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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023076178
(43)【公開日】2023-06-01
(54)【発明の名称】電力貯蔵システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/35 20060101AFI20230525BHJP
   H02J 1/00 20060101ALI20230525BHJP
   H02J 7/10 20060101ALI20230525BHJP
【FI】
H02J7/35 K
H02J1/00 306L
H02J7/10 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021189425
(22)【出願日】2021-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】加茂 章太郎
【テーマコード(参考)】
5G165
5G503
【Fターム(参考)】
5G165CA02
5G165DA01
5G165DA06
5G165DA07
5G165EA03
5G165EA07
5G165EA10
5G165GA04
5G165GA09
5G165LA01
5G165LA02
5G165LA03
5G503AA01
5G503AA06
5G503AA07
5G503BA01
5G503BB01
5G503CA01
5G503CA08
5G503CA11
5G503DA07
5G503EA02
5G503EA05
5G503EA06
5G503FA06
5G503GB03
(57)【要約】
【課題】蓄電池の長寿命化と、蓄電池が接続された直流系統の安定化を同時に実現する。
【解決手段】蓄電池(34)と、蓄電池に対する充放電の電流を要請する充放電要請部(27)と、を備える電力貯蔵システム(30)は、充電要請を受信すると、蓄電池の電池電圧が充電抑制開始電圧を超える場合に、要請された電流に対し抑制した電流で蓄電池を充電するとともに、放電要請を受信すると、蓄電池の電池電圧が放電抑制開始電圧未満の場合に、要請された電流に対し抑制した電流で蓄電池から放電する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流系統に対して電力の受給を行う電力貯蔵システムであって、
前記直流系統は、直流母線と、前記電力貯蔵システムに対して所要の充電要請あるいは放電要請を行う充放電要請部と、を備えた直流系統であり、
電力を貯蔵する蓄電池と、
前記蓄電池の充放電を実行して、前記直流母線に電力の受給をする変換装置と、
前記変換装置を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記充放電要請部から前記充電要請を受信すると、
前記蓄電池の端子間電圧が、充電抑制開始電圧以下の場合に前記充電要請に応じた電流で、前記充電抑制開始電圧を超える場合に前記充電要請よりも抑制した電流で、前記蓄電池への充電を前記変換装置に行わせるとともに、
前記充放電要請部から前記放電要請を受信すると、
前記蓄電池の端子間電圧が、前記充電抑制開始電圧よりも小さい値に定められた放電抑制開始電圧以上の場合に前記放電要請に応じた電流で、前記放電抑制開始電圧未満の場合に前記放電要請よりも抑制した電流で、前記蓄電池の放電を前記変換装置に行わせる、電力貯蔵システム。
【請求項2】
前記制御部は、
前記蓄電池の端子間電圧が、前記充電抑制開始電圧よりも大きい値に定められた充電停止電圧以上の場合に、前記蓄電池への充電を前記変換装置に行わせず、
前記蓄電池の端子間電圧が、前記放電抑制開始電圧よりも小さい値に定められた放電停止電圧以下の場合に、前記蓄電池の放電を前記変換装置に行わせない、請求項1に記載の電力貯蔵システム。
【請求項3】
前記制御部は、
前記充電要請よりも抑制した電流での前記蓄電池への充電について、
前記充電抑制開始電圧から前記充電停止電圧にかけて、前記蓄電池の端子間電圧が大きくなるに従い、電流の抑制を強めるように制御するとともに、
前記放電要請よりも抑制した電流での前記蓄電池からの放電について、
前記放電抑制開始電圧から前記放電停止電圧にかけて、前記蓄電池の端子間電圧が小さくなるに従い、電流の抑制を強めるように制御する、請求項2に記載の電力貯蔵システム。
【請求項4】
前記制御部は、
前記充電要請よりも抑制した電流での前記蓄電池への充電について、
前記充電抑制開始電圧から前記充電停止電圧にかけて、前記蓄電池の端子間電圧が大きくなるに従い、電流の抑制を徐々に強めるように制御するとともに、
前記放電要請よりも抑制した電流での前記蓄電池からの放電について、
前記放電抑制開始電圧から前記放電停止電圧にかけて、前記蓄電池の端子間電圧が小さくなるに従い、電流の抑制を徐々に強めるように制御する、請求項2または3に記載の電力貯蔵システム。
