IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 菊水化学工業株式会社の特許一覧

特開2023-76033路面標示用塗料の塗装方法及び路面標示用水性プライマー
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023076033
(43)【公開日】2023-06-01
(54)【発明の名称】路面標示用塗料の塗装方法及び路面標示用水性プライマー
(51)【国際特許分類】
   B05D 3/00 20060101AFI20230525BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20230525BHJP
   C09D 7/43 20180101ALI20230525BHJP
   E01F 9/518 20160101ALI20230525BHJP
   E01C 23/20 20060101ALI20230525BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20230525BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20230525BHJP
【FI】
B05D3/00 D
C09D201/00
C09D7/43
E01F9/518
E01C23/20 Z
B05D7/00 L
B05D7/24 303A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021189177
(22)【出願日】2021-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】000159032
【氏名又は名称】菊水化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山内 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】足立 宗大郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 彰
【テーマコード(参考)】
2D053
2D064
4D075
4J038
【Fターム(参考)】
2D053AA28
2D053AD03
2D053EA11
2D064AA05
2D064BA05
2D064BA11
2D064EA01
2D064JA02
4D075AA02
4D075AE03
4D075AE06
4D075AE07
4D075BB21Z
4D075BB22X
4D075BB29X
4D075BB37Z
4D075BB60Z
4D075BB93X
4D075BB96Z
4D075CA12
4D075CA13
4D075CA47
4D075CA48
4D075DB12
4D075DB32
4D075DC05
4D075EA02
4D075EA06
4D075EA12
4D075EA15
4D075EA35
4D075EA41
4D075EB14
4D075EB22
4D075EB51
4D075EC01
4D075EC07
4D075EC30
4D075EC35
4D075EC51
4J038CG142
4J038EA011
4J038PB05
(57)【要約】
【課題】取り扱いが容易で、揮発性有機溶剤の含有量が少ない水系プライマーであって、塗布後に加熱乾燥させても湧きや膨れが無く、その乾燥時間を短縮させることができ、路面標示用塗料との付着性が十分な路面標示用塗料の塗装方法及びそれに用いられる路面標示用水性プライマーを提供する。
【解決手段】路面に対して、合成樹脂エマルションに感熱ゲル化剤を添加し、ゲル化温度を100℃より低い温度に調整した路面標示用水性プライマーを塗布した後に、路面標示用塗料を塗布することにより、塗布後に加熱乾燥させても湧きや膨れが無く、その乾燥時間を短縮させることができ、路面標示用塗料との付着性が十分な、取り扱いが容易で、揮発性有機溶剤の含有量が少ない路面標示用水性プライマーとなる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面に対して、
合成樹脂エマルションに感熱ゲル化剤を添加し、ゲル化温度を100℃より低い温度に調整した路面標示用水性プライマーを塗布した後に、
路面標示用塗料を塗布する路面標示用塗料の塗装方法。
【請求項2】
前記路面標示用水性プライマーを塗布した後に、加熱し、ゲル化膜を形成させた後に、路面標示塗料を塗布する請求項1に記載の路面標示塗料の塗装方法。
【請求項3】
前記路面標示用水性プライマーを塗布した後に、溶融温度が100~250℃の範囲の溶融型の路面標示用塗料を溶融させた状態で塗布する請求項1に記載の路面標示用塗料の塗装方法。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれかに記載した合成樹脂エマルションに感熱ゲル化剤を添加した路面標示用水性プライマーであって、
