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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023075959
(43)【公開日】2023-06-01
(54)【発明の名称】電解液噴射装置
(51)【国際特許分類】
   C25B 1/13 20060101AFI20230525BHJP
   C25B 15/023 20210101ALI20230525BHJP
   C25B 15/08 20060101ALI20230525BHJP
   C25B 9/65 20210101ALI20230525BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20230525BHJP
   C25B 11/052 20210101ALI20230525BHJP
   C25B 11/054 20210101ALI20230525BHJP
   C25B 11/061 20210101ALI20230525BHJP
   C25B 11/091 20210101ALI20230525BHJP
   C25B 11/077 20210101ALI20230525BHJP
   C25B 11/089 20210101ALI20230525BHJP
   C02F 1/461 20230101ALI20230525BHJP
   B01J 23/84 20060101ALI20230525BHJP
   C01B 13/10 20060101ALI20230525BHJP
   C25B 15/029 20210101ALI20230525BHJP
   C25B 1/04 20210101ALI20230525BHJP
【FI】
C25B1/13
C25B15/023
C25B15/08 302
C25B9/65
C25B9/00 A
C25B11/052
C25B11/054
C25B11/061
C25B11/091
C25B11/077
C25B11/089
C02F1/461 101Z
B01J23/84 M
C01B13/10 D
C25B15/029
C25B1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021189061
(22)【出願日】2021-11-20
(71)【出願人】
【識別番号】520454475
【氏名又は名称】株式会社ULAS
(71)【出願人】
【識別番号】506332786
【氏名又は名称】株式会社健康支援センター
(74)【代理人】
【識別番号】100148068
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 洋平
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 重明
(72)【発明者】
【氏名】川崎 法通
【テーマコード(参考)】
4D061
4G042
4G169
4K011
4K021
【Fターム(参考)】
4D061DA02
4D061DB07
4D061EA02
4D061EB02
4D061EB04
4D061EB14
4D061EB20
4D061EB28
4D061EB30
4D061EB31
4D061EB33
4D061EB37
4D061EB39
4D061ED20
4D061GA09
4D061GA21
4D061GA30
4D061GC14
4G042CA04
4G042CB26
4G042CD05
4G042CE01
4G169AA03
4G169AA11
4G169BB02
4G169BB04
4G169BC22
4G169BC26
4G169BC50
4G169BC68
4G169BD02
4G169CB81
4G169DA06
4G169EA11
4G169EC28
4G169EE09
4K011AA21
4K011AA27
4K011AA29
4K011CA04
4K011DA01
4K021AA09
4K021BA02
4K021BB01
4K021BB04
4K021BB05
4K021BC01
4K021CA05
4K021CA06
4K021CA09
4K021CA13
4K021DA09
4K021DA13
4K021DA15
4K021DC15
4K021EA06
(57)【要約】
【課題】電解液の濃度を高く保つことができる電解液噴射装置を提供する。