【請求項5】
前記充電抑制開始電圧は、前記充電要請に応じた電流が小さいほど、大きい値に定められるとともに、
前記放電抑制開始電圧は、前記放電要請に応じた電流が小さいほど、小さい値に定められる、請求項1から4のいずれか1項に記載の電力貯蔵システム。
【請求項6】
前記充電抑制開始電圧は、前記蓄電池の内部インピーダンスが小さいほど、大きい値に定められるとともに、
前記放電抑制開始電圧は、前記蓄電池の内部インピーダンスが小さいほど、小さい値に定められる、請求項1から5のいずれか1項に記載の電力貯蔵システム。
【請求項7】
前記直流系統は、前記直流母線に発電装置が接続された直流系統である、請求項1から6のいずれか1項に記載の電力貯蔵システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電力貯蔵システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電力系統は、発電設備と負荷設備とを送配電設備によって接続することで構築されている。電力系統では、発電設備による電力の供給と、負荷設備による電力の需要とをバランスさせることが行われている。
【0003】
電力貯蔵システムは、上記のような電力系統に接続されて、電力需給をバランスさせるための一つの手段として用いられる。蓄電池を備えた電力貯蔵システムを電力系統に接続することにより、電力の需要に対して供給が過大になるときには、余剰の電力を蓄電池に充電し、電力の需要に対して供給が不足するときには、蓄電池からの放電により電力の不足を補填するといった運用を取ることができる。
【0004】
特許文献1には、交流系統の安定化を図るための、このような電力貯蔵システムが開示されている。特許文献1の電力貯蔵システムでは、蓄電池の充電限界、放電限界を考慮することが検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11-27874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の従来技術は、交流系統の安定化のための電力貯蔵システムの動作を開示するものの、直流系統のための電力貯蔵システムの動作に関する記載はない。
【0007】
本発明の一態様は、蓄電池の長寿命化を図りつつ、直流系統の受給需給バランス維持のための効率的な運用をなるべく妨げることのない、直流系統に接続される電力貯蔵システムを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る電力貯蔵システムは、直流系統に対して電力の受給を行う電力貯蔵システムであって、前記直流系統は、直流母線と、前記電力貯蔵システムに対して所要の充電要請あるいは放電要請を行う充放電要請部と、を備えた直流系統であり、電力を貯蔵する蓄電池と、前記蓄電池の充放電を実行して、前記直流母線に電力の受給をする変換装置と、前記変換装置を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記充放電要請部から前記充電要請を受信すると、前記蓄電池の端子間電圧が、充電抑制開始電圧以下の場合に前記充電要請に応じた電流で、前記充電抑制開始電圧を超える場合に前記充電要請よりも抑制した電流で、前記蓄電池への充電を前記変換装置に行わせるとともに、前記充放電要請部から前記放電要請を受信すると、前記蓄電池の端子間電圧が、前記充電抑制開始電圧よりも小さい値に定められた放電抑制開始電圧以上の場合に前記放電要請に応じた電流で、前記放電抑制開始電圧未満の場合に前記放電要請よりも抑制した電流で、前記蓄電池の放電を前記変換装置に行わせる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、蓄電池の長寿命化と、蓄電池が接続された直流系統の安定化を同時に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態1に係る電力系統の構成図を示す。
図2】本発明の実施形態1に係る電力貯蔵システムおよび直流系統のブロック図を示す。
図3】本発明の実施形態1に係る電力貯蔵システムの充放電に関するフローチャートを示す。
図4】本発明の実施形態1に係る電力貯蔵システムの充電時における、蓄電池の電池電圧と抑制ゲインとの関係を示す。
図5】本発明の実施形態1に係る電力貯蔵システムの放電時における、蓄電池の電池電圧と抑制ゲインとの関係を示す。
図6】本発明の実施形態1に係る電力貯蔵システムの充電時の動作例における、電圧と電流とSOCとの変化を示す。
図7】本発明の実施形態2に係る電力貯蔵システムの充電時における、蓄電池の電池電圧と抑制ゲインとの関係を示す。
図8】本発明の実施形態2に係る電力貯蔵システムの充電時の動作例における、蓄電池の電池電圧と電流との変化を示す。
図9】本発明の実施形態3に係る電力貯蔵システムの蓄電池のSOCと開放電圧との関係を示す。
