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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023076112
(43)【公開日】2023-06-01
(54)【発明の名称】接合装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 11/24 20060101AFI20230525BHJP
【FI】
B23K11/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021189314
(22)【出願日】2021-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】000227836
【氏名又は名称】日本アビオニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】岩月 忠宏
(57)【要約】
【課題】複雑な設定を容易に行うことが可能な入力システムを備えた接合装置を提供する。
【解決手段】接合装置は、被接合物の接合を行う本体部21と、情報を表示すると同時にユーザの操作を受け付けるタッチパネル機能付き表示器16と、ユーザのタッチパネル機能付き表示器16に対する設定操作を受け付ける操作入力部140と、タッチパネル機能付き表示器16に被接合物の接合の設定画面を表示し、ユーザの設定操作に応じて設定画面を更新する表示制御部142と、ユーザが設定画面上に設定した内容に基づいて本体部21を制御して被接合物の接合を行う接合制御部141とを備える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被接合物の接合を行う本体部と、
情報を表示すると同時にユーザの操作を受け付けるタッチパネル機能付き表示器と、
ユーザの前記タッチパネル機能付き表示器に対する設定操作を受け付ける操作入力部と、
前記タッチパネル機能付き表示器に前記被接合物の接合の設定画面を表示し、前記ユーザの設定操作に応じて前記設定画面を更新する表示制御部と、
前記ユーザが前記設定画面上に設定した内容に基づいて前記本体部を制御して前記被接合物の接合を行う接合制御部とを備えることを特徴とする接合装置。
【請求項2】
請求項1記載の接合装置において、
前記設定画面上で設定される項目は、接合中に検出される物理量を制御量とする制御の種類を指定する項目を含むことを特徴とする接合装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の接合装置において、
前記設定画面上で設定される項目は、接合中に検出される物理量を制御量とする制御の目標値と、前記目標値への到達時間と、前記目標値の保持時間とを指定する項目を含むことを特徴とする接合装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の接合装置において、
前記設定画面上で設定される項目は、前記被接合物の接合の工程を分割したフェーズ毎に設定可能であることを特徴とする接合装置。
【請求項5】
請求項4記載の接合装置において、
前記設定画面上で設定される項目は、次のフェーズへ移行する制御切替条件を指定する項目を含むことを特徴とする接合装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の接合装置において、
前記設定画面上で設定される項目は、前記本体部への信号出力を指定する項目を含むことを特徴とする接合装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の接合装置において、
前記ユーザが前記設定画面上に設定した内容に基づいて接合中の前記被接合物に係る物理量の遷移を表すグラフを生成するグラフ生成部をさらに備え、
前記表示制御部は、前記グラフ生成部によって生成されたグラフを前記タッチパネル機能付き表示器の画面に表示することを特徴とする接合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抵抗溶接装置等の接合装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、電極間に電流を流して、発生するジュール熱で被接合物を昇温させて接合を行う抵抗溶接装置が広く用いられている。抵抗溶接の強度や安定性を左右する要素として、加圧力と電流と時間がある。接合界面を溶融させる一般的抵抗溶接では、短時間(5~100mS)で接合が終了してしまうため、被接合物への加圧はエアシリンダなどで一定に保つことが重要とされていて、短時間で可変制御可能で、界面の溶融に影響が大きい電流と時間に関して多様な制御が提案されている。被覆線を端子で熱カシメするヒュージング溶接でも上記の抵抗溶接の手法が使われている(特許文献1参照)。
