IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ノーリツの特許一覧

<>
  • 特開-風呂システム 図1
  • 特開-風呂システム 図2
  • 特開-風呂システム 図3
  • 特開-風呂システム 図4
  • 特開-風呂システム 図5
  • 特開-風呂システム 図6
  • 特開-風呂システム 図7
  • 特開-風呂システム 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023075981
(43)【公開日】2023-06-01
(54)【発明の名称】風呂システム
(51)【国際特許分類】
   A47K 3/00 20060101AFI20230525BHJP
   F24H 15/196 20220101ALI20230525BHJP
【FI】
A47K3/00 G
A47K3/00 E
F24H1/00 602K
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021189097
(22)【出願日】2021-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高野 秀弘
【テーマコード(参考)】
3L024
【Fターム(参考)】
3L024CC13
3L024GG34
(57)【要約】
【課題】微細気泡の発生機能を有する風呂システムの低コスト化及び安定動作化を図る。
【解決手段】第1ポンプ11及び第2ポンプ12は、浴槽1内の微細気泡発生用アダプタ2に設けられた入水口及び出水口の間に直列接続されて、作動時に浴槽水の循環経路を形成する。気液混合タンク20は、第2ポンプ12と、浴槽1内の出水口との間に接続される。コンプレッサ30は、第1ポンプ11の吐出口と第2ポンプ12の吸入口とを接続する配管42に対して接続される。コントローラ50は、微細気泡発生運転において、第1ポンプ11及び第2ポンプ12の作動によって加圧されて循環経路を通流する浴槽水に対して、コンプレッサ30の作動によって空気を加圧した空気を導入する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微細気泡を含む噴出流を浴槽内に放出させる微細気泡発生運転が可能な風呂システムであって、
浴槽内に設けられた入水口及び出水口の間に直列接続されて、作動時に前記入水口から前記出水口へ向かう浴槽水の循環経路を形成する第1及び第2のポンプを備え、
前記第1のポンプは、前記循環経路において、前記第2のポンプよりも上流側に接続され、
前記風呂システムは、
前記循環経路内に、前記第2のポンプと前記出水口との間に接続された気液混合タンクと、
前記循環経路内において前記浴槽水に対して加圧した空気を導入するための空気供給部と、
前記空気供給部並びに前記第1及び第2のポンプの動作を制御するコントローラとを更に備え、
前記空気供給部は、前記第1のポンプの吐出口と前記第2のポンプの吸入口との間に対して接続され、
前記コントローラは、前記微細気泡発生運転において、前記第1及び第2のポンプの作動によって加圧されて前記循環経路を通流する前記浴槽水に対して、前記空気供給部の作動によって空気を導入する、風呂システム。
【請求項2】
前記コントローラは、前記微細気泡発生運転の開始時において、前記第1のポンプの回転数を第1の回転数に制御した状態で前記空気供給部を起動し、前記空気供給部の起動後、前記第1のポンプの回転数を前記第1の回転数から第2の回転数に上昇させる、請求項1記載の風呂システム。
【請求項3】
前記コントローラは、前記第1及び第2の回転数を予め規定する複数のパターンのうちの、前記浴槽と前記空気供給部との高さ位置に応じた選択パターンを用いて、前記第1のポンプの回転数を制御する、請求項2記載の風呂システム。
【請求項4】
前記第1のポンプの吐出口と前記第2のポンプの吸入口との間の水圧を検出するための圧力検出器を更に備え、
前記コントローラは、前記微細気泡発生運転において、前記圧力検出器による検出水圧に基づいて、前記検出水圧が前記空気供給部の作動可能な圧力範囲内とするために前記第1のポンプの回転数を制御する、請求項1記載の風呂システム。
