(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023076201
(43)【公開日】2023-06-01
(54)【発明の名称】表示灯
(51)【国際特許分類】
F21L 4/00 20060101AFI20230525BHJP
F21V 7/00 20060101ALI20230525BHJP
F21V 7/09 20060101ALI20230525BHJP
F21V 7/10 20060101ALI20230525BHJP
F21V 5/04 20060101ALI20230525BHJP
F21V 5/00 20180101ALI20230525BHJP
F21V 3/02 20060101ALI20230525BHJP
F21Y 107/40 20160101ALN20230525BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20230525BHJP
F21Y 105/10 20160101ALN20230525BHJP
F21Y 105/00 20160101ALN20230525BHJP
【FI】
F21L4/00 416
F21V7/00 510
F21V7/00 530
F21V7/09 500
F21V7/10 111
F21V5/04 650
F21V5/04 500
F21V5/00 320
F21V3/02 400
F21Y107:40
F21Y115:10
F21Y105:10
F21Y105:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021189481
(22)【出願日】2021-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】517080441
【氏名又は名称】株式会社CTNB
(71)【出願人】
【識別番号】521511841
【氏名又は名称】湊工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100132067
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 喜雅
(72)【発明者】
【氏名】我妻 透
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 敦
(72)【発明者】
【氏名】坂口 和則
(57)【要約】
【課題】小型軽量で視認性に優れる表示灯を得る。
【解決手段】外部に光を投射する投光部(11)を有する表示灯(10)であって、投光部は、光源を含む発光部(30)と、発光部を覆い透光性を有するカバー(40)とを備え、発光部は、棒状の表示灯の周方向に位置を異ならせて配置した複数の面発光ユニット(31)を有している。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部に光を投射する投光部を有する表示灯であって、
前記投光部は、光源を含む発光部と、前記発光部を覆い透光性を有するカバーと、を備え、
前記発光部は、棒状の前記表示灯の周方向に位置を異ならせて配置した複数の面発光ユニットを有していることを特徴とする表示灯。
【請求項2】
前記発光部は、平面状の発光面を有する3つ以上の前記面発光ユニットを周方向に等角度間隔で配置して構成されることを特徴とする、請求項1に記載の表示灯。
【請求項3】
複数の前記面発光ユニットの境界に沿って配置された反射部材を有し、
前記反射部材は、前記面発光ユニットから出た光を反射する壁部と、前記面発光ユニットから出た光を通過させる通過部とを、前記表示灯の軸方向に沿って交互に有していることを特徴とする、請求項1又は2に記載の表示灯。
【請求項4】
それぞれの前記面発光ユニットの両側で、前記壁部と前記通過部が前記表示灯の軸方向で互い違いに配置されていることを特徴とする、請求項3に記載の表示灯。
【請求項5】
前記カバーは、配光特性の異なる第1の配光制御構造と第2の配光制御構造を前記表示灯の軸方向で交互に有していることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の表示灯。
【請求項6】
前記第1の配光制御構造は、前記カバーの内面に形成されて周方向に連続する環状凹面を有し、前記第2の配光制御構造は、前記表示灯の軸方向に延びる複数の山部と複数の谷部を周方向に交互に配置した連続凹凸部を有することを特徴とする、請求項5に記載の表示灯。
【請求項7】
前記カバーの外面は平滑な円筒形状であることを特徴とする、請求項6に記載の表示灯。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示灯に関する。
【背景技術】
【0002】
