(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023007613
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】ワイヤー結束機
(51)【国際特許分類】
B65B 13/28 20060101AFI20230112BHJP
B65B 13/04 20060101ALI20230112BHJP
【FI】
B65B13/28
B65B13/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021110577
(22)【出願日】2021-07-02
(71)【出願人】
【識別番号】391029624
【氏名又は名称】滝川工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三木 伸一
(72)【発明者】
【氏名】野村 一雄
(72)【発明者】
【氏名】吉井 將博
(72)【発明者】
【氏名】加納 弥
【テーマコード(参考)】
3E052
【Fターム(参考)】
3E052AA42
3E052BA18
3E052CA01
3E052CB03
3E052CB05
3E052CB07
3E052DB05
3E052FA09
3E052GA15
3E052HA09
3E052JA02
3E052LA03
(57)【要約】
【課題】M形状のねじり目を形成することが可能なワイヤー結束機を、よりコンパクトにすることが可能な新規な構造を提供する。
【解決手段】結束機10は、ループ状にあるワイヤー7の両端部をねじってM形状のねじり目8を形成するための結束ユニット12を備える。結束ユニット12は、中心線C0回りに回転するように構成されているヘッド軸14と、ヘッド軸14の外周側に設けられる内筒15aと、内筒15aの外周側に設けられる外筒15bと、を含む筒体15と、ヘッド軸14の中心線C0回りの外筒15bの回転変位を中心線C0の方向への内筒15aの変位に変換するカム機構40と、外筒15bをヘッド軸14の中心線C0回りに回転させることで内筒15aを、長尺材5側の方向である前方に、第一ストロークS1について前進させると共に、第二ストロークS2について更に前進させる駆動機構16と、を有する。
【選択図】
図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤーの送り出し及び引き戻しを行う供給器と、
複数本の長尺材の周囲に前記ワイヤーを導きループ状とするためのガイドトラックと、
ループ状にある前記ワイヤーの両端部をねじってねじり目を形成するための結束ユニットと、
を備え、
前記結束ユニットは、
前記供給器により送り出された前記ワイヤーを通過させる第一通路、及び当該第一通路を通過し前記ガイドトラックを経由した当該ワイヤーの第一の先端部を通過させる第二通路が設けられ、中心線回りに回転するように構成されているヘッド軸と、
前記ヘッド軸の外周側に設けられる内筒と、前記内筒の外周側に設けられる外筒と、を含む筒体と、
前記ヘッド軸の中心線回りの前記外筒の回転変位を前記中心線の方向への前記内筒の変位に変換するカム機構と、
前記外筒を前記ヘッド軸の中心線回りに回転させることで前記内筒を、前記長尺材側の方向である前方に、第一ストロークについて前進させると共に、第二ストロークについて更に前進させる駆動機構と、
を有し、
前記第一ストロークの前進により、前記内筒の第一接触部が、前記第二通路を通過した前記ワイヤーの前記第一の先端部を前方に押して前方に向かって曲げ、
前記第二ストロークの前進により、前記内筒の第二接触部が、前記第一通路側で切断された前記ワイヤーの第二の先端部を前方に押して前方に向かって曲げる、ワイヤー結束機。
【請求項2】
前記ヘッド軸及び前記内筒が、前記中心線回りに一体回転すると共に、前記中心線の方向へ相対変位可能に連結されていて、
前記ヘッド軸の前記中心線回りの回転を規制する規制機構をさらに備え、
前記規制機構によって前記ヘッド軸を規制した状態で、前記駆動機構によって前記内筒を前記中心線の方向に変位させることが可能であり、
前記規制機構による前記ヘッド軸の規制を解除した状態で、前記駆動機構によって前記ヘッド軸を前記中心線回りに回転させることが可能である、請求項1に記載のワイヤー結束機。
【請求項3】
前記内筒が前記第一ストローク及び前記第二ストロークで前進している状態で、前記内筒を前進させる側へ前記外筒が前記中心線回りに回転し、前記カム機構が前記外筒の回転を前記内筒に伝達することで、前記内筒及び前記ヘッド軸が前記中心線回りに回転する、請求項2に記載のワイヤー結束機。
【請求項4】
前記ヘッド軸及び前記内筒が、前記中心線回りに相対回転可能に構成されていて、
前記ヘッド軸を前記中心線回りに回転させる回転機構をさらに備える、請求項1に記載のワイヤー結束機。
【請求項5】
前記第一接触部と前記第二接触部とは、前記中心線を中心として180°離れて設けられていて、当該第一接触部は当該第二接触部よりも前方に位置している、請求項1~4の何れか一項に記載のワイヤー結束機。
【請求項6】
前記結束ユニットは、前記ワイヤーの一部を切断するため、前記内筒の近傍に設けられているカッターブロックを、更に有し、
前記第二ストロークの前進により、前記ワイヤーの内の前記第一通路を通る直前の部分を、前記内筒と前記カッターブロックとで切断すると共に、切断されることで得られた前記第二の先端部を、前記内筒の前記第二接触部が前方に押して前方に向かって曲げる、請求項1~5の何れか一項に記載のワイヤー結束機。
【請求項7】
前記第一通路と前記第二通路とは、当該第一通路及び当該第二通路が共に繋がるスリットを経て、前記ヘッド軸の前面において開口していて、
前記スリット及び前記開口は、前記ねじり目を形成する際の前記第一通路及び前記第二通路における前記ワイヤーの位置よりも、当該ねじり目を形成するために前記ヘッド軸が回転する方向の前方側に形成されている、請求項1~6の何れか一項に記載のワイヤー結束機。
【請求項8】
前記内筒の内周側には、前記ワイヤーの前記第一の先端部を位置させる第一溝、及び、前記第二の先端部を位置させる第二溝が形成され、
前記第一溝は、前記ヘッド軸の外周面との間で前記第一の先端部を挟んだ状態としてクランプ可能とする溝断面形状を有し、
