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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023076034
(43)【公開日】2023-06-01
(54)【発明の名称】挿入装置及び、挿入方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 20/00 20060101AFI20230525BHJP
【FI】
E21D20/00 X
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021189178
(22)【出願日】2021-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100171619
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 顕雄
(72)【発明者】
【氏名】森野 弘之
(72)【発明者】
【氏名】谷口 信博
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 哲
(57)【要約】
【課題】作業効率及び生産性を効果的に向上する。
【解決手段】ガイド部材21と、ガイド部材21に移動可能に設けられる移動部材22A及び、アクチュエータ23を有する推進装置22と、ガイド部材21の先端側に設けられるとともに、棒状部材303を挿通させる貫通孔25Aを有しており、貫通孔25Aに挿通された棒状部材303を軸線方向に移動可能、且つ、径方向に変位可能に支持する支持部材25と、支持部材25に設けられており、棒状部材303の貫通孔25A内における径方向への変位を検出可能なセンサ部80と、アクチュエータ23から移動部材25Aに推進力を伝達して棒状部材303を孔301に挿入する挿入動作中に、センサ部80により検出される棒状部材303の変位に基づいて、棒状部材303の軸線方向XAに対して孔301の軸線方向XHが傾いているかを判定する判定部100と、を備えた。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状部材を孔に挿入する挿入装置であって、
前記棒状部材の軸線方向と略平行に延びるガイド部材と、
前記ガイド部材に、該ガイド部材の長手方向に沿って移動可能に設けられるとともに、前記棒状部材の基端を支持する移動部材及び、該移動部材に推進力を伝達するアクチュエータを有する推進装置と、
前記ガイド部材の先端側に設けられるとともに、前記棒状部材を挿通させる貫通孔を有しており、該貫通孔に挿通された前記棒状部材を軸線方向に移動可能、且つ、径方向に変位可能に支持する支持部材と、
前記支持部材に設けられており、前記棒状部材の前記貫通孔内における前記径方向への変位を検出可能なセンサ部と、
前記アクチュエータから前記移動部材に推進力を伝達して前記棒状部材を前記孔に挿入する挿入動作中に、前記センサ部により検出される前記棒状部材の前記径方向への変位に基づいて、前記棒状部材の軸線方向に対して前記孔の軸線方向が傾いているかを判定する判定部と、を備える
ことを特徴とする挿入装置。
【請求項2】
前記判定部は、
前記挿入動作中に、前記アクチュエータの推進力が増加又は、前記棒状部材の送り出し量が変化しない場合において、前記センサ部が前記棒状部材の前記径方向への変位を検出しない場合には、前記孔内に前記棒状部材の挿入を妨げる障害物があると判定する
請求項1に記載の挿入装置。
【請求項3】
前記センサ部は、
前記貫通孔の内周に周方向に所定ピッチで配置されるとともに、前記棒状部材の前記径方向への変位に伴い荷重を検出する複数のロードセルを含み、
前記判定部は、
前記複数のロードセルのうち、前記荷重を検出したロードセルの前記棒状部材に対する配置方向に基づいて、前記棒状部材の軸線方向に対する前記孔の軸線方向の傾き方向を判定する
請求項1又は2に記載の挿入装置。
【請求項4】
前記ガイド部材の姿勢を調整可能な姿勢調整機構と、
前記アクチュエータの作動及び、前記姿勢調整機構の作動を制御する制御部と、をさらに備え、
前記制御部は、
前記アクチュエータを作動して前記移動部材を前記ガイド部材に沿って移動させることにより、前記棒状部材を前記孔に自動挿入するとともに、該自動挿入中に前記センサ部が前記棒状部材の前記径方向への変位を検出した場合には、前記センサ部が変位を検出しない状態となるように、前記姿勢調整機構の作動を自動制御する
請求項1から3の何れか一項に記載の挿入装置。
【請求項5】
前記棒状部材が、トンネル周壁に削孔した孔に挿入されるロックボルト、又は、トンネル周壁に削孔した孔に充填剤を注入する注入ロッド、又は、トンネルの切羽に削孔した装薬孔に爆薬を装填する装填ノズルの何れかである
請求項1から4の何れか一項に記載の挿入装置。
【請求項6】
請求項1に記載の挿入装置を用いて前記棒状部材を前記孔に挿入する挿入方法であって、
前記棒状部材の先端を前記孔の開口と対向させた後、前記アクチュエータを作動して前記移動部材を前記ガイドセルに沿って移動させることにより、前記棒状部材を前記孔に挿入する挿入動作を開始し、該挿入動作中に、前記センサ部が前記棒状部材の前記径方向への変位を検出した場合には、前記センサ部が変位を検出しない状態となるように前記ガイド部材の姿勢を調整し、前記棒状部材の先端が前記孔内の所望位置に到達するまで前記挿入作動を継続する
ことを特徴とする挿入方法。
【請求項7】
前記挿入動作中に、前記アクチュエータの推進力が増加又は、前記棒状部材の送り出し量が変化しない場合において、前記センサ部が前記棒状部材の前記径方向への変位を検出しない場合には、前記アクチュエータを逆方向に作動して前記棒状部材を前記孔から引き抜くことにより、前記挿入動作を中断し、前記孔から前記棒状部材の挿入を妨げる障害物を取り除いた後に、前記挿入動作を再開する
請求項6に記載の挿入方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、挿入装置及び、挿入方法に関し、特に、棒状部材を孔に挿入する挿入作業に好適な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トンネルを構築する工法として、トンネル周壁に複数本のロックボルトを打設することにより、周辺地山の安定化を図るNATM(New Austrian Tunneling Method)が広く用いられている。NATMでは、吹付けコンクリートを貫通して地山に到達する孔を削孔し、削孔した孔に充填材の注入及び、ロックボルトの挿入を順不同で行なうことによりロックボルトを施工する。
【0003】
このようなロックボルトの施工に用いられる装置として、例えば、特許文献1には、ガイドセルに沿って移動可能なドリフタに推進力を伝達する駆動機構を備え、駆動機構によりドリフタをガイドセルに沿って前進させることにより、ロックボルトや充填剤の注入ロッドを孔に機械的に挿入するようにした装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-065536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ロックボルトや注入ロッド(以下、単に棒状部材とも称する)を孔に挿入する際に、棒状部材の軸線方向が孔の軸線方向と一致していない場合には、棒状部材の先端が孔の内面に接触することで、棒状部材を孔内の所望位置まで挿入できない場合がある。また、孔内に小石等の障害物が存在する状態で棒状部材を挿入すると、棒状部材の先端が障害物に当接することで、棒状部材を孔内の所望位置まで挿入できない場合がある。このような状態で棒状部材を強引に挿入しようとすると、棒状部材の変形や破損を招くことになる。
【0006】
