(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023075954
(43)【公開日】2023-06-01
(54)【発明の名称】鉄筋結合具、及び鉄筋交差部結合装置
(51)【国際特許分類】
E04G 21/12 20060101AFI20230525BHJP
E04C 5/18 20060101ALI20230525BHJP
【FI】
E04G21/12 105E
E04C5/18 103
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021189055
(22)【出願日】2021-11-20
(71)【出願人】
【識別番号】592007508
【氏名又は名称】株式会社サトウ
(74)【代理人】
【識別番号】100090549
【弁理士】
【氏名又は名称】加川 征彦
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 収一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 進
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 忠之
【テーマコード(参考)】
2E164
【Fターム(参考)】
2E164BA33
(57)【要約】
【課題】鉄筋結合具を単に上から押し込む簡単な操作で鉄筋交差部を結合可能な鉄筋結合具3を得る。その鉄筋結合具を用いて安価に実現できる鉄筋交差部結合装置71を得る。
【解決手段】鉄筋結合具は上側鉄筋挿通部5と下向きC形断面穴形状の下側鉄筋挿通用空間6を持つ下側鉄筋挿通部7とを備え、下側鉄筋挿通部7の上面に平坦部7aを有し鉄筋結合具3の両側面に係止凹所9を有する。鉄筋交差部結合装置71は結合具を縦に収容する結合具マガジン12と、最下段結合具受止め手段14と下から2番目結合具受止め手段16と開放されて落下した鉄筋結合具を一時的に受け止める一時受止め手段18と、先端に結合具押込み部21aを取付けた結合具押込みシリンダ21と、マガジン昇降手段20と、結合具マガジン12を、結合具押込み部21aが鉄筋結合具の上方に位置するように、結合具押込みシリンダ21と一体に横移動させるマガジン横移動手段23と備える。
【選択図】
図4A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視で互いに交差する上側鉄筋1と下側鉄筋2との鉄筋交差部を結合するための可撓性材料からなる鉄筋結合具3であって、
前記上側鉄筋1を通す下側開放の上側鉄筋挿通用空間4を有する上側鉄筋挿通部5と、
前記上側鉄筋挿通用空間4の左右両側に設けられて、交差する下側鉄筋2を通す下側鉄筋挿通用空間6を有する下側鉄筋挿通部7とを備え、
前記下側鉄筋挿通用空間6は、下側鉄筋2を当該下側鉄筋挿通用空間6に下方から弾性変形を伴う押し込み挿入することが可能な程度に狭まった下部開口8を有して下向きC形断面穴形状をなしており、
前記下側鉄筋挿通部7の上面に、当該鉄筋結合具3と同形状の鉄筋結合具3を積み重ねることを可能にする平坦部7aを有することを特徴とする鉄筋結合具。
【請求項2】
前記鉄筋結合具3の両側面が平坦面でありその平坦な両側面に、当該鉄筋結合具3が下方に移動しないように保持するための係止片14a、16aが入り込むことを可能にする係止凹所9を有することを特徴とする請求項1記載の鉄筋結合具。
【請求項3】
前記鉄筋結合具における下側鉄筋挿通部の下端面が、当該鉄筋結合具に互いに交差する上側鉄筋及び下側鉄筋を挿通させた状態で下側鉄筋の下面より下側に位置しないことを特徴とする請求項1又は2の記載の鉄筋結合具。
【請求項4】
平面視で互いに交差する上側鉄筋1と下側鉄筋2との鉄筋交差部を請求項1~3のいずれか1項の鉄筋結合具3を用いて結合する鉄筋交差部結合装置71であって、
