(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023076022
(43)【公開日】2023-06-01
(54)【発明の名称】電流センサおよび測定装置
(51)【国際特許分類】
G01R 15/18 20060101AFI20230525BHJP
【FI】
G01R15/18 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021189162
(22)【出願日】2021-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】000227180
【氏名又は名称】日置電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104787
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 伸司
(72)【発明者】
【氏名】野村 淳士
(72)【発明者】
【氏名】瓶子 利夫
(72)【発明者】
【氏名】林 和延
【テーマコード(参考)】
2G025
【Fターム(参考)】
2G025AA00
2G025AA03
2G025AB14
2G025AC01
(57)【要約】
【課題】背後に差し込んだ検出用コイル部の一端部の視認が困難な測定対象についても容易に装着可能とする。
【解決手段】可撓性を有する検出用コイル部10と、コイル部10の端部10a,10bを保持するコイル保持部とを備え、測定対象を取り囲むように環状に配置されて端部10a,10bが近接されられた状態でコイル保持部によって保持されたコイル部10を介して測定対象を流れる電流を検出可能に構成され、コイル部10は、端部10aがコイル保持部によって保持されず、かつコイル部10に対してコイル部10を撓ませる外力が加えられていない第1の状態において略直線状となるように部位P1が端部10aに形成されると共に、第1の状態において部位P1に対して部位P1の延在方向と直交する方向に存在する部位P2が第1の状態において略直線状となるように形成され、かつ部位P1,P2が第1の状態において略平行となるように形成されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する検出用コイル部と、
前記検出用コイル部における一端部および他端部を保持するコイル保持部とを備え、
測定対象を取り囲むように環状に配置されて前記一端部および前記他端部が近接されられた状態で前記コイル保持部によって保持された前記検出用コイル部を介して当該測定対象を流れる電流を検出可能に構成された電流センサであって、
前記検出用コイル部は、前記一端部が前記コイル保持部によって保持されず、かつ当該検出用コイル部に対して当該検出用コイル部を撓ませる外力が加えられていない第1の状態において略直線状となるように第1の部位が当該一端部に形成されると共に、前記第1の状態において前記第1の部位に対して当該第1の部位の延在方向と直交する方向に存在する第2の部位が当該第1の状態において略直線状となるように形成され、かつ前記第1の部位および前記第2の部位が前記第1の状態において略平行となるように形成されている電流センサ。
【請求項2】
前記検出用コイル部は、前記第1の部位および前記第2の部位の間の第3の部位が前記第1の状態において略半円状となるように形成されている請求項1記載の電流センサ。
【請求項3】
前記検出用コイル部は、前記一端部および前記他端部が前記コイル保持部によって保持され、かつ当該検出用コイル部に対して当該検出用コイル部を撓ませる外力が加えられていない第2の状態において、前記第1の部位および前記第2の部位が略直線状となり、前記第2の部位の前記他端部側に略直線状となる第4の部位が当該第2の部位に連続して形成され、かつ略直線状となる第5の部位が前記他端部に形成されると共に、前記第2の部位の延在方向と前記第4の部位の延在方向とが一致し、前記第1の部位の延在方向と前記第5の部位の延在方向とが一致または略平行となり、かつ前記第4の部位の延在方向と前記第5の延在方向とが略平行となるように形成されている請求項1または2記載の電流センサ。
【請求項4】
前記検出用コイル部は、前記第4の部位および前記第5の部位の間の第6の部位が前記第2の状態において略半円状となるように形成されている請求項1から3のいずれかに記載の電流センサ。
【請求項5】
前記コイル保持部は、前記検出用コイル部における前記一端部側の少なくとも前記第1の部位を含む部位Aを嵌入可能な嵌入部Aと、前記検出用コイル部における前記部位Aよりも前記他端部側の部位Bを嵌入可能な嵌入部Bとが形成されると共に、前記嵌入部Aに嵌入された前記部位Aの当該嵌入部Aからの取外し方向と、前記嵌入部Bに嵌入された前記部位Bの当該嵌入部Bからの取外し方向とが交差するように構成されている請求項1から4のいずれかに記載の電流センサ。
【請求項6】
前記検出用コイル部は、導線が巻回されたコイル本体と、当該コイル本体を覆う被覆部とを備え、
