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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023076255
(43)【公開日】2023-06-01
(54)【発明の名称】先行車検知システム
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/02 20200101AFI20230525BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20230525BHJP
【FI】
G05D1/02 K
G08G1/16 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021189576
(22)【出願日】2021-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】項 警宇
(72)【発明者】
【氏名】仙波 快之
【テーマコード(参考)】
5H181
5H301
【Fターム(参考)】
5H181AA27
5H181CC02
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC14
5H181LL09
5H301AA01
5H301BB05
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301GG09
5H301LL11
5H301LL14
5H301QQ01
5H301QQ08
(57)【要約】
【課題】本明細書は、太陽光対策を施した先行車検知システムを提供する。
【解決手段】本明細書が開示する先行車検知システムは、先行車に取り付けられている光源装置と、後続車に取り付けられている検知装置で構成される。光源装置は、後続車から見えるように先行車に取り付けられている少なくとも2個の赤外光源を備える。検知装置は、後続車の前方を撮影する唯一のカメラと、カメラが撮影した画像上の少なくとも2個の赤外光源からカメラに対する先行車の方向と距離を算出するコンピュータを備える。検知装置は、次の(1)と(2)の少なくとも一方の特徴を備える。(1)可視光領域の透過率が赤外領域の透過率よりも低い減光フィルタがカメラに取り付けられている。(2)カメラの画角の上限が水平方向よりも下を向いている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先行車に取り付けられている光源装置と、後続車に取り付けられている検知装置で構成される先行車検知システムであり、
前記光源装置は、前記後続車から見えるように前記先行車に取り付けられている少なくとも2個の赤外光源を備えており、
前記検知装置は、
前記後続車の前方を撮影するカメラと、
前記カメラが撮影した画像上の少なくとも2個の前記赤外光源から前記カメラに対する前記先行車の方向と距離を算出するコンピュータと、
を備えており、
(1)可視光領域の透過率が赤外領域の透過率よりも低い減光フィルタが前記カメラに取り付けられている、および/または、
(2)前記カメラの画角の上限が水平方向よりも下を向いている、
先行車検知システム。
【請求項2】
少なくとも2個の前記赤外光源は水平方向に並ぶように前記先行車に取り付けられている、請求項1に記載の先行車検知システム。
【請求項3】
前記カメラが太陽光を遮るレンズフードを備えている、請求項1または2に記載の先行車検知システム。
【請求項4】
前記コンピュータは、現在の前記画像上の前記赤外光源の位置から次の前記画像上における前記赤外光源の位置の予測範囲を特定し、
前記次の画像において前記予測範囲で前記赤外光源を検索する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の先行車検知システム。
【請求項5】
前記コンピュータは、
前記後続車のロール角とピッチ角とヨー角に基づいて路面に対する前記カメラの姿勢を特定し、
