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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023076110
(43)【公開日】2023-06-01
(54)【発明の名称】抵抗溶接装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 11/24 20060101AFI20230525BHJP
   B23K 11/00 20060101ALI20230525BHJP
   H01R 43/02 20060101ALI20230525BHJP
【FI】
B23K11/24 340
B23K11/00 561
B23K11/24 338
H01R43/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021189311
(22)【出願日】2021-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】000227836
【氏名又は名称】日本アビオニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】岩月 忠宏
(72)【発明者】
【氏名】平松 茂
【テーマコード(参考)】
5E051
【Fターム(参考)】
5E051LA02
5E051LB03
(57)【要約】
【課題】被接合物の高さを高い精度で制御すると同時に接合品質を向上させる。
【解決手段】抵抗溶接装置は、被接合物と当接する電極80aと、被接合物を間に挟んで電極80aと対向する電極80bと、被接合物を電極80a,80bによって挟持させる加圧機構と、電極80a,80b間に電流を供給する電源20と、電極80a,80bによって被接合物に印加される圧力が一定となるように加圧機構を制御する加圧制御部140と、溶接中の被接合物に所定の変化が生じたときに、加圧制御部140による加圧制御を停止させて、被接合物の高さが目標値と一致するように制御する高さ制御に切り替える高さ制御部142とを備える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被接合物と当接する第1の電極と、
前記被接合物を間に挟んで前記第1の電極と対向する第2の電極と、
前記第1、第2の電極のうち少なくとも一方を移動させて、前記被接合物を前記第1、第2の電極によって挟持させる加圧機構と、
前記第1、第2の電極間に電流を供給する電源と、
前記第1、第2の電極によって前記被接合物に印加される圧力が一定となるように前記加圧機構を制御する加圧制御部と、
溶接中の前記被接合物に所定の変化が生じたときに、前記加圧制御部による加圧制御を停止させて、前記被接合物の高さが目標値と一致するように制御する高さ制御に切り替える高さ制御部とを備えることを特徴とする抵抗溶接装置。
【請求項2】
請求項1記載の抵抗溶接装置において、
前記高さ制御部は、溶接開始時からの前記被接合物の高さ方向の変位量が予め設定された制御切替条件値に達したときに、前記被接合物に所定の変化が生じたと判定し、高さ制御に切り替えることを特徴とする抵抗溶接装置。
【請求項3】
請求項2記載の抵抗溶接装置において、
前記制御切替条件値は、端子と被覆線とを溶接するヒュージングにおいて前記被覆線の絶縁被覆が溶けたときと対応するように予め設定されることを特徴とする抵抗溶接装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の抵抗溶接装置において、
前記高さ制御に切り替えたときから最終目標の高さに至るまでの高さの目標値の時系列データを予め記憶する記憶部をさらに備え、
前記高さ制御部は、溶接中に検出される前記被接合物の高さの推移が前記目標値の推移と一致するように前記加圧機構を制御することを特徴とする抵抗溶接装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の抵抗溶接装置において、
前記第1、第2の電極に任意の溶接電流を供給するように前記電源を制御する電流制御部をさらに備えることを特徴とする抵抗溶接装置。
【請求項6】
請求項5記載の抵抗溶接装置において、
