(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023076339
(43)【公開日】2023-06-01
(54)【発明の名称】ワーク撮像システム
(51)【国際特許分類】
G01B 11/24 20060101AFI20230525BHJP
G06K 7/10 20060101ALI20230525BHJP
G01N 21/01 20060101ALI20230525BHJP
G01N 21/17 20060101ALI20230525BHJP
【FI】
G01B11/24 K
G06K7/10 376
G06K7/10 412
G01N21/01 Z
G01N21/17 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021189702
(22)【出願日】2021-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】000226242
【氏名又は名称】日機装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 勇樹
(72)【発明者】
【氏名】森本 崇
【テーマコード(参考)】
2F065
2G059
【Fターム(参考)】
2F065AA51
2F065BB01
2F065BB27
2F065CC25
2F065FF01
2F065FF02
2F065FF04
2F065FF41
2F065HH12
2F065HH15
2F065JJ03
2F065JJ19
2F065JJ26
2F065LL28
2F065LL49
2F065QQ24
2F065QQ31
2G059AA05
2G059BB15
2G059DD12
2G059DD13
2G059EE01
2G059EE02
2G059FF01
2G059GG03
2G059KK04
2G059LL02
2G059LL04
(57)【要約】
【課題】異なる照明の切り替えで、ワークアライメントおよびワークのマーク識別を実行することができるワーク撮像システムを提供する。
【解決手段】本発明のワーク撮像システムは、撮像エリアにおいてワークを保持面に接して保持する保持部と、ワークを保持する前記保持面に対向する方向から前記ワークの表面に向けて、前記ワークよりも広範囲に第1照射光を照射する第1照射部と、前記保持部の光透過部を介して前記ワークの識別箇所に向けて、前記ワークの裏面側から第2照射光を照射する第2照射部と、前記第1照射部又は前記第2照射部のいずれか一方から前記ワークに向けて光を照射させる選択部と、前記ワークと対向して配置され、前記ワークによって反射した前記第1照射光を受光して前記ワークの外形を撮像し、前記ワークを透過した前記第2照射光を受光して前記ワークの識別情報を撮像する撮像部と、を備えるワーク撮像システムである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像エリアにおいてワークを保持面に接して保持する保持部と、
ワークを保持する前記保持面に対向する方向から前記ワークの表面に向けて、前記ワークよりも広範囲に第1照射光を照射する第1照射部と、
前記保持部の光透過部を介して前記ワークの識別箇所に向けて、前記ワークの裏面側から第2照射光を照射する第2照射部と、
前記第1照射部又は前記第2照射部のいずれか一方から前記ワークに向けて光を照射させる選択部と、
前記ワークと対向して配置され、前記ワークによって反射した前記第1照射光を受光して前記ワークの外形を撮像し、前記ワークを透過した前記第2照射光を受光して前記ワークの識別情報を撮像する撮像部と、を備えるワーク撮像システム。
【請求項2】
前記撮像エリアに前記ワークを搬送し、前記撮像エリアにおいて前記保持部によって保持させる搬送部を、をさらに備える請求項1に記載のワーク撮像システム。
【請求項3】
前記撮像エリアを内部空間に画定する筐体であって、天板と側板を含む筺体をさらに備え、前記保持面の色と、前記筐体の側板及び天板とは同色であり、前記ワークとのコントラストを生じる色である請求項2に記載のワーク撮像システム。
【請求項4】
前記搬送部の保持面と、前記筐体の側板及び天板とは、所定の波長の光を反射し且つ残りの波長の光を吸収する請求項3に記載のワーク撮像システム。
【請求項5】
前記第2照射部は、前記搬送部に設置された拡散板を介して前記第2照射光を前記識別箇所に照射する請求項2又は4に記載のワーク撮像システム。
【請求項6】
前記拡散板は、前記搬送部の構成部品である請求項5に記載のワーク撮像システム。
【請求項7】
前記保持面を有する保持部の光透過部は開口である請求項1乃至6のいずれか1項に記載のワーク撮像システム。