【請求項5】
前記コントローラは、前記空気供給部の起動前において、前記第1のポンプの回転数を第1の回転数に制御した状態で、前記圧力検出器の前記検出水圧が前記空気供給部を起動可能な第1の圧力範囲内であるか否かを確認し、前記検出水圧が前記第1の圧力範囲内である場合に前記空気供給部を起動する、請求項4記載の風呂システム。
【請求項6】
前記コントローラは、前記空気供給部の起動前において、前記第1のポンプの回転数を前記第1の回転数に制御した状態で、前記検出水圧が前記第1の圧力範囲よりも高い場合には、前記第1のポンプの回転数を前記第1の回転数よりも低下させて前記検出水圧が前記第1の圧力範囲内となった後に、前記空気供給部を起動する、請求項5記載の風呂システム。
【請求項7】
前記コントローラは、前記第1のポンプの回転数が前記第1の回転数よりも低い状態で前記空気供給部を起動した場合には、前記圧力検出器の前記検出水圧が、起動後の前記空気供給部を連続運転可能な第2の圧力範囲内に設けられた判定値よりも高く、かつ、前記第2の圧力範囲内となる様に、前記空気供給部の起動時と比較して前記第1のポンプの回転数を上昇させる、請求項6記載の風呂システム。
【請求項8】
前記第2のポンプの吐出圧は、前記第1のポンプの吐出圧よりも高い、請求項1~7のいずれか1項に記載の風呂システム。
【請求項9】
前記第1のポンプの吐出口と前記第2のポンプの吸入口との間と、前記空気供給部との間には、前記第1のポンプの吐出口と前記第2のポンプの吸入口との間から前記空気供給部への方向の通流を阻止するための逆止弁が配置される、請求項1~8のいずれか1項に記載の風呂システム。
【請求項10】
前記第1及び第2のポンプを含むN個(N:3以上)のポンプが前記入水口及び前記気液混合タンクの間に接続され、
前記第1のポンプは、前記N個のポンプのうちの最も上流側のポンプである、請求項1~9のいずれか1項に記載の風呂システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は風呂システムに関し、より特定的には、微細気泡の発生機能を有する風呂システムに関する。
【背景技術】
【0002】
浴槽内の湯又は水(以下、単に「浴槽水」とも称する)に連続的に微細気泡を発生させることで商品価値を高めた風呂システムが知られている。例えば、特許第4931577号公報(特許文献1)には、三方弁によって、追焚循環経路と、微細気泡発生用循環経路とを切り換える構成を有する風呂装置の構成が開示される。
【0003】
特許文献1では、三方弁が微細気泡発生用循環経路を形成する様に制御されるとともに、循環経路と共用の風呂ポンプの作動によって、浴槽水が空気溶融ユニットを通流する循環経路が形成されることで、微細気泡が発生される。より詳細には、空気溶融ユニットは、貯湯水槽と、エアポンプと、加圧ポンプとを有しており、循環経路の形成によって貯湯水槽内に導入された湯水に対して、エアポンプによって導入された空気を、加圧ポンプによって加圧溶融させることで、浴槽水に微細気泡を発生することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4931577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ポンプによって加圧されて循環通流する浴槽水に対して空気を導入する際には、コンプレッサによって空気を加圧供給することが必要である。しかしながら、当該用途に小型、低価格の機種を用いると、起動時及び連続運転時の圧力条件により、コンプレッサの作動が確保できなくなることが懸念される。
【0006】
特に、浴槽が2階以上に配置される一方で、コンプレッサを含む気泡発生装置が1階に配置される階上配置の態様では、コンプレッサの配置箇所での水圧が上昇することにより、小型のコンプレッサでは、気泡発生のための作動が困難になって、システムが安定動作できなくなることが懸念される。一方で、起動時及び連続運転時の圧力条件が優れたコンプレッサの使用は、コスト面から不利である。
【0007】
