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特開2023-76197測距装置、路面認識方法、および推定装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023076197
(43)【公開日】2023-06-01
(54)【発明の名称】測距装置、路面認識方法、および推定装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 15/931 20200101AFI20230525BHJP
   G01S 15/10 20060101ALI20230525BHJP
   G01S 7/526 20060101ALI20230525BHJP
   G01S 13/931 20200101ALI20230525BHJP
   G01S 17/931 20200101ALI20230525BHJP
【FI】
G01S15/931
G01S15/10
G01S7/526 Z
G01S13/931
G01S17/931
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021189475
(22)【出願日】2021-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】深代 優輝
(72)【発明者】
【氏名】永井 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】水谷 厚司
【テーマコード(参考)】
5J070
5J083
5J084
【Fターム(参考)】
5J070AB24
5J070AC02
5J070AC03
5J070AC11
5J070AE07
5J070AF03
5J070AH19
5J070BF22
5J083AA02
5J083AB12
5J083AB13
5J083AB20
5J083AD05
5J083AE06
5J083AE10
5J083AF05
5J083BA01
5J083BE11
5J083BE12
5J083BE49
5J083CA01
5J084AA05
5J084AA10
5J084AA13
5J084AB16
5J084AC02
5J084AD01
5J084CA32
5J084CA65
5J084EA22
(57)【要約】
【課題】路面の下り段差の高さを検知できる技術を提供する。
【解決手段】測距装置100は、射出波を射出する射出部11と、射出波が物標に反射して生じる反射波を受けとる受取部12と、を有し、反射波を用いて、射出部の前後方向における予め定められた検知範囲に存在する物体までの距離を測定することができるセンサ部10と、センサ部が測定した距離を用いて、路面における下り段差の高さである段差高を算出する算出部20と、を備える。算出部は、第1路面からの反射波による第1反射区間と、前後方向において第1反射区間よりも測距装置から遠い路面である第2路面からの反射波による第2反射区間と、の間に無反射区間が存在する場合に、無反射区間を、反射波の受信強度から検知し、センサ部と無反射区間との位置関係と、第1反射区間の終了点から第2反射区間の開始点までの直線距離である第1距離と、に基づき、段差高を算出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測距装置(100)であって、
射出波を射出する射出部(11)と、前記射出波が物標に反射して生じる反射波を受けとる受取部(12)と、を有し、前記反射波を用いて、前記射出部の前後方向における予め定められた検知範囲に存在する物体までの距離を測定することができるセンサ部(10)と、
前記センサ部が測定した距離を用いて、路面における下り段差の高さである段差高を算出する算出部(20)と、を備え、
前記算出部は、
第1路面からの反射波による第1反射区間と、前記前後方向において前記第1反射区間よりも前記測距装置から遠い路面である第2路面からの反射波による第2反射区間と、の間に無反射区間が存在する場合に、前記無反射区間を、前記反射波の受信強度から検知し、
前記センサ部と前記無反射区間との位置関係と、前記第1反射区間の終了点から前記第2反射区間の開始点までの直線距離である第1距離と、に基づき、前記段差高を算出する、測距装置。
【請求項2】
