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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023076016
(43)【公開日】2023-06-01
(54)【発明の名称】硬表面用液体洗浄剤
(51)【国際特許分類】
   C11D 17/08 20060101AFI20230525BHJP
   C11D 1/75 20060101ALI20230525BHJP
   C11D 1/90 20060101ALI20230525BHJP
   C11D 3/37 20060101ALI20230525BHJP
   C11D 1/29 20060101ALI20230525BHJP
   C11D 1/94 20060101ALI20230525BHJP
【FI】
C11D17/08
C11D1/75
C11D1/90
C11D3/37
C11D1/29
C11D1/94
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021189153
(22)【出願日】2021-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 洋介
【テーマコード(参考)】
4H003
【Fターム(参考)】
4H003AB19
4H003AB31
4H003AC08
4H003AC15
4H003AD04
4H003BA12
4H003BA21
4H003DA05
4H003DA17
4H003DB02
4H003DC02
4H003EA03
4H003EA21
4H003EB04
4H003EB07
4H003EB22
4H003EB28
4H003EB33
4H003EB34
4H003ED02
4H003ED28
4H003FA12
4H003FA16
4H003FA23
4H003FA28
(57)【要約】
【課題】水で繰り返しすすいだ場合でも十分な水切れ性を洗浄対象物に付与することができ、かつ洗浄対象物のヌルつきを抑えることができる、硬表面用洗浄剤の提供。
【解決手段】アニオン界面活性剤(A)、アミンオキシド型界面活性剤及びベタイン型界面活性剤から選ばれる1種以上の界面活性剤(B)、及びポリビニルアルコールとN-ビニルピロリドンとのグラフトコポリマーを含む水溶性高分子(C)成分を含有し、(C)成分の含有量が0.5~4.0質量%であり、(C)成分に対する(A)成分の質量比を表すA/Cが1~20である、硬表面用液体洗浄剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分:アニオン界面活性剤、
(B)成分:アミンオキシド型界面活性剤及びベタイン型界面活性剤から選ばれる1種以上の界面活性剤、及び
(C)成分:ポリビニルアルコールとN-ビニルピロリドンとのグラフトコポリマーを含む水溶性高分子、を含有し、
前記(C)成分の含有量が0.5~4.0質量%であり、
前記(C)成分に対する前記(A)成分の質量比を表すA/Cが1~20である、硬表面用液体洗浄剤。
【請求項2】
(D)成分:ノニオン界面活性剤、をさらに含む、請求項1に記載の硬表面用液体洗浄剤。
【請求項3】
前記(A)成分が、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩を含む、請求項1又は2に記載の硬表面用液体洗浄剤。
【請求項4】
前記(B)成分が、ラウリルジメチルアミンオキシドを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の硬表面用液体洗浄剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬表面用液体洗浄剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、消費者の生活スタイルの変化からも食器洗い行動において「手早さ」が重視されている。「手早さ」に繋がる重要な要因としては、しっかり油汚れが落ちる「油汚れ洗浄力」に加えて、食器洗浄中、すすぎ時における「ヌルつき性が少ないこと」、「水切れが早く、食器を洗ったあと、乾燥させ、食器棚等にしまうまでの総合的な時間が短縮できること」が挙げられ、これらが満たされることが望まれる。
【0003】
