(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023076205
(43)【公開日】2023-06-01
(54)【発明の名称】スレートの研磨装置
(51)【国際特許分類】
E04D 15/04 20060101AFI20230525BHJP
E04G 23/02 20060101ALI20230525BHJP
【FI】
E04D15/04 S
E04G23/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021189486
(22)【出願日】2021-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】512064354
【氏名又は名称】日本パーミル株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】508324112
【氏名又は名称】株式会社ユーディー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】安西 英男
【テーマコード(参考)】
2E176
【Fターム(参考)】
2E176AA09
2E176AA23
2E176BB05
2E176BB36
(57)【要約】
【課題】より的確に波状のスレートの表層を研磨することが可能でありながら、研磨の際に発生する粉塵の飛散を抑制することができるスレートの研磨装置を提供する。
【解決手段】研磨装置は、スレートの表面に対して所定の軸線m10を中心に縦回転することによりスレートの表層を研磨するブラシ部材20と、ブラシ部材20の周囲を囲うように設けられるカバー60と、を備える。ブラシ部材20は、所定の軸線を中心に回転する回転軸21と、回転軸の外周面から径方向外側に突出するように形成される複数のブラシ片と、を有する。複数のブラシ片は、回転軸の外周面に螺旋状に配置されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スレートの表層を研磨する研磨装置であって、
前記スレートの表面に対して所定の軸線を中心に縦回転することにより前記スレートの表層を研磨するブラシ部材と、
前記ブラシ部材の周囲を囲うように設けられるカバーと、を備え、
前記ブラシ部材は、
前記所定の軸線を中心に回転する回転軸と、
前記回転軸の外周面から径方向外側に突出するように形成される複数のブラシ片と、を有し、
複数の前記ブラシ片は、前記回転軸の外周面に螺旋状に配置されている
スレートの研磨装置。
【請求項2】
前記ブラシ部材は、複数の前記ブラシ片のそれぞれの基端部をかしめて固定する固定部材を更に有し、
前記回転軸の外周面には、前記固定部材が螺旋状に巻回されて固定されている
請求項1に記載のスレートの研磨装置。
【請求項3】
前記ブラシ片には、研磨材が含まれている
請求項1又は2に記載のスレートの研磨装置。
【請求項4】
前記カバーの内部又は外部に液体を噴射する噴射部を更に備える
請求項1~3のいずれか一項に記載のスレートの研磨装置。
【請求項5】
前記ブラシ部材は、複数の前記ブラシ片として、長さの異なる複数のブラシ片を有している
請求項1~4のいずれか一項に記載のスレートの研磨装置。
【請求項6】
前記ブラシ片の先端部が屈曲している
請求項1~5のいずれか一項に記載のスレートの研磨装置。
【請求項7】
前記カバーにより囲われた空間の内部から外部に排出される排水を回収する回収装置を更に備える
請求項1~6のいずれか一項に記載のスレートの研磨装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スレートの研磨装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、セメント及びアスベスト(石綿)を主材料とするスレートがある。スレートは、粘土瓦と比較して非常に軽く且つ安価であるため、外装材や屋根材として多く使用されている。しかしながら、アスベストの粉塵が発生する環境下で人が長時間滞在する等してアスベストを大量に吸い込むと、肺癌の発生率が上昇するおそれがあることが指摘されている。そのため、スレートを使用している建築物の解体工事や改装工事には非常に厳しい規制が課せられている。このようなスレートを除去することが可能な装置としては、下記の特許文献1に記載のスレート除去装置がある。
【0003】
