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  • 特開-スチームトラップ及び異物除去工具 図1
  • 特開-スチームトラップ及び異物除去工具 図2
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  • 特開-スチームトラップ及び異物除去工具 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023076273
(43)【公開日】2023-06-01
(54)【発明の名称】スチームトラップ及び異物除去工具
(51)【国際特許分類】
   F16T 1/38 20060101AFI20230525BHJP
【FI】
F16T1/38 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021189598
(22)【出願日】2021-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】000133733
【氏名又は名称】株式会社テイエルブイ
(72)【発明者】
【氏名】福田 剛士
(57)【要約】
【課題】コストダウンを図ることができるスチームトラップ及び異物除去工具を提供する。
【解決手段】スチームトラップは、ケーシング及び異物除去手段を備える。ケーシングは、ドレンの排出口を有する。異物除去手段は、排出口から排出されたドレンが流通する位置に設けられ、排出口又はその近傍に位置する異物を除去する。また、異物除去手段は、先端部が排出口又はその近傍に進入した作動状態及び排出口又はその近傍から退去した待機状態に変位可能な棒状の清掃部材を有する。先端部は、排出口に向かって段階的に細くなる多段形状である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドレンの排出口を有するケーシングと、
前記排出口から排出されたドレンが流通する位置に設けられ、該排出口又はその近傍に位置する異物を除去する異物除去手段と、
を備え、
前記異物除去手段は、先端部が前記排出口又はその近傍に進入した作動状態及び該排出口又はその近傍から退去した待機状態に変位可能な棒状の清掃部材を有し、
前記先端部は、該排出口に向かって段階的に細くなる多段形状であることを特徴とするスチームトラップ。
【請求項2】
前記先端部は、円柱形状であって、前記排出口に向かって段階的に径が小さくなる複数の段部を有する多段形状であることを特徴とする請求項1に記載のスチームトラップ。
【請求項3】
前記排出口は、円形であり、
前記複数の段部のいずれか1つの径は、前記排出口の径の大きさと略同一に形成されたことを特徴とする請求項2に記載のスチームトラップ。
【請求項4】
ドレンの排出口を有するケーシングを備えたスチームトラップに装着され、該排出口から排出されたドレンが流通する位置で、該排出口又はその近傍に位置する異物を除去する異物除去工具であって、
先端部が前記排出口又はその近傍に進入した作動状態及び該排出口又はその近傍から退去した待機状態に変位可能な棒状の清掃部材、
を備え、
前記先端部は、該排出口に向かって段階的に細くなる多段形状であることを特徴とするスチームトラップの異物除去工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、蒸気配管系統で発生するドレンを外部に排出するスチームトラップ等に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気プラントなどのプラント(プロセスシステム)の蒸気配管系統では、蒸気が凝縮してドレン(復水)が発生する。発生したドレンは、スチームトラップ等を用いて外部等に排出される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
スチームトラップとしては、フロートの昇降に応じてオリフィス(排出口)を開閉することで弁室に流入したドレンを排出するフロート式スチームトラップがある。
【0004】
特許文献1では、オリフィスに詰まった異物を除去する清掃機構を備えたフロート式スチームトラップの構成が記載されている。上記清掃機構(異物除去工具)は、先端部をオリフィスに進入させて異物を除去する清掃部材(清掃棒)を備えている。また、オリフィスに進入した清掃部材の先端部(周面)とオリフィスの径(周面)との距離が一定となる構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2016/013427号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のスチームトラップは、用途などに応じて複数種類があり、オリフィス径も異なる場合がある。そのため、径の異なるオリフィスのそれぞれに対応する径の清掃部材に変更する必要があり、コストアップを招来していた。