請求項1に記載の測距装置であって、
前記算出部は、前記受信強度を縦軸とし前記センサ部からの距離を横軸としたグラフに表した際に、
前記グラフにおける前記受信強度が閾値以上に上昇する位置を前記第1反射区間の開始点として検知し、前記第1反射区間の前記開始点よりも前記センサ部から遠い位置であって前記グラフにおける前記受信強度が最初に前記閾値以下に下降する位置を前記第1反射区間の終了点として検知し、
前記グラフにおける前記第1反射区間の終了点よりも前記センサ部から遠い位置であって、前記受信強度が最初に前記閾値以上に上昇する位置を前記第2反射区間の開始点として検知し、前記第2反射区間の前記開始点よりも前記センサ部から遠い位置であって前記グラフにおける前記受信強度が最初に前記閾値以下に下降する位置を前記第2反射区間の終了点として検知する、測距装置。
【請求項3】
請求項2に記載の測距装置であって、
前記算出部は、予め取得した前記反射波の幅を用いて、前記センサ部が測定した距離を補正する、測距装置。
【請求項4】
請求項1に記載の測距装置であって、
前記算出部は、前記受信強度を縦軸とし前記センサ部からの距離を横軸としたグラフに表した際に、
前記グラフにおける第1極大値の前記横軸上の位置と、前記第1極大値よりも前記センサ部から遠い距離に位置し前記第1極大値と隣接する第2極大値の前記横軸上の位置と、の差を求める工程を1回以上行い、最初に前記差が予め定めた閾値距離以上となる第1極大値と第2極大値のうち、前記第1極大値の位置を、前記第1反射区間の終了点として検知し、前記第2極大値の位置を前記第2反射区間の開始点として検知する、測距装置。
【請求項5】
請求項1に記載の測距装置であって、
前記算出部は、前記受信強度と前記無反射区間との関係を教師有り機械学習によって学習したモデルを用いて前記第1反射区間の開始点と終了点および前記第2反射区間の開始点と終了点を検知する、測距装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の測距装置であって、
前記算出部は、前記センサ部が測定した前記第1反射区間の終了点までの距離と、前記センサ部が測定した前記第2反射区間の開始点までの距離との差を、前記第1距離として算出する、測距装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の測距装置であって、
前記算出部は、気温と湿度との少なくとも一方の測定値を用いて、前記センサ部が測定した距離を補正する、測距装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の測距装置であって、
前記算出部は、前記センサ部から前記第1反射区間の終了点までの直線距離と、前記センサ部から前記第2反射区間の開始点までの直線距離と、前記第1反射区間の距離とのうち1つ以上と、前記第1距離と、前記路面から前記センサ部までの高さとを用いて、前記段差高を算出する、測距装置。
【請求項9】
請求項8に記載の測距装置であって、
前記センサ部は、前記センサ部の真下の路面までの距離を測定でき、
前記算出部は、前記センサ部から前記第1反射区間の開始点までの距離を、前記路面から前記センサ部までの高さに定める、測距装置。
【請求項10】
請求項8に記載の測距装置であって、更に、
前記センサ部と同じ機能を奏することができ、前記センサ部よりも上に設けられたセンサ部である追加センサ部を備え、
前記算出部は、前記センサ部が測定した距離と前記追加センサ部が測定した距離との差を用いて、前記路面から前記センサ部までの高さを算出する、測距装置。
【請求項11】
請求項1から請求項10までのいずれか一項に記載の測距装置であって、
前記射出部は、前記射出波として音波もしくは電波を射出する、測距装置。
【請求項12】
路面における下り段差の高さである段差高を算出する路面認識方法であって、
射出波を射出する射出部と前記射出波が物標に反射して生じる反射波を受けとる受取部とを有し、前記反射波を用いて、前記射出部の前後方向における予め定められた検知範囲に存在する物体までの距離を測定することができるセンサが測定した距離および前記反射波の受信強度を取得する工程と、
第1路面からの反射波による第1反射区間と、前記前後方向において前記第1反射区間よりも前記測距装置から遠い路面である第2路面からの反射波による第2反射区間と、の間に無反射区間が存在する場合に、前記無反射区間を、前記反射波の受信強度から検知する工程と、