このため、棒状部材を孔に挿入する際は、事前にカメラ等を孔に挿入して計測を行うことにより、孔の軸線方向や内部の障害物等を把握することが考えられる。しかしながら、事前計測により孔の軸線方向等を把握できたとしても、それらの情報を棒状部材の挿入動作に反映させることは難しい。また、事前計測を行うことは、作業効率や生産性の低下を招く要因ともなる。
【0007】
本開示の技術は、上記事情に鑑みてなされたものであり、棒状部材を孔に挿入する際に、作業効率及び生産性を効果的に向上することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の挿入装置は、
棒状部材を孔に挿入する挿入装置であって、
前記棒状部材の軸線方向と略平行に延びるガイド部材と、
前記ガイド部材に、該ガイド部材の長手方向に沿って移動可能に設けられるとともに、前記棒状部材の基端を支持する移動部材及び、該移動部材に推進力を伝達するアクチュエータを有する推進装置と、
前記ガイド部材の先端側に設けられるとともに、前記棒状部材を挿通させる貫通孔を有しており、該貫通孔に挿通された前記棒状部材を軸線方向に移動可能、且つ、径方向に変位可能に支持する支持部材と、
前記支持部材に設けられており、前記棒状部材の前記貫通孔内における前記径方向への変位を検出可能なセンサ部と、
前記アクチュエータから前記移動部材に推進力を伝達して前記棒状部材を前記孔に挿入する挿入動作中に、前記センサ部により検出される前記棒状部材の前記径方向への変位に基づいて、前記棒状部材の軸線方向に対して前記孔の軸線方向が傾いているかを判定する判定部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本開示の挿入装置の他の態様において、
前記判定部は、
前記挿入動作中に、前記アクチュエータの推進力が増加又は、前記棒状部材の送り出し量が変化しない場合において、前記センサ部が前記棒状部材の前記径方向への変位を検出しない場合には、前記孔内に前記棒状部材の挿入を妨げる障害物があると判定することが好ましい。
【0010】
本開示の挿入装置の他の態様において、
前記センサ部は、
前記貫通孔の内周に周方向に所定ピッチで配置されるとともに、前記棒状部材の前記径方向への変位に伴い荷重を検出する複数のロードセルを含み、
前記判定部は、
前記複数のロードセルのうち、前記荷重を検出したロードセルの前記棒状部材に対する配置方向に基づいて、前記棒状部材の軸線方向に対する前記孔の軸線方向の傾き方向を判定することが好ましい。
【0011】
本開示の挿入装置の他の態様において、
前記ガイド部材の姿勢を調整可能な姿勢調整機構と、
前記アクチュエータの作動及び、前記姿勢調整機構の作動を制御する制御部と、をさらに備え、
前記制御部は、
前記アクチュエータを作動して前記移動部材を前記ガイド部材に沿って移動させることにより、前記棒状部材を前記孔に自動挿入するとともに、該自動挿入中に前記センサ部が前記棒状部材の前記径方向への変位を検出した場合には、前記センサ部が変位を検出しない状態となるように、前記姿勢調整機構の作動を自動制御することが好ましい。
【0012】
本開示の挿入装置の他の態様において、
前記棒状部材が、トンネル周壁に削孔した孔に挿入されるロックボルト、又は、トンネル周壁に削孔した孔に充填剤を注入する注入ロッド、又は、トンネルの切羽に削孔した装薬孔に爆薬を装填する装填ノズルの何れかであってもよい。
【0013】
本開示の挿入方法は、
前記挿入装置を用いて前記棒状部材を前記孔に挿入する挿入方法であって、
前記棒状部材の先端を前記孔の開口と対向させた後、前記アクチュエータを作動して前記移動部材を前記ガイドセルに沿って移動させることにより、前記棒状部材を前記孔に挿入する挿入動作を開始し、該挿入動作中に、前記センサ部が前記棒状部材の前記径方向への変位を検出した場合には、前記センサ部が変位を検出しない状態となるように前記ガイド部材の姿勢を調整し、前記棒状部材の先端が前記孔内の所望位置に到達するまで前記挿入作動を継続することを特徴とする。
【0014】
本開示の挿入方法の他の態様において、
前記挿入動作中に、前記アクチュエータの推進力が増加又は、前記棒状部材の送り出し量が変化しない場合において、前記センサ部が前記棒状部材の前記径方向への変位を検出しない場合には、前記アクチュエータを逆方向に作動して前記棒状部材を前記孔から引き抜くことにより、前記挿入動作を中断し、前記孔から前記棒状部材の挿入を妨げる障害物を取り除いた後に、前記挿入動作を再開することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本開示の挿入装置及び、挿入方法によれば、棒状部材を孔に挿入する際に、作業効率及び生産性を効果的に向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態に係るロックボルト施工装置を示す模式的な側面図である。
図2】本実施形態に係るボルト送り出し装置及び、充填剤注入装置の模式的な全体構成図である。
図3】(A)は、第1センサ部が設けられたボルト支持部をガイドセルの長手方向に切断して示す模式的な断面図であり、(B)は、第1センサ部が設けられたボルト支持部をガイドセルの長手方向と直交する方向に切断して示す模式的な断面図である。
図4】(A)は、第2センサ部が設けられたロッド支持部をガイドセルの長手方向に切断して示す模式的な断面図であり、(B)は、第2センサ部が設けられたロッド支持部をガイドセルの長手方向と直交する方向に切断して示す模式的な断面図である。
図5】本実施形態に係る補正マップの一例を説明する模式図である。
図6】補正処理の対象となるロードセルを説明する模式図である。
図7】本実施形態に係る軸線傾き判定の処理の流れをボルト送り出し装置の動作に基づいて説明する模式図である。
図8】本実施形態に係る軸線傾き判定の処理の流れを説明するタイミングチャートである。
図9】本実施形態に係る軸線傾き判定の処理の流れを説明するタイミングチャートである。
図10】本実施形態に係る軸線傾き判定の処理の流れを説明するタイミングチャートである。
図11】本実施形態に係る軸線傾き判定の処理の流れを説明するタイミングチャートである。
図12】本実施形態に係る軸線傾き判定の処理の流れを説明するタイミングチャートである。
図13】本実施形態に係る軸線傾き判定の処理の流れを説明するタイミングチャートである。
図14】本実施形態に係る軸線傾き判定の処理の流れを説明するタイミングチャートである。
図15】本実施形態に係る軸線傾き判定の処理の流れを説明するタイミングチャートである。
図16】本実施形態に係る障害物判定の処理の流れをボルト送り出し装置の動作に基づいて説明する模式図である。
図17】本実施形態に係る障害物判定の処理の流れを説明するタイミングチャートである。
図18】本実施形態に係る自動挿入制御のルーチンを説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面に基づいて、本実施形態に係る挿入装置及び、挿入方法について説明する。同一の部品には同一の符号を付してあり、それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0018】
[全体構成]
図1は、本実施形態に係るロックボルト施工装置10を示す模式的な側面図である。
【0019】
図1に示すように、ロックボルト施工装置10は、トンネルTの支保構造300の施工に用いられる。本実施形態において、トンネルTは、例えばNATMにより構築される。NATMでは、まず、地山Gを掘削してトンネルTの周壁に吹付けコンクリートCを施工する。次に、ロックボルト施工装置10を用いて、トンネルTの周壁に吹付けコンクリートCを貫通して地山Gに到達する孔301を削孔する(削孔工程)。孔301は、例えば、孔径が約50~60mm、孔深さが約4~6mの長孔である。孔301を削孔したならば、孔301に充填剤302を注入し、孔301内にロックボルト303を挿入する(充填工程、挿入工程)。充填剤は、例えばモルタルである。ロックボルト303を挿入したならば、孔301からトンネルTの坑内に突出するロックボルト303の端部にプレート304を取り付けて、ナット305を螺合することにより支保構造300を構築する。