食器用洗剤において、水切れ性を高める高分子成分として、特許文献1、2ではカチオン化セルロースが検討されており、特許文献3ではN-ビニルピロリドンとメタアクリル酸エステル系単量体との共重合体が検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-35251号公報
【特許文献2】特開2003-155499号公報
【特許文献3】特開2005-264009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、洗浄対象物を水で繰り返しすすぐと高分子成分が流されてしまい、水切れ性が不十分となる場合がある。それを改善するために高分子成分の使用量を多くすると洗浄対象物のヌルつきが強くなりやすいという課題がある。
本発明は、水で繰り返しすすいだ場合でも十分な水切れ性を洗浄対象物に付与することができ、かつ洗浄対象物のヌルつきを抑えることができる、硬表面用洗浄剤の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下の態様を有する。
[1] (A)成分:アニオン界面活性剤、(B)成分:アミンオキシド型界面活性剤及びベタイン型界面活性剤から選ばれる1種以上の界面活性剤、及び(C)成分:ポリビニルアルコールとN-ビニルピロリドンとのグラフトコポリマーを含む水溶性高分子、を含有し、前記(C)成分の含有量が0.5~4.0質量%であり、前記(C)成分に対する前記(A)成分の質量比を表すA/Cが1~20である、硬表面用液体洗浄剤。
[2] (D)成分:ノニオン界面活性剤、をさらに含む、[1]の硬表面用液体洗浄剤。
[3] 前記(A)成分が、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩を含む[1]又は[2]の硬表面用液体洗浄剤。
[4] 前記(B)成分が、ラウリルジメチルアミンオキシドを含む、[1]~[3]のいずれかの硬表面用液体洗浄剤。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、水で繰り返しすすいだ場合でも十分な水切れ性を洗浄対象物に付与することができ、かつ洗浄対象物のヌルつきを抑えることができる、硬表面用洗浄剤が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
≪硬表面用液体洗浄剤組成物≫
本発明の硬表面用液体洗浄剤(以下、単に液体洗浄剤ということがある)は、以下に示す(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含有する組成物である。さらに、以下に示す(D)成分を含有することが好ましい。
本明細書において、「~」で表される数値範囲は、~の前後の数値を下限値及び上限値とする数値範囲を意味する。
【0009】
<(A)成分>
(A)成分は、アニオン界面活性剤である。(A)成分は洗浄力に寄与する。特に油汚れ洗浄力に寄与する。また、液体洗浄剤が(A)成分を含有することで、水切れ性が高まる。
【0010】
アニオン界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキル基を有するアルカンスルホン酸塩、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩等が好ましい。
アニオン界面活性剤の塩の形態としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属塩;モノエタノールアンモニウム、ジエタノールアンモニウム、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン塩などが挙げられる。
【0011】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩が好ましく、下記一般式(a1)で表される化合物がより好ましい。
11-O-(EO)-SO ・・・(a1)
式(a1)において、R11は炭素数8~18の直鎖アルキル基であり、かつ、酸素原子と結合している炭素原子は第一級炭素原子である。EOはオキシエチレン基を表し、nはEOの平均繰り返し数を表し、0<n≦4を満たす数であり、Mは水素イオン以外の陽イオンである。
11の炭素数は10~14が好ましく、12~14がより好ましい。R11は油脂原料由来のアルキル基であることが好ましい。例えば、R11は、C12のアルキル基とC14のアルキル基の存在比率(モル比)を表すC12/C14が75/25である天然油脂由来のアルキル基であることが特に好ましい。