前記コイル保持部は、前記コイル本体における前記一端部側の部位の巻軸心、および当該コイル本体における前記他端部側の部位の巻軸心がそれぞれ略直線状で互いに平行となり、かつ当該コイル本体における両端が当該両巻軸心と直交する仮想平面上に位置するように前記検出用コイル部の当該一端部および当該他端部を保持可能に構成されている請求項1から5のいずれかに記載の電流センサ。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の電流センサを備えて当該電流センサの出力信号に基づいて前記測定対象を流れる電流の電流値を測定可能に構成されている測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル保持部によって保持される検出用コイル部を備えて測定対象を流れる電流を検出可能に構成された電流センサ、およびそのような電流センサを備えて構成された測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の電流センサおよび測定装置として、出願人は、測定対象(基板上に実装された電子部品の端子など)を取り囲んだ状態で測定対象を流れる交流電流を検出可能に構成された電流センサ、およびそのような電流センサを備えて構成された測定装置を下記の特許文献に開示している。この場合、出願人が開示している測定装置の電流センサは、交流電流を検出するコイル体(ロゴスキーコイル方式の電流センサ)と、コイル体の基端が固定されると共にコイル体の先端を挿入可能な挿入口が形成されて挿入口に挿入された先端を保持可能に構成された保持部とを備えている。
【0003】
また、コイル体は、測定対象に対する着脱時に撓ませることができるように可撓性を有するように構成されると共に、外力が加えられない状態において先端が基端から離間した状態に弾性復帰するように構成されている。このコイル体は、測定対象を取り囲み易くするために、保持部によって保持されている部位の近傍を除き、その全体が湾曲した形状に成形されている。具体的には、出願人が開示している電流センサのコイル体は、先端が保持部の挿入口から取り外され、かつ外力が加えられていない状態において、基端側の部位(特許文献において「基端部」と称している部位):以下、「基端側部位」ともいう)の曲率よりも、先端側の部位(特許文献において「先端部」と称している部位):以下、「先端側部位」ともいう)の曲率の方が大きくなる(先端側ほど曲率が段階的または連続して大きくなる)湾曲形状に弾性復帰するように構成されている。
【0004】
このような電流センサを用いて、基板に実装されている電子部品の端子を測定対象として交流電流を検出する際には、電子部品の端子をコイル体によって取り囲むようにして電流センサを端子に装着する。具体的には、端子に向かって保持部を移動させて電子部品の本体部と端子との間(端子の背後)にコイル体の先端を挿入する。次いで、コイル体の中途部(先端側部位よりも基端側の部位)を端子の背後の本体部に向かって押し当てるように保持部をさらに移動させる。この際には、コイル体の先端側部位が大きな曲率で湾曲させられているため、先端が端子の前面側に迫り出すようにして移動させられて保持部の挿入口に接近させられる。続いて、先端を挿入部に挿入することにより、端子の周囲にコイル体が環状に配置されて電流センサの装着が完了する。これにより、端子を取り囲んでいる電流センサ(コイル体)を介して端子を流れる交流電流を検出することが可能となる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-196962号公報(第3-9頁、第1-5図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、出願人が開示している電流センサおよび測定装置には、以下のような改善すべき課題が存在する。
【0007】
具体的には、出願人が開示している電流センサは、コイル体の先端側部位の曲率が基端側部位の曲率よりも大きくなるようにコイル体が湾曲させられており、これにより、先端側部位の曲率が小さいコイル体を備えた電流センサと比較して、測定対象の背後に挿入したコイル体の先端側部位を測定対象の前面側に向かって容易に移動させることが可能となっている。この場合、上記特許文献において開示している使用例のように、その背後に差し込んだ先端側部位を容易に視認可能な測定対象については、差し込んだ先端側部位の位置や向き(姿勢)を目視で確認しながらその前面側に先端を迫り出させるようにコイル体を移動させることができる。しかしながら、この種の電流センサを用いて電流を検出する測定対象のなかには、その背後に差し込んだ先端側部位の視認が困難な測定対象も存在する。
【0008】
例えば、
図15に示す測定対象Xのように、その前面側(同図における下側)を除いて隔壁Xa等によって囲まれている「測定対象」については、測定対象Xの背後に差し込んだコイル体100の先端側部位100aの視認が困難となる。このため、例えば同図に示すように先端側部位100aが矢印D1の向きを向いた状態で測定対象Xの背後に位置していたとしても、先端側部位100aの向きや位置を特定するのが困難となる。この結果、コイル体100をその延在方向に沿って矢印G1の向きに移動させたときに、
図16に示すように、先端側部位100aが測定対象Xの背面に接した状態となり、先端側部位100aを測定対象Xの前面側に迫り出させることが困難となることがある。このような状態では、先端側部位100aが矢印D2の向きを向いていることで、コイル体100をその延在方向に沿って矢印G2の向きでさらに移動させたとしても、先端側部位100aが測定対象Xの前面側に迫り出すように移動することはない。
【0009】
しかしながら、先端側部位100aを視認できないこの状態においては、先端側部位100aが測定対象Xの背面に接した状態となっているのか隔壁Xaに接した状態となっているのかや、先端側部位100aが矢印D2の向きを向いた状態となっているのか、他の向きを向いた状態となっているのかを特定することができない。加えて、先端側ほど曲率が大きくなるようにコイル体100のほぼ全体が湾曲されているこの電流センサでは、コイル体100において測定対象Xの前面側に位置している部位を見ても、先端側部位100aの位置や姿勢を推定することも困難となっている。したがって、コイル体100の姿勢や移動量をどのように調整すれば先端側部位100aを測定対象Xの前面に迫り出させることができるか判らない。
