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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023076338
(43)【公開日】2023-06-01
(54)【発明の名称】ガス検出器
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/00 20060101AFI20230525BHJP
【FI】
G01N1/00 101S
G01N1/00 101Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021189701
(22)【出願日】2021-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】000250421
【氏名又は名称】理研計器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100153497
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 信男
(72)【発明者】
【氏名】河原井 英樹
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 周
【テーマコード(参考)】
2G052
【Fターム(参考)】
2G052AD02
2G052AD22
2G052AD42
2G052CA04
2G052CA12
2G052HA15
2G052HB08
2G052HC28
(57)【要約】      (修正有)
【課題】一の共通のガス導入口から分岐した複数の流路を有するガス検出器であっても、流路ごとにセンサのガス校正を行うことができるガス検出器を提供すること。
【解決手段】1以上のセンサが介設された複数の流路と、一のガス導入口12に一端側で接続するとともに他方側では2以上に分岐する分岐流路53と、校正ガスが流入する校正ガス流路と、分岐流路及び校正ガス流路が形成された流路形成部とを備えたガス検出装置1であって、流路形成部が、複数の流路と分岐流路とを接続する状態と校正ガス流路と前記複数の流路のうち一の流路とを切り替え可能であるように、流路形成部が構成されたこと。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上のセンサが介設された複数の流路と、
一のガス導入口に一端側で接続するとともに他方側では2以上に分岐する分岐流路と、
校正ガスが流入する校正ガス流路と、
前記分岐流路及び前記校正ガス流路が形成された流路形成部とを備えたガス検出装置であって、
前記流路形成部が、
前記複数の流路と前記分岐流路とを接続する状態と
前記校正ガス流路と前記複数の流路のうち一の流路と接続する状態とを切り替え可能であるように、前記流路形成部が構成されたことを特徴とするガス検出器。
【請求項2】
前記ガス検出器は、ケースを備え、
当該ケース内に前記複数の流路を有し、
前記流路形成部の前記ケースとの接合面には、前記分岐流路の開口と前記校正ガス流路の開口とが形成されており、
前記ケースの前記流路形成部との接合面には、前記複数の流路の開口が形成されており、
前記分岐流路の開口及び前記校正ガス流路の開口と、前記複数の流路の開口との接続を切り替えるように前記流路形成部の開口位置を変更可能であるように前記流路形成部が構成されたことを特徴とする請求項1記載のガス検出器。
【請求項3】
前記複数の流路のうち、
一方の流路には、当該一方の流路に流量調整部が設けられ、
他方の流路には、当該他方の流路に対応する前記分岐流路の、分岐地点より下流側に別の流量調整部が設けられている
ことを特徴とする請求項1又は2記載のガス検出器。
【請求項4】
前記流路形成部に、校正ガス流路に連通する校正ガス流入口が形成された校正ガス用突出部が突設され、
前記ガス検出器は、少なくとも前記校正ガス用突出部を覆うカバーを有し、
前記カバーの内側には、当該カバーを閉めたときに前記校正ガス用突出部に嵌合する嵌合部が形成されていることを特徴とする請求項2又は3記載のガス検出器。
【請求項5】
前記校正ガス用突出部の、通常動作時及び校正動作時の位置を示すサイン部が設けられていることを特徴とする請求項4に記載のガス検出器。
