮復元率が10%以上である場合、長期間にわたる日間変動および季節変動による外装部材の伸縮に、硬化物の伸縮が追従しやすくなるため、硬化物の亀裂、および硬化物と部材との間での剥離などの損傷、を生じる虞がない。
【0201】
〔3.目地構造体〕
本発明の一実施形態に係る目地構造体は、〔2.硬化性組成物〕の項に記載のワーキングジョイント用1成分型硬化性組成物を建築物のワーキングジョイントに充填し硬化させて得られる目地構造体である。本発明の一実施形態に係る目地構造体は、上記構成を有するため、圧縮復元率、変位追従性および耐久性に優れるものである。
【0202】
本発明の一実施形態に係る目地構造体の製造方法、具体的には硬化性組成物の充填方法としては、特に限定されず公知の方法を用いることができる。硬化性組成物の充填方法としては、例えば、手動式コーキングガン、電動式コーキングガンおよび空気圧式コーキングガンを用いる方法が挙げられる。本発明の一実施形態に係る硬化性組成物は、1成分型であるため、充填された後、すなわち大気中に暴露された後、大気中の水分の作用により、三次元的に網状組織を形成し、硬化物、すなわち目地構造体を形成し得る。
【0203】
〔4.壁〕
本発明の一実施形態に係る壁は、〔2.硬化性組成物〕の項に記載のワーキングジョイント用1成分型硬化性組成物を建築物のワーキングジョイントに充填し硬化させて得られる目地構造体を有する。本発明の一実施形態に係る壁は、上記構成を有するため、耐久性、耐候性および防水性に優れるものである。
【0204】
本発明の一実施形態に係る壁の製造方法、具体的には目地構造体の製造方法としては、〔3.目地構造体〕に記載の方法が挙げられる。
【0205】
〔5.施工方法〕
本発明の一実施形態に係る施工方法は、〔2.硬化性組成物〕の項に記載のワーキングジョイント用1成分型硬化性組成物を建築物のワーキングジョイントに充填し硬化させる工程を有する。本発明の一実施形態に係る施工方法は、上記構成を有するため、耐久性、耐候性および防水性に優れる建造物(例えば、目地構造体および壁など)を提供できる。
【0206】
本発明の一実施形態に係る施工方法における実際の操作は、硬化性組成物の充填ともいえる。硬化性組成物を充填する方法としては、〔3.目地構造体〕に記載の方法が挙げられる。
【0207】
本発明の一実施形態は、以下の様な構成であってもよい。
【0208】
〔1〕(A)一般式(1)で表される反応性ケイ素基を1分子当たり平均1.2~5個有するポリオキシアルキレン系重合体、(D)反応性ケイ素基を有するアミノシラン化合物同士を一部縮合させたシラン化合物、あるいは、反応性ケイ素基を有するアミノシラン化合物とアミノシラン以外のアルコキシシラン化合物とを一部縮合させたシラン化合物、および(E)4価の有機スズ化合物を(A)成分100重量部に対して0.05重量部以上1重量部未満、
を含むことを特徴とするワーキングジョイント用1成分型硬化性組成物:
-SiX・・・(1)
(式中、Xはそれぞれ独立に水酸基または加水分解性基を示す)。
【0209】
〔2〕さらに、(B)一般式(2)で表される反応性ケイ素基を1分子当たり平均0.5~1.2個未満有するポリオキシアルキレン系重合体である反応性可塑剤を含むことを特徴とする〔1〕に記載のワーキングジョイント用1成分型硬化性組成物:
-SiR 3-a・・・(2)
(式中、Rはそれぞれ独立に炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数7~20のアラルキル基を示す。Xは一般式(1)と同じ。aは1~3の整数を示す。)
〔3〕(B)成分が、(B1)1分子中に1個の一般式(2)で表される反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体を含むことを特徴とする〔1〕または〔2〕に記載のワーキングジョイント用1成分型硬化性組成物。
【0210】
〔4〕(B)成分が、1分子中に水酸基を1個のみ有する開始剤にアルキレンオキシドを反応させて得られる(B’)反応性ケイ素基を導入可能な官能基を1個のみ有するポリオキシアルキレン系前駆重合体に、一般式(2)で表される反応性ケイ素基を導入して得られることを特徴とする〔1〕~〔3〕のいずれか1つに記載のワーキングジョイント用1成分型硬化性組成物。
【0211】
〔5〕(B)成分が、(B”)1分子中に水酸基を1個のみ有する開始剤と1分子中に水酸基を2個以上有する開始剤との混合物にアルキレンオキシドを反応させて得られる反応性ケイ素基を導入可能な官能基を有するポリオキシアルキレン系前駆重合体混合物に、一般式(2)で表される反応性ケイ素基を導入して得られることを特徴とする〔1〕~〔4〕のいずれか1つに記載のワーキングジョイント用1成分型硬化性組成物。
【0212】
〔6〕(A)成分および(B)成分のポリオキシアルキレン系重合体が、ポリオキシプロピレン系重合体であることを特徴とする〔1〕~〔5〕のいずれか1つに記載のワーキングジョイント用1成分型硬化性組成物。
