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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023007627
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】反転ライニング装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 63/36 20060101AFI20230112BHJP
   F16L 1/00 20060101ALI20230112BHJP
   F16L 55/162 20060101ALI20230112BHJP
【FI】
B29C63/36
F16L1/00 K
F16L55/162
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021110597
(22)【出願日】2021-07-02
(71)【出願人】
【識別番号】520050716
【氏名又は名称】RTI JAPAN パイプソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092727
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 忠昭
(74)【代理人】
【識別番号】100146891
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 ひろ美
(72)【発明者】
【氏名】高見 浩三
(72)【発明者】
【氏名】立松 圭介
(72)【発明者】
【氏名】芝原 成芳
(72)【発明者】
【氏名】草野 隆
【テーマコード(参考)】
3H025
4F211
【Fターム(参考)】
3H025EA01
3H025EB23
3H025EC01
3H025ED02
3H025EE05
4F211AD12
4F211AG08
4F211AH43
4F211SA14
4F211SC03
4F211SD04
4F211SJ13
4F211SJ15
4F211SP12
(57)【要約】      (修正有)
【課題】一回の施工長さを規定することなく、且つ更生しようとする既設管の開口近くに設置可能な小型で安価な反転挿入装置を備えた反転ライニング装置を提供すること。
【解決手段】既設管Pの一端側に配設される反転挿入装置4と、圧力流体を供給するための圧力流体供給源と、既設管Pの内周面を覆って更生するライニング材2と、ライニング材2の連結端部に係脱自在に連結された引戻し部材とを備えた反転ライニング装置。この反転挿入装置4は、圧力空間6を規定するハウジング本体42を有し、このハウジング本体42の一端側に開口変更構造60が設けられ、ライニング材2をハウジング本体42内に導入するときには、扁平状に折りたたまれたライニング材2の断面形状に対応した第1形状の第1導入開口62を通して導入され、引戻し部材を導入するときには、この引戻し部材の断面形状に対応した第2形状の第2導入開口を通して導入される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設管の一端側に配置される反転挿入装置と、前記反転挿入装置の圧力空間に圧力流体を供給するための圧力流体供給源と、前記既設管の内周面を覆って更生するライニング材と、前記ライニング材の連結端部に係脱自在に連結された引戻し部材と、を備えた反転ライニング装置であって、
前記反転挿入装置は、前記圧力空間を規定するハウジング本体を有し、前記ハウジング本体の一端側には、扁平状に折りたたまれた前記ライニング材の断面形状に対応した第1形状の第1導入開口と前記引戻し部材の断面形状に対応した第2形状の第2導入開口とに変更可能な開口変更構造が設けられており、
前記ライニング材は、前記圧力流体供給源からの前記圧力流体の圧力を利用して前記既設管の一端側から反転挿入され、反転挿入の前半においては、折りたたまれた前記ライニング材は前記開口変更構造の前記第1導入開口を通して前記ハウジング本体の前記圧力空間に導入され、また反転挿入の後半においては、前記引戻し部材が前記開口変更構造の前記第2導入開口を通して前記ハウジング本体の前記圧力空間に導入されることを特徴とする反転ライニング装置。
【請求項2】
前記ハウジング本体の前記一端側には端壁が設けられ、前記端壁に挿入開口が設けられており、また前記開口変更構造は、前記第1導入開口を有する第1取付部材と、前記第2導入開口を有する第2取付部材を含んでおり、
折りたたまれた前記ライニング材を導入するときには、前記ハウジング本体の前記端壁に前記第1取付部材が取り付けられ、前記第1取付部材の前記第1導入開口及び前記端壁の前記挿入開口を通して前記ライニング材が導入され、また前記引戻し部材を導入するときには、前記ハウジング本体の前記端壁に前記第2取付部材が取り付けられ、前記第2取付部材の前記第2導入開口及び前記端壁の前記挿入開口を通して前記引戻し部材が導入されることを特徴とする請求項1に記載の反転ライニング装置。
【請求項3】
前記ハウジング本体の前記端壁と前記第1取付部材との間には、前記第1取付部材の前記第1導入開口に対応する第3導入開口を有するシール部材が配設され、前記シール部材の前記第3導入開口を規定する内周部位は、前記第1取付部材の前記第1導入開口より内周側に突出し、前記第1導入開口を通して導入される前記ライニング材の外周面に近接乃至接触することを特徴とする請求項2に記載の反転ライニング装置。
【請求項4】
前記第1取付部材の前記第1導入開口を規定する導入側の開口周縁部には、面取り加工が施されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の反転ライニング装置。
【請求項5】
前記開口変更構造は、前記第1導入開口を有し且つ前記ハウジング本体の前記一端側に設けられた端壁と、前記第2導入開口を有する開口変更部材とを含み、扁平状に折りたたまれた前記ライニング材を前記ハウジング本体の前記圧力空間に導入するときには、前記端壁の前記第1導入開口を通して前記ライニング材が導入され、前記引戻し部材を前記ハウジング本体の前記圧力空間に導入するときには、前記端壁に前記開口変更部材が取り付けられ、前記開口変更部材の前記第2導入開口及び前記端壁の前記第1導入開口を通して前記引戻し部材が導入されることを特徴とする請求項1に記載の反転ライニング装置。