【請求項6】
前記流路形成部は、円盤状の円盤部からなり、前記円盤部をその中心で回転させて開口の位置を変更することで前記接続状態の切り替えを行うことを特徴とする請求項2~5のいずれかに記載のガス検出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス検出器としては、一つのガス検出器で複数種のガスの検出を行うために、複数種類のセンサを有しているものがある。このようなガス検出器として、被測定室に設けられた複数の吸気ライン(流路)を有し、各ラインにはガスセンサ及び流量調整弁が各々介装されているものが知られている(例えば、特許文献1参照)。また、各流路が個別にガス導入口を有さず、一の共通のガス導入口から分岐した複数の流路を有し、複数の流路がそれぞれセンサを有するようなガス検出器も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5-3142109号公報
【特許文献2】特開平4-12608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ガス検出器では、高精度でかつ正確な検出を行うために、定期的に各センサのガス校正を行う。特許文献1に記載のガス検出器では、各センサのガス校正を行う場合、センサが設けられた各流路は、ガス導入口を個別に有しているので、各流路のガス導入口から各センサ用の校正ガスを流入してセンサごとにガス校正を行うことができる。しかしながら、特許文献2に記載のガス検出器のように、各流路が個別にガス導入口を有さず、一の共通のガス導入口から分岐した複数の流路を有し、複数の流路がそれぞれセンサを有するようなガス検出器の場合、一の共通のガス導入口から校正ガスを導入すると、複数の流路に同じ校正ガスが到達してしまう。その結果、各センサは全ての流路のセンサに同じ校正ガスが接触してしまい、好ましくないという問題がある。
【0005】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は一の共通のガス導入口から分岐した複数の流路を有するガス検出器であっても、流路ごとにセンサのガス校正を行うことができるガス検出器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のガス検出器は、1以上のセンサが介設された複数の流路と、一のガス導入口に一端側で接続するとともに他方側では2以上に分岐する分岐流路と、校正ガスが流入する校正ガス流路と、前記分岐流路及び前記校正ガス流路が形成された流路形成部とを備えたガス検出装置であって、前記流路形成部が、前記複数の流路と前記分岐流路とを接続する状態と前記校正ガス流路と前記複数の流路のうち一の流路とを切り替え可能であるように、前記流路形成部が構成されたことを特徴とする。
【0007】
本発明のガス検出器においては、一の共通のガス導入口から分岐した複数の流路を有するガス検出器であるが、前記流路形成部が、前記校正ガス流路と前記複数の流路のうち一の流路とを接続する状態に切り替え可能であるように構成されたことで、ガス校正時には、前記校正ガス流路と前記複数の流路のうち一の流路のみが接続されていることから、一の流路のみに校正ガスを導入することが可能である。
【0008】
前記ガス検出器は、ケースを備え、当該ケース内に前記複数の流路を有し、記流路形成部の前記ケースとの接合面には、前記分岐流路の開口と前記校正ガス流路の開口とが形成されており、前記ケースの前記流路形成部との接合面には、前記複数の流路の開口が形成されており、前記流路形成部の前記開口の位置が前記ケースに対して相対的に変更することで、前記複数の流路の開口と前記分岐流路の開口との接続と、前記複数の流路のうちいずれかの流路の開口と前記校正ガス流路の開口との接続とを切り替えるように構成されたことが好ましい。上述のような一の共通のガス導入口から分岐した複数の流路を有するガス検出器において、一の流路のみに校正ガスを導入できるような構成としては種々考えられるが、前記流路形成部を移動させることで、前記分岐流路の開口及び前記校正ガス流路の開口と、前記複数の流路の開口との接続を切り替えるように前記流路形成部が構成されることで、簡易にガス検出器を構成することが可能である。
【0009】