前記センサ部と前記無反射区間との位置関係と、前記第1反射区間の終了点から前記第2反射区間の開始点までの直線距離である第1距離と、に基づき、前記段差高を算出する工程と、を含む、路面認識方法。
【請求項13】
路面における下り段差の高さである段差高を推定する推定装置(200)であって、
射出波を射出する射出部と前記射出波が物標に反射して生じる反射波を受けとる受取部とを有し、前記反射波を用いて、前記射出部の前後方向における予め定められた検知範囲に存在する物体までの距離を測定することができるセンサが測定した距離を用いて、前記段差高を算出する算出部と、
前記段差高を出力する出力部(30)と、を備え、
前記算出部は、
第1路面からの反射波による第1反射区間と、前記前後方向において前記第1反射区間よりも前記測距装置から遠い路面である第2路面からの反射波による第2反射区間と、の間に無反射区間が存在する場合に、前記無反射区間を、前記反射波の受信強度から検知し、
前記センサ部と前記無反射区間との位置関係と、前記第1反射区間の終了点から前記第2反射区間の開始点までの直線距離である第1距離と、に基づき、前記段差高を算出する、推定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、測距装置、路面認識方法、および推定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
測距装置として、超音波やレーザ等の送信波を発し、路面によって反射された反射波を受信し、その受信波に基づいて、路面を検知するものが知られている。特許文献1には、受信波の形態を、過去の受信波の形態と比較して欠落部分を検知することで、路面に凹部を存在することを判定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-132511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、路面の凹部の存在を検知できるものの、路面の凹部の高さは検知できない。そのため、路面の凹部の高さを検知できる技術が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一形態によれば、測距装置(100)が提供される。測距装置は、波を射出する射出部(11)と、前記波が物標に反射して生じる反射波を受けとる受取部(12)と、を有し、前記反射波を用いて、前記射出部の前後方向における予め定められた検知範囲に存在する物体までの距離を測定することができるセンサ部(10)と、前記センサ部が測定した距離を用いて、路面における下り段差の高さである段差高を算出する算出部(20)と、を備える。前記算出部は、第1路面からの反射波による第1反射区間と、前記前後方向において前記第1反射区間よりも前記測距装置から遠い路面である第2路面からの反射波による第2反射区間と、の間に無反射区間が存在する場合に、前記無反射区間を、前記反射波の受信強度から検知し、前記センサ部と前記無反射区間との位置関係と、前記第1反射区間の終了点から前記第2反射区間の開始点までの直線距離である第1距離と、に基づき、前記段差高を算出する。
【0006】
この形態の測距装置によれば、センサ部と無反射区間との位置関係と、第1距離と、に基づき、段差高を算出できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】測距装置の構成の概要を示す説明図である。
図2】下り段差の一例を示す説明図である。
図3】段差高算出処理の一例を示したフローチャートである。
図4】距離と受信強度との関係を示すグラフである。
図5】第2実施形態における無反射区間を示す説明図である。
図6】第3実施形態における無反射区間を示す説明図である。
図7】第4実施形態における距離と受信強度との関係を示すグラフである。
図8】第5実施形態における下り段差の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.第1実施形態:
