(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023076042
(43)【公開日】2023-06-01
(54)【発明の名称】リニアモータ用のモータドライバ回路、それを用いた位置決め装置、ハードディスク装置
(51)【国際特許分類】
H02P 25/034 20160101AFI20230525BHJP
【FI】
H02P25/034
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021189195
(22)【出願日】2021-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【弁理士】
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】杉江 尚
【テーマコード(参考)】
5H540
【Fターム(参考)】
5H540AA07
5H540BA06
5H540EE02
5H540EE05
5H540EE06
5H540EE09
5H540FA16
5H540FC02
5H540FC03
(57)【要約】
【課題】逆起電力の検出精度の改善にある。
【解決手段】電流検出回路210は、駆動対象のモータ102の駆動電流I
DRVに応じた電流検出信号V
CSを生成する。逆起電力検出回路220は、検出期間において、電流検出信号V
CSとモータ102の両端間電圧V
Mとにもとづいてモータ102の逆起電力を示す逆起電力検出信号V
BEMFを生成する。コントローラ230は、駆動期間において、電流検出信号V
CSが逆起電力検出信号V
BEMFにもとづく電流指令に近づくように、電圧指令V
CTRLをフィードバックにより生成し、検出期間において、電圧指令V
CTRLを固定する。モータドライバ回路200は、駆動期間と検出期間を時分割で繰り返す。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動対象のモータの駆動電流に応じた電流検出信号を生成する電流検出回路と、
検出期間において、前記電流検出信号と前記モータの両端間電圧とにもとづいて前記モータの逆起電力を示す逆起電力検出信号を生成する逆起電力検出回路と、
駆動期間において、前記電流検出信号が前記逆起電力検出信号にもとづく電流指令に近づくように、電圧指令をフィードバックにより生成し、前記検出期間において、前記電圧指令を固定するコントローラと、
前記電圧指令にもとづいた駆動信号を生成する出力段と、
を備え、
前記駆動期間と前記検出期間を時分割で繰り返す、モータドライバ回路。
【請求項2】
前記コントローラは、前記駆動期間から前記検出期間に切りかえる直前の前記電圧指令をラッチする、請求項1に記載のモータドライバ回路。
【請求項3】
前記逆起電力検出信号を上位コントローラに供給するとともに、前記上位コントローラが前記逆起電力検出信号にもとづいて生成した前記電流指令を受信するインタフェース回路をさらに備える、請求項1または2に記載のモータドライバ回路。
【請求項4】
前記電流検出信号と前記電流指令の誤差にもとづくアナログ誤差信号を受け、第1カットオフ周波数を有する第1ローパスフィルタと、
前記第1ローパスフィルタの出力をデジタル誤差信号に変換する第1A/Dコンバータと、
前記逆起電力検出信号を受け、前記第1カットオフ周波数より高い第2カットオフ周波数を有する第2ローパスフィルタと、
前記第2ローパスフィルタの出力をデジタル信号に変換する第2A/Dコンバータと、
をさらに備え、
前記駆動期間において、前記コントローラは、前記第1A/Dコンバータの出力にもとづいて前記電圧指令を生成し、
前記検出期間において得られた前記第2A/Dコンバータの出力にもとづいて、前記電流指令が生成される、請求項1から3のいずれかに記載のモータドライバ回路。
【請求項5】
前記第1ローパスフィルタと前記第2ローパスフィルタは、前記第1カットオフ周波数と前記第2カットオフ周波数が切りかえ可能であり、時分割で共有される同一のローパスフィルタであり、
前記第1A/Dコンバータと前記第2A/Dコンバータは、時分割で共有される同一のA/Dコンバータである、請求項4に記載のモータドライバ回路。
【請求項6】
前記逆起電力検出回路は、
前記電流検出信号を増幅する第1アンプと、
前記モータの両端間の電圧に、1より小さいゲインを乗算して出力する第2アンプと、
前記第1アンプの出力と前記第2アンプの出力の差分に応じた逆起電力検出信号を生成する第3アンプと、
を含む、請求項4または5に記載のモータドライバ回路。
【請求項7】
前記電流検出信号と前記電流指令の誤差を増幅し、前記アナログ誤差信号を生成する第4アンプをさらに備える、請求項6に記載のモータドライバ回路。
【請求項8】
前記第1アンプと前記第4アンプは、時分割で共有される同一のアンプである、請求項7に記載のモータドライバ回路。
【請求項9】
前記モータはリニアモータである、請求項1から8のいずれかに記載のモータドライバ回路。
【請求項10】
前記リニアモータは、ボイスコイルモータである、請求項9に記載のモータドライバ回路。
【請求項11】