前記複数の流路のうち、一方の流路には、当該一方の流路に流量調整部が設けられ、他方の流路には、当該他方の流路に対応する前記分岐流路の、分岐地点より下流側に別の流量調整部が設けられていることが好ましい。本発明のガス検出器においては、このように当該一方の流路に流量調整部が設けられ、他方の流路には、当該他方の流路に対応する前記分岐流路の、分岐地点より下流側に別の流量調整部が設けられていることで、たとえ流路の切り替えにおける接続部でガス漏れが発生したことを早期に検出することが可能である。
【0010】
前記流路形成部は、円盤状の円盤部からなり、前記円盤部をその中心で回転させて開口の位置を変更することで前記接続状態の切り替えを行うことが好ましい。このように流路形成部が構成されていることで、簡易に流路の切り替えを行うことが可能である。
【0011】
前記流路形成部に、校正ガス流路に連通する校正ガス流入口が形成された校正ガス用突出部が突設され、記ガス検出器は、少なくとも前記校正ガス用突出部を覆うカバーを有し、前記カバーの内側には、当該カバーを閉めたときに前記校正ガス用突出部に嵌合する嵌合部が形成されていることが好ましい。かかる嵌合部が形成されていることで、流路の接続を切り替えるべく前記流路形成部の開口位置を変更した場合に、誤って前記校正ガス用突出部が所定の位置に配されていない場合には、校正ガス用突出部が嵌合部とは嵌合できない。これにより、例えばカバーを閉めることができないことで利用者に誤動作を通知することができる。このように、流路の切り替えを行った場合の誤動作を抑制することができ、誤動作に起因するガス漏れを防止することが可能である。
【0012】
前記校正ガス用突出部の、通常動作時及び校正動作時の位置を示すサイン部が設けられていることが好ましい。サイン部を目視で確認することができるので、流路の切り替えを行った場合の誤動作を抑制することができ、誤動作に起因するガス漏れを防止することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明のガス検出器の構成の概略を示す斜視図である。
図2図1に示すガス検出器においてカバーを開状態とした場合を示す斜視図である。
図3図1に示すガス検出器における切替部周辺の分解斜視図である。
図4図1に示すガス検出器における切替部の分解斜視図である。
図5図1に示すガス検出器における通常動作時の流路を説明するための模式図である。
図6図1に示すガス検出器における校正動作時の流路を説明するための模式図である。
図7図1に示すガス検出器における校正動作時の流路を説明するための模式図である。
図8図1に示すガス検出器における切替部周辺の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のガス検出器の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、本明細書等における「第一」、「第二」等の表記は、或る構成要素を他の構成要素と区別するために使用されるものであって、当該構成要素の数、順序又は優先度等を限定するためのものではない。また、本実施形態では、同じ構成要素を区別する場合には数字の後にアルファベットを付して区別している。
【0015】
図1、2に示すように、ガス検出器1は、略立方体形状のケース10を備える。また、ガス検出器1は、ケース10の正面30を覆うカバー20を備える。カバー20の上部には、開口21が設けられており、開口21からケースの正面30に設けられた表示部31が露出している。表示部31は、ガス検出結果や各種メッセージなどが表示される。なお、図1における上下左右方向及び手前奥方向を示す矢印により本実施形態における上下左右方向及び手前奥方向を示している。
【0016】
ケース10の下面11には、一のガス導入口12と、一のガス排出口13とが設けられている。詳しくは後述するが、ケース10内部には、センサが各々設けられた第一流路51(図1、2中不図示)、第二流路52(図1、2中不図示)が形成されている。このような本実施形態におけるガス検出器1は、一のガス導入口12からの一の共通流路50(図1、2中不図示)が、各々センサが設けられた第一流路51及び第二流路52に分岐するように構成されている。
【0017】
