IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東洋ガラス株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-ガラスびんの底部検査装置 図1
  • 特開-ガラスびんの底部検査装置 図2
  • 特開-ガラスびんの底部検査装置 図3
  • 特開-ガラスびんの底部検査装置 図4
  • 特開-ガラスびんの底部検査装置 図5
  • 特開-ガラスびんの底部検査装置 図6
  • 特開-ガラスびんの底部検査装置 図7
  • 特開-ガラスびんの底部検査装置 図8
  • 特開-ガラスびんの底部検査装置 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023075992
(43)【公開日】2023-06-01
(54)【発明の名称】ガラスびんの底部検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/90 20060101AFI20230525BHJP
【FI】
G01N21/90 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021189115
(22)【出願日】2021-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】000222222
【氏名又は名称】東洋ガラス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100213388
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 康司
(72)【発明者】
【氏名】松本 怜也
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA15
2G051AB01
2G051AB02
2G051BA06
2G051BA11
2G051BA20
2G051BB01
2G051BB07
2G051CA04
2G051CB02
2G051CC12
2G051ED01
(57)【要約】
【課題】本発明は、底部15に凹凸の彫刻があるガラスびん10であっても欠点の有無を判定することができるガラスびん10の底部検査装置1を提供する。
【解決手段】ガラスびん10の底部検査装置1は、ガラスびんの底部に向けて光を照射する照明装置2と、照明装置2に対してガラスびん10を挟んで配置され、かつ底部15の画像を撮影するカメラ4と、第1円偏光フィルム35と、第2円偏光フィルム36と、を備える。照明装置2は、底部15に向けて指向性を有する赤外光を照射する第1照明部21と、第1照明部21と底部15との間に配置される底部15に向けて拡散性を有する可視光を照射する第2照明部31と、を備える。カメラ4は、赤外光のみを検出する第1受光部41と、可視光のみを検出する第2受光部42と、を備える。第1円偏光フィルム35及び第2円偏光フィルム36は、偏光方向が等しい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスびんの底部に向けて光を照射する照明装置と、
前記照明装置に対して前記ガラスびんを挟んで配置され、かつ前記底部の画像を撮影するカメラと、
前記照明装置と前記底部との間に配置された第1円偏光フィルムと、
前記ガラスびんの口部と前記カメラとの間に配置された第2円偏光フィルムと、
を備え、
前記照明装置は、前記底部に向けて指向性を有する赤外光を照射する第1照明部と、前記第1照明部と前記底部との間に配置される前記底部に向けて拡散性を有する可視光を照射する第2照明部と、を備え、
前記カメラは、赤外光のみを検出する第1受光部と、可視光のみを検出する第2受光部と、を備え、
前記第1円偏光フィルム及び前記第2円偏光フィルムは、偏光方向が等しいことを特徴とする、ガラスびんの底部検査装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記カメラは、赤外光と可視光を分光するビームスプリッタを備えることを特徴とする、ガラスびんの底部検査装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記第1照明部は、拡散性を有する赤外光を出射する第1光源と、前記第1光源から入射する赤外光が透過する角度を制限する複数のルーバーを有するルーバーフィルムと、を備え、
