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特開2023-76166探索装置、自律探索システム、監視装置、探索方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023076166
(43)【公開日】2023-06-01
(54)【発明の名称】探索装置、自律探索システム、監視装置、探索方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01S 5/12 20060101AFI20230525BHJP
   G05D 1/12 20060101ALI20230525BHJP
【FI】
G01S5/12
G05D1/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021189405
(22)【出願日】2021-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100138771
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 将明
(72)【発明者】
【氏名】三原 孝
(72)【発明者】
【氏名】井手 徳隆
(72)【発明者】
【氏名】小西 淳一
(72)【発明者】
【氏名】立花 誠次
(72)【発明者】
【氏名】中島 拓身
(72)【発明者】
【氏名】川畑 孝一
【テーマコード(参考)】
5H301
5J062
【Fターム(参考)】
5H301AA06
5H301BB14
5H301CC04
5H301CC07
5H301CC10
5H301DD05
5H301DD15
5H301FF08
5H301GG07
5H301QQ09
5J062AA05
5J062AA07
5J062BB03
5J062BB05
5J062CC07
5J062CC18
5J062FF01
(57)【要約】
【課題】災害発生現場などにおける被災者の早期発見、救助支援を可能とするために、発信機からの信号に基づいて自律的な探索飛行動作を行う探索装置、自律探索システム、監視装置、探索方法、およびプログラムを提供する。
【解決手段】飛行可能な探索装置を含む自律探索システムにおける前記探索装置であって、前記自律探索システムは、前記探索装置が受信した、探索対象に所持される発信機からの信号に基づいて、前記探索装置と前記発信機との間の距離を取得し、前記距離に基づいて、前記発信機の位置座標、および、前記探索装置を基点とした前記発信機の方向を推定し、前記探索装置は、前記推定結果に基づいて、前記発信機に向けて自律飛行を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛行可能な探索装置を含む自律探索システムにおける前記探索装置であって、
前記自律探索システムは、
前記探索装置が受信した、探索対象に所持される発信機からの信号に基づいて、前記探索装置と前記発信機との間の距離を取得し、
前記距離に基づいて、前記発信機の位置座標、および、前記探索装置を基点とした前記発信機の方向を推定し、
前記探索装置は、
前記推定の結果に基づいて、前記発信機に向けて自律飛行を行う、
探索装置。
【請求項2】
前記自律探索システムは、前記探索装置と前記発信機との間の距離、および、前記探索装置と前記発信機との間の高度差を用いて、三平方の定理により前記探索装置と前記発信機との水平距離を算出し、前記水平距離に基づいて前記発信機の位置座標を推定する、
請求項1に記載の探索装置。
【請求項3】
前記高度差は、前記探索装置の位置座標に対応する海抜高度と、前記探索装置と前記発信機との間の距離と前記探索装置の位置座標と前記探索装置を基点とした前記発信機の方向から推定される前記発信機の位置座標に対応する海抜高度とから算出される、
請求項2に記載の探索装置。
【請求項4】
前記探索装置は、複数の位置座標に移動して、前記発信機からの信号を受信し、
前記自律探索システムは、前記複数の位置座標と、当該複数の位置座標それぞれに対応する前記探索装置と前記発信機との間の距離とを用いて、球面の方程式により前記発信機の位置座標を推定する、
請求項1に記載の探索装置。
【請求項5】
前記自律探索システムは、複数のアルゴリズムを用いて前記発信機の位置座標を推定し、更に、前記複数のアルゴリズムそれぞれによる推定結果を重みづけして統合することにより前記発信機の位置座標を推定する、
請求項1に記載の探索装置。
【請求項6】
前記自律探索システムは、前記探索装置の飛行履歴に基づいて飛行経路のモデルを特定し、前記複数のアルゴリズムそれぞれによる推定結果に対する重みを前記モデルに基づいて決定する、
請求項5に記載の探索装置。
【請求項7】
前記探索装置は、
所定の条件を満たした際に、ヨー軸周りにて回転することにより、所定の回転角ごとに前記発信機からの信号の電波強度を測定し、
前記所定の回転角ごとの電波強度に有意差の発生を検出したことに基づいて、前記探索装置の進行方向を決定する、
請求項1~6のいずれか一項に記載の探索装置。
【請求項8】
前記所定の条件は、前記探索装置が探索開始位置に到達したことである、
請求項7に記載の探索装置。
【請求項9】
前記所定の条件は、経時的に前記電波強度が弱くなっており、かつ、経時的に前記探索装置と前記発信機との間の距離が離れていっている状態である、
請求項7に記載の探索装置。
【請求項10】
前記自律探索システムは、前記自律探索システムが算出した前記探索装置と前記発信機との間の水平距離が、前記発信機からの信号に基づいて算出される距離の誤差範囲内の場合、所定の対地高度にて空中停止するように制御する、
請求項1~9のいずれか一項に記載の探索装置。
【請求項11】
前記自律探索システムは、前記探索装置が水平移動を開始する前に、前記探索装置の対地高度を所定の高さまで上昇させるよう制御する、
請求項1~10のいずれか一項に記載の探索装置。
【請求項12】
前記自律探索システムは、前記探索装置と前記発信機との間の距離が所定の距離より大きい場合、前記探索装置と前記発信機との間の距離が前記所定の距離以下である場合よりも、探索時の飛行速度を上昇させる、
請求項1~11のいずれか一項に記載の探索装置。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の探索装置と、
サーバー装置と、
監視装置と、
を含んで構成される自律探索システムであって、
前記サーバー装置は、
前記探索装置からの情報を取得する通信部と、
前記探索装置から取得した情報を用いて監視画面を生成し、前記監視装置に提供するデータ処理部と、
を有し、
前記監視装置は、
前記監視画面を表示する表示部
を有する、
自律探索システム。
【請求項14】
前記サーバー装置は更に、
探索対象の行動計画、探索領域の遭難情報、または探索済みの領域情報の少なくともいずれかを収集する収集部、
を有し、
前記監視画面は、前記収集部にて収集した情報を含めて構成される、
請求項13に記載の自律探索システム。
【請求項15】
前記探索装置は更に撮影部を備え、
前記監視画面は、前記撮影部にて撮影された映像、および、当該映像に対して行われた人物検知の結果を識別可能に構成される、
請求項14に記載の自律探索システム。
【請求項16】
前記監視画面において、前記探索装置の現在の位置座標、前記探索装置の飛行経路、および、前記探索装置が受信した信号に基づいて推定された前記発信機の位置座標のうちの少なくとも1つが、前記監視画面に表示された地図上にマッピングして表示される、
請求項13~15のいずれか一項に記載の自律探索システム。
【請求項17】
探索対象に所持される発信機からの信号を受信可能で、かつ、飛行可能な探索装置にて取得される情報を用いて構成される監視画面を表示する表示部、
を有し、
前記監視画面は、前記探索装置の現在の位置座標、前記探索装置の飛行経路、および、前記探索装置が受信した信号に基づいて推定された前記発信機の位置座標のうちの少なくとも1つが、前記監視画面に表示された地図上にマッピングして表示される、
監視装置。
【請求項18】
前記監視画面は、前記探索対象の行動計画、探索領域の遭難情報、または探索済みの領域情報の少なくともいずれかを含めて構成される、
請求項17に記載の監視装置。
【請求項19】
飛行可能な探索装置を用いる探索方法であって
前記探索装置が受信した、探索対象に所持される発信機からの信号に基づいて、前記探索装置と前記発信機との間の距離を取得し、
前記距離に基づいて、前記発信機の位置座標、および、前記探索装置を基点とした前記発信機の方向を推定し、
前記探索装置は、
前記推定の結果に基づいて、前記発信機に向けて自律飛行を行う、
探索方法。
【請求項20】
飛行可能な探索装置のプロセッサに、
受信部が受信した探索対象に所持される発信機からの信号に基づいて、前記探索装置と前記発信機との間の距離を取得させ、
前記距離に基づいて前記発信機の位置座標、および、前記探索装置を基点とした前記発信機の方向を推定させ、
前記推定の結果に基づいて、前記探索対象に向けて自律飛行を行うように制御させる、
ためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、探索装置、自律探索システム、監視装置、探索方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大雨や大地震などの自然災害は増加傾向となっており、災害発生時には被災地の情報を各自治体が正確かつ迅速に把握し、その情報に基づき対策を行うことが重要となる。災害発生の際における被災者の有無やその位置の把握は緊急性が高く、早期に対応を要する。従来の技術として、例えば、特許文献1では、被災者(遭難者)が保有するビーコン(子機)からの電波情報(信号)を元に、探索装置(救助者)から子機までの距離や子機の方向を推定する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5595578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の方法では、捜索部隊などの救助者が、遭難者が保持する機器から発信される信号の受信機を保持して捜索を行うことを前提としている。災害発生による被災地に人間が直接駆けつけて捜索を行うことは困難であり、危険も伴う。このような状況下を想定し、消防防災ヘリなどで状況の把握が行われている中、被災者を捜索するツールとして、機動力、コストの面などからドローンなどの航空無人機による自律飛行を活用した情報収集が注目されている。ビーコンとドローンを組み合わせることにより、捜索対象の位置推定を精度良く実現し、かつ、人手を介さずに効率よく探索対象を発見することが望まれる。しかしながら、上記の従来技術では、ビーコンからの電波情報に基づいたドローンを利用した自律探索システムについては何ら考慮されていない。
