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特開2023-76330ガスバリア性グラビア積層体、ガスバリア用グラビアインキセット、およびガスバリア性グラビア積層体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023076330
(43)【公開日】2023-06-01
(54)【発明の名称】ガスバリア性グラビア積層体、ガスバリア用グラビアインキセット、およびガスバリア性グラビア積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 9/00 20060101AFI20230525BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20230525BHJP
   C09D 11/102 20140101ALI20230525BHJP
   B65D 65/40 20060101ALN20230525BHJP
【FI】
B32B9/00 A
B32B27/40
C09D11/102
B65D65/40 D
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021189693
(22)【出願日】2021-11-22
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000219912
【氏名又は名称】東京インキ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】川邉 和也
(72)【発明者】
【氏名】中舘 郁也
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
4J039
【Fターム(参考)】
3E086AB01
3E086AC07
3E086BA04
3E086BA15
3E086BB02
3E086BB05
3E086BB41
3E086BB51
3E086CA01
3E086CA28
3E086CA31
3E086DA06
4F100AA17B
4F100AA19B
4F100AH06C
4F100AK01A
4F100AK01C
4F100AK07E
4F100AK21C
4F100AK42A
4F100AK51D
4F100AT00A
4F100BA04
4F100BA05
4F100BA07
4F100CA13D
4F100CB03E
4F100EH66B
4F100GB15
4F100HB31D
4F100JD02C
4F100JJ03
4F100JK06
4F100JL12E
4J039AE04
4J039EA48
4J039FA07
4J039GA03
(57)【要約】
【課題】ガスバリア性を保持しつつ、基材フィルム、無機酸化物層、ガスバリア性皮膜層、印刷インキ層それぞれの層において、高い密着性を有するガスバリア性グラビア積層体および耐熱水適性を有する包装体を提供する。
【解決手段】基材フィルムの少なくとも一方の面に、無機酸化物層と、ガスバリア性皮膜層と、印刷インキ層とを、この順に積層したガスバリア性グラビア積層体において、前記無機酸化物層が、気相堆積法によって形成された層であり、前記ガスバリア性皮膜層が、透明樹脂を含む透明樹脂組成物と、特定の化学式で表される金属アルコキシドまたはその加水分解物である無機物を含む無機組成物と、を含んだ混合物からなる層であり、前記印刷インキ層が、ウレタン系グラビア印刷用インキからなる層であることを特徴とするガスバリア性グラビア積層体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムの少なくとも一方の面に、無機酸化物層と、ガスバリア性皮膜層と、印刷インキ層とを、この順に積層したガスバリア性グラビア積層体において、
前記無機酸化物層が、気相堆積法によって形成された層であり、
前記ガスバリア性皮膜層が、透明樹脂を含む透明樹脂組成物と、下記一般式(1)で表される金属アルコキシドまたはその加水分解物である無機物を含む無機組成物と、を含んだ混合物からなる層であり、
前記印刷インキ層が、ウレタン系グラビア印刷用インキからなる層であることを特徴とするガスバリア性グラビア積層体。
Si(OR (1)
[ここで、式1中、Rは炭素数が1~2のアルキル基であり、Rはウレイド基である。]
【請求項2】
前記透明樹脂を含む透明樹脂組成物が、ポリビニルアルコールを含み、
さらに前記無機組成物に下記一般式(2)で表される無機物を含み、
式(2)の無機物のSiO換算重量と式(1)の無機物のRSi(OH)換算重量の割合が、99.9/0.1~10/90であることを特徴とする請求項1に記載のガスバリア性グラビア積層体。
Si(OR (2)
[ここで、式2中、Rは炭素数が1~2のアルキル基である。]。
【請求項3】
前記透明樹脂を含む透明樹脂組成物と前記無機物を含む無機組成物の混合比が、透明樹脂組成物/無機組成物=1/99~99/1であることを特徴とする請求項1または2に記載のガスバリア性グラビア積層体。
【請求項4】
さらに、印刷インキ層上に、ヒートシール層を形成することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のガスバリア性グラビア積層体。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載のガスバリア性グラビア積層体に用いるガスバリア用グラビアインキセットであって、
透明樹脂を含むコート剤Aと、
下記一般式(3)で表される金属アルコキシドまたはその加水分解物である無機物を含むコート剤Bと、を含むことを特徴とするガスバリア用グラビアインキセット。
Si(OR (3)
[ここで、式3中、Rは炭素数が1~2のアルキル基であり、Rはウレイド基である。]
【請求項6】
前記コート剤Aの透明樹脂が、ポリビニルアルコールであり、
前記コート剤Bに、さらに下記一般式(4)で表される無機物を含み、
式(4)の無機物のSiO換算重量と式(3)の無機物のRSi(OH)換算重量の割合が、99.9/0.1~10/90であることを特徴とする請求項5に記載のガスバリア用グラビアインキセット。
Si(OR (4)
[ここで、式4中、Rは炭素数が1~2のアルキル基である。]
【請求項7】
前記コート剤Aと前記コート剤Bの混合比が、コート剤A/コート剤B=1/99~99/1であることを特徴とする請求項5または6に記載のガスバリア用グラビアインキセット。
【請求項8】
基材フィルムを準備する工程と、
該基材フィルムの少なくとも一方に、ガスバリア用グラビアインキセットを印刷してなる印刷インキ層を作成するグラビア印刷工程と、
を含むガスバリア性グラビア積層体の製造方法であって、
前記ガスバリア用グラビアインキセットが、透明樹脂を含むコート剤Aと、
下記一般式(5)で表される金属アルコキシドまたはその加水分解物である無機物を含むコート剤Bと、を含むことを特徴とするガスバリア性グラビア積層体の製造方法。
Si(OR (5)
[ここで、式5中、Rは炭素数が1~2のアルキル基であり、Rはウレイド基である。]
【請求項9】
前記コート剤Aの透明樹脂が、ポリビニルアルコールであり、
前記コート剤Bに、さらに下記一般式(6)で表される無機物を含み、
式(6)の無機物のSiO換算重量と式(5)の無機物のRSi(OH)換算重量の割合が、99.9/0.1~10/90であることを特徴とする請求項8に記載のガスバリア性グラビア積層体の製造方法。
Si(OR (6)
[ここで、式6中、Rは炭素数が1~2のアルキル基である。]
【請求項10】
さらに ヒートシール層を作成する塗工工程、を含むことを特徴とする請求項8または9に記載のガスバリア性グラビア積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスバリア性グラビア積層体、ガスバリア用グラビアインキセット、およびガスバリア性グラビア積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、食品、医療・医薬品、精密電子部品の包装には、ガスバリア性に優れた包装材料を使用することがある。ガスバリア性包装材料は、内容物の変質、例えば、食品においては、蛋白質や油脂などの酸化、変質を抑制し、さらに、味および鮮度を保持するために使用されたり、また、医薬品においては、無菌状態を保持し、有効成分の変質を抑制し、効能を維持するために、さらに、精密電子部品においては、金属部分の腐食、絶縁不良などを防止するために、透過する酸素や水蒸気などを遮断し、内容物を変質させる気体による影響を防止するために使用されたりする。