【解決手段】本発明の電解液噴射装置1は、電気分解板21と、被電解液、電解液及び発生ガスを密封する電解槽2と、噴射部6と、電解槽2に密封された電解液を噴射部6に移送するとともに移送時以外のときは電解槽2を密封状態にするポンプ7と、電力供給部と、電解槽2内の電解液の濃度が所定以上になったときにポンプ7に電力を供給する制御を行う制御部5と、を備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する1又は2以上の陽極板及び陰極板により構成される電気分解板と、
前記電気分解板を内蔵するとともに、被電解液、電解液及び発生ガスを密封する電解槽と、
噴射スイッチの操作に応じて前記電解液を噴射する噴射部と、
前記電解槽に密封された前記電解液を前記噴射部に移送するとともに前記移送時以外のときは前記電解槽を密封状態にするポンプと、
前記電気分解板及びに前記ポンプに対して電力を供給する電力供給部と、
電源スイッチの操作に応じて前記電気分解板に電力を供給する制御を行うとともに、前記電気分解板への電力の供給開始から所定の待機時間が経過したとき、前記電解槽内の前記電解液の濃度が所定以上になったとき又は前記電解槽内の前記発生ガスの気圧が所定以上になったときに前記ポンプに電力を供給する制御を行う制御部と、
を備えていることを特徴とする電解液噴射装置。
【請求項2】
前記陰極板は、複数の電解促進孔により構成される電解促進領域を有しており、
前記陽極板は、前記電解促進領域に向かい合う対向領域に前記電解促進孔を有していない
ことを特徴とする請求項1に記載の電解液噴射装置。
【請求項3】
前記電解促進領域は、前記陰極板の中心を含んでおり、
前記複数の電解促進孔のうち前記陰極板の中心に配置された中心電解促進孔の周長は、他の前記電解促進孔の周長の2~4倍になっている
ことを特徴とする請求項2に記載の電解液噴射装置。
【請求項4】
前記電気分解板は、前記陽極板及び前記陰極板を同軸上で貫通する対流孔を有している
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電解液噴射装置。
【請求項5】
前記電力供給部は、前記電気分解板及び前記ポンプに対してバッテリ電力を供給するバッテリと、前記電気分解板又は前記バッテリに対して外部電力を供給する外部電源と、を有しており、
前記制御部は、前記外部電源から前記電気分解板への前記外部電力の供給終了時から所定の待機時間経過後に前記電気分解板への前記バッテリ電力の供給を開始する制御、及び、前記電気分解板への前記バッテリ電力の供給開始時から供給終了時までのバッテリ電力供給時間内において所定のバッテリ電力供給条件を満たすように前記バッテリの電圧値を増減させる制御、を行う
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電解液噴射装置。
【請求項6】
前記被電解液は、水であり、
前記電解液は、オゾン水であり、
前記陽極板は、チタン又はチタン合金であり、
前記陽極板の表面は、ニッケル及び酸化スズの積層膜にアンチモンをドーピングして得た触媒層を有しており、
前記陰極板は、ステンレス鋼である
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の電解液噴射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解液噴射装置に係り、特に、携帯用オゾン水噴射器に好適に利用できる電解液噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電解液噴射器は、例えば特許文献1に示すように、円筒状の筐体により構成されており、中間部に配置された水タンク部と、その水タンク部の内部に配置された電極を有する電解部と、下部に配置された乾電池などの電源部と、上部に配置されたプッシュ式噴射機構部と、を備える。この従来の電解液噴射器は、主に、オゾン水噴射器として使用される。電解部が被電解液(水)を電気分解すると、電極周辺において被電解液(水)から気体(オゾン)が発生し、被電解液(水)は気体(オゾン)と混ざり合って電解液(オゾン水)となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-092883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の電解液噴射器は、電解液(オゾン水)に溶ける又は混ざる気体(オゾン)が溶けにくいという性質を持つ場合、電解液(オゾン水)の濃度を高くすることが困難であるという問題があった。