【0005】
本開示は、上述した従来の事情を鑑みて案出され、災害発生現場などにおける被災者の早期発見、救助支援を可能とするために、発信機からの信号に基づいて自律的な探索飛行動作を行う探索装置、自律探索システム、監視装置、探索方法、およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、飛行可能な探索装置を含む自律探索システムにおける前記探索装置であって、前記自律探索システムは、前記探索装置が受信した、探索対象に所持される発信機からの信号に基づいて、前記探索装置と前記発信機との間の距離を取得し、前記距離に基づいて、前記発信機の位置座標、および、前記探索装置を基点とした前記発信機の方向を推定し、前記探索装置は、前記推定の結果に基づいて、前記発信機に向けて自律飛行を行う、探索装置を提供する。
【0007】
また、本開示は、探索装置と、サーバー装置と、監視装置と、を含んで構成される自律探索システムであって、前記自律探索システムは、前記探索装置が受信した、探索対象に所持される発信機からの信号に基づいて、前記探索装置と前記発信機との間の距離を取得し、前記距離に基づいて、前記発信機の位置座標、および、前記探索装置を基点とした前記発信機の方向を推定し、前記探索装置は、前記推定結果に基づいて、前記発信機に向けて自律飛行を行い、前記サーバー装置は、前記探索装置からの情報を取得し、前記探索装置から取得した情報を用いて監視画面を生成し、前記監視装置に提供し、前記監視装置は、前記監視画面を表示する、自律探索システムを提供する。
【0008】
本開示は、探索対象に所持される発信機からの信号を受信可能で、かつ、飛行可能な探索装置にて取得される情報を用いて構成される監視画面を表示する表示部、を有し、前記監視画面は、前記探索装置の現在の位置座標、前記探索装置の飛行経路、および、前記探索装置が受信した信号に基づいて推定された前記発信機の位置座標のうちの少なくとも1つが、前記監視画面に表示された地図上にマッピングして表示される、監視装置を提供する。
【0009】
本開示は、飛行可能な探索装置を用いる探索方法であって前記探索装置が受信した、探索対象に所持される発信機からの信号に基づいて、前記探索装置と前記発信機との間の距離を取得し、前記距離に基づいて、前記発信機の位置座標、および、前記探索装置を基点とした前記発信機の方向を推定し、前記探索装置は、前記推定の結果に基づいて、前記発信機に向けて自律飛行を行う、探索方法を提供する。
【0010】
本開示は、飛行可能な探索装置のプロセッサに、受信部が受信した探索対象に所持される発信機からの信号に基づいて、前記探索装置と前記発信機との間の距離を取得させ、前記距離に基づいて前記発信機の位置座標、および、前記探索装置を基点とした前記発信機の方向を推定させ、前記推定の結果に基づいて、前記探索対象に向けて自律飛行を行うように制御させる、ためのプログラムを提供する。
【0011】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせ、本開示の表現を方法、装置、システム、記憶媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本開示の態様として有効である。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、災害発生現場などにおける被災者の早期発見、救助支援が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施の形態1に係る自律探索システムの構成例を示すブロック図
図2】実施の形態1に係る自律探索システムにおける発信機の位置推定方法を説明するための概略図
図3】実施の形態1に係る段階的な位置推定を説明するための概略図
図4】実施の形態1に係る位置推定処理のフローチャート
図5】実施の形態1に係る探索装置の移動パターンのモデルを説明するための図
図6】実施の形態1に係る探索装置の移動パターンのモデルに対応した重み係数を説明するためのテーブル図
図7】実施の形態1に係る探索装置の方向制御を説明するための概念図
図8】実施の形態1に係る探索装置の方向制御を説明するためのグラフ図
図9】実施の形態1に係る探索装置の方向制御処理のフローチャート
図10】実施の形態1に係る再探索条件を説明するためのグラフ図
図11】実施の形態1に係る再探索条件を説明するためのテーブル図
図12】実施の形態1に係る再探索処理のフローチャート
図13】実施の形態1に係る飛行速度制御を説明するためのテーブル図
図14】実施の形態1に係る移動制御処理のフローチャート
図15】実施の形態1に係る監視装置におけるUI画面の構成例を示す図
図16】実施の形態1に係る監視装置におけるUI画面の構成例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を適宜参照しながら、本開示に係る探索装置、自律探索システム、監視装置、探索方法、およびプログラムを具体的に開示した実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明、あるいは、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になることを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるものであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されない。
【0015】
<実施の形態1>
本発明に係る自律探索システムは、例えば、山岳での遭難者の捜索や、被災地での被災者の捜索などに利用されることを想定して以下の説明を行う。しかしながら、本発明に係る自律探索システムを利用する状況や環境を以下の実施の形態にて説明するものに限定するものではなく、その利用にあたっては適時変更や調整が可能であるものとする。
【0016】
また、本発明に係る自律探索システムは、ドローンなどの飛行可能な無人航空機(UAV:Unmanned Aerial Vehicle)を探索装置として利用する。このとき、探索装置が飛行可能な領域や環境については、その探索装置の仕様などに影響されるため、利用する環境などに応じて、探索装置の構成が適宜変更、調整されてよい。
【0017】
[システム構成]
図1は、本実施の形態に係る自律探索システム1の構成例を示すブロック図である。本実施の形態に係る自律探索システム1は、発信機100、探索装置200、サーバー装置300、および監視装置400を含んで構成される。なお、図1では、説明を簡単にするため、各装置を1台ずつ示して説明するが、これに限定されるものでは無い。例えば、探索範囲に応じて複数の探索装置200が用いられてもよいし、処理負荷に応じて複数のサーバー装置300や監視装置400が用いられてもよい。
【0018】
発信機100は、所定の電波情報(以下、単に「信号」とも称する)を発信し、人間により搬送可能な装置であり、いわゆるビーコンとして機能する。例えば、発信機100は、特定小電力無線(920MHz帯)やBluetooth(登録商標)やIR(赤外線)の無線信号を用いて、所定の時間間隔(例えば、数秒に1回)にて、数メートルから数キロメートルの範囲に到達可能な、所定周波数帯域の信号伝達を行う。Bluetooth(登録商標)技術を利用したものとしてBLE(Bluetooth Low Energy:登録商標)などが挙げられるが、特に限定されるものではない。発信機100が発信する信号のパターン(信号を発信する間隔や信号強度)は特に限定するものでは無く、任意のパターンが用いられてよい。例えば、発信機100は、不図示の電源装置を備え、その電源の消費状況などに応じて、信号パターンが切り替えられてもよい。なお、発信機100は、ビーコンの専用端末であってもよいし、スマートフォンやタブレット端末などの携帯端末により実装されてもよい。本実施の形態では、捜索対象者(例えば、山岳での遭難者)が発信機100を所持しているものとする。
【0019】
探索装置200は、発信機100から発信される信号に基づき、発信機100を探索し、その位置へ自律的に接近する動作を行う装置である。本実施の形態では、探索装置200は、ドローンなどの飛行可能な無人航空機(UAV)により構成される。探索装置200は、受信部201、制御部202、電源203、撮影部204、センサ部205、通信部206、および駆動部207を含んで構成される。受信部201は、発信機100から発信される信号を受信する。受信部201は、信号を受信可能なアンテナ(不図示)を含んで構成され、受信した信号の、探索装置200の前方(進行方向)に対する相対的な向きや電波強度を特定することが可能である。なお、アンテナの構成や配置などは特に限定されるものではない。なお、発信機100のアンテナ構成や、発信機100からの信号の受信方法(後述する距離データの取得方法)については、特許第5595578号公報に記載されているような構成が用いられてよい。
【0020】
制御部202は、探索装置200の動作全般を司り、各部位に対して制御に係る指示を行う。制御部202は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、メモリ、および、記憶装置などを含んで構成される。CPUは、メモリや記憶装置に格納された各種プログラムやデータを読み出して処理を実行することで、本実施の形態に係る各種機能を実現するプロセッサの一例である。なお、プロセッサは、CPUの代わりに、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、GPU(Graphical Processing Unit)あるいはFPGA(Field Programmable Gate Array)のうち少なくとも1つを用いて構成されてもよい。メモリは、各種情報のデータを記憶、保持するための記憶領域であり、例えば、不揮発性の記憶領域であるROM(Read Only Memory)や、揮発性の記憶領域であるRAM(Random Access Memory)などから構成される。記憶装置は、各種情報のデータを記憶、保持するための記憶領域であり、例えば、SDカードやFlash ROMやHDD(Hard Disk Drive)などから構成される。また、制御部202に含まれるプロセッサや記憶装置はそれぞれ1つに限定するものではなく、機能や役割に応じて複数が備えられていてよい。