前記ルーバーフィルムは、前記複数のルーバーが前記ガラスびんの中心軸線に対して直交する方向で格子状に延在することを特徴とする、ガラスびんの底部検査装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記ルーバーフィルムは、前記中心軸線における視野角が15度~45度に設定されることを特徴とする、ガラスびんの底部検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスびんの底部検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ペットボトルなどの透明ボトルの底部の欠点を検査する外観検査装置が提案されている(例えば特許文献1)。この外観検査装置は、透明ペットボトルの底部外面に向けて青色(450nm~490nm)の拡散光及び赤色(620nm~750nm)の平行光を照射して、口部側に配置されたカメラで2種類の画像を撮像し、これらを比較することにより、欠陥の有無を判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-242148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、ガラスびんの底部には社標や管理番号などの凹凸の彫刻が多数設けられる。そのため、例えば、特許文献1の技術をガラスびんに適用しても、画像では彫刻による模様と欠点との区別がつきにくく、模様を欠点として誤認識しないように検査精度を下げたり、他の検査装置で異なる検査を行ったりすることになる。
【0005】
そこで、本発明は、底部に凹凸の彫刻があるガラスびんであっても高精度に欠点の有無を判定することができるガラスびんの底部検査装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様または適用例として実現することができる。
【0007】
なお、以下の説明において、「彫刻」は、ガラスびんの表面の凹凸による形状変化であり、「模様」は、ガラスびんを撮影して得られた画像に現れる「彫刻」に起因する明暗濃度の変化である。
【0008】
[1]本発明に係るガラスびんの底部検査装置の一態様は、
ガラスびんの底部に向けて光を照射する照明装置と、
前記照明装置に対して前記ガラスびんを挟んで配置され、かつ前記底部の画像を撮影するカメラと、
前記照明装置と前記底部との間に配置された第1円偏光フィルムと、
前記ガラスびんの口部と前記カメラとの間に配置された第2円偏光フィルムと、
を備え、
前記照明装置は、前記底部に向けて指向性を有する赤外光を照射する第1照明部と、前記第1照明部と前記底部との間に配置される前記底部に向けて拡散性を有する可視光を照射する第2照明部と、を備え、
前記カメラは、赤外光のみを検出する第1受光部と、可視光のみを検出する第2受光部と、を備え、
前記第1円偏光フィルム及び前記第2円偏光フィルムは、偏光方向が等しいことを特徴とする。
【0009】
[2]前記ガラスびんの底部検査装置の一態様において、
前記カメラは、赤外光と可視光を分光するビームスプリッタを備えることができる。
【0010】
[3]前記ガラスびんの底部検査装置の一態様において、
前記第1照明部は、拡散性を有する赤外光を出射する第1光源と、前記第1光源から入射する赤外光が透過する角度を制限する複数のルーバーを有するルーバーフィルムと、を備え、
前記ルーバーフィルムは、前記複数のルーバーが前記ガラスびんの中心軸線に対して直交する方向で格子状に延在することができる。
【0011】
[4]前記ガラスびんの底部検査装置の一態様において、
前記ルーバーフィルムは、前記中心軸線における視野角が15度~45度に設定されることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るガラスびんの底部検査装置の一態様によれば、底部に凹凸の彫刻があるガラスびんであっても第1受光部の画像から模様を検出できるので、第2受光部の画像を用いて模様のない領域における欠点の有無を判定しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】底部検査装置の一態様を模式的に示す正面図である。
図2】ルーバーフィルムを模式的に示す部分拡大図である。
図3】底部検査装置を用いた検査方法のフローチャートである。
図4】第1画像の一例である。
図5】第2画像の一例である。
図6】検査領域設定工程を説明する図である。
図7】第3画像の一例である。
図8】実施例1の底部検査装置で撮影した第1画像及び第2画像である。
図9】比較例1の底部検査装置で撮影した第1画像及び第2画像である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0015】