また、ケース10の下面11の両端においてカバー20はケース10に回転軸14により軸支される。これにより、カバー20はケース10の下端部の回転軸14を中心に揺動自在に、すなわち開閉自在に取り付けられている。カバー20を回転軸14を中心に揺動して開状態とすると図2に示すようにケース10の正面30が露出する。
【0018】
正面30には、表示部31が上部に設けられている。また、ケース10の正面30の下部中央には、切替部(流路形成部)40が取り付けられている。切替部40は、第一流路51及び第二流路52それぞれに校正ガスを流入せしめるために、第一流路51及び第二流路52と分岐流路53(図1、2中不図示)とを接続する状態と、校正ガス流路(校正ガス流入路46(図1、2中不図示))と第一流路51及び第二流路52のいずれかと接続する状態とを切り替え可能であるように構成されている。切替部40は、円盤状の円盤部41と、円盤部41から手前側に突出して延設された円筒状の円筒部42とを有する。
【0019】
切替部40は、円盤部41の中央にローレットねじ43を有し、ローレットねじ43によりケース10に固定されている。このローレットねじ43により切替部40をケース10に固定している。ローレットねじ43を緩めた状態とすると、ローレットねじ43を挿入した状態で切替部40をケース10から所定の距離離間して、切替部40を左右方向に回転せしめることが可能である。
【0020】
図3、4を用いて、切替部40を説明する。切替部40の円盤部41は、円筒部42が形成された第一円盤部61と、第一円盤部61の裏面に固定された第二円盤部62とを有する。第一円盤部61のローレットねじ43が挿入される貫通孔の下方には、手前側に向かって突出した校正ガス用突出部44の先端に校正ガス流入口45が開口している。校正ガス流入口45は、第一円盤部61及び第二円盤部62全体を貫通している校正ガス流入路46に連通している。
【0021】
ケース10の正面30の切替部40が取り付けられる取り付け部32には、複数の開口33a~33fと、ローレットねじ43が挿入され螺合するねじ穴34とが形成されている。複数の開口33a~33fは、ねじ穴34を中心とした同心円上に存在し、それぞれ隣接する開口同士が60度の角度を保持するように設けられている。開口33a~33fのうち、開口33cは、ガス導入口12からの共通流路50(図3、4中不図示)に連通し、開口33a、開口33bは、それぞれ第一流路51(図3、4中不図示)及び第二流路52(図3、4中不図示)に連通している。それ以外の開口33d~33fは、いずれの流路にも連通していない。
【0022】
第二円盤部62の裏面側には、これらの開口33a~33fに対応して形成された突出部35a~35fが形成されている。詳しくは後述するが、通常時において、各突出部35a~35fは対応する開口33a~33fに挿入される。切替部40は、分岐流路53を有し、分岐流路53は、突出部35cの先端に開口した分岐流路流入口54と、突出部35a及び突出部35bの先端に開口した二つの分岐流路流出口55a、55bとを備える。すなわち、本実施形態では、切替部40には、一方側が突出部35cを介して開口33cに接続され、他方側が突出部35a、35bを介して開口33a、33bに接続される分岐流路53が形成されている。本実施形態の分岐流路53は、分岐流路流入口54から二つの分岐流路流出口55a、55bまでの流路を意味する。これらの分岐流路流入口54と、二つの分岐流路流出口55a、55bとも、ローレットねじ43が挿入されるねじ穴47を中心とした同心円上に存在し、互いが120度ずつ離間した位置に配されている。なお、突出部35e、35fは封止されている。
【0023】
第二円盤部62は、分岐流路流入口54に対向するように形成された共通開口621と、分岐流路流出口55a、55bに対向するように形成された分岐開口622a及び分岐開口622bとを有する。また、第二円盤部62には、分岐流路53の主流路を形成すべく、凹部620が形成されている。凹部620には、これらの共通開口621と、分岐開口622a及び分岐開口622bとがその底面に開口している。すなわち、凹部620は、一の共通開口621からの流路が分岐開口622a又は分岐開口622bを有するように分岐した形状となっている。また、第一円盤部61の裏面側には、当該凹部620に対応して隔壁623が形成されていて、第一円盤部61と第二円盤部62とが固定されることで、隔壁623及び凹部620により分岐流路53が形成される。