【0213】
〔7〕さらに、(C1)一般式(1)または一般式(2)で表される反応性ケイ素基を有しないポリエーテル系可塑剤を含むことを特徴とする〔1〕~〔6〕のいずれか1つに記載のワーキングジョイント用1成分型硬化性組成物。
【0214】
〔8〕〔1〕~〔7〕のいずれか1つに記載のワーキングジョイント用1成分型硬化性組成物を建築物のワーキングジョイントに充填し硬化させて得られる目地構造体。
【0215】
〔9〕〔1〕~〔7〕のいずれか1つに記載のワーキングジョイント用1成分型硬化性組成物を建築物のワーキングジョイントに充填し硬化させて得られる目地構造体を有する壁。
【0216】
〔10〕〔1〕~〔7〕のいずれか1つに記載のワーキングジョイント用1成分型硬化性組成物を建築物のワーキングジョイントに充填し硬化させる工程を有することを特徴とする施工方法。
【0217】
本発明の別の一実施形態は、以下の様な構成であってもよい。
【0218】
〔X1〕(A)一般式(1)で表される反応性ケイ素基を1分子当たり平均1.2~5個有するポリオキシアルキレン系重合体、
(D)反応性ケイ素基を有するアミノシラン化合物同士を一部縮合させたシラン化合物、あるいは、反応性ケイ素基を有するアミノシラン化合物とアミノシラン以外のアルコキシシラン化合物とを一部縮合させたシラン化合物、および
(E)4価の有機スズ化合物を(A)成分100重量部に対して0.05重量部以上1重量部未満を混合し、得られた混合物を混練する工程を有する、ワーキングジョイント用1成分型硬化性組成物の製造方法:
-SiX・・・(1)
(式中、Xはそれぞれ独立に水酸基または加水分解性基を示す)。
【0219】
〔X2〕前記工程は、前記(A)成分、前記(D)成分および前記(E)成分に加えて、さらに、(B)一般式(2)で表される反応性ケイ素基を1分子当たり平均0.5~1.2個未満有するポリオキシアルキレン系重合体である反応性可塑剤を混合し、得られた混合物を混練する工程である、〔X1〕に記載のワーキングジョイント用1成分型硬化性組成物の製造方法:
-SiR 3-a・・・(2)
(式中、Rはそれぞれ独立に炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数7~20のアラルキル基を示す。Xは一般式(1)と同じ。aは1~3の整数を示す。)
〔X3〕前記(B)成分が、(B1)1分子中に1個の一般式(2)で表される反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体を含む、〔X1〕または〔X2〕に記載のワーキングジョイント用1成分型硬化性組成物の製造方法。
【0220】
〔X4〕前記(B)成分が、1分子中に水酸基を1個のみ有する開始剤にアルキレンオキシドを反応させて得られる(B’)反応性ケイ素基を導入可能な官能基を1個のみ有するポリオキシアルキレン系前駆重合体に、一般式(2)で表される反応性ケイ素基を導入して得られるものである、〔X1〕~〔X3〕のいずれか1つに記載のワーキングジョイント用1成分型硬化性組成物の製造方法。
【0221】
〔X5〕前記(B)成分が、(B”)1分子中に水酸基を1個のみ有する開始剤と1分子中に水酸基を2個以上有する開始剤との混合物にアルキレンオキシドを反応させて得られる反応性ケイ素基を導入可能な官能基を有するポリオキシアルキレン系前駆重合体混合物に、一般式(2)で表される反応性ケイ素基を導入して得られるものである、〔X1〕~〔X4〕のいずれか1つに記載のワーキングジョイント用1成分型硬化性組成物の製造方法。
【0222】
〔X6〕前記(A)成分および前記(B)成分のポリオキシアルキレン系重合体が、ポリオキシプロピレン系重合体である、〔X1〕~〔X5〕のいずれか1つに記載のワーキングジョイント用1成分型硬化性組成物の製造方法。
【0223】
〔X7〕前記工程は、前記(A)成分、前記(D)成分および前記(E)成分、または前記(A)成分、前記(B)成分、前記(D)成分および前記(E)成分に加えて、さらに、(C1)一般式(1)または一般式(2)で表される反応性ケイ素基を有しないポリエーテル系可塑剤を混合し、得られた混合物を混練する工程である、〔X1〕~〔X6〕のいずれか1つに記載のワーキングジョイント用1成分型硬化性組成物の製造方法。
【0224】
〔X8〕〔X1〕~〔X7〕のいずれか1つに記載のワーキングジョイント用1成分型硬化性組成物の製造方法により得られたワーキングジョイント用1成分型硬化性組成物を、建築物のワーキングジョイントに充填し硬化させる工程を有する、目地構造体の製造方法。
【0225】
〔X9〕〔X1〕~〔X7〕のいずれか1つに記載のワーキングジョイント用1成分型硬化性組成物の製造方法により得られたワーキングジョイント用1成分型硬化性組成物を、建築物のワーキングジョイントに充填し硬化させる工程を有する、施工方法。
【実施例0226】