【0021】
電源203は、探索装置200の駆動用電源であり、探索装置200の各部位に対して電力供給を行う。電源203は、例えば、交換式のバッテリーが用いられてもよいし、充電式のバッテリーが用いられてもよい。電源203の電力消費は、探索装置200の動作状況に応じて変動するため、その消費状況は制御部202にて適宜監視されてよい。
【0022】
撮影部204は、探索装置200の周辺の静止画像や動画像を撮影可能なカメラを含んで構成される。撮影部204の撮影設定(例えば、ズーム、パン、チルト、画像処理など)は、ユーザ操作によりまたは探索装置200側で自律的に適宜調整可能であり、一例については後述する。また、撮影部204は複数台存在してもよく、複数の撮影部204それぞれの使い分けについては後述する。
【0023】
センサ部205は、探索装置200の各種動作を制御するために用いる状態情報を取得するための1または複数のセンサにより構成される。センサの種類としては例えば、ジャイロセンサ、加速度センサ、気圧センサ、超音波センサ、磁気方位センサ、赤外線センサ、LiDAR(Light Detection And Ranging)、位置センサなどが挙げられる。位置センサは、探索装置200の現在の位置情報を取得するために、GPS(Global Positioning System)に代表されるようなGNSS(Global Navigation Satellite System)からの信号を受信可能に構成されてよい。
【0024】
通信部206は、外部装置(例えば、サーバー装置300)とネットワーク(不図示)を介して無線通信を行うための部位である。ここでの無線通信規格は特に限定するものでは無いが、例えば、LTE(Long Term Evolution)などの基地局を介した通信やWi-Fi(登録商標)などを利用した通信などが用いられてよい。通信規格は1つに限定するものではなく、複数の通信規格を組み合わせて、安定した無線通信が可能なように構成されてよい。
【0025】
駆動部207は、探索装置200の駆動(飛行)を担う部位であり、例えば、プロペラやモータなどを含んで構成される。駆動部207の構成は、探索装置200が後述する各種機能(発進、着陸、方向転換、上昇、下降、空中停止など)を実現できれば、特に限定するものではない。
【0026】
サーバー装置300は、探索装置200から取得した情報に基づいて、監視装置400への情報を提供したり、監視装置400からの制御指示を探索装置200へ通知したりする。サーバー装置300は、クラウド型の構成としてネットワーク上に構成されてもよいし、オンプレミス型の構成として構成されてもよい。また、サーバー装置300は、図1には不図示の各種データサーバ(例えば、地図サーバーやそのほかの連携サーバー)に適時アクセスし、探索に必要な情報を収集するような構成であってよい。サーバー装置300は、データ処理部301、通信部302、およびデータ部303を含んで構成される。データ処理部301は、例えば、CPUにより構成され、データ部303に格納された各種プログラムやデータを読み出して処理を実行することで、本実施の形態に係る各種機能を実現する。データ処理部301は、CPUの代わりに、MPU、DSP、GPUあるいはFPGAのうち少なくとも1つを用いて構成されてもよい。
【0027】
通信部302は、外部装置(例えば、探索装置200や監視装置400)とネットワーク(不図示)を介して通信を行うための部位である。ここでの通信規格は特に限定するものでは無いが、例えば、LTEなどの基地局を介した通信やWi-Fi(登録商標)などを利用した通信などが用いられてよい。通信規格は1つに限定するものではなく、複数の通信規格を組み合わせて、安定した無線通信が可能なように構成されてよい。
【0028】
データ部303は、各種データやプログラムを記憶、保持するための記憶領域であり、例えば、不揮発性の記憶領域であるROMやHDD、揮発性の記憶領域であるRAMなどから構成される。探索装置200から収集された各種情報は、データ部303にて保持、管理されてよい。
【0029】
監視装置400は、サーバー装置300を介して探索装置200が収集した情報を取得し、ユーザ(例えば、救助指示者)に提供する。また、監視装置400は、ユーザからの指示を受け付け、サーバー装置300を介して探索装置200に通知する。監視装置400は、例えば、PC(Personal Computer)やタブレット端末、スマートフォン、専用端末など任意の装置であってよい。監視装置400は、処理部401、通信部402、および、UI(User Interface)部403を含んで構成される。
【0030】
処理部401は、例えば、CPU、メモリ、および、記憶装置などを含んで構成される。処理部401は、通信部402を介して受信した情報を用いて、各種処理を実行することで、本実施の形態に係る各種機能を実現する。処理部401は、CPUの代わりに、MPU、DSP、GPUあるいはFPGAのうち少なくとも1つを用いて構成されてもよい。
【0031】
通信部402は、外部装置(例えば、サーバー装置300)とネットワーク(不図示)を介して通信を行うための部位である。ここでの通信規格は特に限定するものでは無いが、例えば、LTEなどの基地局を介した通信やWi-Fi(登録商標)などを利用した有線/無線通信が用いられてよい。通信規格は1つに限定するものではなく、複数の通信規格を組み合わせて、安定した無線通信が可能なように構成されてよい。
【0032】
UI部403は、サーバー装置300から受信した情報に基づいて処理した結果を表示したり、ユーザからの指示を受け付けるための操作画面を表示したりする。UI部403は、例えば、タッチパネルディスプレイなどを含んで構成されてよい。UI部403にて表示される画面は、本実施の形態に係る自律探索システム1に特有のアプリケーション画面により構成されてもよいし、Webブラウザ(不図示)によるWebアプリケーション画面により構成されてもよい。
【0033】
[探索に係る動作]
以下、本実施の形態に係る自律探索システム1による探索に係る動作をそれぞれ説明する。なお、各動作は、同時並行的に実行される場合もあれば、所定の順序にて実行される場合もある。そのため、各動作における制御は、適時組み合わされてよい。また、後述する探索装置200の探索に係る動作のための処理の一部が、探索装置200と通信可能に接続された他の装置(例えば、サーバー装置300)側で実行されてもよい。
【0034】
(位置推定)
本実施の形態に係る探索装置200による発信機100の位置推定方法について説明する。図2は、本実施の形態における探索装置200が信号の発信元である発信機100の位置を推定する際の概略を説明するための図である。発信機100は、所定のパターンにて信号が発信されているものとする。また、探索装置200は、発信機100からの信号を受信可能な状態で飛行を行っているものとする。
【0035】
図2において、発信機100(すなわち、発信機100を所持した遭難者)の位置と、その周辺を飛行(空中停止)している探索装置200が示されている。本実施の形態では、発信機100の位置推定において、2段階の位置推定を行う。ここでは、2段階の位置推定に関し、便宜上、「第1の位置推定」と、第1の位置推定よりも精度の高い「第2の位置推定」と称して説明する。
【0036】
前提として、探索装置200は、自身が備えるセンサ部205を利用して、自身の海抜高度や対地高度を取得することができる。海抜高度は、例えば、気圧センサなどを利用して取得することができる。また、対地高度は、例えば、超音波センサなどを利用して取得することができる。同様に、探索装置200は、GPSなどを利用した位置センサにより、自身の現在位置情報を取得することができる。また、探索装置200は、自身の現在位置情報を用いてサーバー装置300に問い合わせを行うことで、現在位置周辺の地形情報(例えば、海抜高度や地形情報)を取得することができる。また、探索装置200は、発信機100が発信した信号を受信し、その信号の電波強度に基づき、探索装置200と発信機100との間の距離(以下、距離データ(D)とも称する)を推定することができる。なお、信号には、様々な情報が含まれてよく、探索装置200は、後述する処理に必要な情報を信号から抽出して取得してもよい。また、探索装置200は、信号を受信した相対的な向きを特定でき、自身(すなわち、機首)からの発信機100の方向を推定することができる。また、本実施形態では、電波強度に基づく方式で距離データ(D)を推定しているが、これに限らず、伝播遅延時間に基づく方式によって推定されてもよい。また、本実施形態では、発信機100から発進される電波情報に基づいて距離データ(D)を推測しているが、これに限らず、他の手段を用いてもよい。
【0037】
第1の位置推定では、まず、探索装置200は、取得した距離データ(D)と発信機100の方向に基づき、発信機100の大まかな位置(X,Y)を推定する。ここで、Xは緯度を示し、Yは経度を示す。探索装置200は、座標(X,Y)に基づき、推定した発信機100の位置の位置周辺に向けて飛行(移動)が可能となる。
【0038】
第2の位置推定では、第1の位置推定よりも更に精度の高い位置推定を行う。距離データ(D)、発信機100の方向、および自身の位置情報の取得方法は、第1の位置推定と同様である。第2の位置推定では、探索装置200は、更に、推定した位置(X,Y)を用いてサーバー装置300に問い合わせを行い、その位置における標高データ(海抜高度)を取得する。標高データは、例えば、日本国の国土地理院により提供されており、サーバー装置300はそのデータを適宜取得、管理しておいてよい。なお、標高データのデータの取得先は特に限定するものではなく、任意の位置の標高データが取得できればよい。また、探索装置200は、自身の位置情報を用いてサーバー装置300に問い合わせを行い、その位置における標高データ(海抜高度)を取得する。サーバー装置300は、探索装置200からの問い合わせに応答して標高データを提供する。探索装置200は、センサ部205(超音波センサ)にて取得した対地高度と、サーバー装置300から受信した標高データとを用いて、自身の飛行中の海抜高度を算出する。更に、探索装置200は、自身の海抜高度と、発信機100の推定した位置における海抜高度とを用いて、探索装置200と発信機100の高度差(H)を算出する。更に、探索装置200は、以下の式(1)に示すような三平方の定理に基づき、探索装置200と発信機100との間の水平距離(CD)を算出する。なお、本実施の形態では、センサ部205(超音波センサ)にて取得した対地高度と、サーバー装置300から受信した標高データとを用いて、自身の飛行中の海抜高度を算出しているが、これに限らず、探索装置200の位置情報からGPSにて海抜高度を直接取得してもよいし、またセンサ部205(気圧センサ)にて海抜高度を直接取得してもよい。