ひとつの半導体基板に一体集積化される、請求項1から10のいずれかに記載のモータドライバ回路。
【請求項12】
リニアモータと、
前記リニアモータを駆動する請求項1から11のいずれかに記載のモータドライバ回路と、
を備える、位置決め装置。
【請求項13】
請求項12に記載の位置決め装置を備える、ハードディスク装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リニアモータのドライバ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
さまざまな電子機器や産業機械に、対象物を位置決めするリニアモータ(リニアアクチュエータ)が使用される。ボイスコイルモータは、リニアモータのひとつであり、供給される駆動電流に応じて、可動子の位置を制御可能である。ボイスコイルモータの駆動回路は、ボイスコイルモータに流れる電流を、目標位置を規定する目標電流に近づくようにフィードバック制御する。
【0003】
ハードディスクのヘッドを位置決めするアクチュエータドライバでは、電流を目標値に安定化させる定電流制御と、逆起電力を目標値に安定化させる制御が切りかえ可能となっている。特許文献1には、モータの両端間電圧から、モータの電流に比例した電圧を減算することにより、逆起電力を検出する回路が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、特許文献1に記載の技術について検討した結果、以下の課題を認識するに至った。特許文献1の技術では、逆起電力の検出中も、フィードバックループが有効となっている。このフィードバックループが有効の期間は、モータドライバ回路の出力電圧、つまりモータの両端間電圧に含まれるノイズが大きい。したがって、逆起電力の検出の精度が低下するという問題があった。
【0006】
本開示は係る課題に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、逆起電力の検出精度の改善にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のある態様のモータドライバ回路は、駆動対象のモータの駆動電流に応じた電流検出信号を生成する電流検出回路と、検出期間において、電流検出信号とモータの両端間電圧とにもとづいてモータの逆起電力を示す逆起電力検出信号を生成する逆起電力検出回路と、駆動期間において、電流検出信号が逆起電力検出信号にもとづく電流指令に近づくように、電圧指令をフィードバックにより生成し、検出期間において、電圧指令を固定するコントローラと、電圧指令にもとづいた駆動信号を生成する出力段と、を備える。モータドライバ回路は、駆動期間と検出期間を時分割で繰り返す。
【0008】
なお、以上の構成要素を任意に組み合わせたもの、構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明あるいは本開示の態様として有効である。さらに、この項目(課題を解決するための手段)の記載は、本発明の欠くべからざるすべての特徴を説明するものではなく、したがって、記載されるこれらの特徴のサブコンビネーションも、本発明たり得る。
【発明の効果】
【0009】
本開示のある態様によれば、逆起電力の検出精度を改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態に係るモータドライバ回路を備える位置決め装置のブロック図である。
【
図3】
図3は、
図1のモータドライバ回路の速度制御モードの動作を説明する図である。
【
図4】
図4は、一実施例に係るモータドライバ回路の回路図である。
【
図5】
図5は、
図4のモータドライバ回路の一部の構成例を示す回路図である。
【
図6】
図6は、実施例1に係る逆起電力検出回路のブロック図である。
【
図7】
図7は、実施例2に係る逆起電力検出回路のブロック図である。
【
図8】
図8は、
図5の逆起電力検出回路の構成例を示す回路図である。
【
図9】
図9は、
図4のモータドライバ回路のノイズ特性を示す図である。
【
図10】
図10は、モータドライバ回路を備えるハードディスク装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施形態の概要)
本開示のいくつかの例示的な実施形態の概要を説明する。この概要は、後述する詳細な説明の前置きとして、実施形態の基本的な理解を目的として、1つまたは複数の実施形態のいくつかの概念を簡略化して説明するものであり、発明あるいは開示の広さを限定するものではない。この概要は、考えられるすべての実施形態の包括的な概要ではなく、すべての実施形態の重要な要素を特定することも、一部またはすべての態様の範囲を線引きすることも意図していない。便宜上、「一実施形態」は、本明細書に開示するひとつの実施形態(実施例や変形例)または複数の実施形態(実施例や変形例)を指すものとして用いる場合がある。
【0012】