【0003】
特許文献1には、気相堆積法により、プラスチック基材フィルム上に、酸化珪素、酸化アルミニウム、又は酸化マグネシウムからなる無機酸化物層を形成してなるガスバリアフィルムが記載されている。このガスバリアフィルムは、透明に形成することができると共に、ガスバリア性に優れている。したがって、このガスバリアフィルムは、高ガスバリア包装材料として適している。
【0004】
ところで、上記の特許文献1のような、プラスチック基材フィルム上に気相堆積法によって無機酸化物層を形成してガスバリアフィルムとする場合の問題として、プラスチック基材フィルム上の微細な凹凸の存在により、この上に気相堆積法によって無機酸化物層を形成した際に、この凹凸が起因の欠陥が無機酸化物層内で発生し、ガスバリア性を低下させてしまうということがある。また、無機酸化物層が可撓性に欠けており、揉みや折り曲げに弱く、またプラスチック基材フィルムとの密着性が悪いため、取り扱いに注意を要し、とくに印刷、ラミネート、製袋など包装材料の後加工の際に、クラックが発生しやすいということもある。
【0005】
特許文献2には、プラスチック基材フィルムと無機酸化物層の密着力を向上させるために、プラスチック基材フィルムと無機酸化物層との間に、アンカーコート層を形成することが行われている。また、特許文献3には、プラスチック基材フィルム上に、無機酸化物蒸着層と、水酸基含有アクリル樹脂、イソシアネート化合物およびシランカップリング剤を含むプライマー剤が反応硬化したプライマー層を順に積層したガスバリア性積層体を作成している。
また、特許文献4には、基材層上に、無機酸化物蒸着膜と、該無機酸化物蒸着膜上に設けられ、特定の金属アルコキシドの加水分解生成物と水溶性高分子との硬化膜を有するバリアフィルムを作成している。
【0006】
しかしながら、これらは、いずれもプラスチック基材フィルムと無機酸化物層の密着力を向上させるもので、その効果を有するものであるが、これら作成された包装材料はそのまま使用されることは少なく、その表面に、意匠機能、表示機能、内容物保護機能などを持たせるために、印刷が施されることが多い。
これらの特許文献2~4の包装材料に、印刷を施す(印刷層を形成する)と、ガスバリア層と印刷層との間の密着性(インキ密着性)が劣り、ラミネート強度の低下やレトルト後浮きなどの問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭49-041469号公報
【特許文献2】特開2008-238665号公報
【特許文献3】特開2016-135614号公報
【特許文献4】特開2021-041620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、ガスバリア性を保持しつつ、基材フィルム、無機酸化物層、ガスバリア性皮膜層、印刷インキ層それぞれの層において、高い密着性を有するガスバリア性グラビア積層体および耐熱水適性を有する包装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、基材フィルムの少なくとも一方の面に、無機酸化物層と、ガスバリア性皮膜層と、印刷インキ層とを、この順に積層したガスバリア性グラビア積層体において、前記無機酸化物層が、気相堆積法によって形成された層であり、前記ガスバリア性皮膜層が、透明樹脂を含む透明樹脂組成物と、一般式(1)で表される金属アルコキシドまたはその加水分解物である無機物を含む無機組成物と、を含んだ混合物からなる層であり、前記印刷インキ層が、ウレタン系グラビア印刷用インキからなる層であることを特徴とするガスバリア性グラビア積層体であることにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、
(1)基材フィルムの少なくとも一方の面に、無機酸化物層と、ガスバリア性皮膜層と、印刷インキ層とを、この順に積層したガスバリア性グラビア積層体において、
前記無機酸化物層が、気相堆積法によって形成された層であり、
前記ガスバリア性皮膜層が、透明樹脂を含む透明樹脂組成物と、下記一般式(1)で表される金属アルコキシドまたはその加水分解物である無機物を含む無機組成物と、を含んだ混合物からなる層であり、
前記印刷インキ層が、ウレタン系グラビア印刷用インキからなる層であることを特徴とするガスバリア性グラビア積層体、
Si(OR (1)
[ここで、式1中、Rは炭素数が1~2のアルキル基であり、Rはウレイド基である。]
(2)前記透明樹脂を含む透明樹脂組成物が、ポリビニルアルコールを含み、
さらに前記無機組成物に下記一般式(2)で表される無機物を含み、
式(2)の無機物のSiO換算重量と式(1)の無機物のRSi(OH)換算重量の割合が、99.9/0.1~10/90であることを特徴とする(1)に記載のガスバリア性グラビア積層体、
Si(OR (2)
[ここで、式2中、Rは炭素数が1~2のアルキル基である。]
(3)前記透明樹脂を含む透明樹脂組成物と前記無機物を含む無機組成物の混合比が、透明樹脂組成物/無機組成物=1/99~99/1であることを特徴とする(1)または(2)に記載のガスバリア性グラビア積層体、
(4)さらに、印刷インキ層上に、ヒートシール層を形成することを特徴とする(1)~(3)のいずれかに記載のガスバリア性グラビア積層体、
(5)(1)~(4)のいずれかに記載のガスバリア性グラビア積層体に用いるガスバリア用グラビアインキセットであって、
透明樹脂を含むコート剤Aと、
下記一般式(3)で表される金属アルコキシドまたはその加水分解物である無機物を含むコート剤Bと、を含むことを特徴とするガスバリア用グラビアインキセット、
Si(OR (3)
[ここで、式3中、Rは炭素数が1~2のアルキル基であり、Rはウレイド基である。]
(6)前記コート剤Aの透明樹脂が、ポリビニルアルコールであり、
前記コート剤Bに、さらに下記一般式(4)で表される無機物を含み、
式(4)の無機物のSiO換算重量と式(3)の無機物のRSi(OH)換算重量の割合が、99.9/0.1~10/90であることを特徴とする(5)に記載のガスバリア用グラビアインキセット、
Si(OR (4)
[ここで、式4中、Rは炭素数が1~2のアルキル基である。]
(7)前記コート剤Aと前記コート剤Bの混合比が、コート剤A/コート剤B=1/99~99/1であることを特徴とする(5)または(6)に記載のガスバリア用グラビアインキセット、
(8)基材フィルムを準備する工程と、
該基材フィルムの少なくとも一方に、ガスバリア用グラビアインキセットを印刷してなる印刷インキ層を作成するグラビア印刷工程と、
を含むガスバリア性グラビア積層体の製造方法であって、
前記ガスバリア用グラビアインキセットが、透明樹脂を含むコート剤Aと、
下記一般式(5)で表される金属アルコキシドまたはその加水分解物である無機物を含むコート剤Bと、を含むことを特徴とするガスバリア性グラビア積層体の製造方法、
Si(OR (5)
[ここで、式5中、Rは炭素数が1~2のアルキル基であり、Rはウレイド基である。]
(9)前記コート剤Aの透明樹脂が、ポリビニルアルコールであり、
前記コート剤Bに、さらに下記一般式(6)で表される無機物を含み、
式(6)の無機物のSiO換算重量と式(5)の無機物のRSi(OH)換算重量の割合が、99.9/0.1~10/90であることを特徴とする(8)に記載のガスバリア性グラビア積層体の製造方法、
Si(OR (6)
[ここで、式6中、Rは炭素数が1~2のアルキル基である。]
(10)さらに ヒートシール層を作成する塗工工程、を含むことを特徴とする(8)または(9)に記載のガスバリア性グラビア積層体の製造方法、
に関するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ガスバリア性を保持しつつ、基材フィルム、無機酸化物層、ガスバリア性皮膜層、印刷インキ層それぞれの層において、高い密着性を有するガスバリア性グラビア積層体および耐熱水適性を有する包装体を提供できる。
【0012】
