IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ スタンレー電気株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-ランプ装置 図1
  • 特開-ランプ装置 図2
  • 特開-ランプ装置 図3
  • 特開-ランプ装置 図4
  • 特開-ランプ装置 図5
  • 特開-ランプ装置 図6
  • 特開-ランプ装置 図7
  • 特開-ランプ装置 図8A
  • 特開-ランプ装置 図8B
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023076328
(43)【公開日】2023-06-01
(54)【発明の名称】ランプ装置
(51)【国際特許分類】
   H01Q 1/22 20060101AFI20230525BHJP
   G01S 7/03 20060101ALI20230525BHJP
   H01Q 1/32 20060101ALI20230525BHJP
【FI】
H01Q1/22 A
G01S7/03 246
G01S7/03 240
H01Q1/32 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021189687
(22)【出願日】2021-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】弁理士法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金近 正之
【テーマコード(参考)】
5J046
5J047
5J070
【Fターム(参考)】
5J046AA03
5J046AA12
5J046MA11
5J047AA03
5J047AA12
5J047EA01
5J070AB24
5J070AE01
5J070AE09
5J070AF03
5J070AK40
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ランプのリフレクタとレーダ波とが重なる位置にレーダ装置を配置しても、レーダ波の減衰や反射を抑えることが可能で、電磁波放射パターンを変化させることがなく、レーダの機能損失が十分に低減されたランプ装置を提供する。
【解決手段】ランプ装置は、発光素子3と、発光素子からの光を前方に反射するミラー部5Mを有するリフレクタとからなるランプユニット2と、ランプユニット2の後方に配置されたレーダユニット30と、を備えている。レーダユニット30は、レーダユニット30の放射電磁波RWの放射範囲内RRにミラー部5Mの少なくとも一部が入るように配置される。ミラー部5Mは、樹脂体と、樹脂体の表面上に形成され、金属光沢を有する島状金属層からなる光反射面5Aと、を有している。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、前記光源からの光を前方に反射するミラー部を有するリフレクタとからなるランプユニットと、
前記ランプユニットの後方に配置されたレーダユニットと、を備え、
前記レーダユニットは、前記レーダユニットの放射電磁波の放射範囲内に、前記ミラー部の少なくとも一部が入るように配置され、
前記ミラー部は、樹脂体と、前記樹脂体の表面上に形成され、金属光沢を有する島状金属層からなる光反射面とを有する、ランプ装置。
【請求項2】
前記樹脂体は、発泡樹脂体と、前記発泡樹脂体表面の凹凸を平坦化する樹脂層とからなり、前記島状金属層は前記樹脂層上に形成されている、請求項1に記載のランプ装置。
【請求項3】
前記樹脂体は、発泡樹脂体と、前記発泡樹脂体上に形成され、金属酸化物からなる下地層とを有し、前記島状金属層は前記下地層上に形成されている、請求項1に記載のランプ装置。
【請求項4】
前記下地層の厚さをTUとし、前記下地層内における前記放射電磁波の実効波長をλuとしととき、TU≦λu/20を満たす、請求項3に記載のランプ装置。
【請求項5】
前記樹脂体は、樹脂基板と、前記樹脂基板上に形成され、金属酸化物からなる下地層とからなり、前記島状金属層は前記下地層上に形成されている、請求項1に記載のランプ装置。
【請求項6】
前記樹脂基板の厚さをTRとし、前記下地層内における前記放射電磁波の実効波長をλrとしたとき、TR及びλrは、次式、
TR=m×λr/2 (mは自然数)
を満たす、請求項5に記載のランプ装置。