EOの平均繰り返し数、すなわちエチレンオキシドの平均付加モル数は、1~3が好ましく、1が特に好ましい。
Mとしては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属が好ましく、ナトリウムが特に好ましい。
【0012】
アルキル基を有するアルカンスルホン酸塩としては、炭素数10~20のアルカンスルホン酸塩が挙げられ、炭素数14~17のアルカンスルホン酸塩が好ましく、第2級アルカンスルホン酸塩が特に好ましい。
直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩としては、直鎖アルキル基の炭素数が8~16の直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩が好ましく、直鎖アルキル基の炭素数が10~14の直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩が特に好ましい。
【0013】
(A)成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
特に、(A)成分としてポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩を用いることが好ましい。例えば、(A)成分の総質量に対して、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩の含有割合が50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。100質量%でもよい。
【0014】
<(B)成分>
(B)成分はアミンオキシド型界面活性剤(B1)及びベタイン型界面活性剤(B2)から選ばれる1種以上の界面活性剤である。(B)成分は洗浄力に寄与する。特に油汚れ洗浄力に寄与する。また、ヌルつきの抑制にも寄与する。
アミンオキシド型界面活性剤(B1)は半極性界面活性剤であり、ベタイン型界面活性剤(B2)は両性界面活性剤である。ベタイン型はカルボン酸塩型ともいう。
【0015】
アミンオキシド型界面活性剤(B1)としては、下記一般式(b1)で表される化合物が好ましい。
【0016】
【化1】
【0017】
式(b1)中、R21は炭素数8~18の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、又は炭素数8~18の直鎖又は分岐鎖のアルケニル基であり、R22、R23はそれぞれ独立して炭素数1~3のアルキル基又は炭素数1~3のヒドロキシアルキル基であり、R24は炭素数1~4のアルキレン基であり、Aは-CONH-又は-NHCO-であり、rは0又は1の数である。
21の炭素数は10~14が好ましく、12~14がより好ましい。R21は油脂原料由来のアルキル基であることが好ましい。
22、R23はそれぞれ独立して炭素数1~3のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。R22及びR23の両方がメチル基であることが特に好ましい。
rは0であることが好ましい。
【0018】
一般式(b1)で表される化合物の具体例としては、ラウリルジメチルアミンオキシド(n-ドデシルジメチルアミンオキシド)、ヤシアルキルジメチルアミンオキシド、ラウリルジエチルアミンオキシド、ラウリン酸アミドプロピルジメチルアミンオキシドなどが挙げられる。これらの中でも、水切れ性とヌルつき抑制のバランスの観点から、ラウリルジメチルアミンオキシドが好ましい。
アミンオキシド型界面活性剤(B1)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0019】
ベタイン型界面活性剤(B2)の例としては、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシアルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ラウリン酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシアルキルアミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン(コカミドプロピルベタイン)などが挙げられる。