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、本実施形態は、本発明を実施するための一形態に過ぎず、本発明は本実施形態によって限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更、実施の形態が可能である。
【0013】
本発明のガスバリア性グラビア積層体は、基材フィルムの少なくとも一方の面に、無機酸化物層と、ガスバリア性皮膜層と、印刷インキ層とを、この順に積層し、前記無機酸化物層が、気相堆積法によって形成された層であり、前記ガスバリア性皮膜層が、前記ガスバリア性皮膜層が、透明樹脂を含む透明樹脂組成物と、下記一般式(1)で表される金属アルコキシドまたはその加水分解物である無機物を含む無機組成物と、を含んだ混合物(以下、バリア性混合物ともいう。)からなる層であり、前記印刷インキ層が、ウレタン系グラビア印刷用インキからなる層であることが好ましい。
Si(OR (1)
[ここで、式1中、Rは炭素数が1~2のアルキル基であり、Rはウレイド基である。]
【0014】
前記ガスバリア性皮膜層を形成する無機組成物に含まれる前記一般式(1)で表される金属アルコキシドまたはその加水分解物である無機物としては、例えば3-ウレイドプロピルトリアルコキシシランが好ましく、3-ウレイドプロピルトリエトキシシランまたは3-ウレイドプロピルトリメトキシシランなどがより好ましい。
【0015】
前記一般式(1)で表される金属アルコキシドまたはその加水分解物は、市販されており、KBE-585A(信越シリコーン(株)製)、DOWSIL Z-6119 Silan、Z-6120 Silan、Z-6675 Silan(以上、DOW社製)、Dynasylan2201EQ(EVONIK社製)、SILQUEST Silanes A-1160(MOMENTIVE社製)などが挙げられる。
【0016】
前記無機組成物には、さらに下記一般式(2)で表される無機物を含むことが好ましい。
Si(OR (2)
[ここで、式2中、Rは炭素数が1~2のアルキル基である。]
【0017】
前記一般式(2)で表される無機物としては、例えばアルコキシシランが好ましく、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシランなどがより好ましい。なかでも、テトラエトキシシランが好ましい。
【0018】
前記一般式Si(ORのSiO換算重量と前記一般式RSi(ORのRSi(OH)換算重量の割合が、99.9/0.1~10/90であることが好ましく、99.5/0.5~50/50であることがより好ましく、95/5~80/20であることがさらに好ましい。式(2)で表されるSiO換算重量の無機物の割合が、99.9部を超えると、インキ密着性が劣り、10部より少ないと、官能基Rがガスバリアの孔となり、ガスバリア性が劣る。
【0019】
前記透明樹脂組成物には、透明樹脂を含むことが好ましく、ポリビニルアルコール樹脂であることがより好ましい。
【0020】
ポリビニルアルコール樹脂としては、一般に、ポリ酢酸ビニルをケン化して得られるものを使用することができる。ポリビニルアルコール樹脂としては、酢酸基が数10%残存している部分ケン化ポリビニルアルコール樹脂でも、酢酸基が残存しない完全ケン化ポリビニルアルコールでも、水酸基が変性された変性ポリビニルアルコール樹脂でもよく、特に限定されない。
【0021】
前記透明樹脂組成物と無機組成物の割合が、バリア性混合物中に、透明樹脂組成物/無機組成物=1/99~99/1であることが好ましく、5/95~95/5であることがより好ましく、10/90~50/50であることがさらに好ましい。透明樹脂組成物の割合が、99部を超えると、耐熱水適性が劣り、1部より少ないと、ガスバリア性が劣る。
【0022】
前記無機酸化物層は、気相堆積法によって形成された層であることが好ましく、透明な薄膜層である。無機酸化物層を構成する材料としては、例えば、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化錫、酸化マグネシウム、またはこれらの混合物(酸化アルミニウム/酸化珪素二元蒸着など)を使用することができる。無機酸化物層の形成には、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、またはプラズマ気相堆積法を利用することができる。真空蒸着法を利用する場合、蒸発材料の加熱手段としては、例えば、電子線加熱、抵抗加熱、または誘導加熱の方式を利用することができる。電子線加熱方式を利用した場合、蒸発材料の選択の自由度が大きい。蒸着の際に、プラズマアシスト法またはイオンビームアシスト法を利用すると、より緻密な無機酸化物層を形成することができる。また、蒸着の際に、酸素などのガスを吹き込む反応蒸着を利用すると、透明性に優れた無機酸化物層を形成することができるので、より好ましい。
【0023】
無機酸化物層の厚さは、例えば、5nmから500nmの範囲内が好ましい。無機酸化物層の厚さが、薄い場合は、均一な連続膜として形成することが難しく、また十分なガスバリア性が得られないおそれがある。また、厚い場合は、柔軟性が低くなり、ガスバリア性積層体を撓ませた場合、あるいは引っ張った場合に亀裂を生じるおそれがある。
【0024】
前記印刷インキ層は、ウレタン系グラビア印刷用インキ(以下、インキともいう。)からなる層であることが好ましく、ウレタン系グラビア印刷用インキをグラビア印刷法により塗工して形成されることが好ましい。特に、多色グラビア印刷機を用いたグラビア印刷法により塗工されて形成されることがより好ましい。前記印刷インキ層は、ウレタン系グラビア印刷用インキで積層してなるインキ層単独でもよいが、当該インキ層と他のグラビア印刷用インキで積層してなる他のインキ層とを含んでもよい。さらに、グラビア印刷法による塗工されて形成されるため、全ベタ印刷だけでなく、階調印刷や部分印刷も可能である。また、反転機構を有する印刷機を使用することにより、多種の他のインキ層を有する構成のガスバリア性積層体を得ることができる。例えば、基材フィルム/無機酸化物層/ガスバリア性皮膜層/インキ層/他のインキ層のようにガスバリア性積層体を形成した後、反転し、他のインキ層を形成した後、ドライラミネートなどで他の基材を積層(他の基材/DL/他のインキ層/基材フィルム/無機酸化物層/ガスバリア性皮膜層/インキ層/他のインキ層/DL/他の基材)する構成としてもよい。
【0025】
本発明のウレタン系グラビア印刷用インキには、通常グラビアインキに使用される溶剤を使用することができる。前記溶剤としては、例えばトルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶剤、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素系溶剤、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノールなどのアルコール系溶剤、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec-ブチル、酢酸tert-ブチルなどのエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテルなどのグリコールエーテル系溶剤およびこれらのエステル化物が挙げられ、エステル化物としては主にアセテート化したものが選ばれ、例えばエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどが挙げられる。なかでも、印刷適性や汎用性の観点から、トルエン、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、イソプロピルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メチルエチルケトンなどがより好ましい。これらは、一種類または二種類以上混合して用いることができる。
インキ中に溶剤は45~98質量%の範囲内であることが好ましい。45質量%より少ないと固形分が多くなり、流動性が悪くなり、インキ製造適性が劣り、98質量%を超えると、インキ膜厚が局部的に不均一になり、印刷面上に、不定形の濃淡(泳ぎ現象)が生じたり、粘度が低くなり、顔料が沈降しやすくなるおそれがある。