【0020】
本実施形態において、ロックボルト施工装置10は、例えば、ドリルジャンボ等の作業車両1に搭載されている。作業車両1は、トンネルTの坑内を移動可能な走行台車2と、ロックボルト施工時に走行台車2を支持して安定させる複数のアウトリガ3と、走行台車2の上部に設けられた運転室4と、複数本(図示例では3本)のブーム5,6,7を備えている。
【0021】
各ブーム5,6,7は、走行台車2の前部に旋回可能、且つ、起伏可能に設けられており、不図示のアクチュエータを作動させることにより基端側を支点に旋回・起伏する。また、各ブーム5,6,7は、長手方向に伸縮可能であり、不図示のアクチュエータを作動させることにより長手方向に伸縮する。第1ブーム5の先端部には、ボルト送り出し装置20が旋回可能、且つ、傾動可能に取り付けられている。第2ブーム6の先端部には、充填剤注入装置30が旋回可能、且つ、傾動可能に取り付けられている。ボルト送り出し装置20及び、充填剤注入装置30は、本開示の挿入装置の一例である。第3ブーム7の先端部には、削孔装置40が旋回可能、且つ、傾動可能に取り付けられている。
【0022】
削孔装置40は、直線状のガイドセル41と、ガイドセル41に沿って移動可能な削岩機43と、削岩機43に推進力を伝達する推進装置44と、長尺の削孔ロッド45と、削孔ロッド45の先端に設けられた削孔ビッド46とを備えている。ガイドセル41の先端側には、削孔ロッド45を支持するロッド支持部47(セントラライザ)が設けられている。削岩機43には、削孔ロッド45の基端部が接続されている。削岩機43は、例えば、油圧式のドリフタであって、削孔ロッド45に回転力及び、打撃力を付与する。削孔装置40は、削岩機43により削孔ロッド45を回転させつつ、推進装置44により削岩機43をガイドセル41に沿って前進させることにより、トンネルTの周壁に孔301を削孔する。
【0023】
ボルト送り出し装置20は、主として、ガイドセル21、推進装置22等を備えている。ボルト送り出し装置20は、推進装置22からロックボルト303に推進力を伝達することにより、ロックボルト303を孔301内に挿入する。充填剤注入装置30は、主として、ガイドセル31、推進装置32、注入ロッド34等を備えている。充填剤注入装置30は、削孔装置40により削孔した孔301内に注入ロッド34を挿入し、注入ロッド34の先端から充填剤302を吐出するとともに、注入ロッド34を孔301から引き抜くことにより、孔301内に充填剤302を充填する。
【0024】
以下、図2に基づいて、ボルト送り出し装置20及び、充填剤注入装置30の詳細構成を説明する。なお、以下の説明では、ロックボルト303や注入ロッド34を孔301内に挿入する方向を「前進方向」、注入ロッド34を孔301から引き抜く方向を「後進方向」という。
【0025】
[ボルト送り出し装置、充填剤注入装置]
図2は、本実施形態に係るボルト送り出し装置20及び、充填剤注入装置30の模式的な全体構成図である。
【0026】
ボルト送り出し装置20は、直線状のガイドセル21と、ガイドセル21に沿って移動可能な移動体22Aを有する推進装置22と、ガイドセル21の先端側に設けられたボルト支持部25(セントラライザ)とを備えている。推進装置22は、アクチュエータ23を備えており、アクチュエータ23が作動することにより、移動体22Aをガイドセル21に沿って前進移動又は後進移動させる。アクチュエータ23は、油圧や空圧により作動する流体圧式シリンダでもよく、或いは、油圧モータや電動モータであってもよい。アクチュエータ23の作動は、制御装置100から送信される作動信号に応じて制御される。
【0027】
移動体22Aには、ロックボルト303の基端部を受容して支持する筒状のボルト保持部22Bが設けられている。基端部をボルト保持部22Bに保持されたロックボルト303は、先端側をボルト支持部25によって支持されることにより、軸線方向XAがガイドセル21の長手方向と略平行に保たれるようになっている。ボルト支持部25には、詳細を後述する第1センサ部80が設けられている。ガイドセル21の先端側の端面には、ロックボルト303の挿入時にトンネル内壁面に押し付けられるマーキング28が取り付けられている。
【0028】
ガイドセル21は、連結機構50を介して第1ブーム5の先端に連結されている。連結機構50は、第1旋回装置51、第2旋回装置52及び、傾動装置53を備えている。第1ブーム5、第1旋回装置51、第2旋回装置52、傾動装置53は、本開示の姿勢調整機構を構成する。本開示において、姿勢調整とは、ガイドセル21の長手方向の向き(水平方向又は鉛直方向に対する角度)を調整することにより、ボルト送り出し装置20の姿勢を調整することをいう。
【0029】
第1旋回装置51は、第1ブーム5の先端に設けられている。第1旋回装置51には、連結部材54を介して第2旋回装置52が連結されている。第2旋回装置52は、傾動装置53を介してガイドセル21に連結されている。傾動装置53は、第2旋回装置82に固定された第1ブラケット55と、ガイドセル21に固定された第2ブラケット56とを備えている。第1及び第2ブラケット55,56は、支軸57を介して互いに相対回転可能に連結されている。
【0030】
第1旋回装置51、第2旋回装置52及び、傾動装置53は、制御装置100から送信される作動信号に応じて作動する不図示のアクチュエータをそれぞれ備えている。アクチュエータは、流体圧式又は電動式の何れであってもよい。第1旋回装置51のアクチュエータを作動させると、ボルト送り出し装置20は第1ブーム5の伸縮方向(長手方向)に沿った軸周りに図中矢印R1A方向に旋回する。第2旋回装置52のアクチュエータを作動させると、ボルト送り出し装置20は第1ブーム5の伸縮方向と直交する軸周りに図中矢印R2A方向に旋回する。傾動装置53のアクチュエータを作動させると、ボルト送り出し装置20は支軸57を軸心に図中矢印R3A方向に傾動する。
【0031】
ボルト送り出し装置20を用いてロックボルト303を孔301に挿入する際は、まず、第1ブーム5、第1旋回装置51、第2旋回装置52及び、傾動装置53の少なくも一つを作動させることにより、ロックボルト303の先端を孔301の開口と対向させる(対向動作)。この際、好ましくは、マーキング28をトンネル内壁面に接触させる。次に、アクチュエータ23を作動させて移動体22Aをガイドセル21に沿って前進移動させ、ロックボルト303に推進力を伝達することにより、ロックボルト303を孔301に挿入する(挿入動作)。これら対向動作及び、挿入動作の一連の動作は、制御装置100のROMに格納したプログラムをCPUが実行する自動制御により実現してもよく、或いは、オペレータによる操作装置130の操作に応じて制御装置100から作動信号を送信する手動制御により実現してもよい。
【0032】
充填剤注入装置30は、直線状のガイドセル31と、ガイドセル31に沿って移動可能な移動体32Aを有する推進装置32と、長尺筒状の注入ロッド34と、ガイドセル31の先端側に設けられたロッド支持部35(セントラライザ)とを備えている。推進装置32は、アクチュエータ33を備えており、アクチュエータ33が作動することにより、移動体32Aをガイドセル31に沿って前進移動又は後進移動させる。アクチュエータ33は、油圧や空圧により作動する流体圧式シリンダでもよく、或いは、油圧モータや電動モータであってもよい。アクチュエータ33の作動は、制御装置100から送信される作動信号に応じて制御される。
【0033】