前記第二溝は、前記ヘッド軸の外周面との間で前記第二の先端部を挟んだ状態としてクランプ可能とする溝断面形状を有する、請求項1~7の何れか一項に記載のワイヤー結束機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数本の長尺材をワイヤーで結束するワイヤー結束機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、製鉄圧延工場では、棒鋼、鋼管、形鋼等の長尺材(条材ともいう)は、所定本数に束ねられて出荷される。このために、所定本数の長尺材はワイヤーによって結束される。この結束は、ワイヤー結束機によって行われる。ワイヤー結束機は、複数の長尺材の周囲にワイヤーを導きループ状とするためのガイドトラックと、ループ状にあるワイヤーの両端部をねじってねじり目を形成するための結束ユニットとを備える。特許文献1には、ワイヤーの先端が別の長尺材束に擦れ、それに含まれる長尺材が損傷するのを防ぐことが可能なM形状のねじり目を形成するワイヤー結束機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、M形状のねじり目を形成することが可能なワイヤー結束機を、よりコンパクトにすることが可能な新規な構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示のワイヤー結束機は、ワイヤーの送り出し及び引き戻しを行う供給器と、複数本の長尺材の周囲に前記ワイヤーを導きループ状とするためのガイドトラックと、ループ状にある前記ワイヤーの両端部をねじってねじり目を形成するための結束ユニットと、を備え、前記結束ユニットは、前記供給器により送り出された前記ワイヤーを通過させる第一通路、及び当該第一通路を通過し前記ガイドトラックを経由した当該ワイヤーの第一の先端部を通過させる第二通路が設けられ、中心線回りに回転するように構成されているヘッド軸と、前記ヘッド軸の外周側に設けられる内筒と、前記内筒の外周側に設けられる外筒と、を含む筒体と、前記ヘッド軸の中心線回りの前記外筒の回転変位を前記中心線の方向への前記内筒の変位に変換するカム機構と、前記外筒を当該ヘッド軸の中心線回りに回転させることで前記内筒を、前記長尺材側の方向である前方に、第一ストロークについて前進させると共に、第二ストロークについて更に前進させる駆動機構と、を有し、前記第一ストロークの前進により、前記内筒の第一接触部が、前記第二通路を通過した前記ワイヤーの前記第一の先端部を前方に押して前方に向かって曲げ、前記第二ストロークの前進により、前記内筒の第二接触部が、前記第一通路側で切断された前記ワイヤーの第二の先端部を前方に押して前方に向かって曲げる。
【0006】
このワイヤー結束機によれば、駆動機構によって外筒が回転することで、内筒が第一及び第二ストロークで前進し、ワイヤーのねじり目が内側向きのM形状に形成される。このため、駆動機構の回転を筒体の軸方向変位に変換するためのリンク機構が不要となり、M形状のねじり目が形成可能なワイヤー結束機をコンパクトに構成することが可能となる。
【0007】
また、好ましくは、前記ヘッド軸及び前記内筒が、前記中心線回りに一体回転すると共に、前記中心線の方向へ相対変位可能に連結されていて、前記ヘッド軸の前記中心線回りの回転を規制する規制機構をさらに備え、前記規制機構によって前記ヘッド軸を規制した状態で、前記駆動機構によって前記内筒を前記中心線の方向に変位させることが可能であり、前記規制機構による前記ヘッド軸の規制を解除した状態で、前記駆動機構によって前記ヘッド軸を前記中心線回りに回転させることが可能である。
この構成により、駆動機構によって内筒を軸方向へ変位させる動作と、駆動機構によってヘッド軸を中心線回りに回転させる動作とを、規制機構によって切り換えることが可能となる。これにより、駆動機構が有する一つのモータの駆動によって、M形状のねじり目を形成することができ、ワイヤー結束機をよりコンパクトにすることができる。
【0008】
また、好ましくは、前記内筒が前記第一ストローク及び前記第二ストロークで前進している状態で、前記内筒を前進させる側へ前記外筒が前記中心線回りに回転し、前記カム機構が前記外筒の回転を前記内筒に伝達することで、前記内筒及び前記ヘッド軸が前記中心線回りに回転する。
この構成により、駆動機構によってヘッド軸を中心線回りに回転させることができる。これにより、駆動機構が有する一つのモータの駆動によって、M形状のねじり目を形成することができ、ワイヤー結束機をよりコンパクトにすることができる。
【0009】
また、好ましくは、前記ヘッド軸及び前記内筒が、前記中心線回りに相対回転可能に構成されていて、前記ヘッド軸を前記中心線回りに回転させる回転機構をさらに備える。
この構成により、駆動機構によって外筒を中心線回りに回転させて内筒を軸方向へ変位させるとともに、回転機構によってヘッド軸を中心線回りに回転させることが可能となる。これにより、M形状のねじり目を形成することが可能なワイヤー結束機について、駆動機構及び回転機構がそれぞれモータを有する構成とした場合にリンク機構が不要となり、ワイヤー結束機をよりコンパクトにすることができる。
【0010】
また、好ましくは、前記第一接触部と前記第二接触部とは、前記中心線を中心として180°離れて設けられていて、当該第一接触部は当該第二接触部よりも前方に位置している。
この構成により、ワイヤーの第一の先端部が先に前方に向かって曲げられてから、第二の先端部が前方に向かって曲げられる。
【0011】
また、好ましくは、前記結束ユニットは、前記ワイヤーの一部を切断するため、前記内筒の近傍に設けられているカッターブロックを、更に有し、前記第二ストロークの前進により、前記ワイヤーの内の前記第一通路を通る直前の部分を、前記内筒と前記カッターブロックとで切断すると共に、切断されることで得られた前記第二の先端部を、前記内筒の前記第二接触部が前方に押して前方に向かって曲げる。
この構成によれば、内筒が第二ストロークについて前進する間に、ワイヤーの切断と、第二の先端部の曲げとが行われる。
【0012】
また、好ましくは、前記第一通路と前記第二通路とは、当該第一通路及び当該第二通路が共に繋がるスリットを経て、前記ヘッド軸の前面において開口していて、前記スリット及び前記開口は、前記ねじり目を形成する際の前記第一通路及び前記第二通路における前記ワイヤーの位置よりも、当該ねじり目を形成するために前記ヘッド軸が回転する方向の前方側に形成されている。