前記鉄筋交差部の上方において複数の前記鉄筋結合具を縦に重ねて収容可能な筒状の結合具マガジン12と、
前記結合具マガジン12に収容された最下段の鉄筋結合具を受止め解除可能に受止める最下段結合具受止め手段14と、
下から2番目の鉄筋結合具を受止め解除可能に受止める下から2番目結合具受止め手段16と、
最下段結合具受止め手段14から開放されて落下した鉄筋結合具を、この鉄筋結合具が鉄筋交差部に達しない位置で左右から一時的に受け止める一時受止め手段18と、
前記結合具マガジン12の側面に一体に取り付けられた、先端に結合具押込み部21aを取付けた下向きのピストンロッド21bを有する結合具押込みシリンダ21と、
前記結合具マガジン12を昇降駆動するマガジン昇降手段20と、
前記結合具マガジン12を、前記結合具押込みシリンダ21の前記結合具押込み部21aが鉄筋結合具の上方に位置するように、前記結合具押込みシリンダ21と一体に横移動させるマガジン横移動手段23とを備えたことを特徴とする鉄筋交差部結合装置。
【請求項5】
平面視で互いに交差する上側鉄筋1と下側鉄筋2との鉄筋交差部を
請求項1~3のいずれか1項の鉄筋結合具3を用いて結合する鉄筋交差部結合装置81、81’であって、
前記鉄筋交差部より上方において、前記鉄筋交差部の横方向の片側に位置して、複数の鉄筋結合具を縦に重ねて収容可能な底板32a付き筒状で位置移動をしない結合具マガジン32を備え、
前記結合具マガジン32に収容された下から2番目の鉄筋結合具を受止め解除可能に受止める下から2番目結合具受止め手段36と、
前記結合具マガジン32の底部近傍の横方向の前後壁の前側壁に、最下位の鉄筋結合具3が通過可能な前側下部開口32cを有し、
その反対側の後側壁に設けた後側下部開口の外側に鉄筋結合具を前記前側下部開口32cから押し出すための結合具押出しシリンダ39を有し、
前記結合具押出しシリンダ39のピストンロッドに固定された、最下段の鉄筋結合具3のみを押し出す面を持つ押出しプレート45を有し、
前記押出しプレート45によって押し出された鉄筋結合具3が鉄筋交差部の真上に位置するように鉄筋結合具3を受け止める受け止め部44を有し、
この受け止め部44で受け止められた鉄筋結合具3を上から鉄筋交差部に押し込んで上下の鉄筋を結合する結合具押込みシリンダ41を有する
ことを特徴とする鉄筋交差部結合装置。
【請求項6】
前記押出しプレート45の前面に、鉄筋結合具3の上側鉄筋挿通用空間を挿通可能な位置及び外径の棒状部材46を固定したことを特徴とする請求項5記載の鉄筋交差部結合装置。
【請求項7】
平面視で互いに交差する上側鉄筋1と下側鉄筋2との交差部を請求項1~3のいずれか1項の鉄筋結合具3を用いて結合する鉄筋交差部結合装置91であって、
前記鉄筋交差部の上方において複数の前記鉄筋結合具を縦に重ねて収容可能な筒状の結合具マガジン52と、
前記結合具マガジン52に収容された最下段の鉄筋結合具を受止め解除可能に受止める最下段結合具受止め手段54と、
下から2番目の鉄筋結合具を受止め解除可能に受止める下から2番目結合具受止め手段56と、
最下段結合具受止め手段54から開放されて落下した鉄筋結合具を、この鉄筋結合具が鉄筋交差部に達しない位置で左右から一時的に受け止める一時受止め手段58と、
前記結合具マガジン52を昇降駆動するマガジン昇降手段50と、
前記結合具マガジン52が上昇した状態で前記鉄筋交差部の真上位置まで横移動可能に設けられた、先端に結合具押込み部51aを取付けた下向きのピストンロッド51bを有する結合具押込みシリンダ51と
を備えたことを特徴とする鉄筋交差部結合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、平面視で互いに交差する上側鉄筋1と下側鉄筋2との交差部を結合するための鉄筋結合具、及び、この鉄筋結合具を用いて鉄筋交差部を自動的に結合する鉄筋交差部結合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建築構造物や土木構造物等の構造物の構築に際して、コンクリートに埋め込む鉄筋を配置する場合、交差する上下の鉄筋の交差部を結合することが必要であるが、上下の鉄筋交差部をワイヤ(番線)を用いて手作業で結合するのは作業性が悪いので、種々の鉄筋結合具が用いられている。