一実施形態に係るモータドライバ回路は、駆動対象のモータの駆動電流に応じた電流検出信号を生成する電流検出回路と、検出期間において電流検出信号とモータの両端間電圧とにもとづいてモータの逆起電力を示す逆起電力検出信号を生成する逆起電力検出回路と、駆動期間において、電流検出信号が逆起電力検出信号にもとづく電流指令に近づくように、電圧指令をフィードバックにより生成し、検出期間において、電圧指令を固定するコントローラと、電圧指令にもとづいた駆動信号を生成する出力段と、を備える。コントローラは、駆動期間と検出期間を時分割で繰り返す。
【0013】
この構成によると、逆起電力の検出期間において、フィードバックが停止し、定電圧駆動となる。そのため、モータの両端間電圧に含まれるノイズが減少するため、逆起電力の検出精度を高めることができる。
【0014】
一実施形態において、コントローラは、駆動期間から検出期間に切りかえる直前の電圧指令をラッチしてもよい。これにより、フィードバックループを遮断することの影響を最低限に抑えることができる。
【0015】
一実施形態において、モータドライバ回路は、逆起電力検出信号を上位コントローラに供給するとともに、上位コントローラが逆起電力検出信号にもとづいて生成した電流指令を受信するインタフェース回路をさらに備えてもよい。
【0016】
一実施形態において、モータドライバ回路は、電流検出信号と電流指令の誤差にもとづくアナログ誤差信号を受け、第1カットオフ周波数を有する第1ローパスフィルタと、第1ローパスフィルタの出力をデジタル誤差信号に変換する第1A/Dコンバータと、逆起電力検出信号を受け、第1カットオフ周波数より高い第2カットオフ周波数を有する第2ローパスフィルタと、第2ローパスフィルタの出力をデジタル信号に変換する第2A/Dコンバータと、をさらに備えてもよい。駆動期間において、コントローラは、第1A/Dコンバータの出力にもとづいて電圧指令を生成し、検出期間において得られた第2A/Dコンバータの出力にもとづいて、電流指令が生成されてもよい。これにより、電流検出信号と、逆起電力検出信号を、異なるサンプリングレートでデジタル信号に変換することができる。
【0017】
一実施形態において、第1ローパスフィルタと第2ローパスフィルタは、第1カットオフ周波数と第2カットオフ周波数が切りかえ可能であり、時分割で共有される同一のローパスフィルタであり、第1A/Dコンバータと第2A/Dコンバータは、時分割で共有される同一のA/Dコンバータであってもよい。これにより回路面積の増加を抑制できる。
【0018】
一実施形態において、逆起電力検出回路は、電流検出信号を増幅する第1アンプと、モータの両端間の電圧に、1より小さいゲインを乗算して出力する第2アンプと、第1アンプの出力と第2アンプの出力の差分に応じた逆起電力検出信号を生成する第3アンプと、を含んでもよい。モータの両端には、電源電圧付近の大きな電圧が発生しうる。この大きな電圧を、減算アンプに入力すると、減算アンプを高耐圧素子で構成する必要がある。上記構成では、第2アンプを設けて、モータの両端間電圧に含まれるDCバイアスを圧縮することにより、減算アンプである第3アンプに入力される電圧を小さくできる。これにより、第3アンプを低耐圧素子で構成することが可能となり逆起電力検出回路の面積を小型化できる。
【0019】
一実施形態において、モータドライバ回路は、電流検出信号と電流指令の誤差を増幅し、アナログ誤差信号を生成する第4アンプをさらに備えてもよい。
【0020】
一実施形態において、第1アンプと第4アンプは、時分割で共有される同一のアンプであってもよい。これにより回路面積の増加を抑制できる。
【0021】
一実施形態において、モータはリニアモータであってもよい。
【0022】
一実施形態において、リニアモータは、ボイスコイルモータであってもよい。
【0023】
一実施形態において、モータドライバ回路は、ひとつの半導体基板に一体集積化されてもよい。「一体集積化」とは、回路の構成要素のすべてが半導体基板上に形成される場合や、回路の主要構成要素が集積化される場合が含まれ、回路定数の調節用に一部の抵抗やキャパシタなどが半導体基板の外部に設けられていてもよい。回路を1つのチップ上に集積化することにより、回路面積を削減することができるとともに、回路素子の特性を均一に保つことができる。
【0024】
一実施形態に係る位置決め装置は、リニアモータと、リニアモータを駆動する上述のいずれかのモータドライバ回路と、を備える。
【0025】
一実施形態に係るハードディスク装置は、上述の位置決め装置を備える。
【0026】
(実施形態)
以下、好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施形態は、開示および発明を限定するものではなく例示であって、実施形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも開示および発明の本質的なものであるとは限らない。
【0027】
本明細書において、「部材Aが、部材Bに接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合や、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0028】
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0029】