【請求項6】
前記ハウジング本体の前記一端側に設けられた前記開口変更構造の前記第1導入開口の高さ位置は、前記既設管の径方向中心の高さ位置と一致していることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の反転ライニング装置。
【請求項7】
反転挿入装置のハウジング本体の圧力空間に供給される圧力流体を利用して既設管の一端側からライニング材を反転挿入させながら前記既設管の内周面を覆って更生する反転ライニング方法であって、
前記ライニング材は扁平状に折りたたまれた状態で前記既設管の一端側に配設され、前記ライニング材の連結端部には引戻し部材が係脱自体に連結されており、また前記ハウジング本体の一端側には、折りたたまれた前記ライニング材の断面形状に対応した第1形状の第1導入開口と前記引戻し部材の断面形状に対応した第2形状の第2導入開口とに変更可能な開口変更構造が設けられており、
前記ライニング材の反転挿入の前半においては、折りたたまれた前記ライニング材が前記開口変更構造の前記第1導入開口を通して前記ハウジング本体の前記圧力空間に導入され、またこの反転挿入の後半においては、前記引戻し部材が前記開口変更構造の前記第2導入開口を通して前記ハウジング本体の前記圧力空間に導入されることを特徴とする反転ライニング方法。
【請求項8】
折りたたまれた前記ライニング材を前記開口変更構造の前記第1導入開口を通して導入するときには、前記第1導入開口及び/又はその近傍に、前記ライニング材の滑りを良くするための潤滑剤を吹き付けることを特徴とする請求項7に記載の反転ライニング方法。
【請求項9】
既設管の一端側に配置される反転挿入装置と、前記反転挿入装置の圧力空間に圧力流体を供給するための圧力流体供給源と、前記既設管の他端側に配設される吸引装置と、前記既設管の内周面を覆って更生するライニング材と、を備えた反転ライニング装置であって、
前記ライニング材は、前記反転挿入装置の外側に扁平状に折りたたまれた状態に設置され、前記反転挿入装置は、前記圧力空間を規定するハウジング本体を有し、前記ハウジング本体の一端側には、扁平状に折りたたまれた前記ライニング材の断面形状に対応した第1形状の第1導入開口が設けられており、前記ライニング材は、前記圧力流体供給源からの前記圧力流体の圧力を利用して前記既設管の一端側から反転挿入され、この反転挿入の際には、折りたたまれた前記ライニング材は、前記第1導入開口を通して前記ハウジング本体の前記圧力空間に導入されるとともに、前記吸引装置は、前記既設管の他端側から吸引して前記ライニング材の反転挿入を助長することを特徴とする反転ライニング装置。
【請求項10】
前記ライニング材の連結端部には引戻し部材が係脱自在に連結され、また前記反転挿入装置の一端側には開口変更構造が設けられ、前記開口変更構造は、扁平状に折りたたまれた前記ライニング材の断面形状に対応した前記第1形状の前記第1導入開口と前記引戻し部材の断面形状に対応した第2形状の第2導入開口とに変更可能に構成されており、
反転挿入の前半においては、折りたたまれた前記ライニング材は前記開口変更構造の前記第1導入開口を通して前記ハウジング本体の前記圧力空間に導入され、また反転挿入の後半においては、前記引戻し部材が前記開口変更構造の前記第2導入開口を通して前記ハウジング本体の前記圧力空間に導入されることを特徴とする請求項9に記載の反転ライニング装置。











【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上水道管、下水道管、農業用水管、工事用水道管などの既設管を更生するために用いる反転ライニング装置及びこの既設管を更生するための反転ライニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地中に埋設された既設管(例えば、上水道管、下水道管、農業用水管、工事用水道管など)が老朽化した場合、この管路を掘削することなく、管路の内周面にライニング材を覆って管路を更生するライニング装置(ライニング方法)が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この反転ライニング装置(反転ライニング方法)では、ライニング材を既設管に反転挿入するための反転挿入装置が用いられる。この反転挿入装置は、繰出しロールを備えた圧力ハウジングを備え、この圧力ハウジング内の繰出しロールにライニング材が巻かれ、ライニング材として、例えば熱硬化性の樹脂を含浸させたものが用いられる。
【0004】
このライニング材を既設管に挿入するときには、圧力流体(例えば、圧縮空気)が圧力ハウジング内に供給され、この圧縮空気の圧力を利用してライニング材が反転されながら既設管に挿入される。このライニング材の反転挿入後は、ライニング材の内側に例えば高温の水蒸気が供給され、この水蒸気の熱により含浸された熱硬化性樹脂が硬化され、このようにしてライニング材が既設管の内周面に密着されて既設管の更生が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-1544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この反転ライニング装置(反転ライニング方法)では、ライニング材が反転挿入装置の圧力ハウジング内に収容され、この圧力ハウジング内に供給される圧力流体の圧力を利用してライニング材が反転されながら既設管内に挿入される構成であり、それ故に、既設管にライニング材を被覆する1回の作業長さは、圧力ハウジングの大きさに制限を受け、例えば内径50cmの既設管である場合に100m程度が限度である。そのために、長い作業区間の施工ができないという問題がある。
【0007】
また、反転挿入装置の圧力ハウジング内に圧力流体を供給する構成であり、それ故に、この圧力ハウジングを耐圧上、堅牢なものにする必要があることから、装置が大きく且つ重く高価なものになる。
【0008】
更に、反転挿入装置が大きく且つ重くなると、設置可能な場所が更生しようとする既設管の開口から離れた地上部分などに制約されことになる。反転ライニング工法を必要とされる管(既設管)が敷設されている管路上で、設置に制約を受ける装置は使い難いという問題がある。
