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特開2023-76204電力変換装置および電力変換装置の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023076204
(43)【公開日】2023-06-01
(54)【発明の名称】電力変換装置および電力変換装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20230525BHJP
   H02M 1/08 20060101ALI20230525BHJP
【FI】
H02M3/28 H
H02M1/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021189484
(22)【出願日】2021-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 直樹
【テーマコード(参考)】
5H730
5H740
【Fターム(参考)】
5H730AA02
5H730BB26
5H730BB61
5H730BB98
5H730DD04
5H730EE03
5H730EE07
5H730EE58
5H730FD51
5H740BA12
5H740JA01
5H740JB01
5H740KK01
(57)【要約】
【課題】共振外れが発生したときに、サージ電圧やノイズの増大を抑制することができる電力変換装置を提供する。
【解決手段】電力変換装置101は、スイッチング素子Q1、Q2と、共振用キャパシタとCr、共振用キャパシタCrと直列的に接続された一次巻線Tr1を備えたトランスTrとを備えるスイッチング回路RSCと、スイッチング素子Q1、Q2のゲート端子に対してゲート駆動電流を出力して、スイッチング素子Q1、Q2のオンオフを制御するゲート駆動回路2と、スイッチング回路RSCに流れる電流I1を検出する検出回路5と、検出回路5が検出した電流の極性の反転を判定する判定回路6とを備える。ゲート駆動回路2は、判定回路6による判定の結果に基づいて、ゲート駆動電流を調整するゲート調整回路を備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスイッチング素子と、キャパシタと、前記キャパシタと直列接続された一次巻線とを備えたトランスと、を備えるスイッチング回路と、
前記スイッチング素子のゲートに対してゲート駆動電流を出力して、前記スイッチング素子のオンオフを制御するゲート駆動回路と、
前記スイッチング回路に流れる電流を検出する検出回路と、
前記検出回路が検出した電流の極性の反転を判定する判定回路と、
を備え、
前記ゲート駆動回路は、前記判定回路による判定の結果に基づいて、前記ゲート駆動電流を調整するゲート調整回路を備える、
電力変換装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力変換装置において、
前記ゲート調整回路は、前記ゲート駆動電流を、少なくとも2つのレベルの間で切り替える出力切替信号を出力し、
前記ゲート調整回路は、前記判定回路によって前記極性の反転が判定されたとき、前記ゲート駆動回路が出力する前記ゲート駆動電流を低いレベルに切り替える前記出力切替信号を出力し、
前記ゲート調整回路は、前記ゲート駆動電流を低いレベルに切り替えてから、所定の期間後に、前記ゲート駆動電力を高いレベルに切り替える前記出力切替信号を出力する、
電力変換装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電力変換装置において、
前記ゲート駆動回路は、互いに抵抗値が異なる複数のゲート抵抗と、前記複数のゲート抵抗から、前記出力切替信号に応じたゲート抵抗を選択し、選択されたゲート抵抗を所定の電圧と前記スイッチング素子のゲート端子との間に接続するスイッチ回路を備える、
電力変換装置。
【請求項4】
請求項2に記載の電力変換装置において、
前記ゲート駆動回路は、前記出力切替信号に応じて電流値が変化する電流回路と、前記電流回路に流れる電流に比例した電流を出力するカレントミラー回路とを備える、
電力変換装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の電力変換装置において、
前記複数のスイッチング素子は、2つのスイッチング素子を備え、
前記ゲート調整回路は、前記2つのスイッチング素子のうちの一方のスイッチング素子がオン状態のとき、他方のスイッチング素子のゲート駆動電流を低いレベルに調整する、
電力変換装置。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか1項に記載の電力変換装置において、
前記複数のスイッチング素子は、対角上に位置する2つのスイッチング素子対を備え、
前記ゲート調整回路は、前記スイッチング素子対のうちの一方のスイッチング素子がオン状態のとき、他方のスイッチング素子のゲート駆動電流を低いレベルに調整する、
電力変換装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の電力変換装置において、
前記複数のスイッチング素子のうちの少なくとも1つのスイッチング素子は、オン状態のとき、前記キャパシタと、前記キャパシタと直列的に接続された一次巻線とに電流を供給する主スイッチング素子と、前記1つのスイッチング素子を流れる電流の一部を分流するセンス素子とを備え、
前記検出回路は、前記センス素子を流れる電流を検出し、
前記主スイッチング素子と前記センス素子は、同一の半導体チップに形成されている、
電力変換装置。
【請求項8】
請求項7に記載の電力変換装置において、
前記検出回路は、前記複数のスイッチング素子のうちの少なくとも1つのスイッチング素子と、同一の半導体チップに形成されている、
電力変換装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の電力変換装置において、
前記複数のスイッチング素子のうち少なくとも1つのスイッチング素子は、窒化ガリウム系材料を用いている、
電力変換装置。
【請求項10】
複数のスイッチング素子と、キャパシタと、前記キャパシタと直列的に接続された一次巻線とを備えたトランスと、を備えるスイッチング回路と、
前記スイッチング素子のゲート端子に対してゲート駆動電流を出力して、前記スイッチング素子のオンオフを制御するゲート駆動回路と、
を備える電力変換装置の制御方法であって、
前記スイッチング回路を流れる電流を検出し、
検出された電流の極性が反転したか否かを判定し、
前記極性が反転したと判定された場合、前記ゲート駆動電流を調整する、
電力変換装置の制御方法。
【請求項11】
請求項10に記載の電力変換装置の制御方法において、
前記極性が反転したと判定された場合、ゲート駆動電流を低いレベルに切り替え、
前記ゲート駆動電流を低いレベルに切り替えてから、所定の期間後に、前記ゲート駆動電流を高いレベルに切り替える、
電力変換装置の制御方法。
【請求項12】
請求項11に記載の電力変換装置の制御方法において、
前記所定の期間は、前記極性が反転したと判定されてから前記スイッチング素子のオンオフ状態が切り替わるまでの時間よりも長く、前記スイッチング素子がオンオフする周期の半分よりも短い期間である、
電力変換装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置およびその制御方法に関し、例えば複数のスイッチング素子と、キャパシタと、トランスとを備えた共振型の電力変換装置およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
共振型の電力変換装置は、例えば特許文献1および2に記載されている。特許文献1および2には、共振周波数の変動を検知あるいは判定することができる共振型電力変換装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-184599号
【特許文献2】特開2019-201455号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
共振型電力変換装置は、複数のスイッチング素子と、キャパシタと、キャパシタと直列的に接続された一次巻線を備えるトランスとを備えている。本発明者が検討したところ、共振型電力変換装置の負荷が、例えば高負荷に急変すると、キャパシタと一次巻線とによって構成される直列共振回路の共振周波数が、複数のスイッチング素子がオンオフする周波数から外れ(共振外れ)、スイッチング素子を貫通して電流が流れることが発生し、サージ電圧およびノイズが増大すると言う課題があることが判明した。本発明者の検討は、後で図面を用いて説明する。
【0005】
本発明の目的は、共振外れが発生したときに、サージ電圧やノイズの増大を抑制することができる電力変換装置および電力変換装置の制御方法を提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願において開示される実施の形態のうち代表的なものの概要を簡単に説明すれば下記の通りである。