また本明細書に示される波形図やタイムチャートの縦軸および横軸は、理解を容易とするために適宜拡大、縮小したものであり、また示される各波形も、理解の容易のために簡略化されている。
【0030】
図1は、実施形態に係るモータドライバ回路200を備える位置決め装置100のブロック図である。位置決め装置100は、モータ102、上位コントローラ104およびモータドライバ回路200を備える。本実施形態においてモータ102はリニアモータである。
【0031】
上位コントローラ104は、位置決め装置100を統合的に制御する。上位コントローラ104はたとえば、マイクロコントローラ、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)で構成される。
【0032】
モータドライバ回路200は、上位コントローラ104からの制御指令を受け、制御指令に応じた量の駆動電流IDRVをモータ102に供給する。モータ102はたとえばボイスコイルモータであり、その可動子は、モータ102に流れる駆動電流IDRVに応じた量だけ変位する。
【0033】
続いてモータドライバ回路200の構成を説明する。
【0034】
モータドライバ回路200は、電流検出回路210、逆起電力検出回路220、フィードバックコントローラ230、出力段240、内部ロジック250、インタフェース回路260を備える。
【0035】
電流検出回路210は、駆動対象のモータ102に流れる駆動電流IDRVに応じた電流検出信号VCSを生成する。
【0036】
逆起電力検出回路220は、電流検出信号VCSとモータ102の両端間電圧VMとにもとづいて、モータ102の逆起電力(BEMF:Back ElectroMotive Force)を示す逆起電力検出信号VBEMFを生成する。逆起電力は、モータ102の速度に比例する。
【0037】
モータドライバ回路200は、位置制御モードと、速度制御モードの2つのモードで動作可能である。
【0038】
内部ロジック250は、電流指令VREFを出力する。位置制御モードでは、電流指令VREFは、モータ102の目標位置に対して線形に変化する。速度制御モードでは、電流指令VREFは、逆起電力検出信号VBEMFが、速度指令に近づくように生成される。
【0039】
インタフェース回路260は、上位コントローラ104と通信可能である。インタフェース回路260は、位置制御モードにおける電流指令VREFを指示する情報を上位コントローラ104から受信してもよい。
【0040】
速度制御モードにおける電流指令VREFの計算は、内部ロジック250において行ってもよい。あるいはインタフェース回路260を利用して逆起電力の情報を、上位コントローラ104に送信し、上位コントローラ104が、逆起電力が速度指令に近づくように電流指令を指示する情報を生成し、内部ロジック250に送り返してもよい。
【0041】
フィードバックコントローラ230は、位置制御モードおよび速度制御モードにおいて、電流検出信号VCSが電流指令VREFに近づくように、電圧指令VCTRLを生成する。
【0042】
出力段240は、電圧指令VCTRLに応じた駆動信号を生成し、モータ102に供給する。たとえば出力段240は、電圧指令VCTRLをゲイン倍した電圧信号をモータ102に印加する。
【0043】
続いて、速度制御モードについて詳しく説明する。上述のように、速度制御モードでは、モータ102の速度を示す逆起電力に関する情報を検出する必要がある。そこで、逆起電力検出回路220における逆起電力の検出について説明する。
【0044】
図2は、モータ102の等価回路図である。モータ102は、コイルのインダクタンスLと、直流抵抗rおよび電圧源103で表される。電圧源103は、モータ102の回転数に比例した逆起電力eを発生する。
【0045】
モータ102に一定の駆動電流IDRVが流れていると仮定できるとき、インダクタンスLの電圧(起電力)はゼロであり、抵抗rの電圧降下はr×IDRVである。したがって、モータ102の両端間電圧VMは、
VM=IDRV×r-e
で表される。
【0046】
逆起電力検出回路220は、電流検出信号VCSに適切な係数を乗算することにより、IDRV×rに相当する電圧Vrを生成する。そして、モータ102の両端間電圧VMから、電圧Vrを減算することにより、逆起電力eを示す逆起電力検出信号VBEMFを生成する。
【0047】
図1に戻る。速度制御モードにおいて、モータドライバ回路200は、駆動期間φ
1と検出期間φ
2を時分割で交互に繰り返す。検出期間φ
2は、逆起電力検出回路220により逆起電力eを検出する期間である。この検出期間φ
2において得られた逆起電力eにもとづいて、次の駆動期間φ
1における電流指令V
REFが生成される。
【0048】
上述のように、逆起電力検出回路220は、検出期間φ2において、電流検出信号VCSとモータ102の両端間電圧VMとにもとづいてモータ102の逆起電力eを示す逆起電力検出信号VBEMFを生成する。
【0049】
フィードバックコントローラ230は、駆動期間φ1において、電流検出信号VCSが、逆起電力検出信号VBEMFにもとづいて生成された電流指令VREFに近づくように、電圧指令VBEMFをフィードバックにより生成する。駆動期間φ1におけるフィードバックコントローラ230の動作モードを、電流制御ループ(CCL:Current Control Loop)モードと称する。