【0009】
本発明の目的は、一回の施工長さを規定することなく、且つ更生しようとする既設管の開口近くに設置可能な小型で安価な反転挿入装置を備えた反転ライニング装置及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の反転ライニング装置は、既設管の一端側に配置される反転挿入装置と、前記反転挿入装置の圧力空間に圧力流体を供給するための圧力流体供給源と、前記既設管の内周面を覆って更生するライニング材と、前記ライニング材の連結端部に係脱自在に連結された引戻し部材と、を備えた反転ライニング装置であって、
前記反転挿入装置は、前記圧力空間を規定するハウジング本体を有し、前記ハウジング本体の一端側には、扁平状に折りたたまれた前記ライニング材の断面形状に対応した第1形状の第1導入開口と前記引戻し部材の断面形状に対応した第2形状の第2導入開口とに変更可能な開口変更構造が設けられており、
前記ライニング材は、前記圧力流体供給源からの前記圧力流体の圧力を利用して前記既設管の一端側から反転挿入され、反転挿入の前半においては、折りたたまれた前記ライニング材は前記開口変更構造の前記第1導入開口を通して前記ハウジング本体の前記圧力空間に導入され、また反転挿入の後半においては、前記引戻し部材が前記開口変更構造の前記第2導入開口を通して前記ハウジング本体の前記圧力空間に導入されることを特徴とする。
【0011】
この反転ライニング装置においては、開口変更構造として第1導入開口を有する第1取付部材と第2導入開口を有する第2取付部材を用い、第1取付部材をハウジング本体の端壁に取り付けたときには、この端壁に第1導入開口が設けられた構成となり、また第2取付部材をハウジング本体の端壁に取り付けたときには、この端壁に第2導入開口が設けられた構成となる。
【0012】
また、ハウジング本体の端壁と第1取付部材との間には、第3導入開口を有するシール部材を配設し、このシール部材の第3導入開口を規定する内周部位を、第1取付部材の第1導入開口よりも内周側に突出させるのが好ましく、このように構成することにより、このシール部材の内周部位が、第1導入開口を通して導入されるライニング材の外周面に近接乃至接触するようになり、これによって、シール部材とライニング材との間の摩擦を抑えながら両者間を通しての圧力流体の漏れを少なく抑えることができる。
【0013】
また、第1取付部材の第1導入開口を規定する導入側の開口周縁部に面取り加工を施すのが好ましく、このように構成することにより、第1導入開口の縁部が、これを通して導入されるライニング材の外面に引っ掻くように作用することがなく、第1導入開口に導入される際のライニング材の損傷を防止することができる。尚、面取り加工としては、例えばR(アール)加工、テーパ加工などである。
【0014】
また、開口変更構造として第1導入開口を有する端壁と、第2導入開口を有する開口変更部材とを用いるようにしてもよく、この場合、開口変更部材を外した状態では、ハウジング本体の端壁に第1導入開口が設けられた構成となり、またこの開口変更部材を取り付けた状態では、ハウジング本体の端壁に第2導入開口が設けられた構成となる。
【0015】
また、ハウジング本体の一端側における開口変更構造の第1導入開口の高さ位置と、既設管の径方向中心の高さ位置とを一致させるのが好ましく、このように構成することにより、第1挿入開口を通ったライニング材は既設管の径方向中心に向けて直線状に反転挿入され、これにより、反転挿入の際の抵抗を少なくしてスムースに挿入することができる。
【0016】
更に、本発明の反転ライニング方法は、反転挿入装置のハウジング本体の圧力空間に供給される圧力流体を利用して既設管の一端側からライニング材を反転挿入させながら前記既設管の内周面を覆って更生する反転ライニング方法であって、
前記ライニング材は扁平状に折りたたまれた状態で前記既設管の一端側に配設され、前記ライニング材の連結端部には引戻し部材が係脱自体に連結されており、また前記ハウジング本体の一端側には、折りたたまれた前記ライニング材の断面形状に対応した第1形状の第1導入開口と前記引戻し部材の断面形状に対応した第2形状の第2導入開口とに変更可能な開口変更構造が設けられており、
前記ライニング材の反転挿入の前半においては、折りたたまれた前記ライニング材が前記開口変更構造の前記第1導入開口を通して前記ハウジング本体の前記圧力空間に導入され、またこの反転挿入の後半においては、前記引戻し部材が前記開口変更構造の前記第2導入開口を通して前記ハウジング本体の前記圧力空間に導入されることを特徴とする。
【0017】
この反転ライニング方法では、開口変更構造の第1導入開口及び/又はその近傍に潤滑剤を吹き付けるようにするのが好ましく、このように構成することにより、第1導入開口に導入される際のライニング材の滑りを良くし、反転挿入時におけるライニング材の破損を少なくすることができる。
【0018】
更にまた、本発明の他の反転ライニング装置は、既設管の一端側に配置される反転挿入装置と、前記反転挿入装置の圧力空間に圧力流体を供給するための圧力流体供給源と、前記既設管の他端側に配設される吸引装置と、前記既設管の内周面を覆って更生するライニング材と、を備えた反転ライニング装置であって、
前記ライニング材は、前記反転挿入装置の外側に扁平状に折りたたまれた状態に設置され、前記反転挿入装置は、前記圧力空間を規定するハウジング本体を有し、前記ハウジング本体の一端側には、扁平状に折りたたまれた前記ライニング材の断面形状に対応した第1形状の第1導入開口が設けられており、前記ライニング材は、前記圧力流体供給源からの前記圧力流体の圧力を利用して前記既設管の一端側から反転挿入され、この反転挿入の際には、折りたたまれた前記ライニング材は、前記第1導入開口を通して前記ハウジング本体の前記圧力空間に導入されるとともに、前記吸引装置は、前記既設管の他端側から吸引して前記ライニング材の反転挿入を助長することを特徴とする。
【0019】