図1に示すように、測距装置100は、センサ部10と、算出部20と、出力部30と、を備える。測距装置100は、周囲の物体までの距離を検出する。測距装置100は、例えば、車両に搭載されるソナーである。測距装置100として、ミリ波レーダやLiDAR(Light Detection and Ranging)、光の飛行時間を利用して三次元位置を測定可能なTOFカメラ(TOF:Time Of Flight)を採用できる。
【0009】
センサ部10は、射出波を射出する射出部11と、射出波が物標に反射して生じる様々な反射波を受けとる受取部12と、を有する。センサ部10は、受取部12が受け取る反射波を用いて、射出部11の前後方向における予め定められた検知範囲に存在する物体までの距離を測定することができる。射出部11の前後方向とは、測距装置100に基づいて定められる方向である。本実施形態において、射出部11は、射出波として音波を射出する。射出部11は、電波や光波を射出してもよい。
【0010】
算出部20は、センサ部10が測定した距離を用いて、路面における下り段差の高さである段差高を算出する。図2に示すように、「下り段差」とは、路面の延伸方向において、第1路面301と、第1路面301よりも測距装置100から遠い第2路面302との間に存在する段差303であって、第1路面301から下降する段差303である。本開示において、第1路面301と第2路面302との間に存在する凹部も下り段差に含まれる。以下では、図2に示す路面の形状を例として、算出部20が段差高htを算出する方法を説明する。算出部20が段差高htを算出する詳細については後述する。
【0011】
出力部30(図1参照)は、算出部20が算出した段差高を出力する。出力部30は、例えば、測距装置100を搭載する車両に出力する。算出部20と出力部30とを併せて、推定装置200ともいう。
【0012】
図3に示す段差高算出処理は、算出部20が段差高htを算出する処理である。ステップS100において、算出部20は、反射波の受信強度を取得する。より具体的には、算出部20は、ある時点におけるセンサ部10が受取部12によって取得した路面に反射して生じる各反射波の受信強度を取得する。
【0013】
ステップS110において、算出部20は、ステップS100で取得した受信強度から無反射区間を検知する。より具体的には、第1路面301からの反射波による第1反射区間と、第2路面302からの反射波による第2反射区間と、の間に存在する無反射区間が存在する場合に、無反射区間を、反射波の受信強度から検知する。本実施形態において、「無反射区間」とは、受信強度が予め定めた値より低い位置が連続する区間である。無反射区間は、段差303によって、センサ部10から射出波が届かない路面の区間である。なお、無反射区間が検知されなかった場合、算出部20は、段差高算出処理を終了してもよい。
【0014】
図4に示すグラフの縦軸は受取部12が取得した反射波の受信強度を示している。横軸は、センサ部10からの距離を示している。本実施形態において、算出部20は、受信強度が0である区間を無反射区間として検出する。図4における距離d1から距離d2の区間が第1反射区間A1であり、距離d3から距離d4の区間が第2反射区間A2である。第1反射区間A1と第2反射区間A2との間に存在する区間が無反射区間A3である。なお、本実施形態において、無反射区間A3における受信強度は0であるが、これに限らず、無反射区間A3における受信強度が0より大きくてもよい。
【0015】
また、本実施形態において、第1反射区間A1の開始点S1(図2参照)はセンサ部10から距離d1の位置であり、第1反射区間A1の終了点E1(図2参照)はセンサ部10から距離d2の位置である。また、第2反射区間A2の開始点S2(図2参照)はセンサ部10から距離d3の位置であり、第2反射区間A2の終了点E2(図2参照)はセンサ部10から距離d4の位置である。開始点S1、S2および終了点E1、E2は、3次元の座標を示す点である。なお、開始点S1、S2および終了点E1、E2は射出部11の前後方向において同一直線状に位置する。
【0016】
ステップS120(図3参照)において、算出部20は、第1反射区間A1の終了点E1から第2反射区間A2の開始点S2までの直線距離である第1距離Ln(図2参照)を推定する。本実施形態において、算出部20は、センサ部10が測定した終了点E1までの直線距離Ru(図2参照)と、センサ部10が測定した開始点S2までの直線距離Rl(図2参照)との差を、第1距離Lnとして算出する。すなわち、算出部20は、距離d3から距離d2を減算して求められる距離を第1距離Lnとして算出する。