本実施形態に係るガラスびんの底部検査装置の一態様は、ガラスびんの底部に向けて光を照射する照明装置と、前記照明装置に対して前記ガラスびんを挟んで配置され、かつ前記底部の画像を撮影するカメラと、前記照明装置と前記底部との間に配置された第1円偏光フィルムと、前記ガラスびんの口部と前記カメラとの間に配置された第2円偏光フィルムと、を備え、前記照明装置は、前記底部に向けて指向性を有する赤外光を照射する第1照明部と、前記第1照明部と前記底部との間に配置される前記底部に向けて拡散性を有する可視光を照射する第2照明部と、を備え、前記カメラは、赤外光のみを検出する第1受光部と、可視光のみを検出する第2受光部と、を備え、前記第1円偏光フィルム及び前記第2円偏光フィルムは、偏光方向が等しいことを特徴とする。
【0016】
1.底部検査装置
図1及び図2を用いて、本実施形態に係るガラスびん10の底部検査装置1について詳細に説明する。図1は、底部検査装置1の一態様を模式的に示す正面図であり、図2は、ルーバーフィルム24を模式的に示す部分拡大図である。
【0017】
図1に示すように、ガラスびん10の底部検査装置1は、照明装置2と、カメラ4と、第1円偏光フィルム35と、第2円偏光フィルム36と、を備える。底部検査装置1は、ガラスびん10の製造ラインまたは複数の検査装置を備える検査ラインの一部として組み込んでもよく、その場合、ガラスびん10を底部検査装置1に搬入出する手段をさらに備えてもよい。底部検査装置1は、さらに制御部50を備えてもよい。
【0018】
ガラスびん10は、ガラスびん10の中心軸線12に沿って下方に向かって口部13、胴部14及び底部15を有する。検査対象であるガラスびん10は、底部検査装置1の載置台60の上の所定位置に配置される。中心軸線12は、口部13の中心と底部15の中心を通る仮想線である。載置台60は、ガラスびん10を載せる台であり、少なくとも底部15を載せる範囲は可視光及び赤外光を透過する平板、例えばひずみのない透明なアクリル樹脂板やガラス板などで構成される。なお、載置台60を撤去し、ガラスびん10を中空に浮かせながら撮像しても良い。ガラスびん10は、ガラス製であって、透明または半透明の容器であり、着色されていてもよい。半透明とは、ガラスびん10を透過した照明装置2からの光によって底部15の欠点を判定可能な程度の透明度である。口部13は、開口し、内容物を充填後に蓋が取り付けられる。胴部14は、横断面の外形が円形であるが、他の形状例えば略四角形などであってもよい。底部15は、接地する周縁部と当該周縁部の内側からなる底部とを備え、外表面に彫刻を有する。彫刻は、ガラスびん10の表面に形成された凹凸の文字や記号などであり、例えば、成形時の金型の表面に刻まれた凹凸により成形される。彫刻は、例えば、製造会社を表す社標、金型番号などの管理番号を表す型番である。彫刻は、金型の凹凸に対応して底部15の所定位置に賦形されるので、彫刻に由来する模様をガラスびん10の中心軸線12まわりの位置決めやカメラ4で撮影した画像の位置決めに利用することができる。
【0019】
照明装置2は、ガラスびん10の底部15に向けて光を照射する。照明装置2から照射された光が底部15を透過し、胴部14の中を抜け、そして口部13の開口を通ってカメラ4が受光するように照明装置2、カメラ4及びガラスびん10が配置される。本実施形態では中心軸線12に沿って照明装置2、ガラスびん10、カメラ4が順に配置されるが、底部15を透過した光をカメラ4が受光できれば他の配置でもよい。
【0020】
照明装置2は、底部15に向けて指向性を有する赤外光を照射する第1照明部21と、第1照明部21と底部15との間に配置される底部15に向けて拡散性を有する可視光を照射する第2照明部31と、を備える。図1の例では、中心軸線12に沿って、第1照明部21、第2照明部31、後述する第1円偏光フィルム35、載置台60、ガラスびん10、第2円偏光フィルム36、カメラ4が順に配置される。よって、底部15には赤外光と可視光が到達する。そして、異なる波長の2種類の光(赤外光、可視光)を用いたことにより、カメラ4が2種類の光をそれぞれ別の受光部で検出することができる。ここで、可視光は波長が380nm~630nmであり、赤外光は波長が800nm~1000nmの光である。
【0021】
第1照明部21は、拡散性を有する赤外光を出射する第1光源22と、第1光源22から入射する赤外光が透過する角度を制限する複数のルーバー24a(図2)を有するルーバーフィルム24と、を備える。ルーバーフィルム24を透過した赤外光は指向性を有することとなる。
【0022】