前記後続車に対する前記赤外光源の方向と距離を算出する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の先行車検知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、先行車に取り付けられている光源装置と、後続車に取り付けられている検知装置で構成される先行車検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、先行車の後部に取り付けられた赤外光源を後続車に取り付けられた2個のカメラで撮影し、カメラの画像から後続車に対する先行車の方向と距離を算出する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6199351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の装置は、太陽光などの環境光の影響を低減する工夫がなされておらず、環境光の下では赤外光源を検知できないおそれがある。本明細書は、環境光対策を施した先行車検知システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示する先行車検知システムは、先行車に取り付けられている光源装置と、後続車に取り付けられている検知装置で構成される。光源装置は、後続車から見えるように先行車に取り付けられている少なくとも2個の赤外光源を備える。検知装置は、後続車の前方を撮影するカメラと、カメラが撮影した画像上の少なくとも2個の赤外光源からカメラに対する先行車の方向と距離を算出するコンピュータを備える。検知装置は、次の(1)と(2)の少なくとも一方の特徴を備える。(1)可視光領域の透過率が赤外領域の透過率よりも低い減光フィルタがカメラに取り付けられている。(2)カメラの画角の上限が水平方向よりも下を向いている。
【0006】
本明細書が開示する先行車検知システムは、少なくとも2個の赤外光源を備えることで、環境光に対する先行車検知のロバスト性を高めている。また、上記の(1)と(2)も、環境光に対するロバスト性を高める。
【0007】
少なくとも2個の赤外光源は、水平方向に並ぶように先行車に取り付けられているとよい。少なくとも2個の赤外光源を水平方向に並べることで、赤外光源までの距離と方向の計算が容易になる。
【0008】
カメラが太陽光を遮るレンズフードを備えているとよい。太陽の高度が高い場合はレンズフードによって太陽光がカメラのレンズに入ることを防止することができる。
【0009】
コンピュータは、現在の画像上の赤外光源の位置から次の画像上における赤外光源の位置の予測範囲を特定し、次の画像において予測範囲で赤外光源を検索する処理を実行してもよい。予測範囲を絞ることで、赤外光源の検知を高速化できるとともに、他の光源を先行車の赤外光源として誤検知する可能性を低くできる。
【0010】
コンピュータは、後続車のロール角とピッチ角とヨー角に基づいて路面に対するカメラの姿勢を特定し、後続車に対する赤外光源(先行車)の方向と距離を算出する処理を実行してもよい。後続車が路面に対して傾いていても、先行車までの正しい距離と方向を得ることができる。
【0011】
本明細書が開示する技術の詳細とさらなる改良は以下の「発明を実施するための形態」にて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1(A)は、実施例の先行車検知システムを備えた先行車と後続車の側面図である。図1(B)は、その平面図である。
図2】カメラに関する工夫を説明する図である。
図3】赤外光源の構成の一例を示す図である。
図4】先行車までの距離と方向を求める処理のフローチャートである。
図5】カメラに対する赤外光源の距離と方向を求めるアルゴリズムを説明する図である。
図6図6(A)は、次の画像における赤外光源の位置の予測範囲を利用する場合の検知処理のフローチャートである。図6(B)は、予測範囲を使ったときの画像の一例である。
図7図7(A)は、後続車の姿勢が変化することを考慮した検知処理のフローチャートである。図7(B)は、補正前の画像の一例であり、図7(C)は、補正後の画像の一例である。
図8】後続車の姿勢に基づく補正を行った場合と行わない場合の検知誤差の比較を示すグラフである。図8(A)は距離誤差の比較例であり、図8(B)は方向誤差の比較例である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
車両の隊列走行において、後続車が前方の先行車を認識するためには、認識するためのセンサが必要である。これまでに知られているセンサには、LiDARと呼ばれるセンサや、可視光域カメラがある。LiDARとは、Light Detection And Rangingの略であり、レーザ光を照射しその反射光を観測することで、対象物までの距離や方向を特定する技術である。LiDARは高価であることに加えてデータ量が多いために高性能の処理装置が必要となり、システム全体が高価になる。
【0014】