本発明の一実施形態を実施例、比較例によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の記載において、X基末端Y重合体とは、末端にX基を有するY重合体を意図する。
【0227】
(合成例1)
数平均分子量約3,000のポリプロピレングリコールを開始剤とし、亜鉛ヘキサシアノコバルテートグライム錯体触媒にてプロピレンオキシドを重合し、水酸基量から換算した数平均分子量約29,000の水酸基末端ポリオキシプロピレン重合体を得た。続いて、この水酸基末端ポリオキシプロピレン重合体の水酸基に対して1.2倍当量のナトリウムメトキシド(NaOMe)のメタノール溶液を添加してメタノールを留去し、さらに塩化アリルを1.3倍当量添加して末端の水酸基をアリル基に変換した。未反応の塩化アリルを減圧脱揮により除去し、未精製のアリル基末端ポリオキシプロピレン重合体を得た。
【0228】
得られた未精製のアリル基末端ポリオキシプロピレン重合体100重量部に対し、n-ヘキサン300重量部と、水300重量部とを混合および攪拌した後、遠心分離により水を除去した。得られたヘキサン溶液にさらに水300重量部を混合および攪拌した後、再度遠心分離により水を除去した。その後、得られたヘキサン溶液からヘキサンを減圧脱揮により除去した。以上により、アリル基末端ポリオキシプロピレン重合体を得た。
【0229】
得られたアリル基末端ポリオキシプロピレン重合体100重量部に対し、白金ビニルシロキサン錯体の白金含量3wt%のイソプロパノール溶液150ppmを触媒として、当該アリル基末端ポリオキシプロピレン重合体とトリエトキシシランとを90℃で2時間反応させ、トリエトキシシリル基末端ポリオキシプロピレン重合体を得た。H-NMR(日本電子製JNM-LA400を用いて、CDCl溶媒中で測定)を用いた測定により、得られたトリエトキシシリル基末端ポリオキシプロピレン重合体における、末端のトリエトキシシリル基は1分子あたり平均して1.7個であることを確認した。
【0230】
得られたトリエトキシシリル基末端ポリオキシプロピレン重合体に対し、0.5wt%の塩酸のメタノール溶液を触媒として使用し、メタノールを添加して70℃で2時間混合攪拌して、末端のトリエトキシシリル基をトリメトキシシリル基に変換した。最後に、メタノールを減圧脱揮することにより除去した。以上により、トリメトキシシリル基末端ポリオキシプロピレン重合体(a1)を得た。H-NMR(日本電子製JNM-LA400を用いて、CDCl溶媒中で測定)を用いた測定により、得られたトリメトキシシリル基末端ポリオキシプロピレン重合体(a1)における、末端のトリメトキシシリル基は1分子あたり平均して1.7個であることを確認した。また得られたトリメトキシシリル基末端ポリオキシプロピレン重合体(a1)の、GPCによるポリスチレン換算の数平均分子量は29,000であった。トリメトキシシリル基末端ポリオキシプロピレン重合体(a1)は、本発明の一実施形態における(A)成分である。
【0231】
(合成例2)
数平均分子量約3,000のポリプロピレングリコールを開始剤とし、亜鉛ヘキサシアノコバルテートグライム錯体触媒にてプロピレンオキシドを重合し、水酸基量から換算した数平均分子量約29,000の水酸基末端ポリオキシプロピレン重合体を得た。続いて、この水酸基末端ポリオキシプロピレン重合体の水酸基に対して1.2倍当量のNaOMeのメタノール溶液を添加してメタノールを留去し、さらに塩化アリルを1.3倍当量添加して末端の水酸基をアリル基に変換した。未反応の塩化アリルを減圧脱揮により除去し、未精製のアリル基末端ポリオキシプロピレン重合体を得た。
【0232】
得られた未精製のアリル基末端ポリオキシプロピレン重合体100重量部に対し、n-ヘキサン300重量部と、水300重量部とを混合および攪拌した後、遠心分離により水を除去した。得られたヘキサン溶液にさらに水300重量部を混合および攪拌し、再度遠心分離により水を除去した。その後、得られたヘキサン溶液からヘキサンを減圧脱揮により除去した。以上により、アリル基末端ポリオキシプロピレン重合体を得た。
【0233】
得られたアリル基末端ポリオキシプロピレン重合体100重量部に対し、白金ビニルシロキサン錯体の白金含量3wt%のイソプロパノール溶液150ppmを触媒として、当該アリル基末端ポリオキシプロピレン重合体とトリエトキシシランとを90℃で2時間反応させ、トリエトキシシリル基末端ポリオキシプロピレン重合体を得た。H-NMR(日本電子製JNM-LA400を用いて、CDCl溶媒中で測定)を用いた測定により、得られたトリエトキシシリル基末端ポリオキシプロピレン重合体における、末端のトリエトキシシリル基は1分子あたり平均して1.4個であることを確認した。
【0234】