【0008】
すなわち、電力変換装置は、複数のスイッチング素子と、キャパシタと、キャパシタと直列的に接続された一次巻線を備えたトランスとを備えるスイッチング回路と、スイッチング素子のゲートに対してゲート駆動電流を出力して、スイッチング素子のオンオフを制御するゲート駆動回路と、スイッチング回路に流れる電流を検出する検出回路と、検出回路が検出した電流の極性の反転を判定する判定回路とを備える。ここで、ゲート駆動回路は、判定回路による判定の結果に基づいて、ゲート駆動電流を調整するゲート調整回路を備えている。
【発明の効果】
【0009】
本願において開示される発明のうち、代表的な実施の形態によって得られる効果を簡単に説明すると、共振外れが発生したときに、サージ電圧やノイズの増大を抑制することができる電力変換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1に係る電力変換装置の構成を示す回路図である。
図2】実施の形態1に係るゲート駆動回路の構成を示すブロック図である。
図3】実施の形態1に係るゲート出力回路の構成を示す回路図である。
図4】実施の形態1に係る制御方法を説明するためのフローチャートである。
図5】実施の形態1に係る電力変換装置の動作を説明するための波形図である。
図6】実施の形態1に係る電力変換装置の動作を説明するための波形図である。
図7】実施の形態1に係る電力変換装置で用いられているGaN-HEMTの構造を示す断面図である。
図8】実施の形態2に係るゲート出力回路の構成を示す回路図である。
図9】実施の形態3に係る電力変換装置の構成を示す回路図である。
図10】実施の形態4に係る電力変換装置の構成を示す回路図である。
図11】実施の形態4に係る半導体チップの一部分を示す平面図である。
図12】本発明者の検討を説明するための電力変換装置の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施の形態の中で説明されている諸要素及びその組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0012】
本発明の実施の形態を説明する前に、図12を参照して、本発明者が検討した電力変換装置についての課題について説明する。
【0013】
図12は、本発明者の検討を説明するための電力変換装置の回路図である。以下、本明細書では、電力変換装置として、トランスの漏れインダクタおよび励磁インダクタと、トランスに結合されたキャパシタとを用いた、高効率なLLC共振方式の共振型電力変換装置を例として説明する。
【0014】
図12において、100は電力変換装置(以下、DC/DCコンバータとも称する)を示している。DC/DCコンバータ100は、ゲート駆動回路2と、次に述べる一次側回路および二次側回路とを備え、一次側回路に供給される直流電源Viの電圧を変換して、二次側回路に結合された負荷4に、変換された直流電圧を給電する。一次側回路は、スイッチング素子Q1およびQ2により構成されたハーフブリッジ回路1、共振用キャパシタ(電流共振用キャパシタ)CrおよびトランスTrを備えている。また、二次側回路は、ダイオードD1およびD2と、平滑キャパシタCoにより構成された整流回路3を備えている。
【0015】
ハーフブリッジ回路1を構成する2個のスイッチング素子Q1およびQ2は、ゲート駆動回路2によって駆動される。すなわち、ゲート駆動回路2は、スイッチング素子Q1、Q2をデッドタイム(双方のスイッチング素子がともにオフ状態となる時間)を設けつつ、所定の周期で交互にスイッチングさせる。スイッチング素子Q1、Q2が、所定の周期で交互にスイッチングされることで、二次側回路から出力される電圧の値が調整される。この場合、スイッチング素子Q1、Q2を交互にスイッチングさせる所定の周期が、DC/DCコンバータ100の動作周期(言い換えるなら、DC/DCコンバータの動作周波数)である。
【0016】
LLC共振方式のDC/DCコンバータ100では、共振用キャパシタCrと、トランスTrに含まれる漏れインダクタンス(図示せず)および励磁インダクタンスによって構成される直列共振回路を利用し、スイッチング素子Q1、Q2の電圧もしくは電流の少なくとも一方が、ゼロ(“0”)になる状態のときに、スイッチング素子Q1、Q2のオンオフを切り替えるゼロ電圧(電流)スイッチングが行なわれる。ゼロ電圧スイッチングを行うことで、スイッチング素子のスイッチング時における電力損失やスイッチングノイズの発生の低減を図ることが可能である。
【0017】
しかしながら、入力側の直流電源Viの電圧値や、出力側の負荷4が設計値より変動すると、前記した直列共振回路の共振周波数が変動し、DC/DCコンバータ100の動作周波数が共振周波数から外れてしまう場合がある。この場合、ゼロ電圧スイッチングが成立しなくなるため、電力損失の増大やスイッチングノイズの発生、スイッチング素子の破壊等が生じることになる。以下の説明では、DC/DCコンバータの動作周波数が、直列共振回路の共振周波数から外れることを、共振外れとも称する。
【0018】
直列共振回路の共振周波数の変動に対応するための技術が、特許文献1および2に記載されている。例えば特許文献1においては、スイッチング素子を流れる電流値を検出する電流検出回路を設け、スイッチング素子をターンオンする制御信号を出力するタイミングにおける、電流検出回路の検出値がゼロより大きい場合に、共振周波数が変動し異常が発生していると判定している。また、特許文献2では、同じ共振周期内において、共振周期の半周期を中点として対称となる2時点以上の電流値を検出し、その電流値の値が所定値以上異なる場合に、共振周波数が変動し異常が発生していると判定している。
【0019】
特許文献1、2に記載の技術によって、異常の発生を検知し、異常発生を検知したときには、例えばスイッチング素子を強制的にオフにして、DC/DCコンバータの動作周波数を上げることにより、共振外れを回避することが可能である。
【0020】
しかしながら、この場合には、共振外れが発生している期間、すなわち直流電源Viの電圧や出力側の負荷4が高い状態が続いている期間、スイッチング素子を強制的にオフにすることを継続しなければならず、この期間、DC/DCコンバータで適切に電力変換を行うことができないということになる。
【0021】
共振外れを回避するために、スイッチング素子を強制的にオフにするような構成を採用しない場合、電力損失の増大が発生する。すなわち、DC/DCコンバータにおいて、共振外れが発生していると、オンしている一方のスイッチング素子(例えばQ1)を流れる電流が正から負へと反転し、その反転後に、スイッチング素子(Q1)はターンオフするため、スイッチング素子(Q1)が逆導通状態となり、デッドタイム経過後に他方のスイッチング素子(Q2)をターンオンしたときに、リカバリ電流が、スイッチング素子Q1およびQ2を貫通して流れるため、大きな電力損失が発生し、スイッチング素子の破壊が生じることがある。
【0022】
スイッチング素子として、逆導通時のリカバリ電流が小さい素子を用いることで、共振外れが発生した場合の電力損失の増大を抑制し、スイッチング素子の破壊を防ぐことは可能である。逆導通時のリカバリ電流が小さいスイッチング素子の一例として、高速リカバリ型の金属酸化物半導体電界効果型トランジスタ(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor:MOSFET)や、窒化ガリウム(GaN)系材料を用いた高電子移動度トランジスタ(High Electron Mobility Transistor:HEMT)等がある。以下、GaN系材料を用いたHEMTを、GaN-HEMTと称する。
【0023】
特に、GaN-HEMTは、素子内部にボディダイオードを含まないため、原理的にリカバリ電流がゼロとなる。したがって、スイッチング素子としてGaN-HEMTを用いたDC/DCコンバータにおいては、共振外れが発生してもリカバリ電流による損失は発生せず、スイッチング素子の破壊の発生も低減することができるため、直流電源Viの電圧値や出力側の負荷が高い状態においても、DC/DCコンバータを動作させることが可能となる。
【0024】
GaN-HEMTをスイッチング素子として用いることにより、ボディダイオードによる前記した影響を除くことが可能であるが、GaN-HEMTにおいても、MOSFETと同様に出力容量は存在するため、GaN-HEMTの出力容量による影響が存在する。すなわち、共振外れが発生した場合、一方のスイッチング素子(例えばQ1)が逆導通状態になると、スイッチング素子(Q1)の出力容量が放電され、他方のスイッチング素子(Q2)をターンオンしたときに、スイッチング素子(Q1)の出力容量が再充電されることになる。このとき、出力容量を再充電するために、スイッチング素子(Q2)とスイッチング素子(Q1)を流れる電流が発生する。
【0025】
