(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023076239
(43)【公開日】2023-06-01
(54)【発明の名称】位置推定装置、位置推定方法および位置推定プログラム
(51)【国際特許分類】
G01S 5/02 20100101AFI20230525BHJP
G06Q 50/10 20120101ALI20230525BHJP
H04W 64/00 20090101ALI20230525BHJP
【FI】
G01S5/02 Z
G06Q50/10
H04W64/00 160
H04W64/00 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021189546
(22)【出願日】2021-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】319013263
【氏名又は名称】ヤフー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水口 達矢
(72)【発明者】
【氏名】西尾 大智
【テーマコード(参考)】
5J062
5K067
5L049
【Fターム(参考)】
5J062BB05
5J062CC11
5J062CC18
5J062FF01
5J062GG01
5J062GG02
5K067AA21
5K067BB21
5K067DD20
5K067DD43
5K067DD44
5K067EE02
5K067EE16
5K067HH22
5L049CC11
(57)【要約】
【課題】各利用者の位置情報を適切に推定すること。
【解決手段】本願に係る位置推定装置は、位置情報の提供を許諾した利用者である許諾利用者の利用者端末から位置情報と、当該位置情報に対応する電波情報を取得する取得部と、取得部によって取得された位置情報と、電波情報とに基づき、位置情報に対応する領域毎に電波情報の特徴を学習する学習部と、学習部による学習結果に基づき、利用者端末から取得した電波情報を用いて当該利用者端末の領域を推定する推定部とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置情報の提供を許諾した利用者である許諾利用者の利用者端末から位置情報と、当該位置情報に対応する電波情報を取得する取得部と、
前記取得部によって取得された前記位置情報と、前記電波情報とに基づき、前記位置情報に対応する領域毎に前記電波情報の特徴を学習する学習部と、
前記学習部による学習結果に基づき、利用者端末から取得した前記電波情報を用いて当該利用者端末の前記領域を推定する推定部と
を備えることを特徴とする位置推定装置。
【請求項2】
前記取得部は、
前記電波情報として、前記利用者端末によって受信された電波を識別する識別子に関する情報を取得し、
前記学習部は、
前記領域毎に受信可能な前記電波の識別子の組み合わせに関する特徴を学習すること
を特徴とする請求項1に記載の位置推定装置。
【請求項3】
前記取得部は、
前記電波情報として、前記利用者端末によって受信された電波の電波強度に関する情報を取得し、
前記学習部は、
前記領域毎に受信可能な電波の識別子と電波強度とに関する特徴を学習すること
を特徴とする請求項2に記載の位置推定装置。
【請求項4】
前記領域毎の前記位置情報と前記電波情報の取得結果に応じて当該領域を分割する分割部
を備えること
を特徴とする請求項1、2または3に記載の位置推定装置。
【請求項5】
前記学習部は、
前記取得部によって取得された所定期間内の前記位置情報と前記電波情報とを用いて、前記領域毎の特徴を学習すること
を特徴とする請求項1~4のいずれか一つに記載の位置推定装置。
【請求項6】
前記推定部は、
前記利用者端末によって計測された気圧情報をさらに取得し、
前記学習部は、
前記位置情報と、前記電波情報と、前記気圧情報とに基づき、前記領域毎の特徴を学習し、
前記推定部は、
前記電波情報と、前記気圧情報とに基づき、前記領域を推定すること
を特徴とする請求項1~5のいずれか一つに記載の位置推定装置。
【請求項7】
前記取得部は、
wifi(登録商標)に関する前記電波情報を取得すること
を特徴とする請求項1~6のいずれか一つに記載の位置推定装置。
【請求項8】
前記推定部によって推定された前記領域と、前記領域毎の店舗情報とに基づき、前記利用者の訪問した店舗を特定する特定部
を備えることを特徴とする請求項1~7のいずれか一つに記載の位置推定装置。
【請求項9】
コンピュータが実行する位置推定方法であって、
位置情報の提供を許諾した利用者である許諾利用者の利用者端末から位置情報と、当該位置情報に対応する電波情報を取得する取得工程と、