ベタイン型界面活性剤(B2)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0020】
(B)成分として、アミンオキシド型界面活性剤(B1)のみを用いてもよいし、ベタイン型界面活性剤(B2)のみを用いてもよいし、両方を併用してもよい。
特に、(B)成分がアミンオキシド型界面活性剤(B1)を含むことが好ましく、ラウリルジメチルアミンオキシドを含むことがより好ましい。例えば、(B)成分の総質量に対して、ラウリルジメチルアミンオキシドの含有割合が60質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。100質量%でもよい。
【0021】
<(C)成分>
(C)成分は、ポリビニルアルコールとN-ビニルピロリドンとのグラフトコポリマー(C1)を含む水溶性高分子である。(C)成分は水切れ性の向上に寄与する。
(C)成分は、グラフトコポリマー(C1)以外の他の水溶性高分子(C2)を1種以上含んでもよい。
本明細書において「高分子」とは、分子量1,000以上の化合物を意味する。(C)成分の分子量は、ポリエチレングリコール(PEG)を標準物質とし、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定される重量平均分子量である。
本明細書において「水溶性高分子」とは、25℃の水1Lに0.1g以上溶解する(透明な水溶液となる)高分子を意味する。
【0022】
グラフトコポリマー(C1)は、例えば、特開2008-274181号公報、特開2015-213882号公報に記載の合成方法で、ポリビニルアルコール(以下、PVAとも記す)にN-ビニルピロリドン(N-ビニル-2-ピロリドン、以下、NVPとも記す)をグラフト重合して得られる。
前記合成方法によれば、グラフトコポリマー(C1)と、グラフト化していないNVPのホモポリマー(ポリビニルピロリドン、以下、PVPも記す)とを含む水溶性高分子が得られる。PVPは他の水溶性高分子(C2)である。
【0023】
グラフト重合に用いるPVAは重合度が4000以下であることが好ましい。4000を超えると水への溶解に要する時間が長くなる傾向がある。PVAのケン化度は70~100モル%であることが好ましい。ケン化度が70モル%未満であると水に均一に溶解しにくくなる。
グラフト重合に用いるNVPの量(仕込みNVP質量)は、グラフト重合に用いるPVAの量(仕込みPVA質量)と仕込みNVP質量の合計に対して5~90質量%が好ましく、40~90質量%がより好ましい。5質量%以上であるとグラフトコポリマー(C1)による水切れ性向上効果に優れ、90質量%以下であると耐水性に優れ、すすぎ時に流され難い。
【0024】
前記合成方法で得られる水溶性高分子において、下記数式(1)で算出されるグラフト効率は40~60質量%が好ましい。
(グラフト効率の算出方法)
濃度10%の水溶性高分子水溶液5gを150mLのt-ブチルアルコールに沈殿させ、沈殿物を遠心分離により分離した後、減圧乾燥機にて乾燥させ、得られた乾燥物の質量(沈殿物質量)を測定した。この沈殿物質量はグラフトコポリマー(C1)の質量に相当する。
この沈殿物質量と、仕込みPVA質量と、仕込みNVP質量とから下記数式(1)によりグラフト効率を算出した(周知の方法である)。
グラフト効率(単位:質量%)=(沈殿物質量-仕込みPVA質量)×100/仕込みNVP質量 …(1)
上記数式(1)で求められるグラフト効率は、グラフト重合に用いたNVP(仕込みNVP質量)のうち、PVAにグラフト共重合したNVPの割合を意味する。
【0025】
他の水溶性高分子(C2)は、特に限定されず、洗浄剤の分野で公知の水溶性高分子を用いることができる。
他の水溶性高分子(C2)としては、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)が好ましい。
PVAは変性していないホモポリマータイプである。PVAの好ましい重合度及びケン化度は、グラフト重合に用いるPVAと同様である。
【0026】
(C)成分の総質量、すなわちグラフトコポリマー(C1)と他の水溶性高分子(C2)の合計に対して、グラフトコポリマー(C1)の含有量は50~100質量%が好ましく、80~100質量%がより好ましい。
【0027】