この路面標示用水性プライマーが乾燥後に粘着性がある路面標示用水性プライマー。
【請求項5】
沸点が100℃以上の高沸点溶剤を含む請求項4に記載した路面標示用水性プライマー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、道路をはじめとした路面に対して行われるマーキングのための路面標示用塗料の塗装方法及びそれに用いられる路面標示用水性プライマーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、塗装対象物に塗料や塗材などを塗装する場合には、塗装対象物とその塗膜との付着性を向上させるためにプライマーを用いてから塗料を塗装が行われる。
これにより、塗装対象物と塗膜との付着性を向上させ、塗膜の剥がれや膨れ,割れなどが少なくなることになり、塗膜の耐久性を向上させることができる。
【0003】
このプライマーには、道路表面などの路面に対して、車線や停止線などの標示を行う路面標示用塗料を塗布する場合にも用いられることもある。この路面標示用のプライマーには、付着性や乾燥性などから溶剤型のプライマーを用いられることが多い。
この溶剤型のプライマーは、沸点が100℃以下の比較的低沸点のトルエンや酢酸エチルなどの有機溶剤が使用されているものが多い。
【0004】
この溶剤型のプライマーでは、アスファルト舗装表面,コンクリート舗装表面やこれらの表面にある既設の路面標示材料の表層を強化させ、それら表面に路面標示用塗料との付着性の良い塗膜を形成させることで、付着性を向上させることができるものである。
近年、この有機溶剤を使用したプライマーに代わり、合成樹脂エマルションをバインダーとした水系プライマーが使われることがある。
【0005】
これは、有機溶剤を使用したプライマーでは、環境への影響からその揮発性の有機溶剤の低減が求められていることや、プライマーに含まれるトルエンや酢酸エチルなど低沸点の有機溶剤は引火の恐れがあり、取扱い時はもちろん、貯蔵時においても配慮が必要であることなどからである。
この水系プライマーは、合成樹脂エマルションに粘着付与剤などを添加し、路面などの塗装対象物と路面標示材との付着性を向上させたもので、取り扱いが容易で、揮発性有機溶剤の含有量が少ないものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015-183122号公報
【0007】
特許文献1の路面標示用の水性下塗り塗料には、合成ゴムエマルションと、固形成分を構成する樹脂成分が軟化点を有するエマルション型粘着付与剤と、を含有し、前記合成ゴムエマルションの固形成分の含有量と、前記エマルション型粘着付与剤の固形成分の含有量と、の和が全成分の10質量%以上50質量%以下であり、かつ、前記合成ゴムエマルションの固形成分の含有量に対する前記エマルション型粘着付与剤の固形成分の含有量が質量比で0.2倍以上1.5倍以下であるものが記載されている。
【0008】
これにより、取り扱いが容易で、揮発性有機溶剤の含有量が少なく、さらに、下塗り塗料としての効果が高いにもかかわらず、乾燥に要する時間が比較的短いものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1の路面標示用の水性下塗り塗料では、2種類の合成ゴムエマルションを主成分とするものであるため、溶剤型のプライマーに比べ、乾燥性が遅く、そのためプライマー塗布作業による交通を遮断する時間が長くなることになり、マーキング施工にかかる作業時間を短縮することが難しいものである。
【0010】
本開示は、取り扱いが容易で、揮発性有機溶剤の含有量が少ない水系プライマーであって、塗布後に加熱乾燥させても湧きや膨れが無く、その乾燥時間を短縮させることができ、路面標示用塗料との付着性が十分な路面標示用塗料の塗装方法及びそれに用いられる路面標示用水性プライマーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
路面に対して、合成樹脂エマルションに感熱ゲル化剤を添加し、ゲル化温度を100℃より低い温度に調整した路面標示用水性プライマーを塗布した後に、路面標示用塗料を塗布することである。
このことにより、取り扱いが容易で、揮発性有機溶剤の含有量が少ない路面標示用水性プライマーであって、塗布後に加熱乾燥させても湧きや膨れが無く、その乾燥時間を短縮させることができ、路面標示用塗料との付着性が十分なものである。
【0012】
前記路面標示用水性プライマーを塗布した後に、加熱し、ゲル化膜を形成させた後に、路面標示用塗料を塗布することである。
このことにより、路面標示用水性プライマーの湧きやその塗膜が膨れることなく、素早く乾燥させ、路面標示用塗料を塗装することができるため、マーキング施工を短くすることができる。
【0013】