【請求項7】
前記樹脂基板の厚さをTRとし、前記下地層内における前記放射電磁波の実効波長をλrとしたとき、前記放射電磁波に対する前記樹脂基板の反射損失が通過損失未満の場合では、TR<λr/2を満たし、反射損失が通過損失以上の場合では反射損失が-10dB以下となるようにTRが設定されている、請求項5に記載のランプ装置。
【請求項8】
前記下地層の厚さをTUとし、前記下地層内における前記放射電磁波の実効波長をλuとしたとき、TU≦λu/20を満たす、請求項6又は7に記載のランプ装置。
【請求項9】
前記レーダユニットは、前記レーダユニットの前記放射電磁波の放射範囲内に、前記光源が入らない位置関係で配置されている、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のランプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ランプ装置、特にレーダ装置を内蔵した車両用のランプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
運転支援及び自動運転のために、加速度センサやGPSセンサに加え、カメラ、LiDAR(Light Detection and Ranging)、ミリ波センサなど様々なセンサが用いられている。
【0003】
特に、ミリ波レーダ装置は、夜間や逆光などの環境、濃霧、降雨及び降雪などの悪天候の影響を受けず、高い耐環境性能を維持する。また、対象物までの距離や方向、対象物との相対速度を直接検出できる。従って、近距離の対象物であっても高速かつ高精度に検出できるという特徴を有している。
【0004】
例えば、特許文献1には、ミリ波レーダを灯室内に搭載し、前面カバーとミリ波レーダとの間にミリ波を透過させる導光部材を設けた車両用灯具が提案されている。
【0005】
また、特許文献2には、レーダ装置の前面にレーダの機能を障害しない導光体を設けたランプ装置が開示されている。
【0006】
特許文献3には、レーダユニットの前面の少なくとも一部を覆い、発泡樹脂からなる遮蔽部材を有するランプ装置が開示されている。特許文献4には、微小気泡発泡体で形成されている本体構成要素と、本体構成要素の後方に配置され、その内部を通ってレーダ波を送信/受信するように構成されたレーダデバイスと、を備えた車両用システムが開示されている。
【0007】
特許文献5には、微細アイランドの集合体であって、金属光沢を有する電磁波を透過可能な金属被膜について開示されている。また、特許文献6には、基体の面に連続状態で設けた酸化インジウム含有層と、少なくとも一部において互いに不連続の状態にある複数の部分を含む金属層を当該酸化インジウム含有層に積層した電磁波透過性金属光沢部材について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4842161号公報
【特許文献2】国際公開WO2021/125047A1
【特許文献3】国際公開WO2021/125044A1
【特許文献4】特表2021-509467号公報
【特許文献5】特許第5465030号公報
【特許文献6】特許第6400062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、レーダ装置の前面に導光体を設ける場合には、電磁波の透過のため導光体を薄くすると導光体の明るさが低くなり、導光体を厚くすると電磁波の透過率が低下するなど、光学的制約及び電磁波的制約の両方を受けていた。
【0010】
特に、従来は、導光体や遮蔽部材をレーダ装置の前面に設け、デイタイムランニングランプや信号灯の近傍に配置することが想定されており、主走行用ランプである前照灯と干渉する位置にレーダ装置を配置することは想定されていなかった。
【0011】
本発明は上記した点に鑑みてなされたものであり、ランプのリフレクタと放射電磁波(レーダ波)とが重なる位置にレーダ装置を配置しても、レーダ波の減衰や反射を抑えることが可能で、電磁波放射パターンを変化させることがなく、レーダの機能損失が十分に低減されたランプ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の1実施形態によるランプ装置は、
光源と、前記光源からの光を前方に反射するミラー部を有するリフレクタとからなるランプユニットと、
前記ランプユニットの後方に配置されたレーダユニットと、を備え、