【0026】
前記インキには、色材、無機充填剤、有機充填剤、消泡剤、レベリング剤、ブロッキング防止剤、ワックス、顔料分散剤、帯電防止剤、スリップ剤、可塑剤、粘着付与剤などを含有することもできる。公知慣用のものであればいかなるものも、インキとしての特性を損なわない範囲で、適宜選択できる。
【0027】
通常、ガスバリア性皮膜層に対しては、ウレタン系のグラビア印刷用インキの密着性が劣るため、これを補うことを目的として、ポリイソシアネート化合物を添加混合した2液型インキが用いられるが、印刷環境により使用可能時間(ポットライフ)の点で制限があったり、インキの再利用時の際に失活してしまっているおそれがある。一方、ポリイソシアネート化合物を添加しない1液型インキは、耐レトルト性や耐ボイル性(耐熱水適性)が不十分であると言われている。
しかし、本発明のガスバリア性グラビア積層体は、前記ガスバリア性皮膜層に一般式(1)で表される金属アルコキシドまたはその加水分解物である無機物を含むことで、ウレタン系グラビア印刷用インキとして、1液型インキであるにもかかわらず、ガスバリア性皮膜層との間でのインキ密着性を確保でき、耐熱水適性にも優れた効果を有する。
【0028】
前記色材としては、顔料または染料あるいはその混合物を含有することができる。
顔料としては、例えば、二酸化チタン、弁柄、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、シリカ、酸化亜鉛、硫化亜鉛、マイカ、タルク、パールなどの無機顔料、フタロシアニン系、不溶性アゾ系、縮合アゾ系、ジオキサジン系、アントラキノン系、キナクリドン系、ペリレン系、ペリノン系、チオインジゴ系、カーボンブラックなどの有機顔料、その他各種蛍光顔料、金属粉顔料、体質顔料などが挙げられる。これらの顔料は、一種類または二種類以上組み合わせて使用してもよい。染料としては、溶剤に溶解または分散するものが好ましく、一種類または二種類以上組み合わせて使用してもよい。なかでも、耐久性の観点から、顔料を用いることが好ましい。
【0029】
本発明の基材フィルムは、プラスチックフィルムまたはシートならびにこれらの積層体から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステルフィルム、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-ビニルアセテートなどのポリオレフィンフィルム、ポリスチレンフィルム、エチレン-ビニルアルコール、ポリビニルアルコールなどのアルコール系フィルム、ポリアミドフィルムまたはバリア層を中間に配したバリア性ポリアミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、ポリイミドフィルム、セロハン、防湿セロハン、PETフィルムまたはポリアミドフィルムにアルミナやシリカなどの蒸着層を設けた透明蒸着ポリエステルフィルムまたは透明蒸着ポリアミドフィルム、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリアクリル酸樹脂などをコートした各種コーティングフィルム、PETとナイロンの共押出フィルム、ポリ乳酸フィルムなどが挙げられる。これらは延伸、未延伸のどちらでもよく、一種類または二種類以上を積層していてもよい。機械的強度や寸法安定性などを考慮して、適切なものが選択できる。また、表面にはアンカーコート層やラミネート層の密着性を向上させるため、コロナ処理、低温プラズマ処理、フレーム処理、溶剤処理、コート処理などを施すか、あらかじめ施されたものが選択できる。なかでも、PETフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリアミドフィルム、コーティングフィルム、透明蒸着ポリエステルフィルムまたは透明蒸着ポリアミドフィルム、共押出フィルムなどが好ましい。基材フィルムの厚さは、印刷適性、巻き取り適性などに支障のない範囲内であれば、特に制限はないが、5~300μmが好ましく、6~250μmがより好ましい。
【0030】
本発明のガスバリア性グラビア積層体は、前記基材フィルムの少なくとも一方の面に、前記無機酸化物層と、前記ガスバリア性皮膜層と、前記印刷インキ層とを、この順に積層することが好ましく、前記ガスバリア性皮膜層が0.01~5μmの膜厚であることが好ましく前記印刷インキ層が、0.1~5μmの膜厚であることが好ましい。
ガスバリア性皮膜層が0.01μmより薄いと、バリア性が劣り、5μmより厚いと、屈曲性が劣る。印刷インキ層が5μmより厚いと、耐ブロッキング性やインキ密着性が劣る。
【0031】
本発明のガスバリア性グラビア積層体は、前記基材フィルムと、前記無機酸化物層の間に、アンカーコート層を形成してもよい。また、印刷インキ層上に、ヒートシール層を形成してもよいし、この間に接着層を形成してもよく、他に、剛性、腰、保香性、防湿性、耐ピンホール性、デッドホール性、遮光性、直線カット性などの性能を付与または強化するための中間層を形成してもよい。
【0032】
前記中間層としては、プラスチックフィルム、シートならびにこれらの積層体などが挙げられる。プラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステルフィルム、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-ビニルアセテートなどのポリオレフィンフィルム、ポリスチレンフィルム、エチレン-ビニルアルコール、ポリビニルアルコールなどのアルコール系フィルム、ポリアミドフィルムまたはバリア層を中間に配したバリア性ポリアミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、ポリイミドフィルム、セロハン、防湿セロハン、PETフィルムまたはポリアミドフィルムにアルミナやシリカなどの蒸着層を設けた透明蒸着ポリエステルフィルムまたは透明蒸着ポリアミドフィルム、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリアクリル酸樹脂などをコートした各種コーティングフィルム、PETとナイロンの共押出フィルム、ポリ乳酸フィルムなどが挙げられる。これらは延伸、未延伸のどちらでもよく、一種類または二種類以上を積層していてもよい。機械的強度や寸法安定性などを考慮して、適切なものが選択できる。貼り合わせ面には密着性を向上させるため、コロナ処理、低温プラズマ処理、フレーム処理、溶剤処理、コート処理などを施すか、あらかじめ施されたものが選択できる。処理は両面処理が好ましい。
中間層としては、印刷適性、巻き取り適性などに支障のない範囲内であればよく、5~300μmの厚みが好ましく、6~250μmの厚みがより好ましい。
【0033】
前記ヒートシール層としては、シール強度が十分確保できるものであれば、貼り合わせ方法は印刷基材、用途、構成などに応じて適宜選択される。例えば、前記印刷インキ層に前記接着層を介した公知のシーラントフィルムとの貼り合わせ(ドライラミネート法、ノンソルベントラミネート法、ウェットラミネート法)、熱による貼り合わせ(熱ラミネート法)、押出ラミネート加工による樹脂コーティング(押出ラミネート法、共押出ラミネート法、PEサンドイッチラミネート法)などが好ましく使用できる。これらの方法を一種類もしくは組み合わせてガスバリア性積層体を製造することができる。
また、ヒートシール剤やホットメルト剤の塗工などにより形成される層であってもよい。
【0034】
前記シーラントフィルムとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-ビニルアセテート、これらの共重合体などのポリオレフィンフィルムやその共押フィルムおよび着色フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、エチレン-ビニルアルコール樹脂フィルムなどが挙げられ、延伸していても、未延伸のどちらでもよく、一種類または二種類以上を積層していてもよい。
【0035】