【0005】
また、従来の電解液噴射器は、電解液(オゾン水)から気体(オゾン)が抜けて電解液の濃度が低下しやすいという問題があった。
【0006】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、電解液の濃度を高く保つことができる電解液噴射装置を提供することを本発明の目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)前述した目的を達成するため、本発明の電解液噴射装置は、対向する1又は2以上の陽極板及び陰極板により構成される電気分解板と、電気分解板を内蔵するとともに、被電解液、電解液及び発生ガスを密封する電解槽と、噴射スイッチの操作に応じて電解液を噴射する噴射部と、電解槽に密封された電解液を噴射部に移送するとともに移送時以外のときは電解槽を密封状態にするポンプと、電気分解板及びにポンプに対して電力を供給する電力供給部と、電源スイッチの操作に応じて電気分解板に電力を供給する制御を行うとともに、電気分解板への電力の供給開始から所定の待機時間が経過したとき、電解槽内の電解液の濃度が所定以上になったとき又は電解槽内の発生ガスの気圧が所定以上になったときにポンプに電力を供給する制御を行う制御部と、を備えていることを特徴とする。
【0008】
これにより、本発明の電解液噴射装置は、電解槽に発生ガスを密封することによって電解槽の内圧を外気圧よりも高く保つことができるので、電解液に溶け込む気体が電解液から放出されて電解液の濃度が低下してしまうことを防止することができる。また、制御部による各種制御により電解液の濃度が所定以上にならないようにしているので、電解液の濃度が高くなりすぎることによって電解液から気体が飛び出しやすくなることを防止することができる。
【0009】
(2)また、本発明の電解液噴射装置において、陰極板は、複数の電解促進孔により構成される電解促進領域を有しており、陽極板は、電解促進領域に向かい合う対向領域に電解促進孔を有していないことが好ましい。
【0010】
これにより、本発明の電解液噴射装置は、陽極板及び陰極板に電解促進孔を有する場合及び陽極板及び陰極板に電解促進孔を有していない場合と比較して、高い濃度の電解液を短時間で生成することができる。
【0011】
(3)また、本発明の電解液噴射装置において、電解促進領域は、陰極板の中心を含んでおり、複数の電解促進孔のうち陰極板の中心に配置された中心電解促進孔の周長は、他の電解促進孔の周長の2~4倍になっていることが好ましい。
【0012】
これにより、本発明の電解液噴射装置は、中心電解促進孔の周長が他の電解促進孔の周長と同じ場合と比較して、高い濃度の電解液を短時間で生成することができる。
【0013】
(4)また、本発明の電解液噴射装置において、電気分解板は、陽極板及び陰極板を同軸上で貫通する対流孔を有していることが好ましい。
【0014】
これにより、本発明の電解液噴射装置は、電気分解により陽極板及び陰極板の温度があがることにより、陽極板及び陰極板に挟まれた被電解水及び電解水の温度が上昇することを利用し、温度上昇した被電解水及び電解水が対流孔を通過して温度上昇していない被電解水及び電解水に流れこむことにより、電解槽内の被電解水が電気分解板の周辺を対流するので、被電解水の電気分解が促進されて高い濃度の電解液を短時間で生成することができる。
【0015】
(5)また、本発明の電解液噴射装置において、電力供給部は、電気分解板及びポンプに対してバッテリ電力を供給するバッテリと、電気分解板又はバッテリに対して外部電力を供給する外部電源と、を有しており、制御部は、外部電源から電気分解板への外部電力の供給終了時から所定の待機時間経過後に電気分解板へのバッテリ電力の供給を開始する制御、及び、電気分解板へのバッテリ電力の供給開始時から供給終了時までのバッテリ電力供給時間内において所定のバッテリ電力供給条件を満たすようにバッテリの電圧値を増減させる制御、を行うことが好ましい。
【0016】
これにより、本発明の電解液噴射装置は、電解液噴射装置の噴射時に外部電力がなくても使用することができるとともに、バッテリ電力を節約しながら高い濃度の電解液を長時間生成することができる。
【0017】
(6)また、本発明の電解液噴射装置において、被電解液は、水であり、電解液は、オゾン水であり、陽極板は、チタン又はチタン合金であり、陽極板の表面は、ニッケル及び酸化スズの積層膜にアンチモンをドーピングして得た触媒層を有しており、陰極板は、ステンレス鋼であることが好ましい。