【0007】
この発明は、コストダウンを図ることができるスチームトラップ及び異物除去工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によって提供されるスチームトラップは、ケーシング及び異物除去手段を備える。ケーシングは、ドレンの排出口を有する。異物除去手段は、排出口から排出されたドレンが流通する位置に設けられ、排出口又はその近傍に位置する異物を除去する。また、異物除去手段は、先端部が排出口又はその近傍に進入した作動状態及び排出口又はその近傍から退去した待機状態に変位可能な棒状の清掃部材を有する。先端部は、排出口に向かって段階的に細くなる多段形状である。
【0009】
上記先端部は、円柱形状であって、排出口に向かって段階的に径が小さくなる複数の段部を有する多段形状であってもよい。
【0010】
上記排出口は円形であり、上記複数の段部のいずれか1つの径は排出口の径の大きさと略同一に形成されてもよい。
【0011】
本発明によって提供される、ドレンの排出口を有するケーシングを備えたスチームトラップに装着され、排出口から排出されたドレンが流通する位置で、排出口又はその近傍に位置する異物を除去する異物除去工具は、清掃部材を備える。清掃部材は、先端部が排出口又はその近傍に進入した作動状態及び排出口又はその近傍から退去した待機状態に変位可能な棒状である。先端部は、排出口に向かって段階的に細くなる多段形状である。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、清掃部材の先端部が排出口に向かって段階的に細くなる多段形状となっているので、1の清掃部材で、複数の径のオリフィスの異物除去に対応することができる。これにより、コストダウンを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】この発明の実施形態に係るスチームトラップの断面図である。
図2】この発明の実施形態に係るスチームトラップの断面図である。
図3】この発明の実施形態に係るスチームトラップの部分拡大断面図である。
図4】この発明の他の実施形態に係るスチームトラップの部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図面を参照してこの発明の実施形態に係るスチームトラップについて説明する。なお、この発明の構成は、実施形態に限定されるものではない。
【0015】
図1及び図2は、この発明の実施形態に係るスチームトラップ(トラップ)1の断面図である。トラップ1は、フロート式スチームトラップである。トラップ1は、例えば、蒸気プラント等に含まれる蒸気配管系統に配設され、配管内で発生するドレン等を外部に排出する。
【0016】
図1は、閉栓部材40が装着された状態を示す。図2は、異物除去工具(異物除去手段)50が装着された状態を示す。
【0017】
図1及び図2に示すように、トラップ1は、ケーシング10、フロート20、弁座部材30、閉栓部材40及び異物除去工具50等を有している。
【0018】
ケーシング10は、本体11と蓋12とをボルト等で結合することによって形成される。ケーシング10は、流入通路13、弁室14、第二排出通路15等を有する。
【0019】
流入通路13は、ケーシング10の外部から流入する蒸気やドレン等の流体を受け入れる。流入通路13は、弁室14と連通するように弁室14の上部に形成される。
【0020】
弁室14は、ケーシング10の内部に位置する空間として形成される。第二排出通路15は、弁室14に流入したドレン等を外部に流出させる。第二排出通路15は、オリフィス31及び第一排出通路32を介して弁室14と連通するように形成される。
【0021】
フロート20は、弁室14に遊置(昇降自在に配置)される中空の球状物体である。フロート20は、弁室14に貯留されるドレンの量によって、弁室14を上下に移動する。
【0022】
弁座部材30は、弁室14の下方に位置する蓋12の弁座部材取付空間に取り付けられる。すなわち、弁座部材30は、弁室14の下部に配置される。弁座部材30は、オリフィス31及び第一排出通路32を有する。オリフィス31は、弁室14と第一排出通路32と連通する。第一排出通路32は、第二排出通路15に連結される。
【0023】
オリフィス(排出口)31は、フロート20の移動によって開閉される。例えば、弁室14に貯留されているドレンが所定量以下のときは、フロート20が弁座部材30に着座し、オリフィス31は閉じられる。なお、蓋部12には、フロート20がオリフィス31を閉じた状態で接触するフロート座18が設けられている。フロート座18は、図1図2)において手前側と向こう側に2つ設けられている。
【0024】