この構成によれば、ねじり目が形成されると、ヘッド軸に対して内筒を後退させ、ヘッド軸を、ねじり目を形成するための回転方向とは反対に小回転させることで、ねじり目を、スリットを経てヘッド軸の前面の開口から離脱させることが容易となる。
【0013】
また、好ましくは、前記内筒の内周側には、前記ワイヤーの前記第一の先端部を位置させる第一溝、及び、前記第二の先端部を位置させる第二溝が形成され、前記第一溝は、前記ヘッド軸の外周面との間で前記第一の先端部を挟んだ状態としてクランプ可能とする溝断面形状を有し、前記第二溝は、前記ヘッド軸の外周面との間で前記第二の先端部を挟んだ状態としてクランプ可能とする溝断面形状を有する。
この構成によれば、前記第一ストロークの前進により、内筒の第一接触部が、ワイヤーの第一の先端部を前方に押して前方に向かって曲げると共に、内筒とヘッド軸との間で挟んだ状態として、第一の先端部がクランプされる。前記第二ストロークの前進により、内筒の第二接触部が、ワイヤーの第二の先端部を前方に押して前方に向かって曲げると共に、内筒とヘッド軸との間で挟んだ状態として、第二の先端部がクランプされる。第一及び第二の先端部が前方に向かって曲げられたワイヤーが、前記のようにクランプされた状態で、ヘッド軸及び筒体が回転機構によって回転することで、前記ねじり目が形成される。
【発明の効果】
【0014】
本開示のワイヤー結束機によれば、M形状のねじり目を形成することが可能なワイヤー結束機について、よりコンパクトとなる新規な構造を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2A】第一の実施形態に係る結束ユニットを側面から見た場合の構成図である。
【
図2B】第一の実施形態に係る結束ユニットを後部から見た場合の規制機構の構成図である。
【
図3】結束ユニットの一部を長尺材の束側から見た場合の構成図である。
【
図5】ヘッド軸及び筒体の前側部分を示す断面図である。
【
図6】筒体が第一ストロークについて前進した状態の図である。
【
図7】筒体が第二ストロークについて前進した状態の図である。
【
図16】結束動作(1)~(5)におけるカム機構及び規制機構の状態の説明図である。
【
図17】結束動作(6)~(8)におけるカム機構及び規制機構の状態の説明図である。
【
図19】第二の実施形態に係る結束ユニットを側面から見た場合の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
〔ワイヤー結束機の全体構成について〕
図1はワイヤー結束機の一例を示す側面図である。ワイヤー結束機10(以下、結束機10と称する)は、例えば製鉄圧延工場に設置され、棒鋼、鋼管、形鋼等の長尺材(条材ともいう)を所定本数に束ねるための設備である。結束機10は、床上に設置される装置フレーム25、ベース29、ガイドトラック11、結束ユニット12、及び、供給器13を備える。装置フレーム25にベース29が取り付けられている。ベース29に、ガイドトラック11、結束ユニット12、及び供給器13が搭載されている。ベース29は、装置フレーム25の上部に揺動可能に支持されている。装置フレーム25とベース29との間にアクチュエータ26が介在する。アクチュエータ26の動作によって、結束ユニット12は揺動する。結束ユニット12が第一の揺動位置にある状態で、ワイヤー7による長尺材5の束の結束が行われる。結束が終わると、結束ユニット12が第二の揺動位置へ移動し、結束された長尺材5の束が、図外の搬送コンベア上に載り、搬出される。
【0017】
ガイドトラック11は、ワイヤー7を誘導する環状のガイド28を有する。ガイド28の中心側に所定数の長尺材5が位置する。ガイド28は、ワイヤー誘導用の通路を有し、この通路は断面凹形状を有する。この凹形状は、ガイド28の中心側に向かって開口している。供給器13によってワイヤー7が送り出されることで、ワイヤー7は、結束ユニット12を経由して、ガイド28に沿って移動し(
図1では反時計回りに移動し)、ループ状となる。ループ状となったワイヤー7の先端部が保持された状態で、供給器13がワイヤー7を引き戻すことで、ワイヤー7はガイド28から抜け出て、長尺材5の束に巻き付く。このように、ガイドトラック11は、束状にある複数本の長尺材5の周囲にワイヤー7を導きループ状とする。
【0018】
供給器13は、図外のモータによって回転するホイール13aを有する。ホイール13aは正回転及び逆回転する。ホイール13aが正回転(
図1では反時計回りに回転)することで、ワイヤー7が結束ユニット12側へ送り出される。ホイール13aが逆回転することで、ワイヤー7は結束ユニット12側から引き戻される。このように、供給器13は、結束ユニット12に対して、ワイヤー7の送り出し及び引き戻しを行う。
【0019】
結束ユニット12は、ループ状にあり長尺材5の束に巻き付いたワイヤー7の両端部をねじって、ねじり目8(
図18参照)を形成する。
【0020】
〔結束ユニットについて〕
以下では、結束ユニット12の詳細な構成について説明する。ここでは、第一の実施形態に係る結束ユニット12である第一結束ユニット12Aの構成について説明する。なお、以下の説明において、単に「結束ユニット12」と称する場合は、第一結束ユニット12A、及び後で説明する第二結束ユニット12B(
図19参照)で共通する構成について説明している。
【0021】
図2Aは、第一結束ユニット12Aを側面から見た場合の構成図である。
図2Bは、第一結束ユニット12Aを後側から見た場合の規制機構の構成図である。
図2A及び
図2Bに示すように、第一結束ユニット12Aは、ヘッド軸14、筒体15、駆動機構16、規制機構17、カッターブロック18、及び、ストッパ27を有する。なお、
図2Aでは、説明を容易にするため、中心線C0回りの駆動機構16の位相を、
図1に示す実際の位相から供給機13側へ90度回転させて図示している(後で説明する
図4、
図8~
図15、及び
図19においても同様としている)。
【0022】
〔ヘッド軸及び筒体〕
図3は、結束ユニット12の一部を長尺材5の束側から見た場合の構成図である。
