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特開2023-76249折返し治具、折返し装置、及び折返し方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023076249
(43)【公開日】2023-06-01
(54)【発明の名称】折返し治具、折返し装置、及び折返し方法
(51)【国際特許分類】
   F16J 12/00 20060101AFI20230525BHJP
   F17C 1/06 20060101ALI20230525BHJP
   F17C 1/10 20060101ALI20230525BHJP
【FI】
F16J12/00 F
F17C1/06
F17C1/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021189565
(22)【出願日】2021-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】308039414
【氏名又は名称】株式会社FTS
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大脇 優介
(72)【発明者】
【氏名】白井 浩史
(72)【発明者】
【氏名】大神 敦幸
【テーマコード(参考)】
3E172
3J046
【Fターム(参考)】
3E172AA02
3E172AA05
3E172AB01
3E172BA01
3E172BB03
3E172BB12
3E172BB17
3E172BC01
3E172BC04
3E172BD03
3E172CA14
3E172CA19
3E172CA22
3J046AA14
3J046BA03
3J046CA03
3J046CA04
3J046CA05
3J046DA05
3J046EA03
(57)【要約】
【課題】円筒状のバリア層を円滑に折り返し得る技術を提供する。
【解決手段】折返し治具100は、胴部基体50に対して第1軸方向一方側に張り出す第1バリア層60の張出部61を、胴部基体50の外周面を覆うように第1軸方向他方側に折返す。折返し治具100は、張出部61を第1軸方向一方側に誘導する外周面111を有する第1ガイド部110と、第1ガイド部110に対して第1軸方向一方側に設けられ、第1軸方向一方側に凹む湾曲面121を有し、張出部61を胴部基体50の外周面を覆うように第1軸方向他方側に折り返す折返し部120と、折返し部120によって折り返された張出部61を第1軸方向他方側に誘導する第2ガイド部130と、を備える。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴部基体と前記胴部基体の内周面を覆うように設けられるバリア層とを有し、ドーム部分割体と合体することによって圧力容器を構成する胴部分割体の製造に用いられ、前記胴部基体から軸方向一方側に張り出す前記バリア層の張出部を、前記胴部基体の外周面を覆うように前記軸方向他方側に折返す折返し治具であって、
前記張出部を前記軸方向一方側に誘導する外周面を有する第1ガイド部と、
前記第1ガイド部における前記軸方向一方側の端部に連なり、前記軸方向一方側に凹む湾曲面を有し、前記張出部を前記胴部基体の外周面を覆うように前記軸方向他方側に折り返す折返し部と、
前記折返し部によって折り返された前記張出部を前記軸方向他方側に誘導する第2ガイド部と、
を備える折返し治具。
【請求項2】
前記第1ガイド部の外周面は、前記軸方向他方側に向かうにつれて径が小さくなる請求項1に記載の折返し治具。
【請求項3】
前記第2ガイド部は、環状に設けられ、前記第1ガイド部の外周面の少なくとも一部を覆っている請求項1又は請求項2に記載の折返し治具。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の折返し治具と、
前記折返し治具における前記第1ガイド部を加熱する加熱部と、
を備える折返し装置。
【請求項5】
前記加熱部は、前記第2ガイド部も加熱する請求項4に記載の折返し装置。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載の折返し装置を用いて、前記バリア層の前記張出部を前記軸方向他方側に折り返す折返し方法であって、
前記加熱部によって前記折返し治具を加熱した状態で、前記折返し治具を前記張出部に接触させ、
前記胴部基体を前記折返し治具に対して前記軸方向一方側に相対移動させながら、前記第1ガイド部によって前記張出部を前記軸方向一方側に誘導し、
前記胴部基体を前記折返し治具に対して前記軸方向一方側に相対移動させながら、前記第1ガイド部によって誘導された前記張出部を、前記湾曲面によって前記胴部基体の外周面を覆うように前記軸方向他方側に折り返し、