本発明はこの様な課題を解決するためになされたものであって、その目的は、微細気泡の発生機能を有する風呂システムの低コスト化及び安定動作化を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある局面では、微細気泡を含む噴出流を浴槽内に放出させる微細気泡発生運転が可能な風呂システムが提供される。風呂システムは、第1及び第2のポンプと、気液混合タンクと、空気供給部と、コントローラとを備える。第1及び第2のポンプは、浴槽内に設けられた入水口及び出水口の間に直列接続されて、作動時に入水口から出水口へ向かう浴槽水の循環経路を形成する。第1のポンプは、循環経路において、第2のポンプよりも上流側に接続される。気液混合タンクは、循環経路内に、第2のポンプと出水口との間に接続される。空気供給部は、循環経路内において浴槽水に対して加圧した空気を導入するために配置される。コントローラは、空気供給部並びに第1及び第2のポンプの動作を制御する。空気供給部は、第1のポンプの吐出口と第2のポンプの吸入口との間に対して接続される。コントローラは、微細気泡発生運転において、第1及び第2のポンプの作動によって加圧されて循環経路を通流する浴槽水に対して、空気供給部の作動によって空気を導入する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、空気供給部の接続先の水圧を、気液混合タンクでの水圧よりも低くできるので、気液混合タンクでの水圧を確保するとともに、圧力条件から空気供給部の起動及び連続運転が妨げられることを回避できるので、風呂システムの低コスト化及び安定動作化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1に係る風呂システムの構成を説明するブロック図である。
図2】コンプレッサの圧力条件を説明する図表である。
図3図1に示された風呂システム内のポンプ作動時における各部位の水圧を説明する概念図である。
図4】上流側のポンプの回転数制御を説明するグラフである。
図5】上流側のポンプの運転パターンを説明する図表である。
図6】実施の形態2に係る風呂システムの構成を説明するブロック図である。
図7】実施の形態2に係る風呂システムにおけるポンプの回転数制御を説明するフローチャートである。
図8】本実施の形態の変形例に係る風呂システムの構成を説明するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下では図中の同一または相当部分には同一符号を付してその説明は原則的に繰返さないものとする。
【0012】
[実施の形態1]
図1は、実施の形態1に係る風呂システムの構成を説明するブロック図である。
【0013】
図1を参照して、実施の形態1に係る風呂システム5aは、複数のポンプ11,12と、気液混合タンク20と、コンプレッサ30と、配管40~43と、コントローラ50と、逆止弁51,52とを備える。
【0014】
浴槽1内には、後述する循環経路に対する入水口(図示せず)及び出水口(図示せず)が設けられる。例えば、当該入水口及び出水口は、浴槽1に取り付けられた気泡発生用アダプタ2に設けられる。配管41は、浴槽1内の入水口(図示せず)と、ポンプ11の吸入口との間を接続する。配管42は、ポンプ11の吐出口と、ポンプ12の吸入口との間を接続する。配管43は、ポンプ12の吐出口と、気液混合タンク20との間を接続する。配管40は、気液混合タンク20と、浴槽1内の出水口(図示せず)との間を接続する。気泡発生用アダプタ2では、出水口に対して図示しない気泡発生ノズル(図示せず)が取り付けられる。
【0015】
コンプレッサ30の吐出口は、逆止弁51を介して、配管42と接続される。逆止弁51は、コンプレッサ30に水が浸入しないように、配管42からコンプレッサ30の吐出口への方向の通流を阻止する様に配置される。
【0016】
配管43には、逆止弁52が介挿接続される。逆止弁52は、ポンプ12の運転停止時に、気液混合タンク20内の湯水が逆流してポンプ12に侵入するのを防止するために配置される。従って、逆止弁52は、気液混合タンク20からポンプ12の吐出口への方向の通流を阻止する様に配置される。
【0017】
