(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023076074
(43)【公開日】2023-06-01
(54)【発明の名称】山越器
(51)【国際特許分類】
E01B 29/05 20060101AFI20230525BHJP
E01B 29/20 20060101ALI20230525BHJP
B66C 19/00 20060101ALI20230525BHJP
【FI】
E01B29/05
E01B29/20
B66C19/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021189253
(22)【出願日】2021-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】390035312
【氏名又は名称】東光産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141221
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 和明
(72)【発明者】
【氏名】前田 知樹
【テーマコード(参考)】
2D057
【Fターム(参考)】
2D057AB17
2D057BA13
(57)【要約】
【課題】山越器自体の軽量化と製造の簡素化と作業のコストダウンを図る。
【解決手段】
山越器2は、走行桁3とこの走行桁3の両端を支持する支持脚(脚)4、5とを備え、この走行桁3を合成樹脂から構成している。走行桁3は、合成樹脂製本体10と、この本体10の上面に展着された板体(金属板)12とを備えている。合成樹脂本体10は、一対の合成樹脂片11A、11Bを所定の間隙Sを確保して平行に並設して構成される。合成樹脂片11A、11Bは中空角筒状に成型されるとともに、下部には両合成樹脂片11A、11Bを接続具により連結する接続孔13が形成され、各合成樹脂片11A、11Bの接続孔13、13間には、繋ぎ板15が介在されるようになっている。山越器2は、機材Mを、走行桁3の板体12上に載置して、機材Mを走行自在に支持するようになっている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機材を走行自在に支持する走行桁とこの走行桁の両端を支持する脚とを備えた山越器であって、
走行桁を合成樹脂から構成したことを特徴とする山越器。
【請求項2】
走行桁は、合成樹脂製の本体と、この本体上面に展着された金属板とを備えていることを特徴とする請求項1に記載の山越器。
【請求項3】
合成樹脂本体は、一対の合成樹脂片を所定の間隙を確保して平行に設けて構成されることを特徴とする請求項2に記載の山越器。
【請求項4】
各合成樹脂片は中空角筒状に成型され、下部に形成された接続孔を介して接続具により連結されるとともに、両合成樹脂片は、長手方向両端が結合具により連結されることを特徴とする請求項3に記載の山越器。
【請求項5】
両合成樹脂片は、各合成樹脂片の下部に繋ぎ板を介装させて連結されることを特徴とする請求項4に記載の山越器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道において用いられる山越器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道における転轍機やレール等の重量物を吊り上げて移動するには、山越器(吊上器、巻き上げ機)が用いられる。この山越器は、走行桁を、所定の間隙を確保して平行に延設された一対の鋼材製横架部材と、このこの横架部材の両端を連結して支持する脚とを備えて構成される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような従来の山越器では、角筒状に形成された横架部材を2本配置しなければならないので、走行桁の重量化が避けられず、運搬時に難渋するという問題がある。また、設置する際に、多数の作業員が必要になるという問題がある。
【0005】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、山越器の軽量化を図るとともに、製造の簡素化と作業のコストダウンを図ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に係る山越器は、機材を走行自在に支持する走行桁とこの走行桁の両端を支持する脚とを備えた山越器であって、走行桁を合成樹脂から構成したことを特徴としている。
【0007】
本発明の請求項1に係る山越器では、機材を走行自在に支持する走行桁とこの走行桁の両端を支持する脚とを備えた山越器であって、走行桁を合成樹脂から構成したことにより、山越器自体が軽量化される。このため、運搬作業や設置作業が容易になり、作業員の負担を軽減するだけでなく、作業人員を減らすことができる。
【0008】
本発明に係る山越器は、走行桁は、合成樹脂製の本体と、この本体上面に展着された金属板とを備えているが好ましい。係る構成とすることにより、機材が走行する走行桁の損耗を防ぐことができる。また、本発明に係る山越器は、合成樹脂本体が、一対の合成樹脂片を所定の間隙を確保して平行に設けて構成されることが好ましい。係る構成とすることにより、機材を一対の合成樹脂片間で走行させることができる。さらに、本発明に係る山越器は、各合成樹脂片は中空角筒状に成型され、下部に形成された接続孔を介して接続具により連結されるとともに、両合成樹脂片は、長手方向両端が結合具により連結されることが好ましい。係る構成とすることにより、両合成樹脂片を確実に接続することができる。また、本発明に係る山越器は、合成樹脂片は、下部に繋ぎ板が介装されて連結されることが好ましい。係る構成とすることにより、合成樹脂片の薄肉化を図ることができ、製造コストの低減化を図ることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の請求項1に係る山越器は、機材を走行自在に支持する走行桁とこの走行桁の両端を支持する脚とを備えた山越器であって、走行桁を合成樹脂から構成したので、山越器自体の軽量化を図るとともに、製造の簡素化と作業のコストダウンを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る山越器を示す側面図である。