特許文献1に記載のスレート除去装置は、吸塵機と、フードとを備えている。吸塵機は、建築物の外装材や屋根に固定されたスレートを取り外す際に発生する粉塵を、フィルタを介して吸引する。フードは、吸塵機から延設される吸引ホースの先端部に取り付けられており、スレートの表面に当接している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、屋根にスレートを使用している建築物が老朽化してきている場合には、屋根を張り替えることが望ましいが、その建築物が例えば工場の建屋である場合、屋根の張り替えを行うことが困難な場合がある。具体的には、工場の建屋の屋根を張り替えるとなると、屋根の張り替えを行っている期間、長期間に亘ってその建屋で製品を製造することができなくなるおそれがある。また、屋根を張り替えには多額の資金が必要である。このような事情から、老朽化してきている屋根の張り替えに踏み切れない事業者が多く存在する。
【0006】
そこで、発明者は、スレートの表面に所定の補強剤を塗布することにより屋根を補強して、屋根を延命化する方法を検討している。このような方法でスレートを補強する場合、スレートの表面に補強剤を適切に塗布するためには、スレートの表層を研磨する等して、スレートの表面に堆積している異物等を除去する必要がある。この点、特許文献1に記載のスレート除去装置は、屋根に固定されたスレートを取り外す際に発生する粉塵を吸引することはできるものの、スレートの表層を研磨する機能を有していない。そのため、スレートの表層を研磨することが可能な新たな装置が望まれている。また、スレートの表層を実際に研磨するとなると、研磨の際に発生するスレートの粉塵が周囲に飛散する可能性があるため、それを抑制する対策が必要である。
【0007】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、より的確に波状のスレートの表層を研磨することが可能でありながら、研磨の際に発生する粉塵の飛散を抑制することができるスレートの研磨装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するスレートの研磨装置は、スレートの表層を研磨する研磨装置であって、スレートの表面に対して所定の軸線を中心に縦回転することによりスレートの表層を研磨するブラシ部材と、ブラシ部材の周囲を囲うように設けられるカバーと、を備える。ブラシ部材は、所定の軸線を中心に回転する回転軸と、回転軸の外周面から径方向外側に突出するように形成される複数のブラシ片と、を有する。複数のブラシ片は、回転軸の外周面に螺旋状に配置されている。
【0009】
この構成によれば、より的確に複数のブラシ片の先端部を波状のスレートに接触させることができる。そのため、スレートの表面に対してブラシ部材を縦回転させた際に、より適切に波状のスレートの表層を研磨することが可能となる。しかも、ブラシ部材の周囲を囲うように設けられるカバーにより、ブラシ部材がスレートの表層を研磨することにより発生する粉塵の飛散も抑制できる。
【0010】
上記のスレートの研磨装置において、ブラシ部材は、複数のブラシ片のそれぞれの基端部をかしめて固定する固定部材を更に有し、回転軸の外周面には、固定部材が螺旋状に巻回されて固定されていることが好ましい。
この構成によれば、回転軸の外周面に複数のブラシ片が螺旋状に配置される構造を容易に実現することができる。
【0011】
上記のスレートの研磨装置において、ブラシ片には、研磨材が含まれていることが好ましい。
この構成によれば、より的確にスレートの表面を研磨することが可能である。
【0012】
上記のスレートの研磨装置において、カバーの内部又は外部に液体を噴射する噴射部を更に備えることが好ましい。
この構成によれば、スレートの表層に水を含ませることができるため、研磨の際に発生する粉塵の飛散をより的確に抑制することができる。
【0013】
上記のスレートの研磨装置において、ブラシ部材は、複数のブラシ片として、長さの異なる複数のブラシ片を有していることが好ましい。
この構成によれば、波状のスレートの表面に沿うようにブラシ部材を配置することができるため、より的確にスレートの表面を研磨することが可能となる。
【0014】
上記のスレートの研磨装置において、ブラシ片の先端部が屈曲していることが好ましい。
この構成によれば、ブラシ部材が回転した際にブラシ片の先端部がスレートの表面に食い込むため、より的確にスレートの表面を研磨することが可能となる。
【0015】
上記のスレートの研磨装置において、カバーにより囲われた空間の内部から外部に排出される排水を回収する回収装置を更に備えることが好ましい。
この構成によれば、粉塵を含む排水が、カバーにより囲われた空間の内部から外部に排出されたような場合であっても、その排水を確実に回収することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のスレートの研磨装置によれば、より的確に波状のスレートの表層を研磨することが可能でありながら、研磨の際に発生する粉塵の飛散を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1実施形態のスレートの研磨装置の概略構成を模式的に示す図。