(C)成分として、例えば、グラフト重合に用いたPVAの重合度が4000以下、ケン化度が70~100モル%であり、仕込みPVA質量と仕込みNVP質量の合計に対する仕込みNVP質量の割合が5~90質量%であり、グラフト効率が40~60質量%である水溶性高分子が好ましい。このような水溶性高分子(水溶液)の市販品として、例えばピッツコールV-7154(第一工業製薬社製品名)が例示できる。
【0028】
<(D)成分>
(D)成分はノニオン界面活性剤である。(D)成分はヌルつきの抑制に寄与する。
(D)成分は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。洗浄剤の分野で公知のノニオン界面活性剤を使用できる。
【0029】
(D)成分は、ヌルつきの抑制効果に優れる点で、下記一般式(d1)で表されるポリオキシアルキレンアルキルエーテル(D1)が好ましい。
31-O-(R32O)-H ・・・(d1)
式(d1)中、R31は炭素数10~18の直鎖もしくは分岐鎖の1価の炭化水素基であり、R32は炭素数1~3の2価の炭化水素基であり、mは-R32O-の平均繰り返し数を表し、1≦m≦20を満たす数である。
式(d1)において、R32は炭素数1~3のアルキレン基が好ましく、エチレン基がより好ましい。
mは5~15が好ましく、6~14がより好ましく、8~11がさらに好ましく、9~10がさらに好ましい。
【0030】
(D1)成分としては、ガーベット反応による2分子縮合で得られた、β位に分岐構造を有するアルコールのエチレンオキシド付加物が特に好適なものとして挙げられる。
具体例として、BASF社製のポリオキシエチレンモノ(2-プロピルへプチル)エーテルが挙げられる。具体的には、Lutensol XP60(商品名、エチレンオキシドの平均繰り返し数が6)、Lutensol XP90(商品名、エチレンオキシドの平均繰り返し数が9)、Lutensol XP100(商品名、エチレンオキシドの平均繰り返し数が10)が挙げられる。
【0031】
(D)成分は(D1)成分を含むことが好ましい。(D)成分の総質量に対して、(D1)成分の含有量は70質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましい。100質量%でもよい。
【0032】
<水>
本発明の液体洗浄剤は、製造時のハンドリングのし易さ、使用する際の水への溶解性等の観点から、溶剤として水を含有することが好ましい。
【0033】
<任意成分>
液体洗浄剤は、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、(A)成分、(B)成分、(C)成分、及び(D)成分以外の任意成分を必要に応じて含有してもよい。
任意成分としては、洗浄剤の分野で公知の成分を使用できる。例えば、(A)成分、(B)成分及び(D)成分以外の界面活性剤(他の界面活性剤)、ハイドロトロープ剤、防腐剤、pH調整剤、色素、香料などが挙げられる。
【0034】
ハイドロトロープ剤は液体洗浄剤の保存安定性(透明外観の維持)の向上に寄与する。特に、低温安定性の向上に寄与する。
ハイドロトロープ剤の例としては、安息香酸等の芳香族カルボン酸及びその塩、p-トルエンスルホン酸等のトルエンスルホン酸及びその塩、エタノールなどが挙げられる。ハイドロトロープ剤は1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ハイドロトロープ剤の含有量は、液体洗浄剤の総質量に対して2~30質量%が好ましく、3~10質量%がより好ましい。ハイドロトロープ剤の含有量が上記範囲内であれば、洗浄力、水切れ性及びヌル付き抑制性を低下させることなく、その配合効果を充分に得ることができる。
【0035】
液体洗浄剤が防腐剤を含有することにより、液体洗浄剤に微生物等が混入しても、菌の増殖が抑制される。
防腐剤の例としては、ベンズイソチアゾリノン(1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン)、メチルイソチアゾリノン(2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン)等のイソチアゾリン系化合物が挙げられる。防腐剤は1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
防腐剤の含有量は、液体洗浄剤の総質量に対して0.0002~0.01質量%(2~100質量ppm)が好ましく、0.0005~0.004質量%(5~40質量ppm)がより好ましい。防腐剤の含有量が上記範囲内であれば、洗浄力、水切れ性及びヌル付き抑制性を低下させることなく、その配合効果を充分に得ることができる。