移動体32Aには、不図示の充填剤供給源から充填剤が供給されるジョイント34Aが固定されている。ジョイント34Aには、注入ロッド34の基端が接続されており、ジョイント34Aに供給される充填剤が注入ロッド34内に送り込まれるように構成されている。ジョイント34Aに固定された注入ロッド34は、先端側をロッド支持部35によって支持されることにより、軸線方向XBがガイドセル31の長手方向と略平行に保たれるようになっている。ロッド支持部35には、詳細を後述する第2センサ部90が設けられている。ガイドセル31の先端側の端面には、注入ロッド34の挿入時にトンネル内壁面に押し付けられるマーキング38が取り付けられている。
【0034】
ガイドセル31は、連結機構60を介して第2ブーム6の先端に連結されている。連結機構60は、第1旋回装置61、第2旋回装置62及び、傾動装置63を備えている。第2ブーム6、第1旋回装置61、第2旋回装置62、傾動装置63は、本開示の姿勢調整機構を構成する。本開示において、姿勢調整とは、ガイドセル31の長手方向の向き(水平方向又は鉛直方向に対する角度)を調整することにより、充填剤注入装置30の姿勢を調整することをいう。
【0035】
第1旋回装置61は、第2ブーム6の先端に設けられている。第1旋回装置61には、連結部材64を介して第2旋回装置62が連結されている。第2旋回装置62は、傾動装置63を介してガイドセル31に連結されている。傾動装置63は、第2旋回装置62に固定された第1ブラケット65と、ガイドセル31に固定された第2ブラケット66とを備えている。第1及び第2ブラケット65,66は、支軸67を介して互いに相対回転可能に連結されている。
【0036】
第1旋回装置61、第2旋回装置62及び、傾動装置63は、制御装置100から送信される作動信号に応じて作動する不図示のアクチュエータをそれぞれ備えている。アクチュエータは、流体圧式又は電動式の何れであってもよい。第1旋回装置61のアクチュエータを作動させると、充填剤注入装置30は第2ブーム6の伸縮方向(長手方向)に沿った軸周りに図中矢印R1B方向に旋回する。第2旋回装置62のアクチュエータを作動させると、充填剤注入装置30は第2ブーム6の伸縮方向と直交する軸周りに図中矢印R2B方向に旋回する。傾動装置63のアクチュエータを作動させると、充填剤注入装置30は支軸67を軸心に図中矢印R3B方向に傾動する。
【0037】
充填剤注入装置30を用いて孔301内に充填剤を注入する際は、まず、第2ブーム6、第1旋回装置61、第2旋回装置62及び、傾動装置63の少なくも一つを作動させることにより、注入ロッド34の先端を孔301の開口と対向させる(対向動作)。この際、好ましくは、マーキング38をトンネル内壁面に接触させる。次に、アクチュエータ33を作動させて移動体32Aをガイドセル31に沿って前進移動させ、注入ロッド34に推進力を伝達することにより、注入ロッド34を孔301に挿入する(挿入動作)。注入ロッド34の先端が孔301の底部側に到達したならば、注入ロッド34の先端から充填剤を吐出しつつ、アクチュエータ33を作動させて移動体32Aをガイドセル31に沿って後進移動させることにより、注入ロッド34を孔301から引き抜く(引き抜き動作)。これら対向動作、挿入動作及び、引き抜き動作の一連の動作は、制御装置100のROMに格納したプログラムをCPUが実行する自動制御により実現してもよく、或いは、オペレータによる操作装置130の操作に応じて制御装置100から作動信号を送信する手動制御により実現してもよい。
【0038】
ここで、ロックボルト303や注入ロッド34を、孔301の所望位置、具体的には、ロックボルト303や注入ロッド34の先端が孔301の底部側に到達する位置まで挿入する場合を考える。ロックボルト303や注入ロッド34の先端を孔301の底部側まで確実に挿入するには、挿入動作時に、これらロックボルト303や注入ロッド34の軸線方向XA,XBを孔301の軸線方向XHと略一致させる必要がある。また、孔301の内部に、ロックボルト303や注入ロッド34の前進を妨げる小石等の障害物が無いことも必要となる。
【0039】
孔301の開口は、トンネル坑内から視認できるため、挿入動作の開始前に、ロックボルト303や注入ロッド34の先端が孔301の開口と対向するように、オペレータが手動制御によりボルト送り出し装置20や充填剤注入装置30の姿勢を調整することは容易である。また、自動制御であっても、制御装置100が孔301の開口位置をカメラ等の画像処理により認識しながら、ロックボルト303や注入ロッド34の先端が孔301の開口と対向するように、ボルト送り出し装置20や充填剤注入装置30の姿勢を調整することは容易である。
【0040】
しかしながら、手動制御又は自動制御の何れであっても、孔301の軸線方向XHは、トンネル坑内から把握することができないため、ロックボルト303や注入ロッド34の軸線方向XA,XBが孔301の軸線方向XHと略一致するように、ボルト送り出し装置20や充填剤注入装置30の姿勢を調整することは難しい。
【0041】
このため、ロックボルト303や注入ロッド34を孔301に挿入する際は、事前にカメラ等を孔301内に挿入して計測を行うことにより、孔301の軸線方向XHや内部状況を把握することが考えられる。しかしながら、事前計測によって孔301の軸線方向XHや内部状況を把握できたとしても、それらの情報を挿入動作に反映させることは難しい。また、事前計測を行うことは、作業効率や生産性の低下を招く要因ともなる。
【0042】
そこで、本実施形態では、ボルト送り出し装置20に第1センサ部80、充填剤注入装置30に第2センサ部90をそれぞれ設け、ロックボルト303や注入ロッド34を孔301に挿入する際は、挿入動作と並行してセンサ部80,90により孔301の軸線方向XHや内部状況を把握しつつ、把握した情報を挿入動作に反映させることにより、作業効率及び生産性の向上を図るようにした。以下、第1センサ部80及び、第2センサ部90の詳細を説明する。
【0043】
[第1センサ部、第2センサ部]
図3(A)は、第1センサ部80が設けられたボルト支持部25をガイドセル21の長手方向に切断して示す模式的な断面図であり、図3(B)は、第1センサ部80が設けられたボルト支持部25をガイドセル21の長手方向と直交する方向に切断して示す模式的な断面図である。
【0044】
第1センサ部80は、複数個のロードセル、具体的には4個のロードセル81A,81B,81C,81Dを備えて構成されている。各ロードセル81A,81B,81C,81Dは、ボルト支持部25のロックボルト303を挿通させる貫通孔25Aの内周に周方向に等ピッチ(90度ピッチ)で配置されている。
【0045】
具体的には、ロードセル81Aは、貫通孔25Aの孔中心C1(図3(B)参照)に対してガイドセル21側に配置されている。すなわち、図示例のように、ロックボルト303がガイドセル21に対して鉛直方向上方に位置するように、ボルト送り出し装置20の姿勢が調整されたとき、ロードセル81Aは貫通孔25Aの孔中心C1に対して鉛直方向下方に位置する。このため、以下の説明では、ロードセル81Aを「下側ロードセル」と称する。ロードセル81Bは、貫通孔25Aの孔中心C1を挟んで下側ロードセル81Aと対向配置されている。このため、以下の説明では、ロードセル81Bを「上側ロードセル」と称する。
【0046】
ロードセル81C及び、ロードセル81Dは、貫通孔25Aの孔中心C1(図3(B)参照)を通って各ロードセル81A,81Bを結ぶ直線と直交する直線上に孔中心C1を挟んで互いに対向配置されている。具体的には、ボルト支持部25を移動体22A(図2参照)側から軸方向視したとき、貫通孔25Aの孔中心C1に対して、ロードセル81Cは右側に配置され、ロードセル81Dは左側に配置されている。このため、以下の説明では、ロードセル81Cを「右側ロードセル」、ロードセル81Dを「左側ロードセル」と称する。
【0047】