【
図2】第1実施形態のスレートの斜視構造を示す斜視図。
【
図3】(A)は、小波スレートの側面構造を示す側面図。(B)は、大波スレートの側面構造を示す側面図。
【
図4】第1実施形態の研磨機本体の正面構造を示す正面図。
【
図5】第1実施形態のブラシ部材の正面構造を示す正面図。
【
図6】第1実施形態の回転軸に固定する前のブラシ部材の正面構造を示す正面図。
【
図7】第1実施形態の回転軸に固定する前のブラシ部材の断面構造を示す断面図。
【
図8】第1実施形態の第1変形例のブラシ部材の固定部材及びブラシ片の断面構造を示す断面図。
【
図9】第1実施形態の第2変形例のブラシ部材の正面構造を示す正面図。
【
図10】第3実施形態のスレートの研磨装置の概略構成を模式的に示す図。
【
図11】第3実施形態のスレートの研磨装置の概略構成を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、スレートの研磨装置の一実施形態について図面を参照しながら説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
<第1実施形態>
はじめに、第1実施形態のスレートの研磨装置について説明する。
図1に示される本実施形態のスレートの研磨装置10は、建築物2の屋根材として用いられるスレート3の表層を研磨するための装置である。スレート3は、セメント及びアスベスト(石綿)を主材料とするものであり、
図2に示されるように矢印X1,X2で示される方向に山部3aと谷部3bとを交互に有して波状に形成されている。なお、スレート3には、
図3(A)に示されるように波ピッチP10が大きな値L11に設定された大波スレートや、
図3(B)に示されるように波ピッチP10が小さな値L12に設定された小波スレート等が存在する。その他、スレート3には、波ピッチP10が「L11」及び「L12」の中間の値に設定された中波スレート等も存在する。本実施形態の研磨装置10は、小波スレートの研磨に有効ではあるが、中波スレートや大波スレートの研磨にも用いることが可能である。
【0019】
なお、以下では、スレート3の表面に対して垂直な方向のうち、鉛直方向上方に向かう方向を「上方Z1」と称し、鉛直方向下方に向かう方向を「下方Z2」と称する。また、矢印X1で示される方向を「左方向X1」と称し、矢印X2で示される方向を「右方向X2」と称する。さらに、上方Z1及び下方Z2をまとめて「上下方向Z」とも称し、左方向X1及び右方向X2をまとめて「左右方向X」とも称する。
【0020】
図1に示されるように、研磨装置10は、研磨機本体11と、回収装置12とを備えている。
研磨機本体11はスレート3の表層を実際に研磨する部分である。研磨機本体11は、スレート3の上面に設置された後、作業者により操作される。作業者が研磨機本体11をスレート3の上面に対してスライド移動させることにより、スレート3の表層が研磨機本体11により研磨される。なお、
図1では、作業者がスレート3の上り方向に向かって研磨機本体11を押すように操作している状況が一例として図示されているが、作業者はスレート3の下り方向に向かって研磨機本体11を押すように操作してもよい。研磨機本体11の移動方向は、
図2に示される矢印Y1,Y2で示される方向、すなわちスレート3が波状に形成されている方向X1,X2に直交する方向である。以下では、矢印Y1で示される方向を「前方Y1」と称し、矢印Y2で示される方向を「後方Y2」と称する。また、前方Y1及び後方Y2をまとめて「前後方向Y」とも称する。
【0021】
図4に示されるように、研磨機本体11は、ブラシ部材20と、フレーム30と、モータ50と、カバー60とを備えている。
フレーム30は、右側縦フレーム31と、左側縦フレーム32と、横フレーム33とを有している。フレーム30はアルミニウム等の金属材料により形成されている。
【0022】
右側縦フレーム31及び左側縦フレーム32は、上下方向Zに延びるように形成されるとともに、左右方向Xに所定の間隔をあけて配置されている。左側縦フレーム32は右側縦フレーム31よりも長く形成されている。横フレーム33は左右方向Xに延びるように形成されている。右側縦フレーム31の上端部は横フレーム33の右端部にボルト等により締結されて固定されている。横フレーム33の左端部は左側縦フレーム32の中間部分付近にボルト等により締結されて固定されている。このような締結構造により、右側縦フレーム31、左側縦フレーム32、及び横フレーム33は一体的に連結されている。
【0023】