離れた位置に向けて光によって状況を報知する棒状の表示灯が広く用いられている。この種の表示灯は、工事現場や事故現場などで多用されており、安全性を確保するために、視認可能な最低限の距離などの条件が定められている場合が多い。一方で、表示灯は小型軽量であることが求められており、光源の発光強度や消費電力には制約がある。そのため、小型軽量な構成で消費電力が少なく、遠方からの視認性に優れる表示灯が望まれている。
【0003】
既存の表示灯として、特許文献1や特許文献2が知られている。特許文献1では、表示灯の光源としてドーム型のLED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)を複数個用いており、表示灯の中心軸から放射状に3方向へ向けてLEDを配置し、この3方向へのLEDを軸方向へ多段に設置している。
【0004】
特許文献2では、表示灯の軸方向での位置が異なる複数のLEDを、それぞれの突出方向(光軸の向き)を互いにずらして配置している。さらに、表示灯の外面を構成するカバーには、各LEDの延長上に凸面状の集光レンズを設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8-119035号公報
【特許文献2】実用新案登録第3151437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1、2におけるLEDの分散的な配置はいずれも、棒状の表示灯から周方向の広い範囲へできるだけ漏れなく配光することを狙ったものである。しかし、特許文献1、2の表示灯は、間欠的に配置されたLEDの箇所がまばらな点状に強く発光し、隣り合うLEDの間の部分は十分に明るくならないため、遠方からの視認性について改善の余地があった。特に、個々のLEDの光軸の延長上からずれた向きからは急激に視認性が低くなるため、同程度の距離であっても、表示灯の向きや姿勢によって、視認しやすい場合と視認しにくい場合の差が大きくなりやすい。そのため、最も視認しにくい場合を基準にして要求スペック(視認可能な距離など)を満たそうとすると、光源であるLEDに対して高い発光強度が求められ、消費電力も多くなってしまう。つまり、表示灯が大型化したり、製造コストが高くなったりしてしまう。
【0007】
特許文献2に記載された集光レンズ型のカバーは、特定の向きでの光の到達距離を大きくさせる効果を有するが、表示灯が発する光の視認性のばらつきを増大させるおそれがあるというデメリットがある。
【0008】
このように、既存の表示灯には、見る方向によって視認性のばらつきが大きいという問題があり、小型軽量な構造で広い範囲からの視認性を高めることが難しかった。
【0009】
以上のような問題点を解決するべく、本発明は、小型軽量で視認性に優れる表示灯を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、外部に光を投射する投光部を有する表示灯であって、前記投光部は、光源を含む発光部と、前記発光部を覆い透光性を有するカバーと、を備え、前記発光部は、棒状の前記表示灯の周方向に位置を異ならせて配置した複数の面発光ユニットを有していることを特徴とする。
【0011】
前記発光部は、平面状の発光面を有する3つ以上の前記面発光ユニットを周方向に等角度間隔で配置して構成されることが好ましい。
【0012】
複数の前記面発光ユニットの境界に沿って配置された反射部材を有し、前記反射部材は、前記面発光ユニットから出た光を反射する壁部と、前記面発光ユニットから出た光を通過させる通過部とを、前記表示灯の軸方向に沿って交互に有していることが好ましい。
【0013】
それぞれの前記面発光ユニットの両側で、前記壁部と前記通過部が前記表示灯の軸方向で互い違いに配置されていることが好ましい。
【0014】
前記カバーは、配光特性の異なる第1の配光制御構造と第2の配光制御構造を前記表示灯の軸方向で交互に有していることが好ましい。
【0015】
具体的な構成例として、前記第1の配光制御構造は、前記カバーの内面に形成されて周方向に連続する環状凹面を有し、前記第2の配光制御構造は、前記表示灯の軸方向に延びる複数の山部と複数の谷部を周方向に交互に配置した連続凹凸部を有する。
【0016】
前記カバーの外面は平滑な円筒形状であることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
上記の態様によれば、小型軽量で視認性に優れる表示灯を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】カバーを取り外した状態の表示灯の斜視図である。
【
図3】カバーを取り外した状態の表示灯の正面図である。
【
図4】カバーを取り外した状態の表示灯の側面図である。
【
図5】カバーを取り外した状態の表示灯の側面図である。
【
図6】カバーを取り外した状態の表示灯の斜視図である。
【