【0010】
このため、出願人が開示している電流センサでは、その姿勢や移動量を変えてコイル体100を移動させる作業を、先端側部位100aが測定対象Xの前面側に迫り出した状態となるまで複数回に亘って行う必要があり、このような測定対象Xについては、電流センサの装着作業が非常に煩雑となっている現状がある。したがって、この点を改善するのが好ましい。
【0011】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、その背後に差し込んだ検出用コイル部の一端部(先端部)を視認するのが困難な測定対象についても容易に装着し得る電流センサ、およびそのような電流センサを備えた測定装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る電流センサは、可撓性を有する検出用コイル部と、前記検出用コイル部における一端部および他端部を保持するコイル保持部とを備え、測定対象を取り囲むように環状に配置されて前記一端部および前記他端部が近接されられた状態で前記コイル保持部によって保持された前記検出用コイル部を介して当該測定対象を流れる電流を検出可能に構成された電流センサであって、前記検出用コイル部は、前記一端部が前記コイル保持部によって保持されず、かつ当該検出用コイル部に対して当該検出用コイル部を撓ませる外力が加えられていない第1の状態において略直線状となるように第1の部位が当該一端部に形成されると共に、前記第1の状態において前記第1の部位に対して当該第1の部位の延在方向と直交する方向に存在する第2の部位が当該第1の状態において略直線状となるように形成され、かつ前記第1の部位および前記第2の部位が前記第1の状態において略平行となるように形成されている。また、本発明に係る測定装置は、上記の電流センサを備えて当該電流センサの出力信号に基づいて前記測定対象を流れる電流の電流値を測定可能に構成されている。
【0013】
したがって、本発明に係る電流センサおよび測定装置によれば、測定対象に対する電流センサの装着時に、測定対象や隔壁などの存在によって第1の部位の視認が困難な状態となっても、第2の部位の位置や向きに基づいて第1の部位の位置や向きを推定することができるため、第1の部位を摘まんで引き出すことが可能な位置に向かって検出用コイル部を確実かつ容易に移動させることができる。これにより、この種の電流センサの使用に不慣れな者であっても、測定対象に対して検出用コイル部を確実かつ容易に装着することができる。
【0014】
また、本発明に係る電流センサは、前記検出用コイル部は、前記第1の部位および前記第2の部位の間の第3の部位が前記第1の状態において略半円状となるように形成されている。したがって、本発明に係る電流センサおよび測定装置によれば、測定対象の周囲で測定対象を中心として検出用コイル部を回動させるときに、第3の部位が測定対象や隔壁などに引っ掛かって検出用コイル部の回動が妨げられる事態を好適に回避することができる。
【0015】
また、本発明に係る電流センサは、前記検出用コイル部は、前記一端部および前記他端部が前記コイル保持部によって保持され、かつ当該検出用コイル部に対して当該検出用コイル部を撓ませる外力が加えられていない第2の状態において、前記第1の部位および前記第2の部位が略直線状となり、前記第2の部位の前記他端部側に略直線状となる第4の部位が当該第2の部位に連続して形成され、かつ略直線状となる第5の部位が前記他端部に形成されると共に、前記第2の部位の延在方向と前記第4の部位の延在方向とが一致し、前記第1の部位の延在方向と前記第5の部位の延在方向とが一致または略平行となり、かつ前記第4の部位の延在方向と前記第5の延在方向とが略平行となるように形成されている。
【0016】
したがって、本発明に係る電流センサおよび測定装置によれば、測定対象を取り囲んで環状に配置された検出用コイル部の幅が一定となるため、測定対象に取り付けた電流センサが、他のセンサの装着の妨げとなる事態を好適に回避することができる。これにより、狭い場所に隣接配置されている複数の測定対象に電流センサや他のセンサなどを確実かつ容易に取り付けることができる。
【0017】
また、本発明に係る電流センサは、前記検出用コイル部は、前記第4の部位および前記第5の部位の間の第6の部位が前記第2の状態において略半円状となるように形成されている。本発明に係る電流センサおよび測定装置によれば、測定対象の周囲で測定対象を中心として検出用コイル部を回動させるときに、第6の部位が測定対象や隔壁などに引っ掛かって検出用コイル部の回動が妨げられる事態を好適に回避することができる。
【0018】
また、本発明に係る電流センサは、前記コイル保持部は、前記検出用コイル部における前記一端部側の少なくとも前記第1の部位を含む部位Aを嵌入可能な嵌入部Aと、前記検出用コイル部における前記部位Aよりも前記他端部側の部位Bを嵌入可能な嵌入部Bとが形成されると共に、前記嵌入部Aに嵌入された前記部位Aの当該嵌入部Aからの取外し方向と、前記嵌入部Bに嵌入された前記部位Bの当該嵌入部Bからの取外し方向とが交差するように構成されている。
【0019】
したがって、本発明に係る電流センサおよび測定装置によれば、検出用コイル部に対して、部位Aの嵌入部Aからの取外し方向で外力が加わったとしても、嵌入部Bに部位Bが嵌入された状態が維持されてコイル保持部による検出用コイル部の保持が維持されると共に、部位Bの嵌入部Bからの取外し方向で外力が加わったとしても、嵌入部Aに部位Aが嵌入された状態が維持されてコイル保持部による検出用コイル部の保持が維持される。
【0020】