【請求項8】
前記撮像部の受光面と前記ワークの間に位置し、前記撮像部の光軸上に開口が設けられた反射防止板を備える請求項1乃至7のいずれか1項に記載のワーク撮像システム。
【請求項9】
前記撮像部で撮像された前記ワークの外形から前記ワークの形状、面積、又はアライメント座標を算出し、前記ワークの識別情報から前記ワークの識別を行う演算部を備える請求項1乃至8のいずれか1項に記載のワーク撮像システム。
【請求項10】
前記第1照射光及び前記第2照射光を透過し、前記撮像部側に向けた前記ワークの移動によって前記ワークが当接する透明板を前記撮像エリアに備える請求項1乃至9のいずれか1項に記載のワーク撮像システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワーク撮像システムに関し、詳しくは、ワークの外形及び識別情報を光学的に読み取るワーク撮像技術に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のシステムとして、特許文献1には、液晶パネルの位置合せおよび識別情報取得をカメラの撮像結果に基づいて行うシステムが記載されている。詳しくは、液晶パネルの位置合せは、液晶パネルの外形の一部をカメラで撮像することによって行う。その際、照明は反射板からの反射光が用いられる。一方、液晶パネルのデータ(識別情報)は、上記位置合わせで用いるカメラとは異なるカメラで撮像し読み取られる。
【0003】
そして、特許文献1のシステムでは、位置合わせ用カメラによって液晶パネルの外形の一部を撮像して位置情報が取得される。その後、液晶パネルを移動機構により移動し、データ読み取り用カメラによって、液晶パネルのデータを撮像して識別情報が取得されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、液晶パネルの外形を撮像するカメラと液晶パネルの識別情報を撮像するカメラが、パネルの移動機構を介在させて配置されておりそれによって、特に照明との関係でシステムの構成が複雑になるという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、カメラに対する照明の切り替えだけで、ワークの外形および識別情報を取得することが可能なワーク撮像システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するため、本発明のワーク撮像システムの一態様は、撮像エリアを内部空間に画定する筐体と、
【0008】
ワークを保持面にて保持しつつ前記内部空間に前記ワークを搬送し、前記ワークを前記撮像エリアに配置する搬送部と、
【0009】
前記保持部の保持面に対向する方向から前記ワークの表面に向けて、前記ワークよりも広範囲に第1照射光を照射する第1照射部と、
【0010】
前記保持部の光透過部を介して前記ワークの識別箇所に向けて、前記ワークの裏面側から第2照射光を照射する第2照射部と、
【0011】
前記第1照射部又は前記第2照射部のいずれか一方から前記ワークに向けて光を照射させる選択部と、
【0012】
前記ワークと対向して配置され、前記ワークによって反射した前記第1照射光を受光して前記ワークの外形を撮像し、前記ワークを透過した前記第2照射光を受光して前記ワークの識別情報を撮像する撮像部と、を備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様によれば、ワーク撮像システムにおいて、カメラに対する照明の切り替えだけで、ワークの外形および識別情報を取得することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係るワーク撮像システムを模式的に示す図である。
【
図2】搬送部の保持部における保持板をワーク吸着面側から見た図である。
【
図3】保持板とワークのサイズとの関係を説明する図である。
【
図4】筺体の各部の吸光処理を説明する斜視図である。
【
図5】(a)および(b)は、ワークの識別マークの撮像時の照明を説明する図である。
【
図6】(a)、(b)、(c)および(d)は、本発明の一実施形態に係るワーク撮像システムによる撮像処理を説明する図である。
【
図7】(a)および(b)は、ワークのアライメントにおける撮像時のコントラストを説明する図である。
【
図8】(a)、(b)および(c)は、本実施形態の比較例を示す図である。
【
図9】(a)~(d)は、識別マーク撮像における拡散光の効果を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下に説明する実施形態は、本発明を具体的に実現した形態を例示するものである。よって、本発明が適用される装置の構成や各種条件によって、以下に説明される実施形態の構成は適宜修正又は変更されるべきものであり、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係るワーク撮像システムを模式的に示す図である。