前記取得工程によって取得された前記位置情報と、前記電波情報とに基づき、前記位置情報に対応する領域毎の前記電波情報の特徴を学習する学習工程と、
前記学習工程による学習結果に基づき、利用者端末から取得した前記電波情報を用いて当該利用者端末の前記領域を推定する推定工程と
を含むことを特徴とする位置推定方法。
【請求項10】
位置情報の提供を許諾した利用者である許諾利用者の利用者端末から位置情報と、当該位置情報に対応する電波情報を取得する取得手順と、
前記取得手順によって取得された前記位置情報と、前記電波情報とに基づき、前記位置情報に対応する領域毎の前記電波情報の特徴を学習する学習手順と、
前記学習手順による学習結果に基づき、利用者端末から取得した前記電波情報を用いて当該利用者端末の前記領域を推定する推定手順と
をコンピュータに実行させることを特徴とする位置推定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置推定装置、位置推定方法および位置推定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、利用者の位置情報に応じて種々のサービスを提供する技術が提供されている。例えば、利用者の生活圏を判定し、生活圏に関するコンテンツを配信する技術が提供されている。例えば、このような技術においては、GPS(Global Positioning System)により検知される情報や、利用者が利用する利用者端末の通信に用いられる所定の無線LAN(Local Area Network)の設置位置に関する情報等により推定されるユーザの位置情報が用いられる(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、各利用者の位置情報を適切に推定することができない場合があった。具体的には、近年では、個人情報保護の観点から、スマートフォン等の端末装置の仕様により、個人の端末装置の位置情報を外部に送信することに対して制約が厳しくなる傾向にあり、位置情報の提供を許諾していない利用者については位置情報を推定することができない。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、各利用者の位置情報を適切に推定することができる位置推定装置、位置推定方法および位置推定プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る位置推定装置は、位置情報の提供を許諾した利用者である許諾利用者の利用者端末から位置情報と、当該位置情報に対応する電波情報とを取得する取得部と、前記取得部によって取得された前記位置情報と、前記電波情報とに基づき、前記位置情報に対応する領域毎に前記電波情報の特徴を学習する学習部と、前記学習部による学習結果に基づき、利用者端末から取得した前記電波情報を用いて当該利用者端末の前記領域を推定する推定部とを備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、各利用者の位置情報を適切に推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る情報処理の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る位置推定装置の構成例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る学習データ記憶部の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る学習結果記憶部の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る推定部による処理の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る分割部による処理の一例を示す模式図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る学習処理の一例を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、実施形態に係る領域推定処理の一例を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、変形例に係る学習結果の一例を示す模式図である。
【
図10】