この反転ライニング装置では、ライニング材の連結端部に引戻し部材を係脱自在に連結するとともに、反転挿入装置の一端側に開口変更構造を設け、この開口変更構造を、扁平状に折りたたまれたライニング材の断面形状に対応した第1形状の第1導入開口と引戻し部材の断面形状に対応した第2形状の第2導入開口とに変更可能に構成するのが好ましく、このように構成した場合、反転挿入の前半においては、折りたたまれたライニング材は開口変更構造の第1導入開口を通してハウジング本体の圧力空間に導入され、また反転挿入の後半においては、引戻し部材が開口変更構造の第2導入開口を通してハウジング本体の圧力空間に導入され、これによって、ハウジング本体内の圧力流体の外部への漏れを抑えることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の反転ライニング装置及び方法によれば、反転挿入装置は圧力空間を規定するハウジング本体を有し、このハウジング本体の一端側に開口変更構造が設けられている。そして、ライニング材を反転挿入する前半においては、扁平状に折りたたまれたライニング材が開口変更構造の第1導入開口を通して圧力空間に導入されるので、ライニング材を導入する際の圧力空間からの圧力流体の漏れを抑えることができ、またこの反転挿入する後半においては、引戻し部材が開口変更構造の第2導入開口を通して圧力空間に導入されるので、引戻し部材を導入する際の圧力空間からの圧力流体の漏れを抑えることができる。また、ライニング材は扁平状に折りたたまれた状態で既設管の一端側に配設され、このような状態のライニング材が反転挿入装置のハウジング本体を通して既設管内に反転挿入されるので、長い管路の更生施工作業を行う場合においても大きなハウジング本体を必要とせず、比較的小さな反転挿入装置でもってライニング材の反転挿入を行うことができる。
【0021】
また、本発明の他の反転ライニング装置によれば、既設管の一端側に配置される反転挿入装置と、反転挿入装置の圧力空間に圧力流体を供給するための圧力流体供給源と、既設管の他端側に配設される吸引装置とを備え、ライニング材は、反転挿入装置の外側に扁平状に折りたたまれた状態に設置されるので、反転挿入装置内にライニング材を収容する形態のものに比してこの反転挿入装置の小型化を図り、安価なものとして提供することができる。また、ライニング材は、圧力流体供給源からの圧力流体の圧力を利用して既設管の一端側から反転挿入され、この反転挿入の際には、吸引装置は、既設管の他端側から吸引してライニング材の反転挿入を助長するので、既設管内へのライニング材の反転挿入を円滑に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明に従う反転ライニング装置の一実施形態を簡略的に示す断面図。
図2】管路の更生に用いるライニング材を示す断面図。
図3図1の反転ライニング装置における反転挿入装置を示す断面図。
図4図3の反転装入装置のハウジング本体の端壁及びその近傍を示す部分正面図。
図5図4のハウジング本体に取り付けられる開口変更構造の第1取付部材を示す正面図。
図6図4のハウジング本体に取り付けられる開口変更構造の第2取付部材を示す正面図。
図7図1の反転ライニング装置における、既設管の他端部に取り付けられる管密封構造を示す断面図。
図8】ライニング材が反転挿入されて到達位置まで到達した状態を示す断面図。
図9図1の反転ライニング装置において、引き戻し部材が反転挿入装置に挿入された状態を示す断面図。
図10】反転挿入装置の第1導入開口及びその近傍に潤滑剤を吹き付ける状態を簡略的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して、本発明に従う反転ライニング装置(及び反転ライニング方法)の一実施形態について説明する。
【0024】
図1において、図示の反転ライニング装置は、ライニング材2(図2も参照)を既設管Pの一端側(図1において左端側)から反転挿入するための反転挿入装置4と、反転挿入装置4の圧力空間6に圧力流体(例えば、圧縮空気)を供給するための圧力流体供給源8と、反転挿入されるライニング材2を既設管Pの他端側(図1において右端側)から吸引するための吸引源10と、この既設管Pの他端部を密封する管密封構造11を備えている。既設管P(例えば、上水道管、下水道管、農業用水管などの埋設管)は、例えば、一端側が第1竪坑13内に突出するように、その他端側が第2竪坑14内に突出するように地面16に埋設されている。尚、既設管Pが完全に埋設されている場合、地面16の所定箇所に第1竪坑13を掘削して既設管Pの一端側がこの第1竪坑13内に突出するようにし、また地面16の他の所定箇所に第2竪坑14を掘削して既設管Pの他端側がこの第2竪坑14内に突出するようにする。
【0025】
この埋設管Pを更生する場合、図1に示すように、既設管Pの一端側(この形態の場合、第1竪坑12側)に反転挿入装置4が設置され、この反転挿入装置4に関連して圧力流体供給源8が配設され、この圧力流体供給源8は、例えば圧縮空気供給装置18(例えば、コンプレッサなど)などから構成される。また、既設管Pの他端側(この形態の場合、第2竪坑14側)に吸引源10が配設され、この吸引源10は、例えばエアー吸引機20(例えば吸引ポンプなど)から構成される。
【0026】
この実施形態では、ライニング材2は、扁平状に折りたたまれた状態で作業トラックなどの車両22の荷台24に載置され、既設管Pの補修施工現場まで車両22に載せた状態で運搬される。また、反転挿入装置4、圧力流体供給源8、管密封構造11及び吸引源10も車両に搭載されて補修施工現場まで搬送され、図1に示すように、反転挿入装置4については、第1竪坑13内に既設管Pの一端突出部に対向して設置され、また圧力流体供給源8については、この第1竪坑13に隣接する地面16に設置される。更に、管密封構造11については、第2竪坑14内にて既設管Pの他端部に取り付けられ、また吸引源10については、この第2竪坑14に隣接して地面16に設置される。
【0027】
次に、主として図1及び図2を参照して、この反転ライニング装置に用いるライニング材2について説明する。既設管Pの補修に用いるライニング材2は、図1から理解されるように、更生すべき既設管Pの軸方向の長さよりも長いものが用いられ、その一端側は開放され、その他端側は閉塞されている。このライニング材2としては、例えば二層構造のそれ自体周知のものが用いられ、熱硬化性樹脂が含浸された樹脂含浸層26が径方向内側に設けられ、気密性を有する気密被覆層28が径方向外側に設けられており、後述する如く反転挿入したときには、樹脂含浸層26と気密被覆層28とは反転して樹脂含浸層26が既設管10の内周面に接触して覆うようになる。