【0017】
本実施形態のワーク撮像システム100は、
図4にてその詳細が後述される筺体101を含んで構成される。筺体101は、概略、筺体101の上部に位置する天板101aと、筺体101の上部における2つの側面を覆う側板101bと、側板101bを保持する4本の柱101cと、透明板102を支持する横枠101dとを備える。そして、筺体101には、側板101bが側面を覆う範囲の下端に透明板102が取り付けられ、また、筺体101の下部に反射防止板103が取り付けられている。
【0018】
本実施形態のワーク撮像システム100は、撮像部104、2つの第1照射部105a、105b、1つの第2照射部106を含む。ここで、
図1において、天板101aがある方を上側、撮像部104がある方を下側、第1照射部105aがある方を左側、第1照射部105bがある方を右側と呼び、以下、
図1を参照する説明において同じである。天板101a、透明板102、および反射防止板103の形状は、ほぼ同じ形状の矩形である。筺体101の外形は直方体となる。透明板102は、搬送部108と撮像対象であるワーク107を挟持するための透明の板であり、例えば、ガラスによって形成することができる。反射防止板103は、撮像部104の受光面とワーク107の間に位置し、撮像部104の光軸上に開口が設けられている。これにより、透明板における設備部品などの写り込み防止によって、より鮮明な2値化が実現されるという効果を奏する。また、反射防止板103は、少なくともその上側が、例えば、光を吸収する割合の多い色(例えば、黒色)に着色された板である。これにより、筺体101のワーク、照明、撮像部の受光部が存在する空間内での不要な光の反射を低減することができる。なお、
図1では、側板101bを保持する柱101cの一部及び横枠101dの一部の図示は省略されている。
【0019】
第1照射部105a、105bは、筺体101における、透明板102と反射防止板103との間の、筺体101の左右の側部それぞれの中央に支持部材(不図示)を介して取り付けられている。また、第2照射部106は、天板101aの直下の筺体の右側に位置する横枠101dに取り付けられている。また、第2照射部106は、
図1において紙面の垂直方向に延在する横枠101dの中央に支持部材(不図示)を介して取り付けられている。さらに、撮像部104は、反射防止板103の中央でその受光部を覗かせるように、支持部材(不図示)を介して筺体101に取り付けられている。第1照射部105a、105bと第2照射部106とのそれぞれからの照射は、第1照射部105a、105bと第2照射部106とを選択する制御部(不図示)によって、選択的に切り替えられる。本明細書では、この選択処理を行う制御部の機能部分を選択部という。
【0020】
本実施形態の撮像対象であるワーク107は、ワーク107を区別する情報などそのワーク固有の情報(以下、識別情報)を有した識別マークを一部に備えている。そして、ワーク107は、矩形の形状を備え、一定量の光を透過する樹脂製のシートで形成されている。なお、この光透過に関し、少なくとも識別マークが形成された周囲が透過性を備えればよい。また、本実施形態においては、寸法の異なるワーク107を撮像対象とするため、ワーク撮像システム100は、寸法の異なるワーク107のそれぞれに対応して、後述する外形の取得および識別マークの読み取りを行うことができる。なお、ワークは樹脂製に限られず、例えば、ガラス製であってもよく、また、撮像対象の形態として、例えば、表示パネルであってもよく、特許文献1に記載される液晶パネルであってもよい。また、ワークの形状は、本実施形態の矩形に限らず、円形など任意の形状とすることができる。このように、本発明のワーク撮像システムを適用して、外形の取得および識別マークの読み取りを行うことができる対象であれば、どのような撮像対象であってもよい。
【0021】
ワーク107に設けられる識別マークは、撮像部104によって撮像されることにより、識別マークが有する識別情報を取得できるものであればよい。例えば、ワークに形成された回路そのもの、回路を形成するためのマスクパターン等を識別マークとすることができる。また、これらに代わり、バーコード、QRコード(登録商標)などが識別マークとされてもよい。
【0022】
本実施形態のワーク撮像システム100は、搬送部108を含む。搬送部108は、ロボットアーム108aと保持部108bを備える。保持部108bは保持部108b下側の保持面を介してワーク107を吸着保持する。このロボットアーム108aは、例えば、L字型のように直角に曲がった形状を有し、