図7】発光部から反射部材と先端キャップを分解した状態の表示灯の斜視図である。
【
図9】カバーの内面形状を示す表示灯の斜視図である。
【
図10】カバーの内面形状を示す表示灯の正面図である。
【
図11】カバーの一部を欠いて示した表示灯の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。
図1は本実施形態の表示灯10の外観を示している。
図2から
図7は、カバー40を取り外して発光部30を露出させた状態の表示灯10を示している。
図8は、発光部30に取り付けられる反射部材32と先端キャップ33を分解して示している。
図9及び
図10は、カバー40の一部を切り欠いてその内面形状を示した状態の表示灯10である。
図11は、カバー40の一部を切り欠いた状態で表示灯10を上面視したものである。なお、
図9から
図11では、発光部30を省略して示している。
【0020】
図1に示すように、本実施形態の表示灯10は、全体として円筒形をなす棒状である。表示灯10の略中心を通り長手方向に延びる仮想線を中心軸Xとし、中心軸Xに沿う方向(表示灯10の長手方向)を軸方向、中心軸Xを中心として周回する方向を周方向、中心軸Xを中心とする放射方向を径方向と呼ぶ。
【0021】
表示灯10は、軸方向に位置を異ならせて把持部11と投光部12を有している。把持部11は、表示灯10の使用に際してユーザーが把持したり、表示灯10を据え置く際の台座にしたりする部分である。投光部12は、後述する構造によって表示灯10の外部に向けて光を投光(配光)する部分である。
【0022】
把持部11は、筒状の本体部20を有する。本体部20の外面には、周方向に延びるフランジ21が軸方向に位置を異ならせて複数形成されている。フランジ21を設けたことによって、本体部20を把持する際に滑りにくくなっている。
【0023】
本体部20の外面にはさらに、操作ボタン22が設けられている。操作ボタン22は押しボタンスイッチの一部を構成しており、操作ボタン22を押し込むと、本体部20内に設けたスイッチ(図示略)が操作される。
【0024】
図示を省略するが、本体部20の内部には、電源となる電池や、投光部12の発光を制御する制御回路などが収容されている。制御回路は、上述したスイッチ操作に応じて通電を制御し、投光部12の発光のオン・オフ(電源のオン・オフ)の切り替え、投光部12の発光形態(詳細は後述する)の変更などを行わせる。
【0025】
本体部20の軸方向の一端にはエンドキャップ23が取り付けられる。エンドキャップ23は本体部20に対してねじ込み式などの構造で着脱可能である。エンドキャップ23を取り外した状態で、本体部20内への電池の着脱が可能であり、本体部20にエンドキャップ23を取り付けると電池が通電可能な状態で保持される。
【0026】
本実施形態の表示灯10は、鉄道の軌道工事時の位置報知を主な用途として設計されている。エンドキャップ23内には永久磁石(図示略)が取り付けられている。鉄道の線路上に表示灯10を置いて使用する場合に、エンドキャップ23を底面にして設置すると、永久磁石の磁力によって優れた安定性を得ることができる。
【0027】
把持部11のうちエンドキャップ23とは反対側の端部に投光部12が設けられる。
図6及び
図7に示すように、把持部11のうち投光部12が設けられる側の端部には、本体部20の内側に位置する台座部24が設けられている。台座部24は、軸方向に対して略垂直な支持面24aと、支持面24aの周囲に位置する円筒面24bとを有している。本体部20の内周面と円筒面24bとの間には径方向に隙間がある。支持面24aの周縁付近には、周方向に所定の間隔で6個の支持孔24cが形成されている。なお、
図7には5個の支持孔24cが表されており、残る1つの支持孔24cは発光部30の背後に位置している。
【0028】
投光部12は、発光部30と、発光部30を覆うカバー40とを備えている。発光部30は把持部11の台座部24に対して固定的に取り付けられており、カバー40は把持部11に対して着脱可能である。
図1は把持部11にカバー40を取り付けた状態で、
図2から
図7は把持部11からカバー40を取り外した状態を示している。
【0029】
発光部30は、表示灯10の周方向に位置を異ならせて配置した平面状の複数の面発光ユニット31により構成されている。本実施形態の表示灯10では、3つの面発光ユニット31を組み合わせて発光部30を構成している。それぞれの面発光ユニット31は表示灯10の軸方向に長手方向を向けており、周方向で隣り合う面発光ユニット31が互いの側部を接して配されている。つまり、3つの面発光ユニット31を3つの面とする三角筒状の構造として発光部30が構成される。
【0030】
個々の面発光ユニット31は、面発光LED(Light Emitting Diode)モジュールなど、平面状の発光面を有する発光ユニットからなっており、平板状のベース板31aと、ベース板31a上に支持される平面状の発光面部31bとを有している。