図10は、実施形態に係る位置推定装置の機能を実現するコンピュータの一例を示すハードウェア構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本願に係る位置推定装置、位置推定方法および位置推定プログラムを実施するための形態(以下、「実施形態」と記載する。)について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態により本願に係る位置推定装置、位置推定方法および位置推定プログラムが限定されるものではない。
【0010】
[実施形態]
〔1.情報処理〕
まず、
図1を用いて、実施形態に係る情報処理の一例について説明する。
図1は、実施形態に係る情報処理の一例を示す図である。
【0011】
図1に示すように、実施形態に係る位置推定装置10は、利用者Uが所有する利用者端末50から取得した情報に基づき、各利用者Uの位置情報を推定する装置である。位置推定装置10は、たとえば、サーバ装置やクラウドシステム等によって実現される。
【0012】
利用者端末50は、利用者Uが所有する端末装置である。たとえば、利用者端末50は、GPS(Global Positioning System)によって現在地を測位する機能、4G(Generation)、5G、LTE(Long Term Evolution)、Wifi(登録商標)若しくは無線LAN(Local Area Network)等といった各種の無線通信網若しくは各種の有線通信網といったネットワークを介して、位置推定装置10等の間で情報の送受信を行う機能を有する。
【0013】
ところで、たとえば、位置推定装置10は、利用者端末50からGPSの測位情報を取得すれば、各利用者端末50の位置情報を把握することが可能となる。
【0014】
一方で、近年では、個人情報保護の観点から、スマートフォン等の利用者端末50の仕様により、位置情報を外部に送信することに対して制約が厳しくなる傾向にあり、位置情報の提供を許諾していない利用者については位置情報を把握することが困難である。
【0015】
特に、ユーザID(GUID)に位置情報を紐づけて提供する利用者が限定される。一方、Wifiに関する電波情報はGPSに比べてセキュリティ面での制約が弱く、より多くの利用者UからユーザIDと紐付けて入手することが可能である。
【0016】
そこで、実施形態に係る位置推定装置10は、かかる点に着目し、位置情報の提供を許諾した利用者Uの利用者端末50から位置情報とWifiに関する電波情報とを取得し、位置情報に対応する領域毎に電波情報の特徴を学習したマップを生成することとした。
【0017】
たとえば、かかるマップを用いることで、電波情報から位置情報を逆算的に推定することが可能となる。ここで、後述するように、実施形態に係る位置推定装置10は、厳密な位置情報を推定せず、領域単位で位置情報を推定する。これにより、厳密な位置情報を推定する場合に比べて、高速な位置推定を実現することができる。
【0018】
たとえば、
図1に示すように、位置推定装置10は、位置情報の提供を許諾した利用者である許諾利用者U1の利用者端末50から学習データを取得する(ステップS1)。ここで、学習データには、位置情報および電波情報が含まれる。なお、位置推定装置10は、利用者端末50からユーザIDをあわせて取得するようにしてもよい。
【0019】
また、電波情報は、BSSID(Basic Service Set Identifier)、RSSI(Received Signal Strength Indicator)に関する情報が含まれる。なお、BSSIDは、Wifiを識別するための識別子であり、RSSIは、受信信号強度である。
【0020】
つづいて、位置推定装置10は、位置情報それぞれに対応する領域毎に電波情報の特徴を学習する(ステップS2)。ここで、領域とは、たとえば、地図を一定の規則(たとえば、メッシュ状)にしたがって分割した分割領域である。
【0021】
図1では、位置推定装置10が、緯度・経度に基づき分割された領域Ar1~Ar4それぞれで受信されるBSSID(同図に示すA、B)およびRSSI(同図に示すA、Bに付随する数値)の特徴を学習した場合を例示する。なお、同図に示す「N.D」は、Not Detectedの略語であり、対応するBSSIDの電波が観測されなかったことを指す。
【0022】
位置推定装置10は、電波情報に関する学習を終えると、たとえば、位置情報の提供を許諾していない一般利用者U2の利用者端末50から電波情報を取得し(ステップS3)、かかる電波情報に基づき、一般利用者U2の領域を推定する(ステップS4)。
【0023】