なお、第1センサ部80が備えるロードセルの個数は4個に限定されず、5個以上(例えば、8個)であってもよい。また、説明の便宜上、以下では、下側ロードセル81A,上側ロードセル81B,右側ロードセル81C,左側ロードセル81Dは、これらを纏めて単に「ロードセル81」と称する場合もある。
【0048】
図4(A)は、第2センサ部90が設けられたロッド支持部35をガイドセル31の長手方向に切断して示す模式的な断面図であり、図4(B)は、第2センサ部90が設けられたロッド支持部35をガイドセル31の長手方向と直交する方向に切断して示す模式的な断面図である。
【0049】
第2センサ部90も第1センサ部80と同様、複数個のロードセル、具体的には4個のロードセル91A,91B,91C,91Dを備えて構成されている。各ロードセル91A,91B,91C,91Dは、ロッド支持部35の注入ロッド34を挿通させる貫通孔35Aの内周に周方向に等ピッチ(90度ピッチ)で配置されている。
【0050】
具体的には、ロードセル91Aは、貫通孔35Aの孔中心C2(図4(B)参照)に対してガイドセル31側に配置されている。すなわち、図示例のように、注入ロッド34がガイドセル31に対して鉛直方向上方に位置するように、充填剤注入装置30の姿勢が調整されたとき、ロードセル91Aは貫通孔35Aの孔中心C2に対して鉛直方向下方に位置する。このため、以下の説明では、ロードセル91Aを「下側ロードセル」と称する。ロードセル91Bは、貫通孔35Aの孔中心C2を挟んで下側ロードセル91Aと対向配置されている。このため、以下の説明では、ロードセル91Bを「上側ロードセル」と称する。
【0051】
ロードセル91C及び、ロードセル91Dは、貫通孔35Aの孔中心C2を通って各ロードセル91A,91Bを結ぶ直線と直交する直線上に孔中心C2を挟んで互いに対向配置されている。具体的には、ロッド支持部35を移動体32A(図2参照)側から軸方向視したとき、貫通孔35Aの孔中心C2に対して、ロードセル91Cは右側に配置され、ロードセル91Dは左側に配置されている。このため、以下の説明では、ロードセル91Cを「右側ロードセル」、ロードセル91Dを「左側ロードセル」と称する。
【0052】
なお、第2センサ部90が備えるロードセルの個数は4個に限定されず、5個以上(例えば、8個)であってもよい。また、説明の便宜上、以下では、下側ロードセル91A,上側ロードセル91B,右側ロードセル91C,左側ロードセル91Dは、これらを纏めて単に「ロードセル91」と称する場合もある。
【0053】
各ロードセル81,91は、貫通孔25A、35A内に配置可能な小型のロードセルであって、例えば、圧縮型のロードセルを用いることができる。ロードセル81,91は、ケース82,92内に、何れも不図示の起歪体及び、該起歪体に貼り付けられたひずみゲージを収容して構成されている。ロードセル81,91は、ケース82,92から突出するロードボタン83,93を備えている。
【0054】
ロードセル81は、ロードボタン83の先端の受圧面がロックボルト303の外周面に当接するように、ボルト支持部25に取り付けられている。すなわち、ロックボルト303が、周方向に等ピッチで配置されたロードセル81のロードボタン83によって、貫通孔25Aの略中心に軸線方向に移動可能、且つ、径方向に変位可能に支持されるように構成されている。ロードセル91は、ロードボタン93の先端の受圧面が注入ロッド34の外周面に当接するように、ロッド支持部35に取り付けられている。すなわち、注入ロッド34が、周方向に等ピッチで配置されたロードセル91のロードボタン93によって、貫通孔35Aの略中心に軸線方向に移動可能、且つ、径方向に変位可能に支持されるように構成されている。
【0055】
各ロードボタン83,93は、弾性変形可能な起歪体に連結されており、このロードボタン83,93に力(荷重)が作用すると起歪体が変形するようになっている。各ロードセル81,91は、起歪体の変形量に比例してひずみゲージの電気抵抗が変化することにより、起歪体の変形量に比例した電気信号を制御装置100に出力する。
【0056】
[制御装置]
再び図2を参照し、制御装置100は、CPUなどの処理部、RAMやROMなどの記憶部、入出力用のインターフェイスI/F、補助記憶装置などを備えており、パーソナルコンピュータやサーバ等の情報処理装置によって構成されている。制御装置100は、ROMに格納されたプログラム又はルーチンをCPUが実行することにより、各種機能を実現するようになっている。このため、制御装置100には、ディスプレイ等の表示装置120、オペレータにより操作される操作装置130が通信可能に接続されている。また、制御装置100には、第1センサ部80、第2センサ部90、ブーム5,6,7のアクチュエータ、旋回装置51,52,61,62のアクチュエータ、傾動装置53,63のアクチュエータ、推進装置22,32のアクチュエータ23,33が通信可能に接続されている。
【0057】
制御装置100、表示装置120及び、操作装置130は、作業車両1の運転室4(何れも図1参照)に設けられてもよく、或いは、トンネル施工現場から離れた管理事務所等の遠隔地に設けることもできる。遠隔地に設ける場合、制御装置100は、センサ部80,90、ブーム5,6,7のアクチュエータ、旋回装置51,52,61,62のアクチュエータ、傾動装置53,63のアクチュエータ、推進装置22,32のアクチュエータ23,33のそれぞれと無線通信可能に接続すればよい。
【0058】
本実施形態において、制御装置100は、ロックボルト303や注入ロッド34の挿入時に、センサ部80,90からの電気信号等に基づいて孔301の軸線方向XHや内部状況を取得しつつ、取得した情報を挿入動作に反映することにより、ロックボルト303や注入ロッド34を孔301に自動的に挿入する自動挿入制御を実行する。以下、自動挿入制御の詳細について説明する。なお、自動挿入制御の処理手順は、ロックボルト303の挿入時及び注入ロッド34の挿入時の何れも同様の処理となるため、以下では、ロックボルト303の挿入時を説明し、注入ロッド34の挿入時については説明を省略する。
【0059】
[自動挿入制御]
制御装置100は、ロックボルト303の先端が孔301の開口と対向すると、アクチュエータ23を作動し、移動体22Aからロックボルト303に推進力を伝達することにより、自動挿入制御を開始する。ロックボルト303の先端を孔301の開口と対向させる位置合わせ制御は、制御装置100による自動制御又は、オペレータによる手動制御の何れであってもよい。自動挿入制御を開始すると、制御装置100は、ロードセル81から入力される電気信号に基づいて、ロックボルト303からロードセル81に作用する荷重FCをリアルタイムに演算する。
【0060】
ここで、ロードセル81に作用する荷重FCを演算する場合、ロックボルト303の下方に位置するロードセル81の演算値は、ロックボルト303の自重の影響を受けることになる。図2に示す例では、ガイドセル21は長手方向が略水平方向に向けられており、且つ、ロックボルト303はガイドセル21の鉛直方向上方に位置している。この場合、下側ロードセル81Aが、ロックボルト303の自重の影響を受けることになる。制御装置100は、荷重FCを演算する際に、ロックボルト303の自重の影響を取り除く補正処理を行う。
【0061】
具体的には、制御装置100のROMには、予め実験やシミュレーションなどを行うことにより作成した、図5に示す補正マップMが格納されている。補正マップMは、例えば、横軸にガイドセル21の水平方向に対する傾斜角θが規定され、縦軸にロードセル81に作用するロックボルト303の自重Wが規定されている。自重Wは、傾斜角θが0度のときに最大とされ、傾斜角θが±90度のときに最小(例えば、0)とされている。ここで、傾斜角θが90度とは、ガイドセル21を水平方向に対して+90度傾動させて、ロックボルト303の先端が基端に対して鉛直方向上方にある状態をいう。また、傾斜角θが-90度とは、ガイドセル21を水平方向に対して-90度傾動させて、ロックボルト303の先端が基端に対して鉛直方向下方にある状態をいう。