この種の鉄筋結合具として一般に、鋼板製の鉄筋結合具(以下では、場合により単に結合具と略す)が採用されている(特許文献1~4参照)。
本願発明の鉄筋結合具は鋼板製ではないので、いずれも鋼板製である特許文献1~4の鉄筋結合具の具体的形状・構造の詳細説明は省略するが、これら従来の鋼板製の鉄筋結合具はいずれも、基本的には鋼板を二つ折りした構造であり、鉄筋結合具の二つ折り鋼板部を鉄筋交差部に押し込んで鉄筋を挟み込む構造なので、鉄筋がガタつかずに安定して保持することは必ずしもできない。
【0003】
各特許文献について簡単に説明すると、特許文献1は、上下の直交する鉄筋のそれぞれを挟み込む二つ折り鋼板部(折り返し部)を形成可能に切り取った形状の鋼板を、それぞれ折り返して上下の鉄筋をいずれも二つ折り鋼板部(折り返し部)で挟み込む構成である。
特許文献2は、上側の鉄筋が二つ折り鋼板部(折り返し部)で挟み込まれる構成である。
特許文献3は、下側の鉄筋が、折り返した鋼板の折り返し部から離れた下側部分で挟み込まれている。
特許文献4は、鋼板を下側の鉄筋の外周面に沿って密着するように折り返した構成である。
【0004】
上述した各鉄筋結合具に限らず、鉄筋結合具を用いて上下の鉄筋交差部を結合する手段としては、作業者が鉄筋結合具を直接手で押し込むか、作業者が何らかの工具を用いて押し込んでいる。
上記の特許文献1では、特許文献1の
図16で示された結束用工具100が使用されている。
上記の特許文献2では、特許文献2の
図11で示された装着治具30が使用されている。
上記の特許文献3では、特に工具は示されていないが、簡単な構造なので手作業を想定しているものと思われる。
上記の特許文献4では、特許文献4の
図1で示された鉄筋結束機(工具である)20が使用されている。
【0005】
上記のように鉄筋結合具による上下の鉄筋交差部の結合を、作業者が工具を用いて行うのは、鉄筋交差部の数が多く能率的でないので、人力を用いない鉄筋交差部結合装置が望まれる。
従来より、人力を用いない鉄筋交差部結合装置は種々提案されているが、その殆どの場合、鉄筋交差部をワイヤで結合(結束)する装置である。
本願発明が対象とする鉄筋結合具は、鉄筋交差部に上から押し込むことで結合する鉄筋結合具であってワイヤではない。したがって、ワイヤで結束する装置について具体的構成を説明する必要はないため、特許文献としての記載はしないが、例えば、特開平8-199818、特開2017-20282、特開平6-219420、特開2020-128681、特開2020-197072、特開平8-109744、特開2019-039174、特開2005-188064、その他多数存在する。
格子状に配置された鉄筋の多数の鉄筋交差部を自動装置によりワイヤで結合(結束)するためには、かなり複雑な機械的機構及び高精度の制御機構が必要であり、例えばロボットを用いる方式等、設備費が極めて高額になると思われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6-193200
【特許文献2】特開平11-336325
【特許文献3】特開2004-232373
【特許文献4】特開平7-310435
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した通り、従来の鋼板製の鉄筋結合具はいずれも、鉄筋がガタつかずに安定して保持することは必ずしもできない。
【0008】
また、前述した通り、鉄筋交差部結合装置として、ロボットを用いる方式は複雑な機械的機構及び高精度の制御機構が必要であり、設備費が高額になると思われる。
【0009】