たとえば、位置推定装置10は、一般利用者U2の電波情報と各領域Ar1~Ar4の類似スコアを算出し、一般利用者U2がどの領域に存在するかを推定する。なお、ここでの類似スコアとは、たとえば、一般利用者U2がどの領域に存在するかを示唆する確率であり、類似スコアが高いほど、一般利用者U2が対応する領域に存在する確率が高くなる。
【0024】
たとえば、位置推定装置10は、類似スコアが所定値を超える領域に一般利用者U2が存在すると推定する。なお、この際、位置推定装置10は、類似スコアが所定値を超える領域が複数存在する場合、複数の領域を統合した領域に一般利用者U2が存在すると推定することにしてもよい。
【0025】
このように、実施形態に係る位置推定装置10は、許諾利用者U1から位置情報および電波情報を取得し、領域毎に電波情報の特徴を学習したうえで、一般利用者U2の電波情報を利用して一般利用者U2の位置情報を推定する。
【0026】
したがって、実施形態に係る位置推定装置10によれば、各利用者の位置情報を適切に推定することができる。
【0027】
また、位置推定装置10は、一般利用者U2の存在する領域を推定するので、位置情報に換算すると、領域全体の緯度・経度となる。すなわち、位置推定装置10は、領域単位で一般利用者U2の位置情報を推定することで、厳密な位置情報を推定する場合に比べて、高速な位置推定を実現することが可能となる。
【0028】
〔2.位置推定装置の構成例〕
次に、
図2を用いて、位置推定装置10の構成例について説明する。
図2は、実施形態に係る位置推定装置10の構成例を示すブロック図である。
図2に示すように、位置推定装置10は、通信部110と、制御部120と、記憶部130とを有する。
【0029】
通信部110は、例えば、NIC(Network Interface Card)等によって実現される。そして、通信部110は、4G(Generation)、5G、LTE(Long Term Evolution)、WiFi(登録商標)若しくは無線LAN(Local Area Network)等といった各種の無線通信網若しくは各種の有線通信網といったネットワークを介して、外部装置との間で情報の送受信を行う。
【0030】
記憶部130は、例えば、RAM、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、または、ハードディスク、光ディスク等の記憶装置によって実現される。また、記憶部130は、学習データ記憶部131、学習結果記憶部132および店舗マップ記憶部133を有する。
【0031】
学習データ記憶部131は、学習データを記憶する。上述のように、学習データは、位置情報と電波情報とを含むデータである。
図3は、実施形態に係る学習データ記憶部131の一例を示す図である。
【0032】
図3に示すように、学習データ記憶部131は、「位置情報」項目と、「電波情報」項目とを互いに対応付けて記憶する。「位置情報」項目には、位置情報が格納される。また、「電波情報」項目には、電波情報が格納される。また、「電波情報」項目に格納される電波情報は、BSSIDとRSSIとを対応付けた情報である。
【0033】
すなわち、
図3に示すように、学習データ記憶部131は、位置情報と、対応する位置において観測されたwifiのBSSIDとRSSIとを対応付けて記憶する。
【0034】
学習結果記憶部132は、領域毎の電波情報の特徴を学習した学習結果を記憶する。
図4は、実施形態に係る学習結果記憶部132の一例を示す図である。
図4に示すように、たとえば、学習結果記憶部132は、「領域ID」項目、「メッシュ情報」項目および「特徴情報」項目といった項目の情報を互いに対応付けて記憶する。
【0035】
「領域ID」項目には、各領域を識別するための識別子が格納される。「メッシュ情報」項目には、対応する領域IDによって識別される領域の位置情報が格納される。「特徴情報」項目には、対応する領域IDによって識別される領域の電波情報の特徴が格納される。
【0036】
店舗マップ記憶部133は、店舗マップを記憶する。たとえば、店舗マップは、マップに対し各領域の店舗の位置情報を付与したマップである。なお、学習結果記憶部132に格納される学習結果がマップ情報である場合、店舗マップをかかるマップ情報に紐づけておくことにしてもよい。
【0037】
制御部120は、たとえば、コントローラ(controller)であり、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等によって、位置推定装置10内部の記憶装置に記憶されている各種プログラムがRAMを作業領域として実行されることにより実現される。
【0038】
