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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023007621
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】回転運動往復運動変換装置
(51)【国際特許分類】
   F01B 3/02 20060101AFI20230112BHJP
   F16H 19/02 20060101ALI20230112BHJP
   F16H 21/18 20060101ALI20230112BHJP
   F02B 75/32 20060101ALI20230112BHJP
【FI】
F01B3/02
F16H19/02 Z
F16H21/18
F02B75/32 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021110588
(22)【出願日】2021-07-02
(71)【出願人】
【識別番号】521291921
【氏名又は名称】株式会社きたむら
(74)【代理人】
【識別番号】100100170
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 厚司
(72)【発明者】
【氏名】北村 靖文
【テーマコード(参考)】
3J062
【Fターム(参考)】
3J062AA31
3J062AB27
3J062AB29
3J062AC07
3J062BA11
3J062CB02
3J062CB06
3J062CB14
3J062CB22
3J062CB27
3J062CB33
3J062CB44
(57)【要約】
【課題】揺動部材の支持構造が簡略化されるとともに、取り付けが簡単で、揺動部材の両端部の往復円弧運動が円滑に行える回転運動往復運動変換装置を提供する。
【解決手段】回転運動往復運動変換装置は、往復運動を行う少なくとも2つの往復運動部材4a、4cと、回転運動を行う回転運動部材6と、2つの往復運動部材4a、4c連結する揺動部材7と、揺動部材7と回転運動部材6を連結するZクランク部材8とを備え、回転運動部材6の回転運動と往復運動部材4a、4cの往復運動を双方向に変換する。往復運動部材4a、4cの往復運動の方向と平行な往復円弧運動を行う揺動部材7の両端部に、往復円弧運動の面に平行なX及びY方向の移動を許容し、往復円弧運動の面に垂直なZ方向の移動を拘束する拘束部材9a、9bが設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
往復運動を行う少なくとも2つの往復運動部材と、
回転運動を行う回転運動部材と、
前記2つの往復運動部材を連結する揺動部材と、
前記揺動部材と前記回転運動部材を連結するZクランク部材とを備え、前記回転運動部材の回転運動と前記往復運動部材の往復運動を双方向に変換する回転運動往復運動変換装置において、
前記往復運動部材の往復運動の方向と平行な往復円弧運動を行う前記揺動部材の両端部に、前記往復円弧運動の面に平行な方向の移動を許容し、前記往復円弧運動の面に垂直な方向の移動を拘束する拘束部材が設けられていることを特徴とする回転運動往復運動変換装置。
【請求項2】
前記往復運動部材は、シリンダ内を摺動するピストンに連結されたピストンロッドであり、前記回転運動部材は、回転軸であり、前記揺動部材は、前記ピストンロッドを連結する揺動アームであることを特徴とする請求項1に記載の回転運動往復運動変換装置。
【請求項3】
前記Zクランク部材は、
前記揺動部材が挿通された傾斜部材と、
前記傾斜部材の一端と前記回転運動部材とを連結する第1連結部材と、
前記傾斜部材の他端に連結される第2連結部材と、から構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の回転運動往復運動変換装置。
【請求項4】
前記拘束部材は、
前記揺動部材の両端の孔に挿通されたピンと、
前記ピンに装着されたベアリングと、
前記往復運動部材に連結され、前記ベアリングを前記往復運動部材の往復運動方向から挟持する2つの挟持部材と、