本発明は上記背景のもとになされたもので、鉄筋交差部の結合を、ワイヤで結束するのではなく、鉄筋交差部に鉄筋結合具を単に上から押し込むという簡単な操作で結合することが可能な鉄筋結合具を提供することを目的とする。
また、そのような鉄筋結合具を用いて、安価に実現できる鉄筋交差部結合装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する請求項1の発明は、
平面視で互いに交差する上側鉄筋1と下側鉄筋2との鉄筋交差部を結合するための可撓性材料からなる鉄筋結合具3であって、
前記上側鉄筋1を通す下側開放の上側鉄筋挿通用空間4を有する上側鉄筋挿通部5と、
前記上側鉄筋挿通用空間4の左右両側に設けられて、交差する下側鉄筋2を通す下側鉄筋挿通用空間6を有する下側鉄筋挿通部7とを備え、
前記下側鉄筋挿通用空間6は、下側鉄筋2を当該下側鉄筋挿通用空間6に下方から弾性変形を伴う押し込み挿入することが可能な程度に狭まった下部開口8を有して下向きC形断面穴形状をなしており、
前記下側鉄筋挿通部7の上面に、当該鉄筋結合具3と同形状の鉄筋結合具3を積み重ねることを可能にする平坦部7aを有することを特徴とする。
【0011】
請求項2は、請求項1の鉄筋結合具において、
前記鉄筋結合具3の両側面が平坦面でありその平坦な両側面に、当該鉄筋結合具3が下方に移動しないように保持するための係止片14a、16aが入り込むことを可能にする係止凹所9を有することを特徴とする。
【0012】
請求項3は、請求項1又は2の鉄筋結合具において、
前記鉄筋結合具における下側鉄筋挿通部の下端面が、当該鉄筋結合具に互いに交差する上側鉄筋及び下側鉄筋を挿通させた状態で下側鉄筋の下面より下側に位置しないことを特徴とする。
【0013】
請求項4の発明は、
平面視で互いに交差する上側鉄筋1と下側鉄筋2との鉄筋交差部を請求項1~3のいずれか1項の鉄筋結合具3を用いて結合する鉄筋交差部結合装置71であって、
前記鉄筋交差部の上方において複数の前記鉄筋結合具を縦に重ねて収容可能な筒状の結合具マガジン12と、
前記結合具マガジン12に収容された最下段の鉄筋結合具を受止め解除可能に受止める最下段結合具受止め手段14と、
下から2番目の鉄筋結合具を受止め解除可能に受止める下から2番目結合具受止め手段16と、
最下段結合具受止め手段14から開放されて落下した鉄筋結合具を、この鉄筋結合具が鉄筋交差部に達しない位置で左右から一時的に受け止める一時受止め手段18と、
前記結合具マガジン12の側面に一体に取り付けられた、先端に結合具押込み部21aを取付けた下向きのピストンロッド21bを有する結合具押込みシリンダ21と、
前記結合具マガジン12を昇降駆動するマガジン昇降手段20と、
前記結合具マガジン12を、前記結合具押込みシリンダ21の前記結合具押込み部21aが鉄筋結合具の上方に位置するように、前記結合具押込みシリンダ21と一体に横移動させるマガジン横移動手段23とを備えたことを特徴とする。
【0014】
請求項5の発明は、
平面視で互いに交差する上側鉄筋1と下側鉄筋2との鉄筋交差部を
請求項1~3のいずれか1項の鉄筋結合具3を用いて結合する鉄筋交差部結合装置81、81’であって、
前記鉄筋交差部より上方において、前記鉄筋交差部の横方向の片側に位置して、複数の鉄筋結合具を縦に重ねて収容可能な底板32a付き筒状で位置移動をしない結合具マガジン32を備え、
前記結合具マガジン32に収容された下から2番目の鉄筋結合具を受止め解除可能に受止める下から2番目結合具受止め手段36と、
前記結合具マガジン32の底部近傍の横方向の前後壁の前側壁に、最下位の鉄筋結合具3が通過可能な前側下部開口32cを有し、
その反対側の後側壁に設けた後側下部開口の外側に鉄筋結合具を前記前側下部開口32cから押し出すための結合具押出しシリンダ39を有し、
前記結合具押出しシリンダ39のピストンロッドに固定された、最下段の鉄筋結合具3のみを押し出す面を持つ押出しプレート45を有し、