【
図4】
図4は、
図3のIV-IV線に沿った走行桁の断面図である。
【
図5】
図5は、
図3のV-V線に沿った走行桁の一部省略断面図である。
【
図6】
図6は、
図1の山越器の走行桁に挿入される繋ぎ板の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面に示す一実施形態により本発明を説明する。本発明の一実施形態に係る山越器2は、
図1に示すように、吊り上げ装置(機材)Mを走行自在に支持する走行桁3とこの走行桁3の両端を支持する支持脚4、5とを備えて構成される。支持脚4、5はヒンジピン6、6により走行桁3に折り畳み可能に連結される。
【0012】
ところで、本実施形態に係る山越器2は、
図2ないし
図4に示すように、走行桁3を合成樹脂から構成している。すなわち、走行桁3は、合成樹脂製本体10と、これら合成樹脂本体10の上面に展着されたステンレス製の板体(金属板)12とを備えている。合成樹脂本体10は、一対の合成樹脂片11A、11Bにより構成される。これら各合成樹脂片11A、11Bはそれぞれ3体の成型体11A1~11A3、11B1~11B3を連結して構成され、成型時、
図4に示すように、中空角筒状に成型される。また、各合成樹脂片11A、11Bの下部には、各合成樹脂片11A、11Bをそれぞれボルト(接続具、図示せず)により連結する接続孔13が形成される。さらに、両合成樹脂片11A、11Bの長手方向両端近傍には、成型後、連結孔14が穿設され、これら連結孔14にヒンジピン6、6が挿通されて支持脚4、5が連結されるようになっている。また、各合成樹脂片11A、11Bの長手方向両端面17には、板状の結合具18が接続されて、両合成樹脂片11A、11Bを連結するようになっている。
【0013】
各合成樹脂片11A、11Bには、接続孔13が形成された部位に、
図6ないし
図8に示すように、合成樹脂製の繋ぎ板15が挿入されるようになっている。繋ぎ板15は、断面U字状に成型され、合成樹脂片11A、11Bの接続孔13に合致させて貫通孔16が形成される。
【0014】
板体12は、上面20の中央に長手方向に沿って溝21が形成されるとともに、前後側両端が折曲される。これら折曲部22A、22Bには、ねじ穴23が形成され合成樹脂片11A、11Bとねじで接続されるようになっている。このように、走行桁3は、一対の合成樹脂片11A、11Bを接続孔13をボルトで連結して合成樹脂本体10を構成し、板体12をこれら合成樹脂片11A、11Bの上面にねじで取り付けると、一対の合成樹脂片11A、11Bが所定の間隙Sを確保して、すなわち溝21に対応する空隙を確保して平行に並設されるようになっている(
図4参照)。板体12の上面20には、吊り上げ装置Mが載置され、溝21に沿って走行するようになっている。なお、符号24は、合成樹脂本体10の長手方向両端に取り付けられた取っ手である。
【0015】
次に、本発明の一実施形態に係る山越器2の作用について、上記山越器2の動作に基づいて説明する。上記実施形態に係る山越器2は、各合成樹脂片11A、11Bを
図4に示すように角筒状に成型後、これら各合成樹脂片11A、11Bに繋ぎ板15を挿入し、接続孔13と貫通孔16を穿設するとともに、各合成樹脂片11A、11Bの長手方向両端近傍の下部に、連結孔14を穿設する。接続孔13と貫通孔16にはボルトを締着して両合成樹脂片11A、11Bを所定の間隙Sを確保して平行に並設し、両合成樹脂片11A、11Bの両端面17に結合具18を連結し、合成樹脂本体10を構成する。この合成樹脂本体10の上面に板体12を展着し、走行桁3を構成するようにしている。このため、従来のような鋼製の走行桁に代えて合成樹脂製の走行桁とすることにより、山越器自体の軽量化を図ることができ、少人数で持ち運び作業を行うことができ、作業のコストダウンを図ることができる。また、各合成樹脂片11A、11Bは、3体の成型体11A1~11A3、11B1~11B3が成型により予め製造されているので、ボルトやねじなどの締着のみで走行桁を製造することができ、製造の簡素化を図ることができる。さらに、現場で走行桁と支持脚の組み立てや分解を行うことができるので、作業車による搬出入時、収容空間を有効に利用することができる。
【0016】
なお、上記実施形態では、板体12をステンレス製の板により構成しているがこれに限られるものではなく、他の金属や硬質の素材で構成するようにしてもよい。また、繋ぎ板15を断面U字状としているがこれに限られるものではなく、中実の板により構成してもよい。さらに、接続孔13を成型後穿設するようにしているが、成型時にスリットを形成するようにしてもよい。また、上記実施形態では、合成樹脂製の繋ぎ板15を介装させて両合成樹脂片11A、11Bを連結するようにしているがこれに限られるものではなく、各合成樹脂片を厚肉に成型して、繋ぎ板を用いないで連結するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0017】
2 山越器
3 走行桁
4、5 支持脚(脚)
10 合成樹脂製本体
11A、11B 合成樹脂片
12 板体(金属板)
13 接続孔
15 繋ぎ板
M 機材
S 間隙