【0028】
ライニング材2の樹脂含浸層26は、単層又は複層構造のものを用いることができ、この実施形態では、3層構造もの、例えば二層に重ねた樹脂不織布層30,32と、これら樹脂不織布層30,32の間に介在された強化繊維層34とを備えたものが用いられている。この樹脂不織布層30,32の材料としては、液状の熱硬化性樹脂を含浸する基材であり、可撓性を有し、樹脂含浸性に優れた材料であるのが好ましく、例えばポリエステル、高性能ポリエチレン、ポリプロピレンなどから形成された不織布を用いることができる。また、強化繊維層34の材料としては、ガラス繊維、アラミド繊維、炭素繊維などの強化繊維材料を用いることができる。
【0029】
また、気密被覆層28としては、加圧流体(例えば、圧縮空気)の不透過性を有する例えば合成樹脂フィルム材から形成することができ、この合成樹脂フィルム材としては、ポリエチレンフィルム、軟質塩化ビニル樹脂フィルムなどから形成される。
【0030】
次に、図1とともに図3を参照して反転挿入装置4について説明する。主として図3において、図示の反転挿入装置4は、圧力空間6を規定するハウジング本体42を備え、この実施形態では、ハウジング本体42は、導入側(図1及び図3において左側)から順に、下流側に向けて外径が漸減する第1ハウジング部44と、この第1ハウジング部44の下流端部に接続された円筒状の第2ハウジング部46と、この第2ハウジング部46の下流端部に接続された取付ハウジング部48とから構成されている。
【0031】
このハウジング本体42の一端部、即ち第1ハウジング部44の上流側端部には端壁50が設けられ、この端壁50の上部に流入開口52が設けられ、またその略中央部に横方向(図1及び図3において紙面に対して垂直な方向、図5及び図6において左右方向)に細長い連通開口54が設けられている。この端壁50の流入開口52は、圧力流体流路56(例えば、圧縮空気流路)を介して圧力流体供給源8(圧縮空気供給装置18)に連通され、従って、圧力流体供給源8からの圧力流体が圧力流体流路56を通してハウジング本体42の圧力空間6に供給される。尚、この圧力流体流路56には、この流路56を開閉するための1流路開閉弁57が配設されている。
【0032】
また、この端壁50の連通開口54を覆うように開口変更構造60が設けられる。この実施形態では、開口変更構造60は、第1導入開口62を有する第1取付部材64(図5参照)と、第2導入開口66を有する第2取付部材68(図6参照)とを含んでいる。図4及び図5を参照して、第1取付部材64の第1導入開口62は、扁平状に折りたたまれたライニング材2の断面形状に対応した第1形状であり、横方向に細長いスリット状であり、その両端部が半円状に形成されている。
【0033】
この第1取付部材64は、複数の取付ボルト70(図4参照)を第1取付部材64の貫通孔72(図5参照)を通して端壁50に螺着することにより、このハウジング本体42の端壁50に取り付けられ、この取付状態においては、第1取付部材64の第1導入開口62は、端壁50の連通開口54の内側に位置し、このような構成により、扁平状に折りたたまれたライニング材2は、第1取付部材64の第1導入開口62を通り、更に端壁50の連通開口54を通してハウジング本体42の圧力空間6内に導入される。
【0034】
図9から理解されるように、扁平状に折りたたまれたライニング材2の閉塞された連結端部73には、明確に図示していないが、引戻し部材76が係脱自在に連結され、ライニング材2が既設管P内に反転挿入された後は、続いてこの引戻し部材76が既設管P内に導入される。尚、この引戻し部材76としては、例えばワイヤ、ロープなどから構成することができ、或いはベルトなどから構成するようにしてもよい。そのような構成に関連して、第2取付部材68の第2導入開口66は、引戻し部材76の断面形状に対応した第2形状に形成される。この実施形態では、引き戻し部材76がワイヤから構成されているので、第2取付部材68の第2導入開口66は、ワイヤの外径(その断面形状)に対応した円形状に形成されているが、この引戻部材76をベルトから構成するようにしてもよく、この場合、第2導入開口66は、ベルトの外形(その断面形状)に対応した細長いスリット状に形成される。
【0035】
この第2取付部材68は、複数の取付ボルト70を貫通孔74(図6参照)を通して端壁50に螺着することにより、このハウジング本体42の端壁50に取り付けられ、この取付状態においては、第2取付部材68の第2導入開口66は、端壁50の連通開口54の内側に位置し、このような構成により、引戻し部材76は、第2取付部材68の第2導入開口66を通り、更に端壁50の連通開口54を通してハウジング本体42の圧力空間6内に導入される。
【0036】
ハウジング本体42の端壁50と第1取付部材64との間に、図3及び図4に示すように、シール部材78を介在させるのが好ましく、このようにシール部材78を設けることにより、端壁50と第1取付部材64との間を密封することができる。このシール部材78は、例えば合成ゴムなどから形成することができる。
【0037】
このシール部材78には第3導入開口80が設けられ、この第3導入開口80は、第1取付部材64の第1導入開口62の形状に対応し、この第1導入開口62よりも幾分小さく形成するのが好ましい。このように構成することにより、図4に示すように、シール部材78の第3導入開口80を規定する内周部位は、第1取付部材64の第1導入開口62の内周部位より内周側に幾分(例えば、1~3mm程度)突出し、このように構成することにより、このシール部材78の内周部位が、第1取付部材64の第1導入開口62を通して導入されるライニング材2の外周面に近接乃至接触するようになり、これによって、シール部材78とライニング材2との間の摩擦を抑えながら圧力流体の外部への漏れを少なくし、ハウジング本体42(圧力空間6)内の圧力低下を抑えることができる。
【0038】