図2に示すように、制御部120は、取得部121、学習部122、推定部123、分割部124および特定部125を有する。取得部121は、位置情報の提供を許諾した利用者である許諾利用者の利用者端末50から位置情報と、当該位置情報に対応する電波情報を取得する。
【0039】
すなわち、取得部121は、許諾利用者の利用者端末50から上述の学習データを取得する。そして、取得部121は、取得した学習データを学習データ記憶部131へ格納する。また、取得部121は、位置情報の提供を許諾していない一般利用者の利用者端末50から電波情報を取得し、取得した電波情報を推定部123へ渡す。
【0040】
学習部122は、取得部121によって取得された位置情報と、電波情報とに基づき、位置情報に対応する領域毎に電波情報の特徴を学習する。たとえば、学習部122は、所定の周期で、学習データ記憶部131から学習データを読み出して、位置情報に対応する領域毎に電波情報の特徴を学習する。
【0041】
たとえば、学習部122は、各領域のBSSIDおよびRSSIの特徴を学習する。学習部122は、たとえば、領域毎に受信可能なBSSIDごとのRSSIの分散を算出し、RSSIの平均と標準偏差を特徴として学習する。
【0042】
すなわち、学習部122は、BSSID毎に各領域で受信可能なRSSIの正規化した情報を特徴として学習する。なお、学習部122は、学習した特徴を特徴ベクトルとして出力するようにしてもよい。特徴ベクトルは、BSSIDごとのRSSIの平均や標準偏差が近いほど、近似するように生成されたベクトルである。
【0043】
また、学習部122は、各領域で受信可能なBSSIDの組み合わせを特徴として学習するようにしてもよい。また、学習部122は、取得部121によって取得された所定期間内の位置情報と電波情報を用いて、学習結果を更新するようにしてもよい。
【0044】
これは、wifiの基地局(あるいはルータ)が定期的に更新される場合に対応するためである。すなわち、学習部122は、所定期間内の位置情報および電波情報を用いて、学習を行うことで、古い位置情報と電波情報を排除した状態で学習を行うことが可能となる。
【0045】
そして、学習部122は、電波情報の特徴に関する学習結果を学習結果記憶部132へ格納する。
【0046】
推定部123は、学習部122による学習結果に基づき、利用者端末50から取得した電波情報を用いて当該利用者端末50の領域を推定する。たとえば、推定部123は、取得部121から受け取った一般利用者の電波情報と、学習結果記憶部132に格納された学習結果とに基づき、利用者端末50の領域(すなわち位置情報)を推定する。
【0047】
図5は、実施形態に係る推定部による処理の一例を示す図である。
図5位に示すように、たとえば、推定部123は、推定対象となる電波情報と、各領域Ar1~Ar4の特徴との類似度を示すスコア(類似スコア)を算出することで、利用者端末50の領域を推定する。
【0048】
同図に示す例では、領域Ar1~Ar4に対する類似スコアがそれぞれ「0.75」、「0.80」、「0.90」、「0.20」である場合を示す。たとえば、推定部123は、類似スコアを算出すると、類似スコアが所定値を超える領域に利用者端末50が存在すると推定する。
【0049】
仮に、所定値が「0.70」である場合、領域Ar4を除く領域Ar1~Ar3が条件を満たすことになる。そのため、この場合、推定部123は、領域Ar4を除いて、領域Ar1~Ar3を統合した統合領域に利用者端末50が存在すると推定する。
【0050】
なお、推定部123は、類似スコアが所定値を超える領域が一つである場合には、対応する1つの領域に利用者端末50が存在すると推定する。また、たとえば、推定部123は、類似スコアが所定値を超える領域が複数あり、かかる領域が地理的に連続していない場合、すなわち、各領域が離間している場合についても。対応する複数の領域を統合した領域に利用者端末50が存在すると推定すると推定することにしてもよい。
【0051】
また、推定部123は、利用者端末50の領域を推定すると、推定結果を特定部125へ渡す。なお、学習部122による学習結果が各領域のBSSIDの組み合わせである場合、推定部123は、利用者端末50から受け取った電波情報が示すBSSIDの組み合わせと上記学習結果に基づき、領域を推定するようにしてもよい。
【0052】
図2の説明に戻り、分割部124について説明する。分割部124は、領域で受信可能な電波の電波密度に応じて分割する。ここで、電波密度とは、領域内で観測された学習データの密度を指す。
【0053】
すなわち、分割部124は、十分な学習データが収集された領域を分割する。なお、たとえば、分割部124は、十分な学習データが収集されていない領域については領域の推定精度が担保される程度に周囲の領域と統合を行うことにしてもよい。