図1において、その紙面の垂直方向における向こう側に延在する部分(不図示)を有し、また、ワーク107を保持する保持部108bが上記延在部分の先端に取り付けられている。撮像エリアにおいて搬送部の保持部108bによってワークを保持させ、ワーク107を撮像することが可能になる。これにより、ロボットアーム108aは保持したワーク107を
図1の紙面の手前側から筺体101の内部空間に挿入することができる。ロボットアーム108aは、所定の位置に置かれたワーク107を保持部108bによって保持した状態で搬送して、
図1において紙面の垂直方向の手前側から筺体101の内部空間に入り、透明板102の上方に設置する。そして、ワーク撮像システム100による撮像中はワーク107を保持した状態を維持する。透明板102は、第1照射光及び第2照射光を透過し、撮像部104側に向けたワーク107の移動によってワーク107が当接するように内部空間に備えられている。これにより、透明板102に当接するワーク107のそりが減少し、ワーク107のそり防止が可能という効果を有する。
【0023】
図2は、搬送部108の保持部108bにおける保持板302をワーク吸着面側から見た図である。保持板302は、保持部108bの下面側に位置し、複数の切り欠きが形成された矩形状の板である。保持板302は、吸光素材によって形成されている。一方でワーク107は透光性を備えるため、保持板302とワーク107とコントラストを大きくすることができる。なお、保持板302が吸光素材によって形成される形態に限られないことはもちろんである。少なくとも保持板302のワーク107を吸着する面側が艶消しの黒などの吸光する色で着色されていてもよい。保持板302には吸引のための複数の穴(不図示)が設けられている。また、保持板302には切り欠きである開口302aが外形の一部として設けられる。この開口302aを介して、後述される識別マークの撮像において、上側の第2照射部106からの光をワーク107に照射することができ、これにより、識別マークの透過光を形成することができる。保持部108bの光透過部は開口であることにより、保持部108bの開口から、光透過が可能となり、識別マークを認識することができる。
【0024】
保持部108bの保持面の色と、筺体101の側板101b及び天板101aとは同色であり、ワークとのコントラストを生じる色であることにより、保持面の色、筺体の側板101b及び天板101aの色と、ワーク107とのコントラストを大きくすることができ、ワーク107の外形の視認性を高められるという効果を有する。筺体101の側板101b及び天板101aとは、所定の波長の光を反射し且つ残りの波長の光を吸収することにより、筐体の側板101b及び天板101aの所定の波長の光の反射光が目に入り、ワーク107の外形の視認性を高められる効果を有する。
【0025】
図3は、
図2に示した保持板302とワーク107のサイズとの関係を説明する図である。上述したように、本実施形態のワーク撮像システム100は、異なるサイズのワークに対応するものである。このため、保持板302は、比較的大サイズのワーク107a、中サイズのワーク107b、および比較的小サイズのワーク107cのそれぞれを適切に吸着するよう吸着用穴(不図示)の配置が定められている。また、ワーク107の識別マークに対して適に照射を行うことができるように開口302aの開口寸法が定められている。また、
図3に示す構成の保持板302とすることによって、搬送部108の吸引用の配管などの反射光を艶消しの黒が吸収するので、搬送部108の吸引用の配管などが撮像画像に映り込むことを防止することができる。さらに、保持板302の形状によって、保持板302と透明板102の上面とが接するので、ワーク107を押さえて反りを矯正することも可能である。
【0026】
再び
図1を参照すると、第1照射部105a、105bは、保持部108bの保持板302がワーク107を保持する面と同じ側の下方から、ワーク107に透明板102を通して第1照射光を照射する。この際、第1照射光は、2つの照射部によってワーク107よりも広範囲に照射される。
【0027】
一方、第2照射部106は、保持部108bの保持板302がワーク107を保持する面とは反対側の斜め上方から、ワーク107を照射する。この際、ワーク107の識別マークが設けられた部位は、上述したように、保持板302の開口302aを介して照射される。
【0028】
第1照射部105a、105bと第2照射部106との照射の切換は、選択部(不図示)によって実行される。選択部は、CPUなどを有して構成されるマイクロコンピュータの形態とすることができ、所定のプログラムに従い、