また、ハウジング本体42の端壁50と第2取付部材68との間にも、図示しないが、第1取付部材64と同様に、シール部材を介在させて密封性を高めるようにしてもよい。この場合、このシール部材の第4導入開口は、第2取付部材68の第2導入開口66の形状に対応する形状に形成し、この第2導入開口66よりも幾分小さくするのが好ましい。このように構成することにより、シール部材の第4導入開口を規定する内周部位は、第2取付部材68の第2導入開口66(図6参照)の内周部位より内周側に幾分突出し、このように構成することにより、このシール部材の内周部位が、第2取付部材68の第2導入開口66を通して導入される引戻し部材76の外周面に近接乃至接触するようになり、これによって、シール部材78と引戻し部材76との摩擦を抑えながら圧力流体の外部への漏れを抑えることができる。
【0039】
また、第1取付部材64の第1導入開口62を規定する導入側の開口周縁部に、図3に示すように、面取り加工を施してR部位82を設けて滑りやすくするのが好ましく、このように構成することにより、ライニング材2が第1取付部材64の第1導入開口62を通して導入される際に、この第1導入開口62の開口周縁部に引っかかって破損するのを防止することができる。尚、面取り加工としては、例えば第1導入開口62の開口周縁部が丸くなるように加工してR(アール)部位82を設けるR加工、或いはこの第1導入開口62の開口周縁部が上流側に向けて拡大するように加工してテーパ部位(図示せず)を設けるテーパ加工などである。
【0040】
このような面取り加工は、第2取付部材68の第2導入開口66を規定する導入側の開口周縁部にも設けるようにしてもよく、この場合、引戻し部材76が第2導入開口66の開口周縁部に引っかかって破損するのを防止することができる。
【0041】
ライニング材2は、例えば、次のようにして反転挿入装置4のハウジング本体42(取付ハウジング部48)に取り付けられる。主として図3を参照して、ライニング材2を取り付けるには、ハウジング本体42の端壁50に第1取付部材64が取り付けられる。一方、ライニング材2は扁平状に折りたたまれており、このように折りたたまれたライニング材2を第1取付部材64の第1導入開口62を通してハウジング本体42内に導入し、このハウジング本体42内を通してこれから突出させる。そして、ハウジング本体42から突出する一端部84を外側に折り返して取付ハウジング48の外周面に取り付け、かく取り付けた状態で折り返したこの一端部84を結束バンド86を用いて取付ハウジング部48の外周面に固定する。また、この一端部84(具体的には、結束バンド86により結束した部位よりも内側部位)を気密保持リング88を用いて固定し、ハウジング本体42とライニング材2との間を気密状態に保持し、このようにしてライニング材2の一端部84がハウジング本体42の取付ハウジング部48に取り付けられる。
【0042】
次に、図1とともに図7及び図8を参照して、反転ライニング装置の管密封構造11について説明する。図示の管密封構造11は、既設管Pの他端部を閉塞するためのキャップ部材90を備えている。このキャップ部材90は、円形状の端壁92と、この端壁92の外周部から延びる周側壁94とを有し、既設管Pの他端部を覆うように装着される。キャップ部材90の装着状態においては、端壁92は既設管Pの他端開口を閉塞し、周側壁94は既設管Pの他端部の外周面を覆う。
【0043】
この実施形態においては、キャップ部材90が既設管Pの軸方向に所定範囲にわたって移動自在に装着されている。即ち、既設管Pの他端部に移動部材96が軸方向に移動自在に装着されている。また、キャップ部材90の周側壁94には径方向外方に突出する連結フランジ98が設けられ、この連結フランジ98と移動部材96とが連結手段100を介して連結されている。
【0044】
図示の連結手段100は、周方向に間隔をおいて配設された複数(例えば、3~4本)のボルト軸102を有し、これらボルト軸102が移動部材96及びキャップ部材90の連結フランジ98を挿通して取り付けられ、各ボルト軸102の頭部とこれに螺着されたナット104によって、ボルト軸102の頭部側が移動部材96に連結され、各ボルト軸102のねじ部に螺着されたナット106によって、ボルト軸102のねじ部側がキャップ部材90に連結されている。
【0045】
また、既設管Pの他端部にはリング状の当接部材108が装着されている。この当接部材108は、略半円状の一対の半円状部材110をボルト112及びナット114で連結することによって構成され、キャップ部材90と移動部材96との間に配置されている。このように当接部材108を設けることによって、キャップ部材90が後述する如くして矢印116(図7参照)で示す方向に移動すると、このキャップ部材90とともに移動部材96も移動し、この移動部材96が当接部材108に当接することによって、移動部材96及びキャップ部材90の上述した移動が阻止される(図8参照)。
【0046】
このキャップ部材90の端壁92の略中央部には吸引開口118が設けられ、この吸引開口118は吸引流路120を介して吸引源6(エア-吸引機20)に接続され、吸引流路120には、この流路120を開閉するための第2流路開閉弁122が配設されている。このように構成されているので、吸引源6からの吸引力は、吸引流路120及びキャップ部材90の吸引開口118を通して既設管Pの他端部内に作用する。尚、キャップ部材90と既設管Pとの間の密封性を高めるために、既設管Pの外周面とキャップ部材90の周側壁94の内周面との間に環状シール部材124が配設されている。
【0047】
次に、主として図1図3図7図9を参照して、この反転ライニング装置(反転ライニング方法)を用いた既設管Pの更生工事について説明する。この更生工事を行うには、図1に示すように、補修すべき既設管Pの一端側において、第1竪坑13の近傍に車両22を停車させ、この第1竪坑12の近くに扁平状に折りたたんだライニング材2を設置する。また、第1竪坑13に反転挿入装置4を搬送してこの第1竪坑13内に設置するとともに、この第1竪坑13の近傍に圧力流体供給源8(圧縮空気供給装置18)を搬送して地面16に設置する。更に、この既設管Pの他端側において、第2竪坑14の近傍に吸引源10(エアー吸引機20)を運搬して地面16に設置する。
【0048】