GaN-HEMTの出力容量は小さく、リカバリ電流と比べると蓄積電荷量が小さいため、電力損失の増大やスイッチング素子破壊の危険性はわずかである。しかしながら、GaN-HEMTをスイッチング素子として用いた電力変換装置は高周波で動作させる場合が多いため、出力容量の再充電による電流の時間変化量(dI/dt:Iは再充電の際に、出力容量を流れる電流)は大きくなる。この大きな電流の時間変化量(dI/dr)は、サージ電圧やノイズ増大の原因となり、電力変換機器の正常動作の妨げとなる。
【0026】
特許文献1および2では、共振外れが発生したときに、スイッチング素子の出力容量を再充電する電流の時間変化に起因するサージ電圧やノイズ増大は、記載も認識もされていない。
【0027】
上述のような課題を解決するために、本発明者が鋭意検討を行った末、本実施の形態の構成を案出するに至った。以下、本実施の形態を、図面を用いて説明する。
【0028】
(実施の形態1)
<電力変換装置の全体構成>
図1は、実施の形態1に係る電力変換装置の構成を示す回路図である。図1において、101は電力変換装置を示している。電力変換装置101は、2つのスイッチング素子を用いたハーフブリッジ回路1を備える、LLC共振方式のDC/DCコンバータである。
【0029】
電力変換装置101は、ハーフブリッジ回路1、ゲート駆動回路2、電流検出回路(以下、検出回路とも称する)5、電流極性反転判定回路(以下、判定回路とも称する)6、共振用キャパシタCr、一次巻線Tr1と二次巻線Tr2-1およびTr2-2とで構成されたトランスTr、ダイオードD1およびD2と平滑キャパシタCoとで構成された整流回路3とを備えている。図1において、T1およびT2は、電力変換装置101の入力端子を示し、T3およびT4は、電力変換装置101の出力端子を示している。電力変換装置101の入力端子T1およびT2には、図1に示すように、外部の直流電源Viが接続され、出力端子T3およびT4には、図1に示すように負荷4が接続されている。直流電源Viは、例えばバッテリ、AC/DC(交流/直流)コンバータ等である。
【0030】
ハーフブリッジ回路1は、図1に示すように、直流電源Viの両端子間に接続されている。ハーフブリッジ回路1は、直流電源Viの両端子間(入力端子T1、T2間)に直列的に接続されたスイッチング素子Q1、Q2を備えている。スイッチング素子Q1、Q2は、特に制限されないが、一つの半導体チップ(同一の半導体チップ)のシリコン基板上に形成されたGaN-HEMTによって構成されている。
【0031】
図1において、破線で示したCp1およびCp2は、スイッチング素子Q1およびQ2の寄生キャパシタを示している。寄生キャパシタCp1の一方の端子は、スイッチング素子Q1のソース端子に接続され、他方の端子は、スイッチング素子Q1のドレイン端子に接続されている。この寄生キャパシタCp1が、スイッチング素子Q1の出力容量に該当する。同様に、寄生キャパシタCp2は、スイッチング素子Q2のソース端子とドレイン端子間に接続されており、寄生キャパシタCp2が、スイッチング素子Q2の出力容量に該当する。以下、寄生キャパシタCp1、Cp2は、出力容量Cp1、Cp2とも称する。
【0032】
ハーフブリッジ回路1において、スイッチング素子Q1のドレイン端子は入力端子T1を介して直流電源Viに接続されている。スイッチング素子Q1のソース端子とスイッチング素子Q2のドレイン端子とが接続されている。スイッチング素子Q2のソース端子は入力端子T2を介して直流電源Viに接続されている。スイッチング素子Q1およびQ2のゲート端子は、ゲート駆動回路2に接続されている。また、スイッチング素子Q1のソース端子とスイッチング素子Q2のドレイン端子とが接続された節点(ノード)と、スイッチング素子Q2のソース端子との間に、検出回路5、共振用キャパシタCrとトランスTrの一次巻線Tr1とが直列的に接続されている。トランスTrの二次側は、二次巻線Tr2-1およびTr2-2で構成されている。特に制限されないが、二次巻線Tr2-1およびTr2-2は、同じ巻き数であり、同じ巻き方向となるように直列に接続されている。なお、図1の●印は、トランスTrの極性を示している。
【0033】
整流回路3は、ダイオードD1およびD2と平滑キャパシタCoとで構成され、ダイオードD1およびD2のカソード端子と平滑キャパシタCoの一方の端子とが接続されている。平滑キャパシタCoの他方の端子は、トランスTrの二次巻線Tr2-1およびTr2-2の一方の端子が互いに接続されている節点と接続されている。トランスTrの二次巻線Tr1およびTr2-2の他方の端子は、それぞれダイオードD1およびD2のアノード端子と接続されている。平滑キャパシタCoの端子は、出力端子T3およびT4を介して負荷4に接続されている。
【0034】
検出回路5は、電流センサによって構成されている。電流センサは、例えばシャント抵抗、ホール素子あるいはロゴスキーコイル等によって構成されている。検出回路5は、スイッチング素子Q1、Q2と、共振用キャパシタCrと、トランスTrの一次巻線Tr1とを含む共振スイッチング回路(以下、単にスイッチング回路とも称する)RSCに流れる電流I1の電流値を検出する。検出回路5によって検出された電流値はアナログ値として、判定回路6に出力される。なお、実施の形態1では、電流I1の電流値を検出するために、検出回路5も共振スイッチング回路RSCに設けられている。
【0035】
判定回路6は、特に制限されないが、図示しない、比較器とエッジ検出器とによって構成されている。比較器は、例えばコンパレータ等によって構成され、エッジ検出器は、例えばロジック回路を組み合わせることで構成されたエッジ検出回路やマイクロプロセッサを用いたエッジ検出器により構成されている。比較器には、検出回路5からの入力(アナログの電流値)と、電流値“0(ゼロ)”に対応する基準値とが供給され、比較器は、アナログの電流値と基準値とを比較し、比較結果をデジタル値として、エッジ検出器に出力する。エッジ検出器は、入力されているデジタル値の変化を、信号の立下りおよび立ち上がりとして捉え、検出回路5を流れる共振スイッチング回路の電流I1の極性(電流極性)を示す判定信号として、ゲート駆動回路2へ出力する。
【0036】
例えば、検出回路5からのアナログの電流値が、高い電流値から基準値以下に低下した場合、判定回路6における比較器は、デジタル値を“1”から“0”へ変化させる。判定回路6におけるエッジ検出器は、デジタル値“1”から“0”への変化を、信号の立下りとして捉え、共振スイッチング回路RSCの電流I1の電流極性が正から負へ反転したことを示す判定信号を出力する。これに対して、検出回路5からのアナログの電流値が、基準値よりも低い値から基準値を超えた場合、判定回路6における比較器は、デジタル値を“0”から“1”へ変化させる。判定回路6におけるエッジ検出器は、デジタル値“0”から“1”への変化を、信号の立ち上がりとして捉え、共振スイッチング回路RSCの電流I1の電流極性が負から正へ反転したことを示す判定信号を出力する。
【0037】
判定回路6内の比較器への入力側には、シュミットトリガやローパスフィルタを設けるようにしてもよい。このシュミットトリガやローパスフィルタによって、検出回路5からの出力に含まれるノイズを除去することができる。
【0038】
ゲート駆動回路2は、電力変換装置101の動作周波数で定まる動作周期で、スイッチング素子Q1およびQ2を交互にオンオフするように駆動する。スイッチング素子Q1、Q2を駆動する際に、ゲート駆動回路2は、判定回路6からの判定信号に基づいて、駆動能力を調整する。ゲート駆動回路2については、次に図面を参照して詳しく説明する。
【0039】
<<ゲート駆動回路の構成>>
図2は、実施の形態1に係るゲート駆動回路の構成を示すブロック図である。図2に示すように、ゲート駆動回路2は、制御回路21と、スイッチング素子Q1、Q2に対応する2つのゲート出力回路22とを備えている。
【0040】
制御回路21は、例えばマイクロプロセッサやプログラム可能なゲートアレイ(例えば、いわゆるFPGA)等で構成され、スイッチング素子Q1およびQ2を、電力変換装置101の動作周波数で交互にオンオフ駆動するために必要なゲート信号を生成する。また、制御回路21は、入力端子T21およびT22を介して、判定回路6から出力された判定信号(電流反転正負および電流反転負正)を入力し、スイッチング素子Q1およびQ2のゲート駆動電流を切り替えのための出力切替信号を生成する。ゲート駆動電流を切り替えることで、スイッチング素子Q1およびQ2のゲート駆動電流を調整するため、出力切替信号を生成する制御回路21は、ゲート調整回路と見なすことができる。
【0041】
ゲート出力回路22は、スイッチング素子Q1およびQ2毎に設けられ、制御回路21から入力されるゲート信号と出力切替信号に応じたゲート出力信号を出力する。ゲート出力回路22から出力されたゲート出力信号は、出力端子T23およびT24を介して、スイッチング素子Q1およびQ2のゲート端子に供給される。なお、図2において、符号22-1は、スイッチング素子Q1のゲート端子にゲート出力信号1を供給するゲート出力回路を示し、符号22-2は、スイッチング素子Q2のゲート端子にゲート出力信号2を供給するゲート出力回路を示している。