第1光源22は、例えば複数の図示しないLED(発光ダイオード)と、複数のLEDを覆うように底部15側に配置される拡散板23とを含む。LEDの代わりに有機ELを用いてもよい。第1光源22は、中心軸線12に直交する平面上に広がる平板状の面光源であり、複数のLEDが拡散板23側の面に均等に配置され、ガラスびん10の底部15
に向けて面全体から拡散光を照射する。第1照明部21から出射される赤外光としては波長が800nm~1000nmにピークを有する近赤外光が好ましい。
【0023】
図2に示すように、ルーバーフィルム24は、複数のルーバー24aがガラスびん10の中心軸線12に対して直交する方向で格子状に延在することができる。ルーバーフィルム24は、底部15側から見て第1光源22の全体と重なるように配置される。格子状のルーバーフィルム24としては、例えば信越ポリマー社のクロスルーバーフィルムを採用することができる。ルーバーフィルム24は、遮光性に優れる板状の複数のルーバー24aとルーバー24aの間の透光性に優れた部分を交互に配置したルーバーフィルムを上下に2枚積層し、上下のルーバー24aが中心軸線12から見て格子状になるように構成される。ルーバーフィルム24は、例えば樹脂製であることができる。ルーバーフィルム24により第1光源22の拡散光が指向性を有するようになる。ルーバーフィルム24は、中心軸線12における視野角が15度~45度に設定されることが好ましく、視野角が25度~35度がさらに好ましい。ここで視野角は、光が透過可能な角度(可視角)であって、本実施形態では底部15側からルーバーフィルム24を見たときの光が透過する角度である。視野角が狭くなることにより、赤外光の指向性が高くなる。また、赤外光は色々なびん色に対して、透過率の影響を軽減することができるため、底部15を撮影した画像における模様を認識しやすくなる。視野角が15度未満だと撮像画像における中心部以外の底部15の画像が暗くなりすぎて外観検査に適しておらず、45度を超えると指向性が低く、模様の輪郭が不明瞭になる。
【0024】
第2照明部31は、第2光源32と、導光板34とを含む。第2照明部31は、中心軸線12に直交する平面上に広がる平板状の面光源であり、ガラスびん10の底部15に向けて略面全体から拡散光を発光する。第2照明部31は、外形が略四角形の板状であることが照明の均一度に優れるため好ましいが、これに限らず例えば円板状などであってもよい。第2照明部31は、公知の照明、例えば、シーシーエス社のフラットドーム(登録商標)照明(国際公開番号WO2020/045557A1号)等を採用することができる。第2照明部31は、第1照明部21からの赤外光を透過させるため、中央に平板状の導光板34が配置され、導光板34の外縁に第2光源32が配置される。
【0025】
第2光源32は、導光板34の外縁から導光板34の中心へ向けて可視光を出射する図示しない例えば複数のLEDである。例えばLEDは、導光板34を囲む枠状体の内周面に並んで配置される。LEDの代わりに有機ELを用いてもよい。第2光源32は、波長が400nm~630nmのピークを有する可視光が好ましい。また、第2光源32は、ピーク波長が例えば、630nm付近の赤色LEDと、470nm付近の青色LEDと、を含むことが好ましく、2つの波長の可視光をガラスびん10のびん色によって切り替えることが好ましい。びん色によって光の透過率が異なるためであり、例えば、赤色LEDは比較的多様なびん色において高い透過率を有するが、水色及び青色のびんでは透過率が低くなる傾向があるため、水色及び青色のびんには透過率が高い青色LEDを適用することが好ましい。
【0026】
導光板34は、第1光源22の赤外光を透過しつつ、外縁にある第2光源32から入射した可視光を底部15側の面から拡散して出射する。導光板34は、公知のものを採用できる。
【0027】
第2照明部31から出射された可視光は、第1円偏光フィルム35で偏光され、底部15を透過し、口部13の開口を通過して第2円偏光フィルム36を透過してカメラ4に受光される。第1円偏光フィルム35は、照明装置2と底部15との間に配置される。第2円偏光フィルム36は、ガラスびん10の口部13とカメラ4との間に配置される。第1円偏光フィルム35と第2円偏光フィルム36は、基本的に同じ形状であり、口部13付