前記ドライラミネート法、ノンソルベントラミネート法、ウェットラミネート法、押出ラミネート法などに接着剤を使用する場合は市販のものでよく、例えば、2液型もしくは1液型ウレタン系樹脂接着剤、アクリル系、エポキシ系、ポリエステル系、ポリエチレンイミン系、ポリブタジエン系、水系ウレタン系、イソシアネート系、有機チタン系、デンプン系の水溶性接着剤や酢酸ビニルエマルジョンのような水性接着剤などが挙げられる。シーラント層を形成するための接着剤の塗布方法としては、公知の塗布法を用いることができ、例えば、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ナイフコーター、バーコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、ディップコーター等を用いることができる。接着剤の厚みは特に制限はないが、0.001~10μm程度の範囲が好ましく、0.01~5μmの範囲が特に好ましい。
【0036】
前記押出ラミネート法による樹脂コーティングに使用できる樹脂としては、LDPE、LLDPE、HDPEなどのポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-アクリル酸メチル共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリエチレンやポリプロピレンをマレイン酸やフマル酸などで変性した酸変性ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂などの熱可塑性樹脂が挙げられ、これらの樹脂は、一種類または二種類以上を積層していてもよい。
【0037】
ヒートシール層の厚みは、特に制限はないが、シーラントフィルムでは2~200μm、押出ラミネート法による樹脂コーティングでは1~100μmの厚みであることが好ましい。
ヒートシール剤の塗工では0.01~30μm、ホットメルト接着剤の塗工では1~50μmの厚みであることが好ましい。
【0038】
ヒートシール剤の樹脂の例としては、例えば、塩化ビニリデン、セラック類、ロジン類、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、硝化綿、酢酸セルロース、セルロースアセチルプロピオネート、セルロースアセチルブチレート、塩化ゴム、環化ゴム、ポリアミド樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、ケトン樹脂、ブチラール樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、塩素化エチレンビニルアセテート樹脂、エチレンビニルアセテート樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エチレン-ビニルアルコール樹脂、スチレンマレイン酸樹脂、カゼイン、アルキッド樹脂などの熱可塑性樹脂が挙げられ、これらは一種類または二種類以上組み合わせて使用してもよい。これらの樹脂を溶剤に溶解したタイプ、水系に溶解したタイプ、あるいはアクリル系エマルジョン、ウレタン系エマルジョン、エチレン-ビニルアルコール系エマルジョン、ポリエチレン系エマルジョン、ポリプロピレン系エマルジョン、エチレンビニルアセテート系エマルジョンなど水中に分散させたものが挙げられる。
【0039】
本発明のガスバリア性グラビア積層体は、包装用途、食品保存用途、レトルト用途、電子レンジ用途、農業用途、土木用途、漁業用途、自動車内外装用途、船舶用途、日用品用途、建材内外装用途、住設機器用途、医療・医療機器用途、医薬用途、家電品用途、家具類用途、文具類・事務用品用途、販売促進用途、商業用途、電機電子産業用途および産業資材用途などに供されることが好ましい。なかでも、包装用途に供されることがより好ましい。
【0040】
ガスバリア性グラビア積層体のヒートシール層同士をあわせて、包装体としてもよい。包装体としては、二方シール、三方シール、四方シール、ピローシール、スタンディングパウチ、封筒貼り、ガゼット、溶断シールなどの周知の形態のいずれでもよい。
【0041】
本発明のガスバリア用グラビアインキセットは、前記ガスバリア性グラビア積層体に用いられるものであって、
透明樹脂を含むコート剤Aと、
下記一般式(1)で表される金属アルコキシドまたはその加水分解物である無機物を含むコート剤Bと、を含むことが好ましい。
Si(OR (1)
[ここで、式1中、Rは炭素数が1~2のアルキル基であり、Rはウレイド基である。]
【0042】
前記コート剤Bに含まれる前記一般式(1)で表される金属アルコキシドまたはその加水分解物である無機物としては、例えば3-ウレイドプロピルトリアルコキシシランが好ましく、3-ウレイドプロピルトリエトキシシランまたは3-ウレイドプロピルトリメトキシシランなどがより好ましい。
【0043】
前記一般式(1)で表される金属アルコキシドまたはその加水分解物は、市販されており、KBE-585A(信越シリコーン(株)製)、DOWSIL Z-6119 Silan、Z-6120 Silan、Z-6675 Silan(以上、DOW社製)、Dynasylan2201EQ(EVONIK社製)、SILQUEST Silanes A-1160(MOMENTIVE社製)などが挙げられる。
【0044】
前記コート剤Bには、さらに下記一般式(2)で表される無機物を含むことが好ましい。
Si(OR (2)
[ここで、式2中、Rは炭素数が1~2のアルキル基である。]
【0045】
前記一般式(2)で表される無機物としては、例えばアルコキシシランが好ましく、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシランなどがより好ましい。なかでも、テトラエトキシシランが好ましい。
【0046】
前記一般式Si(ORのSiO換算重量(コート剤B-1)と一般式RSi(ORのRSi(OH)換算重量(コート剤B-2)の割合が、B-1/B-2=99.9/0.1~10/90であることが好ましく、99.5/0.5~50/50であることがより好ましく、95/5~80/20であることがさらに好ましい。B-1の割合が、99.9部を超えると、インキ密着性が劣り、10部より少ないと、官能基Rがガスバリアの孔となり、ガスバリア性が劣る。
【0047】
前記コート剤Aには、透明樹脂を含むことが好ましく、ポリビニルアルコール樹脂であることがより好ましい。
【0048】
ポリビニルアルコール樹脂としては、一般に、ポリ酢酸ビニルをケン化して得られるものを使用することができる。ポリビニルアルコール樹脂としては、酢酸基が数10%残存している部分ケン化ポリビニルアルコール樹脂でも、酢酸基が残存しない完全ケン化ポリビニルアルコールでも、水酸基が変性された変性ポリビニルアルコール樹脂でもよく、特に限定されない。
【0049】
前記コート剤Aとコート剤Bの割合が、ガスバリア用グラビアインキセット中に、コート剤A/コート剤B=1/99~99/1であることが好ましく、5/95~95/5であることがより好ましく、10/90~50/50であることがさらに好ましい。コート剤Aの割合が、99部を超えると、耐熱水適性が劣り、1部より少ないと、ガスバリア性が劣る。
【0050】
前記バリア性混合物は、透明樹脂、一般式(1)で表される金属アルコキシドまたはその加水分解物である無機物、一般式(2)で表される無機物を溶解または分散することにより公知の方法で製造できる。また、それぞれの溶解物とし、それを特定の範囲の割合で混合してもよい。溶解または分散は、ディゾルバー、ペイントシェーカー、ホモミキサーなどの各種撹拌機または分散機を使用できる。これらの装置は一種類または二種類以上組み合せて使用してもよい。バリア性混合物中に気泡や粗大粒子が含まれる場合、印刷適性や印刷物品質を低下させるため、公知のろ過機や遠心分離機などを用いて、取り除くことが好ましい。
【0051】
前記バリア性混合物は、グラビア印刷で使用されることが好ましく、そのまま塗工することもできるが、塗工条件、塗工効果に応じ、ザーンカップ#3((株)離合社製)にて、希釈溶剤で希釈することにより所望の粘度に調整して使用できる。この場合の粘度は、25℃において10~40秒であることが好ましい。10秒より小さいと、泳ぎやすく、40秒より大きいと印刷時の転移性が悪くなる。
【0052】