【0003】
ただし、ヒュージング溶接で重要な要素は温度(熱)と端子の変形(力、変位)であることから、加圧を一定とする既存の溶接加圧方式は最適ではない。そこで、特許文献1に開示された技術では、一方の電極が予め設定された通電熱カシメ接合部のモデル厚さ寸法に達したとき、又はモデル厚さ寸法の僅か手前の位置に達したときに、電極間の電流を停止させて、電極への加圧力制御から電極の位置制御に切り替えるようにしている。特許文献1に開示された技術では、接合の途中で電極の位置制御に切り替えることにより、被接合物の部品寸法精度を向上させることができるとしている。
【0004】
特許文献1に開示されたような接合に加えて、時間や加圧センサ、変位センサ入力により、加圧力と電極位置と溶接電流を最適に制御するためには、さらに設定が複雑となる。しかしながら、従来の接合装置には、これほど複合的な制御機能はなく、また、ユーザにとって理解し易く容易に設定可能な入力システムが実用化されていないという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-7294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、複雑な設定を容易に行うことが可能な入力システムを備えた接合装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の接合装置は、被接合物の接合を行う本体部と、情報を表示すると同時にユーザの操作を受け付けるタッチパネル機能付き表示器と、ユーザの前記タッチパネル機能付き表示器に対する設定操作を受け付ける操作入力部と、前記タッチパネル機能付き表示器に前記被接合物の接合の設定画面を表示し、前記ユーザの設定操作に応じて前記設定画面を更新する表示制御部と、前記ユーザが前記設定画面上に設定した内容に基づいて前記本体部を制御して前記被接合物の接合を行う接合制御部とを備えることを特徴とするものである。
【0008】
また、本発明の接合装置の1構成例において、前記設定画面上で設定される項目は、接合中に検出される物理量を制御量とする制御の種類を指定する項目を含む。
また、本発明の接合装置の1構成例において、前記設定画面上で設定される項目は、接合中に検出される物理量を制御量とする制御の目標値と、前記目標値への到達時間と、前記目標値の保持時間とを指定する項目を含む。
また、本発明の接合装置の1構成例において、前記設定画面上で設定される項目は、前記被接合物の接合の工程を分割したフェーズ毎に設定可能である。
また、本発明の接合装置の1構成例において、前記設定画面上で設定される項目は、次のフェーズへ移行する制御切替条件を指定する項目を含む。
また、本発明の接合装置の1構成例において、前記設定画面上で設定される項目は、前記本体部への信号出力を指定する項目を含む。
また、本発明の接合装置の1構成例は、前記ユーザが前記設定画面上に設定した内容に基づいて接合中の前記被接合物に係る物理量の遷移を表すグラフを生成するグラフ生成部をさらに備え、前記表示制御部は、前記グラフ生成部によって生成されたグラフを前記タッチパネル機能付き表示器の画面に表示することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、タッチパネル機能付き表示器と操作入力部と表示制御部とを設けることにより、接合の複雑な設定を容易に行うことが可能な入力システムを備えた接合装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の実施例に係る接合装置の構成を示すブロック図である。
図2図2は、本発明の実施例に係る接合ヘッドの拡大断面図である。
図3図3は、本発明の実施例に係るタッチパネル機能付き表示器に表示される設定画面の1例を示す図である。
図4図4は、本発明の実施例に係るグラフの1例を示す図である。
図5図5は、本発明の実施例に係るヒュージング溶接時の接合装置の動作を説明するフローチャートである。