【0031】
ベース板31a上に複数のLEDチップ(図示略)が配置されており、LEDチップを覆うカバーフィルムによって発光面部31bが構成される。面発光ユニット31におけるLEDチップの配置は任意に選択可能である。一例として、複数のLEDチップを軸方向に所定の間隔を空けて並べた配置にすることができる。カバーフィルムは光を拡散させる性質を有する。光源である各LEDチップが発した光は、カバーフィルムによって拡散され、発光面部31bの全域から出射される。
【0032】
面発光ユニット31から発する光の色は、搭載するLEDチップの選択によって任意に設定できる。例えば、上述した鉄道の軌道工事用として表示灯10を用いる場合に、赤色や黄色で面発光ユニット31を発光させることが可能である。
【0033】
それぞれの面発光ユニット31は、正面から見て細長い矩形状である。3つの面発光ユニット31は、長手方向が表示灯10の軸方向と略平行になるようにして、ベース板31aを内側(中心軸X側)に向け、発光面部31bを外側に向けて配置される。そして、1つの面発光ユニット31の長辺部が別の2つの面発光ユニット31の長辺部に沿うように組み合わせられて、3つの面発光ユニット31によって、中心軸Xを中心とする三角筒状の構造が形成される。換言すれば、3つの面発光ユニット31が、中心軸Xを中心として周方向に等角度間隔(120度間隔)で配置されている。
【0034】
発光部30を3つの面発光ユニット31で構成している理由として、周方向の略全体への配光を実現する最も少ない平面の数が3面であることが挙げられる。面発光ユニットの数が少なければ、その分だけLEDなどの光源の数を少なくして消費電力を抑えることができるので、少ない消費電力で十分な効果が得られる構成として、3つの面発光ユニット31からなる発光部30を採用している。
【0035】
発光部30に付随する要素として、反射部材32を有している。本実施形態の表示灯10では、3つの面発光ユニット31の境界に沿って1つずつ、計3つの反射部材32が設けられている。反射部材32は、合成樹脂や金属などで形成されており、反射率の高い外面色(銀色、白色など)を有している。
【0036】
図8に示すように、個々の反射部材32は、軸方向に延びる幹部32aと、幹部32aから側方に突出する複数の壁部32b及び複数の壁部32cと、を有している。幹部32aの一方の側部に、軸方向に間隔を空けて複数の壁部32bが配置されており、各壁部32bの間は隙間である通過部32dになっている。幹部32aの他方の側部に、軸方向に間隔を空けて複数の壁部32cが配置されており、各壁部32cの間は隙間である通過部32eになっている。
【0037】
1つの反射部材32には、複数の壁部32bと複数の壁部32cが互いに軸方向に位置を異ならせて配置されており、基本的に、壁部32bが存在する軸方向領域では壁部32cが存在せず(代わりに通過部32eが存在し)、壁部32cが存在する軸方向領域では壁部32bが存在しない(代わりに通過部32dが存在する)、という関係になっている。但し、軸方向の両端付近などの一部領域では、強度確保などの必要性から、壁部32bと壁部32cの両方が存在している箇所もある。
【0038】
個々の反射部材32は、軸方向に沿って見た場合に、壁部32bから壁部32cにかけて、外向きに凹となる円弧状に湾曲している。幹部32aには、この円弧形状の凸面側に、一対の支持リブ32fが設けられている。支持リブ32fは、軸方向で幹部32aの略全体に亘って長く延びるレール状の突起であり、一対の支持リブ32fが周方向に所定の間隔を空けて配されている。
【0039】
反射部材32の軸方向の一端には、周方向の両端付近に一対の支持突起32gが設けられている。支持突起32gは円柱状の突起であり、軸方向に突出している。反射部材32の軸方向の他端には、幹部32aの延長上に位置する係合突起32hが設けられている。
【0040】
3つの反射部材32はそれぞれ、一対の支持リブ32fを隣り合う2つの面発光ユニット31(ベース板31a)の境界部分に当接させ、一対の支持突起32gを台座部24の支持孔24cに嵌合させて取り付けられる。台座部24には6つの支持孔24cが形成されているので、3つの反射部材32の支持突起32gを全て支持孔24cに嵌合させることができる。換言すれば、6つの支持孔24cは、3つの反射部材32の3組の支持突起32gに対応させて、3組ずつに分けて配置されている。各支持孔24cに各支持突起32gが嵌合した状態で、3つ反射部材32が支持面24a上に支持されて、3つの面発光ユニット31の境界に沿って幹部32aが配設される。
【0041】
発光部30に付随する要素としてさらに、先端キャップ33を有する。先端キャップ33は、発光部30の先端側に設けられる部材であり、円板状の頭部33aと、頭部33aの中心から軸方向に突出する角筒部33bとを有している。