前記希釈溶剤は、前記インキ組成物の粘度を調整して使用できるものであれば、いずれでもよく、有機溶剤、水などが挙げられ、市販のものも使用でき、特に制限はない。市販品としては、WA735溶剤(アルコール系溶剤)、TA52溶剤(アルコール系溶剤)、PU533溶剤(含トルエン系溶剤)、PU515溶剤(ノントルエン系溶剤)、SL9155溶剤(ノントルエン系溶剤)、CN104溶剤(ノントルエン系溶剤)、AC372溶剤(ノントルエン系溶剤)、PP575溶剤(含トルエン系溶剤)、SL9164溶剤(ノンケトン系溶剤)、SL9170溶剤(ノントルエン系溶剤)(以上、いずれも東京インキ(株)製)などが挙げられる。
【実施例0053】
以下に実施例および比較例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例および比較例中の部は質量部を、%は質量%を表す。
【0054】
[透明樹脂コート剤Aの作製]
常温の水80部にポリビニルアルコール(ケン化度98%以上)5部を攪拌しながら、添加し、90℃に昇温し、30分間攪拌して、コート剤Aを得た。
【0055】
[一般式(1)で表される金属アルコキシドまたはその加水分解物コート剤B-2の作製]
3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン(信越シリコーン(株)製)7.5部、イソプロピルアルコール30部、0.1N塩酸62.5部をビーカーに入れ、600rpmで30分間攪拌し、RSi(OH)換算5%のコート剤B-2を得た。
【0056】
[一般式(2)で表される無機物コート剤B-1の作製]
テトラエトキシシラン(信越シリコーン(株)製)17.5部、イソプロピルアルコール30部、0.1N塩酸52.5部をビーカーに入れ、600rpmで30分間攪拌し、SiO換算5%のコート剤B-1を得た。
【0057】
[一般式(1)で表される金属アルコキシドまたはその加水分解物および一般式(2)で表される無機物の混合物コート剤B-3の作製]
3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン(信越シリコーン(株)製)0.4部、テトラエトキシシラン(信越シリコーン(株)製)16.5部、イソプロピルアルコール30部、0.1N塩酸53.1部をビーカーに入れ、600rpmで30分間攪拌し、RSi(OH)換算0.25%/SiO換算4.75%のコート剤B-3を得た。
【0058】
[ガスバリアコート剤1の作製]
<製造例1~8>
作製したコート剤A 50部、コート剤B-1 49.75部、コート剤B-2 0.25部をビーカーに入れ、600rpmで10分間攪拌し、製造例1のガスバリアコート剤1を作製した。同様に、表1の配合に従い、製造例2~8の各ガスバリアコート剤を作製した。
【0059】
【表1】
【0060】
[ガスバリアコート剤9の作製]
<製造例9>
テトラエトキシシラン10部に、0.1N塩酸水溶液を90部添加し、この混合液を30分間攪拌して、テトラエトキシシランの加水分解を生じさせ、SiO換算3%の加水分解溶液を得、次に、ポリビニルアルコール2.6部に、水56.16部、イソプロピルアルコール6.24部を混合し、65部の固形分4%のPVA水溶液を調製し、さらに、これら加水分解溶液とPVA水溶液を混合して、ガスバリアコート剤9を作製した。
【0061】
[アンカーコート剤1の作製]
<製造例10>
水酸基価が140mgKOH/gのアクリルポリオールを50質量%濃度で含有したアクリルポリオール溶液6gを準備した。このアクリルポリオール溶液6gとγ-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン0.5gとを混合し、さらに、酢酸エチルを添加して、固形分濃度を25質量%の混合溶液とした。この混合溶液10g計量し、これにキシリレンジイソシアネートとイソホロンジイソシアネートとを60:40の質量比で含有した混合物3.0gを添加混合した。次に、この溶液を、酢酸エチルとメチルエチルケトンが60:40の質量比である希釈溶媒を用いて、固形分濃度が5質量%となるように希釈した後、さらに5分間攪拌してアンカーコート剤1を作製した。
【0062】
[ガスバリア性グラビア積層体1の作製]
(実施例1~8)
厚み12μmのPETフィルム(ルミラーP60、略称:PET12、東レ(株)製)上に、誘導加熱方式を用いた真空蒸着装置により、酸化アルミニウムからなる無機酸化物層(略称:アルミナ)を形成した。次に、グラビア校正機GRAVO-PROOF(品番:CM-W、(株)日商グラビア製)にスタイラス130度の70L彫刻ヘリオ版を取り付け、ガスバリアコート剤1(略称:コート剤1)を、上記無機酸化物層上に、膜厚0.5μmで印刷し、さらにウレタン系グラビア白インキ(略称:白、東京インキ(株)製)を厚み1.2μmで印刷し、ガスバリア性グラビア印刷物を得た。次に、この印刷物上に、タケラックA-525/タケネートA-52(略称:エステルDL、三井化学(株)製)をA-Bar OSP-10(オーエスジーシステムプロダクツ(株)製)で塗工して、厚み60μmの無延伸ポリプロピレンフィルムであるトレファンNO ZK207(略称:レトCP、東レフィルム加工(株)製)を貼り合わせた後、40℃で72時間エージングを行って、基材フィルム(PET12)/無機酸化物層(アルミナ)/ガスバリア層(コート剤1)/印刷インキ層(白)/接着剤層(エステルDL)/ヒートシール層(レトCP)のガスバリア性グラビア積層体1を得た。
同様に、表2の通り、基材、無機酸化物層、コート剤と膜厚を変更し、それぞれガスバリア性グラビア積層体2~8を得た。
【0063】
[ガスバリア性グラビア積層体9の作製]
(実施例9)
ガスバリアコート剤1をガスバリアコート剤2に代えて、ガスバリア層の膜厚0.5μmとし、ガスバリア性グラビア印刷物を得た。次に、この印刷物上に、タケラックA-525/タケネートA-52(略称:エステルDL、三井化学(株)製)をA-Bar OSP-10(オーエスジーシステムプロダクツ(株)製)で塗工して、厚み15μmのナイロンフィルムであるエンブレムONMB-RT(略称:NY、ユニチカ(株)製)を貼り合わせ、さらに、厚み60μmの無延伸ポリプロピレンフィルムであるトレファンNO ZK207(略称:レトCP、東レフィルム加工(株)製)を貼り合わせた後、40℃で72時間エージングを行って、基材フィルム(PET12)/無機酸化物層(アルミナ)/ガスバリア層(コート剤2)/印刷インキ層(白)/接着剤層(エステルDL)/NY/接着剤層(エステルDL)/ヒートシール層(レトCP)のガスバリア性グラビア積層体9を得た。
【0064】
[ガスバリア性グラビア積層体10の作製]
(実施例10)
ガスバリアコート剤1をガスバリアコート剤2に代えて、ガスバリア層の膜厚0.6μmとし、ガスバリア性グラビア印刷物を得た。次に、この印刷物上に、タケラックA-969V/タケネートA-5(略称:エーテルDL、三井化学(株)製)をA-Bar OSP-10(オーエスジーシステムプロダクツ(株)製)で塗工して、厚み15μmのナイロンフィルムであるエンブレムONMB-RT(略称:NY、ユニチカ(株)製)を貼り合わせ、さらに、厚み40μmの直鎖状低密度ポリエチレンフィルムであるTUX-FCD(略称:LLDPE、三井化学東セロ(株)製)を貼り合わせた後、40℃で24時間エージングを行って、基材フィルム(PET12)/無機酸化物層(アルミナ)/ガスバリア層(コート剤2)/印刷インキ層(白)/接着剤層(エーテルDL)/NY/接着剤層(エーテルDL)/ヒートシール層(LLDPE)のガスバリア性グラビア積層体10を得た。
【0065】
[ガスバリア性グラビア積層体11の作製]
(実施例11)
厚み12μmのPETフィルム(ルミラーP60、略称:PET12、東レ(株)製)上に、誘導加熱方式を用いた真空蒸着装置により、酸化珪素からなる無機酸化物層(略称:シリカ)を形成した。次に、グラビア校正機GRAVO-PROOF(品番:CM-W、(株)日商グラビア製)にスタイラス130度の70L彫刻ヘリオ版を取り付け、ガスバリアコート剤2(略称:コート剤2)を、上記無機酸化物層上に、膜厚0.6μmで印刷し、さらにウレタン系グラビア白インキ(略称:白、東京インキ(株)製)を厚み1.1μmで印刷し、ガスバリア性グラビア印刷物を得た。次に、この印刷物上に、タケラックA-525/タケネートA-52(略称:エステルDL、三井化学(株)製)をA-Bar OSP-10(オーエスジーシステムプロダクツ(株)製)で塗工して、厚み60μmの無延伸ポリプロピレンフィルムであるトレファンNO ZK207(略称:レトCP、東レフィルム加工(株)製)を貼り合わせた後、40℃で72時間エージングを行って、基材フィルム(PET12)/無機酸化物層(シリカ)/ガスバリア層(コート剤2)/印刷インキ層(白)/接着剤層(エステルDL)/ヒートシール層(レトCP)のガスバリア性グラビア積層体11を得た。