また、本発明に係る電流センサは、前記検出用コイル部は、導線が巻回されたコイル本体と、当該コイル本体を覆う被覆部とを備え、前記コイル保持部は、前記コイル本体における前記一端部側の部位の巻軸心、および当該コイル本体における前記他端部側の部位の巻軸心がそれぞれ略直線状で互いに平行となり、かつ当該コイル本体における両端が当該両巻軸心と直交する仮想平面上に位置するように前記検出用コイル部の当該一端部および当該他端部を保持可能に構成されている。
【0021】
したがって、本発明に係る電流センサおよび測定装置によれば、測定対象の周囲にコイル本体が存在しない部位がないため、コイル本体による磁気の検出感度を十分に向上させることができる。これにより、電流値の測定精度を十分に向上させることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る電流センサおよび測定装置によれば、第2の部位の位置や向きに基づいて第1の部位の位置や向きを推定することができるため、第1の部位を摘まんで引き出すことが可能な位置に向かって検出用コイル部を確実かつ容易に移動させることができる。これにより、この種の電流センサの使用に不慣れな者であっても、測定対象に対して検出用コイル部を確実かつ容易に装着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図2】電流センサ2および信号ケーブル4の外観斜視図である。
【
図3】電流センサ2における検出用コイル部10、および接続用基板4aを介して検出用コイル部10に接続された信号ケーブル4の外観斜視図である。
【
図7】検出用コイル部10における端部10a,10bの位置関係を示す拡大断面図である。
【
図8】電流センサ2におけるコイル保持部20単体の外観斜視図である。
【
図10】測定対象Xに電流センサ2を装着する手順について説明するための説明図である。
【
図11】測定対象Xに電流センサ2を装着する手順について説明するための他の説明図である。
【
図12】測定対象Xに電流センサ2を装着する手順について説明するためのさらに他の説明図である。
【
図13】測定対象Xに電流センサ2を装着する手順について説明するためのさらに他の説明図である。
【
図14】測定対象Xに電流センサ2を装着した状態について説明するための説明図である。
【
図15】出願人が開示した電流センサを測定対象Xに装着する手順について説明するための説明図である。
【
図16】出願人が開示した電流センサを測定対象Xに装着する手順について説明するための他の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、電流センサおよび測定装置の実施の形態について添付図面を参照して説明する。
【0025】
図1に示す測定装置1は、「測定装置」の一例である非接触型の電流測定装置であって、測定対象Xを電流が流れることで測定対象Xの周囲に生じる磁気を検出し、検出した磁気の大きさに基づいて測定対象Xを流れている電流の電流値を測定可能に構成されている。具体的には、この測定装置1は、電流センサ2、および装置本体3を備えて構成されている。
【0026】
電流センサ2は、「電流センサ」の一例であって、
図2に示すように、検出用コイル部10およびコイル保持部20を備えている。この電流センサ2は、測定対象Xを取り囲むように環状に配置されて端部10a(「一端部」の一例:出願人が開示している電流センサにおける「先端」に対応する部位)および端部10b(「他端部」の一例:出願人が開示している電流センサにおける「基端」に対応する部位)が近接されられた状態でコイル保持部20によって保持された検出用コイル部10を介して測定対象Xを流れる電流(電流が流れることで生じる磁気)を検出可能に構成されている。
【0027】
検出用コイル部10は、「検出用コイル部」の一例(出願人が開示している電流センサにおける「コイル体」に対応する構成要素)であって、端部10aが取り外し可能にコイル保持部20によって保持されると共に、端部10bがコイル保持部20によって固定的に保持されている(端部10bがコイル保持部20に固定されている)。この検出用コイル部10は、
図7に示すように、導線が巻回されたコイル本体11(「コイル本体」の一例)と、コイル本体11を覆う絶縁製樹脂製の被覆部12(「被覆部」の一例)とを備え、可撓性を有して任意の形状に変形させることができるように構成されている。
【0028】
また、検出用コイル部10は、端部10aがコイル保持部20によって保持されず、かつ検出用コイル部10に対して検出用コイル部10を撓ませる外力が加えられていない状態(「第1の状態」の一例)において、
図3に示すように、端部10aが端部10bの近傍に位置するように全体として環状に形成されている。また、検出用コイル部10は、その端部10bが接続用基板4aに固定されると共に、コイル本体11を構成する導線の両端が接続用基板4aを介して信号ケーブル4に接続されている。この場合、本例の検出用コイル部10では、
図4に示すように、端部10aから端部10bに向かって、部位P1、部位P3、部位P2、部位P4、部位P6および部位P5がこの順で連続するように形成されている。
【0029】
部位P1は、「第1の部位」の一例であって、同図に示すように、上記の「第1の状態」において略直線状となるように端部10aに形成されている。部位P2は、「第2の部位」の一例であって、「第1の状態」において部位P1に対して部位P1の延在方向(同図における左右方向)と直交する向き(同図における下向き:「第1の部位に対して第1の部位の延在方向と直交する方向」の一例)に存在するように形成されている。この部位P2は、部位P1と同様にして、「第1の状態」において略直線状となるように形成されている。これにより、本例の電流センサ2では、検出用コイル部10の部位P1および部位P2が、「第1の状態」において略平行となっている。
【0030】