得られたトリエトキシシリル基末端ポリオキシプロピレン重合体に対し、0.5wt%の塩酸のメタノール溶液を触媒として使用し、メタノールを添加して70℃で2時間混合攪拌して、末端のトリエトキシシリル基をトリメトキシシリル基に変換した。最後に、メタノールを減圧脱揮することにより除去した。以上により、トリメトキシシリル基末端ポリオキシプロピレン重合体(a2)を得た。H-NMR(日本電子製JNM-LA400を用いて、CDCl溶媒中で測定)を用いた測定により、得られたトリメトキシシリル基末端ポリオキシプロピレン重合体(a2)における、末端のトリメトキシシリル基は1分子あたり平均して1.4個であることを確認した。また得られたトリメトキシシリル基末端ポリオキシプロピレン重合体(a2)の、GPCによるポリスチレン換算の数平均分子量は29,000であった。トリメトキシシリル基末端ポリオキシプロピレン重合体(a2)は、本発明の一実施形態における(A)成分である。
【0235】
(合成例3)
数平均分子量約3,000のポリプロピレングリコールを開始剤とし、亜鉛ヘキサシアノコバルテートグライム錯体触媒にてプロピレンオキシドを重合し、水酸基量から換算した数平均分子量が約29,000の水酸基末端ポリオキシプロピレン重合体を得た。続いて、この水酸基末端ポリオキシプロピレン重合体の水酸基に対して1.2倍当量のNaOMeのメタノール溶液を添加してメタノールを留去し、さらに塩化アリルを1.3倍当量添加して末端の水酸基をアリル基に変換した。未反応の塩化アリルを減圧脱揮により除去し、未精製のアリル基末端ポリオキシプロピレン重合体を得た。
【0236】
得られた未精製のアリル基末端ポリオキシプロピレン重合体100重量部に対し、n-ヘキサン300重量部と、水300重量部とを混合および攪拌した後、遠心分離により水を除去した。得られたヘキサン溶液にさらに水300重量部を混合および攪拌し、再度遠心分離により水を除去した。その後、得られたヘキサン溶液からヘキサンを減圧脱揮により除去した。以上により、アリル基末端ポリオキシプロピレン重合体を得た。
【0237】
得られたアリル基末端ポリオキシプロピレン重合体100重量部に対し、白金ビニルシロキサン錯体の白金含量3wt%のイソプロパノール溶液150ppmを触媒として、当該アリル基末端ポリオキシプロピレン重合体とジメトキシメチルシランとを90℃で2時間反応させ、ジメトキシメチルシリル基末端ポリオキシプロピレン重合体(a3)を得た。H-NMR(日本電子製JNM-LA400を用いて、CDCl溶媒中で測定)を用いた測定により、得られたジメトキシメチルシリル基末端ポリオキシプロピレン重合体(a3)における、末端のジメトキシメチルシリル基は1分子あたり平均して1.8個であることを確認した。また得られたジメトキシメチルシリル基末端ポリオキシプロピレン重合体(a3)における、GPCによるポリスチレン換算の数平均分子量は29,000であった。
【0238】
(合成例4)
数平均分子量14,600のポリオキシプロピレングリコールとn-ブタノールとをそれぞれ重量比で10:1の割合で混合したものを開始剤とし、亜鉛ヘキサシアノコバルテートグライム錯体触媒にてプロピレンオキシドの重合を行い、数平均分子量7,700のポリプロピレンオキシドの混合物を得た(数平均分子量6,500のポリオキシプロピレングリコールモノブチルエーテルと、数平均分子量18,000のポリオキシプロピレングリコール(重量比は9:1))。続いて、この水酸基を有するポリプロピレンオキシドの水酸基に対して1.2倍当量のNaOMeのメタノール溶液を添加してメタノールを留去し、更に塩化アリルを添加して末端の水酸基をアリル基に変換した。未反応の塩化アリルを減圧脱揮により除去し、未精製の、アリル基を有するポリプロピレンオキシドを得た。得られた未精製の、アリル基を有するポリプロピレンオキシド100重量部に対し、n-ヘキサン300重量部と、水300重量部とを混合および攪拌した後、遠心分離により水を除去した。得られたヘキサン溶液に更に水300重量部を混合および攪拌し、再度遠心分離により水を除去した。その後、得られたヘキサン溶液からヘキサンを減圧脱揮により除去した。以上により、片末端にのみアリル基が導入された成分が主成分であり、GPCでのポリスチレン換算の数平均分子量が約7,700であるポリオキシプロピレン重合体の混合物を得た。得られたアリル基を有するポリオキシプロピレン重合体100重量部に対し、白金ビニルシロキサン錯体の白金含量3wt%のイソプロパノール溶液36ppmを触媒として、当該ポリオキシプロピレン重合体とジメトキシメチルシラン1.9重量部とを90℃で2時間反応させ、1分子当たり平均0.9個のジメトキシメチルシリル基を有するポリオキシプロピレン重合体(b1)を得た。また得られたポリオキシプロピレン重合体(b1)の、GPCによるポリスチレン換算の数平均分子量は7,700であった。ジメトキシメチルシリル基を有するポリオキシプロピレン重合体(b1)は、本発明の一実施形態における(B)成分である。
【0239】
(合成例5)