【0050】
フィードバックコントローラ230は、検出期間φ2において、電圧指令VCTRLを固定する。たとえばフィードバックコントローラ230は、駆動期間φ1から検出期間φ2に切りかえる直前の電圧指令VCTRLをラッチする。つまり検出期間φ2の間は、フィードバックコントローラ230によるフィードバック制御(電流制御)が無効となり、オープンループでモータ102が駆動される。電圧指令VCTRLが固定されると、モータ102には定電圧が印加されるから、検出期間φ2におけるフィードバックコントローラ230の動作モードを、定電圧モード、あるいはオープンループモードともいう。
【0051】
以上が位置決め装置100の構成である。続いてその動作を説明する。
図3は、
図1のモータドライバ回路200の速度制御モードの動作を説明する図である。速度制御モードでは、駆動期間φ
1と検出期間φ
2を交互に繰り返す。
図3には、3サイクル分の動作が示される。検出期間φ2は短い方が好ましく、たとえば5~10μs程度に定めることができる。
【0052】
i番目のサイクルの駆動期間φ1の間、フィードバックコントローラ230は、CCLモードで動作し、電流検出信号VCSは、電流指令VREFに安定化される。このとき、電圧指令VCTRLは、電流検出信号VCSが電流指令VREFに近づくように調節される。
【0053】
検出期間φ2となると、フィードバックコントローラ230は、定電圧モードで動作し、電圧指令VCTRLが固定される。この状態で、逆起電力検出回路220がイネーブル状態となり、逆起電力eが検出される。このとき生成される逆起電力検出信号VBEMFにもとづいて、次の駆動期間φ1における電流指令VREF(i+1)が更新される。電流指令VREF(i+1)は、逆起電力が、速度指令に近づくように生成される。
【0054】
以上がモータドライバ回路200の動作である。このモータドライバ回路200によれば、検出期間φ2において、逆起電力を検出し、逆起電力がその目標値(速度指令)に近づくように電流指令VREFを更新する。これがメジャーループの動作である。
【0055】
一方、駆動期間φ1において、電流検出信号VCSが、メジャーループにより更新された電流指令VREFに近づくように、電圧指令VCTRLを生成する。これがマイナーループの動作である。
【0056】
モータドライバ回路200は、駆動期間φ1と検出期間φ2を繰り返すことにより、逆起電力を目標値に安定化することができ、速度制御が実現できる。
【0057】
モータドライバ回路200の利点を説明する。上述のように逆起電力検出回路220による逆起電力の検出には、モータ102の両端間電圧VMが利用される。ここでモータ102の両端間電圧VMはモータドライバ回路200の出力であり、それに含まれるノイズは、フィードバックコントローラ230によるフィードバックが有効であるときに大きくなる。したがって、フィードバックコントローラ230がCCLモードで動作しているときに、逆起電力を検出すると、逆起電力検出信号VBEMFにノイズの影響が含まれることとなり、検出精度が低下する。逆起電力検出信号VBEMFの精度の低下は、速度制御の精度の低下を意味する。本実施形態によれば、逆起電力の検出期間φ2において、フィードバックコントローラ230によるフィードバックループを無効化し、定電圧駆動に切りかえている。これにより、検出期間φ2の間、モータ102の両端間電圧VMが一定となるため、それに含まれるノイズが減少する。これにより、逆起電力の検出精度を改善できる。
【0058】
続いてモータドライバ回路200の具体的な実施例を説明する。
【0059】
図4は、一実施例に係るモータドライバ回路200Aの回路図である。モータドライバ回路200Aは、電流検出回路210、逆起電力検出回路220、フィードバックコントローラ230、出力段240、内部ロジック250、インタフェース回路260に加えて、ローパスフィルタ270、A/Dコンバータ272、D/Aコンバータ274を備える。
【0060】
ローパスフィルタ270は、A/Dコンバータ272に前置されるフィルタであり、逆起電力検出回路220が生成する逆起電力検出信号VBEMFを受ける。ローパスフィルタ270は、たとえば1MHz程度のカットオフ周波数を有している。A/Dコンバータ272は、ローパスフィルタ270の出力をデジタル信号DBEMFに変換する。内部ロジック250は、デジタル信号DBEMFをインタフェース回路260を利用して上位コントローラ104に送信する。
【0061】
上位コントローラ104は、デジタル信号DBEMFを受け、デジタル信号DBEMFが目標値(速度指令値)に近づくように、デジタルの電流指令DREFを生成し、インタフェース回路260に送信する。インタフェース回路260が受信したデジタルの電流指令DREFは、D/Aコンバータ274によってアナログの電流指令VREFに変換される。
【0062】
