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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023076095
(43)【公開日】2023-06-01
(54)【発明の名称】塗料添加剤、塗膜形成方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 5/14 20060101AFI20230525BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20230525BHJP
   C09D 7/20 20180101ALI20230525BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20230525BHJP
   A01N 59/16 20060101ALI20230525BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20230525BHJP
【FI】
C09D5/14
C09D7/61
C09D7/20
C09D201/00
A01N59/16 Z
A01P3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021189283
(22)【出願日】2021-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】504352847
【氏名又は名称】株式会社新日本化研
(74)【代理人】
【識別番号】100127764
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 泰州
(72)【発明者】
【氏名】新田 祐己
【テーマコード(参考)】
4H011
4J038
【Fターム(参考)】
4H011AA04
4H011BB18
4H011BC03
4H011DA02
4H011DD05
4J038HA296
4J038JA18
4J038KA06
4J038KA20
4J038MA08
4J038MA14
4J038NA27
4J038PC03
(57)【要約】
【課題】 本発明は、水性塗料に抗ウイルス性を付与することができる新規な塗料添加剤、及び前記塗料添加剤を用いた塗膜形成方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 親水性溶剤に酸化亜鉛粉末が配合されてなる塗料添加剤を水性塗料に配合することによって酸化亜鉛配合塗料を得、この酸化亜鉛配合塗料を塗装対象物に塗布する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性塗料に抗ウイルス性を付与するための塗料添加剤であって、
親水性溶剤に酸化亜鉛粉末が配合されてなることを特徴とする塗料添加剤。
【請求項2】
請求項1に記載の塗料添加剤において、
親水性溶剤が、低級アルコールを主成分とする塗料添加剤。
【請求項3】
塗装対象物に抗ウイルス性を有する塗膜を形成する塗膜形成方法であって、
請求項1に記載の塗料添加剤を水性塗料に混合することによって酸化亜鉛配合塗料を得る塗料調整工程と、
酸化亜鉛配合塗料を塗装対象物に塗布する塗布工程と、
を実行することを特徴とする塗膜形成方法。
【請求項4】
請求項3に記載の塗膜形成方法において、
前記塗料調整工程の実行時、水性塗料100重量部に対して、酸化亜鉛粉末の配合量が0.1~1重量部となるように塗料添加剤を混合する塗膜形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性塗料に抗ウイルス性を付与するための塗料添加剤、及び、前記塗料添加剤を用いた塗膜形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
塗装は塗装対象物に対して彩色を付与する目的のみならず、耐候性や防錆性或いは断熱性等の種々の機能を付与する目的で行う場合もある。
【0003】
最近では、塗装対象物に対して消臭機能や抗菌機能を付与すべく、消臭剤及び抗菌剤が配合された塗料も開発されている(例えば、下記特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-035075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
即ち、塗料に何らかの機能を付与するにあたっては目的とする機能を有する物質を添加剤として配合することが一般的であり、現在市販されている塗料には、目的に応じた機能を有する物質があらかじめ配合されている。
【0006】
しかしながら、現在市販されている塗料は無数にあり、必ずしも使おうとする塗料に要求される機能が付与されているとは限られない。又、抗ウイルス性を有する塗料については、ほとんど市販されていないのが現状である。
【0007】
本発明は、前記技術的課題に鑑みて完成されたものであり、水性塗料に抗ウイルス性を付与することができる新規な塗料添加剤、及び前記塗料添加剤を用いた塗膜形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記技術的課題を解決するための本発明の塗料添加剤は、水性塗料に抗ウイルス性を付与するための塗料添加剤であって、親水性溶剤に酸化亜鉛粉末が配合されてなることを特徴とする(以下、「本発明添加剤」と称する。)。
【0009】
前記本発明添加剤においては、親水性溶剤が、低級アルコールを主成分とするものが好ましい態様となる。
【0010】
前記技術的課題を解決するための本発明の塗膜形成方法は、塗装対象物に抗ウイルス性を有する塗膜を形成する塗膜形成方法であって、前記本発明添加剤を水性塗料に混合することによって酸化亜鉛配合塗料を得る塗料調整工程と、前記酸化亜鉛配合塗料を塗装対象物に塗布する塗布工程と、を実行することを特徴とする(以下、「本発明方法」と称する。)。