数平均分子量約2,000のポリプロピレングリコオールを開始剤とし、亜鉛ヘキサシアノコバルテートグライム錯体触媒にてプロピレンオキシドを重合し、数平均分子量約16,000の水酸基末端ポリオキシプロピレン重合体を得た。続いて、この水酸基末端ポリオキシプロピレン重合体の水酸基に対して1.2倍当量のNaOMeのメタノール溶液を添加してメタノールを留去し、さらに塩化アリルを1.3倍当量添加して末端の水酸基をアリル基に変換した。未反応の塩化アリルを減圧脱揮により除去し、未精製のアリル基末端ポリオキシプロピレン重合体を得た。
【0240】
得られた未精製のアリル基末端ポリオキシプロピレン重合体100重量部に対し、n-ヘキサン300重量部と、水300重量部とを混合および攪拌した後、遠心分離により水を除去した。得られたヘキサン溶液にさらに水300重量部を混合および攪拌し、再度遠心分離により水を除去した。その後、得られたヘキサン溶液からヘキサンを減圧脱揮により除去した。以上により、アリル基末端ポリオキシプロピレン重合体を得た。
【0241】
得られたアリル基末端ポリオキシプロピレン重合体100重量部に対し、白金ビニルシロキサン錯体の白金含量3wt%のイソプロパノール溶液150ppmを触媒として、当該アリル基末端ポリオキシプロピレン重合体とジメトキシメチルシランとを90℃で2時間反応させ、ジメトキシメチルシリル基末端ポリオキシプロピレン重合体(a4)を得た。H-NMR(日本電子製JNM-LA400を用いて、CDCl溶媒中で測定)を用いた測定により、得られたジメトキシメチルシリル基末端ポリオキシプロピレン重合体(a4)における、末端のジメトキシメチルシリル基は1分子あたり平均して1.3個であることを確認した。また得られたジメトキシメチルシリル基末端ポリオキシプロピレン重合体(a4)の、GPCによるポリスチレン換算の数平均分子量は16,200であった。
【0242】
(実施例1)
(A)成分として合成例1で得られたトリメトキシシリル基末端ポリオキシプロピレン重合体(a1)70重量部、(B)成分として合成例4で得られた1分子あたり平均0.9個のジメトキシメチルシリル基を有するポリオキシプロピレン重合体(b1)30重量部、(C1)成分のポリエーテル系可塑剤(三井化学SKCポリウレタン(株)製、商品名:アクトコール P-23、数平均分子量3,000)90重量部、(C2)成分のジイソデシルフタレート可塑剤(ジェイ・プラス(株)製、商品名:DIDP)15重量部、表面処理膠質炭酸カルシウム(白石工業(株)製、商品名:白艶華CCR-B)130重量部、重質炭酸カルシウム(白石カルシウム(株)製、商品名:ホワイトンSB)64重量部、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(BASF製、商品名:Tinuvin326)1重量部、ヒンダードアミン系光安定剤(BASF製、商品名:Tinuvin770)1重量部、およびヒンダードフェノール系酸化防止剤(BASF製、商品名:Irganox1010)1重量部を計量し、スパチュラで混合した。その後、得られた混合物を、3本ペイントロールに3回通して、均一に分散させた。この後、得られた混合物を、120℃で2時間減圧脱水を行い、50℃以下に冷却後、得られた混合物に脱水剤としてビニルトリメトキシシラン(MOMENTIVE製、商品名:A-171)4重量部、および、(D)成分のシラン化合物(EVONIK製、商品名:DYNASYLAN1146)1重量部を添加して混合した。その後、得られた混合物に硬化触媒として(E)成分のジオクチル錫ジラウレート(日東化成(株)製、商品名:ネオスタン U-810)0.2重量部を添加し、実質的に水分の存在しない状態で混合物を混練し、組成物を得た。その後、得られた組成物を防湿性の容器であるカートリッジに密閉し、1成分型硬化性組成物を得た。
【0243】
(実施例2)
(A)成分として合成例2で得られたトリメトキシシリル基末端ポリオキシプロピレン重合体(a2)100重量部、(C1)成分のポリエーテル系可塑剤(三井化学SKCポリウレタン(株)製、商品名:アクトコール P-23、数平均分子量3,000)90重量部、(C2)成分のジイソデシルフタレート可塑剤(ジェイ・プラス(株)製、商品名:DIDP)15重量部、表面処理膠質炭酸カルシウム(白石工業(株)製、商品名:白艶華CCR-B)160重量部、重質炭酸カルシウム(白石カルシウム(株)製、商品名:ホワイトンSB)64重量部、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(BASF製、商品名:Tinuvin326)1重量部、ヒンダードアミン系光安定剤(BASF製、商品名:Tinuvin770)1重量部、およびヒンダードフェノール系酸化防止剤(BASF製、商品名:Irganox1010)1重量部を計量し、スパチュラで混合した。その後、得られた混合物を、3本ペイントロールに3回通して、均一に分散させた。この後、得られた混合物を、120℃で2時間減圧脱水を行い、50℃以下に冷却後、得られた混合物に脱水剤としてビニルトリメトキシシラン(MOMENTIVE製、商品名:A-171)4重量部、および、(D)成分のシラン化合物(EVONIK製、商品名:DYNASYLAN1146)1重量部を添加して混合した。その後、得られた混合物に硬化触媒として(E)成分のジオクチル錫ジラウレート(日東化成(株)製、商品名:ネオスタン U-810)0.2重量部を添加し、実質的に水分の存在しない状態で混合物を混練し、組成物を得た。その後、得られた組成物を防湿性の容器であるカートリッジに密閉し、1成分型硬化性組成物を得た。