【0042】
<<<ゲート出力回路の構成>>>
次に、ゲート出力回路の構成を、図面を用いて説明する。スイッチング素子Q1に対応するゲート出力回路22-1とスイッチング素子Q2に対応するゲート出力回路22-2は、互いに同様な構成を備えているため、ゲート出力回路22として、以下説明する。
【0043】
図3は、実施の形態1に係るゲート出力回路の構成を示す回路図である。
【0044】
ゲート出力回路22は、Pチェンネル型電界効果(以下、PMOSとも称する)トランジスタPTr1およびPTr2と、Nチャンネル型電界効果(以下、NMOSとも称する)トランジスタNTrと、抵抗素子Rgon1、Rgon2およびRgoffと、インバータゲートinv1およびinv2と、オア(OR)ゲートor1およびor2とを備えている。ここで、抵抗素子Rgon2の電気抵抗値は、抵抗素子Rgon1の電気抵抗値より大きく設定されている。
【0045】
PMOSトランジスタPTr1およびPTr2のソース端子は、電圧線Vgonに接続されている。電圧線Vgonに印加される電圧(Vg,on)は、スイッチング素子Q1およびQ2をオン状態にするために、スイッチング素子Q1およびQ2のゲート端子に印加する所定の電圧である。NMOSトランジスタNTrのソース端子は、電圧線Vgoffに接続されている。電圧線Vgoffに印加される電圧(Vg,off)は、スイッチング素子Q1およびQ2をオフ状態にするために、スイッチング素子Q1およびQ2のゲート端子に印加する電圧である。電圧(Vg,on)および(Vg,off)は、特に制限されないが、図1に示した直流電源Viから生成されている。
【0046】
PMOSトランジスタPTr1およびPTr2のドレイン端子は、それぞれ抵抗素子Rgon1およびRgon2の一方の端子に接続され、抵抗素子Rgon1およびRgon2の他方の端子は、出力端子T223に接続されている。NMOSトランジスタNTrのドレイン端子は抵抗素子Rgoffの一方の端子に接続され、抵抗素子Rgoffの他方の端子は出力端子T223に接続されている。
【0047】
制御回路21から出力されたゲート信号は、入力端子T222を介して、インバータゲートinv2の入力に供給されている。インバータゲートinv2の出力は、オアゲートor1およびor2の一方の入力に接続され、またNMOSトランジスタNTrのゲート端子に接続されている。制御回路21から出力された出力切替信号は、入力端子T221を介してオアゲートor1の他方の入力に接続され、またインバータゲートinv1を介してオアゲートor2の他方の入力に接続されている。オアゲートor1およびor2の出力は、それぞれPMOSトランジスタPTr1およびPTr2のゲート端子に接続されている。
【0048】
したがって、ゲート信号がロウレベル(“0”)の期間では、PMOSトランジスタPTr1およびPTr2はオフ状態にされる。一方、この期間では、NMOSトランジスタNTrはオン状態にされる。この場合、抵抗素子Rgoffが、NMOSトランジスタNTrおよび出力端子T223を介して、電圧線Vgoffとスイッチング素子Q1もしくはQ2のゲート端子との間に接続されることになる。すなわち、抵抗素子Rgoffが、スイッチング素子のゲート抵抗に相当し、ゲート抵抗(抵抗素子Rgoff)を介した電圧(Vg,off)が、スイッチング素子Q1もしくはQ2にゲートオフ電圧として印加されることになり、スイッチング素子Q1もしくはQ2はオフ状態となる。
【0049】
一方、ゲート信号がハイレベル(“1”)の期間では、NMOSトランジスタNTrはオフとなる。この期間において、出力切替信号がロウレベル(“0”)の場合は、PMOSトランジスタPTr1がオン状態となり、出力切替信号がハイレベル(“1”)の場合はPMOSトランジスタPTr2がオン状態となる。したがって、ゲート信号がハイレベルの期間では、出力切替信号がロウレベルの場合は、抵抗素子Rgon1がスイッチング素子のゲート抵抗に相当し、スイッチング素子Q1もしくはQ2には、ゲート抵抗(抵抗素子Rgon1)を介した電圧(Vg,on)が、スイッチング素子Q1もしくはQ2にゲートオン電圧として印加され、スイッチング素子Q1もしくはQ2は、オン状態となる。このとき、オン状態となっているスイッチング素子Q1もしくはQ2においては,ゲート抵抗(抵抗素子Rgon1)を介して、スイッチング素子Q1もしくはQ2のゲート端子に供給されるゲート出力信号の電流(高いレベルのゲート駆動電流)に応じたドレイン電流が流れることになる。
【0050】
また、ゲート信号がハイレベル(“1”)の期間において、出力切替信号がハイレベル(“1”)”の場合は、抵抗素子Rgon2がスイッチング素子のゲート抵抗に相当することになり、ゲート抵抗(抵抗素子Rgon2)を介した電圧(Vg,on)が、スイッチング素子Q1もしくはQ2にゲートオン電圧として印加される。この場合も、スイッチング素子Q1もしくはQ2がオン状態となる。しかしながら、このとき、スイッチング素子Q1もしくはQ2のゲート端子に供給されるゲート出力信号の電流(ゲート駆動電流)は、抵抗素子Rgon2がゲート抵抗として機能するため、抵抗素子Rgon2によって定まるゲート出力信号の電流(低いレベルのゲート駆動電流)となる。したがって、このとき、オン状態となるスイッチング素子Q1もしくはQ2においては、抵抗素子Rgon2で定まるゲート駆動電流に応じたドレイン電流が流れることになる。
【0051】
実施の形態1に係るゲート出力回路22においては、オン状態となるスイッチング素子Q1、Q2のゲート抵抗を、出力切替信号によって切り替えることができる。ゲート抵抗を切り替えることで、スイッチング素子Q1、Q2のゲート端子には、切り替えられたゲート抵抗によって定まるゲート駆動電流が供給され、オン状態となるスイッチング素子においては、供給されているゲート駆動電流に応じたドレイン電流が流れる。すなわち、ゲート抵抗に相当する抵抗素子Rgon1もしくはRgon2に応じたレベルのゲート駆動電流が、スイッチング素子のゲート端子に供給され、ゲート駆動電流に応じたドレイン電流がスイッチング素子から出力されることになる。前記したように、抵抗素子Rgon2の電気抵抗値は、抵抗素子Rgon1の電気抵抗値より大きいため、出力切替信号がハイレベルの場合、ゲート出力回路22は、低いレベルのゲート駆動電流をスイッチング素子Q1、Q2のゲート端子に出力し、スイッチング素子Q1、Q2のドレイン電流を低いレベルに切り替えるような動作を行うことになる。
【0052】
ゲート信号がハイレベルとなっている期間においては、インバータゲートinv1、オアゲートor1、or2およびPMOSトランジスタPTr1、PTr2によって、抵抗素子Rgon1およびRgon2から、出力信号に従った抵抗素子を選択するスイッチング回路が構成されていると見なすことができる。この場合、選択された抵抗素子が、所定の電圧(Vg,on)とスイッチング素子のゲート端子との間に接続されることになる。
【0053】
<電力変換装置の動作>
先ず、実施の形態1に係る電力変換装置において実行される制御方法を、図面を用いて説明する。図4は、実施の形態1に係る制御方法を説明するためのフローチャートである。
【0054】
ステップS1において、図2に示した制御回路21が、ゲート出力信号1およびゲート出力信号2を出力させ、図1に示したスイッチング素子Q1およびQ2をオンオフさせる。次に、ステップS2、S3およびS4が順次実行されるが、これらのステップS2~S4は、スイッチング素子Q1またはQ2をオン状態にしている期間において実施される。
【0055】
ステップS2は、図1の検出回路5が共振スイッチング回路RSCを流れる電流I1を検出する電流検出工程である。
【0056】
ステップS3では、ステップS2で検出された電流I1に基づいて、判定回路6が電流I1の極性を判定し、判定結果を判定信号として制御回路21へ供給する。すなわち、ステップS3は、極性判定工程である。
【0057】
ステップS3において、極性が反転していると判定された場合(Y)、制御回路21は、出力切替信号を生成し、スイッチング素子のゲート駆動電流を切り替える。このゲート駆動電流の切り替えによって、ゲート駆動電流が調整されることになるため、ステップS4は、駆動電流の調整工程である。
【0058】
ステップS3において、極性が反転していないと判定された場合(N)およびステップS4が終了すると、再びステップS1が実行される。すなわち、ステップS1~S3が繰り返されることになる。
【0059】
実施の形態1に係る電力変換装置においては、ステップS3において極性が反転していると判定され場合、共振外れが発生している場合として処理が行われる。これに対して、ステップS3において極性が反転していないと判定された場合が、共振外れが発生していない場合として処理が行われる。
【0060】