図10】本発明の実施形態3に係る電力貯蔵システムの充電時における、蓄電池の電池電圧と抑制ゲインとの関係を示す。
図11】本発明の実施形態3に係る蓄電池の内部インピーダンスが大きい場合での電力貯蔵システムの充電時の動作例における、蓄電池の電池電圧と電流との変化を示す。
図12】本発明の実施形態3に係る蓄電池の内部インピーダンスが小さい場合での電力貯蔵システムの充電時の動作例における、蓄電池の電池電圧と電流との変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、図1図6に基づき詳細に説明する。
【0012】
(電力系統1の構成)
図1は、本発明の実施形態1に係る電力系統1の構成図を示す。図2は、本発明の実施形態1に係る電力貯蔵システム30および直流系統20のブロック図を示す。
【0013】
電力系統1は、交流系統10と、直流系統20と、電力貯蔵システム30と、を備える。交流系統10は、商用電源11と、トランス12と、AC-DCコンバータ13と、を備える。直流系統20は、第1DCサーキットブレーカ21と、母線(直流母線)22と、第1DC-DCコンバータ23と、発電装置24と、直流負荷25と、EV(Electric Vehicle)充電ステーション26と、充放電要請部27と、を備える。電力貯蔵システム30は、制御部31と、第2DC-DCコンバータ(変換装置)32と、第2DCサーキットブレーカ33と、蓄電池34と、を備える。
【0014】
商用電源11は、交流電源である。トランス12は、商用電源11に接続されており、交流電力の電圧を変圧する変圧器である。AC-DCコンバータ13は、トランス12に接続されており、交流電力を直流電力に変換する。AC-DCコンバータとしては、ダイオードブリッジのような整流回路であってもよい。直流系統20は、商用電源11に対して、買電に加え、売電することができてもよい。
【0015】
第1DCサーキットブレーカ21は、AC-DCコンバータ13に接続されており、当該第1DCサーキットブレーカ21を流れる電流が定格電流以上において、開路する保護器である。AC-DCコンバータ13と第1DCサーキットブレーカ21との接続端子のうち、1端子は接地されていてもよい。
【0016】
第1DCサーキットブレーカ21の2次側には、母線22が接続されており、母線22を介して、複数の直流回路が接続されている。
【0017】
第1DC-DCコンバータ23は、母線22に接続されており、母線22に対し、電流を入出力する。発電装置24は、第1DC-DCコンバータ23に接続されており、直流電力を発電する装置である。例えば、発電装置24としては太陽光発電装置、風力発電装置、地熱発電装置などの自然エネルギーによる発電装置が挙げられる。
【0018】
直流負荷25は、母線22に接続された、直流の負荷である。EV充電ステーション26は、母線22に接続された、EV用の充電ステーションである。
【0019】
電力系統1において、母線22に接続されている、発電装置24、直流負荷25、およびEV充電ステーション26は例示であって、他の消費設備、発電設備、蓄電設備が接続されていてもよい。
【0020】
充放電要請部27は、電力貯蔵システム30に対して、所要の充電要請あるいは放電要請を行う。所要の充電要請あるいは放電要請は、直流系統20における電力利用予想や発電予想などから予め算出したものであってもよい。また、充放電要請部27は、多数の電力貯蔵システム30を統括する上位の制御装置から、充電要請あるいは放電要請を受信し、中継してもよい。充電要請および放電要請には、充放電を行う電流に関する情報が含まれていてもよい。
【0021】
第2DC-DCコンバータ32は、母線22に接続されており、母線22に対し電流を入出力する。第2DCサーキットブレーカ33は、第2DC-DCコンバータ32に接続されており、第2DCサーキットブレーカ33を流れる電流が定格電流以上において開路する保護器である。蓄電池34は、第2DCサーキットブレーカ33に接続された二次電池であり、直流電力を貯蔵し、充放電することができる。したがって、第2DC-DCコンバータ32は、蓄電池34の充放電を実行して、母線22に電力の受給をする。
【0022】
制御部31は、充放電要請部27の指令に基づき、所要の方向(充電または放電)に所要の電流を通電させるために、第2DC-DCコンバータ32を制御する。このとき、制御部31は、蓄電池34の電池電圧(蓄電池34の端子間電圧)Vbat、電流Ibat、およびSOC(State Of Charge)を取得する。
【0023】
(電力貯蔵システム30の充放電動作)
図3は、本発明の実施形態1に係る電力貯蔵システムの充放電に関するフローチャートを示す。
【0024】
まず、制御部31は、蓄電池34の電圧(電池電圧Vbat)を計測する(S11)。制御部31は、電池電圧Vbatが所定の上限電圧Vhighより大きいかどうかを判断する(S12)。VbatがVhighより大きい場合、処理をS13にすすめ、VbatがVhigh以下の場合、処理をS16に進める。