【0039】
【数1】
【0040】
そして、探索装置200は、水平距離(CD)と、信号を受信した相対的な向きに基づいて、発信機100の位置(X,Y)を更新する。そして、探索装置200は、更新後の座標(X,Y)に基づいて、その位置周辺に飛行(移動)が可能となる。
【0041】
なお、発信機100の海抜高度は、サーバー装置300に問い合わせて取得する構成に限定するものではない。例えば、発信機100内に気圧センサなどが含まれている場合には、その情報を信号に含めて送信するような構成であってもよい。この場合、探索装置200は信号に含まれる気圧情報に基づいて海抜高度を導出してもよい。
【0042】
第1の位置推定は、探索装置200を移動させながら繰り返すことで、推定の精度は低いながらも発信機100への接近が可能となる。また、第2の位置推定を繰り返すことで、探索装置200は、第1の位置推定よりもより精度の高い推定結果に基づいて、発信機100への接近が可能となる。
【0043】
図3は、第1の位置推定と第2の位置推定とを段階的に行うことを説明するための概念図である。図3に示す二等辺三角形は探索装置200の機首方向を示し、2つの等辺から構成される頂点が、探索装置200の機首の方向に相当する。第1の位置推定では、発信機100の位置(X,Y)を探索装置200のGPS座標、機首方向(発信機100への向き)、および距離データ(D)を用いて推定(算出)している。一方、第2の位置推定では、発信機100の位置(X,Y)を探索装置200のGPS座標、機首方向、および水平距離(CD)から推定している。この2つの推定方法では、第2の位置推定の方がより高い精度を得ることができる。
【0044】
一方、第2の位置推定に比べ、第1の位置推定は、処理負荷が低く、外部装置との通信負荷や遅延が生じにくいため、容易に実行することができるという利点もある。これは、ドローンなどの探索装置200は、駆動時間(飛行時間)が電源容量に応じて制限されていることや、被災者の早期の発見という緊急性が高い状況下では、より重要となる。そこで、本実施の形態では、これら2つの位置推定方法を組み合わせて用いる。なお、第1の位置推定、および、第2の位置推定ともに、発信機100の海抜高度を必要としないことから、発信機100に気圧センサのような高度計測の手段を搭載する必要がなく、発信機100の省電力での稼働や長寿命化につながるという利点もある。
【0045】
(位置推定処理フロー)
図4は、本実施の形態に係る探索装置200が、発信機100から受信した信号に基づいて、発信機100の位置を推定する処理のフローチャートである。本処理フローは、探索装置200の制御部202が、本実施の形態に係る処理に対するプログラムを記憶部から読み出して実行し、探索装置200の各部位を制御することで実現される。なお、本処理フローは、例えば、探索装置200が基地(拠点)から発進し、その後、発信機100から発信される信号を受信可能な位置まで移動(飛行)した際に開始されてよい。また、発信機100は、所定のパターンに基づき、信号を適宜発信しているものとする。
【0046】
探索装置200は、発信機100からの信号を受信し、これに基づく探索装置200から発信機100までの距離データを取得する(ステップS401)。なお、距離データ(D)の推定方法は上述した通りである。
【0047】
探索装置200は、ステップS401にて取得した距離データ、探索装置200の位置情報、および、機首方向に基づいて、発信機100の位置座標を推定する(ステップS402)。本工程での位置推定は、上述した第1の位置推定に対応する。探索装置200の位置情報は、GPSなどを利用して取得してよい。なお、ステップS401とステップS402の処理の際には、探索装置200は、空中にて停止してもよい。
【0048】
探索装置200は、ステップS402にて推定した位置座標を用いて、その位置座標に対応する標高データを、サーバー装置300に問い合わせる(ステップS403)。
【0049】
探索装置200は、ステップS402にて推定した位置座標に向けて飛行を行う(ステップS404)。
【0050】
探索装置200は、ステップS403における問い合わせの応答として、推定した位置座標に対応する標高データを取得したか否かを判定する(ステップS405)。問い合わせへの応答は、探索装置200の飛行エリアの通信状況などに起因して、一定の時間を要する場合がある。そのため、標高データを取得できない場合には、第1の位置推定を繰り返しながら、発信機100への接近を試みる。一方、標高データを取得できた場合には、より精度の高い第2の位置推定に切り替え、発信機100への接近を試みる。標高データの取得が完了した場合(ステップS405;YES)、探索装置200の処理は、ステップS406へ進む。一方、標高データの取得が完了した場合(ステップS405;NO)、探索装置200の処理は、S401へ戻り、処理を繰り返す。
【0051】
探索装置200は、発信機100からの信号を受信し、これに基づく探索装置200から発信機100までの距離データを取得する(ステップS406)。探索装置200は、移動を行っているため、ステップS401の時点とはその座標が異なっている。そのため、再度、距離データの取得を行う。取得方法については、ステップS401と同様である。
【0052】
探索装置200は、自身の位置情報を用いてサーバー装置300に問い合わせを行い、その位置における標高データ(海抜高度)を取得する。更に、探索装置200は、センサ部205(超音波センサ)にて取得した対地高度と、サーバー装置300から受信した標高データとを用いて、自身の飛行中の海抜高度を算出する。更に、探索装置200は、自身の海抜高度と、発信機100の推定した位置における海抜高度とを用いて、探索装置200と発信機100の高度差を算出する。更に、探索装置200は、算出した高度差と、ステップS406にて取得した距離データに基づいて、探索装置200と発信機100との水平距離を算出する(ステップS407)。
【0053】
探索装置200は、ステップS407にて算出した水平距離、探索装置200の位置情報、および機首方向に基づいて、発信機の位置座標を推定する(ステップS408)。本工程での位置推定は、上述した第2の位置推定に対応する。
【0054】
探索装置200は、ステップS408にて推定した位置座標に向けて飛行を行う(ステップS409)。そして、本処理フローを終了する。
【0055】
なお、上記の2段階の位置推定(第1の位置推定、第2の位置推定)は、必ずしも両方を行う必要はなく、状況に応じて一方のみを行うような構成であってもよい。例えば、通信状況が安定しているような状況では、第2の位置推定をスムーズに行うことが可能であることが想定される。そのような状況下では、第1の位置推定を省略し、第2の位置推定のみを実行するように切り替えてもよい。
【0056】
(位置推定の変形例1)
上記では、発信機100の位置推定方法の一例について説明した。位置推定方法としては、他の方法を用いてよい。例えば、球面の方程式に基づいて発信機100の位置を推定することができる。
【0057】
探索装置200が移動(飛行)を行いながら信号の受信および探索を行うことで、探索装置200は、複数の位置座標にて取得された情報に基づいて、発信機100の位置を推定することができる。飛行経路中の複数の位置座標にて上述した位置推定のための情報を取得することができる。例えば、複数の位置座標における情報を用いて、以下に示す球面の方程式を解くことにより、発信機の位置を推定することができる。ここでは、信号の取得位置として4つの位置t~tを例に挙げ、添え字はそれぞれ対応しているものとする。また、座標はxyz座標系を用いて示し、xは緯度、yは経度、zは高度にそれぞれ対応するものとする。
【0058】
位置:t~t
距離:r~r
xyz座標系における座標値:x~x、y~y、z~z
探索装置の位置座標:(x,y,z)~(x,y,z
発信機の推定位置座標:(x,y,z
【0059】
【数2】
【0060】
なお、複数の位置座標にて取得された情報に基づいて、発信機100の位置を推定する場合において、情報を取得(サンプリング)する位置座標は特に限定するものではない。例えば、直進している場合にその直線上の複数の位置座標にて情報を取得してよい。また、情報の取得タイミングは、時間的に一定間隔ごとであってもよいし、前回の情報を取得した位置から一定の距離を移動したタイミングであってもよい。また、周辺環境(例えば、風量や通信状態など)によって、情報を取得するタイミングを切り替えてもよい。
【0061】
なお、複数の位置座標にて情報を取得しつつ、位置推定を行う場合、位置推定の精度を向上させるために、より多くの位置の情報を用いて位置推定を行うことが考えられる。しかし、遭難者の救助をより優先させる観点からは、位置推定の精度向上よりも、発信機100(すなわち、遭難者)の位置の接近を優先することがより好ましい。そのため、情報の取得は、より発信機100に近づく飛行パターンの中で行うことがより好ましい。
【0062】
(位置推定の変形例2)
位置推定の方法としては、複数の位置推定方法を組み合わせてもよい。例えば、複数の位置推定方法の推定結果(すなわち、発信機100の推定位置座標)それぞれに対して、重みづけを行い、最終的な発信機100の位置座標を推定してもよい。
【0063】
複数の位置推定方法の組み合わせ方法について、以下に説明する。ここでは、探索装置200の飛行パターンに基づいて、複数の位置推定方法の推定結果それぞれに対する重みを切り替える構成について説明する。本実施の形態に係る探索装置200は、発信機100が発信する信号に基づき、その方向に飛行して接近を試みる。このとき、探索装置200は、必ずしも信号を発信した発信機100に最短距離で向かうものではない。これは、障害物などにより信号の伝搬が妨害され、回折して探索装置200に到達することなどが想定されるためである。
【0064】
図5は、探索装置200の飛行経路を示すパターン(モデル)の例を示す図である。飛行経路は、探索装置200の飛行履歴に基づいて、特定することが可能である。ここでは、モデルとして、3つの例を用いて説明する。図5(a)は、障害物がない場合の飛行経路(モデルA)の例を示す。この場合、発信機100から発信された信号は、探索装置200に直行して探索装置200に到達することとなる。この場合、探索装置200は、最短距離にて発信機100の位置へ向かうことが可能である。