尚、圧力流体供給源8及び/又は吸引源10については、車両に搭載させた形態のものを用いるようにしてもよく、この場合、圧力流体供給源8を搭載した車両については、第1竪坑13の近傍に停車させればよく、また吸引源10を搭載した車両については、第2竪坑14の近傍に停車させればよい。また、ライニング材2は、車両22に搭載した状態でなく、第1竪坑13の近傍の地面16に設置するようにしてもよく、或いは第1竪坑13内の底面に設置するようにしてもよく、この第1竪坑13内に設置したときには、ライニング材2は折りたためられた状態から略水平に反転挿入装置4側の第1導入開口62に向けて導かれ、これにより、ライニング材2の第1導入開口62を通しての導入をスムースに行うことができる。
【0049】
次いで、圧力流体供給源8と反転挿入装置4(圧力空間6)とを圧力流体流路56を介して連通するとともに、吸引源10と管密封構造11(その内側空間)とを吸引流路120を介して連通する。更に、図3に示すように、ライニング材2の一端部84を第1取付部材64の第1導入開口62を通して圧力空間6内に挿入し、更に挿入してこのハウジング本体42の取付ハウジング部48から突出させ、突出させた一端部84を外側に折り返してこの取付ハウジング部48の外周面に取り付ける。そして、ライニング材2のこの折り返した一端部84に結束バンド86を取り付けて取付ハウジング部48に固定する。また、ライニング材2の折り返した一端部84に気密保持リング88を装着し、ライニング材2とハウジング本体42の取付ハウジング部との間を密封する。
【0050】
また、既設管Pの他端部(第2竪坑14に突出する部分)に、この既設管Pの他端部を密閉するための管密封構造11を取り付ける。尚、既設管Pの他端部が第2竪坑14内に突出していないときには、その他端部に既設管Pの一部として機能する補助管を取り付けて第2竪坑14内に突出させるようにする。
【0051】
このようにしてライニング材2の準備と管密封構造62の取付けなどを行った後に、ライニング材2の反転挿入を行う。この反転挿入は、第1流路開閉弁57を開状態にして圧力流体供給源8からの圧力流体(圧縮空気)を矢印(図3参照)で示すようにハウジング本体42内に導入するとともに、第2流路開閉弁122を開状態にして吸引源10からの吸引力を矢印(図7参照)で示すように管密封構造11の内側に作用させる。
【0052】
かくすると、図1に示すように、ハウジング本体42内に導入された圧力流体の圧力によって、ライニング材2が反転しながら既設管Pに挿入され、この挿入に伴い、折りたたまれたライニング材2が第1取付部材64の第1導入開口62を通してハウジング本体42内に導入される。そして、このようにライニング材2が導入されると、圧力流体供給源8からの圧力流体(圧縮空気)がライニング材2に作用し、ライニング材2は反転しながら既設管P内を他端側に向けて推進される。
【0053】
この反転挿入のとき、吸引源10からの吸引力が既設管Pの他端側、即ち管密封構造11の内側に作用する。従って、既設管10の一端側から反転挿入されるライニング材2の内側からは圧力流体(圧縮空気)による正圧が作用し、またその他端側のライニング材2の外側からは吸引作用による負圧が作用し、一端側からの正圧及び他端側からの負圧によってライニング材2が反転しながら既設管P内に引き込まれ、この引き込みのための推進力を大きくすることができる。
【0054】
この反転挿入のとき、図1に示すように、反転挿入装置4側(第1取付部材64)の第1導入開口62の高さ位置と既設管Pの径方向中心に高さ位置とが一致するように反転挿入装置4を第1竪坑13内に設置するのが好ましく、このように構成することにより、ハウジング本体42側の第1導入開口62を通して導入されたライニング材2は、水平状態でもって既設管P内を推進され、これによって、ライニング材2の反転挿入をスムースに行うことができる。
【0055】
このライニング材2の反転挿入の際には、ライニング材2を挿入側から反転推進させるために付加する圧力(正圧)が、例えば0.1~0.2Mp程度となるように設定され、またライニング材2を到達側から吸引するために加えられる圧力(負圧)が、例えば0.03~0.07Mp程度となるように設定され、このようにすることにより、到達側からの負圧作用でもってライニング材2の反転推進力を増強することができ、より大きな推進力でもってライニング材2を既設管P内に反転挿入することができる。
【0056】
このようにしてライニング材2が反転挿入されて引戻し部材76が第1取付部材64の第1導入開口62を通してハウジング本体42内に挿入されると、ライニング材2の反転挿入の前半が終了し、この時点において、連結端部73における連結状態を一時的に解除し、引戻し部材76の端部を第1取付部材64の第1導入開口62(図5参照)から外す。そして、ハウジング本体42の端壁50から第1取付部材64を取外し、この第1取付部材64に代えて第2取付部材68を取り付ける。更に、連結解除した引戻し部材76の端部を第2取付部材68の第2導入開口66を通してハウジング本体42内に挿入した後ライニング材2と連結し、上述の連結端部73の状態とする。この連結端部73は、例えば、相互に連結されるリング部材及び環状フックから構成することができ、リング部材が例えばライニング材2(又は引戻し部材76)に取り付けられ、環状フックが例えば引戻し部材76(又はライニング材2)に取り付けられる。
【0057】
第1取付部材64から第2取付部材68に取り替えるときには、圧力流体供給源8及び吸引源10は一時的に作動停止される。そして、この取替えが行われた後にそれらの作動が再開され、ライニング材2の反転挿入の後半が行われる。
【0058】
このようにしてライニング材2の反転挿入が再開されて既設管Pの他端部まで到達すると、図8から理解されるように、ライニング材2の反転端部が管密封構造11のキャップ部材90の端壁92に当接し、このキャップ部材90が矢印116(図7参照)で示す方向に移動し(連結手段100及び移動部材96も一体的に移動する)、キャップ部材90のこの移動によってライニング材2が既設管Pの他端側まで到達したことを知ることができる。
【0059】
そして、移動部材96が当接部材110まで移動すると、図8に示すように、この移動部材96が当接部材110に当接し、これによって、キャップ部材90の矢印116で示す方向の移動が停止し、ライニング材2の反転挿入が終了する。この実施形態では、移動部材96が当接部材110に当接することによって、ライニング材2が到達位置に到達したことを確認することができ、このようにライニング材2が到達位置まで反転挿入されると、吸引源6の作動が停止する。