図6にて後述される一連の処理を実行する。なお、第1照射部105a、105bと第2照射部106との照射の切り替えは、第1照射部105a、105bをオンとし、第2照射部106をオフとする切り替えの形態に限られない。例えば、第1照射部105a、105bと第2照射部106の両方をオンとしたまま、オフとする照射部からの照射を物理的に遮蔽する機構を設け、物理的に遮蔽する機構の遮蔽動作を制御することによっても、照射部を選択的に切り替えることができる。
【0029】
撮像部104は、デジタルカメラによって構成することができる。なお、本実施形態のワーク撮像システムでは、単数の撮像部としたが、この形態に限られない。撮像部は、筺体101の透明板102のより下方において複数あってもよく、これら複数の撮像部によって撮像した画像を解析して、ワーク107の外形および識別マークを検知するようにしてもよい。
【0030】
図4は、
図1に示した筺体101の、特に、各部の吸光処理を説明する斜視図である。
図4に示すように、天板101aおよび透明板102は、それぞれ4本の柱101cにより支持される横枠101dによって、それぞれの板の周囲が保持される。筺体101の天板101aおよび左右の側板101bは、艶消しの黒で着色された吸光素材で形成されている。これにより、後述されるように、撮像時において、ワークと背景とのコントラストを大きくすることができる。また、艶消しの黒の形成による吸光処理によって、ロボットアームなどの機器の反射光により、機器の反射光が撮像画像に映り込むことを防止することもできる。なお、本実施形態では、天板101aおよび左右の側板101bの吸光処理は、それぞれの板の両面に施すものであるが、この形態に限られない。筺体101の内部空間内、すなわち、それぞれの板部材の照射部による照射光を用い撮像が行われる側に少なくとも前述の吸光処理がなされていればよい。また、吸光処理の色は、天板101aおよび左右の側板101bのそれぞれが同じ色である必要はなく、異なる色であってもよい。要は、ワーク107とのコントラストを増して適切な画像を取得することができればよい。
【0031】
図6(a)および(b)は、ワークの識別マークの撮像時の照明を説明する図である。上述したように、第2照射部106からの光は、保持板302の開口302aを介してワーク107の識別マークが設けられた箇所を照射する。この際、第2照射部106からの光の一部は、空気吸引用のチューブ109に当たって反射し、他の一部は空気吸引用のチューブ109及び拡散板110を通り、拡散光としてワーク107の識別マークに照射される。拡散板110は、搬送部108の構成部品である。本実施形態では、拡散板110はすりガラスで形成される。このように拡散板110による拡散光を用いることにより、識別マークの撮像を安定させることができる。
【0032】
図6(a)~(d)は、本発明の一実施形態に係るワーク撮像システム100による撮像処理を説明する図である。本実施形態では、撮像によって、ワーク107の識別マークを取得する処理と、ワーク107の外形を取得して保持部108bに対するワーク107の位置を取得する処理(以下、「アライメント」とも言う)を行う。
【0033】
先ず、
図5(a)に示すように、搬送部108の保持部108bによって所定箇所に載置されているワーク107が吸着保持される。この吸着は、保持部108bの保持板302に設けた複数の穴を介してワーク107に、空気吸引による負圧を作用させて吸着を行うものである。搬送部108にはそのための負圧駆動源(不図示)に接続するチューブが設けられている。
【0034】
次に、
図6(b)に示すように、搬送部108のロボットアーム108aを操作して、ワーク107を筺体101の内部空間に、
図6の紙面の垂直方向の手前側から挿入し、吸着保持したワーク107が透明板102上に接するように置かれる。又は、ワーク107が透明板102上方に設置されるようにしてもよい。この際、ロボットアーム108aを操作することにより、保持板302はワーク107を所定の力で押圧する。これにより、ワーク107を平坦にして撮像に適した状態とすることができる。
【0035】
ワーク107が搬送部108の保持部108bによって保持され、かつ透明板102上で平坦に保たれた状態で、
図6(c)に示すように、第1照射部105a、105bからの照射をオンとする。このとき、第2照射部106からの照射はオフとされている。これにより、第1照射部105a、105bからの照射光は透明板102の下側から、透明な透明板102を介してワーク107を照射する。そして、この照射によるワーク107からの反射光が撮像部104の受光部に入光し、ワーク107が撮像される。この際、本実施形態では、