前記路面標示用水性プライマーを塗布した後に、溶融温度が100~250℃の範囲の溶融型の路面標示用塗料を溶融させた状態で塗布することである。
このことにより、路面標示用塗料の熱を利用して、路面標示用水性プライマーをゲル化させ、それと同時に溶融型路面標示用塗料を塗布することで、よりマーキング施工を短縮することができる。
【0014】
合成樹脂エマルションに感熱ゲル化剤を添加した路面標示用水性プライマーであって、この路面標示用水性プライマーが乾燥後に粘着性があるものである。
このことにより、路面標示用水性プライマーにより形成された塗膜と路面標示用塗料との付着性が向上する。
【0015】
沸点が100℃以上の高沸点溶剤を含む合成樹脂エマルションに感熱ゲル化剤を添加した路面標示用水性プライマーであるものである。
このことにより、路面標示用水性プライマーにより形成された塗膜の粘着性が大きくなり、路面標示用塗料との付着性がより向上する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本開示の実施形態を詳細に説明する。
本開示は、路面に対して、合成樹脂エマルションに感熱ゲル化剤を添加し、ゲル化温度を100℃より低い温度に調整した路面標示用水性プライマーを塗布した後に、路面標示用塗料を塗布することである。
【0017】
この路面は、アスファルトやコンクリートにより舗装された道路表面のことで、車両や歩行者が通行する部分のことである。そのため、車線や停止線などの各種標示が必要になる。
まず、この路面標示用水性プライマーは、路面標示用塗料との付着性を向上させるためのものであり、この路面標示用塗料は、道路などの路面上に標示される車線区画線,停止線等の交通標識,横断歩道標識などを標示するものである。
【0018】
この路面標示用塗料は、JIS K 5665に規定されているものが代表的なものであり、水系型や溶剤型の液状塗料や溶融型の粉体塗料がある。
この路面標示用塗料を塗布する前に路面標示用水性プライマーを塗布する。この路面標示用水性プライマーは、合成樹脂エマルションに感熱ゲル化剤を添加し、ゲル化温度を100℃より低い温度に調整したものである。
【0019】
この合成樹脂エマルションは、合成樹脂を水に分散させたもので、この合成樹脂には、アクリル樹脂,ウレタン樹脂,塩化ビニル樹脂,シリコーン樹脂,酢酸ビニル樹脂,ポリエステル樹脂,スチレン樹脂,フッ素樹脂などの樹脂を単独又は共重合したものが使われる。
合成樹脂エマルションは、乳化重合のような常用の重合技術で製造することができる一般的なもので良く、塗料適性,塗膜の物性,入手の容易性などの点から、アクリル樹脂,スチレン樹脂より製造されたアクリル系合成樹脂エマルション及びアクリルスチレン系合成樹脂エマルションが好ましい。
【0020】
この合成樹脂エマルションに感熱ゲル化剤を添加し、路面標示用水性プライマーとすることができる。この感熱ゲル化剤を含ませることで、塗布された湿潤状態の路面標示用水性プライマーを加熱するとゲル化膜が形成し、乾燥することで、プライマー塗膜となる。
この感熱ゲル化剤を含んだ路面標示用水性プライマーは、常温では、安定した液状物であるが、調整したゲル化温度に達すると路面標示用水性プライマーの主成分である合成樹脂の間隔が狭くなり、互いに引っ付く状態になり、塗料の流動性がなくなることになる。
【0021】
このように路面標示用水性プライマーがゲル化したゲル化膜は、水分を含んだ状態であるが、合成樹脂のゲル化に伴い、合成樹脂エマルション中に分散された成分を合わせて固定された状態になる。
この感熱ゲル化剤は、合成樹脂エマルションの種類,感熱ゲル化剤の種類や添加量により、ゲル化温度を調整することができる。この路面標示用水性プライマーのゲル化温度は、気温より高く100℃以下に調整する。
【0022】
気温以下である場合では、路面標示用水性プライマーが塗装前にゲル化し、塗装できなくなる。100℃以上の場合は、加熱に際して、ゲル化前に水蒸気が発生し、その水蒸気により膨れながらゲル化膜を形成することがある。
この感熱ゲル化剤には、得られたゲル化膜が気温と同じ温度に下がってもゲル状態を保つようなものであれば特に限定されず、有機系及び無機系のものがいずれも使用でき、一度ゲル化したものが元のように流動性のある状態に戻らないものである。
【0023】
有機系の感熱ゲル化剤には、でんぷん及びその誘導体やノニオン界面活性剤系であるオルガノポリシロキサンのアルキレンオキシド付加物,オルガノポリシロキサンのアルキルフェノールホルマリン縮合物,アルキルフェノール-ホルマリン縮合物のアルキレンオキサイド付加物,ポリビニルメチルエーテル,オルガノポリシロキサンポリエーテル共重合体等を挙げることができる。
【0024】
無機系の感熱ゲル化剤としては、例えば亜鉛化合物をアンモニア水に溶解させた亜鉛化合物のアンモニア水溶液,硝酸アンモニウム,塩化アンモニウム,炭酸ナトリウム,炭酸カリウム,硫酸ナトリウム,塩化カリウム,塩化カルシウム,硫酸カルシウム,硫酸マグネシウム,亜鉛アンモニウム錯塩,硝酸ナトリウム,硝酸鉛,酢酸ソーダなどを挙げることができる。