【0018】
これにより、本発明の電解液噴射装置は、従来の触媒層を用いた電気分解板と比較して一定時間での電解水の濃度が2倍になり、高濃度のオゾン水を生成することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の電解液噴射装置によれば、電解液に溶け込む気体が電解液から放出されてしまうことを防止することができるので、電解液の濃度を高く保つことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本実施形態の電解液噴射装置を示す概念図である。
図2図2は、本実施形態の電気分解板を示す分解斜視図である。
図3図3は、本実施形態の電解液噴射装置において電解液の一例であるオゾン水の理論濃度と電気分解の電力供給終了時からの理論経過時間との関係を示すグラフである。
図4図4は、本実施形態の電解液噴射装置において電解液の一例であるオゾン水の理論濃度と理想的な電圧値の供給時間との関係を示すグラフである。
図5図5は、本実施形態の電解液噴射装置において電解液の一例であるオゾン水の濃度実験値と電力供給時間の実験値との関係を示すグラフである。
図6図6は、本実施形態の電解液噴射装置において電解液の一例であるオゾン水の濃度実験値と電圧実験値の供給時間との関係を示すグラフである。
図7図7は、本実施形態の電解液噴射装置において電解液の一例であるオゾン水の濃度実験値と電圧実験値の供給時間との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本実施形態の電解液噴射装置1を説明する。
【0022】
[電解液噴射装置1]本実施形態の電解液噴射装置1は、図1及び図2に示すように、電気分解板21と、電解槽2と、噴射部6と、ポンプ7と、バッテリ3及び外部電源4からなる電力供給部と、制御部5と、を備えていることを特徴とする。
【0023】
また、本実施形態の電解液噴射装置1は、気圧測定部8と、検温部9と、濃度測定部10と、液温調整部11と、を更に備えていることが好ましい。
【0024】
なお、本実施形態の電解液噴射装置1において、被電解液は水であり、電解液はオゾン水である。電解液の濃度とは電解液中に溶けている又は混ざり合っている気体の濃度であり、オゾン水の場合にはオゾン濃度をいう。発生ガスは、電気分解により発生した気体のうち電解液に溶けきれずに電解液から飛び出た気体をいう。本実施形態の発生ガスは、水素、酸素及びオゾンである。
【0025】
[電気分解板21]電気分解板21は、図2に示すように、対向する1又は2以上の陽極板22及び陰極板23により構成される。本実施形態の電気分解板21は、3枚の陰極板23の各間に2枚の陽極板22をそれぞれ所定の間隔だけあけて配置したサンドイッチ構造により構成されている。
【0026】
[対流孔21h]電気分解板21は、陽極板22及び陰極板23を同軸上で貫通する対流孔21hを有している。対流孔21hは電解槽2内における被電解水又は電解水の温度差を利用して対流をさせるものである。そして、電解槽2の内部形状に依存して電気分解板21の温度が被電解水又は電解水によって冷やされにくい場所ほど被電解水又は電解水の温度は高くなりやすい。そのため、対流孔21hは被電解水又は電解水の温度が高くなりやすい位置を見極めて電気分解板21に形成することが好ましい。本実施形態の対流孔21hは、電気分解板21の下部において横に5個配置されている。
【0027】
[陰極板23]本実施形態の陰極板23は、ステンレス鋼板である。電気分解によりオゾン水を生成する場合、陰極板23から水素が発生する。
【0028】
[電解促進領域23z、電解促進孔23h]この陰極板23は、図2に示すように、縦横に等間隔(例:縦5個×横5個)に配列された複数の電解促進孔23hにより構成される電解促進領域23zを有している。陰極板23に電解促進孔23hを形成することにより、陰極板23の表面積は電解促進孔23hの形成分だけ大きくなる。また、陰極板23からの水素の発生位置を電解促進孔23hに意図的に誘導することにより、発生直後の水素ガスによる微小の泡が集合しやすくなり、集合した水素ガスの泡が大きくなるため、陰極板23から水素が離脱しやすくなる。これにより、電解促進孔23hは陰極板23における反応を活性化させる。
【0029】
