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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023076064
(43)【公開日】2023-06-01
(54)【発明の名称】検査方法、検査装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/66 20060101AFI20230525BHJP
   G01N 21/956 20060101ALI20230525BHJP
【FI】
H01L21/66 J
G01N21/956 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021189232
(22)【出願日】2021-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】514188173
【氏名又は名称】株式会社JOLED
(74)【代理人】
【識別番号】100189430
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100190805
【弁理士】
【氏名又は名称】傍島 正朗
(72)【発明者】
【氏名】橋本 伸一郎
【テーマコード(参考)】
2G051
4M106
【Fターム(参考)】
2G051AA51
2G051AB01
2G051AB02
2G051CA04
2G051EA08
2G051EA14
2G051EA17
2G051EB05
2G051EC01
2G051ED04
2G051ED21
4M106AA01
4M106CA40
4M106DB04
4M106DJ15
4M106DJ18
4M106DJ27
4M106DJ28
(57)【要約】
【課題】デバイスの配線パターンの異常部分が欠陥に結び付くか否かを自動判定することができる検査方法等を提供する。
【解決手段】パターンが形成されたレイヤを1層以上有する積層構造からなるデバイスの外観検査画像から画像処理により得たデバイスの配線パターンの異常部分を含む画像である異常部画像を取得する取得ステップ(S10)と、異常部画像から、異常部分が位置するレイヤに基づく色ラベルに異常部分が変換されたラベル画像を生成する生成ステップ(S11)と、ラベル画像と、デバイスの異常部分と対応する位置で、かつ当該異常部分がない配線パターンを含む正常パターン画像とを重ね合わせて得た重ね合わせ画像を用いて、予め定められた決定木に従って色ラベルと異常部分がない配線パターンとの重なり判定を行うことにより、異常部分がデバイスの欠陥となっているか否かを判定する判定ステップ(S13)とを含む。
【選択図】図20
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターンが形成されたレイヤを1層以上有する積層構造からなるデバイスの検査方法であって、
前記デバイスの外観検査画像から画像処理により得た前記デバイスの配線パターンの異常部分を含む画像である異常部画像を取得する取得ステップと、
前記異常部画像から、前記異常部分が位置するレイヤに基づく色ラベルに前記異常部分が変換されたラベル画像を生成する生成ステップと、
前記ラベル画像と、前記デバイスの異常部分と対応する位置で、かつ当該異常部分がない配線パターンを含む正常パターン画像とを重ね合わせて得た重ね合わせ画像を用いて、予め定められた決定木に従って前記色ラベルと前記異常部分がない配線パターンとの重なり判定を行うことにより、前記異常部分が前記デバイスの欠陥となっているか否かを判定する判定ステップとを含む、
検査方法。
【請求項2】
前記正常パターン画像は、前記外観検査画像のうち前記異常部分を含む領域の画像と同一スケールの画像であって予め用意された画像であり、
前記判定ステップでは、前記重なり判定を行う際、前記決定木に従って前記色ラベルと前記正常パターン画像に含まれる第1の配線及び第2の配線との重なり判定を行うことで前記異常部分が前記第1の配線及び前記第2の配線を短絡させているか判定する、
請求項1に記載の検査方法。
【請求項3】
前記正常パターン画像は、前記外観検査画像のうち前記異常部分を含む領域の画像と同一スケールの画像であって予め用意された画像であり、
前記判定ステップでは、前記重なり判定を行う際、前記決定木に従って前記色ラベルと前記正常パターン画像に含まれる第1の配線との重なり判定を行うことで前記異常部分が前記第1の配線を断線させているか判定する、
請求項1に記載の検査方法。
【請求項4】
前記異常部分は、形成されたパターンのうち形成される配線パターンが一部欠けているパターン部分である、
請求項1または3に記載の検査方法。
【請求項5】
前記異常部分は、形成されたパターンのうち配線パターンが形成されてはならない部位に配線パターンが残存するパターン残りがあるパターン部分である、
請求項1または2に記載の検査方法。
【請求項6】
前記生成ステップでは、
学習済みのモデルを用いて、前記異常部画像から、前記ラベル画像を生成させ、
前記生成ステップの前には、
前記学習済みのモデルは、教師データとして準備された、外観検査画像から画像処理により得たデバイスの異常部画像と、当該異常部画像に映る異常部分の材質それぞれによって当該異常部画像に映る異常部分が異なる色ラベルに変換されたラベル画像とにより学習されている、
請求項1~5のいずれか1項に記載の検査方法。
【請求項7】
前記生成ステップでは、
前記異常部画像から、前記異常部分が位置するレイヤに基づく色ラベルとして、前記異常部画像に映る異常部分の材質に応じた色ラベルに画像処理により前記異常部分を変換することで、前記ラベル画像を生成する、
請求項1~6のいずれか1項に記載の検査方法。
【請求項8】
前記取得ステップでは、
前記デバイスの外観検査画像に、背景差分法を用いた画像処理を施して前記異常部画像を生成することにより、前記異常部画像を取得する、
請求項1~7のいずれか1項に記載の検査方法。
【請求項9】
パターンが形成されたレイヤを1層以上有する積層構造からなるデバイスの検査装置であって、
前記デバイスの外観検査画像から画像処理により得た前記デバイスの配線パターンの異常部分を含む画像である異常部画像を取得する画像取得部と、
前記異常部画像から、前記異常部分が位置するレイヤに基づく色ラベルに前記異常部分が変換されたラベル画像を生成するラベル画像生成部と、
前記ラベル画像と、前記デバイスの異常部分と対応する位置で、かつ当該異常部分がない配線パターンを含む正常パターン画像とを重ね合わせて得た重ね合わせ画像を用いて、予め定められた決定木に従って前記色ラベルと前記異常部分がない配線パターンとの重なり判定を行うことにより、前記異常部分が前記デバイスの欠陥となっているか否かを判定する判定部とを備える、
検査装置。
【請求項10】
パターンが形成されたレイヤを1層以上有する積層構造からなるデバイスの検査方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記デバイスの外観検査画像から画像処理により得た前記デバイスの配線パターンの異常部分を含む画像である異常部画像を取得する取得ステップと、
前記異常部画像から、前記異常部分が位置するレイヤに基づく色ラベルに前記異常部分が変換されたラベル画像を生成する生成ステップと、
前記ラベル画像と、前記デバイスの異常部分と対応する位置で、かつ当該異常部分がない配線パターンを含む正常パターン画像とを重ね合わせて得た重ね合わせ画像を用いて、予め定められた決定木に従って前記色ラベルと前記異常部分がない配線パターンとの重なり判定を行うことにより、前記異常部分が前記デバイスの欠陥となっているか否かを判定する判定ステップとを、
コンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、検査方法、検査装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶デバイス、有機ELといった半導体デバイスの製造工程では、半導体デバイスの欠陥を検出するために外観検査によるパターン検査が行われる。ここで、パターン検査は、本来あるべき配線パターンに対する配線パターンの異常部分を検出する検査である。
【0003】
例えば、特許文献1には、ウェハなどパターンが形成された基板のパターン検査を自動的に行うことができる方法が提案されている。特許文献1では、画像処理を用いることで、基板のパターン検査を自動的に行える方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006―170907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の検査方法では、パターンの異常部分を精度よく検出することができるものの、異常部分がそのまま半導体デバイスの欠陥に結び付くわけではないという課題がある。このため、異常部分が半導体デバイスの欠陥に結び付くか否かを、作業者が目視判断する必要があった。
【0006】