【0025】
これらを単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。ノニオン界面活性剤の場合では、曇点が30~80℃程度のものが好ましく用いられる。
これらの中でも、無機系の感熱ゲル化剤である亜鉛化合物のアンモニア水溶液が路面標示用水性プライマーのゲル化性などの点からより好ましく用いられる。
【0026】
この亜鉛化合物の具体例としては、水酸化亜鉛などが挙げられ、亜鉛化合物のアンモニア水溶液の濃度は、5~15重量%の範囲が好ましい。
この範囲内であれば、感熱ゲル化剤を安定的に添加することができ、そのゲル化性も良好なものとなる。亜鉛化合物を溶解させるためのアンモニア水の濃度についても特に限定されるものではなく、5~10重量%程度が好ましい。
【0027】
この路面標示用水性プライマーは、そのゲル化温度を30~100℃の範囲に調整することが好ましい。
このゲル化温度の設定には、気温に左右されることがあり、この路面標示用水性プライマーの乾燥が遅くなる冬季を考えた場合、30℃以上であれば、倉庫内などで貯蔵中にゲル化することがなく、流動性を保持したまま塗装することができる。
【0028】
その後の加熱も容易に行うことが可能で、十分な強度を持った路面標示用水性プライマーによるゲル化膜やプライマー塗膜を形成することができる。
また、夏季の場合であれば、50℃以上であることが好ましく、年間を通じての貯蔵安定性を考慮した場合では、そのゲル化温度の設定を60~100℃の範囲内にすることが好ましいものである。
【0029】
この範囲内であれば、貯蔵安定性や塗装性も良好で、路面標示用水性プライマーにより形成されるプライマー塗膜の形成も容易となり、加熱に際して、ゲル化直前に水蒸気が発生し、そのプライマー塗膜が形成される際に発生する水蒸気により膨れることも少ないものとなる。
この路面標示用水性プライマーは、塗装用ローラーや刷毛,スプレーにより塗装を行うことができる。
【0030】
この中でもスプレーにより塗装を行うことが好ましく、大気中に細かい塗料粒子を放出する際に塗料中の空気が抜け、気泡の少ない湿潤状態の塗膜を造ることができ、その後加熱を行った場合に、その気泡が少ないことで、路面標示用水性プライマーの形成に際して、そのゲル化膜の膨れが少ないものとなる。
これは、湿潤状態の塗膜に気泡が残っていると、塗膜を表面から加熱した際、塗膜表面からゲル化が進み、塗膜内部に残っている気泡が加熱により膨張し、塗膜の表面に膨れが発生するからである。
【0031】
このスプレー塗布方法には、通常塗装作業に用いられるエアースプレーやエアレススプレーなどのスプレーガンがあり、これらを自動車や手押し車に積載したマーカー車を用いることが多く、作業効率の向上を図ることが多い。
また、スプレー塗布の他にも塗布面積が比較的少ない場合では、塗布時の路面標示用水性プライマーの飛散や塗布作業性の点から塗装用ローラーや刷毛などの一般的な塗装器具を用いて塗布することもある。
【0032】
この路面標示用水性プライマーには、その他の添加剤としての低沸点アルコール,界面活性剤,増粘剤,難燃剤,pH調整剤,防腐剤等のような一般に塗料製造に配合されている成分を使用することができる。
界面活性剤は、消泡剤,分散剤,湿潤剤などとして用いられる。増粘剤は、粘度及び粘性調整のために用いられる。
【0033】
また、この路面標示用水性プライマーには、必要に応じ酸化チタン,カオリン,タルクやクレーなどの白色顔料や酸化鉄などの無機系の顔料や有機系顔料などの着色顔料のような着色成分を含ませ着色させることも可能である。
また、炭酸カルシウム,珪藻土,ベントナイト,ホワイトカーボン,ガラスビーズ,プラスチックビーズ,水酸化アルミニウム,沈降性バリウムや珪砂などの体質顔料を含有させることもできる。
【0034】
この路面標示用水性プライマーは、上記記載の各種材料を混合し、攪拌することで得ることができる。
この路面標示用水性プライマーは、塗布後に乾燥させることで、粘着性を有するものであることが好ましく、このプライマー塗膜と路面標示用塗料により形成される塗膜との付着性が向上する。
【0035】
この粘着性は、路面標示用水性プライマーに使用する合成樹脂のガラス転移温度や高沸点溶剤の添加により調整することができる。そのため、この合成樹脂のガラス転移温度は、-15~20℃の範囲が好ましく、この範囲内であれば、十分な粘着性を有するものとなる。
さらに、沸点が100℃以上の高沸点溶剤を含ませることにより、路面標示用水性プライマーによるプライマー塗膜の粘着性が大きくなり、路面標示用塗料による塗膜との付着性をより向上させることができる。
【0036】
この高沸点溶剤には、脂肪族炭化水素類,芳香族炭化水素類,ハロゲン化炭化水素類,アルコール類,ケトン類,エステル類,アルコールエステル類,ケトンエステル類,エーテル類,ケトンアルコール類,エーテルアルコール類,ケトンエーテル類,エステルエーテルなどが挙げられる。