【0025】
S13において、制御部31は、蓄電池34が充電中か否かを判断する。蓄電池34が充電中の場合、過充電を防ぐために、充電電流Ibatを抑制する(S14)。蓄電池34が放電中の場合、電力に余裕はあるため、放電を継続する(S15)。
【0026】
S16において、制御部31は、電池電圧Vbatが所定の下限電圧Vlowより大きいかどうかを判断する(S12)。VbatがVlowより小さい場合、処理をS17にすすめ、VbatがVlow以上の場合、処理をS20に進める。
【0027】
S17において、制御部31は、蓄電池34が放電中か否かを判断する。蓄電池34が放電中の場合、過放電を防ぐために、放電電流Ibatを抑制する(S18)。蓄電池34充電中の場合、充電余地に余裕はあるため、充電を継続する(S19)。
【0028】
したがって、電池電圧Vbatが上限電圧Vhighおよび下限電圧Vlowの範囲に収まっている間は、充放電電流Ibatを抑制することなく、蓄電池34に対し充放電を行う。対して、電池電圧Vbatが上限電圧Vhighおよび下限電圧Vlowの範囲の外では、充放電電流Ibatを抑制することで、蓄電池34の過充電・過放電を防ぐ。ここで、上限電圧Vhighおよび下限電圧Vlowは以降で詳細に説明する。
【0029】
(蓄電池34の充電動作)
図4は、本発明の実施形態1に係る電力貯蔵システムの充電時における、蓄電池34の電池電圧Vbatと抑制ゲインとの関係を示す。蓄電池34の定格電圧に対し、所定の電池電圧変動を考慮した、充電抑制開始電圧(=Vhigh)、充電停止電圧(=OV(OverVolt):定格上限電圧)を定義する。充電停止電圧は、充電抑制開始電圧よりも大きい値に定める。充電抑制開始電圧は、充電時における抑制ゲインを低くし始める電圧であり、充電停止電圧は、充電を停止させる電圧である。
【0030】
充電停止電圧以上の電池電圧Vbatでも充電を行ってしまうと、電池電圧Vbatが更に上昇してしまい、電池の劣化を招く。蓄電池34の劣化を防ぐために、充電停止電圧でもって充電を停止する。
【0031】
例えば、充電抑制開始電圧は、定格電圧に対し+5%、充電停止電圧は定格電圧に対し+10%とする。充電抑制開始電圧および充電停止電圧の定格電圧に対する値は、これらの値に限定されず、任意の値であってもよい。また、係数をかけることに限定されず、オフセットを加味した値であってもよい。
【0032】
蓄電池34が充電する充電電流Ibatは、充電要請に応じた電流に対し、0から1の値をとる抑制ゲインをかけた値である。充電時における抑制ゲインは、電池電圧Vbatが充電抑制開始電圧までは1であり、蓄電池34は充電要請に応じた電流でもって充電を行うことができる。対して、電池電圧Vbatが充電抑制開始電圧を越し、充電停止電圧未満の場合、抑制ゲインは0~1の値をとって、充電抑制開始電圧では抑制ゲインが1であり、充電停止電圧では抑制ゲインが0となるように変化する。
【0033】
すなわち、制御部31が充放電要請部27から充電要請を受信すると、電池電圧Vbatに応じて、処理が異なる。電池電圧Vbatが充電抑制開始電圧以下の場合には、充電要請に応じた電流で充電を行う。対して、電池電圧Vbatが充電抑制開始電圧を超え充電停止電圧未満の場合には、充電要請よりも抑制した電流で充電を行う。また、電池電圧Vbatが充電停止電圧以上の場合には、蓄電池34への充電を行わせない。
【0034】
このときの抑制ゲインの変化の仕方としては、例えば線形変化が挙げられるが、これに限定されず、電池電圧Vbatが大きくなるに従い、電流の抑制を強めるように(電流Ibatが小さくなる)ように制御されればよい。特に、抑制ゲインは連続な値の変化をすることが好ましい。
【0035】
この抑制ゲインの動作(電流の抑制)がない場合、充電停止電圧で充電を停止しても、電池電圧の上昇はすぐには止まらないため、結果として蓄電池34の劣化を招く。そのため、充電停止電圧に対し前もった充電抑制開始電圧から充電を徐々に弱めることで、電池電圧が充電停止電圧未満で充電が停止できるようにしている。
【0036】
(蓄電池34の放電動作)
図5は、本発明の実施形態1に係る電力貯蔵システムの放電時における、蓄電池34の電圧と抑制ゲインとの関係を示す。蓄電池34の定格電圧に対し、所定の電池電圧変動を考慮した、放電抑制開始電圧(=Vlow)、放電停止電圧(=UV(UnderVolt):定格下限電圧)を定義する。放電抑制開始電圧は、充電抑制開始電圧よりも小さい値に定める。放電停止電圧は、放電抑制開始電圧よりも小さい値に定める。放電抑制開始電圧は、放電時における抑制ゲインを低くし始める電圧であり、放電停止電圧は、放電を停止させる電圧である。
【0037】
放電停止電圧未満の電池電圧Vbatでも放電を行ってしまうと、電池電圧Vbatが更に低下してしまい、電池の劣化を招く。蓄電池34の劣化を防ぐために、放電停止電圧でもって放電を停止する。
【0038】