図6図6は、本発明の実施例に係る接合装置を実現するコンピュータの構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。図1は本発明の実施例に係る接合装置(抵抗溶接装置)の構成を示すブロック図である。本実施例の接合装置は、スタートスイッチ2と、整流回路3と、コンデンサ4と、インバータ5と、溶接トランス6と、ダイオード7と、接合ヘッド8と、ホール素子9と、電流検出部10と、電圧検出部11と、圧力検出部12と、変位検出部13と、制御部14と、記憶部15と、情報を表示する表示部であると同時にユーザの操作を受け付ける入力部であるタッチパネル機能付き表示器16とを有する。
【0012】
スタートスイッチ2と整流回路3とコンデンサ4とインバータ5と溶接トランス6とダイオード7とは、接合ヘッド8に電流を供給する電源20を構成している。また、接合ヘッド8と電源20とは接合装置の本体部21を構成している。
【0013】
制御部14は、ユーザのタッチパネル機能付き表示器16に対する設定操作を受け付ける操作入力部140と、ユーザが設定画面上に設定した内容に基づいて制御を行って被接合物の接合を行う接合制御部141と、タッチパネル機能付き表示器16に設定画面を表示し、ユーザの設定操作に応じて設定画面を更新する表示制御部142と、ユーザが設定画面上に設定した内容に基づいて接合中の被接合物に係る物理量の遷移を表すグラフを生成するグラフ生成部143とを備えている。
【0014】
図2は接合ヘッド8の拡大断面図である。接合ヘッド8は、例えば銅(Cu)合金、モリブデン(Mo)、タングステン(W)等からなる電極80a,80bを備えている。被接合物83としては、例えば被覆線84と、この被覆線84を包み込むように配置されるU字端子85とからなるものがある。この被接合物83の接合(ヒュージング)においては、被覆線84の絶縁被覆86を熱で剥がして、心線87とU字端子85とを溶接する。
【0015】
また、接合ヘッド8は、電極80a,80bを上下させて被接合物83を挟み込み加圧する加圧機構82a,82bを備えている。加圧機構82a,82bには、図示しないロードセルが設けられており、被接合物83に加わる荷重の大きさを電気信号に変換できるようになっている。また、加圧機構82a,82bには、図示しない変位センサが設けられており、被接合物83の高さ方向の変位量を電気信号に変換できるようになっている。
【0016】
以下、本実施例の接合装置の動作を説明する。まず、ユーザは、被接合物83の接合のための設定を行う。図3はタッチパネル機能付き表示器16に表示される設定画面の1例を示す図である。
【0017】
本実施例では、ヒュージングの工程が複数のフェーズ0,1,2,3,4,・・・・に分かれている。図3に示した設定画面上では、表30の1行が1つのフェーズに対応する。設定画面上で設定可能な項目としては、各フェーズにおける制御方法(接合中に検出される物理量を制御量とする制御の種類を指定する項目)がある。
【0018】
さらに別の項目として、電極80a,80bの移動速度の目標値(SPEED)、被接合物83に印加する圧力の目標値(FORCE)、被接合物83の高さの目標値(HEIGHT)、目標値への到達時間、目標値の保持時間(最大値)、フェーズを中断して次のフェーズへ移行する制御切替条件(TRIGGER)、本体部21への信号出力(OUTPUT)などを設定できるようになっている。
【0019】
まず、ユーザは、設定画面上の表30のフェーズ0における制御のセルに触れて「SPEED(μm/msec)」を入力し、SPEEDのセルに触れて-10(μm/msec)を入力し、到達時間のセルに触れて0(msec)を入力し、保持時間のセルに触れて200(msec)を入力し、TRIGGERのセルに触れて「FORCE1 500」を入力する。この設定は、電極80a,80bの速度制御を行い、電極80a,80bを-10(μm/msec)で移動させて、電極80a,80bで被接合物83を挟み込むことを最大200(msec)維持し、被接合物83への圧力が500(N)に達した時点で次のフェーズ1に移行することを意味している。なお、速度の負の符号は、電極80a,80bの間隔が狭まる方向に移動することを表している。
【0020】
表30に対する入力方法は、リストボックス形式またはコンボボックス形式になっており、ユーザが表30中の所望のセルに触れると、選択肢の一覧(例えばFORCE1、HEIGHT1、ACT INなど)が表示され、ユーザが選択肢の中から一つを選択すると、一覧が閉じて元の一行分の領域に、選択された項目が表示されるようになっている。また、表30中の数値の入力については、コンボボックス形式を採用し、ユーザが画面上のキーボードのキー(不図示)に触れることで数値を自由に入力できるようにしている。