また、一般的な水系塗料の造膜助剤や防凍剤として用いられるものを使用することができ、これらを適宜選択して用いることができる。
【0037】
具体例としては、エチレングリコール,プロピレングリコール,ヘキシレングリコール,ベンジルアルコールなどのアルコール類、ジエチルフタレート,ジオクチルフタレート,エチルフタリルエチレングリコレート,ノナン,メチルベンゼン,アルキルベンゼンなどの芳香族類などがある。
2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレート,プロピレングリコールジアセテートなどのエステル類、ターペン油、テレピン油などがある。
【0038】
また、ブチルグリコール,ブチルジグリコール,エチルジグリコール,ジプロピレングリコールメチルエーテル,ジプロピレングリコールn-ブチルエーテル,トリプロピレングリコールn-ブチルエーテル,ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート,プロピレングリコールメチルエーテルアセテート,ジエチレングリコールジメチルエーテル,トリエチレングリコールモノメチルエーテルなどのアルキルエーテル類などが挙げられる。
【0039】
これらのいずれか1種又は2種以上を混合して用いても良く、合成樹脂エマルションに混ざるものである必要がある。
高沸点溶剤の沸点が100℃未満の低沸点溶剤は、揮発性が高いため、路面標示用水性プライマーの加熱時に揮発し、十分な粘着性を得ることができないことがある。又、安全性及び環境に与える影響などの点から好ましくないこともある。
【0040】
この高沸点溶剤の沸点が100~350℃の範囲の高沸点溶剤のみを用いることがより好ましい。又、この100~350℃の範囲の高沸点溶剤は、1分子中にOH基が分子量換算で5.0~60.0重量%含有された2種以上のものを用いても良い。
この高沸点溶剤の沸点が350℃以上の場合は、得られた水系プライマー組成物から得られた塗膜中にある高沸点溶剤の残存期間が長くなり、膨れを生じる場合がある。更に、有機溶剤の沸点が150~300℃の範囲がより好ましく、この範囲であればバランスの良好なものとなる。
【0041】
この高沸点溶剤は、合成樹脂エマルションに混合するため、その合成樹脂エマルションに混ざるものであり、そのため水溶性の高沸点溶剤が好適に用いられることがある。
また、この路面標示用水性プライマーには、粘着付与剤を添加することも可能であり、これらには、天然樹脂系の植物由来のロジンや動物由来のセラックや鉱物由来のアスファルトなどがある。合成樹脂系には、天然樹脂のロジンを誘導したエステル樹脂,石油樹脂,テルペンフェノール樹脂などがある。
【0042】
この中でも入手の容易さなどにより天然樹脂のロジンを誘導したエステル樹脂を用いられることが多い。この粘着付与剤により、水性プライマーの付着性能を向上させることができ、これらを適宜選択し用いることができ、これらを1種又は、2種以上併用することもできる。
この路面標示用水性プライマーの塗布量は、塗装対象物の形状などによるが、10~100g/m程度となる。これは、塗装対象物が路面などの場合、その路面の舗装の仕方によりその塗布量が比較的多くなることがあるためである。
【0043】
このような路面標示用水性プライマーは、塗布された後に、路面標示用塗料を塗布する。この路面標示用水性プライマーを塗布した後に加熱し、路面標示用水性プライマーによるゲル化膜を形成させ、路面標示用塗料を塗布する場合がある。
また、路面標示用水性プライマーを塗布し、溶融型路面標示用塗料の溶融熱を利用し、その路面標示用水性プライマーをゲル化させながら溶融型路面標示用塗料の塗布を行う場合がある。
【0044】
路面標示用水性プライマーを塗布した後に加熱する場合での加熱方法は、塗布された路面標示用水性プライマーが湿潤状態であるものをゲル化させることができる温度で加熱することができるものであれば良く、特に限定されるものではない。
この加熱方法には、火などを利用したバーナーを用いる方法や熱風を利用する方法、遠赤外線を利用する方法などがある。しかし、加熱温度が塗膜のゲル化温度より高くても、比較的低い場合では、塗膜内部にまでゲル化温度が達するまでに時間が掛かり、効率的な作業ができないことがある。
【0045】
また、その加熱時の気温や塗装対象となる路面に熱を取られ、路面標示用水性プライマーがゲル化するまでに時間が掛かることがある。そのため温度管理が容易に行うことができる方法を選択することになる。
ガスバーナーなどを用いることで、湿潤状態の塗膜に直接熱を与えてゲル化させることが容易に行うことができ、十分な熱を湿潤状態の塗膜に与えることができ、効率的に作業を行うことができる。
【0046】