コントローラ50は、例えば、マイクロコンピュータで構成されて、ポンプ11,12,及び、コンプレッサ30の動作(オンオフ、及び、回転数等)を制御する。コントローラ50には、微細気泡発生運転のオンオフをユーザが指示するための運転スイッチ7への入力操作(オンオフ操作)を示す信号が入力される。
【0018】
微細気泡発生運転がオンされると、コントローラ50は、ポンプ11及び12を作動する。これにより、浴槽1内(気泡発生用アダプタ2)の入水口から、配管41、ポンプ11、配管42、ポンプ12、配管43、気液混合タンク20、及び、配管40を順に通流して、浴槽1内(気泡発生用アダプタ2)の出水口(気泡発生ノズル)に至る、加圧された浴槽水の循環経路が形成される。
【0019】
更に、コントローラ50は、コンプレッサ30を作動して、配管42において、上記循環経路を通流する浴槽水に対して、加圧された空気を導入する。コンプレッサ30から空気を導入された浴槽水は、気液混合タンク20で攪拌される。これにより、浴槽水に空気が溶解される。
【0020】
空気が溶解された浴槽水は、浴槽1内の出水口において、図示しない気泡発生ノズルを通過する。これにより、溶解していた空気が微細気泡となって、上記出水口から浴槽1内への噴出流に含有される。これにより、風呂システム5aでは、浴槽1内での微細気泡の発生機能が実現される。この際に、発生する気泡量は、循環経路の浴槽水に溶解していた空気量に依存する。
【0021】
この様な微細気泡発生運転において、コンプレッサ30の作動には、図2に示される様に、作動可能な圧力範囲がスペックとして存在する。
【0022】
図2を参照して、コンプレッサ30は、停止状態からの起動時には、吐出口の接続先の圧力が上限値Ps以下でないと作動を開始(即ち、起動)することが困難である。更に、コンプレッサ30は、起動後の連続運転では、吐出口の接続先の圧力が上限値Pc以下でないと、作動を継続することができない。上限値Psは、上限値Pcよりも低い値であり、例えば、Pcが105[Pa]程度である一方で、Psは、0.5×105[Pa]程度である。一般的に、作動可能な圧力範囲が広い、即ち、上限値Ps及びPcが高いコンプレッサは、大型かつ高価格であり、小型で低価格なコンプレッサでは、上限値Ps及びPcが低くなる。
【0023】
ここで、図1において、比較例として、図1の風呂システム5aにおいて、ポンプ12の配置を省略して、単一のポンプ11のみで循環経路を形成する構成を想定する。当該構成では、ポンプ11の吐出側での圧力が、気液混合タンク20での水圧、及び、コンプレッサ30の吐出口の接続先の水圧の両方に対応する。
【0024】
このため、気泡の発生量を増やすために水圧を確保すると、コンプレッサ30のスペック(図2のPs,Pc)要求が高くなるため、低価格のコンプレッサの適用が難しくなる。特に、上述した、浴槽1がコンプレッサ30の接続先よりも高い位置に配設されるケース(階上配置)への対応と、低価格のコンプレッサの適用との両立が困難となる。
【0025】
これに対して、図1の風呂システム5aでは、複数のポンプ11,12によって循環経路の浴槽水を加圧するとともに、ポンプ11及び12の間の配管42に対して、コンプレッサ30の吐出口が接続されている。
【0026】
図3は、風呂システム5a内のポンプ11及び12の作動時における各部位での水圧を示す概念図である。図3では、浴槽1と、コンプレッサ30を含む風呂システム5aとの配置高さが同等(例えば、ともに1階配置)であるときの水圧の分布が一例として示される。
【0027】
図3を参照して、ポンプ11の吸入口、即ち、配管41は、ポンプ11の吸込圧によって負圧となる。即ち、配管41での水圧P1は、P1<0である。一方で、ポンプ11の吐出口及びポンプ12の吸入口の間、即ち、配管42では、水圧P2は、ポンプ11の吐出圧(正)及びポンプ12の吸入圧(負)との和に相当する。
【0028】
コンプレッサ30の吐出口が接続される配管42において、水圧P2>0となる様に、ポンプ11及び12のスペック及び運転条件(回転数)は調整される。
【0029】
ポンプ12の吐出口と接続された配管43での水圧P3は、ポンプ11及び12の各々の吐出圧よりも高くなる。配管43での水圧P3が、気液混合タンク20での水圧に相当する。