本開示は、上述の事情を鑑みてなされたもので、デバイスの配線パターンの異常部分が欠陥に結び付くか否かを自動判定することができる検査方法などを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本開示の一形態に係る検査方法は、パターンが形成されたレイヤを1層以上有する積層構造からなるデバイスの検査方法であって、前記デバイスの外観検査画像から画像処理により得た前記デバイスの配線パターンの異常部分を含む画像である異常部画像を取得する取得ステップと、前記異常部画像から、前記異常部分が位置するレイヤに基づく色ラベルに前記異常部分が変換されたラベル画像を生成する生成ステップと、前記ラベル画像と、前記デバイスの異常部分と対応する位置で、かつ当該異常部分がない配線パターンを含む正常パターン画像とを重ね合わせて得た重ね合わせ画像を用いて、予め定められた決定木に従って前記色ラベルと前記異常部分がない配線パターンとの重なり判定を行うことにより、前記異常部分が前記デバイスの欠陥となっているか否かを判定する判定ステップとを含む。
【0008】
これにより、デバイスの配線パターンの異常部分が欠陥に結び付くか否かを自動判定することができる。
【0009】
ここで、例えば、前記正常パターン画像は、前記外観検査画像のうち前記異常部分を含む領域の画像と同一スケールの画像であって予め用意された画像であり、前記判定ステップでは、前記重なり判定を行う際、前記決定木に従って前記色ラベルと前記正常パターン画像に含まれる第1の配線及び第2の配線との重なり判定を行うことで前記異常部分が前記第1の配線及び前記第2の配線を短絡させているか判定してもよい。
【0010】
また、例えば、前記正常パターン画像は、前記外観検査画像のうち前記異常部分を含む領域の画像と同一スケールの画像であって予め用意された画像であり、前記判定ステップでは、前記重なり判定を行う際、前記決定木に従って前記色ラベルと前記正常パターン画像に含まれる第1の配線との重なり判定を行うことで前記異常部分が前記第1の配線を断線させているか判定してもよい。
【0011】
また、例えば、前記異常部分は、形成されたパターンのうち形成される配線パターンが一部欠けているパターン部分であってもよいし、前記異常部分は、形成されたパターンのうち配線パターンが形成されてはならない部位に配線パターンが残存するパターン残りがあるパターン部分であってもよい。
【0012】
また、例えば、前記生成ステップでは、学習済みのモデルを用いて、前記異常部画像から、前記ラベル画像を生成させ、前記生成ステップの前には、前記学習済みのモデルは、教師データとして準備された、外観検査画像から画像処理により得たデバイスの異常部画像と、当該異常部画像に映る異常部分の材質それぞれによって当該異常部画像に映る異常部分が異なる色ラベルに変換されたラベル画像とにより学習されていてもよい。
【0013】
また、例えば、前記生成ステップでは、前記異常部画像から、前記異常部分が位置するレイヤに基づく色ラベルとして、前記異常部画像に映る異常部分の材質に応じた色ラベルに画像処理により前記異常部分を変換することで、前記ラベル画像を生成してもよい。
【0014】
また、例えば、前記取得ステップでは、前記デバイスの外観検査画像に、背景差分法を用いた画像処理を施して前記異常部画像を生成することにより、前記異常部画像を取得する。
【0015】
上記目的を達成するために、本開示の一形態に係る検査装置は、パターンが形成されたレイヤを1層以上有する積層構造からなるデバイスの検査装置であって、前記デバイスの外観検査画像から画像処理により得た前記デバイスの配線パターンの異常部分を含む画像である異常部画像を取得する画像取得部と、前記異常部画像から、前記異常部分が位置するレイヤに基づく色ラベルに前記異常部分が変換されたラベル画像を生成するラベル画像生成部と、前記ラベル画像と、前記デバイスの異常部分と対応する位置で、かつ当該異常部分がない配線パターンを含む正常パターン画像とを重ね合わせて得た重ね合わせ画像を用いて、予め定められた決定木に従って前記色ラベルと前記異常部分がない配線パターンとの重なり判定を行うことにより、前記異常部分が前記デバイスの欠陥となっているか否かを判定する判定部とを備える。
【0016】
なお、これらの全般的または具体的な態様は、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラムまたはコンピュータで読み取り可能なCD-ROMなどの記録媒体で実現されてもよく、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラム及び記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本開示により、デバイスの配線パターンの異常部分が欠陥に結び付くか否かを自動判定することができる検査方法などを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、実施の形態に係る検査装置を含む検査システムの概略構成を示す図である。
図2図2は、実施の形態に係る検査装置の機能をソフトウェアにより実現するコンピュータのハードウェア構成の一例を示す図である。
図3図3は、実施の形態に係る検査装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
図4図4は、実施の形態に係るデバイスの外観検査画像であるパターン検査画像の一例を示す図である。
図5図5は、実施の形態に係るデバイスの異常部画像の一例を示す図である。
図6図6は、実施の形態に係るデバイスの外観検査画像の別の例を示す図である。
図7図7は、図6に示す外観検査画像から得た異常部画像の一例を示す図である。
図8図8は、実施の形態に係るラベル画像の一例を示す図である。
図9A図9Aは、異常部分の材質によって異なる色ラベルのラベル画像が異常部画像から生成される場合の一例を示す図である。
図9B図9Bは、異常部分の材質によって異なる色ラベルのラベル画像が異常部画像から生成される場合の一例を示す図である。
図9C図9Cは、異常部分の材質によって異なる色ラベルのラベル画像が異常部画像から生成される場合の一例を示す図である。
図9D図9Dは、異常部分の材質によって異なる色ラベルのラベル画像が異常部画像から生成される場合の一例を示す図である。
図10A図10Aは、実施の形態に係る教師データとして準備された画像ペアの一例を示す図である。
図10B図10Bは、図10Aに示すような画像ペアを教師データとして用いてモデルを学習させる方法を概念的に示す図である。
図11図11は、実施の形態に係るパターン検査画像に対応する正常パターン画像の一例を示す図である。
図12図12は、実施の形態に係る重ね合わせ画像の一例を示す図である。
図13図13は、実施の形態に係る差分画像を用いる位相検出方法の一例を説明するための図である。
図14A図14Aは、実施の形態に係る差分画像を説明するための図である。
図14B図14Bは、実施の形態に係る差分画像のヒストグラムの一例を示す図である。
図15図15は、実施の形態に係る差分プロファイルを用いる位相検出方法の一例を説明するための図である。
図16A図16Aは、実施の形態に係る差分プロファイルを説明するための図である。
図16B図16Bは、実施の形態に係る差分プロファイルのヒストグラムの一例を示す図である。
図17図17は、実施の形態に係るショート判定を行うための決定木ルーチンを示すフローチャートの一例を示す図である。
図18図18は、ショート判定を行うための重なり判定のアルゴリズムに用いる重ね合わせ画像の一例を示す図である。
図19A図19Aは、実施の形態に係る決定木に従いSL工程でショート判定される配線間を説明するための図である。
図19B図19Bは、実施の形態に係る決定木に従いSL工程でショート判定される配線間を説明するための図である。
図19C図19Cは、実施の形態に係る決定木に従いSL工程でショート判定される配線間を説明するための図である。
図19D図19Dは、実施の形態に係る決定木に従いSL工程でショート判定される配線間を説明するための図である。
図19E図19Eは、実施の形態に係る決定木に従いSL工程でショート判定される配線間を説明するための図である。
図20図20は、実施の形態における検査装置の動作概要を示すフローチャートである。
図21図21は、実施の形態における検査装置の動作例の説明図である。
図22図22は、図21に示される重ね合わせ画像に対する重なり判定の動作例を示すフローチャートである。
図23図23は、変形例に係る検査装置の動作例の説明図である。
図24図24は、図23に示される重ね合わせ画像に対する重なり判定の動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本開示の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本開示の一具体例を示す。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、規格、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序等は、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、本開示の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また、各図は、必ずしも厳密に図示したものではない。各図において、実質的に同一の構成については同一の符号を付し、重複する説明は省略又は簡略化する場合がある。