可視光域カメラはLiDARよりも安価であるが、0.3[kLux]以下の暗所や30[kLux]以上の明所、さらには明暗が大きく変化する場所での利用が困難といった問題点がある。一方、屋内の4[kLux]以下の暗所に限定すれば、安価な赤外光域カメラを利用することも可能だが、太陽光のある明るい環境では利用が困難である。このように、広い範囲の明るさで利用できる安価なセンサは現在まで知られていない。
【0015】
しかしながら、本願の発明者らは隊列走行でのセンサへの要求を明確にすることで、安価な赤外光域カメラを利用して、0[kLux]の暗所から140[kLux]の明所までの範囲で利用できる先行車検知システムを開発した。
【0016】
具体的には、隊列走行では先行車までの距離と方向を取得できれば良いため、それら二つの情報を取得できる構成として、赤外光域カメラで2個の赤外光源を観測する構成とした。さらに、赤外光域カメラに減光フィルタを付加し、また露光時間を短くすることで意図的に暗所を作り出す。さらに、先行車には高輝度の赤外光源を搭載することで、赤外光域カメラで検出できるようにした。これによって、暗所でも明所でも先行車を認識し、先行車までの距離と方向を取得できる。
【0017】
(実施例)図1(A)に、光源装置10を備えた先行車3と、検知装置20を備えた後続車4の側面図を示す。図1(B)は、先行車3と後続車4の平面図である。図中の座標系のZ方向が上を示している。図中の座標系のX方向は車両の進行方向に相当する。Y方向は車両側方に相当する。
【0018】
光源装置10と検知装置20で先行車検知システム2を構成する。光源装置10は、2個の赤外光源11R、11Lを含む。赤外光源11R、11Lは、水平方向で並ぶように、先行車3の後端に取り付けられている。2個の赤外光源11R、11Lは、後方の後続車4から視認することができる。
【0019】
検知装置20は、カメラ21とコンピュータ22を含む。カメラ21は、後続車4の前方が撮影できる位置と姿勢で後続車4に取り付けられている。カメラ21の画像はコンピュータ22で取り込まれて処理される。後続車4の基準点に対するカメラ21の三次元位置情報(基準点に対するx、y、z方向の位置と、基準方向に対するカメラ21の光軸のロール角、ピッチ角、ヨー角)は、予めコンピュータ22に記憶されている。後続車4の基準点は、例えば後続車4の中心に設定されており、基準方向は、例えば後続車4の基準点から前方に向かう方向に設定されている。また、赤外光源11R、11Lの高さも予めコンピュータ22に記憶されている。
【0020】
先行車検知システム2は、後続車4のカメラ21で先行車3の赤外光源11R、11Lを撮影し、その画像から後続車4を基準とした先行車3までの距離と先行車3の方向を特定する。コンピュータ22が特定した先行車3までの距離と方向は、例えば、後続車4の制御器に送られる。制御器は、先行車3を追従するように後続車4の駆動系を制御する。
【0021】
図2に、検知装置20(カメラ21とコンピュータ22)を備えた後続車4の側面図を示す。図2は、カメラ21に関する工夫を説明する図であり、破線の円の中に、カメラ21の内部構造を拡大した図も描いてある。
【0022】
カメラ21は、前方斜め下を撮影するように後続車4に取り付けられている。より詳しくは、カメラ21は、画角の上限(上限を規定する直線)がカメラ21から後続車前方に向けて水平方向よりも下を向くように取り付けられている。
【0023】
また、カメラ21は、太陽光を遮るレンズフード23を備えている。さらに、カメラ21は、レンズ24に入る光量を減じる減光フィルタ25を備えている。図2では理解を助けるために減光フィルタ25にはグレーのハッチングを施してある。
【0024】
レンズフード23と減光フィルタ25を備えることで、環境光(太陽からの直射日光や路面からの反射光など)の影響を減じることができる。また、カメラ21の露光時間を減らすことでも環境光の影響を減じることができる。
【0025】
減光フィルタ25には、可視光領域の光透過率が赤外領域の光透過率よりも低いものが用いられる。後に説明するように、赤外光源11R、11Lは、強い赤外光を照射する。減光フィルタ25は、カメラ21に入る可視光領域の光量を多く減じるので、可視光領域の環境光の影響を効果的に抑えることができる。一方、減光フィルタ25は、赤外領域の光は可視光領域の光よりもよく通すので、赤外光源11R、11Lは、カメラ21の画像にはっきりと映る。
【0026】
さらに、画角の上限が水平方向に対して斜め下を向くようカメラ21を配置することで、直射日光の影響を減じることができる。
【0027】