【0066】
[ガスバリア性グラビア積層体12の作製]
(実施例12)
厚み12μmのPETフィルム(ルミラーP60、略称:PET12、東レ(株)製)上に、誘導加熱方式を用いた真空蒸着装置により、酸化アルミニウム/酸化珪素からなる二元無機酸化物層(略称:アルミナ・シリカ)を形成した。次に、グラビア校正機GRAVO-PROOF(品番:CM-W、(株)日商グラビア製)にスタイラス130度の70L彫刻ヘリオ版を取り付け、ガスバリアコート剤2(略称:コート剤2)を、上記無機酸化物層上に、膜厚0.5μmで印刷し、さらにウレタン系グラビア白インキ(略称:白、東京インキ(株)製)を厚み1.1μmで印刷し、ガスバリア性グラビア印刷物を得た。次に、この印刷物上に、タケラックA-525/タケネートA-52(略称:エステルDL、三井化学(株)製)をA-Bar OSP-10(オーエスジーシステムプロダクツ(株)製)で塗工して、厚み60μmの無延伸ポリプロピレンフィルムであるトレファンNO ZK207(略称:レトCP、東レフィルム加工(株)製)を貼り合わせた後、40℃で72時間エージングを行って、基材フィルム(PET12)/無機酸化物層(アルミナ・シリカ)/ガスバリア層(コート剤2)/印刷インキ層(白)/接着剤層(エステルDL)/ヒートシール層(レトCP)のガスバリア性グラビア積層体12を得た。
【0067】
[ガスバリア性グラビア積層体13の作製]
(実施例13)
厚み12μmのPETフィルムを厚み15μmのナイロンフィルムであるボニールRX(略称:NY15、興人フィルム&ケミカルズ(株)製)に代えて、該フィルム上に、誘導加熱方式を用いた真空蒸着装置により、酸化アルミニウムからなる無機酸化物層(略称:アルミナ)を形成した。次に、グラビア校正機GRAVO-PROOF(品番:CM-W、(株)日商グラビア製)にスタイラス130度の70L彫刻ヘリオ版を取り付け、ガスバリアコート剤2(略称:コート剤2)を、上記無機酸化物層上に、膜厚0.5μmで印刷し、さらにウレタン系グラビア白インキ(略称:白、東京インキ(株)製)を厚み1.2μmで印刷し、ガスバリア性グラビア印刷物を得た。次に、この印刷物上に、タケラックA-525/タケネートA-52(略称:エステルDL、三井化学(株)製)をA-Bar OSP-10(オーエスジーシステムプロダクツ(株)製)で塗工して、厚み60μmの無延伸ポリプロピレンフィルムであるトレファンNO ZK207(略称:レトCP、東レフィルム加工(株)製)を貼り合わせた後、40℃で72時間エージングを行って、基材フィルム(NY15)/無機酸化物層(アルミナ)/ガスバリア層(コート剤2)/印刷インキ層(白)/接着剤層(エステルDL)/ヒートシール層(レトCP)のガスバリア性グラビア積層体13を得た。
【0068】
[ガスバリア性グラビア積層体14の作製]
(実施例14)
厚み12μmのPETフィルムを厚み15μmのナイロンフィルムであるボニールRX(略称:NY15、興人フィルム&ケミカルズ(株)製)および接着剤タケラックA-525/タケネートA-52(略称:エステルDL、三井化学(株)製)をタケラックA-969V/タケネートA-5(略称:エーテルDL、三井化学(株)製)に代えて、ガスバリア層の膜厚0.6μmとし、40μmの直鎖状低密度ポリエチレンフィルムであるTUX-FCD(略称:LLDPE、三井化学東セロ(株)製)を貼り合わせた後、40℃で24時間エージングを行って、基材フィルム(NY15)/無機酸化物層(アルミナ)/ガスバリア層(コート剤2)/印刷インキ層(白)/接着剤層(エーテルDL)/ヒートシール層(LLDPE)のガスバリア性グラビア積層体14を得た。
【0069】
[ガスバリア性グラビア積層体15の作製]
(実施例15)
ガスバリアコート剤1をガスバリアコート剤2およびウレタン系グラビア白インキをウレタン系グラビア藍インキ(略称:藍、東京インキ(株)製)に代えて、ガスバリア層の膜厚0.5μmとし、ガスバリア性グラビア印刷物を得た。次に、この印刷物上に、タケラックA-525/タケネートA-52(略称:エステルDL、三井化学(株)製)をA-Bar OSP-10(オーエスジーシステムプロダクツ(株)製)で塗工して、厚み60μmの無延伸ポリプロピレンフィルムであるトレファンNO ZK207(略称:レトCP、東レフィルム加工(株)製)を貼り合わせた後、40℃で72時間エージングを行って、基材フィルム(PET12)/無機酸化物層(アルミナ)/ガスバリア層(コート剤2)/印刷インキ層(藍)/接着剤層(エステルDL)/ヒートシール層(レトCP)のガスバリア性グラビア積層体15を得た。
【0070】
[ガスバリア性グラビア積層体16の作製]
(実施例16)
印刷インキ層を、ウレタン系グラビア藍インキおよびウレタン系グラビア白インキを使用して作製した以外は、ガスバリア性グラビア積層体15と同様にして、ガスバリア性グラビア積層体16を得た。
【0071】
[ガスバリア性グラビア積層体17の作製]
(実施例17)
厚み12μmのPETフィルム(ルミラーP60、略称:PET12、東レ(株)製)上に、誘導加熱方式を用いた真空蒸着装置により、酸化アルミニウムからなる無機酸化物層(略称:アルミナ)を形成した。次に、グラビア校正機GRAVO-PROOF(品番:CM-W、(株)日商グラビア製)にスタイラス130度の70L彫刻ヘリオ版を取り付け、ガスバリアコート剤2(略称:コート剤2)を、上記無機酸化物層上に、膜厚0.5μmで印刷し、さらにウレタン系グラビア白インキ(略称:白、東京インキ(株)製)を厚み1.2μmで印刷し、ガスバリア性グラビア印刷物を得た。次に、この印刷物上に、タケラックA-969V/タケネートA-5(略称:エーテルDL、三井化学(株)製)をA-Bar OSP-10(オーエスジーシステムプロダクツ(株)製)で塗工して、厚み40μmの直鎖状低密度ポリエチレンフィルムであるTUX-FCD(略称:LLDPE、三井化学東セロ(株)製)を貼り合わせた後、40℃で24時間エージングを行って、基材フィルム(PET12)/無機酸化物層(アルミナ)/ガスバリア層(コート剤2)/印刷インキ層(白)/接着剤層(エーテルDL)/ヒートシール層(LLDPE)のガスバリア性グラビア積層体17を得た。
【0072】
[ガスバリア性グラビア積層体18の作製]
(比較例1)
厚み15μmのナイロンフィルムのボニールRX(略称:NY15、興人フィルム&ケミカルズ(株)製)上に、アンカーコート剤1をグラビアコート法により塗布して、アンカーコート層を形成し、該アンカーコート層上に誘導加熱方式を用いた真空蒸着装置により、酸化アルミニウムからなる無機酸化物層(略称:アルミナ)を形成した。次に、グラビア校正機GRAVO-PROOF(品番:CM-W、(株)日商グラビア製)にスタイラス130度の70L彫刻ヘリオ版を取り付け、ガスバリアコート剤9(略称:コート剤9)を、上記無機酸化物層上に、膜厚0.5μmで印刷し、さらにウレタン系グラビア白インキ(略称:白、東京インキ(株)製)を厚み1.1μmで印刷し、ガスバリア性グラビア印刷物を得た。次に、この印刷物上に、タケラックA-515/タケネートA-50(略称:ウレタンDL、三井化学(株)製)をA-Bar OSP-10(オーエスジーシステムプロダクツ(株)製)で塗工して、厚み30μmの無延伸ポリプロピレンフィルムであるトーセロCP GLC(略称:CPP、三井化学東セロ(株)製)を貼り合わせた後、40℃で72時間エージングを行って、基材フィルム(NY15)/アンカーコート層(アンカーコート剤1)/無機酸化物層(アルミナ)/ガスバリア層(コート剤9)/印刷インキ層(白)/接着剤層(ウレタンDL)/ヒートシール層(LLDPE)のガスバリア性グラビア積層体18を得た。
【0073】
[ガスバリア性グラビア積層体19の作製]
(比較例2)