【0024】
また、第二円盤部62には、ねじ穴47の下方に校正ガス流入路46を構成するための校正ガス用凹部624が形成されている。第一円盤部61にも、校正ガス流入路46を構成するための校正ガス用凹部624に対応して校正ガス用隔壁625が形成されている。第一円盤部61と第二円盤部62とが固定されることで、校正ガス用隔壁625及び校正ガス用凹部624により校正ガス流入路46が形成される。校正ガス流入路46は、前述のように第一円盤部61と第二円盤部62とを貫通して、第一突出部35dの先端に開口した校正ガス開口56に連通している。
【0025】
かかる切替部40を有するガス検出器1の流路全体について、図6に示す模式図を用いてさらに説明する。図6に示すように、ケース10内にはガス導入口12及び開口33cに連通する共通流路50が形成されている。また、ケース10内には第一流路51及び第二流路52が設けられている。流路51は開口33aに連通し、流路52は開口33bに連通している。なお、図6中、流路に接続する開口33a、33b、33cは模式的に白丸(○)で、流路に接続していない開口33d、33e、33fは模式的に黒丸(●)で示している。切替部40には、分岐流路53が形成されていて、突出部35cの分岐流路流入口54は、開口33cを介して共通流路50に、突出部35a、35cの分岐流路流出口55a、55bとは、開口33a、33bを介して第一流路51及び第二流路52にそれぞれ接続している。この場合において、校正ガス流入路46の突出部35dは、いずれの流路にも接続しない開口33dに接続されている。
【0026】
第一流路51及び第二流路52は、それぞれガスを検出する2つのセンサ71~74と、流路のガス流量を検出するフローセンサ75a、75bとを備える。また、分岐流路53の分岐部から分岐流路流出口55aの間にキャピラリ76a(流量調整部)を設けるととともに、第二流路のフローセンサ75bよりも下流側にもキャピラリ76b(流量調整部)を設けている。
【0027】
なお、本実施形態では、各センサ71~74は、異なるガス種を検出するように設けられているが同一のガス種でもよい。また、本実施形態では第一流路51及び第二流路52に対して二つのセンサ(センサ71、72とセンサ73、74)が設けられているが、各流路に一つずつ設けられていてもよい。フローセンサ75a、75bよりも下流側では、第一流路51及び第二流路52は、再度合流して排出側共通流路53に連通する。排出側共通流路53は、ポンプ77が介設されている。
【0028】
このようなガス検出器1の通常動作時には、ガス導入口12から導入されたガスは、キャピラリ76によりその流量を制御されつつポンプ77により吸引されケース10内の共通流路50を通過して開口33cを介して切替部40内の分岐流路53に流入し、分岐流路流出口55a、55bから開口33a、33bを介して第一流路51及び第二流路52に流入する。第一流路51及び第二流路52に流入したガスは、それぞれ排出側共通流路53を経て排出口13から排出される。そして、第一流路51及び第二流路52において、ガス内に所定のガス成分が含まれていればセンサ71~74により検出される。
【0029】
かかる切替部40を有するガス検出器1のガス校正動作について、図7に示す模式図を用いてさらに説明する。校正ガスを導入する場合、まず、ローレットねじ43を緩めて、ローレットねじ43がねじ穴に挿入された状態で円筒部42を把持して切替部40をケース10から所定量離間させる。これにより、切替部40の第二円盤部62の突出部35が、開口33から引き出される。この状態で、切替部40を右に60°回転し、再度ローレットねじ43を締め付けることで、校正ガス流入路46が形成された突出部35dが、開口33aに挿入され固定される。これにより、図7に示すように第一流路51は校正ガス流入口45と接続される。他方で、切替部40が回転することで、共通流路50と接続していた分岐流路流入口54は、開口33fと接続し、分岐流路流出口55a、55bは、開口33eと開口33fとにそれぞれ接続する。これにより、校正ガス流入口45から流入した校正ガスは、第一流路51に導入されて、当該第一流路51のセンサ71、72のみガス校正を行うことが可能である。
【0030】