前記押出しプレート45によって押し出された鉄筋結合具3が鉄筋交差部の真上に位置するように鉄筋結合具3を受け止める受け止め部44を有し、
この受け止め部44で受け止められた鉄筋結合具3を上から鉄筋交差部に押し込んで上下の鉄筋を結合する結合具押込みシリンダ41を有する
ことを特徴とする。
【0015】
請求項6は、請求項5記載の鉄筋交差部結合装置において、
前記押出しプレート45の前面に、鉄筋結合具3の上側鉄筋挿通用空間を挿通可能な位置及び外径の棒状部材46を固定したことを特徴とする。
【0016】
請求項7の発明は、
平面視で互いに交差する上側鉄筋1と下側鉄筋2との交差部を請求項1~3のいずれか1項の鉄筋結合具3を用いて結合する鉄筋交差部結合装置91であって、
前記鉄筋交差部の上方において複数の前記鉄筋結合具を縦に重ねて収容可能な筒状の結合具マガジン52と、
前記結合具マガジン52に収容された最下段の鉄筋結合具を受止め解除可能に受止める最下段結合具受止め手段54と、
下から2番目の鉄筋結合具を受止め解除可能に受止める下から2番目結合具受止め手段56と、
最下段結合具受止め手段54から開放されて落下した鉄筋結合具を、この鉄筋結合具が鉄筋交差部に達しない位置で左右から一時的に受け止める一時受止め手段58と、
前記結合具マガジン52を昇降駆動するマガジン昇降手段50と、
前記結合具マガジン52が上昇した状態で前記鉄筋交差部の真上位置まで横移動可能に設けられた、先端に結合具押込み部51aを取付けた下向きのピストンロッド51bを有する結合具押込みシリンダ51とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明の鉄筋結合具によれば、鉄筋結合具3を鉄筋交差部に押し込むだけで、上下の鉄筋の交差部を結合できる。したがって、自動的に鉄筋結合操作を行う鉄筋交差部結合装置を実現可能にしている。
(イ)鉄筋挿通部7の上面に、当該鉄筋結合具3と同形状の鉄筋結合具3を積み重ねることを可能にする平坦部7aを有しているので、鉄筋交差部結合装置として、積み重ねた多数の鉄筋結合具を最下部から順次供給する縦型の結合具供給部(実施例の結合具マガジン12、32、52)を採用することが可能となっている。
(ロ)鉄筋結合具3の両側面が平坦なので、鉄筋交差部結合装置として、上記の通り縦型の結合具供給部(実施例の結合具マガジン12、32、52)を採用することが可能となっている。
(ハ)下側鉄筋挿通用空間6は、下側鉄筋2を当該下側鉄筋挿通用空間6に下方から弾性変形を伴う押し込み挿入することが可能な程度に狭まった下部開口8を有して下向きC形断面穴形状をなしているので、鉄筋結合具3を単に鉄筋交差部に押し込むことで上下の鉄筋を結合させることを可能としており、自動的に鉄筋結合操作を行う鉄筋交差部結合装置を実現可能にしている。
【0018】
請求項2のように両側面に係止凹所9を設けた鉄筋結合具3によれば、後述する鉄筋交差部結合装置71、81、91における結合具受止め手段16、36、56の通り、縦型の結合具マガジン12、32、52に収容した結合具3を一時的に受け止める手段を適切にかつ容易に構成することができる。
請求項3の鉄筋結合具は、下側鉄筋挿通部の下端面(下端部)が、当該鉄筋結合具に互いに交差する上側鉄筋及び下側鉄筋を挿通させた状態で下側鉄筋の下面より下側に位置していないが、仮に下面より下側に位置している(足が下に延びている)とすれば、不都合が生じる。
すなわち、この鉄筋結合具3を用いて製作された複数のユニット鉄筋を例えばトラックに積んで運搬する際に、鉄筋結合具3の鉄筋挿通部の下端部が下側のユニット鉄筋の鉄筋結合具3に干渉して、上下のユニット鉄筋の鉄筋結合具3にトラブルが発生する惧れがある。しかし、請求項3の鉄筋結合具によればそのようなトラブルは発生しない。
【0019】