【0020】
(実施の形態)
以下、本実施の形態に係る検査装置等について説明する。
【0021】
[1.検査システム]
以下、図を用いて、本実施の形態に係る検査装置10について説明する。
【0022】
図1は、実施の形態に係る検査装置10を含む検査システムの概略構成を示す図である。
【0023】
図1に示される検査システムは、検査装置10と、撮像装置20と、ステージ21と、ステージ駆動部22とを備える。
【0024】
検査装置10は、パターンが形成されたレイヤを1層以上有する積層構造からなるデバイス30のパターン検査を行い、パターン検査を行うことにより得た配線パターンの異常部分がデバイス30の欠陥に結び付くか否かを自動判定するための装置である。ここで、デバイス30は、液晶デバイス、有機ELといったディスプレイデバイス、半導体デバイスであり、製造工程中におけるデバイスすなわちダイシング前の中間製造物(デバイスウェハ)としてのデバイスである。換言すると、デバイス30は、ダイシング前の中間製造物の状態であり、ダイシング前には基板(ウェハ)上において、同一パターンのデバイス30が並んだ状態で製造されている。配線パターンには、1以上の配線が含まれる。なお、検査装置10の構成等の詳細は後述する。
【0025】
撮像装置20は、デバイス30上の検査対象領域を撮像し、例えばCCD(Charge Coupled Device)またはCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)で構成される。より具体的には、撮像装置20は、デバイス30上の検査対象領域を撮像することによりデバイス30の外観検査画像を取得する。なお、撮像装置20は、検査装置10により制御されるが、他のコンピュータにより制御されてもよい。
【0026】
ステージ21は、デバイス30を保持する。
【0027】
ステージ駆動部22は、ボールねじ、ガイドレール及びモータにより構成され、撮像装置20に対してステージ21を相対的に移動させる。なお、ステージ駆動部22は、検査装置10により制御されるが、他のコンピュータにより制御されてもよい。
【0028】
[1-1.検査装置10のハードウェア構成]
本実施の形態に係る検査装置10の機能構成を説明する前に、図2を用いて、本実施の形態に係る検査装置10のハードウェア構成の一例について説明する。
【0029】
図2は、実施の形態に係る検査装置10の機能をソフトウェアにより実現するコンピュータ1000のハードウェア構成の一例を示す図である。
【0030】
コンピュータ1000は、図2に示すように、入力装置1001、出力装置1002、CPU1003、内蔵ストレージ1004、RAM1005、GPU1006、読取装置1007、送受信装置1008及びバス1009を備えるコンピュータである。入力装置1001、出力装置1002、CPU1003、内蔵ストレージ1004、RAM1005、読取装置1007及び送受信装置1008は、バス1009により接続される。
【0031】
入力装置1001は、入力ボタン、タッチパッド、タッチパネルディスプレイなどといったユーザインタフェースとなる装置であり、ユーザの操作を受け付ける。なお、入力装置1001は、ユーザの接触操作を受け付ける他、音声での操作、リモコン等での遠隔操作を受け付ける構成であってもよい。
【0032】
出力装置1002は、入力装置1001と兼用されており、タッチパッドまたはタッチパネルディスプレイなどによって構成され、ユーザに知らすべき情報を通知する。
【0033】
内蔵ストレージ1004は、フラッシュメモリなどである。また、内蔵ストレージ1004は、検査装置10の機能を実現するためのプログラム、及び、検査装置10の機能構成を利用したアプリケーションの少なくとも一方が、予め記憶されていてもよい。また、内蔵ストレージ1004は、ニューラルネットワークのモデル(生成モデル)、取得された学習用データ、モデルの中間層等のパラメータ、背景差分法を含む画像処理を行う手順、重なり判定を行うための手順、重なり判定で用いる決定木などが記憶されるとしてもよい。
【0034】
RAM1005は、ランダムアクセスメモリ(Random Access Memory)であり、プログラム又はアプリケーションの実行に際してデータ等の記憶に利用される。
【0035】
GPU1006は、画像演算処理装置(Graphics Processing Unit)であり、内蔵ストレージ1004に記憶されたプログラム、アプリケーション、データをGPUに内蔵された専用RAMにコピーし、そのプログラムやアプリケーションに含まれる命令に従って画像演算処理を実行する。
【0036】
読取装置1007は、USB(Universal Serial Bus)メモリなどの記録媒体から情報を読み取る。読取装置1007は、上記のようなプログラムやアプリケーションが記録された記録媒体からそのプログラム、アプリケーションを読み取り、内蔵ストレージ1004に記憶させる。
【0037】
送受信装置1008は、無線又は有線で通信を行うための通信回路である。送受信装置1008は、例えばネットワークに接続されたサーバ装置と通信を行い、サーバ装置から上記のようなプログラム、アプリケーションをダウンロードして内蔵ストレージ1004に記憶させてもよい。
【0038】
CPU1003は、中央演算処理装置(Central Processing Unit)であり、内蔵ストレージ1004に記憶されたプログラム、アプリケーションをRAM1005にコピーし、そのプログラムやアプリケーションに含まれる命令をRAM1005から順次読み出して実行する。
【0039】
[1-2.検査装置10の機能構成]
続いて、図3を用いて本実施の形態に係る検査装置10の各機能構成について説明する。
【0040】
図3は、実施の形態に係る検査装置10の機能構成の一例を示すブロック図である。
【0041】
検査装置10は、図3に示されるように、画像取得部101と、ラベル画像生成部102と、重ね合わせ画像生成部103と、判定部104とを備える。なお、検査装置10において、重ね合わせ画像生成部103は必須ではなく、その結果を検査装置10が利用できればよく外部に備えられてもよい。
【0042】
[1-2-1.画像取得部101]
画像取得部101は、デバイスの外観検査画像から画像処理により得たデバイスの配線パターンの異常部分を含む画像である異常部画像を取得する。
【0043】
図4は、実施の形態に係るデバイス30の外観検査画像であるパターン検査画像41の一例を示す図である。図4に示す例には、パターン残りを示す配線パターンの異常部分31aが示されている。パターン残りを示す配線パターンの異常部分31aは、デバイスに形成されたパターンのうち配線パターンが形成されてはならない部位に配線パターンが残存するパターン残りがあるパターン部分である。図5は、実施の形態に係るデバイス30の異常部画像42の一例を示す図である。図5に示す例には、画像処理により得た配線パターンの異常部分31bが示されている。
【0044】
本実施の形態では、画像取得部101は、撮像装置20から、例えば図4に示すパターン検査画像41のようなデバイス30の外観検査画像を取得する。また、画像取得部101は、取得した外観検査画像に背景差分法を用いた画像処理を施して、例えば、図5に示す異常部画像42のようなデバイス30の配線パターンの異常部分を含む画像である異常部画像を生成する。
【0045】
ここで、背景差分法とは、観測画像と事前に取得しておいた背景画像とを比較することで、背景画像には存在しない観測画像に存在する物を抽出する画像処理である。本実施の形態では、デバイス30の外観検査画像を観測画像とし、デバイス30の異常部分と対応する位置で、かつ当該異常部分がない配線パターンを含む画像である正常パターン画像を背景画像とする。正常パターン画像は、当該外観検査画像を得たデバイス30のレイヤに対する他の外観検査画像の一部をクロップしたものであってもよい。また、正常パターン画像は、当該外観検査画像を得たデバイス30と同一のデバイス30に対する最初の外観検査時の外観検査画像の一部をクロップしたものであってもよい。
【0046】
以下、図6及び図7を用いて、背景差分法により異常部画像を生成する場合の一例について説明する。図6は、実施の形態に係るデバイス30の外観検査画像の別の例を示す図である。図6の(a)には、配線パターンの異常部分32aが含まれるパターン検査画像51が示され、図6の(b)には、配線パターンの異常部分のない正常パターン画像52が示されている。図7は、図6に示す外観検査画像から得た異常部画像53の一例を示す図である。
【0047】