また、例えば、弁室14に貯留されているドレンが所定量より多いときは、フロート20が弁座部材30から離座し、オリフィス31は開放される。オリフィス31が開放された状態では、弁室14に流入したドレン等は、オリフィス31を経由して第一排出通路32及び第二排出通路15を通過してケーシング10の外部に流出する。
【0025】
閉栓部材(プラグ)40は、蓋12の閉栓部材取付空間19に着脱自在に装着される。閉栓部材40は、装着された状態で、閉栓部材取付空間19を閉栓する。閉栓部材取付空間19は、閉栓部材40が装着されていない状態で、第二排出通路15と外部とを連通する。
【0026】
また、図2に示すように、閉栓部材40に代えて、異物除去工具50が着脱自在に装着される。
【0027】
異物除去工具50は、オリフィス31又はオリフィス31付近に付着したゴミやスケール等の異物を除去(清掃)する。異物除去工具50は、図2に示すように、クリーニングバー54の先端部55がオリフィス31に対向するように、閉栓部材取付空間19から挿入された状態でケーシング10(蓋12)に装着される。
【0028】
異物除去工具50は、筒状保持部51、押圧部52、シール53、クリーニングバー54等を有する。筒状保持部51は、円筒形状であり、閉栓部材取付空間19に螺入された状態で固定されている。筒状保持部51は、弁座部材30と同一軸上に固定される。押圧部52は、シール53を加圧しつつ外部側から筒状保持部51に螺入されている。押圧部52及びシール53は、ドレンの漏れを防止する。
【0029】
クリーニングバー(清掃部材)54は、棒状部材である。クリーニングバー54は、筒状保持部51、押圧部52及びシール53の中心に形成された貫通孔を貫通した状態で、先端部55がオリフィス31に対向するように筒状保持部51に支持される。クリーニングバー54は、先端部55がオリフィス31に進入した作動状態及びオリフィス31から退去した待機状態に変位可能である。なお、図2では、先端部55が待機状態の位置にある。
【0030】
クリーニングバー54の中間部にはネジ部56が形成されている。ネジ部56は、筒状保持部51の内周面に形成されたネジ溝に螺合している。また、クリーニングバー54のネジ部56と先端部55との間には、後退ストッパー57が固定されている。
【0031】
さらに、クリーニングバー54の後端部58には、操作用溝581が形成されている。後端部58は、押圧部52から突出している。すなわち、後端部58及び操作用溝581は、外部に露出している。作業者等が、操作用溝581にドライバー等の工具を接続して回転させることで、先端部55が作動状態及び待機状態に変位する。
【0032】
具体的には、作業者等が操作用溝581にドライバー等の工具を接続して正回転させれば、ネジ部56と筒状保持部51との螺合に従って、クリーニングバー54はオリフィス31に近づく方向に進む。一方、逆回転させれば、ネジ部56と筒状保持部51との螺合に従って、クリーニングバー54はオリフィス31から離間する方向に進む。後退ストッパー57は、この離間する方向に進む動きを規制する。
【0033】
次に、クリーニングバー54の先端部55について、図3(A)及び図3(B)を参照しつつ説明する。図3(A)は、先端部55が作動状態の位置にある。図3(B)は、図2と同様に、先端部55が待機状態の位置にある。
【0034】
先端部55は、オリフィス31に向かって段階的に細くなる多段形状である。本実施形態では、先端部55は、円柱形状であって、オリフィス31に向かって段階的に径が小さくなる4つの段部551~554が形成されている。
【0035】
本実施形態では、段部551の径は、オリフィス31の径の大きさと略同一である。したがって、図3(A)に示すように、作動状態において、段部551がオリフィス31に進入した状態となる。また、オリフィス31の径よりも大きい径の段部552がオリフィス31に近づく方向に進む動きを規制するストッパーとして機能する。
【0036】
すなわち、段部551が、オリフィス31又はオリフィス31の近傍の異物を除去するのに対応している。
【0037】
また、他の段部552~554のそれぞれは、オリフィス31より大きい径の他のオリフィスの異物の除去に対応している。例えば、図4に示すように、オリフィス331を有する弁座部材330が適用されたスチームトラップに、異物除去工具50が装着された場合について説明する。図4は、先端部55が作動状態の位置にある。
【0038】
オリフィス331は、オリフィス31よりも径が大きく、段部552の径と略同一である。したがって、作動状態において、段部552がオリフィス331に進入した状態となる。なお、この場合、段部551は、オリフィス331から弁室側に突き抜けた状態となり、また段部553がストッパーとして機能する。
【0039】