前記電流制御部は、前記被接合物の高さが最終目標の高さに達するのに十分な時間、前記第1、第2の電極に任意の溶接電流を供給することを特徴とする抵抗溶接装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抵抗溶接装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、電極間に電流を流して、発生するジュール熱で被接合物を昇温させて接合を行う抵抗溶接装置が広く用いられている(特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。
抵抗溶接の適用対象として、端子と絶縁被膜付き導線とを接合するヒュージング(熱カシメ)がある。ヒュージングに適用される抵抗溶接では、被接合物のバラツキに対応するために、被接合物の変位量、電極間の電気抵抗、被接合物の温度などを検出して、電極間に流す電流に変化を加えている。
【0003】
例えば特許文献1に開示された技術では、電極の変位量が基準値に達したときに電極間の電流を変化させるようにしている。
特許文献2に開示された技術では、電極間の電圧値が下降した後上昇に転じる電圧転換点を検知したときに電極間の電流を変化させるようにしている。
特許文献3に開示された技術では、被接合物の温度が基準温度と一致するように電極間の電流を制御している。
【0004】
特許文献1、特許文献2、特許文献3に開示された技術では、いずれも被接合物への加圧力を一定とし、電極間の電流を変化させることによって被接合物の高さを一定に制御していた。しかしながら、被接合物の変形は、熱と加圧により発生するため、電流を止めたとしても変形は継続する。特許文献1、特許文献2、特許文献3に開示された技術では、電極間の電流を停止させた後も被接合物に加圧が掛かっているので、余熱によって被接合物の高さが変化し、バラツキが生じてしまうという問題があった。
【0005】
そこで、特許文献4に開示された技術では、一方の電極が予め設定された通電熱カシメ接合部のモデル厚さ寸法に達したとき、又はモデル厚さ寸法の僅か手前の位置に達したときに、電極間の電流を停止させて、電極への加圧力制御から電極の位置制御に切り替えるようにしている。特許文献4に開示された技術では、溶接電流を遮断後、電極の位置制御に切り替えることにより、被接合物の部品寸法精度を向上させることができるとしている。
【0006】
しかしながら、特許文献4に開示された技術では、被接合物の接合品質(接合強度)にバラツキが生じる可能性があった。抵抗溶接では、設定した加圧下で設定した時間、電流を被接合物に与えることで、被接合物が発熱して接合される。このとき、時間経過と共に通電面積(電流経路)の広がり方がいつも同じであれば、設定した時間だけ電流を被接合物に与えれば、同じ発熱状態が得られる。しかし、多くの場合、被接合物に一定の加圧を与えても、端子と皮膜線の位置関係が一定とならない場合が多く、被接合物が潰れる状態が異なる。ヒュージングの場合は、端子と皮膜線の密着が異なる状態になる。
【0007】
通常の抵抗溶接では、端子と皮膜線の密着状態が様々な被接合物に一定の時間、電流を与えて、発熱させて変形させる。ところが、このような被接合物は、時間経過と共に変化する通電面積(電流経路)の広がり方が毎回異なるので、発熱の変化が異なり、被接合物の潰れ量が変わり、接合品質がばらつく結果となる。そのため、特許文献4に開示された技術では、電極の位置制御によって被接合物の仕上がり寸法がある範囲内となるようにしている。しかしながら、特許文献4に開示された技術では、電極が所定の位置に達した後は電流を停止させて、電極の位置制御のみを行っているため、被接合物の余熱の変化が毎回異なる可能性があり、被接合物の接合品質(接合強度)にバラツキが生じる可能性があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011-623号公報
【特許文献2】特開2012-227028号公報
【特許文献3】特開2015-49980号公報
【特許文献4】特開2006-7294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、被接合物の高さを高い精度で制御できると同時に接合品質を向上させることができる抵抗溶接装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の抵抗溶接装置は、被接合物と当接する第1の電極と、前記被接合物を間に挟んで前記第1の電極と対向する第2の電極と、前記第1、第2の電極のうち少なくとも一方を移動させて、前記被接合物を前記第1、第2の電極によって挟持させる加圧機構と、前記第1、第2の電極間に電流を供給する電源と、前記第1、第2の電極によって前記被接合物に印加される圧力が一定となるように前記加圧機構を制御する加圧制御部と、溶接中の前記被接合物に所定の変化が生じたときに、前記加圧制御部による加圧制御を停止させて、前記被接合物の高さが目標値と一致するように制御する高さ制御に切り替える高さ制御部とを備えることを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の抵抗溶接装置の1構成例において、前記高さ制御部は、溶接開始時からの前記被接合物の高さ方向の変位量が予め設定された制御切替条件値に達したときに、前記被接合物に所定の変化が生じたと判定し、高さ制御に切り替えることを特徴とするものである。