図3に、赤外光源11R、11Lを搭載した先行車3の側面図を示す。赤外光源11Rと赤外光源11Lは、図中の座標系のY方向(車幅方向)で並んでいるので、図3では、赤外光源11Lは、赤外光源11Rの背後に位置して見えない。
【0028】
赤外光源11Rは、基板13に複数のLED14を円形に配置した構成を有している。LED14としては、強い赤外光を発するタイプが選定される。多数のLED14を用いて一つの赤外光源11Rを構成することで、赤外光源11Rの輝度を高くしている。赤外光源11Rは、0.58[W/sr]以上の輝度を有している。赤外光源11Lも同様である。なお、人の目は赤外光(特に近赤外光)に対して非常に感度が低いため、赤外光源11R、11Lは、人の目に影響を与えない。
【0029】
図4に、先行車までの距離と先行車の方向を求める処理のフローチャートを示す。図4の処理は、コンピュータ22が一定の周期で実行する。
【0030】
コンピュータ22は、カメラ21が撮影した画像を取得する(ステップS2)。コンピュータ22は、カメラ21の画像から赤外光源11R、11Lの夫々を認識する(ステップS3)。ここで、赤外光源11R(11L)を認識するとは、画像の中から赤外光源11R(11L)を見つけ出し、画像上の赤外光源位置を特定することを意味する。
【0031】
ステップS3の処理により、2個の赤外光源11R、11Lのそれぞれの座標が得られる。ここでの座標は、カメラ21の画像に定義された座標系における座標を意味する。2個の赤外光源11R、11Lのそれぞれの座標は、次のステップS4の処理で使われる。ステップS4では、コンピュータ22は、カメラ21からみた各赤外光源の位置を計算する。ステップS4の処理により、2個の赤外光源11R、11Lのそれぞれの平面位置が求まる。平面位置とは、カメラ21の位置を基準とする水平面に投影した赤外光源11R、11Lの位置を意味する。
【0032】
コンピュータ22は、2個の赤外光源11R、11Lの平面位置から、後続車4に対する先行車3までの距離と、後続車4からみたときの先行車3の方向を計算する(ステップS5)。コンピュータ22は、算出した距離と方向を、例えば後続車4を自動制御する制御器へ出力する(ステップS6)。
【0033】
図5に、水平面上におけるカメラ21に対する赤外光源までの距離Lvと方向角θvを求めるアルゴリズムを示す。図5(A)は、カメラ21の光軸を通る垂直面におけるカメラ21と赤外光源の幾何学的関係を示している。図5(B)は、撮像素子中心を通る水平面におけるカメラ21と赤外光源の幾何学的関係を示している。距離Lvがカメラ21(撮像素子中心)から赤外光源までの距離を意味する。方向角θvは、水平面内において、カメラ21(撮像素子中心)を始点とし、カメラ21の光軸に対する赤外光源11R(11L)の方向を意味する。図中のΔθは、図5(A)の垂直面において、撮像素子中心と赤外光源とを結んだ直線と光軸の間の角度を意味する。コンピュータ22は、2個の赤外光源11Rと赤外光源11Lの夫々に対して図5のアルゴリズムによって距離Lvと方向角θvを計算する。
【0034】
カメラ21の搭載角θ(鉛直方向に対する光軸の角度)と、カメラ21と赤外光源との高低差hは、予め計測されており、コンピュータ22に記憶されている。別言すれば、搭載角θと高低差hは既知の定数である。図5に示した幾何学的関係により、画像上の赤外光源の座標(xs、ys)から、カメラ21から赤外光源までの距離Lvと、水平面内におけるカメラ光軸に対する赤外光源の方向角θvが求められる。図5の右下に、距離Lvと方向角θvを求める式を示した。
【0035】
カメラ21と赤外光源11R、11Lとの間に高低差hがあることが重要である。すなわち、カメラ21は赤外光源11R、11Lよりも高い位置に取り付けられている。より詳しくは、後続車4に取り付けられたカメラ21の路面からの高さが、先行車3に取り付けられた赤外光源11R、11Lの路面からの高さよりも高くなっている。
【0036】
図5の処理であっても、カメラ21の画像には太陽光などの外乱光の影響が残る。なぜならば、太陽の明るさが赤外光源以上の場合があり、太陽光が鏡面反射すればカメラ21に映ってしまう。そこで、走行時にはカメラ側で常時赤外光源を認識し続ける制御が必要となる。そのために、赤外光源の座標を予測する。コンピュータ22は、カメラ21に映った直前の赤外光源の座標、現在のカメラ位置、カメラの回転角、自車(カメラ21を搭載した後続車)の速度、自車の旋回曲率、追従対象車(先行車)の速度、追従対象車の旋回曲率の少なくとも一つ以上の情報を用いて、赤外光源の現在座標を予測する。そして、予測した場所から一定距離以内にある光源を赤外光源として認識する。こうすることで、カメラ21に映った全ての光源を認識/判断する必要がなく、少ない時間で赤外光源を検出して認識できる。現状、次の環境下でこの制御が有効であることを確認している。(1)車両ボディが太陽光を反射した場合。(2)追従対象車(先行車)の近くに別の車両の光源(外乱光源)がある場合。(3)路面が太陽光を鏡面反射した場合。