【0065】
図5(b)は、発信機100と探索装置200との間に障害物500が存在する場合の飛行経路(モデルB)の例を示す。この場合、発信機100から発信された信号は障害物500を回折して探索装置200に到達することとなる。そのため、探索装置200は、方向転換と再探索を繰り返して、信号の方向に沿って障害物500を迂回しながら、発信機100に接近することとなる。
【0066】
図5(c)は、探索装置200が進行方向とは逆方向から信号を受信した場合の飛行経路(モデルC)の例を示す。この場合、探索装置200は、信号の電波強度に基づいて方向転換と再探索を繰り返し、発信機100に接近することとなる。図5に示す各モデルは、探索装置200の飛行履歴(位置座標)に基づいて特定することができる。なお、本実施の形態では、飛行履歴に基づいて特定しているが、飛行軌跡の予測に基づいて特定してもよい。
【0067】
図6は、本例において、重みを決定するためのテーブルの構成例を示す。ここでは複数の位置推定方法として、4つの位置推定方法を例に挙げて説明する。4つの位置推定方法それぞれにより、推定結果1~推定結果4が得られる。なお、複数の位置推定方法には、上述した水平距離を用いる方法と、球面の方程式を用いる方法の他、更に異なる種類の推定方法を用いてよい。もしくは、水平距離を用いる方法にて推定した複数の推定結果と、球面の方程式を用いる方法にて推定した複数の推定結果とを用いてもよい。つまり、複数の推定結果を求める際の位置推定方法の組み合わせは任意であってよい。
【0068】
図6では、一例として3分類(「大」、「中」、「小」)の重みを用い、これらを、図5を用いて説明した3つの探索装置200の飛行パターン(モデル)に対応付けている。一例として、ここでは、推定結果1が水平距離を用いる方法によって得られた結果であるものとして説明する。探索装置200の飛行経路のモデルがモデルAと特定された際には、推定結果1には、「大」となる重みが設定される。水平距離を用いる方法は、探索装置200のアンテナが発信機100から直進してきた電波を受信する場合を想定した方法であるため、障害物が存在しない飛行経路のモデルAにおいて強みを発揮する。したがって、飛行経路のモデルが、モデルAと特定された場合に、他の方法よりも大きな重みを付加することで、水平距離を用いる方法による推定結果が最終的な結果に反映され易くする。同様に、推定結果2~4にはそれぞれ、「中」、「小」、「小」となる重みが設定される。同様に、探索装置200の飛行経路のモデルがモデルBと特定された際には、推定結果1~4にはそれぞれ、「中」、「中」、「大」、「大」となる重みが設定される。同様に、探索装置200の飛行経路のモデルがモデルCと特定された際には、推定結果1~4にはそれぞれ、「小」、「大」、「中」、「中」となる重みが設定される。このように、推定結果の各モデルに応じた重みづけは、各推定方法の特性に合わせて決定される。なお、重みの分類数は3つに限定するものではなく、異なる分類が用いられてもよい。また、重みの具体的な値についても、例えば、線形回帰分析などを用いて導出されてもよいし、複数の位置推定方法それぞれの特徴や組み合わせなどに基づいて、任意の数値が設定されてよい。
【0069】
変形例2としての位置推定方法を用いる場合には、複数の推定結果(推定位置座標、推定方向)を入力とし、出力を1の推定結果としてアンサンブル学習による学習器を用いて実現することが可能である。アンサンブル学習の手法(例えば、スタッキング)については、公知の方法を用いてよく、ここでの詳細な説明は省略する。なお、本実施の形態では、複数の推定結果を統合する際に学習器を用いているが、これに限らず、重みづけ平均を用いて統合してもよく、また重みづけ「大」の推定結果のみを採用する方法でもよい。
【0070】
(方向制御)
続いて、本実施の形態に係る探索装置200における方向制御について説明する。探索装置200は、発信機100から発信される信号に基づいて、自身から見た発信機100の方向を特定し、その方向に進行するために向きの制御を行う。
【0071】
図7は、本実施の形態に係る探索装置200の方向制御を説明するための概略図である。図7において、探索装置200と発信機100との位置関係が概略的に示されている。ここでは、探索装置200の機首が、図面上側を向いているものとする。また、探索装置200の周辺を12の領域(機首方向を基準として30度間隔)に分割した例を示している。ここでは便宜上、探索装置200の機首方向から時計回りに、順に領域A、B、C・・・とする。
【0072】
図8は、探索装置200がある位置(空中停止)にて回転を行った際に受信された信号の強度を示すグラフ図である。図8において、横軸は回転角度を示し、縦軸は受信した信号の電波強度を示す。図8に示す領域A、B、Cはそれぞれ、図7の向き(角度)に対応しているものとする。探索装置200は、制御開始時の機首方向を基準として時計回りに一定の回転速度で回転を行いながら信号の受信を行う。図8の例では、領域Aでは徐々に信号の電波強度が増加し、領域Bでは電波強度が安定している。その後、領域Cでは信号の電波強度が低下している。この場合、探索装置200は、領域Bの方向に発信機100が存在するものと判断して領域Bの方向、すなわち、制御開始時の機首方向を基準としてした際に時計回りに30度回転した方向に方向転換を行う。
【0073】
なお、図7図8の例では、探索装置200の周辺を12の領域に分割して方向制御を行っているが、これに限定されるものではない。より多くの領域に分割してもよいし、周辺状況や信号の電波強度などに応じて分割数を変更してもよい。
【0074】
(方向制御処理フロー)
図9は、本実施の形態に係る探索装置200が、発信機100から受信した信号に基づいて、発信機100の方向を特定し、進行方向(機首方向)を制御する処理のフローチャートである。本処理フローは、探索装置200の制御部202が、本実施の形態に係る処理に対するプログラムを記憶部から読み出して実行し、探索装置200の各部位を制御することで実現される。なお、本処理フローは、例えば、探索装置200が基地から発進し、その後、発信機100から発信される信号を受信可能な位置まで移動(飛行)した際に開始されてよい。また、発信機100は、所定のパターンに基づき、信号を適宜発信しているものとする。
【0075】
探索装置200は、空中停止した状態にて、水平方向に沿って一定の回転速度にて回転を開始する(ステップS901)。探索装置200は、この状態においても信号の受信を継続している。ここでの回転速度や回転方向は予め規定されていてもよいし、受信している信号の電波強度などに基づいて切り替えられてもよい。なお、本実施の形態では、空中停止した状態にて方向制御を行っているが、これに限らず、水平飛行中に方向制御を行ってもよい。
【0076】
探索装置200は、回転に伴って、対象領域分の信号を受信が完了したか否かを判定する(ステップS902)。ここでの対象領域とは、図7に示した複数の領域それぞれに対応し、ここでは、領域Aから順次信号の取得を行う。なお、回転の開始位置の設定例については後述する。対象領域分の信号の受信が完了した場合(ステップS902;YES)、探索装置200の処理はステップS903へ進む。一方、対象領域分の信号の受信が完了していない場合(ステップS902;NO)、探索装置200は、受信が完了するまで回転を継続する。
【0077】
探索装置200は、対象領域分の信号の電波強度の平均値を算出する(ステップS903)。例えば、まず、領域Aにおける信号の電波強度の平均値が算出される。
【0078】
探索装置200は、ステップS903にて算出した平均値が、前回の電波強度の平均値と比較して有意差があるか否かを判定する。ここでの有意差は、予め閾値を設定しておき、ステップS903にて算出した平均値と、前回の電波強度の平均値との差分が、閾値以上か否かに基づいて判定してよい。有意差がある場合(ステップS904;YES)、探索装置200の処理は、ステップS906へ進む。一方、有意差が無い場合(ステップS904;NO)、探索装置200の処理は、ステップS905へ進む。なお、ステップS903にて算出した平均値が、領域Aに対する電波強度の平均値の算出、すなわち、初回の平均値算出である場合には、前回の電波強度が無いため、探索装置200の処理は、ステップS905へ進んでよい。具体的には、有意差が生じる場合とは、図8の例の場合、領域Bから領域Cに回転した際に、電波強度(ここでは、平均値)に閾値以上の差が生じる場合に相当する。
【0079】
探索装置200は、ステップS903にて算出した平均値を記録し、次の対象領域の受信を継続する(ステップS905)。そして、探索装置200の処理は、ステップS902へ戻り、処理を繰り返す。例えば、領域Aに対する電波強度の平均値の算出が完了した場合、その次の領域Bに対する信号が受信され、電波強度の平均値が算出される。
【0080】
探索装置200は、有意差が発生した前の領域に対応する方向に進行方向を決定する(ステップS906)。例えば、図8に示したように領域Bと領域Cにて電波強度(ここでは、平均値)に有意差が生じた際には、図7に示すように、領域Bに対応する向きを進行方向として決定する。そして、探索装置200は、決定した進行方向に機首を向けるように回転動作を行い、その後、進行方向に向けて飛行を行う。
【0081】
(再探索)
以下、本実施の形態に係る再探索について説明する。ここでの「再探索」とは、現在の進行方向が正しいか否か、すなわち、方向制御を行うか否かを判定し、その判定結果に基づいて方向制御を行うことにより、自律探索時の調整を行うことを意味する。図10は、方向制御に係る電波強度と、距離の変化を説明するためのグラフ図である。図10の上側のグラフにおいて、横軸は時間を示し、縦軸は受信した信号の電波強度を示す。また、図10の下側のグラフにおいて、横軸は時間を示し、縦軸は受信した信号から算出される発信機100までの距離を示す。図10の上下のグラフは対応しており、破線1001、1002は、図9にて説明した方向制御を行ったタイミングを示す。線1003は、受信した信号の電波強度の変化を示す。また、矢印1004は、線1003に示される信号の電波強度からサンプリングした値を用いて最小二乗法にて算出した傾き(以下、「第1の傾き」とも称する)を示す。本例において、矢印1004は、負(<0)の傾き、すなわち時間が経つにつれて電波強度が弱くなっていることを示している。線1005は、受信した信号から算出される探索装置200と発信機100との間の距離を示す。また、矢印1006は、線1005に示される距離からサンプリングした値を用いて最小二乗法にて算出した傾き(以下、「第2の傾き」とも称する)を示す。本例において、矢印1006は、正(>0)の傾き、すなわち時間が経つにつれて距離が離れていっていることを示している。なお、本実施の形態では、電波強度や距離の経時的変化を傾きで表しているが、これに限らず、変化量で表してもよい。