【0042】
図8に示すように、先端キャップ33の頭部33aには、角筒部33bの周囲に3つの係合孔33cと3つの収容孔33dが形成されている。それぞれの係合孔33cに対して、反射部材32の係合突起32hが係合可能である。また、それぞれの収容孔33dに対して、発光部30を構成する面発光ユニット31の先端が挿入可能である。
【0043】
先端キャップ33の角筒部33bは、3つの平面を有する三角筒形状である。
図8に示すように、角筒部33bの各平面上には一対のリブ33eが形成されている。各リブ33eは軸方向に延びる突起であり、角筒部33bの先端付近で、先端側に進むにつれて徐々に低くなるテーパ形状を有している。角筒部33bは三角筒形状の発光部30(3つの面発光ユニット31)の内部に挿入可能である。発光部30内への角筒部33bの挿入は、リブ33eが発光部30の内面(ベース板31a)に当接する軽い圧入として行われ、上述したリブ33eのテーパ形状によって角筒部33bの挿入をスムーズに行わせることができる。
【0044】
先端キャップ33を発光部30の先端部分に取り付けると、角筒部33bが発光部30内に挿入されると共に、各面発光ユニット31の先端が収容孔33dに進入する。また、各反射部材32の係合突起32hが係合孔33cに係合する。これにより、発光部30に対して先端キャップ33が安定して取り付けられる。また、台座部24(支持面24a)と先端キャップ33との間に3つの反射部材32が挟まれて保持される。
【0045】
以上のように構成した発光部30は、面発光する発光面部31bを外向きにした3つの面発光ユニット31からなる多角筒状の構成であるため、複数の点状の光源を分散させて配した発光部に比べて、部分ごとの発光のムラが少なく、軸方向及び周方向の全体に亘って効率的に配光することが可能である。
【0046】
周方向で隣り合う面発光ユニット31の間に反射部材32を設けたことにより、面発光ユニット31から発して側方に進む光は、反射部材32によって反射される。反射部材32を取り付けた状態では、
図3から
図5に示すように、1つの面発光ユニット31の両側に、1つの反射部材32の壁部32bと別の反射部材の壁部32cが位置している。面発光ユニット31の両側に位置する壁部32bと壁部32cは、径方向の外側に進むにつれて互いの間隔を大きくするように湾曲した形状を有している。そのため、反射部材32によって反射される光が表示灯10の外側に向かって進みやすく、発光面部31bが存在していない周方向領域(隣り合う2つの面発光ユニット31の境界付近)からも配光されやすくなる。換言すれば、面発光ユニット31から側方に向かう光を、反射部材32による反射を利用して向きを変え、直接的には発光していない面発光ユニット31どうしの境界付近にも光を回すようにしている。これにより、周方向位置の違いによる発光部30の発光ムラを低減することができる。
【0047】
より詳しくは、反射部材32を取り付けた状態で各面発光ユニット31を正面視すると、
図4に示すように、面発光ユニット31の一方の側部に沿って壁部32bと通過部32dが交互に並び、面発光ユニット31の他方の側部に沿って壁部32cと通過部32eが交互に並ぶ。そして、面発光ユニット31から発して側方に進む光は、壁部32b及び壁部32cによって反射され、通過部32d及び通過部32eの箇所では通過する。反射部材32は、軸方向の全ての領域で光を同様に反射させるのではなく、通過部32d及び通過部32eによって部分的に光を通過させることにより、個別の面発光ユニット31ごとに完全に分割された配光にせず、1つの面発光ユニット31の外側領域から、隣接する面発光ユニット31の外側領域に光が回り込むことを許容している。このような構成により、反射部材32の設置領域が影にならずに周方向の全体に光が均一に回りやすくなり、周方向位置の違いによる発光ムラをより一層低減することができる。
【0048】
ここで、1つの面発光ユニット31の両側に位置する壁部32bと壁部32cが、軸方向で交互に(互いの位置をずらせて)配置されている。従って、面発光ユニット31から発して側方に進む光は、軸方向の領域ごとに、(1)壁部32bによって反射されるか通過部32eを通過する、(2)壁部32cによって反射されるか通過部32dを通過する、のいずれかになる。つまり、反射部材32による反射だけを受ける軸方向の領域と、反射部材32を通過するだけの軸方向の領域とが分散している(偏っている)のではなく、軸方向の全体で反射部材32による反射と通過が必ず混在するようにしているので、軸方向位置の違いによる発光ムラを低減することができる。
【0049】