【0017】
図2において、説明の便宜上、測距装置100と第2反射区間A2の終了点E2とを結ぶ二点鎖線で表される直線を上方向にずらして記載しているが、実際は、測距装置100と第1反射区間A1の終了点E1とを結ぶ一点鎖線で表される直線および終了点E1と第2反射区間A2の開始点S2とを結ぶ実線で表される直線と部分的に重なっている。
【0018】
ステップS130(図3参照)において、算出部20は、ステップS110で検出した無反射区間A3の位置関係と、ステップS120で推定した第1距離Lnとに基づき、段差高htを算出する。より具体的には、算出部20は、直線距離Ruと、直線距離Rlと、第1反射区間A1の距離である区間距離Lst(図2参照)と、のうちの1つ以上と、第1距離Lnと直線距離hsとを用いて、段差高htを算出する。本実施形態において、算出部20は、次の式(1)を用いて段差高htを算出する。
【0019】
ht=Ln×(hs/Ru)…(1)
ここでhsは第1路面301から測距装置100までの高さである。本実施形態において、算出部20は、予め測定した路面からセンサ部10までの距離を記憶している。すなわち、本実施形態において、算出部20は、直線距離hsと直線距離Ruとの比と、段差高htと第1距離Lnとの比とが同じであるとして、段差高htを算出する。
【0020】
以上で説明した本実施形態の測距装置100によれば、受信強度から無反射区間A3を検出する。算出部20は、検出した無反射区間A3とセンサ部10との位置関係と、第1距離Lnと、に基づき、段差高htを算出する。そのため、下り段差の段差高htを算出できる。
【0021】
また、本実施形態において、算出部20は、センサ部10が測定した終了点E1までの直線距離Ruを距離d2とし、センサ部10が測定した開始点S2までの直線距離Rlを距離d3として、第1距離Lnを算出している。そのため、算出部20は、他のセンサを用いることなく推定した第1距離Lnを用いて段差高htを算出できる。
【0022】
B.第2実施形態:
図5に示すように、第2実施形態は、算出部20が、受信強度が閾値以上の区間を第1反射区間A1bおよび第2反射区間A2bとして検知する点が、第1実施形態と異なる。第2実施形態の測距装置100の構成は、第1実施形態の測距装置100の構成と同一であるため、測距装置100の構成の説明は省略する。
【0023】
本実施形態において、閾値は、測距装置100からの距離に応じて定められる値である。より具体的には、算出部20は、予め定められた関数Fthを用いて、閾値を定める。関数Fthは、距離が遠くなるほど閾値が小さくなる。算出部20は、受信強度が閾値以上に上昇する位置であるセンサ部10から距離d1bの位置を第1反射区間A1bの開始点として検知し、第1反射区間A1bの開始点よりも遠い位置であって受信強度が最初に閾値以下に下降する位置であるセンサ部10から距離d2bの位置を第1反射区間A1の終了点として検知する。また、算出部20は、第1反射区間A1bの終了点よりも遠い位置であって、受信強度が最初に閾値以上に上昇する位置であるセンサ部10から距離d3bの位置を第2反射区間A2bの開始点として検知し、第2反射区間A2bの開始点よりも遠い位置であって受信強度が最初に閾値以下に下降する位置であるセンサ部10から距離d4bの位置を第2反射区間A2の終了点として検知する。
【0024】
以上で説明した第2実施形態の測距装置100によれば、算出部20は、受信強度が閾値以上の区間を第1反射区間A1bおよび第2反射区間A2bとして検知できる。すなわち、受信強度が閾値以下の区間を無反射区間A3bとして検知できる。
【0025】
C.第3実施形態:
図6に示すように、第3実施形態は、算出部20が、受信強度と距離との関係を示したグラフにおける極大値P1~P9に基づいて無反射区間A3cを検知する点が、第1実施形態と異なる。第3実施形態の測距装置100の構成は、第1実施形態の測距装置100の構成と同一であるため、測距装置100の構成の説明は省略する。
【0026】