【0082】
図11は、方向制御時の開始角の設定条件を示すテーブル図である。図10に示したように、探索装置200の飛行に伴って、受信する信号の電波強度や発信機100との距離は変動する。本実施の形態では、これらの変化に基づいて、方向制御を行う際の開始角を設定する。ここでは、上記の傾きの他、信号に基づく分散を用いる。なお、図11に示す例では、3つの条件を例に挙げて説明するが、これらは一例であり、これに限定するものではない。例えば、回転角は他の値であってもよいし、より細かい条件を規定してもよい。
【0083】
前回の方向制御から距離が増加する場合、すなわち、距離の傾きが正(>0)を示す場合、探索装置200は、機首の向きを現在の向きから180度反転させた上で再探索、すなわち、図9に示す方向制御を行う。これは、探索装置200が発信機100から離れる方向に進んでいる状態に相当するため、向きを反転している。電波強度が分散、すなわち、一定の範囲を超えて上下に振れる場合、探索装置200は、現在の向きから左右のいずれかに90度方向転換を行った上で、図9に示す方向制御を行う。これは、探索装置200が発信機100からの信号を左右方向(横方向)から受信している状態に相当する。右を向かせるか、左を向かせるかは、分散の程度に応じて決定してよい。上記以外の場合、探索装置200は、現在の向きから左右のいずれかに15度方向転換を行った上で、図9に示す方向制御を行う。
【0084】
(再探索処理フロー)
図12は、本実施の形態に係る探索装置200が、所定のタイミングでの再探索制御の処理のフローチャートである。本処理フローは、探索装置200の制御部202が、本実施の形態に係る処理に対するプログラムを記憶部から読み出して実行し、探索装置200の各部位を制御することで実現される。なお、本処理フローは、探索開始から探索終了まで繰り返し実行されてよい。また、発信機100は、所定のパターンに基づき、信号を適宜発信しているものとする。また、探索装置200は、飛行および移動を適時継続しているものとする。
【0085】
探索装置200は、発信機100から送信されてくる信号を受信する(ステップS1201)。このとき、探索装置200は、不図示のカウンタなどを用いて、信号を受信した回数をカウントする。
【0086】
探索装置200は、所定回数の信号の受信が完了したか否かを判定する(ステップS1202)。つまり、探索装置200は、ステップS1201にて受信した回数が予め規定された閾値に到達したか否かを判定する。本例では、閾値を「200」として説明するが、これに限定するものではない。信号の受信が完了した場合(ステップS1202;YES)、探索装置200の処理はステップS1203へ進む。一方、信号の受信が完了していない場合(ステップS1202;NO)、探索装置200の処理はステップS1201へ戻り、飛行および信号の受信を継続する。
【0087】
探索装置200は、受信した信号を用いて、電波強度の変化傾向を示す傾きを算出する(ステップS1203)。図10の上側のグラフに示したように、前回の方向制御を行った後に受信した所定数の信号に基づいて、電波強度の傾きを算出する。傾きは、例えば、最小二乗法にて算出することができる。また、本例では、受信した200の信号のうち、10点おきの計20の信号をサンプリングして用いて電波強度の傾きを算出するものとする。これにより、処理負荷を抑制させることができる。なお、本実施の形態では、傾きを算出しているが、これに限らず、変化量を算出してもよい。
【0088】
探索装置200は、受信した信号を用いて、距離の変化傾向を示す傾きを算出する(ステップS1204)。図10の下側のグラフに示したように、前回の方向制御を行った後に受信した所定数の信号に基づいて、距離の傾きを算出する。傾きは、例えば、最小二乗法にて算出することができる。また、本例では、受信した200の信号のうち、10点おきの計20の信号をサンプリングして用いて電波強度の傾きを算出するものとする。これにより、処理負荷を抑制させることができる。
【0089】
探索装置200は、ステップS1203およびステップS1204の算出結果に基づき、所定の条件を満たすか否かを判定する。本例での所定の条件とは、電波強度の傾きが正(>0)であり、かつ、距離の傾きが負(<0)であるものとする。これは、経時的に電波強度が強くなっており、かつ、経時的に距離が近くなっているということを意味している。すなわち、この条件は、探索装置200の現在の飛行方向(機首方向)が発信機100の方向に正しく向いており、発信機100に接近しながら飛行していることに相当する。所定の条件を満たす場合(ステップS1205;YES)、探索装置200は、本処理フローを終了し、飛行を継続する。一方、所定の条件を満たさない場合(ステップS1205;NO)、探索装置200の処理は、ステップS1206へ進む。
【0090】
探索装置200は、ステップS1203およびステップS1204の算出結果に基づき、方向制御における開始角を決定する(ステップS1206)。ここでの開始角は、図11に示した条件に基づいて決定する。上述したように開始角を決定するために分散を用いる場合には、本工程にて分散を導出してもよい。
【0091】
探索装置200は、ステップS1206にて決定した開始角に基づいて機首の向きを変更し、図9にて説明した方向制御の処理を行う(ステップS1207)。その後、本処理フローを終了し、方向制御後の機首方向にて飛行を継続する。
【0092】
(飛行制御)
本実施の形態に係る探索装置200は、発信機100からの信号に基づき、飛行制御を行う。ここでの飛行制御としては、飛行速度や飛行位置、発信機100周辺での待機位置などの制御が含まれる。以下、本実施の形態に係る飛行制御について説明する。
【0093】
図13は、探索装置200と発信機100との間の距離に応じた飛行速度の制御の際に用いられるテーブルの構成例を示す。探索装置200と発信機100との間の距離の推定方法は上述した通りである。本実施の形態では、探索装置200と発信機100が離れるほど速い飛行速度で探索装置200が飛行するものとする。
【0094】
図13では、探索装置200と発信機100との間の距離を4つの段階(「極近距離」、「近距離」、「中距離」、「遠距離」)に分けた例を示す。ここでの段階は一例であり、更に飛行速度を定義してもよい。例えば、極近距離、近距離、中距離、遠距離はそれぞれ、~30m、~100m、~500m、~1kmなどの範囲にて設定されてよい。極近距離、近距離、中距離、遠距離それぞれにおいて、飛行速度は1m/sec、2m/sec、3m/sec、4m/sec、として定義している。図13に示すようなテーブルは、予め定義され、探索装置200の記憶部に保持されているものとする。なお、本実施の形態では、探索装置200と発信機100との間の距離を4つの段階で表しているが、これに限らず、更に多くの段階を設けてもよく、逆に段階を少なく設けてもよい。また、無段階での調整も可能であり、例えば、距離に反比例する一次関数を用いて速度を算出する等を挙げることができる。
【0095】
(飛行制御フロー)
図14は、本実施の形態に係る探索装置200が、飛行制御する処理のフローチャートである。本処理フローは、探索装置200の制御部202が、本実施の形態に係る処理に対するプログラムを記憶部から読み出して実行し、探索装置200の各部位を制御することで実現される。また、本処理フローは、探索装置200が探索を開始する位置に到着した際に開始されてよい。探索開始位置は、ユーザの指示に基づいて特定されてよい。また、発信機100は、所定のパターンに基づき、信号を適宜発信しているものとする。
【0096】
探索装置200は、探索開始時における自身の対地高度を計測し、記憶部に保持する(ステップS1401)。対地高度は、上述したように探索装置200が備えるセンサ部205により取得可能である。なお、探索装置200は、移動(飛行)に際し、対地高度を適時取得しているものとする。
【0097】
探索装置200は、発信機100から受信した信号から特定される距離に基づき、図13に示したようなテーブルを参照して移動速度を決定する(ステップS1402)。このとき、探索装置200は、図9に示した方向制御を行ってもよい。
【0098】
探索装置200は、ステップS1402にて決定した飛行速度に基づき、移動(飛行)を開始する(ステップS1403)。
【0099】
探索装置200は、移動に伴い、対地高度が変化、すなわち、探索開始時の対地高度からの変化量が所定の範囲を超えたか否かを判定する(ステップS1404)。対地高度が変化した場合(ステップS1404;YES)、探索装置200の処理は、ステップS1405へ進む。一方、対地高度が変化していない場合(ステップS1404;NO)、探索装置200の処理は、ステップS1407へ進む。なお、ここでの変化量に対する範囲は、高度の絶対値で規定されていてもよいし、比率で規定されていてもよい。この範囲を示す値は予め規定され、探索装置200の記憶部に保持されているものとする。ここでは、探索装置200の飛行時(探索時)における対地高度が一定または略一定となるように、範囲が設定されてよい。
【0100】
探索装置200は、現在の対地高度と、ステップS1401にて保持した探索開始時の対地高度との差分に基づいて、垂直方向の速度(上昇速度または下降速度)を決定する(ステップS1405)。ここでの決定方法は、図13と同様にテーブルにて予め規定されていてもよいし、予め規定された算出式を用いて決定されてもよい。
【0101】
探索装置200は、ステップS1405にて決定した速度に基づいて、上昇または下降による高度制御を行う(ステップS1406)。
【0102】
探索装置200は、発信機100から受信した信号に基づいて、探索装置200と発信機100との間の距離が、図13に示すような複数の段階において変化したか否かを判定する(ステップS1407)。例えば、探索装置200が発信機100に接近したことにより、その間の距離が「遠距離」から「中距離」に変化したか否かを判定する。ここでは、距離の変化は、接近した場合に限定されず、離間した場合も含まれる。距離が変化した場合(ステップS1407;YES)、探索装置200の処理はステップS1408へ進む。一方、距離が変化していない場合(ステップS1407;NO)、探索装置200の処理はステップS1410へ進む。
【0103】