近と底部15付近において中心軸線12に直交するそれぞれの平面内に配置される。第1円偏光フィルム35は、載置台60と所定の間隔D1を有して配置される。第1円偏光フィルム35と載置台60との間隔D1は、20mm~40mmであることが好ましく、例えば30mmである。第1円偏光フィルム35及び第2円偏光フィルム36は、偏光方向が等しい。偏光方向は、中心軸線12に沿った方向に対して右回転方向または左回転方向がある。例えば、第1円偏光フィルム35及び第2円偏光フィルム36は、偏光方向が例えば共に右回転方向の右円偏光波を共に採用することができ、また、共に左円偏光波を採用してもよい。第1円偏光フィルム35及び第2円偏光フィルム36は、共に直線偏光板と1/4波長板とを貼り合わせて構成することができる。第1円偏光フィルム35及び第2円偏光フィルム36により、第2照明部31の拡散可視光が直線偏光波となってカメラ4に受光されると、底部15の異物、異質ガラスなどの欠点が撮影した画像において黒い部分(明度が低く暗い部分)として認識できる。なお、第1円偏光フィルム35及び第2円偏光フィルム36は、赤外光を偏光しないため、第1照明部21の赤外光に影響はない。
【0028】
カメラ4は、照明装置2に対してガラスびん10を挟んで配置され、かつ底部15の画像を撮影する。カメラ4は、赤外光のみを検出する第1受光部41と、可視光のみを検出する第2受光部42と、を備える。カメラ4は、口部13側からレンズ45を通して入射した光を赤外光と可視光に分光して第1受光部41と第2受光部42で受光する。レンズ45は、その光軸が中心軸線12上にあって、底部15の画像を撮影できるように焦点距離等が設定できる。
【0029】
カメラ4は、赤外光と可視光を分光するビームスプリッタ44を備えることができる。ビームスプリッタ44は、レンズ45からの入射光を赤外光と可視光に分割する光学部品である。ビームスプリッタ44としては、公知のものを採用でき、2個のプリズムを組み合わせたキューブ型であってもよいし、薄い平板ガラスに分光のための光学薄膜が蒸着されたプレート型であってもよい。図1の例では、ビームスプリッタ44は、入射光の内、赤外光を反射させて中心軸線12に対し90度の位置にある第1受光部41へ受光させ、可視光を中心軸線12に沿って透過させて中心軸線12上にある第2受光部42へ受光させる。第1受光部41によって撮影された画像は、底部15の表面に形成された凹凸のある彫刻による模様の輪郭が暗い色で表れる。第2受光部42によって撮影された画像は、当該模様による明暗の差がなく、欠点が暗い色で表れる。
【0030】
第1受光部41及び第2受光部42は、それぞれ別体の固体撮像素子であり、例えばCCDイメージセンサやCMOSイメージセンサを採用でき、CMOSイメージセンサが好ましい。2つの受光部を設けることにより、それぞれのセンサを適切なカメラゲインやシャッタスピードに設定することができ、また、それぞれの画像の明るさを調整することが可能である。また、赤外光による底部15の画像と可視光による底部15の画像を1台の底部検査装置1によって同時に取得できるので、検査効率を向上すると共に、省スペースを実現できる。第1受光部41及び第2受光部42は、赤外光と可視光の間の波長例えば650nm~790nmの受光感度が0%であることが好ましい。
【0031】
制御部50は、照明装置2及びカメラ4に電気的に接続され、例えば照明装置2の点灯・消灯に関する処理やカメラ4の撮影に関する処理を実行し、撮影された画像を用いて検査に関する処理を実行する。制御部50は、ガラスびん10の図示しない搬入出機構の動作に関する処理をさらに実行してもよい。制御部50は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、ROM(Read-Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の記憶装置、キーボード、
マウス、タッチパッド等の入力装置、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等の表示装置、I/Oボード等のデジタル入出力ボード等で構成される。制御部50のCPUや記憶装置等は1つだけでなく複数の例えば物理的に分離された装置であってもよく、その場合、通信ネットワークを介して接続してもよい。
【0032】
制御部50は、判定部52と、画像処理部53と、読取部54と、記憶部55とを有する。判定部52は、カメラ4から取得した画像に基づいて欠点の有無を判定する。判定部52で判定される欠点としては、例えば、底部15の内表面にある異物、底部15の抱合異物、底部15の異質ガラス等のガラスびん成形時の欠点などがある。制御部50は、判定部52の判定結果をガラスびん10ごとに外部へ出力することができ、例えば、欠点有りと判定したガラスびん10を底部検査装置1の図示しない排出部で排除してもよい。制御部50の処理部の一部は制御部50以外の装置で処理を実行してもよく、例えば、画像処理部53や読取部54の一部の処理をカメラ4に設けられたCPUで実行してもよい。制御部50の各部における具体的な処理については、下記「2.底部検査方法」で説明する。