把持部11に内蔵した制御回路によって、発光部30の発光形態が制御される。本実施形態の表示灯10では、操作ボタン22の操作に応じて、3つの面発光ユニット31を同時に点滅させる第1の発光形態と、3つの面発光ユニット31を時間差で順次点滅させる第2の発光形態とを選択可能である。第2の発光形態は、回転灯の点灯を模したものである。なお、発光形態はこれらに限定されない。例えば、3つの面発光ユニット31が連続点灯する発光形態や、各面発光ユニット31がランダムに点滅する発光形態などを採用することもできる。
【0050】
発光部30が発した光は、カバー40を通して外側に配光される。カバー40は、透光性のある材料(合成樹脂、ガラスなど)で形成されており、軸方向の一端が開放されて他端に蓋部41を有する概ね筒状の形状をなしている。カバー40の外面は、中心軸Xを中心とする平滑な円筒面である円筒外面42として形成されている。
【0051】
カバー40には、軸方向において蓋部41とは反対側の端部に、内面の一部を欠いて径方向の肉厚を小さくした環状の挿入部45(
図9及び
図10参照)が設けられている。把持部11の本体部20と台座部24(円筒面24b)との間には環状の空間が形成されており(
図5、
図6、
図11参照)、この環状の空間に挿入部45を挿入することで、カバー40が把持部11に取り付けられる。挿入部45は軽い圧入によって挿入され、挿入後には意図せずにカバー40が脱落することが規制される。なお、カバー40を把持部11に結合させる構造として、挿入部45の圧入以外に、把持部11とカバー40が所定の位置関係にあるときに係合するロック機構や、カバー40側と把持部11側に設けたネジ部を螺合させる螺合構造などを用いてもよい。
【0052】
図9及び
図10に示すように、カバー40には、第1の配光制御構造E1及び第2の配光制御構造E2からなる2種類の配光制御構造が設けられている。第1の配光制御構造E1を構成する要素として、カバー40の内面に環状凹面43が形成されている。第2の配光制御構造E2を構成する要素として、カバー40の内面に連続凹凸部44が形成されている。複数の環状凹面43と複数の連続凹凸部44が軸方向で交互に形成されている。
【0053】
環状凹面43は、カバー40の基準となる円筒状の内周面に対して外径側に凹んだ形状であり、軸方向の両縁から中央に近づくにつれて円筒外面42に近づく円弧形状を有している。この円弧形状が周方向に連続して環状凹面43になっている。
【0054】
従って、
図9や
図10のように軸方向に沿う断面視でカバー40を示した場合に、入射面側(発光部30に対向する側)に環状凹面43による凹面があり、出射面側(発光部30とは反対側)に円筒外面42による平面がある平凹レンズの形状となる。この平凹レンズ形状が周方向に連続して、第1の配光制御構造E1を構成している。
【0055】
連続凹凸部44は、それぞれが軸方向に延びる複数の山部44aと複数の谷部44b(
図9参照)を周方向に交互に配置したものである。山部44aは、軸方向に対して垂直な断面形状が略三角形である。谷部44bは、それぞれの山部44aの間の逆三角形状の領域である。
【0056】
従って、
図9や
図10のように軸方向に沿う断面でカバー40を示した場合には、入射面側(発光部30に対向する側)の連続凹凸部44と、出射面側(発光部30とは反対側)の円筒外面42は互いに平行になるが、周方向の位置が変化すると、円筒外面42に対する連続凹凸部44の径方向の間隔が変化する。そして、個々の山部44aを構成する斜面の向きが、互いにそれぞれ異なっている。第2の配光制御構造E2は、このような向きの異なる多数の斜面(山部44a)で構成された不均一な内面形状を有している。
【0057】
第1の配光制御構造E1は、発光部30が発した光を、環状凹面43と円筒外面42による屈折によって拡散させる。特に、環状凹面43が軸方向へ進むにつれて径方向の位置を変化させる曲面であるため、軸方向への光の拡散効果が高い。その一方で、環状凹面43が屈曲を有さない滑らかな形状であるため、第1の配光制御構造E1を通る光は、直進性が高く、遠方まで届きやすい。
【0058】
第2の配光制御構造E2は、発光部30が発した光を、それぞれが向きの異なる斜面を有する複数の山部44aによって複雑に屈折させて、光の進行方向を不均一にさせる。従って、第2の配光制御構造E2は、発光部30が発した光を散乱(拡散)させる効果が高く、照射強度の均一性向上に寄与する。
【0059】
このように、第1の配光制御構造E1と第2の配光制御構造E2は、発光部30から発した光を異なる配光特性で外部に照射させる。遠方まで光を届かせやすい配光特性を持つ第1の配光制御構造E1と、照射強度の均一性を高めやすい配光特性を持つ第2の配光制御構造E2との組み合わせによって、比較的近い位置と遠方のいずれからも視認性の高い表示灯10を実現することができる。
【0060】
例えば、本実施形態とは異なり、外面に凸面を有する凸レンズ構造を有するカバーを用いた場合、凸レンズの光軸方向など、特定の向きには強い光を遠くまで到達させやすいが、当該特定の向き以外の方向へは光が届きにくく、全方位からの視認性が高い表示灯にならないという問題がある。