TRIGGER、OUTPUTの項目については、遅延時間の設定を可能にしてもよい。また、TRIGGERの項目については、上下限範囲の設定を可能にしてもよい。
【0021】
設定項目の入力と表示の更新は、制御部14の操作入力部140と表示制御部142とによって行われる。操作入力部140は、ユーザのタッチパネル機能付き表示器16に対する操作を受け付け、表示制御部142は、ユーザの操作に応じて設定画面を更新する。リストボックスに表示可能な選択肢は、表30の列毎に予め記憶部15に設定されている。
【0022】
次に、ユーザは、表30のフェーズ1における制御のセルに触れて「FORCE(N)」を入力し、FORCEのセルに触れて4000(N)を入力し、到達時間のセルに触れて100(msec)を入力し、保持時間のセルに触れて100(msec)を入力し、TRIGGERのセルに触れて「HEIGHT1 6000」を入力し、OUTPUTのセルに触れて「ACT IN」を入力する。この設定は、被接合物83への加圧制御を行うと同時に電源20(接合制御部141)に信号「ACT IN」を出力し、被接合物83への圧力を100(msec)の時間で4000(N)迄到達させ、圧力が4000(N)の状態を最大100(msec)維持し、被接合物83の高さが6000に達した時点で次のフェーズ2に移行することを意味している。「ACT IN」は、通電開始の意味である。
【0023】
次に、ユーザは、表30のフェーズ2における制御のセルに触れて「FORCE(N)」を入力し、FORCEのセルに触れて2000(N)を入力し、到達時間のセルに触れて100(msec)を入力し、保持時間のセルに触れて100(msec)を入力し、TRIGGERのセルに触れて「HEIGHT2 5000」を入力し、OUTPUTのセルに触れて「ACT STOP1」を入力する。この設定は、被接合物83への加圧制御を行うと同時に電源20(接合制御部141)に信号「ACT STOP1」を出力し、被接合物83への圧力を100(msec)の時間で2000(N)迄到達させ、圧力が2000(N)の状態を最大100(msec)維持し、被接合物83の高さが5000に達した時点で次のフェーズ3に移行することを意味している。「ACT STOP1」は、フェーズ1の電流の目標値からフェーズ2の電流の目標値に切り替えることを意味している。
【0024】
次に、ユーザは、表30のフェーズ3における制御のセルに触れて「HEIGHT(μm)」を入力し、HEIGHTのセルに触れて4000(μm)を入力し、到達時間のセルに触れて100(msec)を入力し、保持時間のセルに触れて0(msec)を入力し、OUTPUTのセルに触れて「ACT STOP2」を入力する。この設定は、被接合物83の高さ制御を行うと同時に電源20(接合制御部141)に信号「ACT STOP2」を出力し、被接合物83の高さを100(msec)の時間で4000(μm)迄到達させ、保持時間0(msec)で次のフェーズ4に移行することを意味している。「ACT STOP2」は、フェーズ2の電流の目標値からフェーズ3,4の電流の目標値に切り替えることを意味している。
【0025】
次に、ユーザは、表30のフェーズ4における制御のセルに触れて「HEIGHT(μm)」を入力し、HEIGHTのセルに触れて3500(μm)を入力し、到達時間のセルに触れて100(msec)を入力し、保持時間のセルに触れて100(msec)を入力する。この設定は、被接合物83の高さ制御を行い、被接合物83の高さを100(msec)の時間で3500(μm)迄到達させ、高さが3500(μm)の状態を100(msec)維持することを意味している。
【0026】
ユーザがタッチパネル機能付き表示器16を操作して設定した内容は、記憶部15に記憶される。
ユーザの入力終了後、制御部14のグラフ生成部143は、ユーザが設定した内容に基づいて、ヒュージング溶接のフェーズの遷移を表すグラフを生成する。図4は、図3に示す設定内容に基づいてグラフ生成部143が作成したグラフの1例を示す図である。図4におけるPは被接合物83への圧力、hは被接合物83の高さ、Iは電極80a,80bを流れる溶接電流を示している。このようにグラフには、接合中の被接合物83に係る物理量の遷移が表示される。
【0027】
制御部14の表示制御部142は、グラフ生成部143によって生成されたグラフを、タッチパネル機能付き表示器16の画面に表示する。