【0062】
制御装置100は、自動挿入制御を開始する際に、ガイドセル21の水平方向に対する傾斜角θに基づいて補正マップMを参照することにより、傾斜角θに応じた自重Wを読み取ると共に、読み取った自重Wを下側ロードセル81Aの電気信号に基づいて演算される荷重FCから減算することにより、ロックボルト303の自重の影響を取り除く補正処理を実行する。ガイドセル21の水平方向に対する傾斜角θは、制御装置100から旋回装置51,52や傾動装置53の各アクチュエータに送信される作動信号に基づいて演算してもよく、或いは、ガイドセル21に不図示の傾斜センサ等を設けることにより直接的に取得してもよい。
【0063】
なお、第1旋回装置51の旋回状態によっては、ロックボルト303の下方に位置するロードセル81が下側ロードセル81Aではない場合がある。具体的には、図6(A)に示すように、右側ロードセル81Cがロックボルト303の下方に位置する場合もあれば、図6(B)に示すように、左側ロードセル81Dがロックボルト303の下方に位置する場合もある。
【0064】
制御装置100は、右側ロードセル81Cがロックボルト303の下方に位置する場合には、上述の補正処理を、右側ロードセル81Cの電気信号に基づいて演算される荷重FCに適用する。また、制御装置100は、左側ロードセル81Dがロックボルト303の下方に位置する場合には、上述の補正処理を、左側ロードセル81Dの電気信号に基づいて演算される荷重FCに適用する。ロックボルト303の下方に何れのロードセル81A,81C,81Dが位置するかは、制御装置100から第1旋回装置51のアクチュエータに送信される作動信号に基づいて判別すればよい。
【0065】
制御装置100は、自動挿入制御を開始した時から、ロックボルト303の先端が孔301の底部側に到達するまでの期間に亘って、ロックボルト303からロードセル81に作用する荷重FCを、ロードセル81から送信される電気信号に基づいてリアルタイムに演算する。また、制御装置100は、自動挿入制御の実行中、ロードセル81に作用する荷重FCの変化に基づいて、ロックボルト303の軸線方向XAに対する孔301の軸線方向XHの傾きをリアルタイムに判定する(以下、係る判定を「軸線傾き判定」と称する)。また、制御装置100は、自動挿入制御の実行中、ロードセル81に作用する荷重FCの変化及び、アクチュエータ23の推進力FWの変化に基づいて、孔301内にロックボルト303の前進を妨げる障害物Sがあるかをリアルタイムに判定する(以下、係る判定を「障害物判定」と称する)。さらに、制御装置100は、軸線傾き判定の判定結果及び、又は障害物判定の判定結果をロックボルト303の挿入動作に反映させることにより、ロックボルト303を孔301の底部側まで確実に挿入する。以下、軸線傾き判定及び、障害物判定の具体的な処理を説明する。
【0066】
[軸線傾き判定]
図7は、軸線傾き判定の処理の流れをボルト送り出し装置20の動作に基づいて説明する模式図であり、図8は、軸線傾き判定の処理の流れを説明するタイミングチャートである。なお、図7の左側はボルト送り出し装置20の側面図、右側はボルト支持部25を軸線方向から視た正面図を示している。図8のタイミングチャートにおいて、時刻t0は図7(A)の状態に対応し、時刻t1は図7(B)の状態に対応し、時刻t2は図7(C)の状態に対応し、時刻t3は図7(D)の状態に対応する。
【0067】
図7に示す例では、ボルト送り出し装置20の姿勢は、ガイドセル21の長手方向を略水平方向に向けると共に、ロックボルト303の鉛直方向下方に下側ロードセル81Aが位置するように調整されているものとする。また、推進装置22のアクチュエータ23は、電動モータを用いることもできるが、以下の説明では、油圧や空圧により作動する流体圧式シリンダが用いられるものとする。
【0068】
また、以下では、ロックボルト303の軸線方向XAをX軸、右側ロードセル81Cと左側ロードセル81Dとを結んでX軸と直交する直線方向をY軸、下側ロードセル81Aと上側ロードセル81Bとを結んでX軸及びY軸と直交する直線方向をZ軸と定義する。X軸は、ロックボルト303の前進方向を+X方向とする。Y軸は、軸線方向XAに対して右側ロードセル81C側を+Y方向、左側ロードセル81D側を-Y方向とする。Z軸は、軸線方向XAに対して上側ロードセル81B側を+Z方向、下側ロードセル81D側を-Z方向とする。
【0069】
図7(A)に示すように、ロックボルト303の先端を孔301の開口に対向させてアクチュエータ23を作動すると、移動体22Aがガイドセル21に沿って+X方向に前進移動し、移動体22Aからロックボルト303に推進力FW(図8参照)が伝達されることにより、ロックボルト303の先端側が孔301内に挿入され始める。この際、ロックボルト303の先端側は孔301の内周面に接触していないため、図8に示す時刻t0では、何れのロードセル81A~81Dも荷重FCを検出しない状態にある。
【0070】
図7に示す例では、ロックボルト303は、略水平方向に削孔された孔301に、軸線方向XAが孔301の軸線方向XHに対して斜め上方に傾いた状態で挿入されている。このため、図7(B)に示すように、ロックボルト303が孔301内を+X方向に前進すると、ロックボルト303の先端側は孔301の上側内周面に角度をもって接触することになる。
【0071】
この状態からロックボルト303をさらに前進させると、図7(C)に示すように、ロックボルト303の先端側は孔301の上側内周面に摺接しながら次第に-Z方向(図示例では下方)に押し下げられる。すなわち、ボルト支持部25に支持されているロックボルト303が、貫通孔25A内を下側ロードセル81Aに向けて変位し、下側ロードセル81Aのロードボタン83を押圧することにより、下側ロードセル81Aが荷重FCを検出することになる。この場合、制御装置100は、孔301の軸線方向XHがロックボルト303の軸線方向XAに対して-Z方向(図示例では下方)に傾いていると判定する。
【0072】
より詳しくは、図8に示す時刻t1にて、ロックボルト303の先端側が孔301の上側内周面に接触すると、下側ロードセル81Aにより検出される荷重FCは次第に増加する。また、アクチュエータ23が、油圧や空圧により作動する流体圧式シリンダの場合、アクチュエータ23の推進力FCも、孔301の上側内周面からロックボルト303を介して伝達される抵抗力により次第に増加し始める。時刻t1から増加し始めた荷重FCが、時刻t2にて所定の判定閾値FCに達すると、制御装置100は、ロックボルト303の軸線方向XAに対して孔301の軸線方向XHが-Z方向(下方)に傾いていると判定する。
【0073】
軸線方向XHが軸線方向XAに対して-Z方向に傾いていると判定すると、制御装置100は、旋回装置51,52や傾動装置53の作動を制御し、図7(D)に示すように、ロックボルト303の軸線方向XAが孔301の軸線方向XHと略一致するように、ボルト送り出し装置20の姿勢を調整する。具体的には、図8の時刻t3に示すように、制御装置100は、全てのロードセル81A~81Dが荷重FCを検出しない状態となるように、旋回装置51,52や傾動装置53の作動を制御する。ボルト送り出し装置20の姿勢を調整したならば、制御装置100は、ロックボルト303をさらに+X方向に前進させ、ロックボルト303の先端が孔301の底部側に到達すると自動挿入制御を終了する。
【0074】
このように、ロックボルト303の挿入動作と並行して軸線傾き判定を行うと共に、軸線傾き判定の判定結果に基づいてボルト送り出し装置20の姿勢を適宜に調整することにより、ロックボルト303を変形又は破損させることなく、孔301の底部側まで確実に挿入できるようになる。また、事前に孔301の軸線方向XHを計測する必要がないため、作業効率や生産性を確実に向上することが可能になる。