前記2つの狭持部材に連結され、前記揺動部材を前記ピンの軸方向から前記ベアリングを介して支持する2つの支持部材と、
前記支持部材に取り付けられ、前記往復運動部材及び前記回転運動部材を支持するフレームに設けられたレールに対して、前記往復運動部材の往復運動方向にスライド可能に設けられたスライド部材と、を備えていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の回転運動往復運動変換装置。
【請求項5】
前記拘束部材は、アームを備え、
前記アームの一端は、前記揺動部材の両端部に回動可能に連結され、
前記アームの他端は、前記揺動部材の中心を通り、前記往復円弧運動の面に垂直な方向の軸線上にあって、前記往復運動部材及び前記回転運動部材を支持するフレームに回動可能に連結されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の回転運動往復運動変換装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に蒸気機関、スターリングエンジン等の外燃機関や圧縮機等に好適に適用され、回転運動と往復運動を双方向に変換する回転運動往復運動変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、回転運動を行う回転軸と、直線往復運動を行う複数個の往復運動部材(ピストン)とを、Z型軸部(Zクランク軸)及び揺動アームを介して連結して、回転軸の回転運動と往復運動部材の往復運動を双方向に変換することができる回転運動往復運動変換装置が記載されている。この回転運動往復運動変換装置では、回転軸に傾斜軸部と接続軸部からなるZ型軸部(Zクランク軸)が連結され、傾斜軸部に設けた傾斜部材に複数の揺動アームが突設されて、各揺動アームの先端が往復運動部材の往復移動連結部材(ピストンロッド)に対して回転みそすり運動が可能に連結されている。しかしながら、この回転運動往復運動変換装置は、揺動アームの先端と往復移動連結部材との連結部に滑り摩擦が生じるため、耐久性及び変換効率が低下するという問題があった。
【0003】
特許文献2には、揺動アームに傾斜側連結部材が設けられ、往復移動連結部材(ピストンロッド)に往復側連結部材が設けられ、傾斜側連結部材と往復側連結部材が偏心軸を介して連結され、傾斜側連結部材の回転みそすり運動と往復側連結部材とが双方向に変換されるようにした回転運動往復運動変換装置が記載されている。
【0004】
特許文献1及び特許文献2のいずれの回転運動往復運動変換装置でも、揺動アームの先端は回転みそすり運動(8の字運動)をするため、往復側連結部材との連結が複雑になっていた。
【0005】
図7は、従来のZクランク軸を有する2気筒蒸気エンジン100を示す。この2気筒蒸気エンジン100は、第1シリンダ101a及び第2シリンダ101bと、第1シリンダ101aのピストン102aに連結されたピストンロッド103aと第2シリンダ101bのピストン102bに連結されたピストンロッド103bとを連結する揺動アーム104と、出力軸105と、揺動アーム104と出力軸105を連結するZクランク部材106とを備えている。Zクランク部材106は、揺動アーム104が挿通された傾斜部材106aと、当該傾斜部材106aの一端と出力軸105とを連結する第1連結部材1066bと、傾斜部材106aの他端に連結される第2連結部材106cとから構成されている。
【0006】
図7の2気筒蒸気エンジ100において、第1シリンダ101aと第2シリンダ101bのピストン102a、102bが往復運動し、揺動アーム104が往復円弧運動を行うのに伴い、Zクランク部材106の傾斜部材106aはみそすり運動を行う。Zクランク部材106の傾斜部材106aのみそすり運動に伴い、第1シリンダ101a及び第2シリンダ101bが共回りしないように、揺動アーム104の中間に、垂直部材107が揺動アーム104に対して直交する方向に固定されている。垂直部材107の両端は2気筒蒸気エンジン100のフレーム108に回転可能に連結されている。
【0007】