横フレーム33の中間部分付近にはハンドル70が一体的に連結されている。ハンドル70は略T字状に形成されており、上下方向Zに延びるように形成される軸部71と、軸部71の上端部に設けられる第1把持部72とを有している。軸部71の上端部は第1把持部72の中間部分に連結されている。第1把持部72は、左右方向Xに延びるように形成されている。軸部71の途中には第2把持部73が更に形成されている。第2把持部73は、軸部71から右方向X2に延びるように形成されている。第1把持部72及び第2把持部73は、作業者が両手でそれぞれ掴むことが可能な部分である。
【0024】
右側縦フレーム31の下端部及び左側縦フレーム32の下端部の間にはブラシ部材20が回転可能に支持されている。
図5に示されるように、ブラシ部材20は、回転軸21と、ブラシ本体22とを有している。
【0025】
回転軸21は、左右方向Xに延びるように形成される円柱状の部材からなる。
ブラシ本体22は、複数のブラシ片220と、固定部材221とを有している。
固定部材221は、回転軸21の外周面に螺旋状に巻回されている。固定部材221は、回転軸21の外周面に溶接により固定されている。
【0026】
複数のブラシ片220は、固定部材221から外側に向かって延びるように配置されている。ブラシ片220は、例えば研磨材を含有した6,4-ナイロン等の樹脂材料により形成されている。
図6及び
図7は、回転軸21に固定される前のブラシ本体22の正面構造及び断面構造をそれぞれ示したものである。
図6及び
図7に示されるブラシ本体22は、直線状に延びるように形成される固定部材221と、固定部材221から延びるように形成される複数のブラシ片220とを有している。
図7に示されるように、固定部材221は、平板状の部材をU字状に折り曲げることにより形成されている。複数のブラシ片220の基端部は、U字状に折り曲げられた固定部材221によりかしめられることで固定されている。
【0027】
図6及び
図7に示されるブラシ本体22の固定部材221は回転軸21の外周面に螺旋状に巻回された後、回転軸21に溶接により固定される。これにより、
図5に示されるように、複数のブラシ片220は、回転軸21の外周面から径方向外側に突出するように形成される。なお、
図4では、ブラシ本体22の外縁のみが実線及び破線で示されている。
【0028】
図4に示されるように、回転軸21の右端部にはフランジ部211及び右軸部212が形成されている。右軸部212は、右側縦フレーム31の下端部に設けられる挿入孔310に挿入されている。挿入孔310にはベアリング311が設けられている。回転軸21の右軸部212はベアリング311により回転可能に支持されている。回転軸21の左端部には同様にフランジ部213及び左軸部214が形成されている。左軸部214は、左側縦フレーム32の下端部に設けられる挿入孔320に挿入されている。挿入孔320にはベアリング321が設けられている。回転軸21の左軸部214はベアリング321により回転可能に支持されている。このような構造により、回転軸21は、左右方向Xに並行な軸線m10を中心に回転可能に支持されている。回転軸21が軸線m10を中心に回転することにより、ブラシ部材20も軸線m10を中心に回転する。本実施形態では、左右方向Xが、軸線m10が延びる軸方向に相当する。
【0029】
回転軸21の左軸部214の先端部は左側縦フレーム32の下端部を貫通して左側縦フレーム32の左側面から突出するように設けられている。回転軸21の左軸部214はベルト90を介してモータ50と連結されている。
詳しくは、モータ50は左側縦フレーム32の上端部に固定されている。モータ50はコード51を介して図示しない電源に接続されている。モータ50は、電源からコード51を介して供給される電力に基づいて駆動する。モータ50の出力軸52の先端部は左側縦フレーム32の上端部を貫通して左側縦フレーム32の左側面から突出するように設けられている。モータ50の出力軸52の先端部にはプーリ91が設けられている。同様に、回転軸21の左軸部214の先端部にもプーリ92が設けられている。各プーリ91,92にベルト90が巻回されることにより、モータ50の出力軸52がベルト90を介して回転軸21の左軸部214に連結されている。
【0030】
カバー60はブラシ本体22を覆うように設けられている。カバー60は、底部に開口部61を有する箱状に形成されている。
図4に示されるように、カバー60において前方Y1に配置される前壁部62の底部には、ブラシ本体22に対して前方Y1に対向するように山形状の突出部620が形成されている。なお、図示は省略するが、カバー60において後方Y2に配置される後壁部の底部にも、同様に、ブラシ本体22に対して後方Y2に対向するように突出部620が形成されている。
【0031】
図4に示されるように、カバー60の前壁部62の前面には水管100が設けられている。水管100は、カバー60の前壁部62の前面において左右方向Xに延びるように形成されている。水管100の底面には、左右方向Xに所定の間隔をあけて複数の噴射口が形成されている。水管100にはホース101を介して水が供給されている。ホース101の途中には、水管100への水の供給及び供給の停止を作業者が手動で切り替えることが可能なコックバルブ102が設けられている。本実施形態では、水管100が噴射部に相当する。また、水管100から噴射される水が、スレート3の表面に噴射される液体に相当する。