【0036】
pH調整剤の例としては、無機アルカリ剤(水酸化ナトリウムなど)、有機アルカリ剤(モノエタノールアミンなど)、無機酸(硫酸など)、有機酸(クエン酸など)などが挙げられる。
【0037】
<含有量>
(A)成分の含有量は、液体洗浄剤の総質量に対して1~20質量%が好ましく、5~15質量%がより好ましく、6~8質量%が特に好ましい。(A)成分の含有量が上記範囲内であると油汚れ洗浄力に優れる。また上記範囲の下限値以上であると水切れ性に優れ、上限値以下であるとヌルつきをより抑制できる。
【0038】
(B)成分の含有量は、液体洗浄剤の総質量に対して1~20質量%が好ましく、5~15質量%がより好ましく、5~12質量%が特に好ましい。(B)成分の含有量が上記範囲内であると油汚れ洗浄力に優れる。また上記範囲の下限値以上であるとヌルつきをより抑制できる。
【0039】
(C)成分の含有量は、液体洗浄剤の総質量に対して0.5~4.0質量%であり、0.7~2.4質量%が好ましく、0.9~1.5質量%がより好ましい。(C)成分の含有量が上記範囲の下限値以上であると水切れ性に優れ、上限値以下であるとヌルつきをより抑制できる。
【0040】
液体洗浄剤において、(C)成分に対する(A)成分の質量比を表すA/Cは1~20であり、2~14が好ましく、3~10がより好ましく、5~8が特に好ましい。A/Cが、上記の範囲内であると水切れ性に優れる。上記範囲の上限値以下であるとヌルつきをより抑制できる。
【0041】
液体洗浄剤において、(C)成分に対する(B)成分の質量比を表すB/Cは、1~20が好ましく、2~14がより好ましく、5~8が特に好ましい。B/Cが上記範囲の下限値以上であるとヌルつきの抑制効果に優れ、上限値以下であると水切れ性に優れる。
【0042】
液体洗浄剤において、(A)成分に対する(B)成分の質量比を表すB/Aは、0.5~2.5が好ましく、0.5~1.5がより好ましく、0.8~1.5が特に好ましい。B/Aが上記範囲の下限値以上であるとヌルつきの抑制効果に優れ、上限値以下であると水切れ性と油洗浄力に優れる。
【0043】
液体洗浄剤が(D)成分を含む場合、(D)成分の含有量は、液体洗浄剤の総質量に対して1~10質量%が好ましく、2.5~7.5質量%がより好ましく、4~6質量%が特に好ましい。(D)成分の含有量が上記範囲の下限値以上であるとヌル付きの抑制効果に優れ、上限値以下であると油汚れ洗浄力及び水切れ性に優れる。
【0044】
<製造方法>
液体洗浄剤は、例えば、上述した(A)成分、(B)成分及び(C)成分と、必要に応じて(D)成分及び任意成分とを、水に溶解し、pH調整剤を用いて所定のpHに調整する方法で製造できる。
液体洗浄剤は、例えば、スプレー容器やスクイズ容器など公知の吐出容器に収容された製品形態であってもよい。また、保存用の容器に収容され、吐出容器に移して使用する製品形態であってもよい。
【0045】
<pH>
液体洗浄剤の25℃でのpHは、6~8が好ましい。液体洗浄剤の25℃でのpHが上記範囲内であれば、水切れ性がより向上するとともに、ヌルつきをより抑制できる。
本発明において、液体洗浄剤のpH(25℃)は、JIS Z 8802:1984「pH測定方法」に準拠した方法により測定される値を示す。
液体洗浄剤のpHは、上述したpH調整剤を用いて調整すればよい。
【0046】
<使用方法>
液体洗浄剤を用いて洗浄対象物を洗浄する方法としては、液体洗浄剤を原液のまま洗浄対象物に接触させて洗浄した後、水ですすぐ方法、液体洗浄剤を水と混合した希釈液を洗浄対象物に接触させて洗浄した後、水ですすぐ方法等が挙げられる。
洗浄は機械力をかける洗浄方法でもよい。例えば、前記原液又は希釈液を含ませたスポンジ等で洗浄対象物を擦って洗浄してもよい。前記原液又は希釈液を洗浄対象物に塗布し、スポンジ等で擦って洗浄してもよい。前記洗希釈液に洗浄対象物を浸し、スポンジ等で擦って洗浄してもよい。
洗浄対象物は、物品等の硬表面であればよく、例えば浴室の硬表面、浴室用品、トイレの硬表面、トイレ用品、台所の硬表面、台所用品(食器、調理器具等)が例示できる。
硬表面とは、プラスチック類、陶磁器、ガラス、ステンレス等の硬質な材質からなる表面を意味する。
【実施例0047】
以下、実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の記載によって限定されるものではない。なお、各例で用いた成分の配合量は、特に断りのない限り純分換算値である。