また、本例の電流センサ2では、
図14に示すように、検出用コイル部10の端部10aがコイル保持部20によって保持され、かつ検出用コイル部10に対して検出用コイル部10を撓ませる外力が加えられていない状態(「第2の状態」の一例)においても部位P1および部位P2が略直線状となり、かつ略平行となるように形成されている。部位P3は、「第3の部位」の一例であって、
図4に示すように、部位P1および部位P2の間に形成されている。この部位P3は、「第1の状態」において略半円状となるように形成されている。
【0031】
部位P4は、「第4の部位」の一例であって、
図14に示すように、上記の「第2の状態」において略直線状となるように部位P2における端部10bの側に部位P2に連続して形成されている。部位P5は、「第5の部位」の一例であって、「第2の状態」において略直線状となるように端部10bに形成されている。この場合、本例の電流センサ2では、同図に示すように、「第2の状態」において、部位P2の延在方向(同図における上下方向)と部位P4の延在方向(同図における上下方向)とが一致するように検出用コイル部10が形成されている。つまり、本例の検出用コイル部10では、「第2の状態」において部位P2における端部10a側の端部から部位P4における端部10b側の端部まで略直線状となるように形成されている。
【0032】
また、本例の電流センサ2では、「第2の状態」において、部位P1の延在方向(同図における上下方向)と部位P5の延在方向(同図における上下方向)とが略平行となるように形成されている。また、本例の電流センサ2では、同図に示すように、「第2の状態」において、部位P4の延在方向(同図における上下方向)と部位P5の延在方向(同図における上下方向)とが略平行となるように形成されている。部位P6は、「第6の部位」の一例であって、
図4,14に示すように、部位P4および部位P5の間に形成されている。この部位P6は、「第2の状態」において略半円状となるように形成されている。
【0033】
この場合、本例の電流センサ2における検出用コイル部10では、
図5,6に示すように、検出用コイル部10を撓ませる外力が加えられていない状態で検出用コイル部10単体を水平面F1上に載置したときに、部位P5、部位P6、部位P4および部位P2の全体が水平面F1に接し、部位P3が水平面F1から徐々に離間し、かつ部位P1が水平面F1に対して非接触の状態で水平面F1と略平行の状態となるように形成されている。
【0034】
コイル保持部20は、「コイル保持部」の一例(出願人が開示している電流センサにおける「保持部」に対応する構成要素)であって、前述したように、検出用コイル部10の端部10aを取り外し可能に保持すると共に、検出用コイル部10の端部10bを固定的に保持可能に構成されている。このコイル保持部20には、
図8に示すように、検出用コイル部10における端部10a側の少なくとも部位P1を含む部位Pa(「部位A」の一例:
図4参照)を嵌入可能な嵌入部21a(「嵌入部A」の一例)と、検出用コイル部10における部位Paよりも端部10b側の部位Pb(「部位B」の一例:
図4参照)を嵌入可能な嵌入部21bとで構成された保持用溝部21が形成されると共に、信号ケーブル4を引き出すケーブル引出し部22が形成されている。
【0035】
この保持用溝部21は、
図9に示すように、嵌入部21aに嵌入された部位Paの嵌入部21aからの取外し方向(同図における矢印A2の向き)と、嵌入部21bに嵌入された部位Pbの嵌入部21bからの取外し方向(同図における矢印B2)とが直交するように構成されている(「嵌入部Aに嵌入された部位Aの嵌入部Aからの取外し方向と、嵌入部Bに嵌入された部位Bの嵌入部Bからの取外し方向とが交差する」との構成の一例)。この場合、上記の両取外し方向の交差角度は、好ましくは、70度から110度の範囲内の角度とし、より好ましくは、本例のように直交(90度)、または、ほぼ直交とする。このような角度範囲内の角度に規定することで、後述するように、コイル保持部20(保持用溝部21)から検出用コイル部10の部位Pa,Pbの双方が意図せずに離脱する事態を好適に回避することができる。
【0036】
また、本例の電流センサ2におけるコイル保持部20では、
図7に示すように、検出用コイル部10におけるコイル本体11の巻軸心(同図に示す一点鎖線L)における端部11a側(端部10a側)の部位、および端部11b側(端部10b側)の部位がそれぞれ略直線状で互いに平行となり、かつコイル本体11における端部11aおよび端部11bが上記の両巻軸心と直交する仮想平面F2(「仮想平面」の一例)上に位置するように検出用コイル部10の端部10aおよび端部10bを保持可能に構成されている。なお、「巻軸心」とは、コイル本体11を構成する導線の巻回中心に相当する仮想線、すなわち、「コイルの軸心」を意味する。
【0037】
一方、装置本体3は、
図1に示すように、測定部31、操作部32、表示部33、処理部34および記憶部35を備えている。測定部31は、信号ケーブル4を介して検出用コイル部10に接続されると共に、処理部34の制御に従い、電流センサ2による磁気の検出量(電流値を特定可能な信号)に基づいて測定対象Xを流れる電流の電流値を測定する測定処理を実行する。操作部32は、測定装置1による測定条件の設定や測定開始および終了などを指示する各種の操作スイッチを備え、スイッチ操作に応じた操作信号を処理部34に出力する。表示部33は、処理部34の制御下で測定結果などを表示する。
【0038】
