(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023076333
(43)【公開日】2023-06-01
(54)【発明の名称】狭隘構造物スライド切削工
(51)【国際特許分類】
E01D 22/00 20060101AFI20230525BHJP
【FI】
E01D22/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021189696
(22)【出願日】2021-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】306033025
【氏名又は名称】日本鉄塔工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000210838
【氏名又は名称】中井商工株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】314007957
【氏名又は名称】株式会社A’i
(74)【代理人】
【識別番号】100067448
【弁理士】
【氏名又は名称】下坂 スミ子
(74)【代理人】
【識別番号】100221752
【弁理士】
【氏名又は名称】古川 雅与
(74)【代理人】
【識別番号】100213746
【弁理士】
【氏名又は名称】川成 渉
(72)【発明者】
【氏名】香原 一道
(72)【発明者】
【氏名】藤田 和也
(72)【発明者】
【氏名】新屋 吉男
【テーマコード(参考)】
2D059
【Fターム(参考)】
2D059BB39
2D059GG39
(57)【要約】
【課題】橋台・橋脚上のコンクリート製の橋梁間に設けられる狭い遊間において、施工前に水養生や防火整備を必要とせず、発泡プラスティックの飛散を最小限に抑えながら、安全かつ確実に構成部材間に充填される発泡プラスティックを切削する装置およびそれを用いる方法を提供すること。
【解決手段】コンクリート構造物のコンクリート部材間に充填された総体的に板状の目地材Mを除去するための切削装置1であって、目地材Mの外方に近接した位置に総体的に目地材Mの縦方向へ延びるように配置される縦軸レール11と、縦軸レールに上下に移動自在に一端を連結され、かつ、総体的に目地材Mの横方向へ縦軸レール11から延びるように配置される横軸レール12と、横軸レール12上を横方向へ移動自在なコア機本体13と、コア機本体13により回動されて目地材Mを切削除去するための、外周面上にブラシ毛2を備えた切削部材14と、コア機本体13と切削部材14との間に介在される延長部材15とを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート構造物のコンクリート部材間に充填された総体的に板状の目地材を除去するための切削装置であって、
目地材の外方に近接した位置に総体的に目地材の縦方向へ延びるように配置される縦軸レールと、
縦軸レールに上下に移動自在に一端を連結され、かつ、総体的に目地材の横方向へ縦軸レールから延びるように配置される横軸レールと、
横軸レール上を横方向へ移動自在なコア機本体と、
コア機本体により回動されて目地材を切削除去するための、外周面上にブラシ毛を備えた切削部材と、
コア機本体と切削部材との間に介在される延長部材と
を含む、切削装置。
【請求項2】
前記ブラシ毛は回転方向と逆方向へ切削部材の外周円の接線に対して15~25度の角度をなすように設けられる、請求項1に記載の切削装置。
【請求項3】
前記縦軸レールと前記横軸レールとを連結し、周方向に15~25度傾動する連結治具を含む、請求項1または2に記載の切削装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の切削装置を用意し、
除去しようする目地材の外方に近接した位置に切削装置の縦軸レールが総体的に目地材の縦方向へ延びるように切削装置を配置し、
コア機本体を稼働させて切削部材を回動させ、コア機本体を横軸レールに沿って横方向へ移動させて、切削部材を目地材の一方の側部から目地材内に穿入させ、
コア機本体を縦軸レールに沿って縦方向へ移動させることにより、横方向に切削移動した切削部材を縦方向へ移動させて、目地材を縦方向に切削除去する、
目地材の切削除去方法。
【請求項5】