例えば、放電抑制開始電圧は、定格電圧に対し-5%、放電停止電圧は定格電圧に対し-10%とする。放電抑制開始電圧および放電停止電圧の定格電圧に対する値は、これらの値に限定されず、任意の値であってもよい。また、係数をかけることに限定されず、オフセットを加味した値であってもよい。
【0039】
蓄電池34が放電する放電電流Ibatは、放電要請に応じた電流に対し、0から1の値をとる抑制ゲインをかけた値である。放電時における抑制ゲインは、電池電圧Vbatが放電抑制開始電圧までは1であり、蓄電池34は放電要請に応じた電流でもって放電を行うことができる。対して、電池電圧Vbatが放電抑制開始電圧未満になり、放電停止電圧以上の場合、抑制ゲインは0~1の値をとって、放電抑制開始電圧では抑制ゲインが1であり、放電停止電圧では抑制ゲインが0となるように変化する。抑制ゲインが電池電圧Vbatに応じて変化することで、放電電流Ibatが変化する。放電電流Ibatは、蓄電池34の定格電流に抑制ゲインをかけたものである。
【0040】
すなわち、制御部31が充放電要請部27から放電要請を受信すると、電池電圧Vbatに応じて、処理が異なる。電池電圧Vbatが放電抑制開始電圧以上の場合には、放電要請に応じた電流で放電を行う。対して、電池電圧Vbatが放電抑制開始電圧未満で放電停止電圧以上の場合には、放電要請よりも抑制した電流で放電を行う。また、電池電圧Vbatが放電停止電圧未満の場合には、蓄電池34からの放電を行わせない。
【0041】
このときの抑制ゲインの変化の仕方としては、例えば線形変化が挙げられるが、これに限定されず、電池電圧Vbatが小さくなるに従い、電流の抑制を強めるように(電流Ibatが小さくなる)ように制御されればよい。特に、抑制ゲインは連続な値の変化をすることが好ましい。
【0042】
この抑制ゲインの動作(電流の抑制)がない場合、放電停止電圧で放電を停止しても、電池電圧の低下はすぐには止まらないため、結果として蓄電池34の劣化を招く。そのため、放電停止電圧に対し前もった放電抑制開始電圧から放電を徐々に弱めることで、電池電圧が放電停止電圧以上で放電が停止できるようにしている。
【0043】
(蓄電池34の充放電における経時変化)
したがって、蓄電池34が充電している場合においては、電池電圧Vbatが充電抑制開始電圧を越すことで、抑制ゲインが徐々に小さくなっていき、蓄電池34を過充電することを防ぐ。対して、蓄電池34が放電している場合においては、電池電圧Vbatが放電抑制開始電圧未満になることで、抑制ゲインが徐々に小さくなっていき、蓄電池34を過放電することを防ぐ。
【0044】
図6は、本発明の実施形態1に係る電力貯蔵システムの充電時の動作例における、電圧と電流とSOCとの変化を示す。図6における電流Ibatに関しては、放電を正として示している。本願でのシミュレーションにおいては、充電停止電圧が635Vであり、放電停止電圧が475Vである。
【0045】
図6に示すように、充電を開始するまでは、電池電圧Vbatは、充電を開始することで電池電圧Vbatは母線電圧より大きくなっていく。時間が経過することで、電池電圧Vbatは、充電抑制開始電圧(本願では、625V)を超え、充電停止電圧(本願では、635V)に漸近していく。
【0046】
ここで、蓄電池34に対する電流Ibatに関しては、電池電圧Vbatが充電抑制開始電圧未満の場合、充電電流Ibatは、ほぼ一定値で充電を続けている。対して、電池電圧Vbatが充電停止電圧を越すと、抑制ゲインが小さくなることで、充電電流Ibatの絶対値が減少し、電池電圧Vbatが充電停止電圧近傍では充電電流Ibatが0に漸近する。
【0047】
蓄電池34のSOCに関しては、電池電圧Vbatが充電抑制開始電圧未満の場合は、SOCはほぼ線形で上昇していくが、充電抑制開始電圧を越すと、SOCの上昇する傾きが低下していき、最終的に傾きが0になり、充電が停止する。
【0048】
ここで、ステップ状に充放電を停止すると(抑制ゲインを1から0に急変化させると)、電池電圧・蓄電池の電流・母線の電圧が急変動し、直流系統の機器が急停止したりすることがある。また、電池電圧Vbatが充電停止電圧および放電停止電圧の近傍では、頻繁に充電および放電の状態が切替わることになり、ハンチングする原因を作ってしまう。
【0049】
実施形態1では、電池電圧Vbatに応じて、抑制ゲインを徐々に小さくするため、直流系統の電圧(母線の電圧)が急変化せず、直流系統の機器が停止せずに、直流系統の安定化の制御を行うことができる。また、抑制ゲインの調整によって、電池電圧Vbatの急変動を抑制し、充電停止電圧および放電停止電圧へのオーバーシュートを防ぐことができ、電池電圧Vbatが安定し易い。
【0050】
したがって、充電時において、実施形態1に係る制御を行うことで、蓄電池34の過充電を防ぎつつ、合わせて、母線電圧の急上昇を防ぎ、母線電圧が、直流系統に接続された機器の定格電圧を越すことを防げる。充電時の動作に関して示したが、充電時に限定されず放電時も同様である。すなわち、蓄電池34の過放電を防ぎつつ、合わせて、母線電圧の急低下を防ぎ、直流機器が定格電圧の範囲外に変化することを防げる。そのため、蓄電池34を長寿命化することができる。