図7の2気筒蒸気エンジンでは、垂直部材107が貫通する傾斜部材106aの外表面には、傾斜部材106aが8の字運動を行えるように、穴109を形成する必要があるうえ、この穴109を通して傾斜部材106aの狭い内部で垂直部材107を揺動アーム104に取り付けなければならず、組み立てが困難であるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11-343923号公報
【特許文献2】特開2010-96140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は前記従来の問題点に鑑みてなされたもので、揺動部材の支持構造が簡略化されるとともに、取り付けが簡単で、揺動部材の両端部の往復円弧運動が円滑に行える回転運動往復運動変換装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、みそすり運動を行うZクランク部材には8の字運動を行う部分と往復円弧運動を行う部分があることに着目し、往復円弧運動を行う部分で揺動部材の両端部の回転運動を拘束することで、揺動部材の支持構造が簡略化されることを見出した。
【0011】
すなわち、本願発明は、
往復運動を行う少なくとも2つの往復運動部材と、
回転運動を行う回転運動部材と、
前記2つの往復運動部材を連結する揺動部材と、
前記揺動部材と前記回転運動部材を連結するZクランク部材とを備え、前記回転運動部材の回転運動と前記往復運動部材の往復運動を双方向に変換する回転運動往復運動変換装置において、
前記往復運動部材の往復運動の方向と平行な往復円弧運動を行う前記揺動部材の両端部に、前記往復円弧運動の面に平行な方向の移動を許容し、前記往復円弧運動の面に垂直な方向の移動を拘束する拘束部材が設けられていることを特徴とする。
【0012】
前記往復運動部材は、シリンダ内を摺動するピストンに連結されたピストンロッドであり、前記回転運動部材は、回転軸であり、前記揺動部材は、前記ピストンロッドを連結する揺動アームであることが好ましい。
【0013】
前記Zクランク部材は、
前記揺動部材が挿通された傾斜部材と、
前記傾斜部材の一端と前記回転運動部材とを連結する第1連結部材と、
前記傾斜部材の他端に連結される第2連結部材と、
から構成されていることが好ましい。
【0014】
前記拘束部材の一実施形態として、
前記揺動部材の両端の孔に挿通されたピンと、
前記ピンに装着されたベアリングと、
前記往復運動部材に連結され、前記ベアリングを前記往復運動部材の往復運動方向から挟持する2つの挟持部材と、
前記2つの狭持部材に連結され、前記揺動部材を前記ピンの軸方向から前記ベアリングを介して支持する2つの支持部材と、
前記支持部材に取り付けられ、前記往復運動部材及び前記回転運動部材を支持するフレームに設けられたレールに対して、前記往復運動部材の往復運動方向にスライド可能に設けられたスライド部材と、を備えていることが好ましい。
【0015】
前記拘束部材の他の実施形態として、
前記拘束部材は、アームを備え、
前記アームの一端は、前記揺動部材の両端部に回動可能に連結され、
前記アームの他端は、前記揺動部材の中心を通り、前記往復円弧運動の面に垂直な方向の軸線上にあって、前記往復運動部材及び前記回転運動部材を支持するフレームに回動可能に連結されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、往復運動部材の往復運動の方向と平行な往復円弧運動を行う揺動部材の両端部が、拘束部材によって、往復円弧運動の面に平行な方向の移動が許容され、往復円弧運動の面に垂直な方向の移動が拘束されている。このため、従来のように、Zクランク部材の傾斜部材の狭い内部で揺動部材の中間に垂直部材を取り付けたり、傾斜部材の8の字運動により垂直部材と干渉しないように穴を形成することが不要となり、揺動部材の両端部に拘束部材を取り付けるだけでよいので、揺動部材の支持構造が簡略化されるとともに、取り付けが簡単で、揺動部材の両端部の往復円弧運動が円滑に行えるという効果を有している。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1実施形態に係る回転運動往復運動変換装置を備えた蒸気エンジンのピストンが上死点又は下死点にあるときの部分断面平面図。
図2図1の蒸気エンジンのピストンが中間点にあるときの部分断面平面図。