【0054】
図6は、実施形態に係る分割部による処理の一例を示す模式図である。
図6では、学習データの収集位置を各領域に対応するメッシュ上にプロットして示す。この場合、たとえば、領域Ar2は、他の領域Ar1、Ar3、Ar4に比べて、ブロット数が多く、他の領域Ar1、Ar3、Ar4に比べて、領域Ar2をさらに分割したとしても、分割した領域それぞれを区別して利用者端末50が存在する領域を推定可能である。
【0055】
そのため、分割部124は、各領域における電波密度に応じて、領域を分割する。
図6では、領域Ar2をさらにメッシュ状に9分割した場合を例示する。なお、分割部124は、電波密度に応じて、分割数を決定することにしてもよく、分割数は、9分割未満であってもよく、9分割より多くてもよい。また、
図6では、メッシュ状に分割する場合を示しているが、これに限定されるものではなく、円形状などに領域を分割するようにしもてよい。また、分割部124は、各領域の電波密度が閾値以下である領域については隣接する領域を統合するようにしてもよい。
【0056】
図2の説明に戻り、特定部125について説明する。特定部125は、推定部123によって推定された領域と、領域毎の店舗情報とに基づき、利用者の訪問した店舗を特定する。
【0057】
特定部125は、店舗マップ記憶部133に格納された店舗マップと、推定部123から受けとった利用者の存在する領域とを照合することで、利用者が訪問した店舗を特定する。
【0058】
なお、ここでの店舗は、テナント単位であってもよく、たとえば、施設単位であってもよい。また、特定部125は、推定部123から受けとった利用者の存在する領域に複数の店舗が存在する場合、複数の店舗のいずれかに訪問したと推定するようにしてもよい。
【0059】
この場合、特定部125は、たとえば、利用者が過去に訪問した店舗の傾向等に基づき、複数の店舗それぞれに対し重みづけを行ったうえで、利用者が訪問した店舗を特定するようにしてもよい。
【0060】
たとえば、特定部125は、複数の店舗のうち、利用者が訪問する可能性が高い店舗、訪問する可能性が低い店舗を過去の傾向から導出し、利用者が実際に訪問した店舗を特定するようにしてもよい。なお、この場合、1つの店舗に特定することにしてもよいが、複数の店舗を利用者が訪問した店舗として特定するようにしてもよい。
【0061】
特定部125は、特定した店舗に対し、たとえば、利用者に関する情報を提供する。これにより、かかる店舗では、利用者に関する情報を分析することで、実際に店舗を訪れた利用者の傾向等を把握することができ、利用者に対して各種サービスを提供することができる。
【0062】
〔3.処理フロー〕
次に、
図7および
図8を用いて、実施形態に係る位置推定装置10が実行する処理手順について説明する。
図7は、実施形態に係る学習処理の一例を示すフローチャートである。
図8は、実施形態に係る領域推定処理の一例を示すフローチャートである。
【0063】
図7に示すように、学習段階において、まず、位置推定装置10は、位置情報の提供を許可した許可利用者から位置情報および電波情報を取得する(ステップS101)。つづいて、位置推定装置10は、領域毎の電波情報の特徴を学習し(ステップS102)、処理を終了する。
【0064】
また、
図8に示すように、領域推定段階において、位置推定装置10は、一般利用者から電波情報を取得し(ステップS111)、
図7の学習結果に基づき、領域を推定し(ステップS112)、処理を終了する。
【0065】
〔4.変形例〕
ところで、上述した実施形態では、領域毎に電波情報の特徴を学習する場合について説明したが、これに限定されるものではない。たとえば、位置推定装置10は、電波情報に加え、気圧情報の特徴をあわせて学習することにしてもよい。
【0066】
図9は、変形例に係る変形例に係る学習結果の一例を示す模式図である。
図9に示すように、気圧情報を加えて、学習を行うことで、緯度、経度に加え、気圧の3次元で領域を推定することができる。すなわち、気圧は、通常、高度が高くなるほど低下するので、
図9に示す気圧は、高度(高さ)に対応する。
【0067】
たとえば、位置推定装置10は、学習段階において、位置情報、電波情報に加え、気圧情報を利用者端末50から取得する。そして、位置推定装置10は、気圧情報に基づき、領域の高さ領域を設定したうえで、領域毎に電波情報の特徴を学習する。
【0068】
そして、位置推定装置10は、一般利用者から電波情報および気圧情報を取得し、取得した電波情報および気圧情報と、かかる学習結果とを用い、一般利用者の存在する領域を推定する。
【0069】