【0051】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0052】
実施形態1では、充電抑制開始電圧または放電抑制開始電圧を閾値に、充放電電流Ibatの抑制を開始した。そのため、蓄電池34の放電停止電圧から充電停止電圧までの範囲全域において、十分な電流Ibatでもって蓄電池34を利活用することはできない。また、放電抑制開始電圧未満か、充電抑制開始電圧以上になったときに、充放電の抑制を開始するため、過剰に抑制することにもなり得てしまうこともある。
【0053】
(充放電電流Ibatによる抑制ゲインの調整)
そこで、実施形態2では、実施形態1に対し蓄電池34の放電停止電圧から充電停止電圧までの電圧範囲の全域において十分な電流Ibatでもって利活用する電力貯蔵システム30を示す。
【0054】
図7は、本発明の実施形態2に係る電力貯蔵システム30の充電時における、蓄電池の電池電圧Vbatと抑制ゲインとの関係を示す。図7に示すように、実施形態2では、充電要請または放電要請に応じた電流ごとに、充電停止電圧(または、放電停止電圧)を変えずに、充電抑制開始電圧(または、放電抑制開始電圧)を変化させる。すなわち、抑制ゲインの傾きを変化させる。
【0055】
充電要請または放電要請に応じた電流が大きいほど、蓄電池34の内部インピーダンスZによる電圧変化が大きくなるため、蓄電池34の電池電圧Vbatの変化も大きくなる。そのため、充放電電流Ibatが大きいほど、電池電圧Vbatが充電停止電圧よりもオーバーシュートし易い。オーバーシュートを防ぐために、充放電電流Ibatが大きいときは、より早く抑制ゲインを調整し始める。
【0056】
対して、充電要請または放電要請に応じた電流が小さいほど、蓄電池34の電池電圧の変化はなだらかであるため、電池電圧Vbatが充電停止電圧よりもオーバーシュートし辛い。そのため、充放電電流Ibatが小さいときは、より遅く抑制ゲインを調整し始められる。
【0057】
すなわち、充電要請に応じた電流が小さいほど、充電抑制開始電圧を大きい値に定めたとしても、電池電圧が充電停止電圧を超過することがない。また、放電要請に応じた電流が小さいほど、放電抑制開始電圧を小さい値に定めたとしても、電池電圧が放電停止電圧を下回ることがない。したがって、電池電圧が放電停止電圧から充電停止電圧までの電圧範囲外にならないため、蓄電池34が劣化することを防げ、長寿命化を実現することができる。また、十分な電流を充放電できる電圧範囲が広がるために、蓄電池34の利活用が促進される。
【0058】
また、充電要請または放電要請に応じた電流が小さい場合は、電池電圧が充電抑制開始電圧未満になるか放電抑制開始電圧以上になった場合でも、電流が小さいために電池電圧の変動が小さくなり、蓄電池34を劣化させる可能性が小さい。そのため、蓄電池34の放電停止電圧から充電停止電圧までの電圧範囲において、電流の抑制をし過ぎないようにすることができる。
【0059】
図8は、本発明の実施形態2に係る電力貯蔵システムの充電時の動作例における、蓄電池の電池電圧Vbatと電流Ibatとの変化を示す。灰色線・白色線・黒色線はそれぞれ、電池電圧変動による制御がなく充電停止電圧を超過しても充電を継続する場合、実施形態1に係る制御を行った場合、実施形態2に係る制御を行った場合、の時間に対する電池電圧と充電電流Ibatのグラフである。
【0060】
図8の灰色線では、他の2つの場合と異なり、電池電圧Vbatが大電圧になっており、蓄電池の充電停止電圧を超過していることがわかる。対して、図8の白色線および黒色線では、電池電圧Vbatが上昇しすぎることなく蓄電池の充電停止電圧未満に制御できていることがわかる。
【0061】
また、白色線よりも黒色線の方が、電池電圧Vbatは放電停止電圧から充電停止電圧までの電圧範囲の中でより高く、より蓄電池34を広い電圧範囲で利活用できることがわかる。さらに、図8において白色線と黒色線が解離する部分(図8での0.25~0.27程)があり、電池電圧Vbatに加え、電流Ibatを考慮することで、黒色線は白色線よりも、より蓄電池34を広い範囲で利活用できていることがわかる。充電の場合に関して説明したが、放電の場合に関しても同様の制御が可能であり、同様の効果を得られる。
【0062】
したがって、電池電圧Vbatに加え、充放電電流Ibatを考慮することで、過充電・過放電を防ぎつつ、蓄電池34の放電停止電圧から充電停止電圧までの電圧範囲の限界隅々まで十分な電流Ibatでもって利活用することができるようになる。
【0063】
〔実施形態3〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0064】
(内部インピーダンスによる抑制ゲインの調整)