【0011】
前記本発明方法においては、前記塗料調整工程の実行時、水性塗料100重量部に対して、酸化亜鉛粉末の配合量が0.1~1重量部となるように本発明添加剤を混合することが好ましい態様となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、水性塗料に抗ウイルス性を付与することができ、塗装対象物の表面に抗ウイルス性を有する塗膜を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態を説明するが、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
【0014】
<本発明添加剤>
本発明添加剤は、水性塗料(希釈剤に水が用いられている塗料)に抗ウイルス性を付与するための塗料添加剤であり、「親水性溶剤」に「酸化亜鉛粉末」が配合されてなることを特徴とする。
【0015】
‐親水性溶剤‐
本発明において親水性溶剤とは、水に対して親和性を有する液状媒体を意味する。親水性溶剤の例としては、水の他、エチルアルコールやプロピルアルコール(n‐プロピルアルコール及びイソプロピルアルコール)、或いはエチレングリコールやプロピレングリコールなどの低級アルコール(ジオールやトリオールを含む)を挙げることができる。又、親水性溶剤には、防菌や防黴などを目的とする添加剤が含まれていても良い。
【0016】
‐酸化亜鉛粉末‐
本発明において酸化亜鉛粉末とは、粉末状の酸化亜鉛(ZnO)を意味する。従来の塗料の分野においては酸化亜鉛を抗菌や防臭の目的で添加する場合もあったが、抗ウイルスを目的として酸化亜鉛を塗料に添加することは無かった。本発明において酸化亜鉛粉末の粒径は特に限定されないが、酸化亜鉛が前記親水性溶剤に溶解しないため、前記親水性溶剤中に分散させ易い10μm以下(好ましくは1μm以下)の微粉末状のものを用いることが好ましい。又、取り扱い性の利便性を鑑みて、前記親水性溶剤に対する酸化亜鉛粉末の配合量は5~20重量%とすることが好ましい。なお、JIS規格においては酸化亜鉛の純度により1~3種に区分されているが、本発明では酸化亜鉛につきいずれの種であっても良い。
【0017】
<本発明方法>
本発明方法は、塗装対象物の表面に抗ウイルス性を有する塗膜を形成する塗膜形成方法であり、「塗料調整工程」と、「塗布工程」と、を実行する。
【0018】
‐塗料調整工程‐
塗料調整工程では、前記本発明添加剤を水性塗料に混合することによって酸化亜鉛配合塗料を得る。具体的には、市販の水性塗料に前記本発明添加剤を配合し、撹拌することによって、酸化亜鉛が水性塗料中において均一に分散された酸化亜鉛配合塗料を調整する。水性塗料に対する前記本発明添加剤の配合量は特に限定されないが、水性塗料の色彩に影響を与えないように、水性塗料100重量部に対して、酸化亜鉛粉末の配合量が0.1~1重量部(より好ましくは0.5重量部以下)となるように本発明添加剤を混合することが好ましい。
【0019】
‐塗布工程‐
塗布工程では、前記酸化亜鉛配合塗料を塗装対象物に塗布する。塗装対象物は特に限定されず、例えば、建物の壁や屋根、或いは塀などの建築物を挙げることができる。又、塗布方法も特に限定されず、刷毛やローラーを使用した塗工手段の他、スプレーなどによる塗工手段を適宜選択することができる。
【0020】
[実施例]
下記表1に実施例1、2に係る本発明添加剤の処方を示す。なお、酸化亜鉛粉末の配合量はいずれも12重量%とした。又、酸化亜鉛粉末の粒径はレーザー解析法による測定値である。更に、プロピルアルコールは、n‐プロピルアルコールとイソプロピルアルコールの混合溶剤(重量比3:7)である。
【0021】
【表1】
【0022】
市販の水性塗料100重量部に対し、酸化亜鉛粉末の配合量が0.25重量部となるように各実施例に係る本発明添加剤を添加することによって酸化亜鉛配合塗料を得た。この酸化亜鉛配合塗料をガラス板に塗工し、十分に乾燥させて塗膜を形成させた後、塗膜上にウイルス液(アルファ株のコロナウイルス(国立感染症研究所提供))を滴下した。なお、比較例として本発明添加剤が配合されていない水性塗料の塗膜が形成されたガラス板にもウイルス液を滴下した。
【0023】
その後60分経過した時点で滴下したウイルス液をVeroE6/TMPRSS2細胞に摂取し、ウイルス量を定量した(滋賀医科大学 病理学講座 疾患制御病態学部門にて定量)。
【0024】
その結果、本発明添加剤が配合されていない水性塗料の塗膜上に滴下したウイルス液には、30000(TCID50/ml)を超えるウイルス濃度が確認されたにもかかわらず、本発明添加剤が配合されている塗膜上に滴下されたウイルス液にはウイルスの存在が確認されなかった。
【0025】
なお、酸化亜鉛配合塗料中の酸化亜鉛粉末の配合量を0.1~1重量部の範囲で変化させた場合についても同様の試験結果が得られた。
【0026】
これより本発明によれば、水性塗料に抗ウイルス性を付与することができ、塗装対象物の表面に抗ウイルス性を有する塗膜を形成することができることが確認された。
【0027】
なお、本発明は、その精神又は主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形態で実施することができる。そのため、上述の実施形態(実施例)はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には何ら拘束されない。更に、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、すべて本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は水性塗料に抗ウイルス性を付与し、もって、塗装対象物の表面に抗ウイルス性を有する塗膜を形成する手段として好適に利用することができる。