算出部20は、第1極大値の横軸上の位置である距離の値と、第1極大値よりもセンサ部10から遠い距離に位置し、第1極大値と隣接する第2極大値の横軸上の位置である距離の値と、の差を求める工程を1回以上行い、最初にその差が予め定めた閾値距離以上となる第1極大値と第2極大値とのうち、第1極大値の位置を第1反射区間A1cの終了点として検知し、第2極大値の位置を第2反射区間A2cの開始点として検知する。「閾値距離」は、検知したい下り段差の段差高htや無反射区間A3cの区間の長さに応じて定められる距離である。本実施形態において、算出部20は、予め定められた関数Fthを用いて定められる閾値以上の極大値に基づいて、無反射区間A3を検知する。すなわち、算出部20は、極大値P1~P9に基づいて、無反射区間A3を検知する。
【0027】
より具体的には、算出部20は、まず、極大値P1の距離d1cと極大値P2の距離d1c2との差を求める。その差が閾値距離以上か否かを判定する。極大値P2と極大値P3、極大値P3と極大値P4、極大値P4と極大値P5についても繰り返し各距離の差を求め、その差が閾値距離以上か否かを判定する。算出部20は、極大値P4の距離d2cと極大値P5の距離d3cとの差が、最初に閾値距離以上となるため、極大値P4の位置を第1反射区間A1cの終了点として検知し、極大値P5の位置を第2反射区間A2cの開始点として検知する。すなわち、算出部20は、極大値P4の位置を無反射区間A3cの開始点として検知し、極大値P5の位置を無反射区間A3cの終了点として検知する。本実施形態において、算出部20は、極大値P1の位置であるセンサ部10から距離d1cの位置を第1反射区間A1cの開始点として検知し、極大値P9の位置であるセンサ部10から距離d4cの位置を第2反射区間A2cの終了点として検知する。
【0028】
以上で説明した第3実施形態の測距装置100によれば、受信強度と距離との関係を示したグラフにおける極大値P1~P9に基づいて無反射区間A3cを検知するため、隣接する極大値との距離が閾値距離以上となる区間を無反射区間A3として検知できる。
【0029】
D.第4実施形態:
第4実施形態は、算出部20が、センサ部10の誤検知を判定する点が、第1実施形態と異なる。第4実施形態の測距装置100の構成は、第1実施形態の測距装置100の構成と同一であるため、測距装置100の構成の説明は省略する。
【0030】
図7に示すグラフの縦軸は受取部12が取得した反射波の受信強度を示している。横軸は、センサ部10からの距離を示している。図7に示すように、第1反射区間A1において、距離d1xから距離d1yの無反射区間A4は、受信強度が0である。図7は、図2に示す路面の形状を測距した場合であるため、無反射区間A4は、下り段差に起因しない無反射区間である。
【0031】
算出部20は、センサ部10の移動前後の反射波の受信強度を比較することでセンサ部10の誤検知を判定する。より具体的には、算出部20は、センサ部10の移動前後の反射波の受信強度に基づいて検出した無反射区間A4の開始点の距離の変化量と、センサ部10の移動量との差が、予め定められた値以上である場合に、センサ部10の誤検知であると判定する。センサ部10の誤検知により検出された下り段差に起因しない無反射区間A4は、センサ部10の移動により発生しなくなるため、センサ部10の移動前後の反射波の受信強度を比較することで、下り段差に起因しない無反射区間A4であるか否かを判定できる。
【0032】
以上で説明した第4実施形態の測距装置100によれば、センサ部10の移動前後の反射波の受信強度を比較することでセンサ部10の誤検知を判定できる。
【0033】
E.第5実施形態:
第5実施形態は、算出部20が下り段差か否かを判定する点が、第1実施形態と異なる。第5実施形態の測距装置100の構成は、第1実施形態の測距装置100の構成と同一であるため、測距装置100の構成の説明は省略する。
【0034】
図8に示すように、算出部20は、第1路面301と第2路面302との間に凹部304がある場合、センサ部10と凹部304との位置関係における予め定められた条件を満たす場合に、凹部304が下り段差303であると判定する。予め定められた条件は、例えば、センサ部10から第1路面301に接する凹部304の上端Ptを通る凹部304の底面の位置Pxまでの直線距離Rlが、センサ部10から第2路面302に接する凹部304の上端Pt2までの直線距離xuより短く、かつ、直線距離Rlが、センサ部10から上端Pt2に対向する凹部304の下端Pbまでの直線距離xlより短いことである。
【0035】