[中心電解促進孔23ch]また、電解促進領域23zは陰極板23の中心を含んでおり、複数の電解促進孔23hのうち陰極板23の中心に配置された電解促進孔23hを中心電解促進孔23chとする。この中心電解促進孔23chの周長は、他の電解促進孔23hの周長の2~4倍になっている。例えば、電解促進孔23hの直径は3~6mmであり、中心電解促進孔23chの直径はその2~4倍となる6~24mmである。
【0030】
中心電解促進孔23chの周長が他の電解促進孔23hの周長の2~4倍になっている理由は、中心電解促進孔23chの周長が他の電解促進孔23hの周長と同じ場合と比較して、電力供給開始から所定時間経過後における電解液の濃度が1.2~1.3倍に増加した実験結果に基づいている。また、中心電解促進孔23chの周長が他の電解促進孔23hの周長の4倍以上になった場合、電解液の濃度は中心電解促進孔23chの周長が他の電解促進孔23hの周長と同等又はそれ以下になった。
【0031】
[陽極板22]本実施形態の陽極板22は、チタン又はチタン合金の板である。電気分解によりオゾン水を生成する場合、陽極板22から気体のオゾン及び水素が発生する。
【0032】
[触媒層]この陽極板22の表面は、ニッケル及び酸化スズの積層膜にアンチモンをドーピングして得た触媒層を有していることが好ましい。
【0033】
[対向領域22z]ここで、陽極板22は、電解促進領域23zに向かい合う対向領域22zに電解促進孔23hを有していない。つまり、対流孔21hを除き、陽極板22は穴や孔を有していない平らな電極板である。
【0034】
陽極板22に電解促進孔23hを形成しない理由は、陽極板22から発生した直後のオゾンガスは微小の泡であり、微小の泡がそのままであれば、陽極板22からオゾンガスが離脱しにくくなる。それに比例して電解液に接触する時間が長くなるため、それに応じて電解液の濃度が高くなるからである。そして、本実施形態の陽極板22を用いた場合、陽極板22に電解促進孔23hを形成した場合と比較して、電解液の濃度が1.3~1.4倍に増加した。
【0035】
[電解槽2]電解槽2は、電気分解板21を内蔵するとともに、被電解液、電解液及び発生ガスを密封する。電解槽2に設けられた被電解液の供給口のキャップ40にはOリング41を用いて密封状態を保つ。
【0036】
[噴射部6]噴射部6は、噴射スイッチ31の操作に応じて電解液を噴射する。制御部5によって電解液の噴射が可能な状態になっている場合、噴射スイッチ31の操作に応じてポンプ7が電動で作動する。
【0037】
[ポンプ7]ポンプ7は、電解槽2に密封された電解液を噴射部6に移送するとともに移送時以外のときは電解槽2を密封状態にする。つまり、噴射スイッチ31の操作に応じてポンプ7が電動で作動し、電解液が噴射部6から噴射される。また、電解液の移送時以外のときは、ポンプ7が電解槽2と噴射部6との間の気密性を保持する機構により電解槽2を密封状態にする。
【0038】
[電力供給部]電力供給部は、バッテリ3と、外部電源4と、を有している。
【0039】
[バッテリ3]バッテリ3は、電気分解板21及びポンプ7に対してバッテリ電力を供給する。本実施形態のバッテリ3としては充電式電池が用いられる。
【0040】
本実施形態のバッテリ3の初期電圧は3~8Vである。本実施形態のバッテリ3の初期電圧が所望の電圧よりも低い場合、バッテリ3を構成するバッテリ回路基板に昇圧器を設けることにより、バッテリ3の初期電圧を所望の電圧まで昇圧させることが好ましい。
【0041】
[外部電源4]外部電源4は、電気分解板21又はバッテリ3に対して外部電力を供給する。本実施形態の外部電源4は、バッテリ3に対して家庭用コンセントから外部電力を直接供給する。
【0042】
本実施形態の外部電源4の電圧は10~15Vである。外部電源4の電圧はバッテリ3の電圧よりも高くなるように設定されている。本実施形態の外部電源4の初期電圧が所望の電圧よりも高い場合、外部電源4を構成する外部電源回路基板に降圧器を設けることにより、外部電源4の初期電圧を所望の外部電力まで降圧させることが好ましい。
【0043】
[気圧測定部8]気圧測定部8は、電解槽2内の気圧を測定する。本実施形態の気圧測定部8は、発生ガスの気圧の変化が測定できる程度の性能を有する気圧センサである。
【0044】
[検温部9]検温部9は、電解槽2の内部の液温を検知する。本実施形態の検温部9は、電解槽2の内部に設置された温度センサである。
【0045】
[濃度測定部10]濃度測定部10は、電解液の濃度を測定する。本実施形態の濃度測定部10は、電解槽2の内部に設置されたオゾン濃度センサである。