前記レーダユニットは、前記レーダユニットの放射電磁波の放射範囲内に、前記ミラー部の少なくとも一部が入るように配置され、
前記ミラー部は、樹脂体と、前記樹脂体の表面上に形成され、金属光沢を有する島状金属層からなる光反射面とを有している。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1の実施形態のランプ装置1の要部を示す斜視図である。
図2】ランプ装置1の要部の分解斜視図である。
図3】ランプ装置1の要部の正面図である。
図4図3に示すA-A線に沿った断面を示す断面図である。
図5】リフレクタ5のミラー部5Mの一部Wの断面を拡大して示す部分拡大断面図である。
図6】ミラー部5Mの他の例の一部Wの断面を拡大して示す部分拡大断面図である。
図7】ミラー部5Mのさらに他の例の一部Wの断面を拡大して示す部分拡大断面図である。
図8A】ランプ装置1を上面から見た場合のリフレクタ5及びレーダユニット30の相対的な配置関係を模式的に示す上面図である。
図8B】リフレクタ5及びレーダユニット30の配置関係の他の例を示す図である。
【0014】
図1は本発明の第1の実施形態のランプ装置1の要部を示す斜視図、図2はランプ装置1の要部の分解斜視図、図3はランプ装置1の要部の正面図である。また、図4は、図3に示すA-A線に沿った断面を示す断面図である。
【0015】
なお、図中には、ランプ装置1が取り付けられた車両の進行方向をy方向、左方向をx方向、下方向(重力方向)をz方向とする3軸座標系を示している。
【0016】
本実施形態に係るランプ装置1は車両用灯具であって、車両の前部左右に配置されるヘッドランプとして使用される。左右のヘッドランプの基本構成は同じであるため、以下、車両の前部左に配置される一方のランプ装置1(左前照灯)についてのみ図示及び説明する。
【0017】
また、ランプ装置1が主走行用のヘッドランプである場合を例に説明するが、テールランプ、バックライトなどの外部に向けて光を発する目的、機能を有するランプ装置であってもよい。
【0018】
なお、本明細書においては、車両として自動車を例に説明するが本発明はこれに限定されない。すなわち、本明細書において、車両(Vehicle)は、例えば船、航空機などの乗り物、及び有人及び無人の輸送又は移動手段を意味する。
【0019】
本実施形態に係るランプ装置1は、図1図3に示すように、横方向に並設された3つの反射型のランプユニット2を備えている。また、図4に示すように、各ランプユニット2は、LEDである発光素子3及び発光素子3を下面に実装する矩形平板状の回路基板4とからなる光源と、発光素子3から下方に向かって出射する光を車両前方に反射させるリフレクタ5を備えている。
【0020】
尚、図示しないが、3つのランプユニット2は、ハウジングとその前面開口部を覆う透明なカバーであるアウタレンズによって画成される灯室内に収容されている。
【0021】
また、ランプ装置1は、障害物探知装置として、レーダ装置であるレーダユニット30を有している。図1図3に示すように、レーダユニット30はランプユニット2のリフレクタ5の背後(-y方向)に配置されている。
【0022】
レーダユニット30は、例えば、図示しないECU(Electronic Control Unit) によって制御される。レーダユニット30は、送信アンテナから電磁波(ミリ波)を放射し、対象物によって反射された反射波を受信アンテナによって受信する。
【0023】
受信された信号は当該制御装置によって信号処理が行われ、対象物との間の距離、角度、速度が検出され、障害物探知が行われる。レーダユニット30は、例えば、先進緊急ブレーキシステム(AEBS:Advanced Emergency Braking System)及び車間距離制御装置(ACC:Adaptive Cruise Control)の障害物探知装置として用いられる。あるいは、レーダユニット30は、後側方障害物探知装置及び歩行者探知装置として用いることもできる。
【0024】
レーダユニット30においては、放射電磁波として、例えば76-81GHz帯のミリ波、特に76-77GHz帯又は79GHz帯のミリ波が分解能及び精度の点で好適に用いられる。しかしながら、上記周波数帯に限定されず、他の周波数帯、例えば24GHz帯などの準ミリ波が用いられてもよい。
【0025】