探索装置200は、探索装置200と発信機100と間の距離に基づいて、図13に示したようなテーブルを参照して移動速度を決定する(ステップS1408)。
【0104】
探索装置200は、ステップS1408にて決定した速度に基づいて、飛行制御を行う(ステップS1409)。
【0105】
探索装置200は、発信機100の推定位置周辺に到達したか否かを判定する(ステップS1410)。ここでの推定位置は、図2図4などを用いて説明した位置推定処理により、探索装置200と発信機100との間の距離が所定の値以下となっているか否かを判定する。ここでの所定の値は予め規定され、探索装置200の記憶部にて保持されているものとする。所定の値は、例えば、距離データの誤差の値に基づいて決定してもよい。例えば、距離データの誤差範囲が30mの場合は、水平距離において30mとして設定してもよい。理由としては、それ以降の探索結果の精度の低下を挙げることができる。この場合は、探索装置200の空中停止による待機位置を距離データの誤差範囲内とすることができる。なお、所定の値は、図13に示した「極近距離」よりも狭い範囲であってよい。推定位置周辺に到達した場合(ステップS1410;YES)、探索装置200の処理はステップS1411へ進む。一方、推定位置周辺に到達していない場合(ステップS1410;NO)、探索装置200の処理はステップS1404へ戻り、探索を継続する。
【0106】
探索装置200は、発信機100の推定位置周辺にて待機制御を行う(ステップS1411)。ここでの待機制御は例えば、推定位置から所定の範囲内の距離および高度にて空中停止を行うような制御であってよい。例えば、探索中の対地高度(例えば、探索開始時の対地高度)が80~100mとして、待機時の対地高度は10mとしてよい。探索装置200の待機時の範囲は一例であり、探索装置200の機能や状態に応じて、変更されてよい。例えば、受信部201の信号受信の精度が一定以上となるような範囲であってもよいし、撮影部204が撮影可能な範囲であってもよい。また、探索装置200周辺の障害物(樹木や建築物など)などの存在や地形の形状(崖や斜面、河川など)などに応じて、待機時の位置や発信機100との相対的な配置(例えば、方角)が調整されてよい。その後、例えば、監視装置400の指示を受信するまで待機状態を継続し、その指示に基づいて以降の動作を行ってよい。
【0107】
[UI構成例]
以下、本実施の形態に係る自律探索システム1が生成、提供する各種UI画面について説明する。本実施の形態では、探索装置200にて収集された各種情報を用いて、サーバー装置300がUI画面を生成し、監視装置400へ提供する例を挙げて説明する。しかし、これに限定するものではなく、例えば、監視装置400側で、サーバー装置300を介して取得される情報を用いてUI画面を構成するような構成であってもよい。
【0108】
図15は、本実施の形態に係る監視装置400のUI部403を構成する表示部にて表示されるUI画面1500の構成例を示す図である。UI画面1500は、探索装置200にて収集された情報を用いて構成される監視画面としての役割の他、ユーザが探索装置200に各種指示を行うための操作画面としての役割も有する。UI画面1500にて表示される各種情報は、通信部402を介して取得され、処理部401にて処理されて表示される。
【0109】
UI画面1500は、大きく3つの領域1510、1520、1530に分割される。領域1510には、探索装置200の現在位置に基づいて、その周辺領域の地図情報が表示される。また、領域1510には、探索装置200の現在位置を示すアイコン1511、探索装置200の飛行経路1512、および発信機100の現在位置を示すアイコン1513が表示される。また、地図を拡大/縮小するためのコントローラ1514が表示される。なお、これらの各情報は、ユーザの操作に応じて表示/非表示が切り替えられてもよいし、さらに多くの情報が表示されてもよい。なお、本実施の形態では、各種ボタンによって、撮影に係る指示を行う形式となっているが、これに限らず、基地から離陸するタイミングで自動的に撮像を開始してもよく、また基地に帰還したタイミングで自動的に撮像を終了する形式であってもよい。
【0110】
領域1520には、探索装置200が備える撮影部204にて撮影された画像や、撮影に係る指示を行うための各種ボタンが表示される。映像領域1521は、撮影部204にて撮影された映像が表示される。撮影開始ボタン1522は、撮影部204による撮影の開始を指示するためのボタンである。撮影停止ボタン1523は、撮影部204による撮影の停止を指示するためのボタンである。再生ボタン1524は、撮影部204にて撮影された映像の再生を指示するためのボタンである。停止ボタン1525は、撮影部204にて撮影された映像の再生停止を指示するためのボタンである。
【0111】
領域1530には、探索装置200の現在の状態に関する情報や、探索装置200に指示を行うための各種ボタンが表示される。表示領域1531には、探索装置200の前方(機首方向)における障害物の有無が示される。ここでは、前方の5mまでの範囲を表示可能としている。表示領域1532には、探索装置200の現在の水平方向(ロール)および縦方向(ピッチ)の傾きに関する情報(姿勢情報)が示される。ここでは水平方向の傾き(ロール角)が水平に対して左右40度ずつの範囲にて示される。また、縦方向の傾き(ピッチ角)が水平に対して上下40度ずつの範囲にて示される。
【0112】
表示領域1533には、探索装置200の現在の飛行に関するパラメータが表示される。ここで表示されるパラメータとしては、自己位置推定状態(EKF:Extended Kalman Filter)、自己位置検出状態(GPS:Global Positioning System)、電池(残量)、モータ稼働状況、飛行状態(安定状態)、対地高度、飛行速度などが挙げられるが、これに限定するものではない。例えば、ユーザの操作により表示させるパラメータを切り替えてもよい。
【0113】
起動ボタン1534は、探索装置200を遠隔にて起動させるためのボタンである。離陸ボタン1535は、探索装置200を離陸させるためのボタンである。帰還ボタン1536は、探索装置200を所定の位置へ帰還させるためのボタンである。ここでの所定の位置は、予め設定されていてもよいし、領域1510にて示している地図上にて指定できるような構成であってもよい。飛行計画ボタン1537は、予め設定された探索装置200の飛行計画(飛行経路)を表示するためのボタンである。飛行計画は、領域1510にて示している地図上にて、飛行履歴である飛行経路1512とは識別可能に表示させてよい。
【0114】
上述したように、サーバー装置300は、外部のサーバーと連携してデータの取得が可能である。したがって、飛行計画を設定する際には、予め連携サーバーに登録されている情報を取得し、その情報に基づいて設定されてもよい。飛行計画の設定に利用可能な情報としては、例えば、探索対象者の行動計画(登山スケジュールや登山ルート)、探索領域の遭難情報(ポイントごとの遭難の発生可能性、遭難の発生履歴など)、すでに探索済みの領域情報などが挙げられる。飛行計画は、サーバー装置300が上記のような情報に基づいて設定してもよい。また、上記情報を監視装置400のユーザにUI画面1500上にて提示して、ユーザがこれらを参照して飛行計画を設定できるような構成であってもよい。なお、探索装置200の自律探索の開始位置についても、上記情報に基づいてサーバー装置300またはユーザにより設定されてもよい。
【0115】
自律探索ボタン1538は、ユーザによるマニュアル操作に代えて、探索装置200が上記の各種処理フローにて説明したような自律探索を行うように指示するためのボタンである。自律探索機能のON/OFFに応じて、自律探索ボタン1538に設けられた〇の表示が切り替わるような構成であってよい。衝突回避ボタン1539は、探索装置200による衝突回避動作を指示するためのボタンである。衝突回避動作とは、例えば、障害物を検出した際などに、その周辺にて停止したり、警報を通知したりする動作であってよい。障害物を検出した際には、ユーザによるマニュアル操作を受け付け、障害物の回避を行うような構成であってよい。衝突回避機能のON/OFFに応じて、衝突回避ボタン1539に設けられた〇の表示が切り替わるような構成であってよい。緊急着陸ボタン1540は、探索装置200に対して緊急着陸を指示するためのボタンである。緊急着陸ボタン1540が指示された際に着陸する場所の条件は、予め規定されていてもよいし、ユーザが領域1510に示している地図上にて指定してもよい。
【0116】
図16は、探索装置200が発信機100の推定位置周辺に到達した際に表示されるUI画面の構成例を示す。すなわち、図14のステップS1411の待機制御が行われている際に、このUI画面が表示されるような構成であってよい。図15に示したUI画面1500の領域1510に、探索装置200の撮影部204にて発信機100の推定位置周辺が撮影されている映像を表示するための表示領域1600が示されている。映像領域1601には、撮影中の映像が表示されている。シャッターボタン1603は、撮影されている映像の静止画像の記録のために、撮影を指示するためのボタンである。なお、図16では、映像領域1601に表示される映像を取得する撮影部204と、映像領域1521に表示される映像を取得する撮影部204といったように、探索装置200に複数の撮影部204が存在しているような表現となっているが、これに限らず、撮影部204が1台しか搭載されていない場合であっても、パン機能やチルト機能等を用いて撮像範囲を切り替えて各映像領域に映像を表示する仕様であってもよい。また、さらに多くの撮影部204を備える場合には、複数の撮影部204それぞれにて撮影されている画像を切り替え可能に構成されてもよいし、それぞれをUI画面1500上に配置して表示させてもよい。
【0117】
パン軸指示ボタン1604は、探索装置200の撮影部204に設けられたジンバル(不図示)に対するパン制御を行うためのボタンである。ユーザは、パン軸指示ボタン1604を操作することで、撮影部204のパン軸に沿った向きを制御することができる。チルト軸指示ボタン1605は、探索装置200の撮影部204に設けられたジンバル(不図示)に対するチルト制御を行うためのボタンである。ユーザは、チルト軸指示ボタン1605を操作することで、撮影部204のチルト軸に沿った向きを制御することができる。なお、ここでは、パン、チルトの制御を例に挙げて説明したが、そのほか、ズームや、画像処理制御(明るさ制御やフィルタリング処理など)などの指示が可能なように構成されてもよい。
【0118】