前記胴部基体を前記折返し治具に対して前記軸方向一方側に相対移動させながら、前記折返し部によって折り返された前記張出部を、前記第2ガイド部によって前記軸方向他方側に誘導する折返し方法。
【請求項7】
外周面の最大径が前記バリア層の内径よりも小さい前記第1ガイド部によって、前記張出部を前記軸方向一方側に誘導する請求項6に記載の折返し方法。
【請求項8】
前記胴部分割体に設定される前記ドーム部分割体との間のシールポイントにおける前記胴部基体の径方向の厚さを基体厚寸法としたとき、
径方向の大きさが前記基体厚寸法の大きさ以下である前記折返し部によって、前記張出部を前記軸方向他方側に誘導する請求項6又は請求項7に記載の折返し方法。
【請求項9】
前記第2ガイド部によって前記軸方向他方側に誘導した前記張出部を、プレス部材によって前記胴部基体側に加圧する請求項6から請求項8のいずれか一項に記載の折返し方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、折返し治具、折返し装置、及び折返し方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示される圧力容器用ライナは、第1ライナ構成部材と、第2ライナ構成部材と、によって構成されている。第1ライナ構成部材は、両端が開口した真っ直ぐな円筒状体である。第2ライナ構成部材は、略椀状であり、第1ライナ構成部材の両端部に接合される。第1ライナ構成部材の端部と、第2ライナ構成部材の端部とが接合され、圧力容器用ライナが構成される。
【0003】
特許文献2に開示される圧力容器は、シール性を確保するため、FRP製の外殻の内周面にガスバリア性を有するライナ(バリア層)が設けられている。ライナは、高密度ポリエチレン等の合成樹脂で構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-239966号公報
【特許文献2】特開2001-21099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の圧力容器用ライナのように複数の分割体(例えば、円筒状の胴部分割体と、椀状のドーム部分割体とする)によって構成される場合、胴部分割体がドーム部分割体の内側に挿入される構成が考えられる。この場合、シール性を確保するために、バリア層を胴部分割体の内周面だけでなく外周面にも設けることが望ましい。そこで、胴部分割体の内周面に設けられたバリア層の軸方向端部を折り返して、胴部分割体の端部の外周面側も覆うような構成が考えられる。しかしながら、円筒状のバリア層の端部を外周面側に折り返す際に、折り返したバリア層の周長が拡大してしわ等が生じ易いこともあり、円滑な折返しが難しかった。
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、円筒状のバリア層を円滑に折り返し得る技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の折返し治具は、
胴部基体と前記胴部基体の内周面を覆うように設けられるバリア層とを有し、ドーム部分割体と合体することによって圧力容器を構成する胴部分割体の製造に用いられ、前記胴部基体から軸方向一方側に張り出す前記バリア層の張出部を、前記胴部基体の外周面を覆うように前記軸方向他方側に折返す折返し治具であって、
前記張出部を前記軸方向一方側に誘導する外周面を有する第1ガイド部と、
前記第1ガイド部における前記軸方向一方側の端部に連なり、前記軸方向一方側に凹む湾曲面を有し、前記張出部を前記胴部基体の外周面を覆うように前記軸方向他方側に折り返す折返し部と、
前記折返し部によって折り返された前記張出部を前記軸方向他方側に誘導する第2ガイド部と、
を備える。
【0008】
本発明の折返し装置は、
上記折返し治具と、
前記折返し治具における前記第1ガイド部を加熱する加熱部と、
を備える。
【0009】
本発明の折返し方法は、
上記折返し装置を用いて、前記バリア層の前記張出部を前記軸方向他方側に折り返す折返し方法であって、
前記加熱部によって前記折返し治具を加熱した状態で、前記折返し治具を前記張出部に接触させ、
前記胴部基体を前記折返し治具に対して前記軸方向一方側に相対移動させながら、前記第1ガイド部によって前記張出部を前記軸方向一方側に誘導し、
前記胴部基体を前記折返し治具に対して前記軸方向一方側に相対移動させながら、前記第1ガイド部によって誘導された前記張出部を、前記湾曲面によって前記胴部基体の外周面を覆うように前記軸方向他方側に折り返し、