すなわち、画像取得部101は、背景差分法を用いた画像処理を行い、図6の(a)に示されるパターン検査画像51と図6の(b)に示される正常パターン画像52との差分をとったうえで、階調を半分に圧縮してバイアス成分128を足すなどする。これにより、画像取得部101は、図7に示すような異常部分32bを含む異常部画像53を生成することができる。図7に示す異常部画像53は、図6の(a)に示される異常部分32aのみが抜き出された画像になっている。
【0048】
このようにして、画像取得部101は、異常部画像を取得することができる。
【0049】
[1-2-2.ラベル画像生成部102]
ラベル画像生成部102は、画像取得部101により取得された異常部画像から、異常部分が位置するレイヤに基づく色ラベルに当該異常部分が変換されたラベル画像を生成する。異常部分が位置するレイヤに基づく色ラベルは、異常部画像に映る異常部分の材質に応じた色ラベルとなっている。異常部分の材質としては、配線材料、半導体層、ダストなどが挙げられる。
【0050】
図8は、実施の形態に係るラベル画像43の一例を示す図である。図8に示すラベル画像43は、図5に示す異常部画像42の異常部分31bが、異常部分31bの材質に応じた色ラベルに変換(置換)された色ラベル部分31cを含む画像である。
【0051】
本実施の形態では、ラベル画像生成部102は、例えば図5に示す異常部画像42から、異常部画像42に含まれる異常部分31bを、異常部画像42に映る異常部分31bの材質に応じた色ラベルに変換した色ラベル部分31cを含む図5に示すラベル画像43を生成する。なお、異常部分31bの材質は、デバイス30のレイヤすなわち異常部分31bがデバイス30のソースレイヤが形成される層、ゲートレイヤが形成される層、ポリシリコンが形成される層に位置するかで異なる。異常部分31bの材質は、異常部画像42に映る異常部分31bの色味によって判断できる。
【0052】
ここで、ラベル画像の生成方法として、ディープラーニングを用いる方法がある。ディープラーニングを用いる方法としては学習したルールに則って画像などを生成する生成モデルを用いてもよい。より具体的には、ラベル画像生成部102は、学習済みのモデルを用いて、異常部画像から、ラベル画像を生成させてもよい。この場合、学習済のモデルは、教師データとして準備された、外観検査画像から画像処理により得たデバイスの異常部画像と、当該異常部画像に映る異常部分の材質それぞれによって当該異常部画像に映る異常部分が異なる色ラベルに置換されたラベル画像とにより学習されればよい。
【0053】
これにより、ラベル画像生成部102は、学習済みのモデルを用いて、異常部画像に含まれる異常部分の材質によって異なる色ラベルに変換(置換)されたラベル画像を生成することができる。なお、ラベル画像生成部102は、学習済みのモデルを用いて、異常部画像における背景差分による異常部分の欠損を補完させ、かつ、異常部分を色ラベルに変換(置換)させたラベル画像を生成させてもよい。
【0054】
以下、図9A図9Dを用いて、異常部分の材質によって異なる色ラベルのラベル画像が学習済のモデルにより生成される場合の例について説明する。
【0055】
図9A図9Dは、異常部分の材質によって異なる色ラベルのラベル画像が異常部画像から生成される場合の一例を示す図である。図中のGLはゲートが形成されるゲートレイヤ、SLはソースが形成されるソースレイヤを意味し、Poly-Siはポリシリコンが形成されるレイヤを意味する。ダストは、異常部分の材質がダストからなることを意味する。
【0056】
図9Aの(a)には、GLパターン残りを示す異常部分61aを含む異常部画像61の一例が示されている。図9Aの(b)には、その異常部分61aの材質がゲートレイヤである場合に応じたハッチングで描き分けられた色ラベル部分62aを含むラベル画像62の一例が示されている。
【0057】
また、図9Bの(a)には、SLパターン残りを示す異常部分63aを含む異常部画像63の一例が示されている。図9Bの(b)には、その異常部分63aの材質がソースレイヤである場合に応じたハッチングで描き分けられた色ラベル部分64aを含むラベル画像64の一例が示されている。
【0058】
図9Cの(a)には、Poly-Siパターン残りを示す異常部分65aを含む異常部画像65の一例が示されている。また、図9Cの(b)には、その異常部分65aの材質がポリシリコンが形成されるレイヤである場合に応じたハッチングで描き分けられた色ラベル部分66aを含むラベル画像66の一例が示されている。
【0059】
図9Dの(a)には、ダストを示す異常部分67aを含む異常部画像67の一例が示されている。図9Dの(b)には、その異常部分67aの材質がダストからなる場合に応じたハッチングで描き分けられた色ラベル部分68aを含むラベル画像68の一例が示されている。
【0060】
続いて、異常部画像からラベル画像を生成させるモデルの学習方法の一例について図10A及び図10Bを用いて説明する。
【0061】
図10Aは、実施の形態に係る教師データとして準備された画像ペアの一例を示す図である。図10Bは、図10Aに示すような画像ペアを教師データとして用いてモデルを学習させる方法を概念的に示す図である。
【0062】
図10Aに示される教師データとして準備された画像ペアは、異常部画像とそのラベル画像とからなる。図10Aには、異常部画像と、当該異常部画像の異常部分の材質すなわち色味に応じた色ラベルに、異常部分の領域を変換(置換)させることで当該異常部画像から生成したラベル画像とからなる画像ペアが示されている。なお、色味は変動するが、色味が変動している異常部画像を用いて学習させることでそれを考慮した変換がなされる。
【0063】
また、図10Aの(a)には、一例として、SLパターン残りを示す異常部分を含む異常部画像とそれに対応する正解データとしてのラベル画像が示されている。図10Aの(b)には、一例として、GLパターン残りを示す異常部分を含む異常部画像とそれに対応する正解データとしてのラベル画像が示されている。図10Aの(c)には、一例として、ダストからなる異常部分を含む異常部画像とそれに対応する正解データとしてのラベル画像が示されている。図10Aの(d)には、一例として、Poly-Siパターン残りを示す異常部分を含む異常部画像とそれに対応する正解データとしてのラベル画像が示されている。
【0064】
また、異常部画像からラベル画像を生成させるモデルを学習させる際、まず、図10Aに示すような、異常部画像とラベル画像とからなる画像ペアを複数準備する。
【0065】
次に、図10Bに示すように、入力が異常部画像となり、出力が対応するラベル画像となるように、当該モデルを構成するニューラルネットワークを教師あり学習させる。これにより、異常部画像が入力されるとラベル画像を生成させるモデルを得ることができる。
【0066】
なお、図10Bには、当該モデルが、全結合型の4層のニューラルネットワークで構成される場合の例を示しているが、4層でなくてもよく全結合型でなくてもよい。pix2pixなど画像ペアの敵対生成学習を行うGAN(Generative Adversarial Networks)のようなニューラルネットワークで構成されてもよい。すなわち、異常部画像が入力されるとラベル画像を生成させるモデルを得ることができるニューラルネットワークの構成であれば、どのような構成であってもよい。
【0067】
また、ラベル画像の生成方法として、画像処理を用いてもよい。より具体的には、ラベル画像生成部102は、異常部画像に映る異常部分の材質に応じた色ラベルに画像処理により異常部分を変換することで、異常部画像からラベル画像を生成してもよい。
【0068】
本実施の形態では、ラベル画像生成部102に、異常部画像を例えばHSV色空間に変換させた上で、色味に基づいて異常部画像に映る異常部分の領域を抽出する。そして、ラベル画像生成部102は、ある範囲をもった色相、彩度、明度で表される色味すなわち異常部分の材質に応じた色ラベルに、異常部分の領域を変換(置換)させることで、異常部画像からラベル画像を生成させればよい。なお、HSV色空間は、色味を1パラメータで扱い易いことから、異常部画像をHSV色空間に変換させるとして説明したが、これに限らない。RGB色空間に変換させた上で同様の処理を行うとしてもよい。
【0069】
このようにして、ラベル画像生成部102は、画像取得部101により取得された異常部画像から、ラベル画像を生成することができる。
【0070】
[1-2-3.重ね合わせ画像生成部103]
重ね合わせ画像生成部103は、ラベル画像生成部102により生成されたラベル画像と、正常パターン画像とを重ね合わせることで、重ね合わせ画像を生成する。なお、正常パターン画像は、デバイス30の異常部分と対応する位置で、かつ当該異常部分がない配線パターンを含む画像である。換言すると、正常パターン画像は、外観検査画像のうち異常部分を含む領域の画像と同一スケールの画像であって予め用意された画像である。なお、正常パターン画像は、外観検査画像から得た画像であってもよいし、外観検査画像と同スケールの画像であり検査に必要な部分のみを描画された画像でありあらかじめ用意されたものであってもよい。
【0071】