請求項4又は請求項7の発明の鉄筋交差部結合装置71、91によれば、鉄筋結合具を供給する結合具供給部が縦型の結合具マガジン12、52であり、この結合具マガジン12に収容された最下段の鉄筋結合具及び下から2番目の鉄筋結合具をそれぞれ受止め解除可能に受止める2個所の結合具受止め手段14、16を操作して縦型の結合具マガジン32、52から結合具3を1個ずつ落下させる構成や、落下した結合具3を一時受止める一時受止め手段18、58を有している構成などにより、
極めて簡潔な構成でもって、自動的に多数の結合具3を順次一つずつ落下させ鉄筋交差部に押し込んで上下の鉄筋を結合する動作を実現している。
すなわち、鉄筋結合具3の効果を述べた前記(イ)、(ロ)、(ハ)の効果を極力実現する構成となっている。
なお、請求項4の鉄筋交差部結合装置71と請求項7の鉄筋交差部結合装置91とは、一方は結合具マガジン12を横移動させ他方は結合具マガジン52を昇降させる構成であるが、鉄筋交差部結合設備171、191の設置場所の環境や、
図14で説明している鉄筋交差組立台200の構造その他の状況に応じて適切に選択することができる。
【0020】
請求項5の発明の鉄筋交差部結合装置81によれば、鉄筋結合具を供給する結合具供給部が上下や左右の位置移動をしない縦型の結合具マガジン32であり、この縦型の結合具マガジン32の下端部から結合具3を1個ずつ横にスライドさせて結合具マガジン32の外側に位置させ、この外側に位置させた結合具3を結合具押込みシリンダ41で鉄筋交差部に押し込む構成、特に結合具マガジンの移動がないという簡潔な構成でもって、自動的に多数の結合具3を順次一つずつ落下させ鉄筋交差部に押し込んで上下の鉄筋を結合する動作を実現している。
すなわち、鉄筋結合具3の効果を述べた前記(イ)、(ロ)、(ハ)の効果を極力実現する構成となっている。
【0021】
請求項4~7に記載の鉄筋交差部結合装置において、対象とする鉄筋結合具3が請求項1~3のいずれか1項に記載の構造であれば、自動的に鉄筋結合を行う機構を構成することが容易であり、また、能率的に自動結合作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施例の鉄筋結合具の一実施例を示すもので、(イ)は正面図(但し、
図3以下の鉄筋交差部結合装置の説明図においては、右側面図に相当する)、(ロ)は右側面図、(ハ)は平面図である。
【
図2】
図1の鉄筋結合具で直交交差する上下の鉄筋を結合する過程を示す図であり、正面図では(イ)、(ロ)、(ハ)の順、側面図では(ニ)、(ホ)、(ヘ)の順で結合する。なお、
図1、2における鉄筋結合具3の正面図は、鉄筋交差部結合設備を説明する
図3以下の図においては右側面図となる。
【
図3】上述の鉄筋結合具3で上下鉄筋の鉄筋交差部を自動的に鉄筋結合する第1実施例の鉄筋交差部結合装置71を複数設置してなる鉄筋交差部結合設備171の全体構成を模式的に示したもので、(イ)は平面図、(ロ)は(イ)の正面図、(ハ)は(イ)の右側面図である。
【
図4A】
図4A~
図4Dは
図3における一つの鉄筋交差部結合装置71の構成及び動作を説明する拡大した右側面図であり、
図4Aは鉄筋交差部結合動作が始まる初期状態を示す図である。
【
図4B】前記鉄筋交差部結合動作における
図4Aの初期状態に続く第2段階の状態を示す図である。
【
図4C】前記鉄筋交差部結合動作における
図4Bの第2段階に続く第3段階の状態を示す図である。
【
図4D】前記鉄筋交差部結合動作における
図4Cの第3段階に続く第4段階の状態(結合具3を鉄筋交差部に押し込んで結合させた状態)を示す図である。
【
図5】上述の鉄筋結合具3で上下鉄筋の鉄筋交差部を自動的に鉄筋結合する第2実施例の鉄筋交差部結合装置81(81’)を複数設置してなる鉄筋交差部結合設備181の全体構成を模式的に示したもので、(イ)は平面図、(ロ)は(イ)の正面図、(ハ)は(イ)の右側面図である
【
図6A】
図6A(イ)、
図6B、
図6C、
図6Dは
図5における一つの鉄筋交差部結合装置81の構成及び動作を説明する拡大した正面図であり、