前記目地材の一方の側部から切削部材を目地材内に穿入させる工程を行う前に、先行孔を切削するための切削部材をコア機本体に取り付け、コア機本体を稼働させて前記先行孔用切削部材を回動させ、コア機本体を横軸レールに沿って横方向へ移動させ、目地材の一方の側部から目地材内に先行孔を形成することをさらに含む、請求項4に記載の切削除去方法。
【請求項6】
請求項1から3のいずれかに記載の切削装置を用意し、
除去しようする目地材の外方に近接した位置に切削装置の縦軸レールが総体的に目地材の縦方向へ延びるように切削装置を配置し、
先行孔を切削するための切削部材をコア機本体に取り付け、コア機本体を稼働させて前記先行孔用切削部材を回動させ、コア機本体を横軸レールに沿って横方向へ移動させ、目地材の一方の側部から目地材内に先行孔を形成し、
コア機本体に切削部材および延長部材を取付け、前記先行孔の入口から前記先行孔の最奥部まで、切削部材および延長部材を穿入させ、
コア機本体を稼働させて切削部材および延長部材を回動させ、
コア機本体を縦軸レールに沿って縦方向へ移動させることにより、切削部材および延長部材を縦方向へ移動させて、目地材を縦方向に切削除去する、
目地材の切削除去方法。
【請求項7】
前記目地材の一方の側部からの目地材の切削除去を行ったのち、目地材の他方の側部からの目地材の切削除去を行う、請求項4から6のいずれかに記載の切削除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコンクリート構造物における構造物間、特に狭い目地及び遊間に充填又は設置されている発泡プラスティック又は間詰材を除去および撤去するための装置およびその方法に関する。
本発明の説明において、「縦」および「横」の方向を示す用語は、削除しようとする目地材の外部に露呈した端面が延びる方向を「縦」、この伸延方向に直交または交差する方向を「横」として説明する。そのため、例えば、目地材端面が水平方向に延びる場合であっても、端面方向を縦として表現している点に留意されたい。
【背景技術】
【0002】
周知の如く、コンクリート構造物の目地及び遊間を形成するために発泡プラスチィック材等を埋め殺し型枠として設置しコンクリートを打設する工法が行われている。例えば、コンクリート構造物の硬化時の乾燥収縮ひび割れ防止等又は橋梁構造物の橋台と桁間および桁と桁間の桁温度収縮および桁たわみ等を吸収するために、建設時に遊間形成が行われている。コンクリート製の橋梁桁間に設けられた目地材として発泡プラスティック又は間詰材を設置することで、温度変化等による必要な遊間を確保することで橋梁本体に変位応力が生じるのを防止している。コンクリート構造物の目地及び橋梁上部構造物遊間から雨水等の漏水が発生し本体構造物の漏水による損傷の起因因子となっているため止水機能を有した装置の設置が必要となる。止水機能を有した装置の設置に伴い上述した発泡プラスチィック材等の埋め殺し型枠を除去および撤去する必要があるが、とりわけ上述した橋台・橋脚上に充填される発泡プラスティックの除去および撤去作業は橋梁間に設けられた遊間が狭いため、発泡プラスティック等の除去に多大なる負担が強いられていた。
【0003】
このような橋台・橋脚上における発泡プラスティックの除去および撤去は、概して、高圧水を用いた工法が用いられている。しかしながら、高圧水を用いる工法は、埋め殺し型枠等を除去および撤去する際に現場状況によりコンクリート分等が浸透し強度が増された状況になっていることがある。その場合は上述の高圧水だけでは除去および撤去されないことがあり、人力等の別工法を併用して対応するため多大なる負担が強いられていた。除去および撤去された発泡プラスティックが遊間内部に堆積されがちであったため、破砕された発泡プラスティックが遊間内部に堆積されると、高圧水を用いても遊間外部に排出され難くなるため、適時、鍬等の手動工具を用いてかき出し作業を行う必要があり、その度に高圧水による切削作業を中断しなければならなかった。加えて、高圧水による切削作業は環境汚染を防ぐために施工前に水養生を行い、施工後は煩雑な清掃作業を行わなければならなかった。
【0004】