【0061】
これに対し、本実施形態のカバー40は、第1の配光制御構造E1と第2の配光制御構造E2がいずれも配光の方向依存性が少ない構造を有しており、表示灯10をどの方向から見ても同様の見え方を実現できる。さらに、第1の配光制御構造E1と第2の配光制御構造E2における互いの配光特性が異なり、表示灯10に比較的近い範囲を均一に照明して大きな光源であるかのように表現させると共に、表示灯10から遠い位置まで光を届かせることができる。
【0062】
また、カバー40では、第1の配光制御構造E1と第2の配光制御構造E2を軸方向に交互に配置しているので、以上の効果を投光部12の軸方向全体に亘って偏りなく得ることができる。
【0063】
さらに、カバー40では、外面を平滑な円筒外面42とし、内面に環状凹面43や連続凹凸部44を設けているので、シンプルで凹凸のない外観構造になり、意匠性や収納性などの点でも優れている。
【0064】
以上に説明したように、本実施形態の表示灯10では、投光部12の構成の工夫によって、どの方向からでも高い視認性を実現している。具体的には、周方向に位置を異ならせた複数の面発光ユニット31によって発光部30を構成したことで、発光部30から発する光の均一性を向上させ、ムラの少ない発光を実現している。また、発光部30に取り付けた反射部材32によって、面発光ユニット31から側方へ向かう光を効率的にカバー40へ導くと共に、隣り合う面発光ユニット31の境界部分にも光が回るようにして発光ムラを低減させている。また、複数の異なる配光特性を有するカバー40を用いることによって、表示灯10の近傍に広く満遍なく光を行き渡らせる効果と、表示灯10の遠方に光を届かせる効果を両立させている。
【0065】
これらの工夫の結果、表示灯10は、光源の発光強度が概ね同等である既存の表示灯に比べて、視認性が著しく向上しており、特に遠距離からの視認性向上の効果が高い。表示灯が発する光の指向性が高い場合、表示灯からの距離が大きくなるほど、観察者に対する表示灯の向きのずれの影響が大きくなり、遠方の観察者から見えるようにするための表示灯の位置調整や観察者の立ち位置の調整が難しくなる。つまり、表示灯を有効に観察できる方向が限られる。これに対して、本実施形態の表示灯10では、特定の方向に依存せずに周方向の全体へ効率的に配光するので、表示灯10の厳密な位置合わせを要さずに、遠方のどの位置からでも表示灯10の発光を視認できる。この効果は、工事現場で位置を示す作業灯や、事故現場を示す警告灯などの用途において、極めて有用性の高いものである。
【0066】
以上では主に表示灯10の投光部12について詳細に説明したが、把持部11において構成を変更してもよい。例えば、エンドキャップ23に代わるオプション構成を本体部20の端部に取り付けることが可能である。
【0067】
本体部20に取り付け可能なオプション構成の具体例として、充電池を内蔵した充電ユニット、GPS(Global Positioning System)モジュールを内蔵したGPSユニット、発音装置を内蔵した音響ユニットなどがある。
【0068】
充電ユニットは、本体部20に収納される電池に代えて電源回路に接続するための電気的接続手段を備えており、充電ユニットを本体部20の端部に取り付けると、充電ユニットの充電池から発光部30への給電が可能になる。
【0069】
GPSユニットは、人工衛星からの信号を受信して、表示灯10の位置情報を測位する。この位置情報に基づいて、表示灯10の所在確認を行ったり、工事の進捗状況を管理したり、表示灯10を設置した対象物の位置測定を行ったりできる。
【0070】
音響ユニットは、表示灯10の状態に応じてスピーカーなどの発音装置から音を出す。例えば、表示灯10に加速度センサなどを搭載して、姿勢変化や衝撃を検出できるようにする。そして、軸方向を上下に向けて立てて設置した表示灯10が転倒しそうな場合や転倒した場合に、発音装置から警告音を発して注意を促すことができる。あるいは、表示灯10を設置する際の衝撃や表示灯10の姿勢を検出して、適切に設置されたことを認識させる報知音を発するようにしてもよい。また、所定の時間経過によって発音装置から音が出るタイマー機能やアラーム機能を持たせてもよい。これにより、作業後の表示灯10の回収忘れや、表示灯10の紛失を防ぐ効果が得られる。
【0071】
以上の充電ユニット、GPSユニット、音響ユニットは、単独で把持部11に取り付けるようにしてもよいし、取り付けの規格を統一させて、複数ユニットを組み合わせて把持部11に取り付け可能にしてもよい。また、充電ユニット、GPSユニット、音響ユニット以外に機能を持つ別のユニットをオプション構成として追加してもよい。
【0072】
以上の実施形態は、発明の理解を容易にするために具体例を示したものであり、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において、様々な変形、変更が可能である。