また、人物検知ボタン1607は、撮影されている画像に対して、機械学習(ディープラーニング等)による物体検出機能を用いて人物検知、およびその領域を抽出する機能の実行を指示するためのボタンである。例えば、映像中に人物1608(すなわち、発信機100の所持者であり、捜索対象者)が示されているような場合には、人物を検出し、これに対応したボックス1609を表示させる。なお、機械学習による物体検出技術は、公知の手法を用いてよく、ここでの詳細な説明は省略する。
【0119】
領域1530は、待機制御が行われている場合、また、障害物回避がマニュアル操作で行われる場合に、ユーザによる探索装置200のマニュアル操作が可能なように、操作ボタン群1602を表示させる。操作ボタン群1602には、前進、後退、右移動、左移動、空中停止、右回転、左回転などの操作ボタンが含まれてよい。なお、操作ボタン群1602に含まれる種類はこれに限定するものではなく、そのほか、上昇、下降、救難信号や音、光の出力などの指示が可能なように構成されてもよい。
【0120】
以上、本実施の形態により、飛行可能な探索装置200を含む自律探索システム1は、探索装置200が受信した、探索対象に所持される発信機100からの信号に基づいて、探索装置200と発信機100との間の距離を取得し、その距離に基づいて、発信機100の位置座標、および、探索装置200を基点とした発信機100の方向を推定し、自律探索システム1に含まれる探索装置200は、推定の結果に基づいて、発信機100に向けて自律飛行を行う。これにより、災害発生現場などにおける被災者の早期発見、救助支援を可能とするために、発信機からの信号に基づいて自律的な探索飛行動作を行うことが可能となる。
【0121】
また、自律探索システム1は、探索装置200と発信機100との間の距離、および、探索装置200と発信機100との間の高度差を用いて、三平方の定理により探索装置200と発信機100との水平距離を算出し、その水平距離に基づいて発信機100の位置座標を推定する。これにより、発信機100からの信号から得られる距離よりも更に発信機100の位置座標の推定結果の精度を向上させることが可能となる。
【0122】
また、高度差は、探索装置200の位置座標に対応する海抜高度と、探索装置200と発信機100との間の距離と探索装置200の位置座標と探索装置200を基点とした発信機100の方向から推定される発信機100の位置座標に対応する海抜高度とから算出される。これにより、探索装置200の高度と、発信機の推定位置座標に基づく高度とに基づいて、探索装置200と発信機100の水平距離を精度良く算出することが可能となる。
【0123】
また、探索装置200は、複数の位置座標に移動して、発信機100からの信号を受信し、自律探索システム1は、複数の位置座標と、当該複数の位置座標それぞれに対応する探索装置200と発信機100との間の距離とを用いて、球面の方程式により発信機100の位置座標を推定する。これにより、自律探索システム1は、複数の位置座標に基づく球面の方程式により、精度良く発信機100の位置を推定することが可能となる。
【0124】
また、自律探索システム1は、複数のアルゴリズムを用いて発信機100の位置座標を推定し、更に、複数のアルゴリズムそれぞれによる推定結果を重みづけして統合することにより前記発信機の位置座標を推定する。これにより、複数の推定結果を統合することで、より精度の高い発信機100の位置推定が可能となる。
【0125】
また、自律探索システム1は、探索装置200の飛行履歴に基づいて飛行経路のモデルを特定し、複数のアルゴリズムそれぞれによる推定結果に対する重みをモデルに基づいて決定する。これにより、探索装置200の飛行経路のパターンに基づいて複数の推定結果の重みづけを決定することができ、飛行履歴に基づいて、発信機100の位置推定を行うことが可能となる。
【0126】
また、探索装置200は、所定の条件を満たした際に、ヨー軸周りにて回転することにより、所定の回転角ごとに発信機100からの信号の電波強度を測定し、所定の回転角ごとの電波強度に有意差の発生を検出したことに基づいて、探索装置200の進行方向を決定する。これにより、探索装置200は、より信号の電波強度が強い方向に向けて進行方向を適時調整し、自律的に飛行を行うことが可能となる。
【0127】
また、所定の条件は、探索装置200が探索開始位置に到達したことである。これにより、探索装置200が指定された開始位置に到達した際に、より信号の電波強度が強い方向に向けて探索を開始することができる。
【0128】
また、所定の条件は、経時的に電波強度が弱くなっており、かつ、経時的に探索装置と発信機100との間の距離が離れていっている状態である。これにより、探索装置200は、電波強度が強まり、かつ、発信機100との距離が接近する方向に向けて進行方向を適時調整し、自律的に飛行を行うことが可能となる。
【0129】
また、自律探索システム1は、自律探索システム1が算出した探索装置200と発信機100との間の水平距離が、発信機100からの信号に基づいて算出される距離の誤差範囲内の場合、所定の対地高度にて空中停止するように制御する。これにより、探索装置200は、発信機100の推定位置座標の周辺にて、所定の対地高度にて空中停止するように待機することが可能となる。
【0130】
また、自律探索システム1は、探索装置200が水平移動を開始する前に、探索装置200の対地高度を所定の高さまで上昇させるように制御する。これにより、探索装置200は、所定の高さ(例えば、探索開始時)の対地高度を維持した状態で、自律探索を行うことが可能となる。
【0131】
また、自律探索システム1は、探索装置200と発信機100との間の距離が所定の距離よりも大きい場合、探索装置200と発信機100との間の距離が所定の距離以下である場合よりも、探索時の飛行速度を上昇させる。これにより、探索装置200は、発信機100の距離に応じて、接近するための飛行速度を制御できる。そのため、例えば、探索装置200は、発信機100との距離が離れている場合には高速度に発信機100への接近を行い、電池の消耗を抑制することができる。
【0132】
また、自律探索システム1は、探索装置200と、サーバー装置300と、監視装置400と、を含んで構成され、サーバー装置300は、探索装置200からの情報を取得する通信部302と、探索装置200から取得した情報を用いてUI画面1500を生成し、監視装置400に提供するデータ処理部301および通信部302と、を有し、監視装置400は、UI画面1500を表示するUI部403を有する。これにより、自律探索システム1のユーザは、探索装置200による自律探索が行われている間のリアルタイムの情報を適時把握して、監視することが可能となる。
【0133】
また、サーバー装置300は更に、探索対象の行動計画、探索領域の遭難情報、または探索済みの領域情報の少なくともいずれかを収集し、UI画面1500は、収集した情報を含めて構成される。これにより、探索装置200の自律探索の飛行経路や探索開始位置の設定などに利用可能な各種情報をUI画面1500上に表示可能となる。
【0134】
また、探索装置200は更に撮影部204を備え、UI画面150は、撮影部204にて撮影された映像、および、当該映像に対して行われた人物検知の結果を識別可能に構成される。これにより、自律探索システム1のユーザは、探索装置200による自律探索が行われている間のリアルタイムの映像情報を適時把握して、監視することが可能となる。また、人物が撮影部204にて撮影された際の画像内での把握を容易にすることが可能となる。
【0135】
また、UI画面1500において、探索装置200の現在の位置座標、探索装置200の飛行経路、および、探索装置200が受信した信号に基づいて推定された発信機100の位置座標のうちの少なくとも1つが、UI画面1500に表示された地図上にマッピングして表示される。これにより、自律探索システム1のユーザは、探索装置200による自律探索が行われている間のリアルタイムの位置情報や飛行経路を容易に把握することが可能となる。
【0136】
<その他の実施形態>
上記の実施の形態では、発信機100からの信号を探索装置200が受信している場合の動作に着目して説明した。探索装置200は、指定された探索開始位置に到着後、発信機100からの信号を受信できていない状態の場合には、ユーザにその旨を通知して、ユーザからのマニュアル操作を受け付けるような構成であってもよい。または、発信機100からの信号を受信できるまでは、所定の飛行パターン(飛行経路、飛行速度、対地高度など)に基づいて飛行を継続し、信号の受信可能な位置を探索するような構成であってもよい。そして、信号が受信可能となった時点から上記の実施の形態にて示したような動作を行うような構成であってよい。
【0137】
また、上述した1以上の実施の形態の機能を実現するためのプログラムおよびアプリケーションを、ネットワークまたは記憶媒体などを用いてシステムまたは装置に供給し、そのシステムまたは装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。
【0138】
また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、またはFPGA(Field Programmable Gate Array))によって実現してもよい。
【0139】
以上、図面を参照しながら各種の実施形態について説明したが、本開示は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例、修正例、置換例、付加例、削除例、均等例に相当し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した各種の実施形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0140】
本開示は、災害発生現場などを想定した、被災者に対する自律的な探索システム、探索装置、監視装置、探索方法、およびプログラムとして有用である。
として有用である。
【符号の説明】
【0141】
1…自律探索システム
100…発信機
200…探索装置
201…受信部
202…制御部
203…電源
204…撮影部
205…センサ部
206…通信部
207…駆動部
300…サーバー装置
301…データ処理部
302…通信部
303…データ部
400…監視装置
401…処理部
402…通信部
403…UI(User Interface)部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16