他方で、図8に示すように、切替部40を左に60°回転することで校正ガス流入口45が形成された突出部35dが開口33bに挿入された場合、図8に示すように第二流路52が校正ガス流入路46と接続される。この場合、校正ガス流入口45から校正されたガスは、校正ガス流入路46から第二流路52のみに導入されて、当該第二流路52のセンサ73、74のみがガス校正を行うことが可能である。
【0031】
このようにガス検出器1が流路の途中に切替部40を備えるように構成されていることで、本実施形態では、簡易に、一の共通のガス導入口から分岐した複数の流路を有するガス検出器であっても、流路ごとにセンサのガス校正を行うことが可能である。この場合に、共通流路50や分岐流路53も切替部40の回転により封止することができるので、第一流路51又は第二流路52にガスが混入することも防ぐことが可能である。この場合において、切替部40を回転することで流路の切り替えを行うことができるので、簡易な構成で簡易に流路の切り替えを行うことができ好ましい。
【0032】
ところで、このようなガス検出器1では、切替部40の回転する際に、誤って各突出部35がケース10の各開口33への挿入が不完全となるような位置で回転を停止してしまい、切替部40における流路の接合部におけるガス漏れが発生することが考えられる。
【0033】
このようなガス漏れを防ぐために、本実施形態では、図9に示すようにケース10の取り付け部32の周囲に、ガス校正時及び通常時の校正ガス用突出部44の位置を示すサイン(サイン部)38を形成している。サイン38は、通常時の位置を示す38dと、ガス校正時における第一流路51を選択する場合の位置を示す38aと、ガス校正時における第一流路51を選択する場合の位置を示す38bとの3つであり、いずれもケース10から突出している。これらのサイン38にとり、動作切り替え時に、切替部40をどこまで回転させればよいのか目視で確認することができ、簡易にガス漏れを防止することができる。
【0034】
また、切替部40の切替後のローレットねじ43の締め付けが緩かったり、ガス校正動作位置に切替部40をセットしたまま通常動作時を行おうとしてしまい、ガスが漏れてしまうことも考えられる。このようなガス漏れも防止すべく、本実施形態では、図2に示すようにカバー20側に、校正ガス用突出部44に嵌合する嵌合部22が形成されており、ガス校正動作位置に切替部40をセットしたまま通常動作時を行おうとした場合にカバー20を閉じようとすると、校正ガス用突出部44が嵌合部22に嵌合できずに接触し、カバー20を閉じることができないように構成されている。嵌合部22は、具体的には、カバー20の裏面から奥側に向かって突出した一対の壁部22a、22bからなる。一対の壁部22a、22bの一端部23a、23bは、校正ガス用突出部44の外径と略同一となる距離で離間している。カバー20を閉じた時に校正ガス用突出部44が正しい位置にあれば、この一端部23a、23bの離間している位置に校正ガス用突出部44が配されて嵌合部22に嵌合する。このように、本実施形態では、校正ガス用突出部44が正しい位置にない場合には嵌合部22と嵌合できずカバー20を閉じることができないので、利用者に注意喚起を行うことができる。これにより、切替部40における流路の接合部でのガス漏れを防止することが可能である。
【0035】
さらに、本実施形態では、一対の壁部22a、22bの他端部24a、24bは、ローレットねじ43の外径と略同一となる距離で離間している。カバー20を閉じた時にローレットねじ43が正しい位置にあれば、この他端部24a、24bの離間している位置にローレットねじ43が配されて嵌合部22に嵌合する。このように、本実施形態では、校正ガス用突出部44だけでなくローレットねじ43とも嵌合部22が嵌合するので、ローレットねじ43の締め付けが緩い場合にもカバー20を閉じることができず、利用者に注意喚起を行うことができる。これにより、切替部40の接合部におけるガス漏れをさらに防止することが可能である。なお、この嵌合部22の形状については、カバー20を閉状態としたときに校正ガス用突出部44及び/又はローレットねじ43に嵌合する形状であれば特に限定されるものではない。一対の壁部22a、22bの一端部23a、23bと他端部24a、24bとで校正ガス用突出部44及び/又はローレットねじ43と嵌合するように設けずに、それぞれ個別に嵌合するように設けてもよい。
【0036】