各ランプユニット2において、回路基板4は、リフレクタ5の上面に位置決めされて固定されている。即ち、図1及び図2に示すように、リフレクタ5の上面の3箇所には位置決めピン6が一体的に立設されており、回路基板4の3箇所(リフレクタ5の位置決めピン6に対応する3箇所)には円孔状の位置決め孔7(図2参照)が形成されている。
【0026】
従って、回路基板4に形成された3つの位置決め孔7にリフレクタ5の上面に立設された3つの位置決めピン6を嵌合させて回路基板4をリフレクタ5の上面に載置すれば、回路基板4がリフレクタ5の上面に正確に位置決めされる。
【0027】
そして、この状態から回路基板4を熱伝導率の高い接着剤等によってリフレクタ5の上面に接着すれば、回路基板4がリフレクタ5の上面に位置決めされた状態で固定される。尚、回路基板4の下面は低反射率面とされ、本実施形態では、回路基板4の下面に黒色のレジスト膜が形成されている。
【0028】
そして、図4に示すように、回路基板4の底面には、発光素子3が、その光出射方向が下向き(z方向)となるように実装されている。なお、回路基板4とリフレクタ5の固定は、接着剤による接着以外に、ネジや熱カシメによって行っても良い。又、本実施形態においては、回路基板4の底面に反射率が10%以下の黒色のレジスト膜を形成した。
【0029】
ここで、回路基板4の底面には、レジスト膜以外に、反射率10%以下の黒色系塗膜を形成しても良く、塗膜の厚みや反射材(例えば、カーボン粉)の濃度を適宜調節して反射率10%以下になるように回路基板4の底面に形成すれば良い。又、カーボン粉は、光吸収性も持ち合わせているため、光吸収率90%以上の高吸収面を有する黒色のレジスト膜を回路基板4の底面に形成しても良い。即ち、グレア光を抑える塗膜は、低反射率だけでなく、高吸収率のものであっても良い。
【0030】
ところで、各リフレクタ5は、樹脂によって一体成形されており、回転放物面状に湾曲する反射面5Aを備えている。そして、図4に示すように、各リフレクタ5の上壁の一部には、発光素子(LED)3から下方に向かって出射する光L0が通過するための開口部5Bが形成されている。
【0031】
また、各リフレクタ5は、樹脂にて矩形枠状に一体成形されたブラケット8の上面に回転可能に支持されている。即ち、図2に示すように、リフレクタ5の上壁の中心部には、円筒状の軸受部5Dが一体に突設されており、この軸受部5Dがブラケット8の上面に一体に立設された円筒状のボス8Aの外周に上方から嵌合することによって、各リフレクタ5がブラケット8の上面にボス8Aを中心として水平に回転可能に支持されている。
【0032】
次に、図4図5を参照してリフレクタ5及びレーダユニット30について詳細に説明する。図4は、ランプ装置1の左右方向(±x方向)に直交する面(yz平面)における断面を示している。
【0033】
図4に示すように、リフレクタ5は、基台5Cと、基台5Cから下方(z方向)に立設されたミラー部5Mとを備えている。基台5Cは、略平板形状を有し、車両にランプ装置1が取り付けられたときに、水平面(xy平面)と略平行になるように形成されている。ミラー部5Mは、曲面状の反射面5Aを有している。
【0034】
ランプ装置1において、回路基板4は基台5C上に載置されている。そして、各ランプユニット2にバッテリ等の不図示の電源から電流が供給されると、発光素子3が発光し、その光L0はリフレクタ5の開口部5Bを通過してリフレクタ5の反射面5Aに向けて出射する。そして、リフレクタ5の反射面5Aによる反射光L1は透明な不図示のアウタレンズを透過して車両前方へと照射され、ランプ装置1がヘッドランプとしての機能を果たす。
【0035】
ランプユニット2のリフレクタ5の背後(-y方向)には、電磁波放射面30Sを有するレーダユニット30が配置されている。より詳細には、レーダユニット30の電磁波放射面30Sからの放射電磁波RWはリフレクタ5の背面からリフレクタ5のミラー部5Mに入射し、その少なくとも一部がミラー部5Mを透過して前方に放射される。
【0036】
なお、レーダユニット30からの放射電磁波RWの放射範囲RR内に、発光素子3及び回路基板4からなる光源、及びリフレクタ5の基台5C等が入らないような位置関係でランプユニット2及びレーダユニット30が配置されている。すなわち、ランプユニット2及びレーダユニット30は、放射電磁波RWの放射範囲RR内にはリフレクタ5のミラー部5Mのみが入るような位置関係で配置されている。
【0037】