前記胴部基体を前記折返し治具に対して前記軸方向一方側に相対移動させながら、前記折返し部によって折り返された前記張出部を、前記第2ガイド部によって前記軸方向他方側に誘導する折返し方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の折返し治具によれば、胴部基体を折返し治具に対して軸方向一方側に相対移動させることで、張出部を第1ガイド部の外周面によって折返し部に誘導する。さらに胴部基体を折返し治具に対して軸方向一方側に相対移動させると、張出部が折返し部の湾曲面に沿って胴部基体の外周面を覆うように軸方向他方側に折り返され、第2ガイド部によって軸方向他方側に誘導される。このとき、円環状に設けられる湾曲面にバリア層の張出部が円環状に接触するため、バリア層の張出部の先端から基端に亘って環状に順次折り返されて軸方向他方側に誘導されるため、折り返される部分の周長が拡大することを抑制し、円滑に折り返すことができる。
【0011】
本発明の折返し装置によれば、第1ガイド部を介してバリア層の張出部に熱を伝達することができ、バリア層の張出部を軟化させた上で折返し部で折り返すことができる。そのため、バリア層の張出部を折り返し易くなる。
【0012】
本発明の折返し方法によれば、胴部基体を折返し治具に対して軸方向一方側に相対移動させることで、張出部を第1ガイド部の外周面によって折返し部に誘導する。さらに胴部基体を折返し治具に対して軸方向一方側に相対移動させると、折返し部の湾曲面に沿って胴部基体の外周面を覆うように軸方向他方側に折り返され、第2ガイド部によって軸方向他方側に誘導される。このとき、円環状に設けられる湾曲面にバリア層の張出部が円環状に接触するため、バリア層の張出部の先端から基端に亘って環状に順次折り返されて軸方向他方側に誘導されるため、折り返される部分の周長が拡大することを抑制し、円滑に折り返すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例1の圧力容器をあらわす側面図である。
図2】圧力容器の断面図である。
図3】圧力容器における胴部分割体とドーム部分割体の境界部付近の一部を示す断面図である。
図4】折返し治具の軸線を含む平面で切断した断面図である。
図5図4の一部を拡大して示す拡大図である。
図6】張出部が折り返される前の第1バリア層、及び胴部基体を備える構造体の断面を示す説明図である。
図7図6に続く工程で、張出部を折返し治具の第1ガイド部に接触させた状態を示す説明図である。
図8図7に続く工程で、張出部が折返し治具の折返し部によって折り返される状態を示す説明図である。
図9図8に続く工程で、張出部が折返し治具の第2ガイド部によって第1方向他方側に誘導される状態を示す説明図である。
図10図9に続く工程で、折返し治具による張出部の折返しが完了した状態を示す説明図である。
図11図10に続く工程で、プレス部材による加圧によって張出部が胴部基体の外周面に密着した状態を示す説明図である。
図12】折返し治具の加熱温度と、折返し治具の張出部に対する押込み時間とを変えて折返し工程を行った場合における、折返し結果を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の折返し治具において、前記第1ガイド部の外周面は、前記軸方向他方側に向かうにつれて径が小さくなることが好ましい。この構成によれば、バリア層が第1ガイド部に突き当たりにくくなり、張出部を軸方向一方側に円滑に誘い込みやすくなる。
【0015】
本発明の折返し治具において、前記第2ガイド部は、環状に設けられ、前記第1ガイド部の外周面の少なくとも一部を覆っていることが好ましい。この構成によれば、第2ガイド部によって折り返されたバリア層の張出部を胴部基体の外周面に押さえつけることができる。そのため、折り返されたバリア層の張出部によって胴部基体の外周面を覆わせることができ、胴部基体の内周面から外周面に亘って連続的に覆うバリア層を形成することができる。
【0016】
本発明の折返し装置において、前記加熱部は、前記第2ガイド部も加熱することが好ましい。この構成によれば、加熱された第2ガイド部によって折り返された張出部が冷えて縮径変形することを抑制することができる。
【0017】
本発明の折返し方法において、外周面の最大径が前記バリア層の内径よりも小さい前記第1ガイド部によって、前記張出部を前記軸方向一方側に誘導することが好ましい。この構成によれば、バリア層が第1ガイド部に突き当たりにくくなり、折返し部まで円滑に誘導させることができる。
【0018】