図4は、第一結束ユニット12Aの一部の断面図である。
図5は、ヘッド軸14及び筒体15の前側部分を示す断面図である。結束ユニット12において、「軸方向」とは、ヘッド軸14の中心線C0に沿った方向である。中心線C0に直交する方向が「径方向」となり、中心線C0を中心とする回転方向が「周方向」となる。長尺材5の束側を「前」と定義し、束側と反対側を「後」と定義する。なお、
図4では、説明を容易にするため、中心線C0回りの規制機構17の位相を、
図1及び
図2Aに示す実際の位相から供給機13側へ90度回転させて図示している(後で説明する
図8~
図15においても同様としている)。
【0023】
図4に示すように、ヘッド軸14は、直線状の部材である。ヘッド軸14は、後側の端部において、円筒状の被係止部14cを有する。被係止部14cの外周部には、径方向に凹んだ凹部14dが形成されている。筒体15は、ヘッド軸14の外周側に設けられている筒状の部材である。筒体15は、外周部に設けた一対のベアリング33,33を介して、ベース29によって回転可能に支持されている。ヘッド軸14は、外周部に設けたベアリング35を介して、ベース29によって回転可能に支持されるとともに、筒体15に挿入されることで、当該筒体15によって支持されている。
【0024】
図4に示すように、筒体15は、径方向内側に位置する内筒15aと、径方向外側に位置する外筒15bと、で構成されている。内筒15aは、ヘッド軸14を挿入する第一貫通孔15eを有し、外筒15bは、内筒15aを挿入する第二貫通孔15fを有する。外筒15bの径方向外側には、円環状のかさ歯車15cが固定されている。かさ歯車15cは、後で説明する駆動機構16のかさ歯車34bと噛み合っている。
【0025】
結束ユニット12では、内筒15aを、外筒15bの第二貫通孔15fに挿入し、ヘッド軸14を、内筒15aの第一貫通孔15eに挿入する。内筒15aは、第二貫通孔15fに挿入された状態で、ヘッド軸14の軸方向(中心線C0の方向)に変位可能に構成される。外筒15bは、軸方向(中心線C0の方向)に変位不能であり、第二貫通孔15fに内筒15aが挿入された状態で、中心線C0回りに回転可能に構成される。
【0026】
内筒15aは、前側に、ワイヤー7の一部及び他部と接触可能である第一接触部31及び第二接触部32を有する。第一接触部31は第二接触部32よりも前方に位置している。第一接触部31と第二接触部32とは、中心線C0を中心として180°離れて設けられている(
図3参照)。第一接触部31は、内筒15aの前端の一部により成る。この一部に対して180°離れた内筒15aの前部にワイヤー7の径よりも幅の大きい切り欠きが設けられている。この切り欠きの後部(底部)が第二接触部32と成る。
【0027】
内筒15aの内周側には、第一溝19及び第二溝20が形成されている。第一溝19及び第二溝20の溝長手方向は、中心線C0に平行である。第一溝19は、ワイヤー7の(曲げられた)第一の先端部71を位置させる(
図7参照)。第二溝20は、ワイヤー7の(曲げられた)第二の先端部72を位置させる。なお、ワイヤー7の先端部71,72の曲げについては後に説明する。
【0028】
ヘッド軸14及び内筒15aは、ヘッド軸14の外周面に形成された外歯と、第一貫通孔15eの内周面に形成された内歯と、によって連結部30を構成している。連結部30は、ヘッド軸14の前記外歯と、第一貫通孔15eの前記内歯とがスプライン嵌合している部位であり、連結部30によって、ヘッド軸14と内筒15aとが連結されている。このため、第一結束ユニット12Aにおいて、内筒15aは、ヘッド軸14に対して、軸方向(ヘッド軸14の中心線C0方向)に相対変位可能であるとともに、中心線C0回りに相対回転不能である。
【0029】
図5において、ヘッド軸14には、ワイヤー7を通過させる第一通路21及び第二通路22が設けられている。第一通路21及び第二通路22それぞれは、ヘッド軸14の前部に形成されている穴により構成されている。第一通路21及び第二通路22は(
図3参照)、中心線C0を挟んで径方向の一方側及び他方側に平行となって設けられている。第一通路21及び第二通路22それぞれは、ヘッド軸14を貫通している。
図5において、第一通路21は、供給器13(
図2参照)のホイール13aが正回転することにより送り出されたワイヤー7を通過させる。第二通路22は、第一通路21を通過し前記ガイドトラック11を経由したワイヤー7の第一の先端部71を通過させる。
【0030】
第一通路21を構成する前側の壁面21aは、第一通路21を通過しているワイヤー7の一部に接触可能であり、当該一部の前方への移動を規制する。第二通路22を構成する前側の壁面22aは、第二通路22を通過しているワイヤー7の一部に接触可能であり、当該一部の前方への移動を規制する。
図3及び
図5に示すように、第一通路21及び第二通路22は、共通するスリット23を経てヘッド軸14の前面14aにおいて開口している。つまり、穴により構成されている第一通路21及び第二通路22は、その穴の長手方向以外でも開口している。前面14aにおける前記開口の符号は「24」である。後に説明するが(
図14参照)、ワイヤー7の両先端部71,72がねじられることで、ねじり目8が形成される。ねじり目8は、スリット23及び開口24を通じて、ヘッド軸14から離脱することができる。
【0031】
〔駆動機構〕
図2Aに示すように、駆動機構16は、モータ(減速機付きモータ)34を有する。モータ34は、その出力軸34aにかさ歯車34bが形成されている。モータ34は図外の制御装置によって制御される。かさ歯車34bは、外筒15bに固定されたかさ歯車15cと噛み合っている。出力軸34aが中心線C1回りに一方向(後で説明する第一方向V1)へ回転することで、かさ歯車15cが正方向(後で説明する第一方向R1)に回転する。出力軸34aが中心線C1回りに他方向(後で説明する第二方向V2)へ回転することで、かさ歯車15cが負方向(後で説明する第二方向R2)に回転する。駆動機構16は、かさ歯車15c及び外筒15bを中心線C0回りに正逆回転させるとともに、内筒15aを軸方向に往復変位させる。なお、本実施形態では、モータ34の軸芯(中心線C1)を、外筒15bの軸芯(中心線C0)に対して直交させて配置し、駆動機構16の駆動力を、かさ歯車34b,15cによって外筒15bに伝達する構成としているが、駆動機構16の構成はこれに限定されず、例えば、モータの軸芯及び外筒の軸芯が平行となるように駆動機構を配置してもよい。