図11は、実施の形態に係るパターン検査画像に対応する正常パターン画像の一例を示す図である。図11の(a)には、図4のパターン検査画像41が示されており、図11の(b)には、パターン検査画像41と同一パターンの画像かつ異常部分のない画像である正常パターン画像44が示されている。図11の(b)では、以降の重ね合わせ処理などの処理負荷を軽減するため、配線1~配線6で表される配線部分のみが示されるように2値化処理された配線部正常パターン画像が示されている。正常パターン画像44は、2値化処理されていなくてもよい。
【0072】
図12は、実施の形態に係る重ね合わせ画像の一例を示す図である。図12に示す例では、図8で示されるラベル画像43と、図11の(b)で示される正常パターン画像44とが重ね合わせられた重ね合わせ画像45が示されている。
【0073】
つまり、本実施の形態では、重ね合わせ画像生成部103は、ラベル画像生成部102により生成された例えば図8に示すラベル画像43を取得する。また、重ね合わせ画像生成部103は、撮像装置20により取得されたデバイス30の外観検査画像から、パターン検査画像41と同一パターンの画像かつ異常部分のない画像である正常パターン画像44をクロップ等により取得する。そして、重ね合わせ画像生成部103は、取得したラベル画像43と正常パターン画像44とを重ね合わせることで、重ね合わせ画像45を生成する。
【0074】
なお、重ね合わせ画像生成部103は、ラベル画像における色ラベル部分の配線等のパターンと、正常パターン画像における配線等のパターンとを誤差なく重ね合わせる必要がある。以下、正常パターン画像とラベル画像とを誤差なく重ね合わせる方法について説明する。
【0075】
本実施の形態では、まず、重ね合わせ画像生成部103は、ラベル画像の元になっているパターン検査画像の繰り返されるパターン(レイアウトパターン)とその繰り返されるパターン内での位置とを検出する。なお、繰り返されるパターン(レイアウトパターン)とその繰り返されるパターン内での位置とを以下では位相と称する。
【0076】
次に、重ね合わせ画像生成部103は、正常パターン画像の位相をラベル画像の元になっているパターン検査画像の位相と合わせた(調整した)上で、正常パターン画像とラベル画像とを重ね合わせる画像処理を行う。
【0077】
以下、ラベル画像の元になっているパターン検査画像の位相検出方法の一例について説明する。位相検出方法には、例えば差分画像を用いる方法と差分プロファイルを用いる方法とがある。
【0078】
図13は、実施の形態に係る差分画像を用いる位相検出方法の一例を説明するための図である。図14Aは、実施の形態に係る差分画像を説明するための図である。図14Bは、実施の形態に係る差分画像のヒストグラムの一例を示す図である。
【0079】
図13の(a)には、繰り返しパターンが特定しやすい所定の領域の画像でありかつ事前に取得した画像であるリファレンス画像71の一例が示されており、図13の(b)には、パターン検査画像72の一例が示されている。なお、リファレンス画像71は、パターン検査画像72の位相0(繰り返しパターンの基準位置)の画像であるとする。
【0080】
より具体的には、重ね合わせ画像生成部103は、リファレンス画像71を、例えばパターン検査画像72のクロップ位置73aを開始位置としてラスタスキャンして、クロップ位置73aのパターン検査画像72とリファレンス画像71とがぴったり重なるパターン検査画像72の位置を検出する。重ね合わせ画像生成部103はリファレンス画像71がぴったり重なるパターン検査画像72の位置を検出した場合、そのパターン検査画像72の位置が位相0であるとして検出する。
【0081】
より詳細には、重ね合わせ画像生成部103は、例えば図14Aの(a)に示されるリファレンス画像71と、クロップ位置73aにおいてパターン検査画像72からクロップされた例えば図14Aの(b)に示されるクロップ画像73との差分画像を生成する。そして、重ね合わせ画像生成部103は、ラスタスキャンしたクロップ位置73aにおける例えば図14Bに示すような差分画像のヒストグラムを算出し、算出したヒストグラムの分散が最小となるクロップ位置73aを位相0であると決定すればよい。差分画像のヒストグラムの分散が最小となるクロップ位置73aが、当該クロップ位置73aのクロップ画像73とリファレンス画像71とが一致する(ぴったり重なる)パターン検査画像72の位置とみなせるからである。
【0082】
図15は、実施の形態に係る差分プロファイルを用いる位相検出方法の一例を説明するための図である。図16Aは、実施の形態に係る差分プロファイルを説明するための図であり、図16Bは、実施の形態に係る差分プロファイルのヒストグラムの一例を示す図である。
【0083】
図15の(a)には、リファレンス画像71のX成分の輝度プロファイル71aの一例が示されている。図15の(b)には、パターン検査画像72のX成分の輝度プロファイル72aの一例が示されている。なお、Y成分の輝度プロファイルの場合も同様のことが言えるため、ここでは、X成分の輝度プロファイルについてのみ説明する。
【0084】
より具体的には、重ね合わせ画像生成部103は、リファレンス画像71のX成分の輝度プロファイル71aを、例えばパターン検査画像72のX成分の輝度プロファイル72aのクロップ位置74aを開始位置としてラインスキャンする。重ね合わせ画像生成部103は、クロップ位置74aの輝度プロファイル72aと、リファレンス画像71の輝度プロファイル71aとがぴったり重なる輝度プロファイル72a上の位置を検出する。重ね合わせ画像生成部103はリファレンス画像71の輝度プロファイル71aがぴったり重なる輝度プロファイル72aの位置を検出した場合、そのパターン検査画像72の位置をX方向の位相0であるとして検出する。
【0085】
より詳細には、重ね合わせ画像生成部103は、例えば図16Aの(a)に示されるリファレンス画像71の輝度プロファイル71aと、例えば図16Aの(b)に示されるクロッププロファイル74との差分プロファイルを生成する。例えば図16Aの(c)には、差分プロファイルの一例が示されている。また、例えば図16Aの(b)に示されるクロッププロファイル74は、クロップ位置74aにおいてパターン検査画像72の輝度プロファイル72aからクロップされたX成分の輝度プロファイルである。
【0086】
そして、重ね合わせ画像生成部103は、ラインスキャンしたクロップ位置74aにおける図16Bに示すような差分プロファイルのヒストグラムを算出し、算出したヒストグラムの分散が最小となるクロップ位置74aがX成分の位相0であると決定すればよい。差分プロファイルのヒストグラムの分散が最小となるクロップ位置74aが、当該クロップ位置74aのクロッププロファイル74とリファレンス画像71の輝度プロファイル71aとが略一致する(ぴったり重なる)パターン検査画像72のX方向の位置とみなせるからである。
【0087】
このようにして、重ね合わせ画像生成部103は、ラベル画像と対応する正常パターン画像とを重ね合わせることで、重ね合わせ画像を生成することができる。
【0088】
[1-2-4.判定部104]
判定部104は、重ね合わせ画像生成部103により生成された重ね合わせ画像を用いて、予め定められた決定木に従って色ラベル部分と異常部分がない配線パターンとの重なり判定を行うことにより、異常部分がデバイスの欠陥となっているか否かを判定する。ここで、判定部104は、重なり判定を行う際、決定木に従って色ラベルと正常パターン画像に含まれる第1の配線及び第2の配線との重なり判定を行うことで異常部分が第1の配線及び第2の配線を短絡させているか判定してもよい。なお、判定部104は、重なり判定を行う際、決定木に従って色ラベルと正常パターン画像に含まれる第1の配線との重なり判定を行うことで異常部分が第1の配線を断線させているか判定してもよい。
【0089】
本実施の形態では、判定部104は、重ね合わせ画像生成部103により生成された例えば図12に示される重ね合わせ画像45を用いて、予め定められた決定木に従って、配線間を色ラベル部分がブリッジしているかを重なり判定する。これにより、判定部104は、色ラベル部分が配線間をショートさせているかを判定することができる。そして、判定部104は、色ラベル部分が配線間をショートさせている場合、異常部分がデバイスの欠陥となっていると判定し、色ラベル部分が配線間をショートさせていない場合、異常部分がデバイスの欠陥となっていないと判定する。
【0090】
図17は、実施の形態に係るショート判定を行うための決定木ルーチンを示すフローチャートの一例を示す図である。図17には、図12に示される重ね合わせ画像45を用いて重なり判定を行うことで、ショート判定を行う決定木ルーチンの一例が示されている。
【0091】
図17において、まず、判定部104は、色ラベル部分31cに対応する異常部分31bが配線1と配線2との間をショートさせているかを判定する(S1)。より具体的には、判定部104は、図12に示される重ね合わせ画像45において、異常部分31bに対応する色ラベル部分31cが、配線1と配線2との間をブリッジしているかを重なり判定する。これにより、判定部104は、異常部分31bが配線1と配線2との間をショートさせているかを判定することができる。