このように路面標示用水性プライマーの塗膜を形成させた後に路面標示用塗料を塗布する。この路面標示用塗料には、上記記載のJIS K 5665に規定されているものが代表的なものであり、水系型や溶剤型の液状塗料や溶融型の粉体塗料の形式のものがある。
この路面標示用塗料は、特に制限されるものではないが、溶融温度が100~250℃の範囲の溶融型の路面標示用塗料を溶融させた状態で塗布することが好ましい。
【0047】
これにより、路面標示用塗料の温度を利用して、塗布した路面標示用水性プライマーをゲル化させ、それと同時に溶融型路面標示用塗料を塗布することで、マーキング施工時間をより短縮することができる。
また、これらの路面標示用塗料の中で、水系型のもので、感熱ゲル化型のものを使用することも可能で、マーキング作業を効率的に行うことができ好ましいものとなる。
【0048】
これは、路面に対して、合成樹脂エマルションに感熱ゲル化剤を添加し、ゲル化温度を100℃より低い温度に調整した路面標示用水性プライマーを塗布する。
その後に、合成樹脂エマルションに感熱ゲル化剤を添加し、ゲル化温度を100℃より低い温度に調整した水系感熱ゲル型路面標示用塗料を塗布し、加熱し、ゲル化膜を形成させることである。
【0049】
このことにより路面標示用水性プライマーの塗布直後に、水系感熱ゲル型路面標示用塗料を塗布し、この塗布された二層を同時に加熱し、ゲル化,乾燥させることで、湧きや膨れが無く、その乾燥時間を短縮させることができ、路面標示用塗料との付着性が十分なものとなる。
そのため、取り扱いが容易で、揮発性有機溶剤の含有量が少ないもので、効率的にマーキング施工を行うことが可能である。
【0050】
この水系感熱ゲル型路面標示用塗料は、本開示の路面標示用水性プライマーと同じで、合成樹脂エマルションに感熱ゲル化剤を添加し、ゲル化温度を100℃より低い温度に調整した合成樹脂エマルションを主成分とし、他配合物は、通常の水系路面標示用塗料と同様な成分により構成されるものである。
また、この合成樹脂エマルションは、路面標示用水性プライマーと同じものを使用することが多く、アクリル樹脂,スチレン樹脂より製造されたアクリル系合成樹脂エマルション及びアクリルスチレン系合成樹脂エマルションが好ましく用いられる。
【0051】
この合成樹脂エマルションに添加される感熱ゲル化剤についても、路面標示用水性プライマーに用いられるものと同じものを使用することが多く、無機系の感熱ゲル化剤である亜鉛化合物のアンモニア水溶液が好ましく用いられる。
その他に、酸化チタン,カオリン,タルクやクレーなどの白色顔料や炭酸カルシウム,珪藻土,水酸化アルミニウム,ベントナイト,ホワイトカーボン,沈降性バリウムや珪砂などの体質顔料を含んだものである。
【0052】
また、酸化鉄などの無機系顔料や有機系顔料などの着色顔料のような着色成分や繊維などを含むこともある。
必要に応じ分散剤や湿潤剤,消泡剤として用いられる界面活性剤や増粘剤,レベリング剤,タレ止め剤などの粘性調整剤、低沸点アルコール,造膜助剤,防凍剤として用いられる有機溶剤などのような一般に塗料製造に配合されている成分も使用することができる。
【0053】
さらに、pH調整剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、ワックスなどの添加剤も加えることもある。
このような構成による水系感熱ゲル型路面標示用塗料であることにより、塗布された湿潤状態の水系感熱ゲル型路面標示用塗料を加熱することで、ゲル化した塗膜が形成される。
【0054】
この水系感熱ゲル型路面標示用塗料は、路面標示用水性プライマーと同様で、常温では安定した液状物であるが、調整したゲル化温度に達すると主成分である合成樹脂の間隔が狭くなり、互いに引っ付く状態になり、塗料の流動性がなくなることになる。
このようにゲル化した塗膜は、水分を含んだ状態であるが、合成樹脂のゲル化に伴い、合成樹脂エマルション中に分散された白色顔料や体質顔料などの成分も合わせて固定された状態になる。
【0055】
次に、上記記載の路面標示用塗料の塗装方法について、実際のアスファルトの路面での作業により、より具体的に説明する。
この作業では、マーキングを3m程度行う予定とし、その作業を行う場所については、ゴミや埃を極力除去して行った。又、作業中の環境は、気温が25℃,湿度が60%の微風の状態の昼間に行った。
【0056】
まず、路面標示用水性プライマーに用いられる合成樹脂エマルションには、アクリル樹脂を乳化重合したものがあり、その固形分は、45.0重量%で、ガラス転移温度が-10℃のものを使用した。
感熱ゲル化剤には、亜鉛化合物をアンモニア水に溶解させた亜鉛化合物のアンモニア水溶液を用い、その亜鉛化合物である水酸化亜鉛をアンモニア水溶液に溶かし、その濃度が10重量%のものであった。
【0057】
この路面標示用水性プライマーには、界面活性剤,増粘剤,難燃剤,pH調整剤,防腐剤等のような一般に塗料製造に配合されている成分が含まれているものであった。