特に制限されないが、実施の形態1に係るステップS4(調整工程)は、2つの工程を備えている。すなわち、ステップS4は、極性が反転していると判定されたとき、ゲート駆動電流を低いレベルに調整する(切り替える)工程が実行される。ゲート駆動電流を低いレベルに切り替えてから、所定の期間(出力切替期間)後に、ゲート駆動電流を前記低いレベルよりも高いレベルに調整する(切り替える)工程と、を備えている。
【0061】
次に、共振外れが発生していない場合と発生している場合を説明する。
【0062】
<<共振外れが発生していない場合>>
先ず、電力変換装置101の負荷が高負荷等でなく、共振外れが発生していない場合を説明する。図5は、実施の形態1に係る電力変換装置の動作を説明するための波形図である。以下、図1図3および図5を参照して、説明する。
【0063】
図5には、ハーフブリッジ回路1を制御するために、ゲート駆動回路2が出力するゲート出力信号1およびゲート出力信号2の波形と、検出回路5により検出されたトランスTrの一次巻線Tr1を含む共振スイッチング回路RSCを流れる電流I1の波形とが示されている。さらに、図5には、スイッチング素子Q1およびQ2のドレイン端子とソース端子間に印加されている電圧Vds1およびVds2の波形と、スイッチング素子Q1およびQ2のドレイン端子からソース端子の方向に流れる電流(ドレイン電流)Id1およびId2の波形とが示されている。なお、電圧Vds1および電流Id1は、スイッチング素子Q1の電圧および電流であり、電圧Vds2および電流Id2は、スイッチング素子Q2の電圧および電流である。
【0064】
検出回路5は、図1において矢印で示されているように、左側から右側に流れる方向を、正(+)極性とした電流を検出する。ゲート駆動回路2から出力されるゲート出力信号1は、スイッチング素子Q1のオンオフを制御する出力信号であり、ゲート出力信号2は、スイッチング素子Q2のオンオフを制御する出力信号である。ゲート駆動回路2を構成する制御回路21は、スイッチング素子Q1およびQ2を、デッドタイムtd1およびtd2を含めて相補的に駆動するようにゲート信号を生成する。なお、デッドタイムtd1およびtd2は、スイッチング素子Q1およびQ2の両方がオフ状態となる期間である。
【0065】
先ず、時刻t1において、ゲート出力信号によって、スイッチング素子Q2がオフ状態でスイッチング素子Q1をオンにすると、直流電源Vi、スイッチング素子Q1、検出回路5、共振用キャパシタCrおよびトランスTrの一次巻線Tr1を含む共振スイッチング回路RSCに、正(+)の極性の電流I1が流れる。
【0066】
その後の時刻t2において、スイッチング素子Q1をオフ状態にしてデッドタイムtd1に入ると、スイッチング素子Q2が逆導通して、トランスTrの一次巻線Tr1に流れる電流はスイッチング素子Q2に転流する。その後、スイッチング素子Q2を逆導通状態でオン状態にすることで、スイッチング素子Q2のソース端子とドレイン端子間に印加される電圧がほぼゼロの状態でスイッチングする、いわゆるゼロ電圧スイッチングが行われる。その後、トランスTrに含まれるインダクタンスと共振用キャパシタCrのキャパシタンスによるLC共振により、トランスTrの一次巻線Tr1を含む共振スイッチング回路RSCに流れる電流I1の極性が正(+)から負(-)へと反転する。
【0067】
次に、時刻t3において、スイッチング素子Q2をオフ状態にしてデッドタイムtd2に入ると、スイッチング素子Q1が逆導通して、トランスTrの一次巻線Tr1に流れる電流はスイッチング素子Q1に転流し、その後スイッチング素子Q1を逆導通状態でオン状態にすることでゼロ電圧スイッチングが行われ、その後LC共振により、トランスTrの一次巻線Tr1を含む共振スイッチング回路RSCに流れる電流I1が負(-)から正(+)へと逆転する。
【0068】
前記したゲート出力信号は、電力変換装置101の動作周波数によって定まる周期で、周期的に生成されるため、前記した時刻t1~t3の動作が繰り返される。トランスTrの一次巻線Tr1に流れる電流I1の変化に応じて、二次巻線Tr2-1またはTr2-2に電流が発生し、整流回路3によって直流化され、負荷4に対して供給される。
【0069】
<<共振外れが発生している場合>>
図6は、実施の形態1に係る電力変換装置の動作を説明するための波形図である。図6は、図5と類似しており、図6にも、図5と同様に、ゲート出力信号1およびゲート出力信号2と、共振スイッチング回路RSCを流れる電流I1と、スイッチング素子Q1、Q2のドレイン端子とソース端子間の電圧Vds1、Vds2と、スイッチング素子Q1、Q2のドレイン電流Id1、Id2とが示されている。図6図5と相違する点は、図6には、電力変換装置101が動作している期間において、負荷4が高負荷に急変し、共振外れが発生した場合が示されていることである。
【0070】
高負荷時においては、スイッチング素子Q1がオン状態にある期間(時刻t1~t2)において、ある時刻(例えば時刻t12)で、トランスTrに含まれるインダクタンスと共振用キャパシタCrのキャパシタンスによるLC共振により、トランスTrの一次巻線Tr1を含む共振スイッチング回路RSCに流れる電流の極性が、図6に示すように正から負へと反転して、スイッチング素子Q1が逆導通状態となる。その後、スイッチング素子Q1をオフ状態にして、デッドタイムtd1に入ると、スイッチング素子Q2はオフのため電流が流れず、スイッチング素子Q1が逆導通状態を継続して電流を導通する。この時、スイッチング素子Q1の出力容量Cp1(図1)は放電状態となる。
【0071】
その後の時刻t2において、スイッチング素子Q2をオン状態へ変化(遷移)させると、スイッチング素子Q1に流れていた電流が、スイッチング素子Q2に転流するが、その時にスイッチング素子Q1の出力容量Cp1に再充電が発生する。出力容量Cp1は、スイッチング素子Q1のソース端子とドレイン端子との間に接続されているキャパシタであるため、出力容量Cp1を再充電している再充電期間中においては、スイッチング素子Q1のドレイン端子とソース端子間を電流(出力容量Cp1を再充電するための電流)が流れることになる。このとき、スイッチング素子Q2はオン状態へ遷移するため、スイッチング素子Q1とQ2とを流れる貫通電流が発生する。
【0072】
この貫通電流はスイッチング素子Q1およびQ2を貫通して流れる電流であるため、貫通電流の電流値の時間変化は、スイッチング素子Q2をオン状態に遷移させる速度によって決定されることになる。
【0073】
次に、スイッチング素子Q2をオフ状態にして、デッドタイムtd2経過後にスイッチング素子Q1をオンにする動作においては、前記と相補的な動作となる。すなわち、スイッチング素子Q2がオフ状態に遷移する前の時刻(t23)において、前記したLC共振によって、トランスTrの一次巻線Tr1を含む共振スイッチング回路RSCに流れる電流I1の極性が、負から正へと反転する。この場合には、スイッチング素子Q2が逆導通状態となり、スイッチング素子Q2の出力容量Cp2の放電が行われ、スイッチング素子Q1のオン状態への遷移により、出力容量Cp2の再充電が行われる。したがって、スイッチング素子Q1がオン状態に遷移するときに、スイッチング素子Q1とQ2とを流れる貫通電流が発生する。このときの貫通電流の電流値の時間変化も、スイッチング素子Q1をオン状態に遷移させる速度によって決定されることになる。
【0074】
実施の形態1においては、ゲート駆動回路2を構成する制御回路21は、スイッチング素子Q1のオン期間中に、図4に示したステップS2~S4を実行する。すなわち、制御回路21は、判定回路6から、電流I1の極性が反転(この場合、正から負への反転)を示す判定信号が入力されると、オン状態へ遷移させるスイッチング素子Q2に接続されるゲート出力回路22-2に対して出力切替信号を出力する。ゲート出力回路22-2は、出力切替信号を入力すると、スイッチング素子Q2をオン状態に駆動するときのゲート抵抗を、抵抗素子Rgon1から抵抗素子Rgon2に切り替え、ゲート抵抗の値を増大させる。その結果、スイッチング素子Q2に対するゲート駆動電流が低下し、スイッチング素子Q2のドレイン電流も低下し、スイッチング素子Q2の駆動電流が低下するように調整される。
【0075】
この調整によってドレイン電流が低下することにより、スイッチング素子Q2をオン状態に遷移させる速度が低下する。したがって、スイッチング素子Q1がオン状態となっている期間において、負荷4が高負荷になった場合でも、スイッチング素子Q2をオン状態に遷移させるときに発生する貫通電流の時間変化量を低減させ、サージ電圧やノイズの発生を抑制することが可能となる。
【0076】
また、制御回路21は、スイッチング素子Q2のオン期間中にも、図4に示したステップS2~S4を実行する。すなわち、制御回路21は、電流I1の極性が反転(この場合、負から正への反転)を示す判定信号が入力されると、スイッチング素子Q1に接続されるゲート出力回路22-1に対して出力切替信号を出力する。ゲート出力回路22-1は、出力切替信号を入力すると、スイッチング素子Q1をオン状態に駆動するときのゲート抵抗を、抵抗素子Rgon1から抵抗素子Rgon2に切り替え、ゲート抵抗の値を増大させる。その結果、スイッチング素子Q1に対するゲート駆動電流が低下し、スイッチング素子Q1のドレイン電流も低下し、スイッチング素子Q1の駆動電流が低下するように調整される。