フィードバックコントローラ230は、減算器232、ローパスフィルタ233、A/Dコンバータ234、PI(比例・積分)補償器236、D/Aコンバータ238を備える。減算器232は、電流指令VREFから電流検出信号VCSを減算し、誤差信号VERRを生成する。ローパスフィルタ233は、A/Dコンバータ234に前置されるフィルタであり、減算器232が生成する誤差信号VERRを受ける。ローパスフィルタ233はたとえば数kHzのカットオフ周波数を有する。A/Dコンバータ234は、ローパスフィルタ233の出力をデジタルの誤差信号DERRに変換する。PI補償器236は、デジタルの誤差信号DERRにもとづいて、デジタルの電圧指令DCTRLを生成する。PI補償器236に代えて、PID(比例・積分・微分)補償器を用いてもよい。D/Aコンバータ238は、デジタルの電圧指令DCTRLをアナログの電圧指令VCTRLに変換する。以上がモータドライバ回路200Aの構成である。
【0063】
図5は、
図4のモータドライバ回路200Aの一部の構成例を示す回路図である。逆起電力検出回路220は、第1アンプAMP1、第2アンプAMP2、第3アンプAMP3、キャリブレーション回路222を備える。
【0064】
第1アンプAMP1は、電流検出信号VCSをゲインg1で増幅する。第2アンプAMP2は、モータ102の両端間の電圧VMに、1より小さいゲインg2を乗算して出力する。たとえばゲインg2は、1/8倍より小さく定めるとよい。
【0065】
第3アンプAMP3は、第1アンプAMP1の出力VA1と第2アンプAMP2の出力VA2の差分に応じた逆起電力検出信号VBEMFを生成する。
【0066】
キャリブレーション回路222は、キャリブレーションモードにおいてアクティブとなり、モータ102の固定子が動かない状態、つまり逆起電力がゼロの状態で、逆起電力検出信号VBEMFがゼロとなるように、逆起電力検出回路220における回路定数を調節する。たとえばキャリブレーション回路222は、第1アンプAMP1のゲインg1を調節する。
【0067】
図5の逆起電力検出回路220の動作を説明する。キャリブレーションモードでは、フィードバックコントローラ230によるフィードバックが無効となり、出力段240は、モータ102の可動子が、メカ端に抑え付けられるように十分に大きな駆動電流I
DRVを出力する。これにより、逆起電力がゼロの状態となる。
【0068】
モータ102の内部抵抗をrとする。キャリブレーションモードでは、第1アンプAMP1の出力VA1は、式(1)となる。A0は、電流検出回路210のゲインである。
VA1=IDRV×A0×g1
【0069】
キャリブレーションモードでは、逆起電力はゼロであるから、モータ102の両端間電圧は、r×IDRVとなり、第2アンプAMP2の出力電圧VA2は、式(2)となる。
VA2=g2×r×IDRV …(2)
【0070】
キャリブレーションモードにおいて、第3アンプAMP3の出力である逆起電力検出信号VBEMFは、式(3)で表される。
VBEMF=g3×(VA2-VA1) …(3)
g3は第3アンプAMP3のゲインである。
【0071】
キャリブレーションモードにおいて、逆起電力検出信号VBEMFをゼロにするには、VA2=VA1が成り立てばよい。つまり、式(4)が成り立つように、ゲインg1が調節される。
IDRV×A0×g1=g2×r×IDRV…(4)
【0072】
つまり調節後のゲインg1は、式(5)を満たす。
g1=g2×r/A0 …(5)
【0073】
キャリブレーション後の通常動作状態において、モータ102に逆起電力eが発生しているとする。このときの第2アンプAMP2の出力VA2は式(6)で表される。
VA2=g2×r×IDRV-e…(6)
【0074】
このときの第3アンプAMP3の出力である逆起電力検出信号VBEMFは、式(7)で表される。
VBEMF=g3×(VA2-VA1)=g3×(g2×r×IDRV-e-IDRV×A0×g1) …(7)
ここで、事前のキャリブレーションによって式(5)を満たすようにg1が調節されているとき、逆起電力検出信号VBEMFは式(8)で表される。
VBEMF=g3×(g2×r×IDRV-e-IDRV×A0×g1)=-g3×e …(8)
【0075】
このように、モータドライバ回路200の逆起電力検出回路220によれば、逆起電力eに比例する逆起電力検出信号VBEMFを生成できる。
【0076】
(実施例1)
図6は、実施例1に係る逆起電力検出回路220のブロック図である。
図6には、各ブロックの電源電圧および各ブロックを構成するトランジスタの耐圧が示されている。LVは、低耐圧素子で構成されることを、HVは、高耐圧素子で構成されることを示す。たとえば、LVは、0~5Vの範囲で動作可能な素子を、HVは5~15Vの範囲で動作可能な素子を示す。実施例1では、電源電圧V
DDは1.5Vである。
【0077】
第2アンプAMP2のゲインはたとえばg2=1/16である。モータの両端間電圧VMが-10V~+10Vで変動する場合に、第2アンプAMP2の出力電圧VA2において、モータの両端間電圧は、-0.6V~0.6Vに圧縮される。第2アンプAMP2は、低耐圧素子で構成される。
【0078】