なお、レーダの放射範囲RRは、レーダFOV(Field Of View)として表されるレーダの検知範囲と同等である。レーダの放射範囲RRは、具体的に検知を要する範囲として決定される。例えば車両周辺を検知するためのレーダにおいては、レーダユニット30の電磁波放射面30Sの法線方向に対して、上下方向で±20°程度、左右方向で±80°程度の検知範囲を有している。
【0038】
図5は、リフレクタ5のミラー部5Mの一部Wの断面を拡大して示す部分拡大断面図である。ミラー部5Mは、発泡樹脂体51、発泡樹脂体51上に形成された平坦樹脂層52、及び平坦樹脂層52上に形成された島状金属層53からなる。
【0039】
発泡樹脂体51の発泡樹脂は、ポリーカボネート、アクリル、ポリイミド、エボキシ等の樹脂中に炭酸ガス等を封入し、樹脂中に気泡を作ることで形成されている。樹脂中に気体が封入されているため、誘電率が低下され、電磁波への影響を大きく減少させることが可能となる。したがって、発泡樹脂体51の電磁波の透過特性は良好である。なお、発泡樹脂の発泡倍率は、2倍以上であると樹脂の影響をほぼ無視することが可能となる。
【0040】
発泡樹脂体51の表面は、平坦樹脂層52によって平坦化されている。発泡樹脂の表面には凹凸があるため、光が散乱し配光が困難となる。発泡樹脂体51の表面に粘性の高いエポキシ樹脂等を塗装工程の要領で吹き付けること等によって平坦面を持った平坦樹脂層52を形成することが可能である。
【0041】
その他の方法として、平坦樹脂層52の形成は、塗装工程だけでなく発泡樹脂体51を金型を用いて形成時、金型の温度を高温にすることで金型と発泡樹脂体の接触面において発泡樹脂表面を溶融させることで平坦面を形成しても良い。
【0042】
また、融点の異なる樹脂を積層した例えばPET+PP(PET:ポリエチレンテレフタレート,PP:ポリプロピレン)製の溶着積層フィルムを用い、融点の低い樹脂を発泡樹脂に溶着させることで、発泡樹脂体51の表面を平坦化することが可能である。
【0043】
なお、エポキシ樹脂は粘性が高いため、発泡樹脂の奥まで浸透することはない。また、例えばPET+PP製の溶着積層フィルムは、融点の低い溶着樹脂層の厚さをコントロールすることで、発泡樹脂の奥まで浸透させないことが可能である。
【0044】
平坦樹脂層52、すなわちエポキシ樹脂又は融点の異なる樹脂の積層体の厚さ(TF)を、樹脂内における放射電磁波RWの実効波長λdの1/20以下(TF≦λd/20)にすることで発泡樹脂の電磁波透過特性を悪化させずに表面に島状金属層53を形成可能な面を作製することが可能である。
【0045】
平坦樹脂層52上には、島状金属層53が形成されている。島状金属層53は、微細なアイランドの集合体であって、金属光沢を有するとともに電磁波を透過可能な金属被膜である。
【0046】
ここで、島状金属層53は、微細なクラックによって金属層が区画され、アイランド状の構造を有している。島状金属層53は、発光素子3からの光L0を十分な反射率で反射し得る。したがって、ミラー部5Mは、リフレクタとしての機能を十分に発揮する。
【0047】
島状金属層53の金属には、例えば、インジウム、パラジウム、ニッケル、ニッケル合金、銅、銅合金、銀、銀合金、錫、錫合金等を用いることができるが、これらに限定されない。島状金属層53、これらの金属の無電界めっきなどによって形成することができる。
【0048】
図5に示すように、かかる構成のミラー部5Mによって、発光素子3からの光L0は十分な反射率で反射され、反射光L1を得ることができるとともに、レーダユニット30からの放射電磁波RWの減衰が抑制される。
【0049】
したがって、リフレクタ5の背後にレーダユニット30が配置され、放射電磁波RWがリフレクタ5の背面からリフレクタ5のミラー部5Mに入射する場合であっても、レーダユニット30の障害物探知機能は十分に発揮される。
【0050】
すなわち、リフレクタ5のミラー部5Mと放射電磁波(レーダ波)とが重なる位置にレーダユニット30を配置しても、放射電磁波の減衰や反射を抑えることが可能で、電磁波放射パターンを変化させることがなく、レーダの機能損失が十分に低減されたランプ装置を提供することができる。
【0051】
また、レーダユニット30の配置自由度が増加し、様々な目的の障害物探知に適用することが可能となる。さらに、レーダユニット30がリフレクタ5の背部に配置されているので外部から視認し難く、レーダユニット30を隠すことができるので意匠上も好都合である。
【0052】