ガスバリアコート剤1をガスバリアコート剤9および厚み12μmのPETフィルムを厚み15μmのナイロンフィルムであるボニールRX(略称:NY15、興人フィルム&ケミカルズ(株)製)に代えて、上記ガスバリア性積層体1と同様の方法により、ガスバリア層の膜厚0.5μmとし、基材フィルム(NY15)/無機酸化物層(アルミナ)/ガスバリア層(コート剤9)/印刷インキ層(白)/接着剤層(エステルDL)/ヒートシール層(レトCP)のガスバリア性グラビア積層体19を得た。
【0074】
[ガスバリア性グラビア積層体20の作製]
(比較例3)
さらに、接着剤タケラックA-525/タケネートA-52(略称:エステルDL、三井化学(株)製)をA-969V/タケネートA-5(略称:エーテルDL、三井化学(株)製)に代えて、ガスバリア層の膜厚0.6μmとし、40μmの直鎖状低密度ポリエチレンフィルムであるTUX-FCD(略称:LLDPE、三井化学東セロ(株)製)を貼り合わせた後、40℃で24時間エージングを行って、基材フィルム(NY15)/無機酸化物層(アルミナ)/ガスバリア層(コート剤9)/印刷インキ層(白)/接着剤層(エーテルDL)/ヒートシール層(LLDPE)のガスバリア性グラビア積層体20を得た。
【0075】
[ガスバリア性グラビア積層体21の作製]
(参考例1)
厚み15μmのナイロンフィルムのボニールRX(略称:NY15、興人フィルム&ケミカルズ(株)製)上に、アンカーコート剤1をグラビアコート法により塗布して、アンカーコート層を形成し、該アンカーコート層上に誘導加熱方式を用いた真空蒸着装置により、酸化アルミニウムからなる無機酸化物層(略称:アルミナ)を形成した。次に、グラビア校正機GRAVO-PROOF(品番:CM-W、(株)日商グラビア製)にスタイラス130度の70L彫刻ヘリオ版を取り付け、ガスバリアコート剤9(略称:コート剤9)を、上記無機酸化物層上に、膜厚0.5μmで印刷し、ガスバリア性グラビア印刷物を得た。次に、この印刷物上に、タケラックA-515/タケネートA-50(略称:ウレタンDL、三井化学(株)製)をA-Bar OSP-10(オーエスジーシステムプロダクツ(株)製)で塗工して、厚み40μmの直鎖状低密度ポリエチレンフィルムであるTUX-FCD(略称:LLDPE、三井化学東セロ(株)製)を貼り合わせた後、40℃で72時間エージングを行って、基材フィルム(NY15)/アンカーコート層(アンカーコート剤1)/無機酸化物層(アルミナ)/ガスバリア層(コート剤9)/接着剤層(ウレタンDL)/ヒートシール層(LLDPE)のガスバリア性グラビア積層体21を得た。
【0076】
実施例1~17および比較例1~3ならびに参考例1のガスバリア性グラビア積層体について、インキ密着性(初期密着)、インキ密着性(経時密着)およびラミネート強度を評価し、表2および表3に示した。
【0077】
<インキ密着性(初期密着)>
ガスバリア性グラビア印刷物作製直後の印刷インキ層面に粘着テープ(18mm、ニチバン(株)製)を貼り付け、90度の角度で急速に剥離し、剥離した印刷インキ層面の剥離状態について、目視で観察し、インキ密着性を評価した。印刷インキ層面が剥離しないものをインキ密着性が良好と判断した。インキ密着性について、○:まったく剥がれない、×:少しでも剥がれる、の2段階で評価した。なお、参考例1の積層体については、印刷インキ層を作製しないため、インキ密着性評価は行わなかった。表中では、「-」と記載した。
【0078】
<インキ密着性(経時密着)>
ガスバリア性グラビア印刷物作製後、25℃恒温槽内に24時間放置した後の印刷インキ層面に粘着テープ(18mm、ニチバン(株)製)を貼り付け、90度の角度で急速に剥離し、剥離した印刷インキ層面の剥離状態について、目視で観察し、インキ密着性を評価した。印刷インキ層面が剥離しないものをインキ密着性が良好と判断した。インキ密着性について、○:まったく剥がれない、×:少しでも剥がれる、の2段階で評価した。
【0079】
<ラミネート強度>
各ガスバリア性グラビア積層体を15mm幅の短冊状にして、試験片とし、この試験片を5つ用意し、万能型引張試験機(RTE-1210、(株)オリエンテック製)にて、T型剥離、引張速度300mm/分にて、引っ張り、それぞれの試験片のラミネート強度を5回測定し、その平均値を算出した。ラミネート強度が大きいほど、ラミネート性が良好と判断した。ラミネート強度について、〇:200g以上、×:200g未満、の2段階で評価した。
【0080】
<ガスバリア性試験>
各ガスバリア性グラビア積層体について、日本工業規格JIS K7126-1987「プラスチックフィルム及びシートの気体透過度試験方法」で規定されているB法(等圧法)に従って酸素透過度を測定した。この測定は、温度30℃、相対湿度70%の環境中にて、Modern Control社製のOxtran2/22を使用した。表中には記載しないが、実施例1~17および比較例1~3ならびに参考例1の各ガスバリア性グラビア積層体について、同等の酸素透過度を有していることが確認できた。
【0081】
[包装体の作製]
ガスバリア性積層体1の2枚を3kgf/cm、180℃、1秒の条件にてヒートシールにより接着させ、開口部を有する15cm×10cmの包装体1を得た。
同様に、包装体2~21を得た。なお、ガスバリア性グラビア積層体17は、スナック包装袋用途であるため、下記耐熱水適性の評価は行わなかった。表中では「-」と記載した。
【0082】
実施例1~16および比較例1~3ならびに参考例1の包装体について、レトルト後浮きおよび熱水処理後ラミネート強度を評価し、表2および表3に示した。なお、実施例10、実施例14および比較例3については、ボイル後浮きを評価した。
【0083】
<レトルト後浮き>
各包装体に、内容物として、サラダ油/ケチャップ/食酢=1/1/1の混合物もしくは水を充填後、前記開口部を前記条件と同様にしてヒートシールにより密封し、包装体を作成した。この包装体を120℃で40分間、温水貯湯式でレトルト処理して、包装体の外観を目視にて観察し、評価した。包装体の外観について、印刷インキ層とガスバリア層の剥離による膨らみが確認できるかについて評価した。膨らみが確認できないものをレトルト後浮きが良好であると判断した。レトルト後浮きについて、〇:まったく変化ない、×:膨らみが確認できる、の2段階で評価した。
【0084】
<ボイル後浮き>
各包装体に、内容物として、サラダ油/ケチャップ/食酢=1/1/1の混合物もしくは水を充填後、前記開口部を前記条件と同様にしてヒートシールにより密封し、包装体を作成した。この包装体を95℃で30分間、ボイル処理して、包装体の外観を目視にて観察し、評価した。包装体の外観について、印刷インキ層とガスバリア層の剥離による膨らみが確認できるかについて評価した。膨らみが確認できないものをボイル後浮きが良好であると判断した。レトルト後浮きについて、〇:まったく変化ない、×:膨らみが確認できる、の2段階で評価した。
【0085】
<熱水処理後ラミネート強度>
上記レトルト後あるいはボイル後の各包装体の一部を15mm幅の短冊状にして、試験片とし、この試験片を5つ用意し、万能型引張試験機(RTE-1210、(株)オリエンテック製)にて、T型剥離、引張速度300mm/分にて、引っ張り、それぞれの試験片のラミネート強度を5回測定し、その平均値を算出した。ラミネート強度が大きいほど、ラミネート性が良好と判断した。ラミネート強度について、〇:200g以上、×:200g未満、の2段階で評価した。
【0086】
【表2】
【0087】
【表3】
【0088】
表2および表3によると、実施例1~17のガスバリア性グラビア積層体は、インキ密着性およびラミネート強度について、優れることが明確である。また、包装体は、レトルト後浮きまたはボイル後浮きおよび熱水処理後ラミネート強度が優れることが明確である。
特許文献2に類似のガスバリア性積層体(参考例1)については、ラミネート強度および耐熱水適性は優れることが明確であるが、参考例1の積層体に印刷インキ層を含む積層体とした比較例1については、インキ密着性およびラミネート強度ならびに耐熱水適性が劣ることが明確である。さらに、比較例1の積層体からアンカーコート層を抜いた本発明と同じ構成の積層体(比較例2および3)についても、インキ密着性およびラミネート強度ならびに耐熱水適性が劣ることが明確である。
また、本発明のガスバリア性積層体のガスバリア性については、従来品(参考例1)の積層体と同等の性能を有することが明確である。