【0030】
この様に、実施の形態1に係る風呂システム5aによれば、複数のポンプ11及び12によって循環経路を形成するとともに、ポンプ11の吐出口及び後続のポンプ12の吸入口の間の配管42をコンプレッサ30の接続先としている。これにより、気液混合タンク20での水圧を確保するとともに、図2に示された上限値Ps,Pcが低い機種をコンプレッサ30として適用しても、水圧によって当該コンプレッサの起動及び連続運転が妨げられることを回避できる。この結果、微細気泡の発生機能を有する風呂システム5aの低コスト化及び安定動作化を図ることができる。
【0031】
尚、浴槽1が階上配置される場合には、高さ差による水圧が全体に加算されることで、配管41の水圧P1が正(P1>0)となるケースも発生し得るが、この様なケースでは、配管41に対してもコンプレッサ30を接続することが可能となる。一方で、コンプレッサ30の接続先よりも下流側に位置するポンプでは、浴槽水に導入された空気によってエア噛みが発生する可能性があるため、吐出圧を上げる等の能力が最大まで上がらない状況が生じる可能性がある。従って、エア噛みによる影響を抑制する意味からも、コンプレッサ30の接続先としては、配管41よりも配管42の方が有利である。即ち、上記の様なケース(P1>0)においても、図1に示した様に、直列接続されたポンプ11及び12に対しては、コンプレッサ30の接続先を、ポンプ11の吐出口及び後続のポンプ12の吸入口の間(配管42)とすることが望ましい。
【0032】
図1において、ポンプ11は「第1のポンプ」の一実施例に対応し、ポンプ12は「第2のポンプ」の一実施例に対応し、コンプレッサ30は「空気供給部」の一実施例に対応する。また、配管42は、空気供給部の接続先となる、第1のポンプの吐出口及び第2のポンプの吸入口の間の部位に対応する。
【0033】
又、図2で説明した様に、コンプレッサが作動可能な圧力範囲の上限値は、起動時の方が連続運転時よりも低い。又、公知の様に、ポンプの吐出圧は、ポンプの回転数によって変化し、回転数が大きい程、吐出圧も上昇する。
【0034】
このため、コンプレッサ30の起動に対応させて、ポンプ11の回転数X11を制御することで、適用可能なコンプレッサの機種の拡大が期待できる。
【0035】
図4には、上流側のポンプの回転数制御を説明するグラフが示される。
【0036】
図4を参照して、ユーザによる運転スイッチ7の操作に応じて気泡発生運転が開始されると、時刻t0において、コントローラ50は、ポンプ11及びポンプ12を起動する。コントローラ50は、ポンプ11の起動時において、ポンプ11の回転数指令値をX1に設定する。
【0037】
コントローラ50は、時刻t1でX11=X1に達した後も、ポンプ11の回転数指令値を維持する。更に、コントローラ50は、ポンプ11の回転数X11=X1で安定すると、コンプレッサ30の起動指令を生成する。尚、X1は、X11=X1において、配管42での水圧P2が、図2中の上限値Psよりも低くなる様に予め定められる。
【0038】
そして、コントローラ50は、コンプレッサ30の起動後の時刻t2において、ポンプ11の回転指令値を、X1からX2に上昇させる。X2は、配管42での水圧P2が、図2中の上限値Pcよりも低くなる様に予め定められる。
【0039】
尚、ポンプ12の回転数指令値の設定は、特に限定されないが、例えば、起動時から一定値に設定することができる。ポンプ12の回転数が高い程、ポンプ12の吸込圧(負圧)を高めて、配管42の水圧P2を下げることができるので、コンプレッサ30の作動確保に有利である。又、ポンプ12の回転数が高い程、ポンプ12の吐出圧を高めて、気液混合タンク20での水圧を高めることができるので、空気の溶解にも有利である。従って、ポンプ12の回転数指令値の設定は、起動時より、上限値に設定することが好ましい。
【0040】
更に、複数のポンプ11,12についても、下流側のポンプ12の能力(吸引力又は吐出圧)を、ポンプ11の能力(吸引力又は吐出圧)よりも高くする方が、コンプレッサ30の作動確保に有利であることが理解される。
【0041】