一方、上述した発泡プラスティックの削り残しを除去する手段として、発泡プラスティックが溶解する温度以上の温度まで加熱するヒーターを備えた孔拡張装置により、上記発泡プラスティックを溶解させる工法等が提案されている(特許文献1参照)。しかしながら、上記方法は施工前に防火整備を整え、施工後はその撤去を行わなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は橋台・橋脚上のコンクリート製の橋梁間に設けられる狭い遊間において、施工前に水養生や防火整備を必要とせず、目地材として充填される発泡プラスティックの飛散を最小限に抑えながら、安全かつ確実に構成部材間の目地材を切削する装置およびそれを用いる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る切削装置は、コンクリート構造物のコンクリート部材間に充填された総体的に板状の目地材を除去するための切削装置であって、目地材の外方に近接した位置に総体的に目地材の縦方向へ延びるように配置される縦軸レールと、縦軸レールに上下に移動自在に一端を連結され、かつ、総体的に目地材の横方向へ縦軸レールから延びるように配置される横軸レールと、横軸レール上を横方向へ移動自在なコア機本体と、コア機本体により回動されて目地材を切削除去するための、外周面上にブラシ毛を備えた切削部材と、コア機本体と切削部材との間に介在される延長部材とを含むことを特徴とするものである。
【0008】
上記切削装置は、上記ブラシ毛は回転方向と逆方向へ切削部材の外周円の接線に対して15~25度の角度をなすように設けられるのが好ましい。また、上記切削装置は、上記縦軸レールと上記横軸レールとを連結し、周方向に15~25度傾動する連結治具を含んでいてもよい。
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る目地材の切削除去方法は、上記切削装置を用意し、除去しようとする目地材の外方に近接した位置に切削装置の縦軸レールが総体的に目地材の縦方向へ延びるように切削装置を配置し、コア機本体を稼働させて切削部材を回動させ、コア機本体を横軸レールに沿って横方向へ移動させて、切削部材を目地材の一方の側部から目地材内に穿入させ、コア機本体を縦軸レールに沿って縦方向へ移動させることにより、横方向に切削移動した切削部材を縦方向へ移動させて、目地材を縦方向に切削除去することを特徴とするものである。
【0010】
上記切削除去方法は、前記目地材の一方の側部から切削部材を目地材内に穿入させる工程を行う前に、先行孔を切削するための切削部材をコア機本体に取り付け、コア機本体を稼働させて上記先行孔用切削部材を回動させ、コア機本体を横軸レールに沿って横方向へ移動させ、目地材の一方の側部から目地材内に先行孔を形成することをさらに含んでいてもよい。
【0011】
また、上記切削除去方法は、除去しようする目地材の外方に近接した位置に、切削装置の縦軸レールが総体的に目地材の縦方向へ延びるように切削装置を配置し、先行孔を切削するための切削部材をコア機本体に取り付け、コア機本体を稼働させて上記先行孔用切削部材を回動させ、コア機本体を横軸レールに沿って横方向へ移動させ、目地材の一方の側部から目地材内に先行孔を形成し、先行孔用切削部材を切削部材および延長部材と交換し、上記先行孔の入口から上記先行孔の最奥部まで切削部材および延長部材を穿入させ、コア機本体を稼働させて切削部材および延長部材を回動させ、コア機本体を縦軸レールに沿って縦方向へ移動させて切削部材および延長部材を縦方向へ移動させることにより目地材を縦方向に切削除去することを特徴としてもよい。
【0012】
また、上記切削除去方法は、前記目地材の一方の側部からの目地材の切削除去を行ったのち、目地材の他方の側部からの目地材の切削除去を行ってもよい。
【発明の効果】
【0013】
上記構成による本発明の一態様に係る切削装置は、切削部材の外周面に設けられるブラシ毛が目地材として充填される発泡プラスティックを微細な粒子に粉砕し、コア機本体を横軸レール及び縦軸レールに沿ってそれぞれ移動させることで、上記遊間の目地材を削り残しがないように切削することが可能である。また、本発明に係る切削装置およびそれを使用する切削除去方法は高圧水を用いることがないため、水の跳ね返りによる粉砕した発泡プラスティックの飛散を大幅に防ぐことが可能である。そして、水養生も不要であるため、施工日数の大幅な短縮が可能となる。
【0014】
上記ブラシ毛を回転方向と逆方向へ切削部材の外周円の接線に対して15~20度の角度をなすように設けることで、目地材に穿入され回動される上記ブラシ毛が暴れることなく、またブラシ毛の損耗を抑えることができる。また上記切削装置は、前記縦軸レールと前記横軸レールとを連結し、周方向に15~25度傾動する連結治具を備えることで、コア機本体が昇降する縦軸レールにおける上端部・下端部における切削部材の切削領域を越えて、切削を行うことが可能となると共に、遊間における目地材の配向に傾きが生じていても適宜に対応することができる。