図6は、ミラー部5Mの他の例の一部Wの断面を拡大して示す部分拡大断面図である。ミラー部5Mは、発泡樹脂体51、発泡樹脂体51上に形成された下地層55、及び下地層55上に形成された島状金属層53からなる。
【0053】
下地層55は、酸化インジウムスズ(ITO)からなる。下地層55は、スパッタリング又は蒸着等によって発泡樹脂体51上に形成することができる。下地層55は、酸化インジウムスズ(ITO)に限らず、酸化インジウム、インジウム亜鉛酸化物(IZO)などの金属酸化物等を用いることができる。
【0054】
なお、下地層55の厚さ(TU)を、下地層55内における放射電磁波RWの実効波長λuの1/20以下(TU≦λu/20)にすることで発泡樹脂の電磁波透過特性を悪化させずに表面に島状金属層53を形成可能な面を作製することが可能である。
【0055】
図7は、ミラー部5Mのさらに他の例の一部Wの断面を拡大して示す部分拡大断面図である。ミラー部5Mは、平板状の樹脂基板56、樹脂基板56上に形成された下地層57、及び下地層57上に形成された島状金属層53からなる。下地層57は上記した下地層55と同様であり、金属酸化物等を用いることができる。
【0056】
樹脂基板56は、非発泡性の樹脂からなり、厚さTRを有する。樹脂体56内における放射電磁波RWの実効波長λrとしたとき、厚さTRが以下の関係を満たすとき、樹脂体56と空間との界面及び樹脂基板56と下地層57との界面で生じる反射損失を低減することができる。
【0057】
TR=m×λr/2 (mは自然数)
なお、樹脂基56の厚さTRが必ずしも上記の関係式に完全に合致しなくとも、放射電磁波RWの周波数fに対して電力の反射損失が-10dB以下(反射電力が10%以下)となる周波数帯域に入るように設定することで極めて効果的に反射損失を抑制できる。
【0058】
図6及び図7を参照して説明した場合においても、リフレクタ5の背後にレーダユニット30が配置され、放射電磁波RWがリフレクタ5の背面からリフレクタ5のミラー部5Mに入射しても、レーダユニット30の障害物探知機能は十分に発揮される。
【0059】
次に、図8A及び図8Bを参照してリフレクタ5及びレーダユニット30の配置角度について説明する。図8Aは、ランプ装置1を上面(xy平面)から見た場合(上面視ともいう。)のリフレクタ5及びレーダユニット30の相対的な配置関係を模式的に示す図である。図8Bは、リフレクタ5及びレーダユニット30の配置関係の他の例を示す図である。
【0060】
図8Aに示す場合においては、レーダユニット30及びリフレクタ5は、レーダユニット30の電磁波放射面30Sの中心軸(すなわち、放射電磁波RWの放射中心軸)AXがリフレクタ5の照射方向(すなわち、車両前方方向)と同一方向(+y方向)であるように配置されている。
【0061】
なお、上記したように、各リフレクタ5は水平面内において回転可能に支持されている。従って、リフレクタ5の照射方向にかかわらず、リフレクタ5の照射中心軸CXと放射電磁波RWの放射中心軸AXとが同一方向であるように配置されていてもよい。
【0062】
図8Bに示す他の配置例の場合においては、放射電磁波RWの放射中心軸AXがリフレクタ5のリフレクタ5の照射中心軸CXに対して相対的に角度θを有するように、レーダユニット30及びリフレクタ5が配置されている。
【0063】
図8Bに示す場合のように、レーダユニット30及びリフレクタ5が相対的な角度θを有して配置されていても、図4図7を参照して説明したように、レーダユニット30の障害物探知機能は十分に発揮される。
【0064】
以上、詳細に説明したように、主走行用ランプのリフレクタと放射電磁波(レーダ波)とが重なる位置にレーダ装置を配置しても、レーダ波の減衰や反射を抑えることが可能で、電磁波放射パターンを変化させることがなく、レーダの機能損失が十分に低減されたランプ装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0065】
1:ランプ装置
2:ランプユニット
3:発光素子
4:回路基板
5:リフレクタ
5C:リフレクタ基台
5M:ミラー部
30:レーダユニット
30S:電磁波放射面
51:発泡樹脂体
52:平坦樹脂層
53:島状金属層
55,57:下地層
56:樹脂基板
RR:電磁波放射範囲
RW:放射電磁波
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B