【0092】
ステップS1において、異常部分31bが配線1と配線2との間をショートさせていない場合(ステップS1でいいえ)、判定部104は、異常部分31bが配線2と配線3との間をショートさせているかを判定する(S2)。より具体的には、判定部104は、図12に示される重ね合わせ画像45において、色ラベル部分31cが、配線2と配線3との間をブリッジしているかを重なり判定することで、異常部分31bが配線2と配線3との間をショートさせているかを判定する。
【0093】
ステップS2において、異常部分31bが配線2と配線3との間をショートさせていない場合(ステップS2でいいえ)、判定部104は、異常部分31bが配線3と配線4との間をショートさせているかを判定する(S3)。より具体的には、判定部104は、図12に示される重ね合わせ画像45において、色ラベル部分31cが、配線3と配線4との間をブリッジしているかを重なり判定することで、異常部分31bが配線3と配線4との間をショートさせているかを判定する。
【0094】
判定部104は、このような判定を、配線間の数だけ行い、すべてのステップにおいて異常部分31bが配線間をショートさせていない場合には、異常部分31bがデバイス30の欠陥となっていないと判定する(S4)。
【0095】
一方、ステップS1、S2、S3等において、異常部分31bが配線間をショートさせている場合には、異常部分31bがデバイス30の欠陥となっていると判定する(S5)。
【0096】
なお、ショート判定を行うための重なり判定は、アルゴリズムで表現されてもよい。以下、ショート判定を行うアルゴリズムの一例について説明する。
【0097】
図18は、ショート判定を行うための重なり判定のアルゴリズムに用いる重ね合わせ画像の一例を示す図である。図18に示す重ね合わせ画像45aは、図12に示される重ね合わせ画像45の配線1~配線4を配線1及び配線2の2本に簡略化した画像である。
【0098】
判定部104は、図18に示す重ね合わせ画像45aに対して以下の1)~5)で記述される重なり判定のアルゴリズムを実施する。
【0099】
1)まず、判定部104は、重ね合わせ画像45aにおける配線1パターン、配線2パターン、及び、色ラベル部分31cの領域(画像)を、それぞれ階調で示される数値などによる2次元配列に変換する。次に、2次元配列のうち、配線1パターンの領域に対応する部分を数値「1」、配線2パターンの領域に対応する部分を数値「2」、色ラベル部分31cの領域に対応する部分を数値「3」でフィルする。さらに、パターンのない領域に対応する部分を数値「0」でフィルする。これにより、判定部104は、重ね合わせ画像45aの領域を、単純な数値の配列に置き換えることができる。
【0100】
2)次に、判定部104は、配列1の数値「1」を数値「5」で置き換える。これにより、配線1パターンの領域に対応する部分である配列1の領域がチェック済であることを示すことができる。
【0101】
3)次に、判定部104は、PASS1として、図18に示す重ね合わせ画像45aの左上から右下に向けて配線1の全ての数値「5」について、その上下左右8か所に対応する場所に数値「2」または「3」が存在する場合に、その場所を数値「5」へ置き換える。
【0102】
4)次に、判定部104は、1)においてフィルされた数値「2」に対応する場所が数値「5」に置き換わっていたら、配線1と配線2とは色ラベル部分31cによってショートしていると判定する。
【0103】
5)そして、判定部104は、PASS1と同様に、PASS2として重ね合わせ画像45aの右下から左上、PASS3として重ね合わせ画像45aの左下から右上、PASS4として重ね合わせ画像45aの画像右上から左下に向けて、3)4)の動作を実施する。
【0104】
なお、上記では、予め定めた決定木に従った重なり判定により異常部分が配線間をショートさせるかを判定することについて説明したが、決定木は、デバイス30の構造に応じて予め定めればよく、デバイス30の構造においてショート判定すべき配線間の組み合わせなどに基づき予め定めればよい。
【0105】
図19A図19Eは、実施の形態に係る決定木に従いSL(Source Layer)工程でショート判定される配線間を説明するための図である。SL工程は、デバイス30の完成前の製造工程であり、ソースレイヤが形成され、ソースレイヤにおける配線等が形成された工程である。図19A図19Eには、SL工程におけるデバイス30の層構造の一例が示されている。図中のデバイス30は、ガラス基板と、ゲート絶縁膜と、層間絶縁膜とがこの順に形成されている。ガラス基板とゲート絶縁膜との一部領域にはポリシリコンが形成され、ポリシリコンの上のゲート絶縁膜上、層間絶縁膜上には、ゲート、ソース及びドレインが形成されている。また、ゲート絶縁膜上には、初期化電源線INI、イネーブル線EN及び電源線Vccが形成され、層間絶縁膜上には、参照電圧制御線REF、参照電源線Vref、走査線WS及び電源線Vccが形成されている。
【0106】
このような層構造を有するSL工程中のデバイス30は、SL層間において、例えば図19Aの(i)で示されるREF-Vrefの配線間、例えば図19Bの(ii)で示されるREF-WSの配線間、例えば図19Cの(iii)で示されるWS-Vccの配線間に対してショート判定されることになる。また、SL工程中のデバイス30は、GL層(Gate Layer)間において、例えば図19Dの(iv)で示されるEN-Vccの配線間、例えば図19Eの(v)で示されるINI-ENの配線間に対してショート判定されることになる。
【0107】
このように、デバイス30の構造により定まる配線間の組み合わせに基づいてショート判定に用いる決定木を定めることができる。
【0108】
なお、SL工程においてデバイス30の配線間のショート判定を行うとして説明したが、これに限らない。GL工程においてデバイス30の配線間のショート判定を行ってもよい。この場合、GL工程におけるデバイス30の構造により定まる配線間の組み合わせに応じてショート判定に用いる決定木を定めればよい。
【0109】
[2.検査装置10の動作]
以上のように構成された検査装置10の動作の一例について以下説明する。
【0110】
図20は、実施の形態における検査装置10の動作概要を示すフローチャートである。図21は、実施の形態における検査装置10の動作例の説明図である。
【0111】
まず、検査装置10は、異常部分を含む異常部画像を取得する(S10)。より具体的には、検査装置10は、デバイス30の外観検査画像から画像処理により得たデバイス30の配線パターンの異常部分を含む画像である異常部画像を取得する。例えば、検査装置10は、SL工程におけるデバイス30の外観検査画像として、図21の(a)に示されるパターン残りの異常部分81aを含むパターン検査画像81を取得する。検査装置10は、取得したパターン検査画像81に背景差分法を用いた画像処理を施すことにより、図21の(b)に示される異常部分82aを含む異常部画像82を生成して取得する。
【0112】
次に、検査装置10は、ラベル画像を生成する(S11)。より具体的には、検査装置10は、ステップS10で取得した異常部画像から、異常部分が位置するレイヤに基づく色ラベルに異常部分が変換されたラベル画像を生成する。例えば、検査装置10は、図21の(b)に示される異常部分82aを含む異常部画像82から、異常部分82aの材質に応じた色ラベルに異常部分82aを変換した色ラベル部分83aを含む図21の(c)に示されるラベル画像83を生成する。なお、ラベル画像83を生成する方法には、上述したように、ニューラルネットワークで構成される生成モデルなどの学習済のモデルを用いる方法と、異常部分82aの色味に基づいて画像処理を用いる方法とがある。
【0113】
次に、検査装置10は、ラベル画像と正常パターン画像とを重ね合わせた画像を生成する(S12)。より具体的には、検査装置10は、ステップS11で生成したラベル画像と、デバイス30の異常部分と対応する位置で、かつ当該異常部分がない配線パターンを含む正常パターン画像とを重ね合わせることで、重ね合わせ画像を生成する。例えば、検査装置10は、図21の(c)に示されるラベル画像83の元になっている異常部分81aを含むパターン検査画像81の位相を検出し、図21の(d)に示される正常パターン画像84の位相を、検出した位相に合うように調整する。なお、正常パターン画像84及びパターン検査画像81の位相は、上述したように、正常パターン画像84及びパターン検査画像81において繰り返されるパターン(レイアウトパターン)とその繰り返されるパターン内での位置を意味する。そして、検査装置10は、位相を合わせた(調整した)正常パターン画像84とラベル画像83とを重ね合わせる画像処理を行うことで、図21の(e)に示される重ね合わせ画像85を生成する。
【0114】
次に、検査装置10は、決定木に従って、ステップS12で生成した重ね合わせ画像から、異常部分がデバイスの欠陥となっているか否かを判定する(S13)。より具体的には、検査装置10は、ステップS12で生成した重ね合わせ画像を用いて、予め定められた決定木に従って色ラベル部分と当該異常部分がない配線パターンとの重なり判定を行うことにより、異常部分がデバイスの欠陥となっているか否かを判定する。以下、図22を用いて、図21に示される重ね合わせ画像85に対する重なり判定によるショート判定の動作例について説明する。