また、本発明の抵抗溶接装置の1構成例において、前記制御切替条件値は、端子と被覆線とを溶接するヒュージングにおいて前記被覆線の絶縁被覆が溶けたときと対応するように予め設定される。
また、本発明の抵抗溶接装置の1構成例は、前記高さ制御に切り替えたときから最終目標の高さに至るまでの高さの目標値の時系列データを予め記憶する記憶部をさらに備え、前記高さ制御部は、溶接中に検出される前記被接合物の高さの推移が前記目標値の推移と一致するように前記加圧機構を制御することを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の抵抗溶接装置の1構成例において、前記第1、第2の電極に任意の溶接電流を供給するように前記電源を制御する電流制御部をさらに備えることを特徴とするものである。
また、本発明の抵抗溶接装置の1構成例において、前記電流制御部は、前記被接合物の高さが最終目標の高さに達するのに十分な時間、前記第1、第2の電極に任意の溶接電流を供給することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、高さ制御部を設けることにより、被接合物のバラツキに対応することができ、被接合物の高さを高い精度で制御できると同時に接合品質(接合強度)を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の実施例に係る抵抗溶接装置の構成を示すブロック図である。
図2図2は、本発明の実施例に係る溶接ヘッドの拡大断面図である。
図3図3は、本発明の実施例に係る抵抗溶接装置の動作を説明するフローチャートである。
図4図4は、溶接電流の目標波形の1例を示す図である。
図5図5は、本発明の実施例に係る抵抗溶接装置を実現するコンピュータの構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。図1は本発明の実施例に係る抵抗溶接装置の構成を示すブロック図である。本実施例の抵抗溶接装置は、スタートスイッチ2と、整流回路3と、コンデンサ4と、インバータ5と、溶接トランス6と、ダイオード7と、溶接ヘッド8と、ホール素子9と、電流検出部10と、電圧検出部11と、圧力検出部12と、変位検出部13と、制御部14と、操作部15と、記憶部16と、例えば溶接中に検出された物理量の波形を表示するための表示部17とを有する。
【0016】
スタートスイッチ2と整流回路3とコンデンサ4とインバータ5と溶接トランス6とダイオード7とは、溶接ヘッド8に電流を供給する電源20を構成している。
制御部14は、加圧制御部140と、電流制御部141と、高さ制御部142とを備えている。
【0017】
図2は溶接ヘッド8の拡大断面図である。溶接ヘッド8は、例えば銅(Cu)合金、モリブデン(Mo)、タングステン(W)等からなる電極80a,80bを備えている。被接合物83としては、例えば被覆線84と、この被覆線84を包み込むように配置されるU字端子85とからなるものがある。この被接合物83の接合(ヒュージング)においては、被覆線84の絶縁被覆86を熱で剥がして、心線87とU字端子85とを溶接する。
【0018】
また、溶接ヘッド8は、電極80a,80bを上下させて被接合物83を挟み込み加圧する加圧機構82a,82bを備えている。加圧機構82a,82bには、図示しないロードセルが設けられており、被接合物83に加わる荷重の大きさを電気信号に変換できるようになっている。また、加圧機構82a,82bには、図示しない変位センサが設けられており、被接合物83の高さ方向の変位量を電気信号に変換できるようになっている。
【0019】
以下、本実施例の抵抗溶接装置の動作を説明する。図3は抵抗溶接装置の動作を説明するフローチャートである。