以上で説明した第5実施形態の測距装置100によれば、算出部20は、予め定められた条件を満たす場合に凹部304が下り段差303であると判定する。そのため、極端に狭くて深い凹部304を段差高htを算出する対象から除外できる。
【0036】
F.他の実施形態:
(F1)上述した実施形態において、測距装置100は、センサ部10と算出部20と出力部30とを備える。この代わりに、測距装置100は、センサ部10と算出部20のみを備える構成でもよい。
【0037】
(F2)上述した実施形態において、センサ部10は、指向性を有するセンサでもよい。無指向のセンサよりも、等距離円状に存在する路面からの反射波を抑制できるため、より無反射区間を精度よく検知できる。また、センサ部10は、MEMS(Micro Electro Mechanical System)デバイスを複数並べたフェーズドアレイでもよい。センサ部10は、例えば、射出部11および受取部12が一体となったPMUT(Piezoelectric Micromachined Ultrasonic Transducers)を有していてもよく、受取部12としてマイクアレイを有していてもよい。
【0038】
(F3)上述した実施形態において、算出部20は、センサ部10が測距した第1距離Lnと、直線距離Ruや直線距離hs等に基づいて、段差高htを算出している。これに限らず、算出部20は、第1距離Lnと他のセンサが測距した直線距離Ruや直線距離hs等に基づいて段差高htを算出してもよい。また、算出部20は、センサ部10が測距した距離d3から距離d2を減算して求められる距離d1を第1距離Lnとして算出しているが、他のセンサが測距した各距離を用いて第1距離Lnを求めてもよい。
【0039】
(F4)上述した実施形態において、算出部20は、気温と湿度との少なくとも一方の測定値を用いて、センサ部10が測定した距離を補正してもよい。より具体的には、算出部20は、空気による吸収によって生じる、音波の伝搬に伴う減衰を補正してもよい。音波の伝搬に伴う減衰は、気温が高くなるほど大きくなる。また、音波の伝搬に伴う減衰は、湿度が高くなるほど大きくなる。この形態によれば、算出部20は、第1距離Lnを精度良く推定できるため、段差高htを精度良く算出部20できる。算出部20は、例えば、受信強度が次の式(2)に比例することに基づき、受信強度を補正する。
【0040】
T∝exp(-αx)…(2)
ここでαは音の吸収係数であり、xはセンサ部10が測定した距離である。なお、算出部20は、射出部11が音波もしくは電波を射出する場合に、補正を行うことが好ましい。
【0041】
(F5)上述した実施形態において、算出部20は、受信強度と無反射区間A3との関係を教師有り機械学習によって学習したモデルを用いて無反射区間A3を検知してもよい。より具体的には、算出部20は、教師有り機械学習によって学習したモデルを用いて、測距装置100からの各距離における位置が第1反射区間A1もしくは第2反射区間A2に含まれるか否かや、第1反射区間A1の開始点S1および終了点E1や第2反射区間A2の開始点S1および終了点E1を出力できる。教師有り機械学習として、例えばSVM(Support Vector Machine)やDNN(Deep Neural Network)、ランダムフォレストを用いることができる。
【0042】
(F6)上述した実施形態において、算出部20は、予め測定した路面からセンサ部10までの距離を記憶している。この代わりに、算出部20は、センサ部10から第1反射区間A1の開始点S1までの直線距離hsを、路面からセンサ部10までの高さに定めていてもよい。この場合、センサ部10は、センサ部10の真下の路面までの距離が測定できることが好ましい。「真下」とはセンサ部10から路面に向かって垂直±5°に下ろした位置である。これにより、他のセンサを用いることなく取得した直線距離hsを用いて段差高htを算出できる。また。算出部20は、センサ部10が測定した距離と、センサ部10と同じ機能を奏することができ、センサ部10よりも上に設けられたである追加センサ部が測定した距離との差を用いて、路面からセンサ部10までの高さを算出してもよい。この場合、追加センサ部は、測距装置100に備えられていてもよく、外部のセンサ装置であってもよい。算出部20は、例えば次の式(3)を用いて、路面からセンサ部10までの高さを算出する。
【0043】