【0048】
<使用原料>
[(A)成分]
A-1:ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、上記一般式(a1)において、R11が炭素数12又は14の直鎖アルキル基(C12/C14=75/25;天然油脂由来)、nが1、Mがナトリウムである化合物。下記合成例1により合成されたもの。
A-2:炭素数10~14のアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(LAS)、テイカ株式会社製の商品名「テイカパワーL121」を水酸化ナトリウムで中和したもの。
【0049】
[(B)成分]
B1-1:ラウリルジメチルアミンオキシド(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製、商品名「カデナックスDM12D-W」)。上記一般式(b1)において、R21が炭素数12の直鎖アルキル基、R22がメチル基、R23がメチル基、rが0である化合物。
B2-1:ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン(第一工業製薬株式会社製、商品名「アモーゲンS-H」)。
【0050】
[(C)成分]
C-1:PVAとNVPとのグラフトコポリマー(C1)を含む水溶性高分子、下記合成例2により合成されたもの。
[(C2)成分]
C2-1:カチオン化セルロース(ダウ・ケミカル社製、商品名「UCARE JR125」)。
C2-2:ポリプロピレングリコール(三洋化成工業株式会社製、商品名「サンニックスGP-4000」)。
C2-3:ポリビニルピロリドン(第一工業製薬株式会社製、商品名「PVP-30」)。
C2-4:ポリビニルアルコール(クラレ株式会社製、商品名「PVA-205」)。
【0051】
[(D)成分]
D1-1:2-プロピルヘプチルアルコールエトキシレート、上記一般式(d1)において、R31が炭素数10の分岐鎖のアルキル基、R32がエチレン基、mが10である化合物(BASF社製、Lutensol XP100)。
【0052】
[任意成分]
パラトルエンスルホン酸:関東化学株式会社製。
エタノール:関東化学株式会社製。
安息香酸ナトリウム:関東化学株式会社製。
BIT:1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン(アーチケミカルズ社製、商品名「PROXEL XL2」)。
MIT:2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン(ダウ・ケミカル社製、商品名「ネオロン M-10」)。
色素:緑3号。
pH調整剤:硫酸または水酸化ナトリウム水溶液。
【0053】
(合成例1:A-1の合成)
4Lオートクレーブ中に、原料アルコールとしてP&G社製の商品名「CO1270アルコール(C12/C14=75%/25%、質量比)」400gと、反応用触媒として水酸化カリウム0.8gとをそれぞれ仕込み、オートクレーブ内を窒素で置換した後、撹拌しながら昇温した。続いて、温度を180℃、圧力を0.3MPa以下に維持しつつ、エチレンオキシド91gを導入し、反応させた。得られたポリオキシアルキレンエーテルのエチレンオキシドの平均付加モル数は1であった。
次いで、得られたポリオキシアルキレンエーテルのエチレンオキシド237gを撹拌装置付の500mLフラスコにとり、窒素置換した後、液体無水硫酸(サルファン)96gを反応温度40℃に保ちながらゆっくりと滴下した。滴下終了後、撹拌を1時間続け(硫酸化反応)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸を得た。
次いで、得られたポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸を水酸化ナトリウム水溶液で中和することにより、A-1を得た。
【0054】
(合成例2:C-1の合成)
特開2015-213882号公報の実施例1に記載の方法で合成した。