【0244】
(比較例1)
(A)成分として合成例1で得られたトリメトキシシリル基末端ポリオキシプロピレン重合体(a1)90重量部、(B)成分として合成例4で得られた1分子当たり平均0.9個のジメトキシメチルシリル基を有するポリオキシプロピレン重合体(b1)10重量部、(C2)成分のジイソデシルフタレート可塑剤(ジェイ・プラス(株)製、商品名:DIDP)90重量部、表面処理膠質炭酸カルシウム(白石工業(株)製、商品名:白艶華CCR-B)170重量部、重質炭酸カルシウム(白石カルシウム(株)製、商品名:ホワイトンSB)64重量部、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(BASF製、商品名:Tinuvin326)1重量部、ヒンダードアミン系光安定剤(BASF製、商品名:Tinuvin770)1重量部、およびヒンダードフェノール系酸化防止剤(BASF製、商品名:Irganox1010)1重量部を計量し、スパチュラで混合した。その後、得られた混合物を、3本ペイントロールに3回通して、均一に分散させた。この後、得られた混合物を、120℃で2時間減圧脱水を行い、50℃以下に冷却後、得られた混合物に脱水剤としてビニルトリメトキシシラン(MOMENTIVE製、商品名:A-171)3重量部、および、接着性付与剤(MOMENTIVE(株)製、商品名:A-1120)3重量部を添加して混合した。その後、硬化触媒として(E)成分のジオクチル錫ジラウレート(日東化成(株)製、商品名:ネオスタン U-810)0.2重量部を添加し、実質的に水分の存在しない状態で混合物を混練し、組成物を得た。その後、得られた組成物を防湿性の容器であるカートリッジに密閉し、1成分型硬化性組成物を得た。
【0245】
(比較例2)
合成例3で得られたジメトキシメチルシリル基末端ポリオキシプロピレン重合体(a3)100重量部、(C1)成分のポリエーテル系可塑剤(三井化学SKCポリウレタン(株)製、商品名:アクトコール P-23、数平均分子量3,000)90重量部、(C2)成分のジイソデシルフタレート可塑剤(ジェイ・プラス(株)製、商品名:DIDP)15重量部、表面処理膠質炭酸カルシウム(白石工業(株)製、商品名:Viscolite OS)130重量部、重質炭酸カルシウム(白石カルシウム(株)製、商品名:ホワイトンSB)64重量部、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(BASF製、商品名:Tinuvin326)1重量部、ヒンダードアミン系光安定剤(BASF製、商品名:Tinuvin770)1重量部、およびヒンダードフェノール系酸化防止剤(BASF製、商品名:Irganox1010)1重量部を計量し、スパチュラで混合した。その後、得られた混合物を、3本ペイントロールに3回通して、均一に分散させた。この後、得られた混合物を、120℃で2時間減圧脱水を行い、50℃以下に冷却後、得られた混合物に脱水剤としてビニルトリメトキシシラン(MOMENTIVE製、商品名:A-171)4重量部、および、(D)成分のシラン化合物(EVONIK製、商品名:DYNASYLAN1146)1重量部を添加して混合した。その後、得られた混合物に硬化触媒として(E)成分のジブチル錫ジアセチルアセトナート(日東化成(株)製、商品名:ネオスタン U-220H)0.5重量部を添加し、実質的に水分の存在しない状態で混合物を混練し、組成物を得た。その後、得られた組成物を防湿性の容器であるカートリッジに密閉し、1成分型硬化性組成物を得た。
【0246】
(実施例3)
(A)成分として合成例1で得られたトリメトキシシリル基末端ポリオキシプロピレン重合体(a1)70重量部、(B)成分として合成例4で得られた1分子あたり平均0.9個のジメトキシメチルシリル基を有するポリオキシプロピレン重合体(b1)30重量部、(C1)成分のポリエーテル系可塑剤(三井化学SKCポリウレタン(株)製、商品名:アクトコール P-23、数平均分子量3,000)90重量部、(C2)成分のジイソデシルフタレート可塑剤(ジェイ・プラス(株)製、商品名:DIDP)15重量部、表面処理膠質炭酸カルシウム(白石工業(株)製、商品名:白艶華CCR-B)160重量部、重質炭酸カルシウム(白石カルシウム(株)製、商品名:ホワイトンSB)64重量部、酸化チタン(石原産業(株)製、商品名:タイペークR820)10重量部、垂れ防止剤(日本アエロジル(株)製、商品名:アエロジルR972)2重量部、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(BASF製、商品名:Tinuvin326)1重量部、ヒンダードアミン系光安定剤(BASF製、商品名:Tinuvin770)1重量部、およびヒンダードフェノール系酸化防止剤(BASF製、商品名:Irganox1010)1重量部を計量し、スパチュラで混合した。