【0075】
なお、図7,8では、孔301の軸線方向XHがロックボルト303の軸線方向XAに対して-Z方向に傾いている場合を一例に説明したが、当然ながら、他の方向に傾いている場合も判定可能である。
【0076】
例えば、図9に示すように、各ロードセル81A~81Dのうち、上側ロードセル81Bのみが荷重FCを検出した場合、制御装置100は、ロックボルト303の軸線方向XAに対して孔301の軸線方向XHが+Z方向(ガイドセル21が水平方向に向いている場合は上方)に傾いていると判定する。図10に示すように、各ロードセル81A~81Dのうち、右側ロードセル81Cのみが荷重FCを検出した場合、制御装置100は、ロックボルト303の軸線方向XAに対して孔301の軸線方向XHが+Y方向(ガイドセル21が水平方向に向いている場合は右方)に傾いていると判定する。図11に示すように、各ロードセル81A~81Dのうち、左側ロードセル81Dのみが荷重FCを検出した場合、制御装置100は、ロックボルト303の軸線方向XAに対して孔301の軸線方向XHが-Y方向(ガイドセル21が水平方向に向いている場合は左方)に傾いていると判定する。
【0077】
図12に示すように、各ロードセル81A~81Dのうち、下側ロードセル81A及び右側ロードセル81Cが荷重FCを検出し、上側ロードセル81B及び左側ロードセル81Dが荷重FCを検出しない場合、制御装置100は、ロックボルト303の軸線方向XAに対して孔301の軸線方向XHが+Y-Z方向(ガイドセル21が水平方向に向いている場合は右斜め下方)に傾いていると判定する。図13に示すように、各ロードセル81A~81Dのうち、下側ロードセル81A及び左側ロードセル81Dが荷重FCを検出し、上側ロードセル81B及び右側ロードセル81Cが荷重FCを検出しない場合、制御装置100は、ロックボルト303の軸線方向XAに対して孔301の軸線方向XHが-Y-Z方向(ガイドセル21が水平方向に向いている場合は左斜め下方)に傾いていると判定する。
【0078】
図14に示すように、各ロードセル81A~81Dのうち、上側ロードセル81B及び右側ロードセル81Cが荷重FCを検出し、下側ロードセル81A及び左側ロードセル81Dが荷重FCを検出しない場合、制御装置100は、ロックボルト303の軸線方向XAに対して孔301の軸線方向XHが+Y+Z方向(ガイドセル21が水平方向に向いている場合は右斜め上方)に傾いていると判定する。図15に示すように、各ロードセル81A~81Dのうち、上側ロードセル81B及び左側ロードセル81Dが荷重FCを検出し、下側ロードセル81A及び右側ロードセル81Cが荷重FCを検出しない場合、制御装置100は、ロックボルト303の軸線方向XAに対して孔301の軸線方向XHが-Y+Z方向(ガイドセル21が水平方向に向いている場合は左斜め下方)に傾いていると判定する。
【0079】
[障害物判定]
図16は、障害物判定の処理の流れをボルト送り出し装置20の動作に基づいて説明する模式図であり、図17は、障害物判定の処理の流れを説明するタイミングチャートである。なお、図16の左側はボルト送り出し装置20の側面図、右側はボルト支持部25を軸線方向から視た正面図を示している。図17のタイミングチャートにおいて、時刻t0は図16(A)の状態に対応し、時刻t1は図16(B)の状態に対応し、時刻t4~t5は図16(C)の状態に対応する。
【0080】
図16において、孔301内の障害物Sは、崩落等で生じた小石を示しているが、障害物Sには、削孔時に何らかの要因で十分な削岩ができずに、孔径が他の部分よりも極端に小さくなっている箇所なども含まれる。また、ロックボルト303の軸線方向XAは、孔301の軸線方向XHと略一致しているものとする。また、推進装置22のアクチュエータ23は、電動モータを用いることもできるが、以下の説明では、油圧や空圧により作動する流体圧式シリンダが用いられるものとする。
【0081】
図16(A)に示すように、ロックボルト303の先端を孔301の開口に対向させてアクチュエータ23を作動すると、移動体22Aがガイドセル21に沿って前進移動し、移動体22Aからロックボルト303に推進力FWが伝達されることにより、ロックボルト303の先端側が孔301内に挿入され始める。この際、ロックボルト303の先端は孔301内の障害物Sに接触していないため、図8に示す時刻t0では、アクチュエータ23の推進力FWは変化しない。また、何れのロードセル81A~81Dも荷重FCを検出しない状態にある。
【0082】
図16(B)に示すように、ロックボルト303の先端が障害物Sに当接すると、ロックボルト303の前進が妨げられるようになる。ロックボルト303の前進が妨げられると、アクチュエータ23の推進力FCは、障害物Sからロックボルト303及び移動体22Aを介して伝達される抵抗力により、次第に増加し始める。具体的には、図17の時刻t0~t1の期間に亘って略一定であった推進力FCが、時刻t1から次第に増加するようになる。
【0083】
制御装置100は、時刻t1から増加し始めた推進力FCが、時刻t2にて所定の判定閾値FWに到達し、且つ、何れのロードセル81A~81Dも荷重FCを検出しない場合には、孔301内にロックボルト303の前進を妨げる障害物Sがあると判定する。この際、制御装置100は、好ましくは、その時のロックボルト303の送り出し量L(図16参照)を記憶する。送り出し量Lは、例えば、アクチュエータ23のストローク量から取得すればよい。送り出し量Lを記憶することにより、障害物Sが孔301のどの位置に存在するかを容易に把握できるようになり、後述する自動挿入制御の中断期間(時刻t4~t5)に孔301内から障害物Sを取り除く際の作業効率を向上することができる。
【0084】
孔301内に障害物Sがあると判定すると、制御装置100は、アクチュエータ23により移動体22Aを後進させ、ロックボルト303を孔301から引き抜くことにより、自動挿入制御を中断する。時刻t4~t5の中断期間に、孔301内から障害物Sが取り除かれると、制御装置100は、図16(D)に示すように、ロックボルト303を孔301に再度挿入することにより自動挿入制御を再開する。ロックボルト303の先端が孔301の底部側に到達すると、制御装置100は自動挿入制御を終了する。
【0085】
このように、ロックボルト303の挿入動作と並行して障害物判定を行うと共に、孔301内に障害物Sがあると判定した場合には、自動挿入制御を中断して障害物Sを取り除いた後に、自動挿入制御を再開することにより、ロックボルト303を変形又は破損させることなく、孔301の所望位置まで確実に挿入できるようになる。
【0086】
なお、障害物判定は、アクチュエータ23の推進力FCに基づいて判定するものとして説明したが、アクチュエータ23のストローク量に基づいて判定してもよい。この場合、ストローク量が所定期間、所定量以上変化しない場合に障害物Sがあると判定すればよい。また、アクチュエータ23が電動モータの場合は、エンコーダ等によりロックボルト303の送り出し量を取得し、送り出し量が所定期間、所定量以上変化しない場合に障害物Sがあると判定すればよい。
【0087】
次に、図18のフローチャートに基づいて、制御装置100のCPUが実行する自動挿入制御のルーチンを説明する。なお、自動挿入制御のルーチンは、ロックボルト303を挿入する場合も注入ロッド34を挿入する場合も同様の内容となるため、以下ではロックボルト303の挿入を一例に説明する。本ルーチンは、ロックボルト303の先端が孔301の開口と対向すると開始する。
【0088】
ステップS100では、制御装置100は、アクチュエータ23を作動させ、移動体22Aをガイドセル21に沿って前進させることにより、ロックボルト303の孔301への挿入動作を開始する。
【0089】