【0077】
調整によってドレイン電流が低下することにより、スイッチング素子Q1をオン状態に遷移させる速度が低下する。したがって、スイッチング素子Q2がオン状態となっている期間において、負荷4が高負荷になった場合でも、スイッチング素子Q1をオン状態に遷移させるときに発生する貫通電流の時間変化量を低減させ、サージ電圧やノイズの発生を抑制することが可能となる。
【0078】
図6において、破線で示したドレイン電流変化Id_1は、抵抗素子を切り替えずに、ゲート抵抗として抵抗素子Rgon1を用いた場合のドレイン電流の変化を示しており、実線で示したドレイン電流変化Id_2は、実施の形態1に従ってゲート抵抗を抵抗素子Rgon2に切り替えた場合のドレイン電流の変化を示している。また、破線で示した電圧変化Vsg_1は、抵抗素子を切り替えずに、ゲート抵抗として抵抗素子Rgon1を用いた場合の電圧Vds1、Vds2の変化を示しており、実線で示した電圧変化Vsg_2は、実施の形態1に従ってゲート抵抗を抵抗素子Rgon2に切り替えた場合の電圧Vds1、Vds2の変化を示している。この電圧変化Vsg_1およびVsg_2が、サージ電圧とノイズとなる。
【0079】
実施の形態1によれば、ドレイン電流変化が発生している時間が長くなるが、そのピーク値を低下させることができる。その結果、図6に示すように、電圧変化Vsg_2は、電圧変化Vsg_1を比べて小さくなり、発生するサージ電圧やノイズを小さく抑制することができる。
【0080】
実施の形態1に係る制御回路21には、ゲート出力回路22(22-1、22-2)に対して、出力切替信号を出力している期間(出力切替期間)が予め設定されている。この設定されている出力切替期間の間、ゲート出力回路22は、ゲート抵抗として、抵抗素子Rgonを用い、低いゲート駆動電流を出力する。実施の形態1においては、出力切替期間は、電流I1の極性の反転が判定されてから、スイッチング素子Q1およびQ2をオンオフするまでの時間よりも長く、かつスイッチング素子Q1およびQ2がオンオフする周期の半分(半周期)よりも短く設定されている。
【0081】
図6を例にして述べると、出力切替期間は、時刻t12から時刻t2までの時間よりも長く、時刻t1から時刻t2までの時間よりも短く設定されている。出力切替期間を設定することによって、負荷4が高負荷となっていることを電流I1の極性反転として検知した周期においては、スイッチング素子をオン状態に遷移させるときに、出力回路から出力されるゲート駆動電流を低い値(低いレベル)に抑制し、次にスイッチング素子をオンオフさせる際には、ゲート抵抗として抵抗素子Rgon1を用いて、ゲート駆動電流を高いレベルにし、高速にスイッチングさせることが可能となる。
【0082】
<<スイッチング素子の構造>>
実施の形態1においては、スイッチング素子Q1およびQ2として、前記したようにGaN-HEMTが用いられている。ここで、GaN-HEMTの一例を説明しておく。図7は、実施の形態1に係る電力変換装置で用いられているGaN-HEMTの構造を示す断面図である。
【0083】
図7において、500はGaN-HEMTを示している。GaN-HEMTは、基板501と、基板501上に形成されたバッファ層502と、バッファ層502上に形成された窒化ガリウム(GaN)層503と、窒化ガリウム層503上に形成された窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)層504と、窒化アルミニウムガリウム層504上の所定の位置にP型窒化ガリウム(P-GaN)層505を介して形成されたゲート電極507と、窒化アルミニウムガリウム層504上であって、ゲート電極507と分離された位置に形成されたソース電極506およびドレイン電極508とを備えている。
【0084】
ゲート電極507が、スイッチング素子Q1およびQ2のゲート端子に該当し、ソース電極506およびドレイン電極508は、スイッチング素子Q1およびQ2のソース端子およびドレイン端子と該当している。また、スイッチング素子(例えばQ1)の出力容量(Cp1)は、ソース電極506を一方の端子とし、ドレイン電極508を他方の端子とした寄生キャパシタである。すなわち、出力容量(Cp1)は、スイッチング素子(Q1)のソース端子とドレイン端子との間に接続されている。
【0085】
図7に示したように、GaN-HEMTでは、ボディダイオードが形成されないため、ボディダイオードを流れるリカバリ電流による損失が発生するのを防ぐことが可能である。したがって、実施の形態1によれば、負荷4が高負荷になって、共振外れが発生しても、リカバリ電流による損失が発生しないため、素子(GaN-HEMT)が破壊される可能性を低減することができる。
【0086】
実施の形態1によれば、負荷4が高負荷状態になり、共振外れが発生しても、ハーフブリッジ回路1を構成するスイッチング素子Q1、Q2を貫通して流れる電流の時間変化dI/dtを抑制し、サージ電圧やノイズの増大を抑えることができる。したがって、電力変換装置101の安定動作が可能となる。
【0087】
実施の形態1では、ゲート出力回路22として、図3に示したように電界効果型トランジスタを用いた構成を説明したが、電界効果型トランジスタの代わりに、スイッチング素子と同様にGaN-HEMTを用いるようにしてもよい。
【0088】
また、スイッチング素子Q1、Q2を構成するGaN-HEMTと、検出回路5とは、同一の半導体チップの半導体基板上に形成してもよい。
【0089】
(実施の形態2)
実施の形態2においては、図2に示したゲート出力回路22が変更される。図8は、実施の形態2に係るゲート出力回路の構成を示す回路図である。実施の形態2に係る電力変換装置が実施の形態1に係る電力変換装置と異なる点は、ゲート出力回路の構成が図3に示されたものから図8に示されているものに変更されている点である。したがって、以下では、説明上必要がない限り、ゲート出力回路のみを説明する。
【0090】
実施の形態2に係るゲート出力回路は、実施の形態1と異なり、ゲート駆動電流を切り替えるのにカレントミラー回路が用いられている。
【0091】
図8において、22aは、ゲート出力回路を示している。ゲート出力回路22aは、PMOSトランジスタPTr1と、PMOSトランジスタPTr-CM1およびPTr-CM2により構成されたカレントミラー回路CMと、入力に応じた電圧値を出力する電圧生成回路Vrefと、オペアンプOPrefと、NMOSトランジスタNTrおよびNTr-refと、抵抗素子RrefおよびRgoffと、インバータゲートinvとを備えている。
【0092】
カレントミラー回路CMを構成するPMOSトランジスタPTr-CM1およびPTr-CM2タのソース端子は、電圧線Vgonに接続されている。電圧線Vgonに印加される電圧は、スイッチング素子Q1およびQ2(図1)をオン状態にするために、スイッチング素子Q1およびQ2のゲート端子に印加する電圧である。PMOSトランジスタPTr-CM1およびPTr-CM2のゲート端子は互いに接続され、またPMOSトランジスタPTr-CM1のドレイン端子と接続されている。PMOSトランジスタPTr-CM1のドレイン端子はNOMSトランジスタNTr-refのドレイン端子と接続されている。PMOSトランジスタPTr-CM2のドレイン端子は出力端子T223に接続されている。
【0093】
PMOSトランジスタPTr1のソース端子は電圧線Vgonに接続され、そのドレイン端子はNMOSトランジスタNTr-refのドレイン端子と接続される。NMOSトランジスタNTrのソース端子は、電圧線Vgoffに接続されている。電圧線Vgoffに印加される電圧は、スイッチング素子Q1およびQ2をオフ状態にするために、スイッチング素子Q1およびQ2のゲート端子に印加する電圧である。NMOSトランジスタNTrのドレイン端子は抵抗素子Rgoffの一方の端子に接続され、抵抗素子Rgoffの他方の端子は出力端子T223に接続されている。
【0094】
電圧生成回路Vrefの出力はオペアンプOPrefの非反転入力端子(+)に接続されている。オペアンプOPrefの反転入力端子(-)は、NMOSトランジスタNTr-refのソース端子に接続され、その出力端子は、NMOSトランジスタNT-refのゲート端子に接続されている。また、NMOSトランジスタNTr-refのソース端子は抵抗素子Rrefの一方の端子に接続され、抵抗素子Rrefの他方の端子は電圧線Vgoffに接続されている。したがって、NMOSトランジスタNTr-refのドレイン端子からソース端子に流れる電流は、電圧生成回路Vrefの出力電圧と抵抗素子Rrefの抵抗値との比(出力電圧/Rref)と等しくなる。抵抗素子Rrefの抵抗値が固定であるため、NMOSトランジスタNTr-refのドレイン端子からソース端子に流れる電流は、電圧生成回路Vrefの出力電圧に比例した値となる。