これにより、位置推定装置10は、たとえば、ビル内部において、フロアを含めた位置の推定が可能となる。
【0070】
また、上述した実施形態では、電波がwifiを例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。たとえば、電波をビーコンや、Bluetooth(登録商標)として本願発明を適用することにしてもよい。
【0071】
〔5.効果〕
上述した実施形態に係る位置推定装置10は、位置情報の提供を許諾した利用者である許諾利用者の利用者端末から位置情報と、当該位置情報に対応する電波情報を取得する取得部121と、取得部121によって取得された位置情報と、電波情報とに基づき、位置情報に対応する領域毎に前記電波情報の特徴を学習する学習部122と、学習部122による学習結果に基づき、利用者端末50から取得した電波情報を用いて当該利用者端末50の領域を推定する推定部123とを備える。したがって、実施形態に係る位置推定装置10によれば、各利用者の位置を適切に推定することができる。
【0072】
また、上述した実施形態に係る取得部121は、電波情報として、利用者端末50によって受信された電波を識別する識別子に関する情報を取得し、学習部122は、領域毎に受信可能な電波の識別子の組み合わせに関する特徴を学習する。したがって、実施形態に係る位置推定装置10によれば、各領域で受信可能な電波の識別子の組み合わせによって、位置を推定することができる。
【0073】
また、上述した実施形態に係る取得部121は、電波情報として、利用者端末50によって受信された電波の電波強度に関する情報を識別子毎に取得し、学習部122は、領域毎に受信可能な電波の識別子と電波強度とに関する特徴を学習する。したがって、実施形態に係る位置推定装置10によれば、領域を精度よく推定することができる。
【0074】
また、実施形態に係る位置推定装置10は、領域毎の位置情報と電波情報の取得結果に応じて当該領域を分割する分割部124を備える。したがって、実施形態に係る位置推定装置10によれば、領域を分割することで、位置の推定誤差を小さくすることができる。
【0075】
また、実施形態に係る位置推定装置10は、取得部121によって取得された所定期間内の位置情報と電波情報を用いて領域毎の特徴を学習する。したがって、実施形態に係る位置推定装置10によれば、古い学習データの影響を抑えつつ、新たな学習データに基づいて学習を行うことができる。
【0076】
また、実施形態に係る取得部121は、利用者端末50によって計測された気圧情報をさらに取得し、学習部122は、位置情報と、電波情報と、気圧情報に基づき、領域毎の特徴を学習し、推定部123は、電波情報と、気圧情報とに基づき、領域を推定する。したがって、実施形態に係る位置推定装置10によれば、高さを含めた3次元空間で領域推定を行うことができる。
【0077】
また、実施形態に係る取得部121は、wifiに関する電波情報を取得する。したがって、実施形態に係る位置推定装置10によれば、汎用性高く位置を推定することができる。
【0078】
また、実施形態に係る位置推定装置10は、推定部123によって推定された領域と、領域毎の店舗情報とに基づき、利用者の訪問した店舗を特定する特定部125を備える。したがって、実施形態に係る位置推定装置10によれば、多様な利用者の来店計測が可能となる。
【0079】
また、実施形態に係る位置推定方法は、コンピュータが実行する位置推定方法であって、位置情報の提供を許諾した利用者である許諾利用者の利用者端末から位置情報と、当該位置情報に対応する電波情報を取得する取得工程と、前記取得工程によって取得された前記位置情報と、前記電波情報とに基づき、前記位置情報に対応する領域毎の前記電波情報の特徴を学習する学習工程と、前記学習工程による学習結果に基づき、利用者端末から取得した前記電波情報を用いて前記領域を推定する推定工程とを含む。したがって、実施形態に係る位置推定方法によれば、各利用者の位置を適切に推定することができる。
【0080】
また、実施形態に係る位置推定プログラムは、位置情報の提供を許諾した利用者である許諾利用者の利用者端末から位置情報と、当該位置情報に対応する電波情報を取得する取得手順と、前記取得手順によって取得された前記位置情報と、前記電波情報とに基づき、前記位置情報に対応する領域毎の前記電波情報の特徴を学習する学習手順と、前記学習手順による学習結果に基づき、利用者端末から取得した前記電波情報を用いて前記領域を推定する推定手順とをコンピュータに実行させる。したがって、実施形態に係る位置推定プログラムによれば、各利用者の位置を適切に推定することができる。
【0081】
〔6.ハードウェア構成〕