本発明の折返し方法において、前記胴部分割体に設定される前記ドーム部分割体との間のシールポイントにおける前記胴部基体の径方向の厚さを基体厚寸法としたとき、径方向の大きさが前記基体厚寸法の大きさ以下である前記折返し部によって、前記張出部を前記軸方向他方側に誘導することが好ましい。この構成によれば、第2ガイド部と胴部基体との間の距離が相対的に小さくなり、折り返されたバリア層の張出部が、第2ガイド部と胴部基体とによって挟まれ易くすることができる。そのため、折返されたバリア層の張出部を胴部基体に密着させやすくなる。
【0019】
本発明の折返し方法において、前記第2ガイド部によって前記軸方向他方側に誘導した前記張出部を、プレス部材によって前記胴部基体側に加圧することが好ましい。この構成によれば、折返されたバリア層の張出部を胴部基体に密着させやすくなる。
【0020】
<実施例1>
以下、本発明を具体化した実施例1を図1図6を参照して説明する。
【0021】
(圧力容器の構成)
本実施例の圧力容器10は、図1に示すように、円筒カプセル形状である。圧力容器10は、例えば、車両に搭載され、高圧の水素ガスの充填容器として用いられる。なお、図1図6に示す圧力容器10では、径の大きさや軸方向の長さ、各層の厚さ等は誇張して描かれており、図1図6に示す形態はあくまで一例である。
【0022】
圧力容器10は、図2に示すように、胴部分割体20と、ドーム部分割体30と、外部補強層40と、を備えている。圧力容器10は、胴部分割体20とドーム部分割体30とを合体して構成される。外部補強層40は、合体した胴部分割体20及びドーム部分割体30を包囲している。圧力容器10には、図1に示すように、口金11が設けられている。なお、図2では、口金11が組み付けられる前の圧力容器10を示している。圧力容器10は、バリア性を有する。本実施例1において、バリア性は、圧力容器10内に充填された流体(水素ガスなど)が圧力容器10を透過して圧力容器10の外部へ漏出することを防止又は抑制する特性と定義する。
【0023】
胴部分割体20は、図2に示すように、胴部基体50と、第1バリア層60と、を有している。胴部基体50は、軸方向(軸線L1に沿う方向)に長い円筒状である。胴部基体50の内径寸法は、全長に亘って一定である。胴部基体50の外径寸法は、後述する凹部51を除いて全長に亘って一定である。胴部基体50は、例えば、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)等の繊維強化樹脂からなる。胴部基体50は、例えば繊維束(図示略)に液状の熱硬化性樹脂を含浸させたもの、または繊維束に含浸した熱硬化性樹脂を半硬化状態にしたもの(プリプレグ繊維)を、例えばフィラメントワインディング法によってフープ巻きで形成されている。繊維束は、炭素繊維、ガラス繊維、ケプラ繊維等からなる糸状の繊維を束ねたものである。
【0024】
胴部基体50の外周面における軸方向両端には、図3に示すように、凹部51が設けられている。凹部51は、軸周りの全周に亘って設けられている。胴部基体50において凹部51が設けられる部分は、胴部基体50のその他の部分(軸方向中央側の部分)に比べて薄肉になっている。凹部51の外形寸法は、軸方向外側に向かって小さくなっている。凹部51は、第1テーパ部51Aと、第2テーパ部51Bと、を具備している。第1テーパ部51A及び第2テーパ部51Bによって、二段の傾斜が構成されている。第1テーパ部51Aの傾斜角度の方が、第2テーパ部51Bの傾斜角度の方よりも大きくなっている。
【0025】
第1バリア層60は、図2に示すように、胴部基体50の内周面全領域を覆うように設けられている。第1バリア層60は、円筒状である。第1バリア層60は、本開示の「バリア層」の一例に相当する。第1バリア層60は、バリア性を有している。第1バリア層60の材料として、例えばEVOH(エチレン-ビニルアルコール共重合体)、PA6(ナイロン6)等が用いられる。第1バリア層60は、圧力容器10内に貯留される流体が外部へ透過することを遮断又は抑制することを目的として用いられている。
【0026】
第1バリア層60は、一対の張出部61を有している。張出部61は、胴部基体50から軸方向両端から軸方向(図2に示す軸線L1の軸方向(第1軸方向))両側にそれぞれ張り出し、図3に示すように、折り返されて胴部基体50の外周面における軸方向両端部を覆っている。以下では、軸線L1の軸方向を第1軸方向と言う。具体的には、図3に示すように、張出部61は、第1バリア層60は、凹部51(第1テーパ部51A、第2テーパ部51B)、第1端面52A、及び第2端面52Bを覆っている。第1端面52Aは、胴部基体50の第1軸方向の端面である。第2端面52Bは、第2テーパ部51Bに対して第1軸方向中央側に連なる端面である。
【0027】