又、配管42の水圧P2は、ポンプ11の回転数と、ポンプ12の回転数との組み合わせで決まるので、上記X1,X2についても、ポンプ12の回転数指令値を考慮に入れて決定することが必要である。実施の形態1では、図4の回転数X1及びX2が「第1の回転数」及び「第2の回転数」にそれぞれ対応する。
【0042】
図4に説明した回転数制御を更に組み合わせることで、コンプレッサ30の起動及び連続運転の各々について、作動確保が容易となるとともに、適用可能なコンプレッサ30の機種を更に拡大することができる。この結果、風呂システム5aの更なる低コスト化及び安定動作化を図ることができる。
【0043】
又、図4の回転数制御で用いられるX1,X2の値については、風呂システム5aの施工条件に応じて選択可能な複数のパターンを設けることが好ましい。
【0044】
例えば、図5に示される様に、コンプレッサ30を含む風呂システムが地上(1階相当)に配設されるのに対する、浴槽1の配置高さに応じて、複数のパターンを設定することができる。
【0045】
図5の例では、浴槽1の配置個所を、ノーマル配置(1階又は地階)、階上1(2階)、及び、階上2(3階)に分類して、パターンA~Cの3段階に、図4中のX1,X2の設定を切換可能とする例が示される。少なくとも、X1については、パターンA~Cの間で、X1a>X1b>X1cとされる。
【0046】
一方で、X2については、浴槽1との高さに依存して増加する水圧が過大にならない様に配慮した上で、X2a≧X2b≧X2cとすることができる。水圧が過大にならない場合には、ポンプ11の回転数指令値の上限値を用いて、X2a=X2b=X2cと設定することも可能である。
【0047】
尚、複数のパターン(パターンA~C)の選択については、例えば、コントローラ50内ではパターンAをデフォルトとした上で、風呂システム5aの配設施工時に、作業者による変更入力を受付可能とし、当該変更入力をコントローラ50に保存することで実現できる。
【0048】
この様な、浴槽1及び風呂システム5aの高さ位置に応じて選択可能な複数パターンの設定により、種々の浴槽1の配置態様に対して、同一の機器構成で対応できるので、風呂システム5aの汎用性を高めることができる。
【0049】
[実施の形態2]
実施の形態2では、コンプレッサ30の作動確保をより確実化するための構成及び制御について説明する。
【0050】
図6は、実施の形態2に係る風呂システムの構成を説明するブロック図である。
【0051】
図6を参照して、実施の形態2に係る風呂システム5bは、実施の形態1に係る風呂システム5a(図1)と比較して、コンプレッサ30の接続先である配管42の水圧を検出するための圧力検出器60を更に備える点で異なる。
【0052】
圧力検出器60による検出水圧Pdetは、コントローラ50に入力される。コントローラ50は、圧力検出器60による検出水圧Pdetに基づき、ポンプ11の回転数を制御する。図6のその他の構成は、図1と同じであるので、詳細な説明は繰り返さない。
【0053】
図7は、実施の形態2に係る風呂システムにおけるポンプの回転数制御を説明するフローチャートである。図7に示される制御処理は、コントローラ50によって実行される。
【0054】
図7を参照して、コントローラ50は、微細気泡発生運転のオフ状態において、ステップ(以下、単に「S」と表記する)110により、運転スイッチ7のオン操作を待機する。運転スイッチ7がオンされると(S110のYES判定時)、コントローラ50は、S120以降の処理を実行して、気泡発生運転を開始する。一方で、運転スイッチ7がオンされるまで(S110のNO判定時)、S120以降の処理は実行されない。
【0055】
コントローラ50は、S120では、ポンプ11の回転数X11の指令値を初期値Xaに設定する(X11=Xa)とともに、ポンプ12の回転数X12の指令値を初期値Xbに設定する(X12=Xb)。
【0056】
初期値Xa及び初期値Xbは、予め定められた一定値(例えば、回転数X11及びX12の制御上限値)に設定することができる。
【0057】