ユーザは、画面に表示されたグラフを見ることでヒュージングのフェーズの遷移を確認することができる。設定が完了すると、実際に被接合物83の溶接を行うことが可能になる。
【0028】
図5はヒュージング溶接時の接合装置の動作を説明するフローチャートである。例えばユーザがタッチパネル機能付き表示器16を操作して溶接開始を指示すると、制御部14からスタート信号が出力され、スタートスイッチ2がオンになる。スタートスイッチ2がオンになると、整流回路3は、交流200Vの商用3相交流電源1の交流出力を全波整流し、整流回路3の出力端間に並列接続されたコンデンサ4を充電する。この整流回路3は、6個のダイオード30を用いた3相全波混合ブリッジで構成される。
【0029】
インバータ5は、コンデンサ4の充電電圧を交流電圧に変換して、溶接トランス6の1次側に供給する。インバータ5は、4個のNPNトランジスタ50からなるブリッジで構成される。溶接トランス6の2次側出力は、整流器(ダイオード)7で全波整流されて電極80a,80bに導かれる。これにより、電極80a,80b間に大電流を流し、発生するジュール熱で被接合物83を昇温させる。
【0030】
電流検出部10は、溶接トランス6の2次側に設けられたホール素子9の出力から、溶接トランス6の2次側を流れる電流I(電極80a,80bを流れる溶接電流)を検出する。電圧検出部11は、電極80a,80b間に印加される溶接電圧Vを検出する。変位検出部13は、加圧機構82a,82bに設けられた変位センサの出力に基づいて、被接合物83の高さ方向の変位量Dを検出する。
【0031】
制御部14の接合制御部141は、図2に示すように電極80a,80b間に被接合物83が配置された状態で、接合ヘッド8の加圧機構82a,82bを制御して、電極80a,80bを始点位置から-10(μm/msec)の速度で移動させて、電極80a,80bによって被接合物83を上下方向から挟み込み加圧する(図5ステップS1)。
【0032】
圧力検出部12は、加圧機構82a,82bに設けられたロードセルの出力に基づいて、被接合物83に印加される圧力を検出する。
接合制御部141は、被接合物83に印加される圧力が500(N)に達した時点で(図5ステップS2においてYES)、フェーズ0からフェーズ1に移行し、加圧制御を行う(図5ステップS3)。
【0033】
フェーズ1において、接合制御部141は、被接合物83に印加される圧力を100(msec)の時間で4000(N)迄到達させ、圧力が4000(N)の状態を最大100(msec)維持する。
【0034】
同時にフェーズ1において、接合制御部141は、信号「ACT IN」の出力に応じて電極80a,80bへの通電を開始する。具体的には、接合制御部141は、上記のようにインバータ5を動作させて交流電圧を発生させることにより、電極80a,80bに電流を印加する。そして、接合制御部141は、電流検出部10によって検出される溶接電流Iをリアルタイムで監視して、溶接電流Iの波形が目標波形と一致するように、インバータ5のトランジスタ50のオン/オフを制御して、電極80a,80bへの通電量を制御する。記憶部15には、望ましい溶接条件としてフェーズ毎の溶接電流Iの目標波形が予め設定されている。
【0035】
電極80a,80b間が既知の所定間隔だけ離れた位置を原点位置とすれば、この原点位置のときの変位センサの出力と、電極80a,80bによって被接合物83を上下から挟んだときの変位センサの出力とから、被接合物83を上下から挟んだときの電極80a,80bの間隔(被接合物83の高さであり、図2のh)を求めることが可能である。接合制御部141は、被接合物83の高さhが6000(μm)に達した時点で(図5ステップS4においてYES)、フェーズ1からフェーズ2に移行し、再度の加圧制御を行う(図5ステップS5)。
【0036】
フェーズ2において、接合制御部141は、被接合物83に印加される圧力を100(msec)の時間で2000(N)迄到達させ、圧力が2000(N)の状態を最大100(msec)維持する。
【0037】
同時にフェーズ2において、接合制御部141は、信号「ACT STOP1」の出力に応じて電極80a,80bへの通電量を制御する。具体的には、接合制御部141は、電流検出部10によって検出される溶接電流Iの波形がフェーズ2の溶接電流Iの目標波形と一致するように、インバータ5のトランジスタ50のオン/オフを制御して、電極80a,80bへの通電量を制御する。
【0038】
接合制御部141は、被接合物83の高さhが5000(μm)に達した時点で(図5ステップS6においてYES)、フェーズ2からフェーズ3に移行し、高さ制御を行う(図5ステップS7)。