図6Aは鉄筋交差部結合動作が始まる初期状態を示す図である。
図6Aの(ロ)は(イ)の右側面図、(ハ)は(イ)における結合具押出しシリンダ41のみを示した側面図である。
【
図6B】前記鉄筋交差部結合動作における
図6Aの初期状態に続く第2段階の状態を示す図である。
【
図6C】前記鉄筋交差部結合動作における
図6Bの第2段階に続く第3段階の状態を示す図である。
【
図6D】前記鉄筋交差部結合動作における
図6Cの第3段階に続く第4段階の状態(結合具3を鉄筋交差部に押し込んで結合させた瞬間)を示す図である(次に、
図6Aの初期状態に戻る)。
【
図7】
図5における一つの鉄筋交差部結合装置の他の実施例である第3実施例(鉄筋交差部結合装置81’)を拡大して示すもので、(イ)は鉄筋交差部結合動作が始まる初期状態の正面図、(ロ)は側面図、(ハ)は(イ)における結合具押出しシリンダ41’のみを示した側面図である。
【
図8】
図7の初期状態から結合具3を鉄筋交差部の真上の位置に移動させた状態を示す図である(
図8(イ)、(ハ)は、
図7(イ)、(ハ)に対応させた図番)。
【
図9】上述の鉄筋結合具3で上下鉄筋の鉄筋交差部を自動的に鉄筋結合する第4実施例の鉄筋交差部結合装置91を複数設置してなる鉄筋交差部結合設備191の全体構成を模式的に示したもので、(イ)は平面図、(ロ)は(イ)の正面図、(ハ)は(イ)の右側面図である
【
図10】(イ)は
図9における一つの鉄筋交差部結合装置91の構成、及び動作を説明する拡大した右側面図であり、鉄筋交差部結合動作が始まる初期状態を示す図、(ロ)は(イ)の要部の正面図である。
【
図11】(イ)は前記鉄筋交差部結合動作における
図10の初期状態に続く第2段階の状態を示す図、(ロ)は(イ)の要部の正面図である。
【
図12】前記鉄筋交差部結合動作における
図11の第2段階に続く第3段階の状態を示す図、(ロ)は(イ)の要部の正面図である。
【
図13】前記鉄筋交差部結合動作における
図12の第3段階に続く第4段階の状態(結合具3を鉄筋交差部に押し込む直前の状態)を示す図である。
【
図14】本発明の鉄筋交差部結合装置を複数設置してなる鉄筋交差部結合設備における鉄筋受台として採用可能な鉄筋交差組立台の模式的な説明図で、(イ)は平面図、(ロ)は(イ)の正面図、(ハ)は(イ)の右側面図である。
【
図15】本発明の他の実施例の鉄筋結合具3
1を示す正面図である。
【
図16】本発明のさらに他の実施例の鉄筋結合具3
2を示すもので、(イ)は正面図、(ロ)は右側面図である((イ)では鉄筋1、2も図示)。
【
図17】種々の角度で交差する結合具の実施例を示すもので、(イ)は上述の各実施例における直交する角度の場合、(ロ)は角度60°で交差する場合、(ハ)は角度45°で交差する場合、(ニ)は角度30°で交差する場合である。(ホ)は前記角度45°交差の場合を三面図で示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の鉄筋結合具、及び鉄筋交差部結合装置を実施するための形態について、図面を参照して説明する。
【実施例0024】
図1は本発明の一実施例の鉄筋結合具3を示すもので、同図(イ)は正面図、(ロ)は右側面図、(ハ)は平面図である。
図2はこの鉄筋結合具3により、直交して交差する上側鉄筋1と下側鉄筋2とを結合する要領を示す図である。
なお、以下では鉄筋結合具を場合により単に結合具と略す。
この鉄筋結合具3は、上側鉄筋1を通す下側開放の上側鉄筋挿通用空間4を有する上側鉄筋挿通部5と、前記上側鉄筋挿通用空間4の左右両側に設けられて、直交する下側鉄筋2を通す下側鉄筋挿通用空間6を有する下側鉄筋挿通部7とを備えている。
そして、前記下側鉄筋挿通用空間6は、
図1(ロ)に示すように下側鉄筋2を当該下側鉄筋挿通用空間6に下方から弾性変形を伴う押し込み挿入することが可能な程度に狭まった下部開口8を有して下向きC形断面穴形状をなしている。