制御部14の加圧制御部140は、図2に示すように電極80a,80b間に被接合物83が配置された状態で、溶接ヘッド8の加圧機構82a,82bを制御して電極80a,80bを始点位置から移動させ、電極80a,80bによって被接合物83を上下方向から挟み込み加圧する。圧力検出部12は、加圧機構82a,82bに設けられたロードセルの出力に基づいて、被接合物83に印加される圧力を検出する。そして、加圧制御部140は、被接合物83に印加される圧力が所定の圧力設定値と一致するように電極80a,80bに加える力を調整する(図3ステップS1)。
【0020】
こうして、被接合物83に一定の圧力を加え、溶接の準備が完了する。なお、図2の例では、加圧機構82a,82bがそれぞれ電極80a,80bに圧力を加えるようになっているが、電極80a,80bのうちどちらか一方のみに圧力を加えるようにしてもよいことは言うまでもない。
【0021】
例えばユーザが操作部15を操作して溶接開始を指示すると、制御部14からスタート信号が出力され、スタートスイッチ2がオンになる。スタートスイッチ2がオンになると、整流回路3は、交流200Vの商用3相交流電源1の交流出力を全波整流し、整流回路3の出力端間に並列接続されたコンデンサ4を充電する。この整流回路3は、6個のダイオード30を用いた3相全波混合ブリッジで構成される。
【0022】
インバータ5は、コンデンサ4の充電電圧を交流電圧に変換して、溶接トランス6の1次側に供給する。インバータ5は、4個のNPNトランジスタ50からなるブリッジで構成される。溶接トランス6の2次側出力は、整流器(ダイオード)7で全波整流されて電極80a,80bに導かれる。これにより、電極80a,80b間に大電流を流し、発生するジュール熱で被接合物83を昇温させる。
【0023】
電流検出部10は、溶接トランス6の2次側に設けられたホール素子9の出力から、溶接トランス6の2次側を流れる電流I(つまり、電極80a,80bを流れる溶接電流)を検出する。電圧検出部11は、電極80a,80b間に印加される溶接電圧Vを検出する。変位検出部13は、加圧機構82a,82bに設けられた変位センサの出力に基づいて、被接合物83の高さ方向の変位量Dを検出する。
【0024】
本実施例では、定電流制御方式による通電を行う。記憶部16には、望ましい溶接条件として電極80a,80bへの望ましい通電の目標波形、具体的には溶接電流Iの目標波形(溶接開始時からの溶接電流Iの目標値の時系列データ)が予め設定されている。また、記憶部16には、通電の終了条件(通電終了時間)と、圧力一定の加圧制御から後述する高さ制御に切り替える制御切替条件(変位量)とが予め設定されている。
【0025】
制御部14の電流制御部141は、インバータ5を動作させて交流電圧を発生させることにより、電極80a,80bに電流を印加する。そして、電流制御部141は、電流検出部10によって検出される溶接電流Iをリアルタイムで監視して、通電開始時からの経過時間がtの現時刻における溶接電流Iが、溶接電流Iの目標波形上の経過時間tにおける値と一致するように、インバータ5のトランジスタ50のオン/オフを制御して、電極80a,80bへの通電量を制御する(図3ステップS2)。このような制御を所定の制御周期毎に繰り返し実行することにより、溶接中に検出される溶接電流Iの波形が予め設定された目標波形と一致するようにフィードバック制御される。
【0026】
図4は溶接電流Iの目標波形の1例を示す図である。本実施例の溶接電流Iの目標波形では、例えば設定電流Ispと、設定電流Ispまでの上昇時間t1と、設定電流Ispまでの波形とが定義されている。こうして、溶接電流Iの波形が目標波形と一致するように電極80a,80bへの通電量を制御することにより、電極80a,80bに一定の溶接電流Iが供給される定電流制御方式の溶接が行われる。
【0027】
次に、高さ制御部142は、溶接中の被接合物83に所定の変化が生じたとき、具体的には被覆線84の絶縁被覆86が溶けたときに(図3ステップS3においてYES)、加圧制御部140による加圧制御を停止させて、被接合物83の高さ制御に切り替える(図3ステップS4)。被覆線84の絶縁被覆86が溶けたときとは、より具体的には溶接開始時(通電開始時)からの被接合物83の高さ方向の変位量Dが記憶部16に記憶されている制御切替条件値(変位量)に達したときである。
【0028】
記憶部16には、高さ制御に切り替えたときからの被接合物83の高さの目標値の時系列データが予め設定されている。このときの高さの目標値は、直線的または曲線的に推移し、終いには最終目標の高さ(被接合物83の仕上がり寸法)へと到達するように設定されている。
【0029】