【0032】
〔規制機構〕
図2A及び
図2Bに示すように、規制機構17は、アクチュエータ36と、アーム体37と、回転軸38とを有する。規制機構17には、凹部14dが形成されたヘッド軸14の被係止部14cが含まれる。アーム体37は、回転軸38によって、揺動可能に支持されている。回転軸38の軸芯は、ヘッド軸14の軸芯(中心線C0)に対して平行である。これによりアーム体37は、中心線C0に対して垂直な平面に沿って揺動する。回転軸38側とは反対のアーム体37の端部には、係止部39が形成されている。
【0033】
図2Bに示すように、アーム体37は、係止部39が凹部14dに入り込む第一位置Q1と、係止部39が凹部14dから抜け出る第二位置Q2と、の間で揺動可能に構成されている。ヘッド軸14は、凹部14dに係止部39が入り込んでいる状態において、中心線C0回りの回転が規制される。ヘッド軸14は、凹部14dから係止部39が抜け出た状態において、規制機構17による規制が解除されて、中心線C0回りに回転可能となる。このように、第一結束ユニット12Aでは、規制機構17によって、ヘッド軸14が中心線C0回りに回転可能な状態と回転不能な状態とを切り換えることができる。
【0034】
〔カム機構〕
図2Aに示すように、結束ユニット12は、さらにカム機構40を有する。結束ユニット12の筒体15は、内筒15a及び外筒15bが、カム機構40を介して連結されている。カム機構40は、内筒15aに設けられたピン41及びベアリング42と、カム溝43が形成された外筒15bとを含む円筒カムである。カム機構40は、原動節である外筒15bの中心線C0回りの回転を、従動節である内筒15aの中心線C0の方向(軸方向)への変位に変換する。
【0035】
ピン41は内筒15aの外周面から径方向外側に突出して設けられた軸状の部位である。ベアリング42は、ピン41の径方向外側に嵌められている。カム溝43は、外筒15bの外周面に形成されたらせん状の溝部であり、ピン41及びベアリング42が挿入される。ピン41は、ベアリング42を介してカム溝43の内壁に接触する。なお、本開示の結束ユニットにおけるカム機構の構成はこれに限定されず、例えば、内筒側にカム溝を設け、外筒側にピンを設けても良い。
【0036】
カム機構40は、カム溝43の前端よりも後方でかつ後端よりも前方にピン41が位置している場合、外筒15bの中心線C0回りの回転変位を、内筒15aの軸方向への変位に変換する。結束ユニット12では、外筒15bが第一方向R1(
図3参照)へ変位すると、内筒15aが前方へ変位し、外筒15bが第二方向R2(
図3参照)へ回転すると、内筒15aが後方へ変位する。
【0037】
カム機構40は、ピン41が前方へ変位する側へ外筒15bが中心線C0回りに回転し続けると、ピン41は、やがてカム溝43の前端に到達する。内筒15aは、ピン41がカム溝43の前端に到達するまでは前方に変位可能であるが、それより更に前方へ変位することはできない。カム機構40は、カム溝43によって、ピン41の前後方向の位置を規制する。
【0038】
カム機構40は、ピン41がカム溝43の前端に位置している状態から、ピン41を前方へ変位させる側へ外筒15bがさらに回転すると、カム溝43の内壁がピン41をその回転方向へ押圧し、その結果内筒15a及び外筒15bが一体となって中心線C0回りに回転する。具体的には、第一結束ユニット12Aでは、ピン41がカム溝43の前端に位置しているときに、外筒15bが第一方向R1へ回転すると、内筒15aが、外筒15bと共に第一方向R1へ回転する(
図17の(A)図参照)。言い換えると、カム機構40は、ピン41がカム溝43の前後方向における中途部に位置しているときは、外筒15bの回転変位を内筒15aの軸方向変位に変換する役割を果たし、ピン41がカム溝43の前端に位置しているときは、外筒15bの回転をそのまま内筒15aに伝達する役割を果たす。
【0039】
結束ユニット12では、ピン41がカム溝43の後端に位置するときの内筒15aの位置を待機位置P0と称し、ピン41がカム溝43の前端に位置するときの内筒15aの位置を第二位置P2と称する(
図16参照)。また、結束ユニット12では、待機位置P0と第二位置P2との間に、さらに第一位置P1を設定している(
図16参照)。なお、本説明では、ピン41の位置によって内筒15aの位置を表している。
【0040】
結束ユニット12では、前後方向における待機位置P0から第一位置P1までの距離を第一ストロークS1とし、前後方向における第一位置P1から第二位置P2までの距離を第二ストロークS2としている。言い換えると、結束ユニット12では、前後方向におけるカム溝43の長さが、第一ストロークS1及び第二ストロークS2を加算した距離と一致している。内筒15aは、待機位置P0から第二位置P2まで変位すると、第一ストロークS1及び第二ストロークS2を加算した距離(S1+S2)だけ前進する。
【0041】
結束ユニット12では、外筒15bが第一方向R1へ回転すると、内筒15aは、待機位置P0から第二位置P2に到達するまでの間は前進し、第二位置P2に到達した後は外筒15bと共に第一方向R1に回転する。なお、結束ユニット12では、外筒15bが第二方向R2へ回転すると、内筒15aは、第二位置P2から待機位置P0に到達するまでの間は後方に変位する。
【0042】
〔結束ユニットの動作について〕
図2Aの状態から、モータ34の出力軸34a(かさ歯車34b)が、出力軸34aの中心線C1回りに所定回転すると、内筒15aは前方へ移動する。
図2Aの状態から、ピン41が第一位置P1に位置した状態でモータ34は一旦停止する。このとき、内筒15aは、ヘッド軸14を残して、第一ストロークS1(
図5から
図6参照)について前方へ移動する。出力軸34a(かさ歯車34b)が、出力軸34aの中心線C1回りにさらに所定回転すると、モータ34は再び一旦停止する。このとき、内筒15aは、ヘッド軸14を残して、第二ストロークS2(
図6から
図7参照)について前方へ移動する。以上のように、駆動機構16は、内筒15aを、長尺材5側の方向である前方に、第一ストロークS1について前進させると共に、第二ストロークS2について更に前進させる。