前記下側鉄筋挿通部7の上面に、当該鉄筋結合具3と同形状の鉄筋結合具3を積み重ねることを可能にする平坦部7aを有している。図示例では下側鉄筋挿通部7の上面全体が平坦面であるが、少なくとも側面図の幅方向中央部に一定広さの平坦面があればよい。
また、鉄筋結合具3の両側面に、当該鉄筋結合具3が落下しないように保持するための図示せぬ係止片(例えば後述する
図4Aの止めピン14a、16aなどの係止片)が入り込むことが可能な係止孔9を有している。図示例の係止孔9は円錐孔であるが、形状は特に限定されない。また、孔でなく溝状であってもよい。なお、本願の各図面において、破線で示すべき係止孔9を実線で示している場合がある(微小部分であり破線で示すことが困難のため)。
この実施例の鉄筋結合具3は樹脂製であり、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、ABS樹脂(アクリロニトリル・プタジエン・スチレン樹脂)等を用いることができる。
図示例の鉄筋結合具3における下部開口8の角度θ(円形孔輪郭における角度θ)としては、使用する材料の曲げ弾性率によって異なるが、例えば55°~140°、あるいは60°~110°、あるいは60°~80°程度の角度範囲が考えられる。
なお、下向きC形断面穴形状の下部開口8の幅寸法(乃至角度)によっては、例えば銅やアルミニューム等の軟質の金属を用いることも考えられる。
なお、実施例の鉄筋結合具3は、例えば呼び名D10の上側鉄筋1、及び呼び名D13下側鉄筋2を想定している。但し、対象とする鉄筋のサイズは限定されない。
【0025】
この鉄筋結合具3で上下の鉄筋1、2の鉄筋交差部を結合する要領は
図2に示す通りであり、鉄筋結合具3を
図2(イ)、(ニ)に示すように鉄筋交差部の上方に位置させ、これを押し下げると、鉄筋結合具3の上側鉄筋挿通用空間4に上側鉄筋1が入り、鉄筋結合具3の下側鉄筋挿通部7の下端面が下側鉄筋2に触れる。鉄筋結合具3をさらに押し下げると、
図2(ホ)のように、下側鉄筋挿通部7の下端部が左右に開いて下側鉄筋挿通用空間6の下部開口8が広がり、さらに押し込むと、
図2(ハ)、(ヘ)のように下側鉄筋2が下側鉄筋挿通用空間6内に収まり、下側鉄筋挿通用空間6の下部開口8が元の状態に戻る。上側鉄筋1は上側鉄筋挿通用空間4の上端まで入り込む。
このように、鉄筋結合具3を鉄筋交差部に押し込むだけで、上下の鉄筋を結合できる。
前記結合具マガジン12に収容された最下段の結合具3を、その係止孔9に嵌入可能な係止片としての止めピン14aで受止め解除可能に受止める最下段結合具受止め手段14、及び、下から2番目の結合具3を同様に係止片としての止めピン16aで受止め解除可能に受止める下から2番目結合具受止め手段16を備えている。この最下段結合具受止め手段14及び下から2番目結合具受止め手段16は、例えば流体圧シリンダ装置を使用できる。
また、流体圧シリンダではなく、結合具3に設けた前記係止孔9に嵌入可能な係止片(止めピンに相当するもの)を係止孔9に出入させるメカニカルな機構であってもよい。
なお、前述の最下段結合具受止めプレート17をもって、流体圧シリンダ装置などによるこの最下段結合具受止め手段14に代えることもできる。
前記一時受止め手段18は、左右に配置された一対の受止めシリンダ25を有し、各受止めシリンダ25のピストンロッド25aの先端に、上部がそれぞれ外側に開いた受止めプレート18aを取り付けた構成である。
結合具3が結合具マガジン12から落下する瞬間に、ピストンロッド25aを伸長させて受止めプレート18aで結合具3挟み込む。又は、受止めプレート18aを予め結合具3の側面に近接する位置まで移動させておき、結合具3が結合具マガジン12から落下した瞬間に受止めプレート18aで挟み込むようにすることもできる。また、各受止めプレート18aの下端を若干内側にL形に折り曲げて、そのL形部で受け取るようにしてもよい。