【0033】
2.底部検査方法
図1図6を用いて、本実施形態に係るガラスびん10の底部検査方法について底部検査装置1を用いた例について詳細に説明する。図3は、底部検査装置1を用いた検査方法のフローチャートであり、図4は、第1画像101の一例であり、図5は、第2画像102の一例であり、図6は、検査領域設定工程(S40)を説明する図である。
【0034】
図3に示すように、本実施形態に係る底部検査方法は、底部15の表面に彫刻を有するガラスびん10の底部検査方法であって、例えば、撮影工程(S10)と、模様検出工程(S20)と、マスク作成工程(S30)と、検査領域設定工程(S40)と、検出工程(S50)と、判定工程(S60)と、良品として処理する工程(S70)と、不良品として処理する工程(S80)と、を含む。各工程について図1及び図2を参照しながら以下順番に説明する。
【0035】
S10:制御部50は、撮影処理を実行する。制御部50は、S10に先立って点灯処理を実行することが好ましい。点灯処理は、照明装置2に対し第1照明部21及び第2照明部31が点灯する信号を制御部50から出力する。撮影処理は、カメラ4に対し撮影を実行する信号を制御部50から出力し、撮影された画像データをカメラ4から制御部50に送信させる。カメラ4は、第1照明部21からの指向性のある赤外光を第1受光部41が受光することで例えば図4の底部15の第1画像101を撮影し、第2照明部31からの拡散性のある可視光を第2受光部42が受光することで例えば図5の底部15の第2画像102を撮影する。制御部50は、各画像データをカメラ4からの出力により取得することができる。取得された画像データは、記憶部55に保存してもよい。
【0036】
S20:制御部50は、模様検出処理を実行する。例えば、模様検出処理は、S10で取得した第1画像101から赤外光で強調された模様70を判定部52が検出する。判定部52は、例えば「パターンサーチ」により模様70を検出してもよい。画像処理部53は、判定部52における模様70の検出をより確実に実行するために、S20の前に模様70に対し画像前処理を実行してもよい。また、読取部54は、第1画像101で検出された模様70から例えば型番を読み取ることができる。模様70の内、円軌道に沿って間隔を空けて10個配置された略楕円形の符号は、CIDマークと呼ばれるバーコード状の符号(特開2001-270719号参照)として型番に対応して付与されるため、読取部54が符号の位置及び個数から型番を読み取ることができる。後述する欠点の判定と共に1つの検査装置で型番を読み取ることができるため、省スペースで効率の良い検査が実
施できる。
【0037】
図4に示す第1画像101は、第1受光部41によって撮影された画像である。第1画像101は、底部15の彫刻に由来する複数の模様70の輪郭と、異物(検出体72)とが暗い影として表れている。複数の模様70には、例えば、底部15の外縁に沿って並ぶナーリング、ガラスびん10の製造所を示す社標、金型の番号、CIDマーク等が含まれる。これらの模様70は、金型に刻まれた彫刻に由来するので、あらかじめ規則性を有している。この規則性に基づく模様70のパターンをあらかじめ記憶部55に保存しておくことが望ましい。そして、第1画像101から模様70が検出できれば、例えば、底部15の外縁の位置及び形状、外縁の位置から底部15の中心位置、中心位置からの各模様70までの距離、形状及び配置等から底部15の中心軸線12を中心とする回転角度等を推定できる。
【0038】
画像前処理は、判定部52による「パターンサーチ」を行うために例えば「ぼかし処理」を行うことができる。「ぼかし処理」は、例えば平均化フィルタにより行うことができ、平均化フィルタは注目画素の画素値を、フィルタサイズ範囲内の全画素値の平均値で置き換えて出力する二次元フィルタである。また、他の画像前処理としては、例えば影の黒を膨張するような「膨張処理」を採用してもよい。
【0039】
判定部52は、例えば画像前処理が実行された第1画像101に対して模様検出処理を実行する。模様検出処理は、第1画像101に対しあらかじめ底部15の彫刻の外形に基づいて作成されたパターン登録画像を用いてパターンサーチして判定部52が模様70を検出する。パターンサーチは、パターン登録画像に適合する検出体を第1画像101内でサーチして、パターン登録画像が一定程度模様70の外形に一致することで検出体を模様70として検出する。第1画像101は指向性の高い赤外光により模様70の輪郭が強調されているためパターンサーチによる検知精度が高く、しかも特開2001-270719号に開示されるように底部15のCIDマークには規則性があるため、高精度に模様70の位置を検出することができる。