【0037】
図6(A)に、外乱光の影響を減じつつ先行車までの距離と方向を特定する処理のフローチャートを示す。この処理では、現在の画像から次の画像における赤外光源の存在範囲(予測範囲)を予測し、次の画像を取得したら予測範囲で赤外光源を探す。図6では、紙面の都合上、先行車3に取り付けられた「赤外光源」(認識の対象となる光源)を単に「光源」と表記している。
【0038】
図6(A)の処理もコンピュータ22が実行する。コンピュータ22は、カメラ21の画像から光源を認識(特定)する(ステップS12)。このとき、コンピュータ22は、前回の画像から得られた光源の予測座標(今回の画像上の光源の予測位置)を中心とした所定範囲(予測範囲)で光源を探索する。前述したように、光源装置は2個の赤外光源11R、11Lを有しており、コンピュータ22は、2個の赤外光源の夫々に対して予測範囲を特定し、その予測範囲内でそれぞれの赤外光源を探索する。
【0039】
図6(B)に、予測範囲を用いた画像の一例を示す。図(B)において、黒丸が前回の画像から得た赤外光源の位置を示している。黒丸を中心とした破線円が、予測範囲を示している。白抜きの丸は、今回の画像における赤外光源の位置を示している。白抜きの四角は、今回の画像における外乱光源の位置を示している。外乱光源とは、先行車3に取り付けられた赤外光源以外の光源を意味する。
【0040】
コンピュータ22は、前回の画像上の赤外光源の位置(黒丸)に基づいて予測範囲(破線円)を特定し、今回の画像において、予測範囲(破線円)の中で赤外光源を探索する。画像に外乱光源が含まれていても、予測範囲外の外乱光源は探索されないので、コンピュータ22は、外乱光源を赤外光源として誤検知することがない。
【0041】
コンピュータ22は、ステップS12で得られた光源座標(画像上での光源の位置)を補正する(ステップS13)。このとき、コンピュータ22は、カメラ位置・回転角を用いて光源座標を補正する。光源座標の補正については後述する。
【0042】
ステップS13により、補正された光源座標を得る。ステップS13で得られる光源座標は画像上での赤外光源の座標である。次いでコンピュータ22は、画像上での光源座標に基づいて、カメラ21からみた光源位置を計算する(ステップS14)。カメラ21からみた光源位置とは、水平面に投影したカメラ位置から赤外光源までの距離と、カメラの光軸方向に対する赤外光源の方向を意味する。
【0043】
ステップS14の処理により、水平面上での赤外光源の位置と方向が定まる。最後にコンピュータ22は、後続車4の基準点/基準方向に対する先行車の位置/方向を算出する(ステップS15)。後続車を基準とした先行車の位置と方向は、車両を自動制御する制御器へ出力される。また、今回の画像処理で得られた先行車までの距離と方向は、次回の画像処理における光源座標の予測処理(ステップS17)で利用される。図6(A)においてステップS15からS17への矢印線が、今回(前回)の画像で得られた先行車までの距離と方向を次回(今回)の光源座標予測処理(ステップS17)で使われることを表している。
【0044】
同時にコンピュータ22は、車両の姿勢(路面に対する後続車4のロール角、ピッチ角、ヨー角)に基づいて、路面に対するカメラ21の位置と回転角を算出する(ステップS16)。カメラの位置と回転角は、光源座標の予測(ステップS17)、光源座標補正処理(ステップS13)、および、先行車の距離/方向の計算処理(ステップS15)で利用される。
【0045】
光源座標を補正する処理(ステップS13)について説明する。図7(A)に、後続車の姿勢が変化することを考慮した検知処理のフローチャートを示す。図7(A)のフローチャートは、図6(A)のフローチャートからステップS17の処理を省いたものに相当する。
【0046】
走行時、後続車が段差を踏んで姿勢角が変化することがある。後続車の姿勢角とは、路面に対する後続車のロール角、ピッチ角、ヨー角のことである。後続車の姿勢角が変化した場合、画像における赤外光源の座標をそのまま利用すると、先行車の距離と方向を間違えて計算してしまう。そこで、コンピュータ22は、後続車の姿勢角からカメラ21の位置とカメラ21の姿勢角(回転角)を算出し(図7(A)のステップS16)、その値を利用して距離と方向を計算する。そのような処理を実行することで、カメラ21が回転していないときと同様に赤外光源の位置を画像上に表すことができ(ステップS13)、新しいカメラ位置で先行車3までの距離と方向を計算することができるようになる(ステップS14、S15)。