【0115】
図22は、図21に示される重ね合わせ画像85に対する重なり判定の動作例を示すフローチャートである。図22では、SL工程のデバイス30に対する重なり判定の動作例が示されている。なお、図21に示す例では、色ラベル部分83aは、異常部分82aの材質がソースレイヤである場合に応じた色を表すハッチングで表されている。図22では、この色ラベル部分83aをSLラベルと称している。
【0116】
図22のステップS131、S132、S133等において、検査装置10は、SLラベルが配線間をブリッジしているかを判定する。SL工程のデバイス30には、信号線Sig、参照電圧制御線ref、電源線Vcc、初期化電源線Iniなどが形成されている。ステップS131では、Sig-refの配線間をSLラベルがブリッジしているか重なり判定する場合の例が示されている。同様に、ステップS132、S133では、Sig-Vccの配線間、Sig-iniの配線間をSLラベルがブリッジしているか重なり判定する場合の例が示されている。ステップS131、S132、S133等においてSLラベルが配線間をブリッジしていない場合(ステップS131、S132、S133でいいえ)、検査装置10は、OKすなわち異常部分82aがデバイス30の欠陥となっていないと判定する(ステップS134)。
【0117】
一方、ステップS131、S132、S133等においてSLラベルが配線間をブリッジしている場合(ステップS131、S132、S133ではい)、NGすなわち異常部分82aがデバイス30の欠陥となっていると判定してもよい(ステップS137)。なお、図22に示す例では、SLラベルが配線間をブリッジしている場合でも一定の場合にはレーザリペアが可能であるので、レーザリペアが可能である判定を含めた動作例が示されている。すなわち、SLラベルの面積が所定の大きさであるαμm以上でなく、SLラベルが3配線上をブリッジしていない場合(ステップS135、S136でいいえ)、レーザリペアが可能であると判定する(ステップS138)。これにより、異常部分82aがデバイス30の欠陥にならないようにすることができる。
【0118】
[3.効果等]
本実施の形態の検査装置10等によれば、背景差分法の画像処理を用いてパターン検査画像から異常部分のみを抜き出した異常部画像を取得(または生成)し、異常部分をその材質によって色分けされた色ラベル部分に変換したラベル画像を異常部画像から生成する。さらに、本実施の形態の検査装置10等によれば、正常パターン画像とラベル画像を重ね合わせ、決定木に従って正常な配線パターンとラベル画像の色ラベル部分との重なり判定を行うことで異常部分がデバイス(製品)の欠陥を引き起こしているかどうかを判定する。
【0119】
このようにして、本実施の形態の検査装置10等は、パターンが形成されたレイヤを1層以上有する積層構造からなるデバイスの配線パターンの異常部分が欠陥に結び付くか否かを自動判定することができる。つまり、本実施の形態の検査装置10等は、パターン検査によって検出されたパターン異常が製品の欠陥となるかどうかを自動判定できる。
【0120】
なお、本実施の形態の検査装置10等によれば、ラベル画像を生成する方法には、ニューラルネットワークで構成される生成モデルなどの学習済のモデルを用いる方法と、異常部分の色味に基づいて画像処理を用いる方法とがある。
【0121】
学習済のモデルを用いる方法では、認識と補完とが得意なニューラルネットワークのモデルに高精度にラベル画像を自動生成させることができる。この場合、本実施の形態の検査装置10等は、認識と補完とが得意なモデルにラベル画像を生成させる一方で、モデルが得意でない単純な重なり判定を画像処理に委ねて、異常部分が製品の欠陥につながるか否かの判定をルールが明確な決定木を用いる。これにより、判定精度が高く、かつ判定ルールが明確な手法となることで、デバイスの配線パターンの異常部分が欠陥に結び付くか否かを自動判定することができる。
【0122】
なお、製造プロセスが大きく変わらないかぎり、異常部分の認識と補完は品種に依存しない。このため、品種ごとに正常パターン画像と異常部分が製品の欠陥につながるか否かの判定を担う決定木さえ用意できれば、一番大変なモデルの学習を品種ごとに行わなくてもよいという効果もある。つまり、本実施の形態の検査装置10等によれば、容易に多品種展開ができるので、多品種におけるデバイスの配線パターンの異常部分が欠陥に結び付くか否かを自動判定することができる。
【0123】
なお、異常部分の色味に基づいて画像処理を用いる方法では、特定の位置に特定の「材質」が現れる性質を利用して、ラベル画像を生成するため、プロセス変動による色バラツキの影響を最小限にすることができる。
【0124】
(変形例)
なお、上記の実施の形態では、異常部分がパターン残りがある部分であるとして説明したが、これに限らない。異常部分がパターン欠けがある部分であってもよい。ここで、パターン欠けである異常部分とは、形成されたパターンのうち形成される配線パターンが一部欠けているパターン部分である。
【0125】
異常部分がパターン欠けがある部分である場合の検査装置10の動作は、異常部分がパターン残りがある部分である場合と比較すると、重なり判定で用いる決定木が短絡判定(ショート判定)ではなく断線判定である点のみ異なるものの、図20で示した通りである。以下、図20を用いて、異常部分がパターン欠けがある部分である場合の検査装置10の動作例について説明する。以下では、上述した実施の形態と異なる点を中心に説明する。
【0126】
図23は、変形例に係る検査装置10の動作例の説明図である。
【0127】
図20において、まず、検査装置10は、異常部分を含む異常部画像を取得する(S10)。本変形例では、例えば、検査装置10は、SL工程におけるデバイス30の外観検査画像として、図23の(a)に示されるパターン欠けの異常部分91aを含むパターン検査画像91を取得する。検査装置10は、取得したパターン検査画像91に背景差分法を用いた画像処理を施すことにより、図23の(b)に示される異常部分92aを含む異常部画像92を生成して取得する。
【0128】
次に、検査装置10は、ラベル画像を生成する(S11)。本変形例では、例えば、検査装置10は、図23の(b)に示される異常部分92aを含む異常部画像92から、異常部分92aの材質に応じた色ラベルに異常部分92aを変換した色ラベル部分93aを含む図23の(c)に示されるラベル画像93を生成する。なお、ラベル画像93を生成する方法には、上述したように、ニューラルネットワークで構成される生成モデルなどの学習済のモデルを用いる方法と、異常部分92aの色味に基づいて画像処理を用いる方法とがある。
【0129】
次に、検査装置10は、ラベル画像と正常パターン画像とを重ね合わせた画像を生成する(S12)。本変形例では、例えば、検査装置10は、図23の(c)に示されるラベル画像93の元になっている異常部分91aを含むパターン検査画像91の位相を検出し、図23の(d)に示される正常パターン画像94の位相を、検出した位相に合うように調整する。そして、検査装置10は、位相を合わせた(調整した)正常パターン画像94とラベル画像93とを重ね合わせる画像処理を行うことで、図23の(e)に示される重ね合わせ画像95を生成する。
【0130】
次に、検査装置10は、決定木に従って、ステップS12で生成した重ね合わせ画像から、異常部分がデバイスの欠陥となっているか否かを判定(S13)。より具体的には、検査装置10は、ステップS12で生成した重ね合わせ画像を用いて、予め定められた決定木に従って色ラベル部分と異常部分がない配線パターンとの重なり判定を行うことにより、異常部分がデバイスの欠陥となっているか否かを判定する。以下、図24を用いて、図23に示される重ね合わせ画像95に対する重なり判定による断線判定の動作例について説明する。
【0131】
図24は、図23に示される重ね合わせ画像95に対する重なり判定の動作例を示すフローチャートである。図24では、SL工程のデバイス30に対する重なり判定の動作例が示されている。また、図23に示す例では、色ラベル部分93aは、異常部分92aの材質がソースレイヤである場合に応じた色を表すハッチングで表されている。図24では、この色ラベル部分93aをSLラベルと称している。なお、異常部分の材質がゲートレイヤである場合には、色ラベル部分が異常部分の材質がゲートレイヤに応じた色を表すハッチングで表される。この場合の色ラベル部分をGLラベルと称する。同様に、異常部分の材質がコンタクトホールである場合には、色ラベル部分が異常部分の材質がコンタクトホールに応じた色を表すハッチングで表される。この場合の色ラベル部分をCHラベルと称する。
【0132】
図24において、検査装置10は、まず、GLラベルがSig線(信号線の配線)を分断しているかを重なり判定する(S231)。
【0133】