【0032】
図1に示されるように、回収装置12は、回収部121と、回収缶122とを備えている。回収部121はスレート3の下端部に設けられている。回収部121は、屋根の下端部に設けられる樋等であり、断面凹状に形成されている。回収缶122はホース123を介して回収部121に接続されている。回収缶122は、回収部121を流れる液体を所定の吸引力でホース123を通じて吸引するとともに、吸引された液体を貯蔵する。
【0033】
次に、本実施形態の研磨装置10の動作例について説明する。
まず、作業者がスレート3の表面に対して研磨機本体11を例えば
図5に二点鎖線で示されるように、すなわちブラシ片220をスレート3の表面に接触させるように配置する。なお、
図5では、複数のブラシ片220の一部の先端部が二点鎖線よりも下方に位置している。これらのブラシ片220は、それらの先端部が弾性変形することによりスレート3の表面に密着する。
【0034】
このようにしてブラシ片220をスレート3の表面に密着させた後、コックバルブ102を作業者が開操作すると、ホース101を介して水管100に水が供給されて、水管100から、カバー60の前方Y1に位置しているスレート3の所定の範囲に水が噴射される。これにより、スレート3の表層に水を含ませることができるため、ブラシ片220によりスレート3の表層を研磨した際に発生する粉塵が空気中に飛散することを抑制できる。
【0035】
作業者は、スレート3の表層を実際に研磨する際には、
図4に示されるコード51を電源に接続することによりモータ50に電力を供給する。これによりモータ50が駆動すると、モータ50の出力トルクがベルト90を介して回転軸21に伝達される。これにより、ブラシ本体22が回転軸21と一体となって軸線m10を中心に回転する、換言すればスレート3の表面に対して縦回転する。このとき、ブラシ片220の先端部がスレート3の表面に接触しているため、ブラシ部材20の回転により、スレート3の表面から所定の深さまでの領域に存在する表層が削り取られる。この時に発生する粉塵には、スレート3の表面に付着している異物だけでなく、スレート3の表層の一部、すなわちアスベストが含まれている。
図4に示されるようにブラシ本体22の前方Y1にはカバー60の前壁部62の突出部620が対向し、且つブラシ本体22の後方Y2には図示しないカバー60の後壁部の突出部620が対向している。そのため、カバー60の内部から外部への粉塵の飛散が抑制されている。
【0036】
研磨機本体11がスレート3の表層を研磨することにより発生する粉塵は、水管100から噴射される水と共にカバー60の下部の空間からカバー60の外部に排出される。この排水はスレート3の谷部3bを通じて回収部121に流れ込むことにより、回収部121において回収される。回収部121において回収された排水はホース123を通じて回収缶122により回収される。
【0037】
作業者はハンドル70を把持しつつ研磨機本体11をスレート3の表面に対して前後方向Yにスライド移動させることにより、スレート3の任意の領域を研磨することができる。
以上説明した本実施形態の研磨装置10によれば、以下の(1)~(4)に示される作用及び効果を得ることができる。
【0038】
(1)研磨装置10は、ブラシ部材20の周囲を囲うように設けられるカバー60を備える。ブラシ部材20は、所定の軸線m10を中心に回転する回転軸21と、回転軸21の外周面から径方向外側に突出するように形成される複数のブラシ片220とを有している。複数のブラシ片220は回転軸21の外周面に螺旋状に配置されている。この構成によれば、より的確に複数のブラシ片220の先端部を波状のスレート3に接触させることができる。そのため、スレート3の表面に対してブラシ部材20を縦回転させた際に、より適切に波状のスレート3の表層を研磨することが可能となる。しかも、ブラシ部材20の周囲を囲うように設けられるカバー60により、ブラシ部材20がスレート3の表層を研磨することにより発生する粉塵の飛散も抑制できる。
【0039】
(2)ブラシ部材20は、複数のブラシ片のそれぞれの基端部をかしめて固定する固定部材221を更に有する。回転軸21の外周面には固定部材221が螺旋状に巻回されて固定されている。この構成によれば、回転軸21の外周面に複数のブラシ片220が螺旋状に配置される構造を容易に実現することができる。
【0040】
(3)ブラシ片220には研磨材が含まれている。この構成によれば、より的確にスレート3の表面を研磨することが可能である。