処理部34は、測定装置1を総括的に制御する。具体的には、処理部34は、測定部31を制御して上記の測定処理を実行させる。また、処理部34は、測定部31による測定結果を表示部33に表示させると共に、測定結果を特定可能な測定結果データを生成して記憶部35に記憶させる。記憶部35は、処理部34の動作プログラムや、上記の測定結果データを記憶する。なお、実際の測定装置1は、コイル本体11の検出信号を増幅する増幅回路等を備えた信号処理部が検出用コイル部10と測定部31との間に配設されているが、「電流センサ」および「測定装置」についての理解を容易とするために、信号処理部等についての図示および詳細な説明を省略する。
【0039】
次いで、測定対象Xを流れる電流の電流値を測定装置1によって測定する手順の一例について、添付図面を参照して説明する。
【0040】
まず、一例として、接続用基板4aを介して電流センサ2に接続されている信号ケーブル4を装置本体3に接続することで検出用コイル部10のコイル本体11と電流センサ2の測定部31とを相互に接続する。なお、信号ケーブル4を介して電流センサ2と装置本体3とを接続するこの作業については、測定対象Xに対して電流センサ2を装着した後に行ってもよい。
【0041】
次いで、測定対象Xに対して電流センサ2を装着する。この場合、
図10に示す測定対象Xのように、その前面側(同図における下側)を除いて隔壁Xa等によって囲まれている「測定対象」については、電流センサ2における検出用コイル部10の端部10aを測定対象Xの左右に存在する両隙間の一方(この例では、同図における右方の隙間)に差し込み、両隙間の他方(この例では、左方の隙間)から検出用コイル部10の端部10aを引き出すことで測定対象Xを取り囲むように電流センサ2(検出用コイル部10)を環状に配置する。具体的には、コイル保持部20の保持用溝部21から取り外した状態における検出用コイル部10の端部10aを端部10bから離間させるようにして検出用コイル部10を変形させて、同図に示すように、測定対象Xと隔壁Xaとの間の隙間に端部10aを位置させる。
【0042】
次いで、一例として、検出用コイル部10の部位P3から部位P5までの範囲内の任意の部位を摘まんだ状態で同図に示す矢印D1の向きで検出用コイル部10を移動させる。これにより、検出用コイル部10の弾性復帰と相俟って端部10aが測定対象Xの背面側(同図における上側)に向かって移動させられ、測定対象Xの側方に部位P3が位置する状態となるまで検出用コイル部10が移動させられることにより、
図11に示すように、検出用コイル部10の部位P1および部位P3の一部が測定対象Xの背面側に位置した状態となる。
【0043】
この場合、本例の電流センサ2では、前述の「第1の状態」において検出用コイル部10の部位P1および部位P2がそれぞれ略直線状となり、かつ部位P2が部位P1と略平行となるように検出用コイル部10が形成されている。したがって、部位P4から部位P5までの範囲内の任意の部位を摘まみ(一例として、部位P4を摘まみ)、かつ部位P1から部位P2までの範囲が測定対象Xや隔壁Xaなどに接しない状態とすること(すなわち、部位P1から部位P2までの範囲に外力が加わらない状態とすること)により、そのような状態における部位P2の位置および向きに基づき、測定対象Xの背面側に位置して視認が困難となっている部位P1の位置および向きを推定することができる。
【0044】
具体的には、同図に示す例では、部位P2が測定対象Xの前面側に位置して矢印E2の向きを向いている。したがって、この部位P2の位置および向きに基づき、部位P1が矢印Eの向きに存在した状態で矢印E1の向きを向いていると推定することができる。これにより、端部10aを測定対象Xの左方の隙間から迫り出させるには、測定対象Xを中心として検出用コイル部10を矢印D2の向きで回動させる必要があることを直感的に認識させることができる。
【0045】
また、検出用コイル部10を矢印D2の向きに回動させたときには、
図12に示すように、部位P2が矢印E2の向きを向いた状態となる。この際に、部位P1の視認が困難であったとしても、部位P2の位置や向きに基づき、部位P1が矢印Eの向きに存在し、かつ矢印E1の向きを向いた状態であると推定することができる。したがって、このような状態においても、端部10aを測定対象Xの左方の隙間から迫り出させるには、測定対象Xを中心として検出用コイル部10を矢印D3の向きでさらに回動させる必要があることを直感的に認識させることができる。
【0046】
これにより、部位P2が、測定対象Xの左方の隙間から部位P1を引き出すべき向き(同図における下向き)とは逆向き(同図における上向き)を向いた状態となるまで検出用コイル部10を回動させることにより、
図13に示すように、測定対象Xの右方の隙間に部位P2が位置する状態において測定対象Xの左方の隙間から部位P1(端部10a)が迫り出した状態となる。次いで、部位P1を摘まんで矢印D4の向きで検出用コイル部10を引っ張ることで、検出用コイル部10の部位P6を測定対象Xの背面側に位置させる。この際に、本例の電流センサ2では、検出用コイル部10の部位P1が略直線状に形成されているため、その先端側部位が大きく湾曲した状態よりも、挟み工具等を用いて部位P1を確実かつ容易に摘まむことができる。
【0047】
続いて、
図9に示す矢印B1の向きでコイル保持部20における保持用溝部21の嵌入部21bに検出用コイル部10の部位Pbを嵌入した後に、同図に示す矢印A1の向きで保持用溝部21の嵌入部21aに検出用コイル部10の部位Paを嵌入する。これにより、
図14に示すように、電流センサ2の端部10a側(部位Pa,Pb)がコイル保持部20によって保持された状態となり、測定対象Xに対する電流センサ2の装着が完了する。
【0048】