例えば電極80a,80b間が既知の所定間隔だけ離れた位置を原点位置とすれば、この原点位置のときの変位センサの出力と、電極80a,80bによって被接合物83を上下から挟んだときの変位センサの出力とから、被接合物83を上下から挟んだときの電極80a,80bの間隔(被接合物83の高さであり、図2のh)を求めることが可能である。
【0030】
高さ制御部142は、変位センサの出力に基づいて被接合物83の高さhをリアルタイムで監視して、高さ制御に切り替えたときからの経過時間がtの現時刻における被接合物83の高さhが、経過時間tにおける高さの目標値と一致するように、加圧機構82a,82bを制御して、被接合物83の高さhを制御する。このような制御を所定の制御周期毎に繰り返し実行することにより、溶接中に検出される被接合物83の高さhの推移が予め設定された目標値の推移と一致するようにフィードバック制御される。
【0031】
電流制御部141は、通電開始時からの経過時間が記憶部16に記憶されている通電の終了条件値(通電終了時間)以上になったときに(図3ステップS5においてYES)、電極80a,80bへの通電を終了させる(図3ステップS6)。
なお、通電終了時間は、通電開始時から被覆線84の絶縁被覆86が溶けるまでの時間よりも長く、被接合物83の高さhが最終目標の高さ(被接合物83の仕上がり寸法)に達するのに十分な時間である必要がある。この通電終了時間は、事前の溶接試験によって決定することが可能である。
【0032】
高さ制御部142は、通電が終了した後、被接合物83の高さhを最終目標の高さに維持した状態で、被接合物83の温度を下降させ、所定時間後に加圧機構82a,82bを制御して電極80a,80bを始点位置に戻し、電極80a,80bを被接合物83から離す(図3ステップS7)。こうして、溶接が終了する。
【0033】
以上のように、本実施例では、溶接中の被接合物83に所定の変化が生じたときに、加圧制御を停止して高さ制御に切り替える。この被接合物83に所定の変化が生じた時点は、被接合物83の高さhが最終目標の高さに到達する時点よりも手前の時点である。つまり、本実施例では、特許文献4に開示された技術で電極の位置制御を開始する時点よりも早い時点から高さ制御を開始する。また、特許文献4に開示された技術では、電極の位置制御を開始する時点で電極への通電を停止するが、本実施例では、高さ制御を開始した後も電極80a,80bへの通電を継続して行う。
【0034】
以上の構成により、本実施例では、被接合物83に生じる、時間経過と共に変化する通電面積(電流経路)の広がりを制御することが可能となるので、被接合物83のバラツキに対応することができ、被接合物83の高さhを高い精度で制御できると同時に接合品質(接合強度)を向上させることができる。
【0035】
なお、本実施例では、抵抗溶接の1例としてヒュージングを例に挙げて説明しているが、本発明はヒュージング以外の抵抗溶接にも適用できる。
【0036】
本実施例の制御部14、操作部15、記憶部16および表示部17の機能は、CPU(Central Processing Unit)、記憶装置および外部とのインタフェースを備えたコンピュータと、これらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。このコンピュータの構成例を図5に示す。
【0037】
コンピュータは、CPU200と、記憶装置201と、インタフェース装置(以下、I/Fと略する)202とを備えている。I/F202には、溶接電源と電流検出部10と電圧検出部11と圧力検出部12と変位検出部13等が接続される。このようなコンピュータにおいて、本発明の方法を実現させるためのプログラムは記憶装置201に格納される。CPU200は、記憶装置201に格納されたプログラムに従って本実施例で説明した処理を実行する。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、抵抗溶接に適用することができる。
【符号の説明】
【0039】
1…3相交流電源、2…スタートスイッチ、3…整流回路、4…コンデンサ、5…インバータ、6…溶接トランス、7…ダイオード、8…溶接ヘッド、9…ホール素子、10…電流検出部、11…電圧検出部、12…圧力検出部、13…変位検出部、14…制御部、15…操作部、16…記憶部、17…表示部、20…電源、80a,80b…電極、82a,82b…加圧機構、83…被接合物、140…加圧制御部、141…電流制御部、142…高さ制御部。
図1
図2
図3
図4
図5