【0039】
フェーズ3において、接合制御部141は、加圧機構82a,82bを制御して、被接合物83の高さhを100(msec)の時間で4000(μm)迄到達させ、直ちに次のフェーズ4に移行し、再度の高さ制御を行う(図5ステップS8)。
【0040】
同時にフェーズ3において、接合制御部141は、信号「ACT STOP2」の出力に応じて電極80a,80bへの通電量を制御する。具体的には、接合制御部141は、電流検出部10によって検出される溶接電流Iの波形がフェーズ3,4の溶接電流Iの目標波形と一致するように、インバータ5のトランジスタ50のオン/オフを制御して、電極80a,80bへの通電量を制御する。
【0041】
フェーズ4において、接合制御部141は、加圧機構82a,82bを制御して、被接合物83の高さhを100(msec)の時間で3500(μm)迄到達させ、高さhが3500(μm)の状態を100(msec)維持する。
【0042】
以上で、ヒュージングの工程が終了する。実際には、図3の設定では記載していないが、接合制御部141は、被接合物83の高さhが3500(μm)の状態を100(msec)維持した後に、加圧機構82a,82bを制御して電極80a,80bを始点位置に戻し、電極80a,80bを被接合物83から離す。
【0043】
以上のヒュージング工程は一例であるが、被接合物83に電極80a,80bを当てる時には被接合物83を潰し過ぎないように電極80a,80bの移動速度が重要である。また、電極80a,80bに電流を流すときには、電気抵抗を安定させ発熱を安定させるために、加圧力が重要である。被接合物83を変形させる時には、溶接強度を得るために時間あたりの変形量が重要である。被接合物83の強度と溶接強度の両立のためには、通電を停止し、温度が下がった時の被接合物83の高さが重要である。また、フェーズの切り替わりも適切な設定値に管理することが重要である。
【0044】
本実施例では、フェーズ毎に制御方法、制御の目標値、目標値への到達時間、目標値の保持時間、次のフェーズへ移行する制御切替条件、電源への信号出力などを、ユーザにとって理解し易い方法で容易に設定することができ、ユーザが望む理想的な溶接動作を接合装置に実行させることができる。また、本実施例では、記憶部15の設定を変更することで、接合装置のハードウェアの変更、例えば温度センサの追加などに容易に対応できる。
【0045】
なお、本実施例では、抵抗溶接の1例としてヒュージングを例に挙げて説明しているが、本発明はヒュージング以外の抵抗溶接にも適用できる。また、本発明は、抵抗溶接以外の接合装置、例えば超音波溶着装置に適用することも可能である。超音波溶着装置の場合の制御方法としては、例えば被接合物の温度制御があり、制御の目標値としては被接合物の温度目標値がある。
【0046】
本実施例の制御部14と記憶部15の機能は、CPU(Central Processing Unit)、記憶装置および外部とのインタフェースを備えたコンピュータと、これらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。このコンピュータの構成例を図6に示す。
【0047】
コンピュータは、CPU200と、記憶装置201と、インタフェース装置(以下、I/Fと略する)202とを備えている。I/F202には、溶接電源と電流検出部10と電圧検出部11と圧力検出部12と変位検出部13等が接続される。このようなコンピュータにおいて、本発明の方法を実現させるためのプログラムは記憶装置201に格納される。CPU200は、記憶装置201に格納されたプログラムに従って本実施例で説明した処理を実行する。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、抵抗溶接等の接合技術に適用することができる。
【符号の説明】
【0049】
1…3相交流電源、2…スタートスイッチ、3…整流回路、4…コンデンサ、5…インバータ、6…溶接トランス、7…ダイオード、8…接合ヘッド、9…ホール素子、10…電流検出部、11…電圧検出部、12…圧力検出部、13…変位検出部、14…制御部、15…記憶部、16…タッチパネル機能付き表示器、20…電源、21…本体部、80a,80b…電極、82a,82b…加圧機構、83…被接合物、140…操作入力部、141…接合制御部、142…表示制御部、143…グラフ生成部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6