この場合、本例の電流センサ2では、「第2の状態」において、部位P1および部位P2がそれぞれ略直線状で互いに略平行となり、部位P4および部位P5がそれぞれ略直線状で互いに略平行となり、部位P2の延在方向と部位P4の延在方向とが一致し、かつ部位P1の延在方向と部位P5の延在方向とが略平行となるように形成されている。これにより、同図に示すように、検出用コイル部10の部位P2における部位P3側から部位P4における部位P6側までの範囲と、部位P5における部位P6側から部位P1における部位P3側までの範囲とが平行となっている。したがって、同図に示す測定対象Xに隣接する他の「測定対象」などに、他の電流センサ2や、電流センサ2とは相違する各種センサを装着したときに、測定対象Xに装着している電流センサ2がそれらのセンサの装着の妨げとなる事態が好適に回避される。
【0049】
また、本例の電流センサ2では、前述したように、保持用溝部21における嵌入部21aからの部位Paの取り外し方向と、嵌入部21bからの部位Pbの取り外し方向とが交差する(本例では直交する)ように検出用コイル部10の端部10a側(部位Pa,Pb)がコイル保持部20によって保持される構成が採用されている。したがって、測定対象Xに装着した電流センサ2の検出用コイル部10に対して部位Pbを嵌入部21bから離脱させる向きの力が加わって部位Pbが嵌入部21bから離脱してしまったとしても、部位Paが嵌入部21aに嵌入された状態が維持されて部位Paがコイル保持部20(保持用溝部21)によって保持された状態が維持される。また、検出用コイル部10に対して部位Paを嵌入部21aから離脱させる向きの力が加わって部位Paが嵌入部21aから離脱してしまったとしても、部位Pbが嵌入部21bに嵌入された状態が維持されて部位Pbがコイル保持部20(保持用溝部21)によって保持された状態が維持される。
【0050】
この後、装置本体3の操作部32を操作して測定処理を開始させる。この際には、測定対象Xに電流が流れることで測定対象Xの周囲に生じる磁気が電流センサ2によって検出されて、検出された磁気の大きさに基づいて測定部31が測定対象Xを流れている電流の電流値を測定する。これにより、測定部31による測定結果が処理部34の制御下で表示部33に表示されると共に、測定結果を特定可能な測定結果データが生成されて記憶部35に記憶される。この場合、本例の電流センサ2(測定装置1)では、検出用コイル部10のコイル本体11における端部11aおよび端部11bが仮想平面F2上に位置するように検出用コイル部10がコイル保持部20によって保持される構成が採用されている。したがって、測定対象Xの周囲にコイル本体11が存在しない部位がないため、コイル本体11による磁気の検出感度が十分に高い状態(すなわち、電流値の測定精度が十分に高い状態)において測定処理を実行することができる。
【0051】
一方、測定処理を完了したときには、上記の装着作業時と逆の手順で測定対象Xから電流センサ2を取り外す。この際に、本例の電流センサ2では、嵌入部21a,21b(保持用溝部21)に部位Pa,Pbを嵌入することで保持させる簡易な構成を採用していることで、嵌入部21a,21bから部位Pa,Pbを離脱させるだけでコイル保持部20による検出用コイル部10の保持を容易に解除することができる。以上により、測定対象Xについての一連の測定作業が終了する。
【0052】
このように、この電流センサ2では、端部10aがコイル保持部20によって保持されず、かつ検出用コイル部10に対して検出用コイル部10を撓ませる外力が加えられていない「第1の状態」において略直線状となるように部位P1が端部10aに形成されると共に、「第1の状態」において部位P1に対して部位P1の延在方向と直交する方向に存在する部位P2が「第1の状態」において略直線状となるように形成され、かつ部位P1および部位P2が「第1の状態」において略平行となるように検出用コイル部10が形成されている。また、この測定装置1では、上記の電流センサ2を備えて電流センサ2の出力信号に基づいて測定対象Xを流れる電流の電流値を測定可能に構成されている。
【0053】
したがって、この電流センサ2および測定装置1によれば、測定対象Xに対する電流センサ2の装着時に、測定対象Xや隔壁Xaなどの存在によって部位P1の視認が困難な状態となっても、部位P2の位置や向きに基づいて部位P1の位置や向きを推定することができるため、部位P1を摘まんで引き出すことが可能な位置に向かって検出用コイル部10を確実かつ容易に移動させることができる。これにより、この種の電流センサ2の使用に不慣れな者であっても、測定対象Xに対して検出用コイル部10を確実かつ容易に装着することができる。
【0054】
また、この電流センサ2では、部位P1および部位P2の間の部位P3が「第1の状態」において略半円状となるように検出用コイル部10が形成されている。したがって、この電流センサ2および測定装置1によれば、測定対象Xの周囲で測定対象Xを中心として検出用コイル部10を回動させるときに、部位P3が測定対象Xや隔壁Xaなどに引っ掛かって検出用コイル部10の回動が妨げられる事態を好適に回避することができる。
【0055】
さらに、この電流センサ2では、端部10aおよび端部10bがコイル保持部20によって保持され、かつ検出用コイル部10に対して検出用コイル部10を撓ませる外力が加えられていない「第2の状態」において、部位P1および部位P2が略直線状となり、部位P2の端部10b側に略直線状となる部位P4が部位P2に連続して形成され、かつ略直線状となる部位P5が端部10bに形成されると共に、部位P2の延在方向と部位P4の延在方向とが一致し、部位P1の延在方向と部位P5の延在方向とが一致または略平行となり、かつ部位P4の延在方向と第5の延在方向とが略平行となるように検出用コイル部10が形成されている。
【0056】