【0040】
S30:制御部50は、マスク作成工程を実行する。例えば、マスク作成工程は、S20で模様70が検出された第1画像101(図4)に基づいて画像処理部53がマスクを作成し、第2画像102(図5)にマスク80を配置する(図6)。第1受光部41で撮影される第1画像101に対する第2受光部42で撮影される第2画像102の対応位置関係は、あらかじめ計測、調整されており、第1画像101において検出された模様70の位置情報がわかれば第2画像102における模様70が存在する位置がわかる。そのため、第2画像102における正確な位置にマスク80が配置される。
【0041】
図4図6を用いて具体的に説明すると、マスク作成工程は、まず、図4の第1画像101の中から模様70を含む複数の領域に適合する大きさの複数のマスク80(図6)を作成する。図5のように、第2受光部42で撮影された第2画像102は、欠点である検出体72が暗い点として認識できるが、模様70がほとんど認識できない。次に、図4の第1画像101における各模様70の位置情報に基づいて、図5の第2画像102における各模様70を覆うようにマスク80が第2画像102に配置されると図6のような状態になる。マスク80の一部は、検査するガラスびん10の彫刻(またはパターン登録画像)に合わせてあらかじめ作成し、記憶部55に保存したものでもよい。各マスク80の大きさは、各模様70とほぼ同じ大きさであってもよいし、複数のまとまった模様70を一つのマスク80で覆う大きさであってもよい。
【0042】
S40:制御部50は、検査領域設定工程を実行する。例えば、検査領域設定工程は、S30と同時に実行してもよく、パターンサーチによって検出した模様70の位置に基づ
いて、あらかじめ設定した形状の1以上の検査ゲート83を第2画像102に画像処理部53が配置する。模様70には規則性があるので、模様70の位置と各検査ゲート83の位置との相対位置をあらかじめ設定しておくことで、模様70の位置が定まれば、検査ゲート82,83の位置を第2画像102上に自動的にレイアウトすることができる。検査ゲート82,83は、例えば底部15における中心軸線12の同心円に1以上の円環状の範囲として設定することができる。図6では2つの検査ゲート82,83が設定される。検査ゲート82と検査ゲート83とは、異なる感度に設定することができ、例えば、ガラスびん10の種類によって欠点が発生しやすい部分がある場合にその部分が含まれる例えば検査ゲート82を検査ゲート83よりも高い感度に設定することができる。
【0043】
S50:制御部50は、各検査ゲート82,83に対して検出工程を実行する。例えば、検出工程は、図6に示すS30でマスク80と検査ゲート82,83が配置された第2画像102について、マスク80を除いて検査ゲート82,83内における暗い部分(検出体72)を検出する。第2画像102における暗い部分は、例えば、あらかじめ記憶部55に保存された各検査ゲート82の検査アルゴリズムを実行することで検出体72を検出する。検査アルゴリズムとしては、例えば、検査ゲート82,83に読みだした照度データを2値化し、周囲の画素と対比して検出体72を検出する処理や、検査ゲート82,83内で小面積の検出領域(セグメント)を作成し、このセグメントを円周または放射方向に移動させて平均濃度を算出し、濃度差を比較して検出体72を検出する処理などが挙げられる。マスク80のある部分を除いて、検査ゲート82,83に対して検査アルゴリズムを実行することにより、高感度検査を実行することができる。検査アルゴリズムの実行に際しては、判定工程(S60)を同時に実行してもよい。
【0044】
S60:制御部50は、判定工程を実行する。例えば、判定工程は、S50で検出した第2画像102における検出体72について欠点か否かを判定し、その結果によりガラスびん10が良品か否かを判定する。判定基準は、あらかじめ記憶部55に保存された基準データを用いる。判定基準としては、例えば、検出体72の面積や形状等がある。判定工程で検出体72が欠点でないという結果であればガラスびん10を「良品」として制御部50がS70を実行し、検出体72が欠点であるという結果であればガラスびん10を「不良品」として制御部50がS80を実行する。もちろん、S50において検出体72そのものが検出されない場合には、判定結果は「良品」としてS70が実行される。
【0045】