ドーム部分割体30は、図2に示すように、ドーム部基体31と、第2バリア層32と、を有している。ドーム部基体31は、胴部基体50の長手方向の端部に連なる半球状の部分である。ドーム部基体31は、胴部基体50から離れるにつれて縮径している。ドーム部基体31の厚さは、胴部基体50の厚さ(凹部51を除く部分の厚さ)よりも小さくなっている。ドーム部基体31は、例えば、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)等の繊維強化樹脂からなる。ドーム部基体31は、例えば繊維束(図示略)に液状の熱硬化性樹脂を含浸させたもの、または繊維束に含浸した熱硬化性樹脂を半硬化状態にしたもの(プリプレグ繊維)を、例えばハンドレイアップ法により積層させ、球殻状に成形した成形品を半分に分割して形成される。繊維束は、炭素繊維、ガラス繊維、ケプラ繊維等からなる糸状の繊維を束ねたものである。ドーム部分割体30の頂部には、図1に示すように、口金11が設けられる。
【0028】
第2バリア層32は、図2に示すように、ドーム部基体31の内周面を覆うように設けられている。第2バリア層32は、第1バリア層60と同様の構成である。第2バリア層32の胴部分割体20側の端部は、ドーム部基体31の端面31Aを覆っている。
【0029】
図3に示すように、胴部分割体20の端部がドーム部分割体30の端部の内側に挿入され、胴部分割体20とドーム部分割体30とが合体する。胴部分割体20の端部(より具体的には第1テーパ部51A、第2テーパ部51B、第2端面52B)を覆う第1バリア層60と、ドーム部分割体30の端部を覆う第2バリア層32が接触している。互いに接触する第1バリア層60と第2バリア層32は、胴部分割体20の端部とドーム部分割体30の端部によって押しつぶされて反発力(復元力)が生じ、胴部基体50とドーム部基体31との間の境界部のシール性が確保される。
【0030】
外部補強層40は、例えば、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)等の繊維強化樹脂からなる。外部補強層40は、胴部分割体20の外周の全領域、及びドーム部分割体30の外周の全領域を覆うように形成されている。外部補強層40は、例えばフィラメントワインディング法によって、ヘリカル巻きで形成されている。外部補強層40は、軸線L1(図2参照)を中心として回転する胴部分割体20及びドーム部分割体30に対して、これらの外面に例えば繊維束(図示略)に液状の熱硬化性樹脂を含浸させたもの、または繊維束に含浸した熱硬化性樹脂を半硬化状態にしたもの(プリプレグ繊維)を巻き付けることによって形成されている。繊維束は、炭素繊維、ガラス繊維、ケプラ繊維等からなる糸状の繊維を束ねたものである。
【0031】
(折返し治具の構成)
図4に示す折返し治具100は、胴部分割体20の製造に用いられる。折返し治具100は、胴部基体50に対して第1軸方向一方側に張り出す第1バリア層60の張出部61を、胴部基体50の外周面を覆うように軸方向他方側に折返す治具である。
【0032】
折返し治具100は、図4に示す軸線L2を中心とする回転体である。折返し治具100は、図4に示すように、第1ガイド部110と、折返し部120と、第2ガイド部130と、を備えている。
【0033】
第1ガイド部110は、図4に示すように、張出部61を第1軸方向一方側に誘導する外周面111を有する。第1ガイド部110は、円錐台形状である。第1ガイド部の外周面111は、軸線L2の軸方向(第2軸方向と言う)の一方側に向かうにつれて径が小さくなっている。これにより、第1バリア層60が第1ガイド部110に突き当たりにくくなり、第2軸方向他方側に円滑に誘い込まれやすくなる。
【0034】
折返し部120は、張出部61を胴部基体50の外周面を覆うように第1軸方向他方側に折り返す。折返し部120は、第1ガイド部110における第2軸方向他方側の端部に連なるように設けられている。折返し部120は、第2軸方向他方側に凹む湾曲面121を有している。湾曲面121は、軸線L2を中心とする円環状である。湾曲面121の内側の縁部は、第1ガイド部110の第2軸方向他方側の縁部に段差なく連なっている。湾曲面121の断面(軸線L2を含む平面で切断した断面)の形状は、半円弧状である。
【0035】
第2ガイド部130は、折返し部120によって折り返された張出部61を第2軸方向一方側に誘導する。第2ガイド部130は、折返し部120の径方向外側に設けられている。第2ガイド部130は、第2軸方向一方側に突出している。湾曲面121は、軸線L2を中心とする環状である。第2ガイド部130の内側面は、湾曲面121の外側の縁部に連なっている。第2ガイド部130の内側面の径及び外側面の径は、第2軸方向で一定になっている。第2ガイド部130は、第1ガイド部110の外周面の基端側の一部(第2軸方向他方側の一部)を覆っている。具体的には、第2ガイド部130は、第1ガイド部110の外周面の基端から一部(第2軸方向他方側の一部)を覆っている。これにより、第2ガイド部130によって折り返された第1バリア層60の張出部61を胴部基体50の外周面に押さえつけることができる。そのため、折り返された第1バリア層60の張出部61によって胴部基体50の外周面を覆わせることができ、胴部基体50の内周面から外周面に亘って連続的に覆う第1バリア層60を形成することができる。