【0015】
上記切削除去方法は、前記目地材の一方の側部から切削部材を目地材内に穿入させる工程を行う前に、目地材に先行孔を穿つことで、直線上に切削を行う軌道を確保し、切削部材の重さによる回動のブレがなくなり、安定した切削を行うことが可能となる。安定した切削を確実に行えることにより、切削部材および/または延長部材の外周面に設けられたブラシ毛の損耗を抑制することが可能となる。
【0016】
また、上記切削除去方法は、先行孔の入口から先行孔の最奥部まで切削部材および延長部材を穿入させ、コア機本体を縦軸レールに沿って移動することにより、上記遊間の目地材を効率良く切削することが可能である。
【0017】
また、上記切削除去方法は、上記目地材の一方の側部からの目地材の切削除去を行ったのち、目地材の他方の側部からの目地材の切削除去を行うことで、上記遊間の長さに拘わらず、遊間の目地材を切削除去することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】本発明の実施形態に係る1対のブラシ毛の側毛角度を示す模式図
【
図3】本発明の実施形態に係るスパイラル形状に取り付けられたブラシ毛を有する中間チューブの正面図(A1)および側面図(A2)並びにロッドの正面図(B1)および側面図(B2)
【
図4】本発明の実施形態に係る連結治具が取り付けられた切削装置の平面図および側面図
【
図5】本発明の実施形態に係る切削装置を用いた目地材の切削除去方法を示す側面断面図
【
図6】本発明の実施形態に係る切削装置を用いた目地材の先行孔形成方法を示す側面断面図
【
図7】本発明の実施形態に係る切削装置を用いた目地材の切削除去方法の変形例を示す側断面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る切削装置およびその使用方法について、図面を参照しながら説明する。なお、切削される目地材はコンクリート構造物の遊間に充填されている発泡プラスティックであり、上記構造物は橋台・橋脚を問わない。
【0020】
本発明の実施例による切削装置1は、
図1に示すように、縦軸レール11、横軸レール12、コア機本体13、切削部材14および延長部材15により構成される。
【0021】
縦軸レール11は、縦方向に延伸する長尺状棒状の金属性の棒状部材であって、その長手方向の長さはコンクリート構造物の遊間の幅方向の長さよりも長い。縦軸レール11は一端がベースに連結し、他端がジャッキと連結する。縦軸レール11のレール上を上下方向に移動自在な連結治具16が取り付けられる。
【0022】
横軸レール12は、横方向に延伸する長尺状棒状の金属性の棒状部材であって、
図1に示すように、横軸レール12は、縦方向に延伸する縦軸レール11と交差する方向に延びるようにその一端を連結治具16を介して接続される。
【0023】
コア機本体13は、横軸レール12に移動自在に取り付けられ、外部電源またはバッテリー等で駆動し、延長部材15を介して切削部材14を時計回り方向または逆時計回り方向に回動させる。なお、ここで言うコア機本体13は一般的なコア機であって、所望の回動能力を満たすものであれば特段の限定はない。
【0024】
切削部材14は、横方向筒状の金属製部材であって、その外周面上にブラシ毛2を備えており、長手方向の長さは延長部材15よりも短い。また、切削部材14の径は狭い目地又は遊間内において回転自在な状態で維持される大きさを有する。切削部材14はコア機本体13に直接或いは延長部材15を介して接続され、コア機本体13が稼働することにより、その回動方向に合せて回動する。また、切削部材14は、チューブ形状のもの又はロッド形状のものであっても良く、ビットおよび中間チューブ又はロッドとを一体化させることで形成することも可能である。
【0025】
延長部材15は、横方向に延伸する筒状または棒状の金属製の部材であって、その長手方向の長さは、概して1000mmから3000mmの間で、所望の長さに合せて種々選択が可能である。また、延長部材15の径は狭い目地又は遊間内において回転自在な状態で維持される大きさを有する。
図1に示すように、延長部材15はその一端がコア機本体13と接続し、他端が切削部材14と接続する。
【0026】