【0047】
図7(B)に、ステップS13の補正を実施する前のカメラ画像の一例を示し、図7(C)に補正後のカメラ画像の一例を示す。図7(B)、(C)において、白抜き丸は右側の赤外光源11Rの位置を示しており、黒丸は左側の赤外光源11Lの位置を示している。先に述べたように、2個の赤外光源11R、11Lは、水平方向で並んで配置されているが、図7(B)では後続車4の姿勢角が変化したことによって画像上では右側の赤外光源11Rが低く、左側の赤外光源11Lが高くなっている。また、2個の赤外光源11R、11Lが画像上ではやや左側にシフトしている。
【0048】
後続車4の姿勢角に基づいて画像上の赤外光源の位置を補正すると、図7(C)に示すように、2個の赤外光源11R、11Lの位置は、画像上でx軸上でならび(すなわち水平方向で並び)、y軸に対して対象となる。
【0049】
図8に、光源座標の補正を行った場合と行わなかった場合で誤差を比較した例を示す。図8(A)は、後続車4の左右輪に高低差が生じたときのカメラ21から赤外光源までの距離誤差の比較例である。図8(A)、(B)は、ともにシミュレーション結果である。図8(B)は、後続車4の左右輪に高低差が生じたときのカメラ21の光軸に対する赤外光源の方向誤差の比較例である。図8(A)の例では、カメラから赤外光源までの距離は250[cm]に設定した。
【0050】
図8(A)、(B)が示すように、補正によって距離誤差、方向誤差ともに小さくなることが分かる。なお、車両のモデル(タイヤ、形状など)を厳密に考慮に入れることができれば、さらに精度が良くなる。
【0051】
カメラの画像上に点在する無数の光源から検知対象の赤外光源を探す方法として、赤外光源を点滅する方法もある。環境に存在する光源の多くは、定常光か不規則点滅光のどちらかである。そこで、赤外光源を所定の周期で点滅させ、カメラで観測した情報を周波数解析することで赤外光源を検出することが可能になる。ただし、先行車が動いていると、時系列の判断が困難になるため、後続車も先行車も静止していることが望ましい。
【0052】
実施例の先行車検知システム2は、次の特徴を備えている。すなわち、(1)可視光領域の透過率が赤外領域の透過率よりも低い減光フィルタ25がカメラ21のレンズ24の前に取り付けられている。(2)カメラ21の画角の上限が水平方向よりも下を向いている。上記(1)と(2)の両方を備えることが望ましいが、どちらか一方でも備えていれば、環境光の影響を抑える効果が期待できる。
【0053】
少なくとも2個の赤外光源11R、11Lは水平方向に並ぶように先行車3に取り付けられている。先行車取り付けられる赤外光源の数は、3個以上であってもよい。コンピュータ22は、カメラ21からそれぞれの赤外光源までの距離と方向を算出する。
【0054】
カメラ21は、太陽光を遮るレンズフード23を備えている。安価で簡単な装備(レンズフード23)で、赤外光源11R、11Lを検知する際の環境光の影響を抑えることができる。
【0055】
コンピュータ22は、現在の画像における赤外光源11R(11L)の位置から次の画像における赤外光源11R(11L)の位置の予測範囲を特定し、次の画像において予測範囲で赤外光源11R(11L)を探索する。画像に映った多数の外乱光源を排除できる。
【0056】
コンピュータ22は、後続車4の路面に対するロール角とピッチ角とヨー角に基づいて路面に対するカメラ21の姿勢を特定し、後続車4に対する赤外光源11R(11L)の方向と距離を算出する。
【0057】
実施例の先行車検知システム2は、光源装置10として2個以上の赤外光源11R、11Lを備えることで、環境光(太陽光など)の影響下で赤外光源を検知し易くしている。別言すれば、先行車検知システム2は、複数の赤外光源11R、11Lを1個のカメラ21で撮影し、夫々の赤外光源の距離と方向を特定することで、先行車検知のロバスト性を高めている。
【0058】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0059】
2:先行車検知システム 3:先行車 4:後続車 10:光源装置 11R、11L:赤外光源 13:基板 14:LED 20:検知装置 21:カメラ 22:コンピュータ 23:レンズフード 24:レンズ 25:減光フィルタ
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