電流検出回路210は、駆動電流IDRVの経路上に設けられたセンス抵抗Rsと、センス抵抗Rsの電圧降下を電流検出信号VCSに変換するアンプと、を含む。このアンプのゲインを1とすると、電流検出回路210のゲインA0は、Rsと等しい。
【0079】
たとえばRs=0.22Ω、駆動電流IDRVを0.78A~4.55Aとすると、電流検出信号VCSは、0.17~1.0Vの範囲を取り得る。電流検出信号VCSを増幅する第1アンプAMP1は、低耐圧素子で構成される。第1アンプAMP1のゲインg1は、キャリブレーションによって調節される。調整後のゲインg1は、
g1=g2×r/Rs
を満たす。ゲインg1はモータ102の内部抵抗rに応じており、rとして2.1~12.2Ωの範囲を想定すると、ゲインg1は0.6~3.48となる。第1アンプAMP1の出力電圧VA1は、0.6V程度である。
【0080】
第3アンプAMP3は、低耐圧素子で構成される。第3アンプAMP3のゲインg3はたとえば8倍とすることができる。
【0081】
(実施例2)
図7は、実施例2に係る逆起電力検出回路220のブロック図である。実施例2では電源電圧V
DDは5Vである。第2アンプAMP2のゲインはたとえばg
2=1/4である。モータの両端間電圧V
Mが-9V~+9Vで変動する場合に、第2アンプAMP2の出力電圧V
A2において、モータの両端間電圧は、-2.25V~2.25Vに圧縮される。第2アンプAMP2は、低耐圧素子で構成される。
【0082】
Rs=0.22Ω、駆動電流IDRVを0.73A~4.26Aとすると、電流検出信号VCSは、0.16~0.94Vの範囲を取り得る。電流検出信号VCSを増幅する第1アンプAMP1は、低耐圧素子で構成される。第1アンプAMP1のゲインg1は、キャリブレーションによって調節される。調整後のゲインg1は、
g1=g2×r/Rs
を満たす。ゲインg1はモータ102の内部抵抗rに応じており、rとして2.1~12.2Ωの範囲を想定すると、ゲインg1は2.4~13.92となる。第1アンプAMP1の出力電圧VA1は、2.25Vとなり、実施例1の約4倍である。
【0083】
第3アンプAMP3は、低耐圧素子で構成される。第3アンプAMP3のゲインg3はたとえば2倍とすることができる。
【0084】
実施例1では、第2アンプAMP2のゲインg2が1/16である。ゲインg2が小さいと、逆起電力の検出精度が、電流検出信号VCSの誤差の影響を強く受けることとなる。実施例2では、第2アンプAMP2のゲインg2は1/4であり、実施例1と比べて4倍としている。これにより、逆起電力の検出精度が、電流検出信号の誤差の影響を受けにくくなる。
【0085】
以上が逆起電力検出回路220の構成である。この逆起電力検出回路220では、第3アンプAMP3を低耐圧素子で構成することができる。これにより逆起電力検出回路220の面積、ひいてはモータドライバ回路200の面積を小さくできる。
【0086】
第3アンプAMP3のゲインg3を、プラットフォームやモータ102の使用に応じて可変としたい場合がある。ゲインを切りかえるためには、抵抗ネットワークと、複数のスイッチが必要となる。第3アンプAMP3を高耐圧素子で構成する場合、スイッチを高耐圧トランジスタで構成する必要があり、これが第3アンプAMP3の面積の肥大化の要因となる。
【0087】
図5の逆起電力検出回路220では、第3アンプAMP3のゲインを可変とした場合であっても、スイッチを低耐圧トランジスタで構成できるため、回路面積を削減できる。なお、逆起電力検出回路220には高耐圧素子で構成される第2アンプAMP2が追加されているが、第2アンプAMP2のゲインは固定でよいため、ゲイン切りかえのためのスイッチが不要であるから、第3アンプAMP3の面積削減の効果は、第2アンプAMP2による面積増加を上回ることとなる。
【0088】
図5に戻る。フィードバックコントローラ230は、
図4のフィードバックコントローラ230に加えて、第4アンプAMP4をさらに備える。この例では、減算器232は、抵抗R21,R22を含む。第4アンプAMP4は、減算器232の出力信号を増幅し、誤差信号V
ERRを生成する。
【0089】
以上がモータドライバ回路200の構成例である。
【0090】
A/Dコンバータ272は検出期間φ2において動作し、A/Dコンバータ234は、駆動期間φ1に動作する。つまりA/Dコンバータ272とA/Dコンバータ234は同時には動作しない。そこでA/Dコンバータ272とA/Dコンバータ234を、同一のA/Dコンバータ280で構成し、それを時分割で共有してもよい。これにより、回路面積を削減できる。A/Dコンバータ280は、駆動期間φ1と検出期間φ2とでサンプリング周波数が切りかえ可能に構成される。
【0091】
同様に、ローパスフィルタ270は検出期間φ2において動作し、ローパスフィルタ233は、駆動期間φ1に動作する。つまりローパスフィルタ270とローパスフィルタ233は同時には動作しない。そこでローパスフィルタ270とローパスフィルタ233を、同一のローパスフィルタ282で構成し、時分割で共有してもよい。これにより、回路面積を削減できる。
【0092】
上述のように、A/Dコンバータ280のサンプリング周波数は、駆動期間φ1と検出期間φ2とで切りかえられるから、ローパスフィルタ282も、駆動期間φ1と検出期間φ2とでカットオフ周波数が切りかえ可能に構成される。