延長部材15は、チューブ形状またはロッド形状であっても良く、その外周面上にブラシ毛2を備えていても良い。チューブ形状の場合、ロッド形状のものに比して重量が軽いため、コア機本体13に接続し、回動させることで直進性を保持したまま目地材を切削することができる。これ対し、ロッド形状のものはチューブ形状のものに比して重量が重いため、目地材に回転しながら当接することになる切削部材14が暴れることなしに安定した切削を行うことができる。なお、ここで言う延長部材はその一例であって、所望の直進性または切削力を満たすものであれば特段の限定はない。
【0027】
延長部材15は、アダプタによって延長部材15並びに延長部材15および/または切削部材14とを連結されても良い。アダプタの径は狭い目地又は遊間内において、切削部材14および延長部材15を連結した状態で回動自在な状態を維持する大きさを有する。またアダプタは、両端が雄ネジ形状または雌ネジ形状に形成されたものであっても良い。
【0028】
図2で示されるように、切削部材14および/または延長部材15に設けられるブラシ毛2は、コア機本体13の回動方向と逆方向へ切削部材14および/または延長部材15の外周円の接線に対して15~25度の角度θで溶接により設けられる。ブラシ毛2の角度θが15度以下のとき(
図2A参照)、ブラシ毛2と目地材Mとの接触面積が高くないため、結果として目地材Mを効率的に切削できない。また、ブラシ毛2の角度θが25度以上のとき(
図2B参照)、ブラシ毛2が目地材Mと接触したとき、ブラシ毛2の脱落が多く、ブラシ毛2の摩耗効率が悪い。そして、ブラシ毛2の角度θが19度のとき(
図2C参照)、ブラシ毛2と目地材Mとの切削効率が良く、かつ、ブラシ毛2の摩耗を抑えることができる。
【0029】
また、
図2で示されるように、ブラシ毛2は切削部材14および/または延長部材15の外周面に対して、対角線上に位置する1対のブラシ毛2の形態で溶接によりカシメ加工され設けても良い。ブラシ毛2を切削部材14および/または延長部材15の対角線上に1対設けることで、ブラシ毛2の摩耗を最低限に抑え、かつ切削効率を維持することが可能である。
【0030】
図3に示されるように、切削部材14の先端から40mmから50mm程度間隔を空け、切削部材14の外周面上の2点からスパイラル形状をなすようにブラシ毛2が取り付けられても良い。切削部材14の先端部に目地材を噛ませ、そしてブラシ毛2が切削部材14の外周面上の少なくとも1点以上を起点とするスパイラル形状に取り付けることで、目地材Mとブラシ毛2の当接面積を増やした安定した切削を可能とする。
【0031】
ブラシ毛2の素材はナイロンまたは鉄であっても良く、ステンレスが最も望ましい。ブラシ毛2の素材がナイロンのとき、摩擦に対する熱耐性が低いため容易に変性変形を来すため、切削性能の低下を引き起こし易く、直進性の確保も難しい。ブラシ毛2の素材が鉄のとき、摩擦に対する熱耐性が比較的高く変形変性しにくいが、目地材に連接するコンクリート等に接触した際にカシメ部分からの脱落が多く、ブラシ毛のライフ管理が困難である。これに対し、ブラシ毛2がステンレスのとき、熱耐性が高く変性変形も少なく、コンクリート等に接触してもブラシ毛の脱落が少ない。
【0032】
図4に示されるように、連結治具16は、縦方向に延伸する縦軸レール11と横方向に延伸する横軸レール12とを直交方向に連結し、かつ、横軸レール12に対して周方向に15~25度傾動する。上記連結治具は、例えば歯車機構により構成される締緩装置であっても良く、施工者が上記連結治具を締緩することで適宜角度を調整することが可能である。
【0033】
図1~
図7を参照しながら本発明の切削装置1を用いて目地材を除去および撤去する方法について説明する。
【0034】
縦軸レール11をコンクリート構造物の上面Jに、目地材Mの外方に近接した位置に目地材Mの露呈端に沿うように設置する。縦軸レール11はアンカーを用いて固定されたベースに連接してもよいし、コンクリート構造物の上面Jに直接設置してもよい。縦軸レール11とコンクリート構造物の下面Kとの間はジャッキにより自在幅に支持される。縦軸レール11に移動自在に装着された連結治具16に一端を連結された横軸レール12を、目地材Mの横方向(面方向)へ縦軸レール11から延びるように設置する。横軸レール12上を横方向へ移動自在なコア機本体13を横軸レール12に装着する。切削部材14とコア機本体13との間に延長部材15を接続する。延長部材15は、切削部材14に設けられるブラシ毛2と同様なブラシ毛を、その外周面上に備えていても良い。その場合、延長部材15に設けられるブラシ毛はその先端の回転半径が切削部材14のブラシ毛14の先端の回転半径よりも大きくなるように作成するのが好ましい。
【0035】