コントローラ50は、S130により、S120での初期値Xa,Xbに従ってポンプ11及び12の回転数を制御した状態での配管42の検出水圧Pdetが、図2の起動時圧力の上限値Ps以下であるかを判定する。Pdet≦Psである場合(S130のYES判定時)には、コンプレッサ30を起動可能な水圧範囲であることが確認されたため、コントローラ50は、S140に処理を進めて、コンプレッサ30を起動する。これにより、ポンプ11,12の作動によって形成された循環経路を通流する浴槽水に対して空気が導入されることで、浴槽1内への噴流に気泡が発生すれる。以降でも、ポンプ11,12の回転数の指令値は、Xa及びXbに維持される。
【0058】
これに対して、Pdet>Psである場合(S130のNO判定時)には、コントローラ50は、S150に処理を進めて、ポンプ11の回転数X11の指令値を、現在の値からΔX1低下させる。更に、コントローラ50は、S160により、S150で低下された指令値に従ってポンプ11の回転数を制御した状態で、S130と同様の検出水圧PdetがPs以下であるか否かの判定を実行する。
【0059】
コントローラ50は、検出水圧PdetがPsまで低下していない場合(S160のNO判定時)には、処理をS150に戻して、ポンプ11の回転数X11の指令値を更にΔX1低下させるとともに、S160による判定を再度実行する。S160がYES判定、即ち、Pdet≦Psとなるまで、S150及びS160の処理が繰り返される。
【0060】
コントローラ50は、ポンプ11の回転数制御によって、Pdet≦Psになると(S160のYES判定時)、S170により、コンプレッサ30を起動する。これにより、循環経路を通流する浴槽水に対するコンプレッサ30による空気の導入が開始されることで、浴槽1内へ放出される噴流に微細気泡が発生する。以降では、今回の気泡発生運転がオフされるまで、ポンプ11,12の回転数の指令値は維持される。
【0061】
更に、コントローラ50は、コンプレッサ30の起動後には、S180及びS190によって、図2の連続運転時圧力の上限値Pc近傍まで、検出水圧Pdetを上昇させる制御を実行する。
【0062】
コントローラ50は、S180では、ポンプ11の回転数X11の指令値を、現在の値からΔX2上昇させる。更に、コントローラ50は、S190では、S180で上昇された指令値に従ってポンプ11の回転数を制御した状態で、Pc*<Pdetであるか否かを判定する。尚、S190での判定値Pc*は、上述の上限値Pcに対して、ΔX2の回転数上昇に対応する圧力上昇量相当のマージンを持たせて、Pc*<Pcに設定される。又、S180における上昇量ΔX2は、S150での低下量ΔX1と同じ値であってもよい。
【0063】
コントローラ50は、検出水圧PdetがPc*まで上昇しない場合(S190のNO判定時)には、処理をS180に戻して、ポンプ11の回転数X11の指令値を更にΔX2上昇させるとともに、S190による判定を再度実行する。S190がYES判定、即ち、Pdet>Pc*となるまで、S180及びS190の処理は、繰り返される。
【0064】
コントローラ50は、ポンプ11の回転数制御によって、Pdet≧Pc*になると(S190のYES判定時)、ポンプ11の回転数を上昇は停止して、今回の気泡発生運転がオフされるまで、ポンプ11,12の回転数の指令値を維持する。
【0065】
尚、図示は省略しているが、万一、S190において、Pdet>Pcとなった場合には、ポンプ11の回転数X11の指令値を、少なくともΔX2低下させる処理が行われた上で、S190がYES判定とされる。
【0066】
この様に、実施の形態2に係る風呂システム5bによれば、実施の形態1での効果に加えて、コンプレッサ30の接続先の水圧を監視してコンプレッサ30を起動するので、コンプレッサ30を確実に作動させることができる。これにより、微細気泡の発生機能を有する風呂システム5aの更なる安定動作化を図ることができる。
【0067】
実施の形態2に係るポンプの回転数制御において、図7のS120での初期値Xaが「第1の回転数」の一実施例に対応する。又、Pdet≦Psは「第1の圧力範囲」の一実施例に対応し、Pdet≦Pcは「第2の圧力範囲」の一実施例に対応し、図7のS190でのPc*は「判定値」の一実施例に対応する。
【0068】
[変形例]