【0093】
さらに、第4アンプAMP4は検出期間φ2において動作し、第1アンプAMP1は、駆動期間φ1に動作する。第4アンプAMP4と第1アンプAMP1は同時には動作しない。そこで第4アンプAMP4と第1アンプAMP1を、同一のアンプ284で構成し、時分割で共有してもよい。これにより、回路面積を削減できる。アンプ284のゲインも、駆動期間φ1と検出期間φ2とでカットオフ周波数が切りかえ可能に構成される。
【0094】
図8は、
図5の逆起電力検出回路220の構成例を示す回路図である。第1アンプAMP1は、第3オペアンプOA3、第9抵抗R9、第10抵抗R10を含む。第9抵抗R9の一端には、基準電圧V
CMREFが入力され、第9抵抗R9の他端は、第3オペアンプOA3の反転入力端子と接続される。第10抵抗R10は、第3オペアンプOA3の反転入力端子と出力の間に接続される。第1アンプAMP1の出力電圧V
A1は、式(9)で表される。基準電圧V
CMREFは、電源電圧V
DDの1/2程度に定めることができる。
V
A1=V
CS×(R9+R10)/R9+V
CMREF …(9)
【0095】
第2アンプAMP2は、第1オペアンプOA1、第1抵抗R1~第4抵抗R4を含む。第1抵抗R1は、第1オペアンプOA1の第1入力(-)と、モータ102の第1端(AOUT)との間に接続される。第2抵抗R2は、第1オペアンプOA1の第2入力(+)と、モータ102の第2端(BOUT)との間に接続される。第3抵抗R3は、第1オペアンプOA1の第1入力(-)と、第1オペアンプOA1の出力の間に接続される。第4抵抗R4は、一端が第1オペアンプOA1の第2入力(+)と接続され、他端に基準電圧VCMREFを受ける。第2アンプAMP2の出力電圧VA2は、式(10)で表される。ただし、R1=R2、R3=R4であるとする。
VA2=VM×R3/R1+VCMREF …(10)
【0096】
第3アンプAMP3は、第2オペアンプOA2、第5抵抗R5~第8抵抗R8を含み、第2アンプAMP2と同様に構成される。R5=R6、R7=R8が成り立つとき、第3アンプAMP3の出力電圧V
BEMFは、式(11)で表される。
V
BEMF=(V
A1-V
A2)×R7/R5+V
CMREF …(11)
なお、式(9)~(11)から明らかなように基準電圧V
CMREFは、各電圧信号の中心レベル(オフセット)であり、
図1~
図6の説明では無視されている。
【0097】
以上が逆起電力検出回路220の構成例である。
【0098】
図9は、実施形態に係るモータドライバ回路のノイズ特性を示す図である。上段は、ノイズ密度を、下段は積分ノイズを示す。
図9には、比較技術のノイズ特性が併せて示される。比較技術は、逆起電力の検出中においてもフィードバックコントローラ230をCCLモードで動作させたものである。ノイズ密度を比較すると、1Hz~20kHzの広い範囲において、実施形態の方が比較技術に比べてノイズ密度が改善されていることが分かる。また積分ノイズを比べると、すべての周波数範囲において、実施形態の方が、比較技術に有利である。
【0099】
(用途)
図10は、モータドライバ回路200を備えるハードディスク装置900を示す図である。ハードディスク装置900は、プラッタ902、スイングアーム904、ヘッド906、スピンドルモータ910、シークモータ912、モータドライバ回路920を備える。モータドライバ回路920は、スピンドルモータ910やシークモータ912を駆動する。
【0100】
シークモータ912はボイスコイルモータである。実施形態に係るモータドライバ回路200は、モータドライバ回路920に内蔵されており、シークモータ912を駆動する。
【0101】
本開示において、駆動対象であるリニアモータの構成や形式は特に限定されない。たとえばスプリングリターン方式のボイスコイルモータや、その他のリニアアクチュエータの駆動にも本開示は適用可能である。
【0102】
モータドライバ回路200を位置決め装置以外の用途で利用する場合、モータ102はスピンドルモータであってもよい。その場合には、上述の位置制御を、トルク制御と読み替えればよい。
【0103】
位置決め装置100の用途も、ハードディスク装置には限定されず、カメラのレンズの位置決め機構などにも適用できる。
【符号の説明】
【0104】
h100 位置決め装置
102 モータ
104 上位コントローラ
200 モータドライバ回路
210 電流検出回路
220 逆起電力検出回路
222 キャリブレーション回路
230 フィードバックコントローラ
240 出力段
250 内部ロジック
260 インタフェース回路
270 ローパスフィルタ
272 A/Dコンバータ
274 D/Aコンバータ
232 減算器
233 ローパスフィルタ
234 A/Dコンバータ
236 PI補償器
238 D/Aコンバータ
AMP1 第1アンプ
AMP2 第2アンプ
AMP3 第3アンプ
OA1,OA2,OA3 オペアンプ
R1 第1抵抗
R2 第2抵抗
R3 第3抵抗
R4 第4抵抗
R5 第5抵抗
R6 第6抵抗
R7 第7抵抗
R8 第8抵抗
R9 第9抵抗
R10 第10抵抗