図5に示されるように、設置したコア機本体13を稼働させて、切削部材14を回動させる。コア機本体1を横軸レール12に沿って図の右方向へ移動させ、切削部材14を目地材Mの一方の側部から目地材M内に穿入させたのち、コア機本体13を縦軸レール11に沿って図の下方向へ移動させることにより、横方向に切削移動した切削部材14を下方へ移動させ、目地材Mを切削除去する。切削除去したのち、コア機本体13の稼動を停止し、コア機本体13を横軸レール12に沿って左方向に移動する。切削部材14が下方に移動した状態で、コア機本体13と延長部材15の接続を解除し、コア機本体13と延長部材15を、他の延長部材15を介して接続する。次いで、コア機本体13を縦軸レール11に沿って上方向に移動させ、コア機本体13の稼働を開始させた位置で待機する。
ここにおいて、目地材Mを上端側から下方に向かって切削除去するように説明したが、下端側から上方へと切削除去したり、中間位置から上下に切削除去するように遂行し得ることは、当業者にとって容易に理解されよう。
【0036】
上述の目地材Mの切削除去方法においては、切削部材14は、ブラシ毛2が摩耗を抑えるために、切削部材14の外周面の対角線上に1対設けられているものを用いることが望ましい。また、延長部材15は、チューブ形状のものに比して重量が重いロッド形状のものを用いることが望ましい。
【0037】
図6を参照しながら本発明の別の実施形態である切削装置1を用いた目地材Mの切削除去方法について詳細に説明する。
【0038】
前述した目地材Mの一方の側部から切削部材14を目地材M内に穿入させる工程を行う前に、切削部材14を、延長部材15を介してコア機本体13に取り付け、コア機本体13を稼働させて切削部材14を回動させる。コア機本体13を横軸レール12に沿って右方向へ移動させ、目地材Mの一方の側部から目地材内に先行孔Sを形成する。先行孔Sが所望の長さに達しない場合、コア機本体13の稼動を停止し、コア機本体13を横軸レール12に沿って左方向に移動させ、コア機本体1と延長部材15の接続を解除する。コア機本体13と切削部材14を、他のより長い延長部材15を介して接続し、再びコア機本体13を稼働させ、目地材M内に所望の長さの先行孔Sを形成する。
【0039】
上述の先行孔Sを穿孔する工程において、この先行孔Sを穿孔する切削部材14は、安定した切削が行えるように、ブラシ毛2が切削部材14の外周面から少なくとも1点以上スパイラル形状をなすように取り付けられるものを用いることが望ましい。また、延長部材15には、ロッド形状のものに比して重量が軽いチューブ形状のものを用いることが望ましい。
【0040】
また、本工法について
図7に示される変形例を説明する。上述の目地材M内に所望の長さの先行孔Sを形成した後、コア機本体13に接続される外周面にブラシ毛2が溶接される切削部材14および延長部材15を先行孔Sの入口から最奥部まで穿入させる。その後、設置したコア機本体13を稼働させて、切削部材14および延長部材15を回動させ、コア機本体13を縦軸レール11に沿って下方向へ移動させることにより、切削部材14および延長部材15が回動しながら下方へ移動して目地材Mを切削除去する。本工法における切削部材14および延長部材15には、ロッド形状のものを用いることが好ましい。この工法によれば、先行孔Sの入口から最奥部に掛けて一度に切削除去が可能であり、また切削部材14の自重による垂れ下がりも生じないため、削り残しも生じにくい。
【0041】
切削装置1を目地材Mの一方および他方に用意し、目地材Mの一方の側部から目地材の切削除去を行ったのち、目地材Mの他方の側部からの目地材の切削除去を行う。このような工程を取ることで、前記遊間の長さに拘わらず、遊間内に充填された発泡プラスティック等の目地材の切削除去が可能となる。
【0042】
また、切削除去工程を行うに際し、バキューム(図示せず)により切削した発泡プラスティックを吸い出しながら切削除去作業を行うことで、発泡プラスティックの飛散を大幅に抑制することが可能となる。
【0043】
切削除去工程の終了後、目地材が除去された遊間に所望の幅および長さを有する雨樋材(図示せず)が設置される。なお、この雨樋材は一般的な雨樋材であり、所望の幅および長さを満たすものであれば特段の限定はない。
【0044】
1 切削装置
11 縦軸レール
12 横軸レール
13 コア機本体
14 切削部材
15 延長部材
16 連結治具
2 ブラシ毛
M 目地材
J コンクリート構造物の上面
K コンクリート構造物の下面
S 先行孔