図3図2の状態の蒸気エンジンのピストンロッドと揺動アームとの連結部の正面図。
図4】Zクランク部材の拡大断面図及びそのA方向及びB方向矢視図。
図5】拘束部材の分解斜視図。
図6】発明の第2実施形態に係る回転運動往復運動変換装置の揺動アーム及びZクランク部材を示す平面図(a)及びC-C線断面図(b)。
図7】従来の回転運動往復運動変換装置を備えた蒸気エンジンの部分断面平面図(a)、及び正面図(b)。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を添付図面に従って説明する。
【0019】
図1図2図3は、本発明の第1実施形態に係る回転運動往復運動変換装置を備えた4気筒の蒸気エンジン1を示す。この蒸気エンジン1は、本体フレーム2と、ピストン3(3a、3b、3c、3d)及びピストンロッド4(4a、4b、4c、4d)を有する第1から第4の4つのシリンダ5(5a、5b、5c、5d)と、回転軸6と、揺動アーム7と、Zクランク部材8と、2つの拘束部材9a、9bとを備えている。なお、以下の悦明において、シリンダ5内のピストン3の往復運動方向をX方向、X方向に直交する水平方向をY方向、X方向に直交する垂直方向をZ方向という。
【0020】
本体フレーム2は、X方向に所定間隔で配置された第1サポートプレート2a、第2サポートプレート2b及び第3サポートプレート2cと、第1サポートプレート2aと第2サポートプレート2bを連結する連結ロッド2dと、第1サポートプレート2aと第3サポートプレート2cを連結する連結ロッド2eとを備えている。
【0021】
4つのシリンダ5のうち、第1シリンダ5aと第2シリンダ5bはX方向に対向して配置され、第3シリンダ5cと第4シリンダ5dは、それぞれ第1シリンダ5a、第2シリンダ5bからY方向に離れて配置されるとともに、X方向に対向して配置されている。第1シリンダ5aと第3シリンダ5cは、第1サポートプレート2aに支持され、第2シリンダ5bと第4シリンダ5dは、第2サポートプレート2bに支持されている。第1シリンダ5aのピストンロッド4aと第2シリンダ5bのピストンロッド4bとは、第1拘束部材9aによって互いに連結され、同様に、第3シリンダ5cのピストンロッド4cと第4シリンダ5dのピストンロッド4dとは、第2拘束部材9bによって互いに連結されている。なお、各シリンダ5のピストンロッド4は、本発明の往復運動を行う往復運動部材である。
【0022】
回転軸6は、第1シリンダ5aと第3シリンダ5cの間で、第3サポートプレート2cにベアリング6aを介して回転可能に支持されている。回転軸6の一端は、出力ホイール6bが取り付けられ、他端には、後述するZクランク部材8の第1連結部材11に連結されている。回転軸6は、本発明の回転運動を行う回転運動部材である。
【0023】
揺動アーム7は、図4に示すように、Zクランク部材8の傾斜部材10を貫通して、傾斜部材10に対して回転可能に設けられ、両端は傾斜部材10から突出し、孔7aが形成されている。図1に示すように、揺動アーム7の一端は、第1拘束部材9aを介して、第1シリンダ5aのピストンロッド4aと第2シリンダ5bのピストンロッド4bに連結され、揺動アーム7の他端は、第2拘束部材9bを介して、第3シリンダ5cのピストンロッド4cと第4シリンダ5dのピストンロッド4dに連結されている。
【0024】
Zクランク部材8は、図4に示すように、傾斜部材10と、第1連結部材11と、第2連結部材12とから構成されている。
【0025】
傾斜部材10は、X方向に対して傾斜した傾斜軸sを有し、傾斜軸s上の一端に第1穴0aが形成され、傾斜軸s上の他端に第2穴10bが形成され、中央に傾斜軸sと直交する方向に貫通穴10cが形成されている。第1穴10aには、係合凸部13aを有する第1取付台13がベアリング13bにより回転可能に取り付けられている。第2穴10bには、係合凸部14aを有する第2取付台14がベアリング14bにより回転可能に取り付けられている。貫通穴10cには、揺動アーム7が貫通し、ベアリング7bにより回転可能に取り付けられている。
【0026】