【0046】
[液温調整部11]液温調整部11は、電解槽2の内部にある液体を冷却又は加熱する。本実施形態の液温調整部11は、液体を冷却及び加熱する機能を有する水温調節器であってもよいし、液体を冷却する機能のみを有するクーラであってもよいし、液体を加熱する機能のみを有するヒータであってもよい。
【0047】
気体の溶解度の法則に基づいて理論的に考えると、電気分解板21が電気分解を終了したとき、図3に示すように、オゾン水の温度が低いほどその濃度の低下が小さくなる傾向にある。そのため、液温調整部11は、少なくとも液体を冷却する機能を有するクーラであればよい。本実施形態の液温調整部11は、例えば電解槽2の内部底面に設置されたペルチェ方式冷温器などが挙げられる。
【0048】
[制御部5]制御部5は、電源スイッチ30の操作に応じて電気分解板21に電力を供給する制御を行うとともに、電気分解板21への電力の供給開始から所定の待機時間が経過したとき、電解槽2内の電解液の濃度が所定以上になったとき又は電解槽2内の発生ガスの気圧が所定以上になったときにポンプ7に電力を供給する制御を行う。以下、具体的な制御方法を記載する。
【0049】
[待機時間制御]制御部5は、外部電源4から電気分解板21への外部電力の供給終了時から所定の待機時間twtの経過後に電気分解板21へのバッテリ電力の供給を開始する制御を行う。
【0050】
待機時間twtは、図4に示すように、外部電力の供給終了時tAfからバッテリ電力の供給開始時tBSまでの時間である。これは、外部電力の供給終了後すぐにバッテリ電力の供給を開始しなくても所定の時間内であれば電解液を所望の濃度範囲内に維持することができることを利用している。
【0051】
待機時間twtは電解液の濃度低下特性に基づいて設定される。電解液の濃度低下特性は被電解液の温度や電解液の濃度などの種々の要因によって異なってくる。例えば、図4に示すように、被電解液の温度が20℃であって外部電力が10Vであるときに外部電力の供給終了時から電解液の所望の濃度範囲以下になる時までの時間が理論値で3分である場合、待機時間twtは3分以内に設定する。なお、バッテリ電力の供給開始時tBSからバッテリ電力の供給終了時tBfまでのバッテリ電力供給時間は、バッテリ3の電圧値などの種々の条件に応じて決められる。
【0052】
[バッテリ電力供給条件制御]また、制御部5は、電気分解板21へのバッテリ電力の供給開始時tBsから供給終了時tBfまでのバッテリ電力供給時間内において所定のバッテリ電力供給条件を満たすようにバッテリ3の電圧値を増減させる制御を行うことが好ましい。これは、外部電力の供給終了後tAfの電解液の濃度と経過時間との関係が、図3の理想値に示すような直線(一次関数)的な濃度低下になることが少なく、図5の実験値に示すような非直線(例:折れ線、曲線、不規則線)的な濃度低下になることのほうが多いことに起因する。
【0053】
例えば、図6に示すように、バッテリ電圧Vbの電圧値をVl1で一定にしても電解液の濃度が一定にならずに変動する場合、例えば図7に示すように、バッテリ電圧Vbの電圧値をVl1≦Vb≦Vl2の範囲内で徐々に減少させていくようにバッテリ電圧Vbを供給することにより、電解液の濃度が最低濃度Clよりも低下しないように制御することが好ましい。
【0054】
次に、本実施形態の電解液噴射装置1の効果を説明する。
【0055】
(1)前述した目的を達成するため、本実施形態の電解液噴射装置1は、対向する1又は2以上の陽極板22及び陰極板23により構成される電気分解板21と、電気分解板21を内蔵するとともに、被電解液、電解液及び発生ガスを密封する電解槽2と、噴射スイッチ31の操作に応じて電解液を噴射する噴射部6と、電解槽2に密封された電解液を噴射部6に移送するとともに移送時以外のときは電解槽2を密封状態にするポンプ7と、電気分解板21及びにポンプ7に対して電力を供給する電力供給部と、電源スイッチ30の操作に応じて電気分解板21に電力を供給する制御を行うとともに、電気分解板21への電力の供給開始から所定の待機時間が経過したとき、電解槽2内の電解液の濃度が所定以上になったとき又は電解槽2内の発生ガスの気圧が所定以上になったときにポンプ7に電力を供給する制御を行う制御部5と、を備えていることを特徴とする。
【0056】