したがって、1の異物除去工具50を、複数の径のオリフィスの異物除去に共通的に用いることができる。例えば、本実施形態の段部551~554を有する異物除去工具50は、少なくとも4つの径のオリフィスの異物除去に用いることができる。
【0040】
次に、上述したトラップ1の動作について説明する。
【0041】
図1に示すように、運転時の場合(蒸気プラントが運転中の場合)ドレン等が上流側の配管(不図示)から流入通路13を経由して弁室14に流入する。そして、弁室14のドレン等は、オリフィス31を経由して第一排出通路32及び第二排出通路15を順に通過して下流側の配管(不図示)に流出する。
【0042】
なお、運転時の場合、閉栓部材40が装着された状態であっても異物除去工具50が装着された状態であってもよい。
【0043】
次に、異物除去工具5の動作(異物除去動作)について説明する。
【0044】
異物除去工具5は、基本的には、図2図3(B))に示すような待機状態で維持される。そして、例えば、オリフィス31に詰まり状態が発生していると判断された場合、作業者等が、操作用溝581に工具を接続して正回転させ、クリーニングバー54をオリフィス31に近づく方向に移動させる。
【0045】
例えば、段部552が弁座部材30の内側の壁面に当接し、クリーニングバー54が進めなくなる作動状態まで正回転を続ければよい。
【0046】
上記クリーニングバー54の移動によって、先端部55も回転しながらオリフィス31に進入する。作動状態では、図3(A)に示すように、段部551の一部がオリフィス31から弁室14に向けて突出している。段部551の進入によって、オリフィス31又はオリフィス31付近に付着した異物は剥がし落とされる。なお、作動状態において、先端部55(段部551)の一部はオリフィス31から突出していなくてもよい。
【0047】
その後、作業者は、工具を用いてクリーニングバー54を逆回転させて再び待機状態となるようにクリーニングバー54を元の位置に戻す。例えば、後退ストッパー57が筒状保持部51に当接する位置までクリーニングバー54を戻せばよい。
【0048】
なお、異物の付着状態に必要に応じて、上述の異物除去動作を繰り返し実行すればよい。
【0049】
次に、上述した異物除去工具50の使用形態について説明する。
【0050】
例えば、トラップ1において異物除去が完了し、蒸気供給が停止している場合には、作業者等は、異物除去工具50をトラップ1から外すことができる。その後、作業者等は、異物除去を行うべき他のトラップのうち、段部551~554のいずれかに対応する径のオリフィスを有する他のトラップに、異物除去工具50を装着する。そして、上述したように異物除去動作を実行していけばよい。
【0051】
以上のように、清掃部材(クリーニングバー)の先端部がオリフィス31に向かって段階的に細くなる多段形状となっているので、1の清掃部材で、複数の径のオリフィスの異物除去に対応することができる。これにより、コストダウンを図ることができる。
【0052】
なお、上述の実施形態では、閉栓部材と異物除去工具とが付け替え可能な構成であったが、特にこれに限定されるものではない。異物除去工具は、常に、スチームトラップに装着された状態であってもよい。また、異物除去工具のスチームトラップへの装着は、着脱自在でなくてもよい。
【0053】
上述の実施形態では、異物除去工具が他のトラップにも共通的に装着される構成であったが、特にこれに限定されるものではない。少なくとも清掃部材(クリーニングバー)が、複数の径のオリフィスに対して共通的に使用できる構成であればよい。
【0054】
上述の実施形態では、手動で異物除去工具に異物除去動作を実行させていたが、手動以外の駆動力を利用して動作させる構成としてもよい。例えば、温度変化によって変位するバイメタルを駆動手段とした異物除去工具に本発明を適用してもよい。
【0055】
上述の実施形態では、4つの段部551~554が形成されていたが、段数は特にこれに限定されるものではない。複数の段部が形成されていればよい。
【0056】
上述の実施形態では、作動状態において、清掃部材(クリーニングバー)の先端部が排出口(オリフィス)に進入する構成であったが、特にこれに限定されるものではない。例えば、先端部が排出口の近傍に進入した状態が作動状態であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0057】
この発明は、蒸気プラントなどの蒸気配管系統で発生するドレンを外部に排出するスチームトラップ及びスチームトラップに装着される異物除去工具において、コストダウンを図るのに有用である。
【符号の説明】
【0058】
1 スチームトラップ
10 ケーシング
30 弁座部材
31 オリフィス(排出口)
50 異物除去手段
54 クリーニングバー(清掃部材)
55 先端部
551~554 段部
図1
図2
図3
図4