したがって、この電流センサ2および測定装置1によれば、測定対象Xを取り囲んで環状に配置された検出用コイル部10の幅が一定となるため、測定対象Xに取り付けた電流センサ2が、他のセンサの装着の妨げとなる事態を好適に回避することができる。これにより、狭い場所に隣接配置されている複数の測定対象Xに電流センサ2や他のセンサなどを確実かつ容易に取り付けることができる。
【0057】
また、この電流センサ2では、部位P4および部位P5の間の部位P6が「第2の状態」において略半円状となるように検出用コイル部10が形成されている。したがって、この電流センサ2および測定装置1によれば、測定対象Xの周囲で測定対象Xを中心として検出用コイル部10を回動させるときに、部位P6が測定対象Xや隔壁Xaなどに引っ掛かって検出用コイル部10の回動が妨げられる事態を好適に回避することができる。
【0058】
さらに、この電流センサ2では、検出用コイル部10における端部10a側の少なくとも部位P1を含む部位Paを嵌入可能な嵌入部21aと、検出用コイル部10における部位Paよりも端部10b側の部位Pbを嵌入可能な嵌入部21bとが形成されると共に、嵌入部21aに嵌入された部位Paの嵌入部21aからの取外し方向と、嵌入部21bに嵌入された部位Pbの嵌入部21bからの取外し方向とが交差するようにコイル保持部20が構成されている。
【0059】
したがって、この電流センサ2および測定装置1によれば、検出用コイル部10に対して、部位Paの嵌入部21aからの取外し方向で外力が加わったとしても、嵌入部21bに部位Pbが嵌入された状態が維持されてコイル保持部20による検出用コイル部10の保持が維持されると共に、部位Pbの嵌入部21bからの取外し方向で外力が加わったとしても、嵌入部21aに部位Paが嵌入された状態が維持されてコイル保持部20による検出用コイル部10の保持が維持される。
【0060】
また、この電流センサ2では、導線が巻回されたコイル本体11と、コイル本体11を覆う被覆部12とを備えて検出用コイル部10が構成されると共に、コイル本体11における端部10a側の部位(端部11a側の部位)の巻軸心、およびコイル本体11における端部10b側の部位(端部11b側の部位)の巻軸心がそれぞれ略直線状で互いに平行となり、かつコイル本体11における両端部11a,11bが両巻軸心と直交する仮想平面上に位置するように検出用コイル部10の端部10aおよび端部10bを保持可能にコイル保持部20が構成されている。
【0061】
したがって、この電流センサ2および測定装置1によれば、測定対象Xの周囲にコイル本体11が存在しない部位がないため、コイル本体11による磁気の検出感度を十分に向上させることができる。これにより、電流値の測定精度を十分に向上させることができる。
【0062】
なお、「電流センサ」および「測定装置」の構成は、上記の電流センサ2および測定装置1の構成の例に限定されない。例えば、部位P3や部位P6を略半円状に形成した検出用コイル部10を有する電流センサ2を例に挙げて説明したが、「第3の部位」や「第6の部位」の形状はこれに限定されず、半楕円形状や多角形状などの任意の形状とすることができる。
【0063】
また、部位P2の延在方向と部位P4の延在方向とが一致するように形成した検出用コイル部10を有する電流センサ2を例に挙げて説明したが、「第2の部位」の延在方向と「第4の部位」の延在方向とが交差するように形成することもできる。さらに、部位P1の延在方向と部位P5の延在方向とが平行となるように形成した検出用コイル部10を有する電流センサ2を例に挙げて説明したが、「第1の部位」の延在方向と「第5の部位」の延在方向とが一致するように形成したり、「第1の部位」の延在方向と「第5の部位」の延在方向とが交差するように形成したりすることもできる。また、部位P4や部位P5を略直線状に形成した検出用コイル部10を有する電流センサ2を例に挙げて説明したが、「第4の部位」や「第5の部位」を非直線状に形成することもできる。
【0064】
さらに、コイル保持部20からの部位Paの取り外し方向と部位Pbの取り外し方向とが交差するように検出用コイル部10を保持するコイル保持部20を備えた電流センサ2を例に挙げて説明したが、「コイル保持部」からの取り外し方向が任意の一方向となるように「検出用コイル部」を保持する構成を採用することもできる。
【0065】
また、コイル本体11の両端部11a,11bが仮想平面F2上に位置するように検出用コイル部10を保持可能なコイル保持部20を備えた電流センサ2を例に挙げて説明したが、「第2の状態」において、コイル本体11の端部11aおよび端部11bが、端部11aの巻軸心や端部11aの巻軸心に沿って僅かに離間した状態(すなわち、環状の検出用コイル部10におけるコイル本体11の端部11a,11b間に僅かなギャップが存在する状態)となるように検出用コイル部10が保持されるように「コイル保持部」を構成することもできる。
【0066】
また、電流センサ2と装置本体3とが別体に形成された測定装置1の構成を例に挙げて説明したが、「電流センサ」と「本体部」とを一体的に形成して「測定装置」を構成する(「電流センサ」の「コイル保持部」を「本体部」に形成して「測定装置」を構成する)こともできる(図示せず)。さらに、「電流値」に加えて「測定対象の電圧値」を測定可能に「測定装置」を構成したり、測定した「電流値」および「電圧値」に基づいて「抵抗値」や「電力値」を演算(測定)可能に「測定装置」を構成したりすることもできる。
【符号の説明】
【0067】
1 測定装置
2 電流センサ
3 装置本体
4 信号ケーブル
10 検出用コイル部
10a,10b 端部
11 コイル本体
11a,11b 端部
12 被覆部
20 コイル保持部
21 保持用溝部
21a,21b 嵌入部
22 ケーブル引出し部
31 測定部
F2 仮想平面
P1~P6,Pa,Pb 部位
X 測定対象
Xa 隔壁Xa