【0095】
制御回路21(図2)から出力されたゲート信号は、入力端子T222を介してPMOSトランジスタPTr1のゲート端子に供給され、また、インバータゲートinvの入力に供給される。インバータゲートinvの出力は、NMOSトランジスタNTrのゲート端子に接続される。制御回路21から出力された出力切替信号は、入力端子T221を介して、電圧生成回路Vrefに入力として供給される。出力切替信号が入力として供給されるため、電圧生成回路Vrefは、出力切替信号がハイレベル(“1”)の場合、出力切替信号がロウレベル(“0”)の場合に比べて、低い電圧を出力するように動作する。
【0096】
制御回路21(図2)から出力されたゲート信号がロウレベル(“0”)の期間では、PMOSトランジスタPTr1がオン状態となるため、PMOSトランジスタPTr-CM1のドレイン端子とソース端子間の電圧はほとんどゼロとなる。PMOSトランジスタPTr-CM1のドレイン端子とゲート端子は接続されているため、PMOSトランジスタPTr-CM1はオフ状態となり、カレントミラー回路CMを構成するPMOSトランジスタPTr-CM2のソース端子とドレイン端子間には電流が流れない。このとき、インバータゲートinvの出力はハイレベル(“1”)となるため、NMOSトランジスタNTrはオン状態となる。したがって、抵抗素子Rgoffがゲート抵抗として機能し、スイッチング素子Q1もしくはQ2に、それをオフ状態にするゲートオフ電圧が出力されることになる。
【0097】
一方、制御回路21から出力されたゲート信号がハイレベル(“1”)の期間では、インバータゲートinvの出力はロウレベル(“0”)となるため、NMOSトランジスタNTrはオフ状態となる。このとき、ハイレベルのゲート信号によって、PMOSトランジスタPTrがオフ状態となるため、カレントミラー回路CMが動作し、PMOSトランジスタPTr-CM1のソース端子からドレイン端子に流れる電流に比例した電流が、PMOSトランジスタPTr-CM2のソース端子からドレイン端子に流れる。PMOSトランジスタPTr-CM1とNMOSトランジスタNTr-refとは直列に接続されているため、PMOSトランジスタPTr-CM1のソース端子からドレイン端子に流れる電流は、NMOSトランジスタNTr-refのドレイン端子からソース端子に流れる電流と等しくなる。したがって、電圧生成回路Vrefの出力電圧に比例した電流が、出力端子T223を介してスイッチング素子Q1もしくはQ2のゲート端子に出力される。出力切替信号がハイレベル(“1”)の場合、電圧生成回路Vrefの出力電圧は、出力切替信号がロウレベル(“0”)の場合に比べて低くなるため、実施の形態2に係るゲート出力回路22aを備えたゲート駆動回路2(図2)から出力されるゲート駆動電流の出力は、低いレベルに切り替わる動作となる。
【0098】
図8においては、電圧生成回路Vrefと、オペアンプOPrefと、NMOSトランジスタNTr-refと、抵抗素子Rrefとによって、入力端子T221に供給される出力切替信号のレベルに従った電流を出力する電流回路が構成されていると見なすことができる。この場合、電流回路から出力された電流に比例した電流が、スイッチング素子Q1またはQ2のゲート端子にゲート駆動電流として、カレントミラー回路CMから出力されることになる。
【0099】
実施の形態2によれば、ゲート出力回路22aから出力されるゲート駆動電流のレベルを、出力切替信号に応じて切り替えることができる。実施の形態1と同様に、電力変換装置において共振外れが発生した場合、判定回路6(図1)の出力に応じて、ゲート駆動回路2の制御回路21が、出力切替信号を生成することで、貫通電流の時間変化量を抑制し、サージ電圧やノイズの発生を抑えることが可能となる。さらに、実施の形態2によれば、図3に示した抵抗素子Rgon1およびRgon2に対応する抵抗素子が必要となくなり、これらの抵抗素子での電力損失の発生を低減することができる。
【0100】
また、ゲート出力回路から出力するゲート駆動電流のレベルを、2段階よりも増やす場合、図3に示したゲート出力回路22では、ゲート駆動電流のレベルの数に応じて、ゲートオン時の出力を駆動するPMOSトランジスタ(図3のPTr1、PTr2に相当)と、抵抗素子(Rgon1、Rgon2に相当)と、PMOSトランジスタのゲートを制御するオアゲート(or1、or2に相当)を増やす必要がある。これに対して、実施の形態2によれば、電圧生成回路Vrefの出力電圧を多段(3段以上)にするだけで良いため、簡単な構成で実現することが可能となる。また、出力切替信号に応じて、ゲート駆動電流の出力を速やかに切り替えることが可能となり、電力変換装置を高い動作周波数で動作させることが可能となる。なお、実施の形態2においても、ゲート出力回路22aを構成するトランジスタは、電界効果トランジスタに限定されず、例えばGaN-HEMTであってもよい。
【0101】
(実施の形態3)
図9は、実施の形態3に係る電力変換装置の構成を示す回路図である。図9は、図1と類似しているので、相違点を主に説明する。主な相違点は、図9に示されている電力変換装置では、ハーフブリッジ回路の代わりにフルブリッジ回路が用いられている点である。
【0102】
図9において、101aは実施の形態3に係る電力変換装置を示している。電力変換装置101aは、ハーフブリッジ回路1(図1)の代わりにフルブリッジ回路7を備えている。すなわち、電力変換装置101aは、フルブリッジ回路7、ゲート駆動回路2、検出回路5、判定回路6、共振用キャパシタCr、一次巻線Tr1と二次巻線Tr2-1およびTr2-2とで構成されるトランスTr、ダイオードD1およびD2と平滑キャパシタCoとで構成される整流回路3を備えている。入力端子T1およびT2には、外部の直流電源Viが接続され、出力端子T3およびT4には負荷4が接続される。実施の形態3においても、直流電源Viは、例えばバッテリやAC/DCコンバータ等の直流電源を供給する装置である。
【0103】
直流電源Viの両端子間には、入力端子T1およびT2を介して、フルブリッジ回路7が接続されている。フルブリッジ回路7においては、スイッチング素子Q1とQ2とが直列に接続され、スイッチング素子Q3とQ4とが直列に接続されている。スイッチング素子Q1~Q4は、例えば半導体チップのシリコン基板上に形成されたGaN-HEMTによって構成されている。フルブリッジ回路7において、スイッチング素子Q1およびQ3のドレイン端子は、入力端子T1を介して直流電源Viに接続されている。スイッチング素子Q1のソース端子とスイッチング素子Q2のドレイン端子とが接続され、またスイッチング素子Q3のソース端子とスイッチング素子Q4のドレイン端子とが接続されている。スイッチング素子Q2およびQ4のソース端子は入力端子T2を介して直流電源Viに接続されている。
【0104】
スイッチング素子Q1およびQ4のゲート端子は、ゲート駆動回路2の一方のゲート出力、例えば図2のT23に接続されている。スイッチング素子Q2およびQ3のゲート端子は、ゲート駆動回路2の他方のゲート出力(図2のT24)に接続されている。また、スイッチング素子Q1のソース端子とスイッチング素子Q2のドレイン端子とが接続された節点(ノード)と、スイッチング素子Q3のソース端子とスイッチング素子Q4のドレイン端子とが接続された節点との間に、検出回路5と、共振用キャパシタCrと、トランスTrの一次巻線Tr1とが直列的に接続されている。したがって、フルブリッジ回路7においては、対角に位置するスイッチング素子(スイッチング素子対)Q1およびQ4が同時にオンオフし、また同様に対角に位置するスイッチング素子(スイッチング素子対)Q2およびQ3が同時にオンオフする。
【0105】
スイッチング素子Q1およびQ4がオンする期間の動作については、スイッチング素子Q4のドレイン端子とソース端子間の電圧がほとんどゼロであるため、実施の形態1である、ハーフブリッジ回路1を用いた回路と同等となり、実施の形態1と同等の動作が行われる。すなわち、直流電源Vi、スイッチング素子Q1およびQ4、検出回路5、共振用キャパシタCr、トランスTrの一次巻線Tr1を含む共振スイッチング回路に電流I1が流れる。
【0106】
一方、スイッチング素子Q2およびQ3がオンする期間の動作については、実施の形態1と異なり、トランスTrの一次巻線Tr1を含む共振スイッチング回路を流れる電流I2の経路に直流電源Viが含まれるようになる。したがって、フルブリッジ回路7を用いる実施の形態3によれば、スイッチング素子Q1およびQ4がオンする期間に加えて、スイッチング素子Q2およびQ3がオンする期間においても、直流電源Viから電流の供給を行う動作となるため、スイッチング素子Q1~Q4に、実施の形態1のスイッチング素子と同じ電流量を流した場合に比べて、電力変換装置101aから出力することが可能な電流を増大させることができる。したがって、大電流を出力する電力変換装置に適した動作が可能となる。
【0107】