さらに、本実施形態では切替部40における流路の接合部におけるガスの漏れが発生した場合には第一流路51及び第二流路52における流量バランスが崩れるようにキャピラリ76a、76bを配してガス検出器1を構成している。この場合に、切替部40の接合部におけるガス漏れがなければ、通常時にはいずれも同量のガスが第一流路51及び第二流路52を流れることになる。他方で、仮に切替部40の接合部におけるガス漏れがあった場合には、本実施形態ではキャピラリ76a、76bがそれぞれの流路において接合部よりも一方が上流側、他方が下流側に設けられていることで、第一流路51と第二流路52との間の流量バランスが崩れる。このように流量バランスが崩れることで、二つのフローセンサ75a、75bで検出される流量の差が所定値以上大きくなると漏れがあったものと判断することが可能である。なお、ガス校正時であっても、例えば第一流路51のガス校正動作中は、フローセンサ75bは封止されているので流量が0であるはずだが、その場合にフローセンサ75bの流量が0よりも大きくなれば、切替部40における流路の接合部におけるガスの漏れが起こっているとしてエラーを検出することができる。
【0037】
このように、複数の流路のうち、一方の流路には切替部40の接合部の上流側にキャピラリを設け、かつ、他方の流路には切替部40の接合部よりも下流側にキャピラリを設けることで、接合部での漏れが発生した場合には、流量バランスが崩れるので早期に流路における流量差を検知することができ、ガスの漏れを早期に予防することができる。
【0038】
本発明は、上述した実施形態に限定されない。例えば、上述した実施形態では、第一流路51及び第二流路52のみが示されたが、流路の数はこれに限定されず、3以上の流路を有していてもよい。また、切替部の形状は円盤状であったが、これに限定されない。例えば、例えば流路の数に応じた多角形状とし、本実施形態と同様にローレットねじ43でケース10に固定しつつ、ローレットねじ43を緩めた状態でケース10と多角形状の切替部を所定距離ケース10から離間させてローレットねじ43を中心として多角形状に従って回転させてケース10に再度に固定するように構成してもよい。すなわち、正面視において切替部40が円形状ではなくても、分岐流路53の分岐流路流入口54及び分岐流路流出口55、並びに校正ガス流入路46の開口と、第一流路51及び第二流路52の開口33との接続を切り替えるように、切替部40を回転させて開口位置をケース10に対して相対的に変更することで、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0039】
上述した実施形態では、流量調整部としてキャピラリを設けたが、流量調整部としてはキャピラリに限定されず、公知の流量調整器(バルブ等)を用いることができる。
【0040】
なお、上述した実施形態では、校正ガスを流路ごとに導入してガス校正を行ったが、全てのセンサに対して同時に同一のガスでガス校正を行う場合には、通常動作時と同じ位置に切替部40を設定して、ガス導入口12から校正ガスを導入して、第一流路51及び第二流路52に校正ガスが導入されるように動作させることも可能である。
【0041】
以上説明した実施形態及び変形例は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態及び変形例に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【符号の説明】
【0042】
1 ガス検出器
10 ケース
11 下面
12 ガス導入口
13 ガス排出口
13 排出口
14 回転軸
20 カバー
22 嵌合部
30 正面
31 表示部
33 開口
34 ねじ穴
35 突出部
38 サイン
40 切替部
41 円盤部
42 円筒部
43 ローレットねじ
44 校正ガス用突出部
45 校正ガス流入口
46 校正ガス流入路
47 ねじ穴
50 共通流路
51 第一流路
52 第二流路
53 分岐流路
53 排出側共通流路
54 分岐流路流入口
55 分岐流路流出口
61 第一円盤部
62 第二円盤部
71~74 センサ
75 フローセンサ
76 ポンプ
77 キャピラリ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8