実施形態3では、実施形態2と同様に、実施形態1に対し蓄電池34の放電停止電圧から充電停止電圧までの範囲全域において、十分な電流Ibatでもって蓄電池34を利活用する別の電力貯蔵システムを示す。
【0065】
図9は、本発明の実施形態3に係る電力貯蔵システムの蓄電池34のSOCと開放電圧Vsocとの関係を示す。各蓄電池34固有の特性表に基づき、SOCから、蓄電池34の開放電圧Vsocを求める。
【0066】
ここで、開放電圧Vsocを用いることで、蓄電池34の内部インピーダンスを次式で計算できる。
【0067】
Z=|(Vbat-Vsoc)/Ibat|
一般に、蓄電池の内部インピーダンスを算出する精度は悪いことが知られている。そのため、内部インピーダンスを用いて制御を行うことは好ましくない。しかしながら、実施形態3では、後述するように抑制ゲインを調整するために用いるだけであり、精度が悪くても、必要十分であるといえる。
【0068】
図10は、本発明の実施形態3に係る電力貯蔵システムの充電時における、蓄電池の電池電圧と抑制ゲインとの関係を示す。図10に示すように、実施形態3では、蓄電池34の内部インピーダンスZに応じて、充電停止電圧(または放電停止電圧)を変えずに、抑制ゲインの傾きを変化させる。すなわち、充電抑制開始電圧(または、放電抑制開始電圧)を変化させていることと等しい。
【0069】
同じ電流Ibatであっても、蓄電池34の内部インピーダンスZが大きいほど、電池電圧Vbatが大きくなり易い。そのため、内部インピーダンスZが大きいほど、電池電圧Vbatが充電停止電圧よりもオーバーシュートし易い。オーバーシュートを防ぐために、内部インピーダンスZが大きいときは、より早く抑制ゲインを調整し始める。
【0070】
対して、蓄電池34の内部インピーダンスZが小さいほど、電池電圧Vbatが大きくなり辛いため、電池電圧Vbatが充電停止電圧よりもオーバーシュートし辛い。そのため、内部インピーダンスZが小さいときは、より遅く抑制ゲインを調整し始められる。
【0071】
すなわち、蓄電池の内部インピーダンスが小さいほど、充電抑制開始電圧を大きい値に定めたとしても、電池電圧が充電停止電圧を超過することがない。また、蓄電池の内部インピーダンスが小さいほど、放電抑制開始電圧を小さい値に定めたとしても、電池電圧が放電停止電圧を下回ることがない。したがって、電池電圧が放電停止電圧から充電停止電圧までの電圧範囲外にならないため、蓄電池34が劣化することを防げ、長寿命化を実現することができる。また、十分な電流を充放電できる電圧範囲が広がるために、蓄電池34の利活用が促進される。
【0072】
また、内部インピーダンスが小さい場合は、電池電圧が充電抑制開始電圧未満になるか放電抑制開始電圧以上になった場合でも、内部インピーダンスが小さいために電池電圧の変動が小さくなり、蓄電池34を劣化させる可能性が小さい。そのため、蓄電池34の放電停止電圧から充電停止電圧までの電圧範囲において、電流の抑制をし過ぎないようにすることができる。
【0073】
図11は、本発明の実施形態3に係る蓄電池の内部インピーダンスが大きい場合での電力貯蔵システムの充電時の動作例における、蓄電池の電池電圧と電流との変化を示す。図12は、本発明の実施形態3に係る蓄電池の内部インピーダンスが小さい場合での電力貯蔵システムの充電時の動作例における、蓄電池の電池電圧と電流との変化を示す。灰色線・白色線・黒色線はそれぞれ、電池電圧変動による制御がなく充電停止電圧を超過しても充電を継続する場合、実施形態1に係る制御を行った場合、実施形態3に係る制御を行った場合、の時間に対する電池電圧と充電電流Ibatのグラフである。
【0074】
図11および図12の灰色線では、他の2つの場合と異なり、電池電圧Vbatが大電圧になっており、蓄電池の充電停止電圧を超過していることがわかる。対して、図11および図12の白色線および黒色線では、電池電圧Vbatが上昇しすぎることなく蓄電池の充電停止電圧未満に制御できていることがわかる。
【0075】
また、白色線よりも黒色線の方が、電池電圧Vbatは放電停止電圧から充電停止電圧までの電圧範囲の中でより高く、より蓄電池34を広い電圧範囲で利活用できることがわかる。さらに、図11および図12において白色線と黒色線が解離する部分(図11および図12での0.25~0.27程)があり、電池電圧Vbatに加え、内部インピーダンスZを考慮することで、黒色線は白色線よりも、より蓄電池34を広い範囲で利活用できていることがわかる。充電の場合に関して説明したが、放電の場合に関しても同様の制御が可能であり、同様の効果を得られる。
【0076】
したがって、電池電圧Vbatに加え、内部インピーダンスZを考慮することで、過充電・過放電を防ぎつつ、蓄電池34の放電停止電圧から充電停止電圧までの電圧範囲の限界隅々まで十分な電流Ibatでもって利活用することができるようになる。
【0077】
〔まとめ〕