実施の形態1及び2では、2個のポンプ11及び12によって浴槽水の循環経路を形成する構成例を説明したが、3個以上のポンプを配置して風呂システムを構成することも可能である。
【0069】
図8には、本実施の形態の変形例に係る風呂システムの構成を説明するブロック図が示される。
【0070】
図8を参照して、変形例に係る風呂システム5cは、実施の形態1に係る風呂システム5a(図1)と比較して、ポンプ13及び配管44を更に備える点で異なる。即ち、風呂システム5cでは、3個のポンプ11~13が直列接続されて、浴槽水の循環経路が形成される。即ち、ポンプ11~13については、上流側のポンプの吐出口と、下流側のポンプの吸入口との間が、配管42~44によってそれぞれ接続される。更に、気液混合タンク20は、配管40及び44によって、最下流側のポンプ13の吐出口と、浴槽1内(気泡発生用アダプタ2)の出水口との間に接続される。
【0071】
風呂システム5cにおいて、コンプレッサ30は、配管42及び43のいずれかに接続することが可能であるが、上流側になる程水圧が低くなるので、図8に例示する様に、最上流側のポンプ11の吐出口と接続された配管42に対して接続することが好ましい。
【0072】
変形例に係る風呂システム5cによれば、ポンプの台数を増やすことで、コンプレッサ30が接続される部位の水圧と、最下流側のポンプの吐出圧に相当する気液混合タンク20での水圧との差を拡大することができる。これにより、コンプレッサ30の作動確保と、気液混合タンク20で溶解される空気量増大との両立が容易となるので、微細気泡の発生機能を有する風呂システムの更なる低コスト化及び安定動作化を図ることができる。
【0073】
尚、図8に示された風呂システム5cにおいても、コンプレッサ30が接続された配管に接続された吐出口を有するポンプに対しては、図4及び図5で説明した回転数制御を適用することができる。
【0074】
図8に示された風呂システム5cに対して、図6と同様に、コンプレッサ30が接続された部位(配管)に圧力検出器60を配置して、実施の形態2と同様の回転数制御を行うことも可能である。この場合には、コンプレッサ30が接続された配管に接続された吐出口を有するポンプの回転数が、図7での回転数X11と同様に制御される一方で、その他の各ポンプの回転数は、図7でのX12と同様に制御することができる。
【0075】
更に、図8の構成に対して、ポンプの個数を更に増やすことも可能である。言い換えると、本実施の形態に係る風呂システムでは、浴槽1(気泡発生用アダプタ2)の入水口と気液混合タンク20との間に、ポンプ11及び12を含むN個(N:3以上の整数)ポンプを直列接続する構成とすることが可能である。即ち、実施の形態1及び2の構成において、コンプレッサ30の接続先となる配管42と接続されるポンプ11及び12の上流側及び下流側の少なくとも一方において、1個以上のポンプを追加配置することが可能である。ポンプの個数を増やすことによって、気液混合タンク20での水圧を高めることができるので、空気の溶解量(微細気泡の発生量)を増加することができる。
【0076】
但し、N個のポンプが接続される構成においても、N個のポンプの間を接続する(N-1)個の配管の水圧は上流側に位置する程低くなる。このため、コンプレッサ30の作動を確保する観点からは、N個のポンプのうちの最上流側のポンプを、コンプレッサ30の接続先となる配管42と接続される吐出口を有するポンプ11(即ち、「第1のポンプ」)とすることが好ましい。尚、コンプレッサ30の接続先については、上述したポンプのエア噛みの可能性等も考慮に入れて、N個のポンプの間の(N-1)個の部位(配管)のいずれかに決定することができる。
【0077】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0078】
1 浴槽、2 気泡発生用アダプタ、5a~5c 風呂システム、7 運転スイッチ、11~13 ポンプ、20 気液混合タンク、30 コンプレッサ、40~44 配管、50 コントローラ、51,52 逆止弁、60 圧力検出器、P1~P3 水圧、Pc,Ps 上限値、Pdet 検出水圧。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8