(4)研磨装置10は、カバー60の外部に水を噴射する水管100を更に備える。この構成によれば、スレート3の表層に水を含ませることができるため、研磨の際に発生する粉塵の飛散をより的確に抑制することができる。
【0041】
(5)研磨装置10は、カバー60により囲われた空間の内部から外部に排出される排水を回収する回収装置12を更に備える。この構成によれば、粉塵を含む排水が、カバー60により囲われた空間の内部から外部に排出されたような場合であっても、その排水を確実に回収することが可能となる。
【0042】
(第1変形例)
次に、第1実施形態の研磨装置10の第1変形例について説明する。
図8に示されるように、本変形例のブラシ片220の先端部は、ブラシ部材20の回転方向Cに向かって屈曲している。この構成によれば、ブラシ部材20が回転した際に、ブラシ片220の先端部がスレート3の表面に食い込むため、より的確にスレート3の表面を研磨することが可能となる。
【0043】
(第2変形例)
次に、第1実施形態の研磨装置10の第2変形例について説明する。
図9に示されるように、本変形例のブラシ部材20は、全長が長いブラシ片220aと、全長が短いブラシ片220bとが組み合わされて構成されている。この構成によれば、全長が長いブラシ片220aをスレート3の谷部3bに接触させ、且つ全長が短いブラシ片220bをスレート3の山部2aに接触させれば、波状のスレート3の表面に沿うようにブラシ部材20を配置することができるため、より的確にスレート3の表面を研磨することが可能となる。
【0044】
なお、本変形例の研磨装置10では、複数のブラシ片220の長さを波状に変化させれば、より的確にブラシ部材20を波状のスレートに接触させることが可能である。
<第2実施形態>
次に、スレートの研磨装置10の第2実施形態について説明する。以下、第1実施形態の研磨装置10との相違点を中心に説明する。
【0045】
図10に示されるように、本実施形態の研磨装置10は、建築物2の外壁材として用いられるスレート4を研磨するために用いられる。
図11に示されるように、スレート4の山部4a及び谷部4bは鉛直方向に延びている。このように外壁材としてスレート4が用いられている場合、
図10に示されるように、作業者はスレート4に対して水平方向から研磨機本体11を押し付けた後、当該研磨機本体11を鉛直方向上方及び下方に操作すれば、スレート4の表層を研磨することができる。
【0046】
図11に示されるように、本実施形態の研磨装置10では、カバー60の内部に水管100が配置されている。したがって、水管100はカバー60の内部に水を噴射する。カバー60の内部においてブラシ部材20により研磨されることで発生するスレート4の粉塵は、水管100から噴射される水と共にカバー60の下方から排出される。したがって、カバー60の下方から排出される水にはアスベストが含まれている可能性がある。本実施形態の研磨装置10は、このアスベストを含む排水を回収する回収装置17を更に備えている。
【0047】
回収装置17は、第1吸引部171と、凹状回収部172と、回収缶173とを備えている。
第1吸引部171はカバー60の後部に取り付けられている。第1吸引部171はホース175aを介して回収缶173に接続されている。第1吸引部171は、回収缶173の吸引力に基づいて、カバー60の内部に存在する排水を吸引する。
【0048】
凹状回収部172は、スレート4の鉛直方向下方の端部に配置されている。凹状回収部172は塩化ビニル、鉄、ゴム等により形成されている。凹状回収部172には、第1吸引部171により吸引することができなかった排水が流れ込む。凹状回収部172はホース175bを介して回収缶173に接続されている。
【0049】
回収缶173はホース175aを介して第1吸引部171から排水を吸引する。また、回収缶173は、凹状回収部172に溜まっている排水を、ホース175bを介して吸引する。
以上説明した本実施形態の研磨装置10によれば、以下の(6)に示される作用及び効果を更に得ることができる。
【0050】
(6)仮にアスベストを含む排水がカバー60から排出されたとしても、その排水を回収装置17により確実に回収することができる。
<他の実施形態>
なお、上記実施形態は、以下の形態にて実施することもできる。
【0051】
・本開示は上記の具体例に限定されるものではない。上記の具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素、及びその配置、条件、形状等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【符号の説明】
【0052】
3,4…スレート、10…研磨装置、12,17…回収装置、20…ブラシ部材、21…回転軸、60…カバー、100…水管(噴射部)、220…ブラシ片、221…固定部材。