第1連結部材11は、第1取付台13の係合凸部13aと係合する係合凹部11aを有し、ねじ15により第1取付台13に取り付けられる取付部11bと、回転軸6と同軸の軸部11cと、取付部11bと軸部11cを連結する連結部11dとを有している。第1連結部材11の軸部11cは、第1サポートプレート2aにベアリング11eを介して回転可能に取り付けられるとともに、回転軸6の出力ホイール6bと反対側の端部に固定されている。
【0027】
同様に、第2連結部材12は、第2取付台14の係合凸部14aと係合する係合凹部12aを有し、ねじ16により第2取付台14に取り付けられる取付部12bと、回転軸6と同軸の軸部12cと、取付部12bと軸部12cを連結する連結部12dとを有している。第2連結部材12の軸部12cは、第2サポートプレート2bにベアリング12fを介して回転可能に取り付けられている。
【0028】
2つの拘束部材9a、9bは、同じ構造であるため、図5示す拘束部材9aについて説明すると、拘束部材9aは、ピン17と、ベアリング18と、2つの狭持部材19と、2つの支持部材20と、2つのスライド部材21とから構成されている。
【0029】
ピン17は、揺動アーム7の両端部の孔7aに挿通され、両端がZ方向及び反Z方向に突出している。
【0030】
ベアリング18は、ピン17の上端と下端に2個ずつ装着され、止め輪等で適宜抜け止めされている。
【0031】
2つの狭持部材19は、矩形の板状で、それぞれピストンロッド4a、4bの先端に設けられた取付板22にねじ23により取り付けられている。2つの狭持部材19は、ベアリング18の径と同一の寸法だけ離れて設けられ、図3に示すように、揺動アーム7の揺動運動時にベアリング18をX方向から狭持するとともに、Y方向にガイドするようになっている。2つの狭持部材19の対向する面には、Y方向に延びる切欠き19aが形成され、揺動アーム7の揺動運動時に揺動アーム9の一部が切欠き19aに入り込んで、揺動アーム7が狭持部材19と干渉しないようになっている。
【0032】
2つの支持部材20は、2つの狭持部材19の上端と下端を連結するようにねじ24で取り付けられている。これにより、図3に示すように、第1シリンダ5aのピストンロッド4aと第2シリンダ5bのピストンロッド4bとが一体にX方向に移動可能になっている。また、2つの支持部材20の間に、揺動アーム7の両端部がベアリング18を介してY方向に支持されるようになっている。
【0033】
2つのスライド部材21は、本体フレーム2の第1サポートプレート2aと第2サポートプレート2bの間に架け渡して設けられたサポートビーム2fにX方向に延びるように取り付けられたレール21aと、当該レール21a上を摺動可能なスライダ21bとからなっている。スライダ21bは、2つの支持部材20に固定されている。
【0034】
次に、本発明の実施形態に係る回転運動往復運動変換装置を備えた4気筒の蒸気エンジン1の作用について説明する。
【0035】
図1に示すように、第1シリンダ5aのピストン3aが上死点、第1リンダ5aと対向する第2シリンダ5bのピストン3bが下死点にあり、第3シリンダ5cのピストン3cが下死点、第3リンダ5cと対向する第4シリンダ5dのピストン3dが上死点にある状態から、蒸気エンジン1が始動すると、第1シリンダ5aのピストン3aが下死点に向かって移動し、第2シリンダ5bのピストン3bが上死点に向かって移動するとともに、第3シリンダ5cのピストン3cが上死点に向かって移動し、第4シリンダ5dのピストン3dが下死点に向かって移動する。
【0036】
各シリンダ5のピストン3の移動により、第1シリンダ5aと第2シリンダ5bのピストンロッド4a、4bが、反X方向に移動し、第3シリンダ5cと第4シリンダ5dのピストンロッド4c、4dが、反X方向に移動する。このとき、第1拘束部材9aのベアリング18が狭持部材19にX方向に押圧され、第2拘束部材9bのベアリング18が狭持部材19にX方向に押圧される結果、ピン17を介して揺動アーム7が図1から図2の状態を経て時計回りに揺動する。
【0037】
揺動アーム7の揺動により、揺動アーム7の両端部は往復円弧運動を行い、Zクランク部材8の傾斜部材10はみそすり運動を行う。これにより、Zクランク部材8の第1連結部材11と第2連結部材12が回転し、第1連結部材11から回転軸6に回転力が伝達され、回転軸6が回転運動する。