また、この路面標示用水性プライマーが乾燥した後に、粘着性を有するものとするために、高沸点溶剤である沸点が260℃程度の2,2,4-トリメチル1,3-ペンタンジオールモノイソブチレートを合成樹脂エマルションの固形分に対して、5.0重量%添加したものであった。
【0058】
これらを混合したものを路面標示用水性プライマーとし、そのゲル化温度が80℃に設定したものであった。
この路面標示用水性プライマーの貯蔵安定性を確認した。この路面標示用水性プライマーを密閉性の高いプラスチック製の容器に、500g入れたものを2つ用意した。
【0059】
これらをそれぞれ50℃と-5℃の恒温槽に1週間静置し、その後に室温に戻し、路面標示用水性プライマーの性状を確認したところ、どちらも特に変化がなかったことが確認でき、路面標示用水性プライマーの貯蔵安定性について、良好なものであった。
この路面標示用水性プライマーの塗装には、エアースプレーより行い、その塗布量は、50g/m程度であった。
【0060】
この路面標示用水性プライマーを塗装した後に、路面標示用塗料を塗布する。この路面標示用塗料には、JIS K 5665にある溶融型の粉体塗料を用いた。
この溶融型の路面標示用塗料の溶融温度が200℃程度のものであり、その塗布には、専用の塗布機を用いた。
【0061】
この路面標示用水性プライマーの塗装から路面標示用塗料を塗布前までの間を異なる下記の3種類の条件で確認を行った。
(1)路面標示用水性プライマーを塗装した後に、自然乾燥によりプライマー塗膜を形成させた場合。
【0062】
(2)路面標示用水性プライマーを塗装した後に、遠赤外線を利用した加熱方法で、ゲル化膜を形成させた場合。
これは、遠赤外線パネルを使用した加熱装置で、ゲル化膜の様子を観察しながら加熱を行った。
【0063】
(3)路面標示用水性プライマーを塗装した直後の湿潤状態のままの場合。
この(1)~(3)の条件の後に、溶融型の路面標示用塗料を塗布した。その結果は、下記のようなものであった。
【0064】
(1)の場合では、路面標示用標示用水性プライマーが乾燥するまでの時間が比較的掛かり、通常の水系プライマーを使用した時と同じような時間を要した。
また、路面標示用塗料の塗布直後の湧きの発生はなく、形成された塗膜には、膨れや割れの発生はなかった。
【0065】
(2)の場合では、溶剤系プライマーを使用した時より、施工時間が大幅に短縮された。これは、路面標示用水性プライマーの塗装直後に加熱し、ゲル化膜を形成させることで、路面標示用水性プライマーの乾燥させる時間がほとんどなかったためである。
また、路面標示用塗料の塗布直後の湧きの発生はなく、形成された塗膜には、膨れや割れの発生はなかった。
【0066】
(3)の場合では、プライマーを用いない場合の施工と同じ程度の施工時間となり、通常より大幅に短縮された。これは、路面標示用水性プライマー塗装直後に路面標示用塗料の塗布を行うことで、ほぼ同時に塗装と塗布を行うことができたためである。
また、路面標示用塗料の塗布直後の湧きの発生はなく、形成された塗膜には、膨れや割れの発生はなかった。
【0067】
この(1)~(3)の場合と比較するために、前記路面標示用水性プライマーで、ゲル化剤と高沸点溶剤を加えていない水性プライマーで、前記同様な塗装を行い、使用した路面標示用塗料も同じものであった。
(4)水性プライマーを塗装した後に、自然乾燥によりプライマー塗膜を形成させた場合。
【0068】
(5)水性プライマーを塗装した後に、遠赤外線パネルを利用した加熱方法を行った場合。
これは、遠赤外線パネルを使用した加熱装置で、様子を観察しながら加熱を行った。
【0069】
(6)水性プライマーを塗装した直後の湿潤状態のままの場合。
この(4)~(6)の条件の後に、溶融型の路面標示用塗料を塗布した。その結果は、下記のようなものであった。
【0070】
(4)の場合では、水性プライマーが乾燥するまでの時間が比較的掛かり、通常の水系プライマーを使用した時と同じような時間を要した。
また、路面標示用塗料の塗布直後の湧きの発生はなく、形成された塗膜には、膨れや割れの発生はなかった。
【0071】
(5)の場合では、加熱すると水性プライマーに湧きが発生し、プライマー塗膜が膨れた状態になり、均一な塗膜を形成することができなかった。そのため、路面標示用塗料を塗布することができなかった。
(6)の場合では、路面標示用塗料を塗布したと同時に、水性プライマーの水分が湧き、路面標示用塗料の塗膜が膨れ、マーキング作業ができなかった。
【0072】
このように、ゲル化剤を加えた路面標示用水性プライマーでは、取り扱いが容易で、塗布後に加熱乾燥させても湧きや膨れが無く、路面標示用塗料の塗布までの時間を短縮させることができた。
また、路面標示用塗料の熱を利用して、路面標示用水性プライマーをゲル化させ、それと同時に溶融型路面標示用塗料を塗布することで、よりマーキング作業を短縮することができた。
【0073】