【0043】
モータ34の出力軸34a(かさ歯車34b)が、中心線C1回りに所定回転すると、内筒15aは後方へ、第一ストロークS1と第二ストロークS2との合計のストロークについて、移動する。なお、駆動機構16は、以上のように説明した形態以外であってもよい。
図5に示すように、内筒15aが前方へ移動する前の状態(待機状態)では、第一通路21及び第二通路22は、その長手方向両側において、内筒15aによって覆われておらず、開口している。
【0044】
〔ストッパ及びカッターブロック〕
図2Aにおいて、ストッパ27とカッターブロック18とは、中心線C0を中心として180°離れて設けられている。ストッパ27は、内筒15aの近傍(径方向外側)において、ベース29に取り付けられている(固定されている)。供給器13から結束ユニット12に送り出されたワイヤー7は、先ず、ヘッド軸14の第一通路21を通過し、ガイドトラック11によってループ状とされ、その後、ワイヤー7の第一の先端部71が第二通路22を通過し、先端71aがストッパ27に接触する。
【0045】
前記のとおり(
図5及び
図6参照)、第二通路22を通過したワイヤー7の一部の前方への移動は、前側の壁面22aによって規制されている。このため、
図6及び
図7に示すように、前進する内筒15aによってワイヤー7の第一の先端部71は前方へ押され前方へ曲げられる。
【0046】
図2Aにおいて、カッターブロック18は、供給器13から送り出されたワイヤー7が通過する位置に、ベース29に取り付けられている(固定されている)。
図6から
図7に示すように、カッターブロック18は、ワイヤー7の一部(第二の先端部72側となる部分)を切断する。このために、カッターブロック18は、内筒15aの近傍(径方向外側)に設けられている。ワイヤー7の切断については後に説明するが、前記のとおり、第一通路21を通過しているワイヤー7の一部の前方への移動は、前側の壁面21aによって規制されている。このため、内筒15aが前進すると、内筒15aの先端の一部15d(先端の外周面の一部15d)とカッターブロック18との間でワイヤー7が切断(せん断)される。
【0047】
前記のとおり、内筒15aの内周側には、第一溝19及び第二溝20が設けられている。第一通路21と周方向について同じ位置に、第二溝20が設けられている。第二通路22と周方向について同じ位置に、第一溝19が設けられている。内筒15aが、第一及び第二ストロークS1,S2について前進した状態で(
図7参照)、第一溝19と、ヘッド軸14の外周面14b(外周面14bの内の第一溝19と径方向に対向する部分)との間で、ワイヤー7の第一の先端部71は挟まれた状態となる。これにより、第一の先端部71は、内筒15a及びヘッド軸14によってクランプされた状態となる。同様に、内筒15aが、第一及び第二ストロークS1,S2について前進した状態で、内筒15aの第二溝20と、ヘッド軸14の外周面14b(外周面14bの内の第二溝20と径方向に対向する部分)との間で、第二の先端部72は挟まれた状態となる。これにより、第二の先端部72は、内筒15a及びヘッド軸14によってクランプされた状態となる。
【0048】
前記のようにワイヤー7の先端部71,72がクランプされるために、第一溝19及び第二溝20の溝深さ(溝の径方向の寸法)及び溝幅(溝の周方向の寸法)は、ワイヤー7の径と同一よりもわずかに大きい(最大でワイヤー7の径の20%大きい)程度である。以上のように、第一溝19は、ヘッド軸14の外周面14bとの間で第一の先端部71を挟んだ状態としてクランプ可能とする溝断面形状を有する。第二溝20は、ヘッド軸14の外周面14bとの間で第二の先端部72を挟んだ状態としてクランプ可能とする溝断面形状を有する。
【0049】
〔結束動作について〕
前記構成を備える結束機10が、ワイヤー7を用いて長尺材5の束を結束する動作について説明する。
図8から
図15は、結束動作を順に説明するための図である。
図16及び
図17は、結束動作の各タイミングにおけるカム機構40及び規制機構17の状態の説明図である。
図8に示す状態から
図15に示す状態まで結束動作が順に実行される。
【0050】
供給器13(
図2参照)のホイール13aの正回転によってワイヤー7が結束ユニット12に送り出される。ワイヤー7は、ヘッド軸14の第一通路21を経て(
図8参照)、ガイドトラック11に沿ってループ状となり、先端部(第一の先端部71)が第二通路22を通過する。第一の先端部71の先端71aがストッパ27に接触する。このとき、
図8及び
図16の(A)図に示すように、カム機構40のピン41(内筒15a)は、待機位置P0に位置している。またこのとき、規制機構17は、アーム体37が第一位置Q1に位置しており、係止部39が凹部14dに入り込んで、ヘッド軸14及び内筒15aの回転を規制している。なお、ピン41が待機位置P0に位置している状態(
図16の(A)図参照)では、外筒15bを中心線C0回りに第二方向R2へ回転させようとしても、外筒15b(カム溝43)がピン41によって係止されるため、外筒15bは第二方向R2へは回転不能である。
【0051】
次に、
図9に示すように、かさ歯車34bが第一方向V1へ所定回数だけ回転し、外筒15bが第一方向R1へ回転されると共に、内筒15a(ピン41)が第一ストロークS1について前進し、ピン41が第一位置P1に位置する(
図16の(B)図参照)。この際に、内筒15aの第一接触部31が第一の先端部71を前方に押して前方に向かって曲げる。第一の先端部71は、第一接触部31とヘッド軸14との間で挟まれて保持された状態となる。
【0052】
次に、
図10に示すように、ピン41が第一位置P1に位置している状態で、ホイール13aの逆回転によってワイヤー7が結束ユニット12から引き戻される。これにより、長尺材5の束はワイヤー7によって締め付けられる。
【0053】
次に、
図11及び
図12に示すように、かさ歯車34bが第一方向V1へ更に所定回数だけ回転し、第一ストロークS1について既に前進していた内筒15a(ピン41)が前進し、最終的に第二ストロークS2について前進する(
図16の(C)図参照)。これにより、内筒15aの第一接触部31が第一の先端部71を更に前方に押して前方に向かって更に曲げる。