【0060】
この反転挿入状態では、ライニング材2の表側と裏側とが反転されて逆になり、既設管1Pの内周面を覆うようにその径方向外側に樹脂含浸層26が位置し、この樹脂含浸層26を覆うようにその径方向内側に気密被覆層28が位置するようになる。
【0061】
その後、図示していないが、ライニング材2の熱硬化が行われる。この熱硬化の際には、管密封構造11が取り外され、この管密封構造11に代えて、第2竪坑14内に移動阻止部材(図示せず)が設置され、この移動阻止部材によって、ライニング材2の進行が阻止される。また、既設管Pの他端部から突出するライニング材2の端部内に排気管(図示せず)が挿入され、この排気管の他端側は排気弁装置(図示せず)に連通され、この排気弁装置を通して大気に開放される。
【0062】
また、加熱水蒸気を生成するためのボイラユニット(図示せず)が用いられ、ボイラユニットからの水蒸気がミキシング装置(図示せず)にて圧力流体供給源8からの圧力流体に混合され、水蒸気を含む圧力流体が圧力流体流路56を通して反転挿入装置4のハウジング本体42に送給され、この水蒸気の熱によって、ライニング材2の樹脂含浸層26(即ち、含浸された樹脂)が硬化し、このようにして既設管10の補修施工が行われる。
【0063】
この加熱硬化後、引戻し部材76を引き戻して気密被覆層28を回収する。即ち、引戻し部材76を引き戻し、既設管Pの内周面に固着された樹脂含浸層2から気密被覆層28を引き剥がし、このようにして気密被覆層28を回収する。その後、既設管Pから外側に突出するライニング材2の両端部を、例えば切断除去し、このようにして既設管Pの補修が行われる。
【0064】
以上、本発明に従う反転ライニング装置(及び反転ライニング方法)について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変更乃至修正が可能である。
【0065】
例えば、上述した実施形態では、開口変更構造60を第1導入開口62を有する第1取付部材64と第2導入開口66を有する第2取付部材68から構成しているが、このような構成に代えて、ハウジング本体42の端壁50に第1導入開口を設け、この第1導入開口を有する端壁50と第2導入開口を有する開口変更部材(図示せず)とから開口変更構造を構成するようにしてもよく、この場合、この端壁に開口変更部材を取り付けることによって、ハウジング本体42の端壁50に第2導入開口が設けられた構成となる。
【0066】
また、ライニング材2がスムースに第1導入開口62を通して導入されるように、例えば、図10に示すように構成することができる。図10において、この例では、第1取付部材64の第1導入開口62に関連して吹付けノズル132が配設され、潤滑剤供給源134(例えば、潤滑剤タンク)と吹付けノズル132とが潤滑剤流路136を介して接続される。
【0067】
このように構成した場合、潤滑剤供給源134からの潤滑剤138が潤滑剤流路136を通して吹付けノズル132に送給され、この吹付けノズル132から第1取付部材64の第1導入開口62及びその近傍に向けて吹き付けられる。従って、この潤滑剤138によってライニング材2の滑りがよくなり、第1導入開口62を通しての導入の際の摩擦を少なくして一層スムースなライニング材2の導入が可能となる。尚、このような潤滑剤138の吹付けは、作業者が手動で行うようにしてもよい。
【0068】
また、例えば、上述した反転ライニング装置では、ライニング材2が到達位置に到達したことを検知する到達位置検知手段の一部としてキャップ部材90を機能させ、このキャップ部材90の移動を目視してライニング材2の到達地点までの到達を確認しているが、このような構成に代えて、到達検知センサ(図示せず)を用いてライニング材2の到達を自動的に検知するようにしてもよい。この場合、例えば当接部材108に到達検知センサ(例えば、機械的スイッチ、光学的センサなど)を取り付け、この到達検知センサが移動部材96を検知することにより、ライニング材2の到達位置への到達を検知するようにしてもよい。
【0069】
また、例えば、上述した実施形態では、ライニング材2を反転挿入する際に、既設管Pの一端側において、圧力流体供給源8からの圧力流体の圧力(正圧)をライニング材2に作用させるとともに、既設管Pの他端側において、吸引源10からの吸引力(負圧)をライニング材2に作用させているが、圧力流体供給源8からの圧力流体で充分な場合、吸引力を作用させる吸引源10を省略し、圧力流体供給源8からの圧力流体の圧力(正圧)のみを作用させるようにしてもよい。
【0070】
また、上述した実施形態では、第1取付部材64として所定の長さの第1導入開口62(スリット開口)を有するものを用いているが、第1導入開口62の長さの異なる複数種の第1取付部材64を用いるようにしてもよく、この場合、内径が小さい既設管Pを補修するときには、小さいサイズのライニング材2を用いるようになる。従って、ライニング材2のサイズに対応した長さの第1導入開口62(スリット開口)を有する第1取付部材64を選択して用いるようにし、このようにすることによって、1つの反転挿入装置4もって内径の異なる複数種の既設管Pの補修作業に対応する、即ちサイズの異なる複数種のライニング材2に適用することが可能となる。
【0071】
更に、例えば、上述した実施形態では、反転挿入した後に加熱水蒸気を用いて熱硬化させるライニング材2に適用して説明したが、このような構成に限定されず、反転挿入した後に例えば紫外線(紫外線ランプ、紫外線LED等)を用いて硬化させるライニング材にも同様に適用することができ、ライニング材を圧力流体を利用して既設管10内に反転挿入するものに広く適用することができる。
【符号の説明】
【0072】
2 ライニング材
4 反転挿入装置
6 圧力空間
8 圧力流体供給源
11 管密封構造
13 第1竪坑
14 第2竪坑
26 樹脂含浸層
28 気密被覆層
42 ハウジング本体
60 開口変更構造
62 第1導入開口
64 第1取付部材
66 第2導入開口
68 第2取付部材
76 引戻し部材
78 シール部材
90 キャップ部材
P 既設管






図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10