S70:制御部50は、良品として処理する工程を実行する。例えば、良品として処理する工程は、検査対象のガラスびん10を「良品」として次工程へ搬送するように図示しない搬送手段に制御部50が信号を出力する。
【0046】
S80:制御部50は、不良品として処理する工程を実行する。例えば、不良品として処理する工程は、S20で検出された模様70から型番を読み取って判定結果と型番とを紐づけたデータを記憶部55に保存すると共に、検査対象のガラスびん10を「不良品」として図示しない廃棄部へ排出する信号を制御部50が出力する。記憶部55に保存された「不良品」の判定結果と型番のデータは、制御部50から図示しないガラスびん10の製造装置へ出力してもよい。
【0047】
このように、従来であれば底部15の検査は、模様70と模様70以外の検出体72とを区別して判定することは難しいが、本実施形態によれば、第1画像101から模様70を検出できるので、第2画像102を用いて模様70のない領域(検査ゲート82)における検出体72の有無を判定しやすい。
【0048】
3.変形例
図7を用いて、変形例に係るガラスびん10の底部検査方法について底部検査装置1を
用いた例について詳細に説明する。図7は、第3画像103の一例である。変形例は、基本的に「2.底部検査方法」と同じであるので、重複する説明は省略する。
【0049】
図7に示す第3画像103は、胴部14の横断面が四角形であるガラスびん10における底部15を第2受光部42により撮影した画像である。各模様には複数のマスク80が配置され、底部15の接地面となるナーリングの外側に、胴部14の外縁(四角形)に合わせた検査ゲート82が設定される。底部15の模様と胴部14の外縁の向き(回転角度)は対応しているので、S20で模様を検出することにより胴部14の向きに合わせて四角形の検査ゲート82を設けることができる。これにより、接地面より外側にある領域の検査も可能となる。
【実施例0050】
実施例1として図1に示す底部検査装置1を用いて内部に異物を落としたガラスびん10を検査した。カメラ4は155万画素の2CMOSエリアセンサカメラであり、第1円偏光フィルム35と第2円偏光フィルム36はいずれも右回転方向で等しく、間隔D1は30mmであり、第1照明部21は赤外光拡散照明であり、第1照明部21と第2照明部31との間にはルーバーフィルム24として視野角30度のクロスルーバーフィルムを配置し、第2照明部31は630nmがピークの可視光フラットドーム(登録商標)照明であった。
【0051】
図8の上段はカメラ4の第1受光部41で撮影した第1画像であり、図8の下段は第2受光部42で撮影した第2画像である。第1画像ではCIDマーク等がくっきりと認識でき、第2画像では中心に落ちている異物がくっきりと黒く認識でき、制御部50により「不良品」と判定された。
【0052】
また、比較例1として、同じ図1の底部検査装置1から第1円偏光フィルム35と第2円偏光フィルム36を取り除いて同じ異物を落としたガラスびん10を検査した。
【0053】
図9の上段はカメラ4の第1受光部41で撮影した第1画像であり、図9の下段は第2受光部42で撮影した第2画像である。第1画像及び第2画像では中心に落ちている異物を認識できず、制御部50により「良品」と判定された。
【0054】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能であり、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成を含む。ここで、「同一の構成」とは、機能、方法、及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成である。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0055】
1…底部検査装置、2…照明装置、4…カメラ、10…ガラスびん、12…中心軸線、13…口部、14…胴部、15…底部、21…第1照明部、22…第1光源、23…拡散板、24…ルーバーフィルム、24a…ルーバー、24b…光透過部、31…第2照明部、32…第2光源、34…導光板、35…第1円偏光フィルム、36…第2円偏光フィルム、41…第1受光部、42…第2受光部、44…ビームスプリッタ、45…レンズ、50…制御部、52…判定部、53…画像処理部、54…読取部、55…記憶部、60…載置台、70…模様、72…検出体、80…マスク、82,83…検査ゲート、101…第1画像、102…第2画像、103…第3画像、D1…間隔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9