ステップS231で、GLラベルがSig線(信号線の配線)を分断していると判定する場合(ステップS231ではい)、NGすなわち異常部分がデバイス30の欠陥となっていると判定する(S232)。SL工程のデバイス30に対する重なり判定であるので、SL層よりも下に形成されるGL層における配線の断線は修復不可能であるから、NGと判定する。
【0134】
また、ステップS233で、検査装置10は、SLラベルがSig線を分断しているか否かを判定する。ステップS233でSLラベルがSig線を分断していると判定する場合(ステップS233ではい)、さらに、SLラベルの面積が所定の大きさであるαμm以上であるかを判定する(S234)。なお、ステップS233で、SLラベルがSig線を分断していると判定する場合(ステップS233ではい)、NGすなわち異常部分92aがデバイス30の欠陥となっていると判定してもよい。
【0135】
ステップS234において、SLラベルの面積が所定の大きさ以上である場合(ステップS234ではい)、NGすなわち異常部分92aがデバイス30の欠陥となっていると判定する(S232)。一方、ステップS234において、SLラベルの面積が所定の大きさ以上でない場合(ステップS234でいいえ)、錯体修正によりリペア可能であると判定する(S235)。これにより、異常部分92aがデバイス30の欠陥にならないようにすることができる。SLラベルが、配線を分断していてもSLラベルの面積が所定の大きさより小さいと、SLラベルがSL層にあるため錯体金属を用いることでリペア可能であるからである。図24に示す動作例では、NGと判定する場合の例外として錯体修復可能か否かをさらに判定している。
【0136】
また、ステップS236で、検査装置10は、CHラベルがSig線内に存在しているか否かを判定する。ステップS236で、CHラベルがSig線内に存在している場合(ステップS236ではい)、NGすなわち異常部分92aがデバイス30の欠陥となっていると判定する(S232)。
【0137】
ここで、ステップS231、S233、S236等で、判定結果がいいえの場合(ステップS231、S233、S236等でいいえ)、検査装置10は、OKすなわち異常部分92aがデバイス30の欠陥となっていないと判定する(ステップS237)。
【0138】
以上のように、本変形例の検査装置10等によれば、パターンが形成されたレイヤを1層以上有する積層構造からなるデバイスの配線パターンの異常部分がパターン欠けであっても、当該異常部分が欠陥に結び付くか否かを自動判定することができる。つまり、パターン検査によって検出されたパターン異常が製品の欠陥となるかどうかを自動判定できる。
【0139】
(その他の実施の形態)
以上、本開示に係る検査装置及び判定方法などについて、各実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、これらの実施の形態に限定されるものではない。本開示の主旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を各実施の形態に施したものや、各実施の形態における一部の構成要素を組み合わせて構築される別の形態も、本開示の範囲内に含まれる。
【0140】
また、以下に示す形態も、本開示の一つ又は複数の態様の範囲内に含まれてもよい。
【0141】
(1)上記の判定装置を構成する構成要素の一部は、マイクロプロセッサ、ROM、RAM、GPU、ハードディスクユニット、ディスプレイユニット、キーボード、マウスなどから構成されるコンピュータシステムであってもよい。前記RAM又はハードディスクユニットには、コンピュータプログラムが記憶されている。前記マイクロプロセッサが、前記コンピュータプログラムにしたがって動作することにより、その機能を達成する。ここでコンピュータプログラムは、所定の機能を達成するために、コンピュータに対する指令を示す命令コードが複数個組み合わされて構成されたものである。
【0142】
(2)上記の判定装置を構成する構成要素の一部は、1個のシステムLSI(Large Scale Integration:大規模集積回路)から構成されているとしてもよい。システムLSIは、複数の構成部を1個のチップ上に集積して製造された超多機能LSIであり、具体的には、マイクロプロセッサ、ROM、RAM、GPUなどを含んで構成されるコンピュータシステムである。前記RAMには、コンピュータプログラムが記憶されている。前記マイクロプロセッサまたは前記GPUが、前記コンピュータプログラムにしたがって動作することにより、システムLSIは、その機能を達成する。
【0143】
(3)上記の判定装置を構成する構成要素の一部は、各装置に脱着可能なICカード又は単体のモジュールから構成されているとしてもよい。前記ICカード又は前記モジュールは、マイクロプロセッサ、ROM、RAM、GPUなどから構成されるコンピュータシステムである。前記ICカード又は前記モジュールは、上記の超多機能LSIを含むとしてもよい。マイクロプロセッサまたは前記GPUが、コンピュータプログラムにしたがって動作することにより、前記ICカード又は前記モジュールは、その機能を達成する。このICカード又はこのモジュールは、耐タンパ性を有するとしてもよい。
【0144】
(4)また、上記の判定装置を構成する構成要素の一部は、前記コンピュータプログラム又は前記デジタル信号をコンピュータで読み取り可能な記録媒体、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、CD-ROM、MO、DVD、DVD-ROM、DVD-RAM、BD(Blu-ray(登録商標) Disc)、半導体メモリなどに記録したものとしてもよい。また、これらの記録媒体に記録されている前記デジタル信号であるとしてもよい。
【0145】
また、上記の判定装置を構成する構成要素の一部は、前記コンピュータプログラム又は前記デジタル信号を、電気通信回線、無線又は有線通信回線、インターネットを代表とするネットワーク、データ放送等を経由して伝送するものとしてもよい。
【0146】
(5)本開示は、上記に示す方法であるとしてもよい。また、これらの方法をコンピュータにより実現するコンピュータプログラムであるとしてもよいし、前記コンピュータプログラムからなるデジタル信号であるとしてもよい。
【0147】
(6)また、本開示は、マイクロプロセッサとGPUとメモリを備えたコンピュータシステムであって、前記メモリは、上記コンピュータプログラムを記憶しており、前記マイクロプロセッサまたは前記GPUは、前記コンピュータプログラムにしたがって動作するとしてもよい。
【0148】
(7)また、前記プログラム又は前記デジタル信号を前記記録媒体に記録して移送することにより、又は前記プログラム又は前記デジタル信号を、前記ネットワーク等を経由して移送することにより、独立した他のコンピュータシステムにより実施するとしてもよい。
【0149】
(8)また、上記の判定装置を構成する構成要素の一部をクラウドまたはサーバ装置でおこなってもよい。
【0150】
(9)上記実施の形態及び上記変形例をそれぞれ組み合わせるとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0151】
本開示は液晶デバイス、有機ELといったデバイスの製造工程において外観検査によるパターン検査で見つかった配線パターンの異常部分が製品の欠陥に結び付くか否かを自動判定することができる検査方法、検査装置及びプログラムなどに利用できる。
【符号の説明】
【0152】
10 検査装置
20 撮像装置
21 ステージ
22 ステージ駆動部
30 デバイス
31a、31b、32a、32b、61a、63a、65a、67a、81a、82a、91a、92a 異常部分
31c、62a、64a、66a、68a、83a、93a 色ラベル部分
41、51、72、81、91 パターン検査画像
42、53、61、63、65、67、82、92 異常部画像
43、62、64、66、68、83、93 ラベル画像
44、52、84、94 正常パターン画像
45、45a、85、95 重ね合わせ画像
71 リファレンス画像
71a、72a 輝度プロファイル
73 クロップ画像
73a、74a クロップ位置
74 クロッププロファイル
101 画像取得部
102 ラベル画像生成部
103 重ね合わせ画像生成部
104 判定部
1000 コンピュータ
1001 入力装置
1002 出力装置
1003 CPU
1004 内蔵ストレージ
1005 RAM
1006 GPU
1007 読取装置
1008 送受信装置
1009 バス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図9A
図9B
図9C
図9D
図10A
図10B
図11
図12
図13
図14A
図14B
図15
図16A
図16B
図17
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図19A
図19B
図19C
図19D
図19E
図20
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図24