図11に示すように、内筒15aが、第二ストロークS2について前進する間に、内筒15aの先端の一部とカッターブロック18との間でワイヤー7が切断(せん断)される。ワイヤー7は切断されることで第二の先端部72が得られる。
図12に示すように、前記切断の後、内筒15aの第二ストロークS2についての前進の間に、内筒15aの第二接触部32が第二の先端部72を前方に押して前方に向かって曲げる。内筒15aが第二ストロークS2について前進すると、ワイヤー7の第一及び第二の先端部71,72は、内筒15aとヘッド軸14との間に挟まれてクランプされた状態となる。
【0054】
次に、
図13に示すように、係止部39が第二位置Q2に位置すると共に、かさ歯車34bが第一方向V1へさらに所定回数だけ回転し、外筒15bが第一方向R1へさらに回転する。このとき、
図17の(A)図に示すように、規制機構17は、アーム体37を第二位置Q2に回動させて、係止部39を凹部14dから抜け出た状態とし、ヘッド軸14の回転規制を解除する。またこのとき、カム機構40のピン41(内筒15a)は、第二位置P2に位置している。このため、
図13に示す状態では、外筒15bが第一方向R1へ回転することによって、ヘッド軸14が、内筒15aと共に中心線C0回りに第一方向R1へ回転する。このときのヘッド軸14の回転数は、1.5~2回転である。これにより、ワイヤー7にはねじり目8が形成される。
図18に示すように、ねじり目8は、前後方向に沿って形成され、先端部71,72は、先端71a,72aが前側を向くようにUターンされたM字形状を有する。つまり、M形状のねじり目8が形成される。ねじり目8はスリット23及び開口24から前方に延びている。
【0055】
次に、かさ歯車34bが第二方向V2に所定回数だけ小回転し、
図17の(B)図に示すように、外筒15b(カム溝43)が第二方向R2へ小回転する。この小回転の方向は、ねじり目8を形成する場合の回転方向(第一方向R1)とは反対となる、第二方向R2である。このとき、規制機構17は、アーム体37を第二位置Q2に回動させたままとし、ヘッド軸14の回転規制を解除している。このため、ヘッド軸14は、かさ歯車34bが第二方向V2へ小回転することによって、同様に小回転する。この小回転に併せて、前記アクチュエータ26(
図1参照)によって結束ユニット12を揺動させる。これら小回転の動作及び揺動は、次に説明するように(
図15参照)、ねじり目8をヘッド軸14から離脱させるためである。すなわち、前記のとおり(
図3及び
図18参照)、ヘッド軸14の第一通路21と第二通路22とは、これら第一通路21及び第二通路22が共に繋がるスリット23を経て、ヘッド軸14の前面14aにおいて開口している。スリット23及び開口24は、ねじり目8を形成する際の第一通路21及び第二通路22におけるワイヤー7の位置(
図3参照)よりも、ねじり目8を形成するためにヘッド軸14が回転する方向(
図3の矢印R1方向)の前方側に形成されている。そこで、ヘッド軸14を反対方向(
図3の矢印R2方向)に小回転させる。そして、ヘッド軸14が長尺材5の束から離れる方向に結束ユニット12を揺動させる。これにより、
図14から
図15に示すように、ねじり目8をヘッド軸14から離脱させる。
【0056】
その後、
図14に示すように、かさ歯車34bが第二方向V2に所定回数だけさらに回転し、
図15に示すように、内筒15aが後退する。このとき、
図17の(C)図に示すように、規制機構17は、アーム体37を第一位置Q1に回動させて、係止部39が凹部14dに入り込んだ状態とし、ヘッド軸14の回転を規制する。このときの後退のストロークは、第一ストロークS1と第二ストロークS2との合計の値であり、ピン41(内筒15a)は待機位置P0に位置して前記待機状態となる。
【0057】
以上のようにして、所定本数の長尺材5がワイヤー7によって結束された状態となる。結束された長尺材5の束が、搬出コンベアによって搬出される。
【0058】
(結束ユニットの第二実施形態について)
図19は、第二の実施形態に係る結束ユニットを側面から見た場合の構成図である。本開示のワイヤー結束機10は、前述した第一結束ユニット12A(
図2参照)に代えて、
図19に示す第二結束ユニット12Bを用いてもよい。第二結束ユニット12Bは、結束ユニット12の第二の実施形態である。
【0059】
図19に示すように、第二結束ユニット12Bは、規制機構17に代えて回転機構50を備えている点、及び内筒15aとヘッド軸14とを連結する連結部30(
図2参照)を備えていない点で、第一結束ユニット12Aと異なっている。このため、第二結束ユニット12Bにおいて、内筒15a及びヘッド軸14は、軸方向(ヘッド軸14の中心線C0方向)に相対変位可能であるとともに、中心線C0回りに相対回転可能である。
【0060】
第二結束ユニット12Bは、駆動機構16を有している。第二結束ユニット12Bにおける駆動機構16は、かさ歯車15c及び外筒15bを中心線C0回りに正逆回転させ、内筒15aを軸方向に往復変位させる。しかしながら、第二結束ユニット12Bにおける駆動機構16は、ヘッド軸14を中心線C0回りに正逆回転させることができない。この点において、第二結束ユニット12Bにおける駆動機構16は、第一結束ユニット12Aにおける駆動機構16と異なっている。
【0061】
回転機構50は、モータ(減速機付きモータ)51を有する。モータ51の出力軸52にヘッド軸14が同軸で固定されている。モータ51は図外の制御装置によって制御される。出力軸52が第一方向R1に回転することで、ヘッド軸14が第一方向R1に回転し、出力軸52が第二方向R2に回転することで、ヘッド軸14が第二方向R2に回転する。回転機構50は、ヘッド軸14を中心線C0回りに正逆回転させる。
【0062】
第二結束ユニット12Bは、回転機構50によって、ヘッド軸14を中心線C0回りに回転することができる。第二結束ユニット12Bにおいて、内筒15a及びヘッド軸14は連結されていないため、内筒15aを、回転機構50によって駆動することはできない。
【0063】
第二結束ユニット12Bでは、駆動機構16によって、内筒15aを第一ストロークS1及び第二ストロークS2で前進させて、ワイヤー7の切断及び曲げを行うと共に、回転機構50によって、ヘッド軸14を回転させて、ねじり目8を形成する。