【0036】
(折返し装置の構成)
折返し装置は、折返し治具100と、加熱部(図示略)と、を備えている。加熱部は、折返し治具100を加熱する。加熱部は、例えばバンドヒータとして構成され、折返し治具100(例えば第2ガイド部130よりも第2軸方向他方側の部分)に対して軸線L2周りに巻き回されている。加熱部は、第1ガイド部110、折返し部120、及び第2ガイド部130を加熱する。
【0037】
加熱部によって第1ガイド部110が加熱されることで、第1ガイド部110を介して第1バリア層60の張出部61に熱を伝達することができる。そのため、張出部61を軟化させた上で、折返し部120で張出部61を折り返すことができる。これにより、第1バリア層60の張出部61を折り返し易くなる。
【0038】
加熱部によって第2ガイド部130が加熱されることで、加熱された第2ガイド部130によって折り返された張出部61が冷えて径方向内側に曲がることを抑制することができる。
【0039】
(第1バリア層の折返し方法)
次に、第1バリア層60の折返し方法について説明する。第1バリア層60の折返しは、胴部分割体20の製造工程で行われる。なお、以下では、第1バリア層60の一方の張出部61のみの折返し工程について説明するが、他方の張出部61も同様に折返し工程が行われる。なお、折返し治具100によって張出部61を折り返す際に、折返し治具100の第2軸方向と胴部分割体20の第1軸方向とが平行となるようにする。具体的には、第1軸方向一方側が第2軸方向他方側と同じになり、第1軸方向他方側が第2軸方向一方側と同じになる。
【0040】
まず、図6に示すように、胴部基体50の内周面に第1バリア層60が設けられ、張出部61が折り返される前の構造体を用意する。
【0041】
続いて、予め加熱部によって加熱された状態の折返し治具100を用意する。例えば、折返し治具100を110℃~150℃となるように加熱する。
【0042】
続いて、図7に示すように、折返し治具100の第1ガイド部110を、第1バリア層60の張出部61の先端に接触させる。具体的には、張出部61の径方向内側に第1ガイド部110を挿入するようにして、第1ガイド部110の外周面111を張出部61の内周面に一定時間(例えば30秒)接触させる。ここで、胴部基体50を折返し治具100に対して第1軸方向一方側(第2軸方向他方側)に移動させることで、第1ガイド部110によって張出部61を第1軸方向一方側(第2軸方向他方側)に誘導する。このようにして、加熱部によって折返し治具100を加熱した状態で、折返し治具100を張出部61に接触させる。これにより、第1ガイド部110を介して張出部61に熱を伝達することができ、張出部61を軟化させた上で折返し部120で折り返すことができる。そのため、第1バリア層60の張出部61を折り返し易くなる。
【0043】
第1ガイド部の外周面111が第2軸方向一方側に向かうにつれて径が小さくなっているため、図7に示すように、円筒状の張出部61の先端のみを第1ガイド部の外周面111に当てることができる。そのため、張出部61の先端側の温度が基端側の温度よりも高くなる。これにより、張出部61の先端側から軟化して折り返しやすくしつつ、張出部61の基端側は座屈しないように軟化を遅らせることができる。
【0044】
第1ガイド部110の外周面の最大径(第2軸方向他方側の端部の径)をA1とし、第1バリア層60の内径をA2とする。本開示の第1バリア層60の折返し方法では、A1がA2よりも小さくなるようにする。このような構成によって、第1バリア層60が第1ガイド部110に突き当たりにくくなり、張出部61を折返し部120まで円滑に誘導させることができる。
【0045】
続いて、図8に示すように、さらに折返し治具100を張出部61に対して第1軸方向他方側(第2軸方向一方側)に押し込む。すなわち、さらに胴部基体50を折返し治具100に対して第1軸方向一方側に相対移動させる。これにより、第1ガイド部110によって誘導された張出部61を、折返し部120の湾曲面121によって胴部基体50の外周面を覆うように第1軸方向他方側(第2軸方向一方側)に折り返す。具体的には、張出部61は、湾曲面121上を内側の縁部から外側の縁部に亘って沿いつつ移動することで、第1軸方向他方側(第2軸方向一方側)に折り返される。このとき、円環状に設けられる湾曲面121に第1バリア層60の張出部61が円環状に接触するため、第1バリア層60の張出部61の先端から基端に亘って環状に順次折り返されて第1軸方向他方側(第2軸方向一方側)に誘導されるため、折り返される部分の周長が拡大することを抑制し、円滑に折り返すことができる。