このように路面標示用水性プライマーの塗装から路面標示塗料の塗布までの時間が短くなるほど路面標示用塗料を速く塗布することができ、マーキング作業が大幅に短縮することができ、作業に伴う交通規制の時間も短縮することができた。
次に、路面標示用水性プライマーをエアースプレーで塗装を行った。その塗布量は70g/m程度であった。路面標示用塗料に水系感熱ゲル型路面標示用塗料を用いて、マーキング作業を行った。
この水系感熱ゲル型路面標示用塗料は、路面標示用水性プライマーと同じアクリル樹脂系合成樹脂エマルション(固形分45.0重量%で、ガラス転移温度が-10℃)バインダーとし、感熱ゲル化剤は、亜鉛化合物をアンモニア水に溶解させたもので、その濃度が10重量%のものであった。
【0074】
これらに、酸化チタンと炭酸カルシウムを加え、界面活性剤,増粘剤,pH調整剤を添加し、水系感熱ゲル型路面標示用塗料を得た。
この塗料の顔料体積濃度は、60容量%であり、ゲル化温度は、路面標示用水性プライマーより少し高い、85℃であった。これは、塗料に酸化チタンと炭酸カルシウムが配合されているためであった。
【0075】
また、水系感熱ゲル型路面標示用塗料より熱の掛かりにくい内側にある路面標示用水性プライマーのゲル化温度より高いことで、後述される(9)の場合では、ほぼ同じころにゲル化することになり、塗膜の膨れなどがより生じ難いことになる。
この水系感熱ゲル型路面標示用塗料の塗装には、エアースプレーで行い、その塗布量は、100g/m程度であった。
【0076】
この路面標示用水性プライマーの塗装から水系感熱ゲル型路面標示用塗料を塗布前までの間を異なる下記の3種類の条件で確認を行った。
(7)路面標示用水性プライマーを塗装した後に、自然乾燥によりプライマー塗膜を形成させ、水系感熱ゲル型路面標示用塗料を塗布し、遠赤外線パネルを使用した加熱装置で、ゲル化膜の様子を観察しながら加熱を行った場合。
【0077】
(8)路面標示用水性プライマーを塗装した後に、遠赤外線を利用した加熱方法で、ゲル化膜を形成させ、水系感熱ゲル型路面標示用塗料を塗布した後に、同様に加熱し、ゲル化させ塗膜を形成させた場合。
これは、遠赤外線パネルを使用した加熱装置で、ゲル化膜の様子を観察しながら加熱を行った。
【0078】
(9)路面標示用水性プライマーを塗装した直後の湿潤状態に、水系感熱ゲル型路面標示用塗料を塗布した後に、遠赤外線を利用した加熱方法で、同時にゲル化させゲル化膜を形成させた場合。
これは、遠赤外線パネルを使用した加熱装置で、ゲル化膜の様子を観察しながら加熱を行った。
【0079】
これら(7)~(9)の結果は、下記のようなものであった。
(7)の場合では、路面標示用水性プライマーが乾燥するまでの時間が比較的掛かり、通常の水系プライマーを使用した時と同じような時間を要した。又、水系感熱ゲル型路面標示用塗料の塗布直後の湧きの発生はなく、形成された塗膜には、膨れや割れの発生はなかった。
【0080】
(8)の場合では、路面標示用水性プライマーの塗装直後に加熱し、ゲル化膜を形成させることで、乾燥させる時間がほとんど無かったため、施工時間が大幅に短縮された。
また、水系感熱ゲル型路面標示用塗料の塗布直後の湧きの発生はなく、形成された塗膜には、膨れや割れの発生はなかった。
【0081】
(9)の場合では、路面標示用水性プライマー塗装直後に路面標示用塗料の塗布を行うことで、ほぼ同時に塗装と塗布を行うことができたため、プライマーを用いない場合の溶融型の路面標示用塗料の施工と同じ程度の施工時間となり、水系プライマーを用いた場合より大幅に施工時間が短縮された。
また、水系感熱ゲル型路面標示用塗料の塗布直後の湧きの発生はなく、形成された塗膜には、膨れや割れの発生はなかった。
【0082】
上記(1)~(9)の施工仕様での付着性の確認を行った。(5)(6)については、十分な塗膜を形成することができなかったため、この試験からは、除外した。
この付着性は、亜鉛メッキ鋼板(150mm×70mm、厚さが1mm)の表面に塗装し、1週間室温で養生し、試験体とした。試験体は、それぞれの施工仕様で2枚用意した。
【0083】
この2枚の試験体は、1枚は、室温のまま試験を行い、もう1枚は、-5℃の雰囲気下で1日静置し、試験体の温度を-5℃にし、試験を行った。
この試験体の中央部あたりを90°になるように折り曲げ、折り曲げ部分の路面標示用塗料の塗膜の剥がれがないかの確認を行った。この路面標示用塗料の塗膜表面には、折り曲げることにより割れが生じることになるが、その割れた塗膜が、剥がれないかの確認になる。
【0084】
この結果では、室温の場合、(1)~(4),(7)~(9)の試験体で、剥がれがなく、付着性が良好であることを確認できた。
-5℃の場合では、(1)~(3),(7)~(9)の試験体で、剥がれがなく、付着性が良好であることを確認できたが、(4)の試験体については、塗膜の一部に剥がれを確認することができた。
【0085】
これは、(4)のプライマーには、高沸点溶剤を添加していないため、低温時の付着性が若干低くなったものであった。