hs=Ru×(Rud-Ru)/D…(3)
ここでRudは追加センサ部から終了点E1までの直線距離であり、Dはセンサ部10と追加センサとの垂直方向における距離である。
【0044】
(F7)上述した実施形態において、算出部20は、三平方の定理や、三角測量や三辺測量の原理に基づき、段差高htを算出してもよい。また、算出部20は、測距装置100と無反射区間A3との位置関係と、第1距離Lnとの関係を教師有り機械学習によって学習したモデルを用いて、段差高htを算出してもよい。
【0045】
(F8)上述した第1実施形態および第2実施形態において、算出部20は、予め取得した射出部11が射出する単一の射出波による反射波の幅を用いて、センサ部10が測定した距離を補正してもよい。より具体的には、算出部20は、射出部11が射出する単一波の反射波の立ち上がりから立ち下がりの幅を距離に変換した値で補正する。このような態様とすれば、第1距離Lnをより精度良く算出できる。算出部20は、距離d2から反射波の幅を減算することで、直線距離Ruを補正できる。すなわち、算出部20は、例えば、次の式(4)を用いて第1距離Lnを推定できる。
【0046】
Ln=d3-d2+w1…(4)
ここでw1は反射波の幅である。
【0047】
(F9)上述した第2実施形態において、算出部20は、閾値として、測距装置100からの距離に応じて定められる値を用いている。これに限らず、算出部20は、測距装置100からの距離にかかわらず一定の閾値を用いてもよい。
【0048】
(F10)上述した第2実施形態において、算出部20は、受信強度が予め定められた範囲の極大値P1に基づいて、無反射区間A3cを検知してもよい。すなわち、算出部20は、第1閾値以上であって第2閾値以下の極大値に基づいて、無反射区間A3cを検知してもよい。第2閾値は第1閾値よりも大きい。これにより、路面上に障害物が存在する場合であっても、無反射区間A3cを検知できる。
【0049】
(F11)上述した第3実施形態において、算出部20は、閾値以上の極大値P1~P9に基づいて、無反射区間A3cを検知している。これに限らず、算出部20は、受信強度と距離との関係を示したグラフにおける全ての極大値に基づいて、無反射区間A3cを検知してもよい。また、算出部20は、受信強度が予め定められた範囲の極大値P1に基づいて、無反射区間A3cを検知してもよい。すなわち、算出部20は、第1閾値以上であって第2閾値以下の極大値に基づいて、無反射区間A3cを検知してもよい。第2閾値は第1閾値よりも大きい。これにより、路面上に障害物が存在する場合であっても、無反射区間A3cを検知できる。
【0050】
(F12)上述した第3実施形態において、算出部20は、受信強度と距離との関係を示したグラフを距離で微分したグラフにおける閾値上の極大値に基づいて、無反射区間A3cを検知してもよい。
【0051】
(F13)上述した第3実施形態において、算出部20は、受信強度と距離との関係を示したグラフを距離で微分したグラフの極大値に基づいて、無反射区間A3cを検知している。この代わりに、算出部20は、受信強度と距離との関係を示したグラフにおける関数Fthとの交点に基づいて、無反射区間A3cを検知してもよい。また、受信強度と距離との関係を示したグラフを距離で微分したグラフにおける、予め定められた閾値との交点に基づいて、無反射区間A3cを検知してもよい。
【0052】
(F14)上述した第4実施形態において、算出部20は、センサ部10の移動前後の反射波の受信強度を比較することでセンサ部10の誤検知を判定している。この代わりに、算出部20は、複数のセンサ部10の反射波の受信強度を比較することで、センサ部10の誤検知を判定してもよい。
【0053】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述した課題を解決するために、あるいは上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜削除することが可能である。
【符号の説明】
【0054】
10…センサ部、11…射出部、12…受取部、20…算出部、30…出力部、100…測距装置、200…推定装置、301…第1路面、302…第2路面、303…段差、304…凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8