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る電力貯蔵システムは、直流系統に対して電力の受給を行う電力貯蔵システムであって、前記直流系統は、直流母線と、前記電力貯蔵システムに対して所要の充電要請あるいは放電要請を行う充放電要請部と、を備えた直流系統であり、電力を貯蔵する蓄電池と、前記蓄電池の充放電を実行して、前記直流母線に電力の受給をする変換装置と、前記変換装置を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記充放電要請部から前記充電要請を受信すると、前記蓄電池の端子間電圧が、充電抑制開始電圧以下の場合に前記充電要請に応じた電流で、前記充電抑制開始電圧を超える場合に前記充電要請よりも抑制した電流で、前記蓄電池への充電を前記変換装置に行わせるとともに、前記充放電要請部から前記放電要請を受信すると、前記蓄電池の端子間電圧が、前記充電抑制開始電圧よりも小さい値に定められた放電抑制開始電圧以上の場合に前記放電要請に応じた電流で、前記放電抑制開始電圧未満の場合に前記放電要請よりも抑制した電流で、前記蓄電池の放電を前記変換装置に行わせる。
【0078】
上記の構成によれば、制御部は充放電要請部から充電要請または放電要請を受信することによって、充電又は放電を行い、蓄電池の端子間電圧に応じて、電流を抑制することができる。そのため、蓄電池の過充電および過放電を防ぐことができる。
【0079】
前記制御部は、前記充放電要請部から前記充電要請を受信すると、前記蓄電池の端子間電圧が、前記充電抑制開始電圧よりも大きい値に定められた充電停止電圧以上の場合に、前記蓄電池への充電を前記変換装置によって停止させるとともに、前記充放電要請部から前記放電要請を受信すると、前記蓄電池の端子間電圧が、前記放電抑制開始電圧よりも小さい値に定められた放電停止電圧以下の場合に、前記蓄電池の放電を前記変換装置によって停止させてもよい。
【0080】
上記の構成によれば、蓄電池の端子間電圧に応じて、充放電を停止することができる。そのため、蓄電池の放電停止電圧から充電停止電圧までの電圧範囲外にて、電流を流さないため、蓄電池の過充電および過放電を防ぐことができる。
【0081】
前記制御部は、前記蓄電池の端子間電圧が、前記充電抑制開始電圧から前記充電停止電圧にかけて、電圧が大きくなるに従い、電流の抑制を強めるとともに、前記放電抑制開始電圧から前記放電停止電圧にかけて、電圧が小さくなるに従い、電流の抑制を強めてもよい。
【0082】
上記の構成によれば、蓄電池の端子間電圧に応じて電流の抑制の程度を調整することができ、蓄電池の電池電圧が放電停止電圧から充電停止電圧までの電圧範囲外になることを防ぎやすくなる。
【0083】
前記蓄電池の充放電を前記変換装置に行わせる電流は、前記蓄電池の端子間電圧に対して連続した値にしてもよい。
【0084】
上記の構成によれば、母線の電圧が急激に変化することを防げ、母線に接続された機器の電圧が放電停止電圧から充電停止電圧までの電圧範囲外になることを防ぎやすくなる。
【0085】
前記充電抑制開始電圧は、前記充電要請に応じた電流が小さいほど、大きい値に定められるとともに、前記放電抑制開始電圧は、前記放電要請に応じた電流が小さいほど、小さい値に定めてもよい。
【0086】
上記の構成によれば、充電抑制開始電圧および放電抑制開始電圧を、充電要請および放電要請に応じた電流によって、変化させることで、蓄電池の放電停止電圧から充電停止電圧までの電圧範囲に対して広い範囲で電流を抑制せずに蓄電池を用いることができ、蓄電池の利活用が進む。
【0087】
前記充電抑制開始電圧は、前記蓄電池の内部インピーダンスが小さいほど、大きい値に定められるとともに、前記放電抑制開始電圧は、前記蓄電池の内部インピーダンスが小さいほど、小さい値に定めてもよい。
【0088】
上記の構成によれば、充電抑制開始電圧および放電抑制開始電圧を、蓄電池の内部インピーダンスに応じて変化させることで、蓄電池の放電停止電圧から充電停止電圧までの電圧範囲に対して広い範囲で電流を抑制せずに蓄電池を用いることができ、蓄電池の利活用が進む。
【0089】
前記母線に発電装置および/または直流負荷が接続されてもよい。
【0090】
上記の構成によれば、蓄電池に対して発電装置で充電できる。
【0091】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0092】
1 電力系統
10 交流系統
11 商用電源
12 トランス
13 AC-DCコンバータ
20 直流系統
21 第1DCサーキットブレーカ
22 母線(直流母線)
23 第1DC-DCコンバータ
24 発電装置
25 直流負荷
26 EV充電ステーション
27 充放電要請部
30 電力貯蔵システム
31 制御部
32 第2DC-DCコンバータ(変換装置)
33 第2DCサーキットブレーカ
34 蓄電池
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12