【0038】
揺動アーム7の両端部が往復円弧運動を行い、Zクランク部材8の傾斜部材10がみそすり運動を行う間、揺動アーム7の両端部は、第1拘束部材9aと第2拘束部材9bにより、往復円弧運動の面に平行なY方向及びX方向の移動が許容され、往復円弧運動の面に垂直なZ方向の移動が拘束される。
【0039】
また、Zクランク部材8の第1連結部材11、第2連結部材12及び回転軸6の回転運動の反作用として、揺動アーム7に回転力が作用するが、この回転力は、図3に示すように、第1拘束部材9aと第2拘束部材9bのベアリング18、支持部材20、及びスライド部材21を介して、本体フレーム2のサポートビーム2fに伝達されるため、シリンダ5が回転軸6とともに共回りするのが防止される。
【0040】
本実施形態では、Zクランク部材8に従来のような垂直部材が無いため、従来のように、Zクランク部材8の傾斜部材10の狭い内部で揺動アーム7の中間に垂直部材を取り付けたり、傾斜部材10の8の字運動により垂直部材と干渉しないように穴を形成することが不要となり、揺動アーム7の両端部に第1拘束部材9aと第2拘束部材9bを取り付けるだけでよいので、揺動アーム7の支持構造が簡略化されるとともに、取り付けが簡単になる。また、揺動アーム7の両端部は、往復円弧運動の面に平行なY方向及びX方向の移動が許容されるので、揺動アーム7の両端部の往復円弧運動が円滑に行える。
【0041】
前記実施形態では、揺動アーム7の両端部であって、揺動アーム7とピストンロッド4の連結部に拘束部材9a、9bを設けたが、揺動アーム7とピストンロッド4の連結部よりも内側又は外側に拘束部材を設けてもよい。
【0042】
図6は、揺動アーム7とピストンロッド4の連結部より内側に湾曲アーム25からなる拘束部材を設けたものである。湾曲アーム25の一端は、揺動アーム7とピストンロッド4の連結部と、Zクランク部材8の傾斜部材10との間に、ベアリング26を介して回動可能に連結され、湾曲アーム25の他端は、揺動アーム7の中心を通るZ方向の軸線上でサポートビーム2fに設けられた軸部27にベアリング28を介して回動可能に連結されている。湾曲アーム25の中間は、みそすり運動する傾斜部材10の外形が描く軌跡面より外側にあり、傾斜部材10と干渉しないようになっている、この実施形態においても、揺動アーム7の両端部は、湾曲アーム25によって、往復円弧運動の面に平行なY方向及びX方向の移動を許容し、往復円弧運動の面に垂直なZ方向の移動を拘束している。なお、湾曲アーム25は、揺動アーム7とピストンロッド4の連結部より外側で連結することもできる。
【0043】
本発明は、前記実施形態に限るものではなく、特許請求の範囲に記載の発明の要旨を変更することなく、修正や変更を行うことができる。
例えば、Zクランク部材8の傾斜部材10は、図6中2点鎖線で示すように、半球体を組み合わせた中空の球体にすることで、回転軸6回りの質量バランスがとられるため、みそすり運動をより円滑にすることができる。
【0044】
前記実施形態の回転運動往復運動変換装置は、水平対向の4気筒型のエンジンに適応したが、2気筒型のエンジンにも適用することができる。
【0045】
また、前記実施形態の回転運動往復運動変換装置はシリンダのピストン及びピストンロッドの往復運動を回転軸の回転運動に変換するものであるが、逆にモータやタービンの回転軸の回転をシリンダのピストン及びピストンロッドの往復運動に変換する圧縮機にも適用することができる。
【符号の説明】
【0046】
1…蒸気エンジン
2…本体フレーム
3…ピストン
4…ピストンロッド(往復運動部材)
5…シリンダ
6…回転軸(回転運動部材)
7…揺動アーム(揺動部材)
8…Zクランク部材
9a、9b…拘束部材
10…傾斜部材
11…第1連結部材
12…第2連結部材
13…第1取付台
14…第2取付台
15…ねじ
16…ねじ
17…ピン
18…ベアリング
19…狭持部材
20…支持部材
21…スライド部材
22…取付板
23…ねじ
24…ねじ
25…湾曲アーム(拘束部材)
26…ベアリング
27…軸部
28…ベアリング

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7