反応容器に、水800gにPVA(ポリビニルアルコール、クラレ社製品名「PVA-117」、けん化度98~99モル%、重合度1700)100gを溶解した水溶液に、NVP(N-ビニルピロリドン)100gを加え、容器内の空気を窒素で置換した。続いて、70℃に昇温し、1質量%硫酸銅水溶液0.01g、28質量%アンモニア水1g及び30質量%過酸化水素水1.5gを添加し、重合を開始させた。重合中は温度を70~80℃、アンモニア水によりpHを5.5~6.5に維持し、30質量%過酸化水素水1.5gを15分おきに6回添加することで重合率は90%以上となった。続いて残存NVP処理工程として30質量%過酸化水素水4gを添加し、アンモニア水によりpH5以上に保持しながら合計210分間反応させ、PVAとNVPとのグラフトコポリマー(C1)を含む水溶性高分子(C-1)の水溶液を得た。
仕込みPVA質量と仕込みNVP質量の合計に対する仕込みNVP質量の割合は50質量%であり、グラフト効率は50質量%であった。
【0055】
[実施例1~10、比較例1~9]
<液体洗浄剤の調製>
表1~3に示す配合組成の液体洗浄剤を以下の手順にて調製した。
1Lビーカーに(A)成分と、安息香酸ナトリウムと、エタノールと、パラトルエンスルホン酸とを入れて充分に撹拌した。続いて、(B)成分と、(D)成分と、pH調整剤以外の任意成分とを加え、混合した後、(C)成分を加えてさらに混合した。混合終了後、25℃でのpHが7になるように、必要に応じpH調整剤を適量添加した後、全体量が100質量%になるように水(蒸留水)を加え、さらによく撹拌し、液体洗浄剤を得た。
得られた各例の液体洗浄剤について、以下の方法で、水切れ性及びヌルつき抑制性を評価した。結果を表1、2に示す。
表において、空欄はその配合成分が配合されていないことを意味する。
【0056】
<評価>
[水切れ性の評価]
本例では、液体洗浄剤で洗浄後、水で繰り返しすすぐ方法で洗浄を行った。洗浄対象物は、直径18.5cmの陶器皿にオリーブオイル1g及び水5gをのせたものを用いた。
11.5cm×7.5cm×3cmの食器洗い用スポンジに、水道水38gと液体洗浄剤2gをとり、10回手で揉んだ後、洗浄対象物の陶器皿1枚の表面を10回、擦り洗いした。その後、水道水で10秒間すすぐ操作を3回繰り返した。この陶器皿をほぼ垂直になるように、市販の食器かごに立てかけた。目視により観察しながら、陶器皿から水が流れ落ちて陶器皿表面全体の50%の面積に水が付着していない状態になるまでの時間(50%水切れ時間)を計測し、以下の評価基準にて評価した。△、○、◎、◎◎を合格とする。
◎◎:50%水切れ時間が3分以下である。
◎:50%水切れ時間が3分を超え、5分以下である。
○:50%水切れ時間が5分を超え、7分以下である。
△:50%水切れ時間が7分を超え、10分以下である。
×:50%水切れ時間が10分を超える。
【0057】
[ヌルつき抑制性の評価]
汚れが付着していない直径21cmの陶器皿を洗浄対象物とした。
100mLビーカーに、水道水45gと液体洗浄剤5gとを入れ、充分に撹拌した。希釈した液体洗浄剤40gを洗浄対象物の陶器皿に滴下した。この皿を指で10回擦り、ヌルつきの度合いを以下の採点基準にて採点した。なお、本評価法においては専門評価者5名が評価し、各評価者の評価点を合計した。合計点が4点以上(△、○、◎)を合格とする。
(採点基準)
3点:非常にヌルつきが軽減されている。
2点:かなりヌルつきが軽減されている。
1点:ややヌルつきが軽減されている。
0点:全くヌルつきが軽減されていない。
(評価基準)
◎:専門評価者5名の合計点が15~12点。
○:専門評価者5名の合計点が11~8点。
△:専門評価者5名の合計点が7~4点。
×:専門評価者5名の合計点が3~0点。
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
【表3】
【0061】
表1の結果に示されるように、各実施例の液体洗浄剤は、繰り返しすすいだ場合でも水切れ性に優れ、液体洗浄剤と接触した洗浄対象物のヌルつきが抑制されていた。
表2の結果に示されるように、(C)成分を用いなかった比較例1、(C)成分の含有量が少ない比較例2、A/Cの質量比が小さい比較例4は、水切れ性が劣った。
(C)成分の含有量が多い比較例3はヌルつき抑制性が劣った。
A/Cの質量比が大きい比較例5は、水切れ性及びヌルつき抑制性がいずれも劣った。
(C)成分として、(C2)成分であるカチオン化セルロースのみを用いた比較例6はヌルつき抑制性が劣った。
(C)成分として、(C2)成分であるポリプロピレングリコールのみを用いた比較例7は水切れ性が劣った。
(C)成分として、(C2)成分であるポリビニルピロリドンのみを用いた比較例8は水切れ性が劣った。
(C)成分として、(C2)成分であるポリビニルアルコールのみを用いた比較例9は水切れ性が劣った。