【0064】
このような第二結束ユニット12Bは、従来の結束ユニットのようなリンク機構を備えていなくても、駆動機構16によって、ワイヤー7の切断及び曲げを行うと共に、回転機構50によってねじり目8の形成を行うことができる。このため、第二結束ユニット12Bを備えた結束機10は、従来の結束ユニットを備えた結束機に比べてコンパクトに構成することができる。
【0065】
〔本開示の結束機10に関して〕
本開示の結束機10が備える結束ユニット12は、ヘッド軸14と、筒体15と、駆動機構16と、を有する。ヘッド軸14には、供給器13により送り出されたワイヤー7を通過させる第一通路21、及び、第一通路21を通過しガイドトラック11を経由したワイヤー7の第一の先端部71を通過させる第二通路22が設けられ、中心線C0回りに回転するように構成されている。ヘッド軸14の外周側に設けられる内筒15aと、内筒15aの外周側に設けられる外筒15bと、を含む筒体15と、ヘッド軸14の中心線C0回りの外筒15bの回転変位を中心線C0の方向への内筒15aの変位に変換するカム機構40と、外筒15bをヘッド軸14の中心線C0回りに回転させることで内筒15aを、長尺材5側の方向である前方に、第一ストロークS1について前進させると共に、第二ストロークS2について更に前進させる駆動機構16と、を有する。
【0066】
内筒15aが第一ストロークS1について前進することにより、内筒15aの第一接触部31が、第二通路22を通過したワイヤー7の第一の先端部71を前方に押して前方に向かって曲げる。内筒15aが、更に、第二ストロークS2について前進することにより、内筒15aの第二接触部32が、第一通路21側で切断されたワイヤー7の第二の先端部72を前方に押して前方に向かって曲げる。これと共に、内筒15aとヘッド軸14との間で第一及び第二の先端部71,72が挟まれた状態となり、クランプされる。このように、両先端部71,72が前方に向かって曲げられたワイヤー7がクランプされた状態で、駆動機構16が、ヘッド軸14及び筒体15を回転させることで、ワイヤー7にねじり目8が形成される。
【0067】
この結束機10によれば、駆動機構16によって外筒15bが回転することで、内筒15aが第一ストロークS1及び第二ストロークS2で前進するとともに、内筒15a及びヘッド軸14が回転し、ワイヤー7のねじり目8が内側向きのM形状に形成される。このため、駆動機構16の回転を筒体15の軸方向変位に変換するためのリンク機構が不要となり、M形状のねじり目が形成可能な結束機10をコンパクトに構成することが可能となる。
【0068】
また、本開示の第一結束ユニット12Aは、ヘッド軸14及び内筒15aが、中心線C0回りに一体回転すると共に、中心線C0の方向へ相対変位可能に連結部30で連結されていて、ヘッド軸14の中心線C0回りの回転を規制する規制機構17をさらに備えている。第一結束ユニット12Aは、規制機構17によってヘッド軸14を規制した状態で、駆動機構16によって内筒15aを中心線C0の方向に変位させることが可能であり、規制機構17によるヘッド軸14の規制を解除した状態で、駆動機構16によってヘッド軸14を中心線C0回りに回転させることが可能である。
【0069】
第一結束ユニット12Aを備えた結束機10は、駆動機構16によって外筒15bを中心線C0回りに回転させて内筒15aを軸方向へ変位させる動作と、駆動機構16によって外筒15bを中心線C0回りに回転させてヘッド軸14を中心線C0回りに回転させる動作とを、規制機構17によって切り換えることが可能となる。これにより、一つのモータを有する駆動機構16によって、M形状のねじり目が形成することが可能となり、結束機10をよりコンパクトに構成することが可能となる。
【0070】
また、本開示の第一結束ユニット12Aは、内筒15aが第一ストロークS1及び第二ストロークS2で前進している状態(第二位置P2に位置する状態)で、内筒15aを前進させる側(第一方向R1)へ外筒15bが中心線C0回りに回転し、カム機構40が外筒15bの回転を内筒15aに伝達することで、内筒15a及びヘッド軸14が中心線C0回りに回転する。
この構成により、駆動機構16によってヘッド軸14を中心線回りに回転させることができる。これにより、駆動機構16が有する一つのモータ34の駆動によって、M形状のねじり目を形成することができ、結束機10をよりコンパクトにすることができる。
【0071】
また、本開示の第二結束ユニット12Bは、ヘッド軸14及び内筒15aが、中心線C0回りに相対回転可能に構成されていて、ヘッド軸14を中心線C0回りに回転させる回転機構50をさらに備えている。
【0072】
第二結束ユニット12Bを備えた結束機10は、駆動機構16によって外筒15bを中心線C0回りに回転させて内筒15aを軸方向へ変位させるとともに、回転機構50によってヘッド軸14を中心線C0回りに回転させることが可能となる。これにより、M形状のねじり目が形成することが可能なワイヤー結束機10において、駆動機構16及び回転機構50がそれぞれモータを有する構成であっても、リンク機構を使用する必要がなく、結束機10をよりコンパクトに構成することが可能となる。
【0073】
今回開示した実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の権利範囲は、上述の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された構成と均等の範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0074】
5:長尺材 7:ワイヤー 8:ねじり目
10:ワイヤー結束機 11:ガイドトラック 12:結束ユニット
12A:第一結束ユニット 12B:第二結束ユニット 13:供給器
14:ヘッド軸 15:筒体 15a:内筒
15b:外筒 15e:第一貫通孔 15f:第二貫通孔
16:駆動機構 17:規制機構 18:カッターブロック
19:第一溝 20:第二溝 21:第一通路
22:第二通路 23:スリット 24:開口
31:第一接触部 32:第二接触部 40:カム機構
50:回転機構 71:第一の先端部 72:第二の先端部
C0:中心線 S1:第一ストローク S2:第二ストローク