【0073】
例えば、上記実施形態では、発光部30を3つの面発光ユニット31によって構成しているが、発光部を構成する面発光ユニットの数は3つ以外にすることもできる。平面状の発光面を有する面発光ユニットを組み合わせて発光部を構成する場合、消費電力の少なさや構造のシンプルさなどに着目すると、上記実施形態のように面発光ユニットの数は3つが好ましい。
【0074】
しかし、4つ以上の面発光ユニットを組み合わせて発光部を構成することも可能である。平面状の面発光ユニットの数を多くすると、周方向で隣り合う面発光ユニットの相対的な角度差(光の投射方向の差)が小さくなるため、周方向での配光の均一性が良くなり配光のムラが低減される。また、光源の数の増加により発光量が増大する。そのため、表示灯の視認性をより一層向上させることができる。例えば、事故現場で使用する警告灯のように、極めて優れた視認性が要求され、且つ使用時間が比較的短いと想定されるタイプの表示灯では、消費電力の増大よりも瞬間的な視認性の向上を重視して、面発光ユニットの数を多くした構成を選択することが好ましい。また、消費電力の多さについては、高出力で容量の大きい電源(リチウムイオン電池など)の使用によって対策が可能である。なお、面発光ユニットの数が多すぎると、電装系の構成が複雑になったり、面発光ユニットの境界部分の非発光領域が無視できない程度に多くなって逆に視認性に影響したりする可能性があるため、適切な範囲の数に設定することが求められる。一例として、面発光ユニットの数を3つよりも多くする場合、4~8個程度が好ましく、最大で12個程度までにすることが好ましい。
【0075】
なお、面発光ユニットの発光面が平面状である場合、面発光ユニットが2つのみであると、投光できない(死角になる)方向が生じてしまう。但し、面発光ユニットの発光面が湾曲した形状である場合には、2つの面発光ユニットで周方向の広範囲をカバーする投光を実現することも可能である。本発明は、このような変形例を除外するものではない。すなわち、面発光ユニットにおける発光面は平面ではなく湾曲面であってもよく、面発光ユニットの数は2つであってもよい。
【0076】
上記実施形態では、面発光ユニット31の光源をLEDとしたが、LED以外を光源とする面発光ユニットを用いることも可能である。
【0077】
上記実施形態では、隣り合う2つの面発光ユニット31の境界に位置する反射部材32を一つの部品として形成している。この構成によれば、部品点数を少なくして生産コストを抑えると共に、表示灯10の組み立ての手間を軽減できる。しかし、隣り合う2つの面発光ユニットの境界に位置する反射部材を、それぞれの面発光ユニットごとに別部材にすることも可能である。つまり、上記実施形態における個々の反射部材32を2分割して、計6個の反射部材を用いるような構成に変更してもよい。上記実施形態では3つの面発光ユニット31が同一形状であるが、それぞれの面発光ユニットのスペック(発光面の大きさや照射角など)が異なる場合には、それぞれに適した反射部材の構成が異なるので、このような変形例の反射部材が好適となる可能性がある。
【0078】
上記実施形態では、カバー40の内面に、複数の山部44aと複数の谷部44bを周方向に交互に配置して第2の配光制御構造E2を構成している。この構成は、発光部30が発した光を効率的に散乱させることができると共に、軸方向へ一様な形状であるため製造しやすいという利点がある。しかし、第2の配光制御構造の構成はこれに限定されるものではない。例えば、周方向に連続する環状形状の山部や谷部を、軸方向に複数並列させて第2の配光制御構造を構成することも可能である。あるいは、中心軸Xに対して平行でも垂直でもない傾斜した方向に延びる山部や谷部によって、第2の配光制御構造を構成することも可能である。
【0079】
上記実施形態の表示灯10は、発光部30とカバー40の組み合わせによって、非常に高いレベルで視認性を向上させる効果を得ている。但し、カバー40における上述の効果は、上記実施形態とは異なる構成の発光部を用いた場合も得ることが可能である。従って、カバー40単体が有する効果に着目した場合、上記実施形態のカバー40は、発光部の構成を限定しない配光用のカバーの発明としても成立する。
【符号の説明】
【0080】
10 :表示灯
11 :把持部
12 :投光部
20 :本体部
22 :操作ボタン
23 :エンドキャップ
24 :台座部
30 :発光部
31 :面発光ユニット
31a :ベース板
31b :発光面部
32 :反射部材
32a :幹部
32b :壁部
32c :壁部
32d :通過部
32e :通過部
33 :先端キャップ
40 :カバー
41 :蓋部
42 :円筒外面
43 :環状凹面
44 :連続凹凸部
44a :山部
44b :谷部
E1 :第1の配光制御構造
E2 :第2の配光制御構造
X :中心軸