ステップS110では、制御装置100は、ロードセル81A~81Dが荷重FCを検出したか否かを判定する。各ロードセル81A~81Dのうち、少なくとも一つのロードセル81が荷重FCを検知した場合(Yes)、制御装置100は、その処理をステップS120に進める。一方、全てのロードセル81A~81Dが荷重FCを検出しない場合(No)、制御装置100は、その処理をステップS200に進める。
【0090】
ステップS120では、制御装置100は、ロードセル81により検出される荷重FCが所定の判定閾値に達したか否かを判定する。荷重FCが判定閾値に達した場合(Yes)、制御装置100は、その処理をステップS130に進める。一方、荷重FCが判定閾値FCに達していない場合(No)、制御装置100は、その処理をステップS110に戻す。
【0091】
ステップS130では、制御装置100は、ロックボルト303の軸線方向XAに対して孔301の軸線方向XHが傾いている方向を特定する軸線傾き判定を実行する。次いで、ステップS140では、制御装置100は、ステップS130の判定結果に基づいて、ロックボルト303の軸線方向XAが孔301の軸線方向XHと略一致するように、ボルト送り出し装置20の姿勢を調整する。
【0092】
ステップS150では、全てのロードセル81A~81Dが荷重FCを検出しない状態になったか否かを判定する。全てのロードセル81A~81Dが荷重FCを検出しない場合(Yes)、制御装置100は、その処理をステップS160に進める。一方、全てのロードセル81A~81Dのうち、少なくとも一つが荷重FCを検出する場合(No)、制御装置100は、その処理をステップS140に戻す。
【0093】
ステップS160では、制御装置100は、アクチュエータ23の作動を継続し、ロックボルト303をさらに前進させる。ステップS170では、制御装置100は、ロックボルト303の先端が孔301の底部側に到達したか否かを判定する。到達したか否かは、アクチュエータ23が流体圧式シリンダであれば、ピストンのストローク量に基づいて判定すればよく、アクチュエータ23が電動モータであれば、エンコーダにより取得されるロックボルト303の送り出し量に基づいて判定すればよい。ロックボルト303の先端が孔301の底部側に到達した場合(Yes)、制御装置100は本ルーチンを終了する。一方、ロックボルト303の先端が孔301の底部側に到達していない場合(No)、制御装置100はその処理をステップS110に戻す。
【0094】
ステップS110からステップS200に進むと、制御装置100は、アクチュエータ23の推進力FWが増加したか否かを判定する。アクチュエータ23の推進力FWが増加した場合(Yes)、制御装置100は、その処理をステップS210に進める。一方、アクチュエータ23の推進力FWが増加していない場合(No)、すなわち、推進力FWが略一定の場合、制御装置100は、その処理をステップS160に進める。
【0095】
ステップS210では、制御装置100は、アクチュエータ23の推進力FWが所定の判定閾値に達したか否かを判定する。推進力FWが判定閾値に達した場合(Yes)、制御装置100は、その処理をステップS220に進める。一方、推進力FWが判定閾値FWに達していない場合(No)、制御装置100は、その処理をステップS200に戻す。
【0096】
ステップS220では、制御装置100は、孔301内にロックボルト303の挿入を妨げる障害物Sがあると判定する障害物判定を実行する。次いで、ステップS230では、制御装置100は、アクチュエータ23により推進装置22を後進させ、ロックボルト303を孔301から引き抜くことにより、自動挿入制御を中断し、本ルーチンを一旦終了する。自動挿入制御の中断期間中に、孔301から障害物Sが取り除かれると、制御装置100は、本ルーチンをステップS100から再度開始することにより、自動挿入制御を再開する。
【0097】
以上詳述した本実施形態によれば、ロックボルト303や注入ロッド34は、ガイドセル21,31の先端側に設けられた支持部25,35の貫通孔25A,35A内に、軸線方向に移動可能、且つ、径方向に変位可能に支持される。貫通孔25A,35Aには、ロックボルト30や注入ロッド34の径方向への変位に伴い荷重FCを検出する複数のロードセル81,91が設けられており、挿入動作中にロードセル81,91が荷重FCを検出することにより、孔301の軸線方向XHを把握できるように構成されている。また、ロードセル81,91により検出される荷重FCの変化、及び、アクチュエータ23,33の推進力FWの変化に基づいて、孔301内にロックボルト303や注入ロッド34の前進を妨げる障害物Sが存在するかを把握できるように構成されている。
【0098】
これにより、事前に孔301内の計測を行うことなく、挿入動作と並行しながら孔301の軸線方向XHや障害物S等の内部状況を把握しつつ、それらの情報を挿入動作に反映させることが可能となり、作業効率及び生産性を確実に向上することができる。また、ロックボルト303や注入ロッド34を変形させたり、破損させたりすることなく、孔301内の所望位置まで確実に挿入することも可能になる。
【0099】
[その他]
なお、本開示は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変形して実施することが可能である。
【0100】
例えば、上記実施形態において、ロックボルト303や注入ロッド34の挿入時に、ボルト送り出し装置20や充填剤注入装置30の姿勢は、制御装置100によって自動的に調整されるものとして説明したが、軸線傾き判定や障害物判定の判定結果を表示装置120に表示し、オペレータが表示装置120を確認しながら操作装置130を操作する手動制御により調整するようにしてもよい。
【0101】
また、上記実施形態において、ボルト送り出し装置20や充填剤注入装置30は、作業車両1のブーム5,6の先端に取り付けられており、姿勢調整や位置調整は機械的に行われるものとして説明したが、これらボルト送り出し装置20や充填剤注入装置30の姿勢調整及び、位置調整を作業員の人力により行うようにしてもよい。この場合、作業員は、表示装置120に表示される軸線傾き判定や障害物判定の結果を確認しながら挿入作業を行えばよい。
【0102】
また、上記実施形態において、センサ部80,90は、ロードセル81,91を用いるものとして説明したが、ロックボルト303や注入ロッド34の貫通孔25A,35A内における径方向への変位を検出可能なセンサであれば、電気抵抗式ひずみゲージ、光ファイバ式ひずみゲージ、レーザ変位センサ等を用いることも可能である。
【0103】
また、本開示の技術は、切羽に削孔した装薬孔に爆薬を装填する装填ノズル、法面等に打ち込まれるアンカーボルトなど、ロックボルト303や注入ロッド34以外の他の棒状部材を孔に挿入する場合にも広く適用することが可能である。
【符号の説明】
【0104】
1…作業車両,5…第1ブーム,6…第2ブーム,10…ロックボルト施工装置,20…ボルト送り出し装置,21…ガイドセル,22…推進装置,22A…移動部材,23…アクチュエータ,25…ボルト支持部,25A…貫通孔,30…充填剤注入装置,31…ガイドセル,32…推進装置,32A…移動部材,33…アクチュエータ,34…注入ロッド,35…ロッド支持部,35A…貫通孔,50…連結機構,51…第1旋回装置,52…第2旋回装置,53…傾動装置,60…連結機構,61…第1旋回装置,62…第2旋回装置,63…傾動装置,80…第1センサ部,81…ロードセル,90…第2センサ部,91…ロードセル,100…制御装置,120…表示装置,130…操作装置,300…支保構造,301…孔,302…充填剤,303…ロックボルト
図1
図2
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図4
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