【0046】
続いて、図9に示すように、さらに折返し治具100を張出部61に対して第1軸方向他方側(第2軸方向一方側)に押し込む。すなわち、さらに胴部基体50を折返し治具100に対して第1軸方向一方側に相対移動させる。これにより、折返し部120によって折り返された張出部61を、第2ガイド部130によって第1軸方向他方側(第2軸方向一方側)に誘導する。
【0047】
加熱部によって第2ガイド部130を加熱した状態で、張出部61を第2ガイド部130によって第1軸方向他方側(第2軸方向一方側)に誘導する。そのため、第2ガイド部130を介して、折返された張出部61に熱を伝達することができる。これにより、加熱された第2ガイド部130によって折り返された張出部61が縮径変形することを抑制することができる。すなわち、図9に示すような断面で見たとき、張出部61の先端が径方向内側に曲がることを抑制することができる。これにより、張出部61における折り返された部分が、張出部61における折り返されていない部分の外周面に接触することなく、凹部51の外周を覆うことができる。
【0048】
図10に示すように、さらに折返し治具100を張出部61に対して第1軸方向他方側(第2軸方向一方側)に押し込む。すなわち、さらに胴部基体50を折返し治具100に対して第1軸方向一方側に相対移動させる。これにより、胴部基体50の凹部51の全領域が張出部61によって覆われ、折返し治具100の押込みが完了する。このようにして、張出部61を胴部基体50の外周面(具体的には、凹部51、第1端面52A、及び第2端面52B)を覆うように第1軸方向他方側(第2軸方向一方側)に折り返す。
【0049】
折返し治具100の張出部61に対する押込みは、一定の速度で行われる。折返し治具100の張出部61に対する押込みの開始から終了までの時間を押込み時間とする。押込み時間は、例えば5秒~45秒である。
【0050】
続いて、折返し治具100の押込みの完了後、折返し治具100と折返し治具100の押込み状態を一定時間(例えば60秒)維持することで、張出部61を胴部基体50の外周面(具体的には、凹部51、第1端面52A、及び第2端面52B)に密着させる。これにより、胴部分割体20が完成する。
【0051】
続いて、図11に示すように、折返し治具100を胴部分割体20から引き抜く。その後、胴部基体50の外周面(具体的には、凹部51、第1端面52A、及び第2端面52B)を覆う張出部61を、プレス部材(図示略)によって胴部基体50側に加圧する。プレス部材は、例えば胴部基体50の端部(凹部51が設けられる部分)の外形と一致するような形状の型である。これにより、折返された張出部61を胴部基体50に密着させやすくなる。
【0052】
図12は、折返し治具100の加熱温度と、折返し治具100の張出部61に対する押込み時間とを変えて折返し工程を行った場合における、折返し結果を示す説明図である。折返し治具100の加熱温度は、110℃、130℃、150℃を用いた。予め加熱部によって折返し治具100を加熱する時間は、30秒である。押込み時間は、5秒、10秒、15秒、30秒、45秒を用いた。押込みの完了後、折返し治具100と折返し治具100の押込み状態を維持する時間は、60秒である。折返し結果の「〇」は、張出部61に座屈やしわが生じることなく折返しできたことを意味する。折返し結果の「×」は、折返し時に張出部61に座屈やしわが生じたことを意味する。図12に示す結果より、折返し治具100の加熱温度が高いほど押込み時間を短くすることで、張出部61に座屈やしわが生じることなく折返しできることが分かる。
【0053】
(本実施例の効果)
以下、本実施例1の効果について説明する。本実施例1の折返し治具100及び折返し方法では、胴部基体50を折返し治具100に対して第1軸方向一方側に相対移動させることで、第1ガイド部110の外周面111によって折返し部120に誘導する。さらに胴部基体50を折返し治具100に対して第1軸方向一方側に相対移動させると、張出部61が折返し部120の湾曲面121に沿って胴部基体50の外周面を覆うように第1軸方向他方側に折り返され、第2ガイド部130によって第1軸方向他方側に誘導される。このとき、円環状に設けられる湾曲面121に第1バリア層60の張出部61が円環状に接触するため、第1バリア層60の張出部61の先端から基端に亘って環状に順次折り返されて第1軸方向他方側に誘導されるため、折り返される部分の周長が拡大することを抑制し、円滑に折り返すことができる。これにより、張出部61にしわが生じにくく、第1バリア層60の成形性を向上させることができる。また、胴部基体50の内周面と外周面をそれぞれ別々のバリア層で覆う必要がなく、一枚の第1バリア層60で胴部基体50の内周面と外周面を連続した形態で覆うことができる。したがって、製造コストを低減することができる。