その後、得られた混合物を、3本ペイントロールに3回通して、均一に分散させた。この後、得られた混合物を、120℃で2時間減圧脱水を行い、50℃以下に冷却後、得られた混合物に脱水剤としてビニルトリメトキシシラン(MOMENTIVE製、商品名:A-171)4重量部、および、(D)成分のシラン化合物(EVONIK製、商品名:DYNASYLAN1146)1重量部を添加して混合した。その後、得られた混合物に硬化触媒として(E)成分のジオクチル錫ジラウレート(日東化成(株)製、商品名:ネオスタン U-810)0.2重量部を添加し、実質的に水分の存在しない状態で混合物を混練し、組成物を得た。その後、得られた組成物を防湿性の容器であるカートリッジに密閉し、1成分型硬化性組成物を得た。
【0247】
(実施例4)
(A)成分の重合体(a1)70重量部および(B)成分の重合体(b1)30重量部の代わりに、(A)成分として合成例2で得られたトリメトキシシリル基末端ポリオキシプロピレン重合体(a2)100重量部を用いた以外は、実施例3と同様にして1成分型硬化性組成物を得た。
【0248】
(実施例5)
(C1)成分のポリエーテル系可塑剤(アクトコール P-23)90重量部および(C2)成分のジイソデシルフタレート可塑剤(DIDP)15重量部の代わりに、(C2)成分のジイソデシルフタレート可塑剤(DIDP)105重量部を用いた以外は、実施例3と同様にして1成分型硬化性組成物を得た。
【0249】
(実施例6)
(E)成分のジオクチル錫ジラウレート(ネオスタン U-810)0.2重量部の代わりに、(E)成分のジブチル錫ジアセチルアセトナート(日東化成(株)製、商品名:ネオスタン U-220H)0.1重量部を用いた以外は、実施例3と同様にして1成分型硬化性組成物を得た。
【0250】
(比較例3)
(A)成分の重合体(a1)70重量部の代わりに、合成例5で得られたジメトキシメチルシリル基末端ポリオキシプロピレン重合体(a5)70重量部を用いた以外は、実施例3と同様にして1成分型硬化性組成物を得た。
【0251】
(比較例4)
(A)成分の重合体(a1)70重量部の代わりに、重合体(a5)70重量部を用い、さらに、(E)成分のジオクチル錫ジラウレート(ネオスタン U-810)0.2重量部の代わりに、(E)成分のジブチル錫ジアセチルアセトナート(ネオスタン U-220H)0.5重量部を用いた以外は、実施例3と同様にして1成分型硬化性組成物を得た。
【0252】
(比較例5)
(D)成分(DYNASYLAN1146)1重量部の代わりに、アミノシラン化合物(N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、MOMENTIVE製、商品名:A-1120、)2重量部を用いた以外は、実施例3と同様にして1成分型硬化性組成物を得た。
【0253】
(比較例6)
(E)成分のジオクチル錫ジラウレート(ネオスタン U-810)0.2重量部の代わりに、(E)成分のジオクチル錫ジラウレート(ネオスタン U-810)1重量部を用いた以外は、実施例3と同様にして1成分型硬化性組成物を得た。
【0254】
(実施例7)
(E)成分のジオクチル錫ジラウレート(ネオスタン U-810)0.2重量部の代わりに、(E)成分のジオクチル錫ジラウレート(ネオスタン U-810)0.1重量部を用いた以外は、実施例3と同様にして1成分型硬化性組成物を得た。
【0255】
(実施例8)
(E)成分のジオクチル錫ジラウレート(ネオスタン U-810)0.2重量部の代わりに、(E)成分のジオクチル錫ジラウレート(ネオスタン U-810)0.07重量部を用いた以外は、実施例3と同様にして1成分型硬化性組成物を得た。
【0256】
(実施例9)
(E)成分のジオクチル錫ジラウレート(ネオスタン U-810)0.2重量部の代わりに、(E)成分のジオクチル錫ジラウレート(ネオスタン U-810)0.05重量部を用いた以外は、実施例3と同様にして1成分型硬化性組成物を得た。
【0257】
(比較例7)
(E)成分のジオクチル錫ジラウレート(ネオスタン U-810)0.2重量部の代わりに、(E)成分のジオクチル錫ジラウレート(ネオスタン U-810)0.01重量部を用いた以外は、実施例3と同様にして1成分型硬化性組成物を得た。
【0258】
(皮張り時間)