また、上述してきた実施形態に係る位置推定装置10は、例えば
図10に示すような構成のコンピュータ1000によって実現される。
図10は、実施形態に係る位置推定装置10の機能を実現するコンピュータの一例を示すハードウェア構成図である。コンピュータ1000は、CPU1100、RAM1200、ROM1300、HDD1400、通信インターフェイス(I/F)1500、入出力インターフェイス(I/F)1600、及びメディアインターフェイス(I/F)1700を有する。
【0082】
CPU1100は、ROM1300またはHDD1400に格納されたプログラムに基づいて動作し、各部の制御を行う。ROM1300は、コンピュータ1000の起動時にCPU1100によって実行されるブートプログラムや、コンピュータ1000のハードウェアに依存するプログラム等を格納する。
【0083】
HDD1400は、CPU1100によって実行されるプログラム、及び、かかるプログラムによって使用されるデータ等を格納する。通信インターフェイス1500は、ネットワーク(通信ネットワーク)Nを介して他の機器からデータを受信してCPU1100へ送り、CPU1100が生成したデータをネットワークNを介して他の機器へ送信する。
【0084】
CPU1100は、入出力インターフェイス1600を介して、ディスプレイやプリンタ等の出力装置、及び、キーボードやマウス等の入力装置(
図10では、出力装置および入力装置を総称して「入出力装置」と記載する)を制御する。CPU1100は、入出力インターフェイス1600を介して、入力装置からデータを取得する。また、CPU1100は、生成したデータを入出力インターフェイス1600を介して出力装置へ出力する。
【0085】
メディアインターフェイス1700は、記録媒体1800に格納されたプログラムまたはデータを読み取り、RAM1200を介してCPU1100に提供する。CPU1100は、かかるプログラムを、メディアインターフェイス1700を介して記録媒体1800からRAM1200上にロードし、ロードしたプログラムを実行する。記録媒体1800は、例えばDVD(Digital Versatile Disc)、PD(Phase change rewritable Disk)等の光学記録媒体、MO(Magneto-Optical disk)等の光磁気記録媒体、テープ媒体、磁気記録媒体、または半導体メモリ等である。
【0086】
例えば、コンピュータ1000が実施形態に係る位置推定装置10として機能する場合、コンピュータ1000のCPU1100は、RAM1200上にロードされたプログラムを実行することにより、制御部120の機能を実現する。コンピュータ1000のCPU1100は、これらのプログラムを記録媒体1800から読み取って実行するが、他の例として、他の装置からネットワークNを介してこれらのプログラムを取得してもよい。
【0087】
以上、本願の実施形態のいくつかを図面に基づいて詳細に説明したが、これらは例示であり、発明の開示の欄に記載の態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で本発明を実施することが可能である。
【0088】
〔7.その他〕
また、上記実施形態及び変形例において説明した各処理のうち、自動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を手動的に行うこともでき、あるいは、手動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を公知の方法で自動的に行うこともできる。この他、上記文書中や図面中で示した処理手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。例えば、各図に示した各種情報は、図示した情報に限られない。
【0089】
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。
【0090】
また、上述してきた実施形態及び変形例は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。
【0091】
また、上述してきた「部(section、module、unit)」は、「手段」や「回路」などに読み替えることができる。例えば、取得部は、取得手段や取得回路に読み替えることができる。
【符号の説明】
【0092】
10 位置推定装置
50 利用者端末
121 取得部
122 学習部
123 推定部
124 分割部
125 特定部
131 学習データ記憶部
132 学習結果記憶部
133 店舗マップ記憶部
U1 許諾利用者
U2 一般利用者