これにより、本実施形態の電解液噴射装置1は、電解槽2に発生ガスを密封することによって電解槽2の内圧を外気圧よりも高く保つことができるので、電解液に溶け込む気体が電解液から放出されて電解液の濃度が低下してしまうことを防止することができる。また、制御部5による各種制御により電解液の濃度が所定以上にならないようにしているので、電解液の濃度が高くなりすぎることによって電解液から所望の気体が飛び出しやすくなることを防止することができる。
【0057】
(2)また、本実施形態の電解液噴射装置1において、陰極板23は、複数の電解促進孔23hにより構成される電解促進領域23zを有しており、陽極板22は、電解促進領域23zに向かい合う対向領域22zに電解促進孔23hを有していないことが好ましい。
【0058】
これにより、本実施形態の電解液噴射装置1は、陽極板22及び陰極板23に電解促進孔23hを有する場合及び陽極板22及び陰極板23に電解促進孔23hを有していない場合と比較して、高い濃度の電解液を短時間で生成することができる。
【0059】
(3)また、本実施形態の電解液噴射装置1において、電解促進領域23zは、陰極板23の中心を含んでおり、複数の電解促進孔23hのうち陰極板23の中心に配置された中心電解促進孔23chの周長は、他の電解促進孔23hの周長の2~4倍になっていることが好ましい。
【0060】
これにより、本実施形態の電解液噴射装置1は、中心電解促進孔23chの周長が他の電解促進孔23hの周長と同じ場合と比較して、高い濃度の電解液を短時間で生成することができる。
【0061】
(4)また、本実施形態の電解液噴射装置1において、電気分解板21は、陽極板22及び陰極板23を同軸上で貫通する対流孔21hを有していることが好ましい。
【0062】
これにより、本実施形態の電解液噴射装置1は、電気分解により陽極板22及び陰極板23の温度があがることにより、陽極板22及び陰極板23に挟まれた被電解水及び電解水の温度が上昇することを利用し、温度上昇した被電解水及び電解水が対流孔21hを通過して温度上昇していない被電解水及び電解水に流れこむことにより、電解槽2内の被電解水が電気分解板21の周辺を対流するので、被電解水の電気分解が促進されて高い濃度の電解液を短時間で生成することができる。
【0063】
(5)また、本実施形態の電解液噴射装置1において、電力供給部は、電気分解板21及びポンプ7に対してバッテリ電力を供給するバッテリ3と、電気分解板21又はバッテリ3に対して外部電力を供給する外部電源4と、を有しており、制御部5は、外部電源4から電気分解板21への外部電力の供給終了時から所定の待機時間経過後に電気分解板21へのバッテリ電力の供給を開始する制御、及び、電気分解板21へのバッテリ電力の供給開始時から供給終了時までのバッテリ電力供給時間内において所定のバッテリ電力供給条件を満たすようにバッテリ3の電圧値を増減させる制御、を行うことが好ましい。
【0064】
これにより、本実施形態の電解液噴射装置1は、電解液噴射装置1の噴射時に外部電力がなくても使用することができるとともに、バッテリ電力を節約しながら高い濃度の電解液を長時間生成することができる。
【0065】
(6)また、本実施形態の電解液噴射装置1において、被電解液は、水であり、電解液は、オゾン水であり、陽極板22は、チタン又はチタン合金であり、陽極板22の表面は、ニッケル及び酸化スズの積層膜にアンチモンをドーピングして得た触媒層を有しており、陰極板23は、ステンレス鋼であることが好ましい。
【0066】
これにより、本実施形態の電解液噴射装置1は、従来の触媒層を用いた電気分解板21と比較して一定時間での電解水の濃度が2倍になり、高濃度のオゾン水を生成することができる。
【0067】
すなわち、本実施形態の電解液噴射装置1によれば、電解液に溶け込む気体が電解液から放出されてしまうことを防止することができるので、電解液の濃度を高く保つことができるという効果を奏する。
【0068】
なお、本発明は、前述した実施形態などに限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0069】
1 電解液噴射装置
2 電解槽
3 バッテリ
4 外部電源
5 制御部
6 噴射部
7 ポンプ
8 気圧測定部
9 検温部
10 濃度測定部
11 液温調整部
21 電気分解板
21h 対流孔
22 陽極板
22z 対向領域
23 陰極板
23h 電解促進孔
23ch 中心電解促進孔
23z 電解促進領域
30 電源スイッチ
31 噴射スイッチ
40 キャップ
41 Oリング
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7