【0054】
本実施例1の折返し治具100では、第1ガイド部110の外周面111は、第1軸方向他方側(第2軸方向一方側)に向かうにつれて径が小さくなっている。この構成によれば、第1バリア層60が第1ガイド部110に突き当たりにくくなり、張出部61を第1軸方向一方側(第2軸方向他方側)に円滑に誘い込まれやすくなる。
【0055】
本実施例1の折返し治具100では、第2ガイド部130は、環状に設けられ、第1ガイド部110の外周面111の一部を覆っている。この構成によれば、第2ガイド部130によって折り返された第1バリア層60の張出部61を胴部基体50の外周面に押さえつけることができる。そのため、折り返された第1バリア層60の張出部61によって胴部基体50の外周面を覆わせることができ、胴部基体50の内周面から外周面に亘って連続的に覆う第1バリア層60を形成することができる。
【0056】
本実施例1の折返し装置では、第1ガイド部110を介して第1バリア層60の張出部61に熱を伝達することができ、第1バリア層60の張出部61を軟化させた上で折返し部120で折り返すことができる。そのため、第1バリア層60の張出部61を折り返し易くなる。
【0057】
本実施例1の折返し装置では、加熱部が、第2ガイド部130も加熱する。この構成によれば、加熱された第2ガイド部130によって折り返された張出部61が縮径変形することを抑制することができる。
【0058】
本実施例1の折返し方法では、外周面の最大径が第1バリア層60の内径よりも小さい第1ガイド部110によって、張出部61を第1軸方向一方側(第1軸方向他方側)に誘導する。この構成によれば、第1バリア層60が第1ガイド部110に突き当たりにくくなり、折返し部120まで円滑に誘導させることができる。
【0059】
本実施例1の折返し方法では、第2ガイド部130によって第1軸方向他方側(第2軸方向一方側)に誘導した張出部61を、プレス部材によって胴部基体50側に加圧する。この構成によれば、折返された第1バリア層60の張出部61を胴部基体50に密着させやすくなる。
【0060】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施例1では、第1バリア層60の折返し工程において、折返し部120の径方向の大きさを以下のように設定してもよい。胴部分割体20に設定されるドーム部分割体30との間のシールポイントにおける胴部基体50の径方向の厚さ(基体厚寸法)の大きさをA3とする。基体厚寸法は、シールポイントにおける胴部基体50の外径から内径を差し引いた値である。折返し部120の径方向の大きさをA4とする。A4がA3以下となるようにする。このような構成によって、第2ガイド部130と胴部基体50との間の距離が相対的に小さくなり、折り返された張出部61が、第2ガイド部130と胴部基体50とによって挟まれ易くなる。そのため、折返された第1バリア層60の張出部61を胴部基体50に密着させやすくなる。
(2)上記実施例1では、第1バリア層60の折返し工程において、折返し治具100の張出部61に対する押込みが一定の速度で行われたが、押込みの開始から終了の間で押込み速度を変えてもよい。
(3)上記実施例1では、第1ガイド部110の外周面111が、第2軸方向の全体に亘って一方側に向かうにつれて径が小さくなっていたが、外周面111の一部に このような構成を設けてもよい。例えば、外周面111に径が一定の部分が設けられていてもよい。
(4)上記実施例1では、折返し部120の湾曲面121の断面形状が半円弧状であったが、第2軸方向他方側に凹む形状であればその他の形状であってもよい。
【符号の説明】
【0061】
10…圧力容器
11…口金
20…胴部分割体
30…ドーム部分割体
31…ドーム部基体
31A…端面
32…第2バリア層
40…外部補強層
50…胴部基体
51…凹部
51A…第1テーパ部
51B…第2テーパ部
52A…第1端面
52B…第2端面
60…第1バリア層(バリア層)
61…張出部
100…折返し治具
110…第1ガイド部
111…外周面
120…折返し部
121…湾曲面
130…第2ガイド部
L1…胴部分割体の軸線
L2…折返し治具の軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12