上記で得られた1成分型硬化性組成物を、厚さ約3mmの型枠に充填して表面を平面状に整えた。平面状への整えが完了した時間を硬化開始時間とし、表面をミクロスパチュラで触り、ミクロスパチュラに当該硬化性組成物が付着しなくなった時間を皮張り時間として測定を行った。皮張り時間は、23℃(50%RH)の条件下で測定した。試験結果を表1~4に示した。
【0259】
(深部硬化性)
上記で得られた1成分型硬化性組成物を直径12mmのポリエチレン製の円筒状容器に気泡が入らないように充填し、表面を平面状に整えて試験体を作製した。当該試験体を、23℃(50%RH)で1日間、および7日間静置した。1日静置後および7日静置後、それぞれにおいて、試験体の硬化した部分を取り出し、付着している未硬化部分を取り除き、硬化した部分の厚さを、ノギスを用いて測定した。なお、硬化した部分が無い場合(未硬化の場合)は、「測定不能」とした。試験結果を表1~3に示した。
【0260】
(作業性)
上記で得られた1成分型硬化性組成物を5℃に設定した恒温槽内に5時間以上静置して状態調節を行った。その後、当該硬化性組成物を100mlの容器に気泡が入らないように充填した。次いで、速やかに直径8mmのガラス棒を当該硬化性組成物中に挿入した後、5℃に設定した恒温槽付き引張試験機を用いて、引張速度1000mm/分にてガラス棒を硬化性組成物中から引き抜いた。引き抜いた際、ガラス棒の先端から垂れた硬化性組成物の長さを測定した。試験結果を表1~3に示した。作業性は、糸引き性ともいえる。
【0261】
(引張り試験)
上記で得られた1成分型硬化性組成物をポリエチレン製の型枠に気泡が入らないように厚さ3mmにて充填し、23℃、50%RHで3日間、さらに50℃で4日間養生させた。得られた厚さ3mmの硬化物シートから、3号ダンベル型に打ち抜き試験片とした。当該試験片を用いて、23℃(50%RH)で引張試験(引張速度200mm/分)を行い、50%モジュラス、100%モジュラス、破断時の強度(破断強度)、および破断時の伸び(破断時伸び)を測定した。なお、硬化しなかった場合(未硬化の場合)は、「測定不能」とした。試験結果を表1~4に示した。
【0262】
(圧縮復元率)
上記で得られた1成分型硬化性組成物に対して、JIS A1439(2016年版)5.12耐久性試験の表2-耐久性試験手順に記載の耐久性区分9030の試験手順1~6を行った。その後に測定した数値を用いて、下記式にて算出した。
【0263】
すなわち、被着体としてアルミニウム板およびプライマーとして市販品プライマー(セメダイン製、商品名:MP-1000)を用いて、目地幅12mmのH型試験体を作製し、23℃×14日間(50%RH)+30℃×14日間の養生を行なった。次に、50℃温水中にH型試験体を24時間浸漬した後、23℃×24時間(50%RH)で放置した。その後、H型試験体を30%圧縮し、90℃で7日間(168時間)固定した。その後、H型試験体を23℃で開放し(すなわち圧縮を解除し)24時間(50%RH)放置した後の復元率を測定した。復元率が大きい方が復元性に優れていることを表す。なお、硬化しなかった場合(未硬化の場合)は、「測定不能」とした。試験結果を表1~4に示した。
【0264】
圧縮復元率(%)=(L2-L1/L0-L1)×100
ここで、
L0:加熱圧縮前の硬化性組成物の圧縮方向の厚み
L1:加熱圧縮時の硬化性組成物の圧縮方向の厚み
L2:JIS A1439耐久性区分9030の試験手順1~6を実施し、23℃50%RHで1日間(24時間)放置後の硬化性組成物の圧縮方向の厚み。
【0265】
(耐久性試験)
上記で得られた1成分型硬化性組成物に対して、被着体としてアルミニウム板およびプライマーとして市販品プライマー(セメダイン製、商品名:MP-1000)を使用し、JIS A1439(2016年版)5.12耐久性試験の表2-耐久性試験手順に記載の耐久性の区分9030に準拠して試験を行った。
【0266】
耐久性試験の評価は、上記JIS記載の試験手順1~9を実施後、被着体と硬化物との接着界面の亀裂の状態を目視で観察した。亀裂がないものを合格とし、亀裂があるものを不合格とした。試験結果を表1~4に示した。
【0267】
【表1】
【0268】
【表2】
【0269】
【表3】
【0270】
【表4】
【0271】
表1~4から分かるように、本発明の一実施形態に係る硬化性組成物(実施例1~9)はJIS A5758(2016年版)4.2 C)の表4-耐久性による区分9030に合格することが分かる。さらに圧縮復元率も良好なことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0272】
本発明の一実施形態に係る硬化性組成物は、圧縮復元率、変位追従性および耐久性に優れ、建築物のワーキングジョイントのシーリング材として適用可能な硬化物を提供できる。そのため、本発明の一実施形態に係る硬化性組成物は、粘着剤、シーリング材、接着剤、型取剤、防振材、制振材、防音材、発泡材料、塗料、吹付材などに好適に利用できる。本発明の一実施形態に係る硬化性組成物は、特に、ワーキングジョイント用の1成分型硬化性組成物として好適に利用できる。