実施の形態3においても、負荷4が例えば高負荷となった場合には、実施の形態1と同様に、スイッチング素子Q1とQ4との間およびスイッチング素子Q3とQ2との間を流れる貫通電流の時間変化量を抑制し、サージ電圧やノイズの発生を抑えることが可能となる。
【0108】
なお、実施の形態3においても、ゲート出力回路は、実施の形態2で述べた構成を採用するようにしてもよい。
【0109】
(実施の形態4)
図10は、実施の形態4に係る電力変換装置の構成を示す回路図である。図10は、図1と類似しているので、以下、相違点を主に説明する。主な相違点は、図10では、2つのセンス素子が追加され、検知回路として、センス素子に対応する2つの検知回路が設けられ、2つの検知回路の出力が判定回路に供給されている点である。
【0110】
図10において、101bは、実施の形態4に係る電力変換装置を示している。電力変換装置101bは、ハーフブリッジ回路1a、ゲート駆動回路2、2つの検出回路5-1および5-2、判定回路6a、共振用キャパシタCr、一次巻線Tr1と二次巻線Tr2-1およびTr2-2とで構成されたトランスTr、ダイオードD1およびD2と平滑キャパシタCoとで構成された整流回路3を備えている。入力端子T1およびT2には、外部の直流電源Viが接続され、出力端子T3およびT4には負荷4が接続される。
【0111】
ハーフブリッジ回路1aは、互いに直列的に接続されたスイッチング素子Q1aおよびQ2aを備えている。スイッチング素子Q1aおよびQ2aは、例えば半導体チップのシリコン基板上に形成されたGaN-HEMTによって構成されている。スイッチング素子Q1aおよびQ2aは、主な電流を流すスイッチング素子(主スイッチング素子)Q1a-fおよびQ2a-fと、スイッチング素子Q1aおよびQ2aに流れる電流を分流して流すスイッチング素子(センス用スイッチング素子)Q1a-sおよびQ2a-sと、を備えている。
【0112】
スイッチング素子Q1a-fおよびQ1a-sのそれぞれのドレイン端子は互いに接続されており、またスイッチング素子Q1a-fおよびQ1a-sのそれぞれのゲート端子も互いに接続されている。同様に、スイッチング素子Q2a-fおよびQ2a-sのそれぞれのドレイン端子は互いに接続されており、またスイッチング素子Q2a-fおよびQ2a-sのそれぞれのゲート端子も互いに接続されている。
【0113】
実施の形態4で用いられる主スイッチング素子とセンス用スイッチング素子は、同一の半導体チップの半導体基板(シリコン基板)上に形成されている。図11は、実施の形態4に係る半導体チップの一部分を示す平面図である。図11には、半導体チップの半導体基板(シリコン基板)上に形成されたスイッチング素子Q1aの部分が示されている。
【0114】
スイッチング素子Q1aに含まれているスイッチング素子Q1a-fおよびQ1a-sは、同一基板上に集積されている。図11において、符号Q1a-Tdは、スイッチング素子Q1a-fおよびQ1a-sの共通のドレイン端子を示している。符号Q1a-Tgは、スイッチング素子Q1a-fおよびQ1a-sの共通のゲート端子を示している。また、符号Q1a-Ts-fは、スイッチング素子Q1a-fのソース端子を示し、符号Q1a-Ts-sは、スイッチング素子Q1a-sのソース端子を示している。スイッチング素子Q1a-fおよびQ1a-sのそれぞれのドレイン端子とゲート端子を互いに接続して、スイッチング素子Q1a-fおよびQ1a-sを並列的に接続し、スイッチング素子Q1a-fおよびQ1a-sを並列的に動作させることで、スイッチング素子Q1aに流れる電流の一部を、スイッチング素子Q1a-sに分流することで、スイッチング素子Q1a-sをセンス素子として用いている。
【0115】
図11に示されているように、スイッチング素子Q1a-sのデバイス面積は、スイッチング素子Q1a-fのデバイス面積よりも小さくされている。図11には、スイッチング素子Q1aのみが示されているが、スイッチング素子Q2aについても、スイッチング素子Q1aと同様に構成されている。また、実施の形態4においては、スイッチング素子Q1aおよびQ2aは、同一の半導体基板上に形成されている。
【0116】
図10に戻って説明する。スイッチング素子Q1a-fのソース端子とスイッチング素子Q2aのドレイン端子とが接続されている。スイッチング素子Q2a-fのソース端子は入力端子T2を介して直流電源Viに接続されている。スイッチング素子Q1aおよびQ2aのゲート端子は、ゲート駆動回路2に接続されている。スイッチング素子Q1a-fのソース端子とスイッチング素子Q2aのドレイン端子とが接続された節点と、スイッチング素子Q2a-fのソース端子との間に、共振用キャパシタCrとトランスTrの一次巻線Tr1とが直列に接続されている。
【0117】
また、スイッチング素子Q1a-fおよびQ1a-sのソース端子の間に、検出回路5-1が接続され、スイッチング素子Q2a-fおよびQ2a-sのソース端子の間に、検出回路5-2が接続されている。検出回路5-1および5-2は、例えばシャント抵抗、ホール素子、ロゴスキーコイル等を用いた電流センサである。検出回路5-1および5-2のそれぞれによって、スイッチング素子Q1a-sおよびQ2a-sに流れる電流の電流値が検出される。検出回路5-1および5-2によって検出された電流値はアナログ値として、判定回路6aに出力される。
【0118】
判定回路6aは、例えばコンパレータ等の比較器と、例えばエッジ検出回路やマイクロプロセッサを用いたエッジ検出器により構成される。比較器は、電流検出回路5-1および5-2からの入力と、電流値がゼロの場合の検出値との大小を比較し、デジタル値として出力する。比較器から出力された信号はエッジ検出器に入力され、エッジ検出器は、比較器からの信号の立下りに対応した信号をゲート駆動回路2に出力する。
【0119】
実施の形態1で説明したスイッチング素子Q1およびQ2は、実施の形態4におけるスイッチング素子Q1aおよびQ2aに対応するため、検出回路5-1および5-2からの出力される電流は、図5および図6に示した電流Id1およびId2に対応することになる。したがって、トランスTrの一次巻線Tr1に流れる電流I1の極性が、正から負へ反転する場合の判定信号として、検出回路5-1から出力される電流を用いている。すなわち、判定回路6aは、検出回路5-1から出力されている電流が、正から負へ反転したとき、電流I1の極性が正から負に反転したことを示す判定信号として出力される。
【0120】
一方、トランスTrの一次巻線Tr1に流れる電流I1の極性が、負から正へ反転する場合の判定信号として、検出回路5-2から出力されている電流を用いている。すなわち、判定回路6aは、検出回路5-2から出力されている電流が、正から負へ反転したとき、電流I1の極性が負から正に反転したことを示す判定信号として出力される。ゲート駆動回路2は、判定回路6aからの判定信号を基にして、実施の形態1と同様の動作を行う。
【0121】
実施の形態4によれば、スイッチング素子Q1aおよびQ2aを流れる電流を分流した電流を、それぞれ検出回路5-1および5-2により検出するため、検出される電流の絶対値の大きさは、トランスTrの一次巻線Tr1に流れる電流I1の絶対値よりも小さくなる。したがって、検出回路5-1および5-2を小型化することが可能となる。
【0122】
また、実施の形態4によれば、大電流の流れる経路である、トランスTrの一次巻線Tr1を含む共振スイッチング回路とは別の箇所に検出回路5-1および5-2を設けるため、共振スイッチング回路の寄生インダクタンスを小さくすることが可能となる。
【0123】
また、一般にセンス素子を集積したスイッチング素子を用いる場合、素子内部の温度分布等の影響により、電流センス比率は変動する。しかしながら、実施の形態4によれば、センス素子は、電流の極性(正、負)の反転を判定するために用いているだけであるため、センス素子によって検知された電流の比率(電流センス比率)の変動は、電力変換装置の動作に影響せずに、集積化したセンス素子を用いることが可能である。
【0124】
図10に示した検出回路5-1は、スイッチング素子Q1aと同一の半導体基板上に形成してもよいし、検出回路5-2も、スイッチング素子Q2aと同一の半導体基板上に形成してもよい。
【0125】
なお、実施の形態4では、実施の形態1で説明した電力変換装置を基にした例を説明したが、これに限定されるものではない。すなわち、実施の形態2および実施の形態3で説明した電力変換装置を基にしてもよい。
【0126】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0127】
1 ハーフブリッジ回路
2 ゲート駆動回路
3 整流回路
4 負荷
5、5-1、5-2 検出回路
6 判定回路
7 フルブリッジ回路
100、101、101a、101b 電力変換装置
Cp1、Cp2 出力容量
Q1、Q2、Q3、Q4、Q1a、Q2a スイッチング素子
RSC スイッチング回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12