図7にて後述されるように、ワーク107の周囲から反射が低減されており、コントラストが高いワーク107の外形画像を取得することができる。
【0036】
次に、第1照射部105a、105bからの照射がオフとされるとともに、
図6(d)に示すように、第2照射部106からの照射がオンとされる。これにより、第2照射部106からの光は透明板102の上側からワーク107を保持する保持部108bに照射される。そして、この照射光は保持板302の開口302aを介してワーク107を照射する。開口302aに対応するワーク107の部位には、識別マークが設けられており、識別マークに光照射され、この識別マークおよびその近傍において遮光または減衰された光は、ワーク107および透明板102を透過し、撮像部104の受光部に入光する。ここで、識別マークは、それを透過する光によって撮像したときに識別マークが表す情報を取得できる形態のものである。これにより、ワーク107の識別マークの像が撮像されて、その情報が取得される。この際、本実施形態では、
図5のように、第2照射部106からの光は、上述した搬送部の空気吸引用のチューブなど周辺機器が光を拡散させた間接光として、ワーク107に入射する。これにより、識別マークの撮像を安定させることができる。このように、透過光によって識別マークを撮像することにより、ワークの表裏のどちら側を透明板102に置いても、識別マークを適切に撮像することが可能となる。
【0037】
以上のように撮像されたワーク107の外形とワーク107の識別マークは、画像処理によって、ワークの座標が算出され、また、ワークの識別が行われる。これらの処理結果は、それぞれの目的に応じた処理に供される。
【0038】
本実施形態のワーク撮像システム100には、撮像部104で撮像されたワーク107の外形からワーク107の形状、面積、又はアライメント座標を算出し、ワーク107の識別情報からワーク107の識別を行う演算部(不図示)が備えられている。このような演算部の機能により、ワークの種別に対応させ、かつ各ワークの固有の状態に対応させた各種の処理又はこれの準備を行うことができる。
【0039】
以上説明したように、第1照射部と第2照射部との切り替えだけで、ワーク107の外形取得と識別マークの取得を実行することができる。すなわち、撮像部を、ワーク107の外形取得および識別マークの取得それぞれに対応させて用意する必要がなく、その結果、撮像のためのワーク107の移動及びその移動に応じて照明を用意するなどの複雑な構成が不要となる。
【0040】
なお、ワークのアライメントと識別マークの検出処理を、上記とは逆の順序で行ってもよいことはもちろんである。また、アライメント識別マークの検出処理は一連の工程の中でなく、別のタイミングでそれぞれ行われてもよい。
【0041】
図7(a)および
図7(b)は、
図6で説明したワークのアライメントにおける撮像時のコントラストを説明する図である。本実施形態のワーク撮像システムは、複数サイズのワークに適用可能である。
図7(a)は、比較的小サイズのワーク107cのアライメントの撮像結果を示している。また、
図7(b)は、比較的大きいサイズのワーク107aのアライメントの撮像結果を示している。
【0042】
これらの図に示すように、本実施形態は、ワーク107の周囲からの反射光を低減して、ワークとその周囲のコントラストを高くしている。具体的には、上述したように、搬送部108の保持板302、天板101aおよび側板101bを艶消しの黒に着色することにより、ワークの周囲からの反射光を低減している。
【0043】
図8(a)、(b)および(c)は、
図7に示す本実施形態の比較例を示す図である。
図8(a)、(b)は、
図7(a)、(b)に示すワークとそれぞれ同じサイズのワークの撮像結果を示している。比較例では、本実施形態のようにワーク周囲からの反射光を低減する色を特に施さない場合を示している。
図8に示すように、比較例の場合には、コントラストが小さく、画像処理によるワーク外形の取得が比較的困難になる。
【0044】
図8(c)は、別の比較例として、保持板302、天板および側板のいずれも存在しない場合の撮像結果を示している。同図に示すように、撮像画像には、搬送部の保持部などが映り込み、このため、得られる画像が安定せず、画像処理によって、ワーク外形を適切に取得することが困難になる。
【0045】
図9(a)~(d)は、識別マーク撮像における拡散光の効果を説明する図である。
図9(a)および(c)は、拡散光を用いない場合を示しており、
図9(b)および(d)は、拡散光を用いる場合を示している。
【0046】
拡散光を用いない場合、ワーク107の撮像された画像901aは、
図9(c)に示すように鮮明な画像を得ることができない。これに対し、拡散光を用いる場合、
図9(d)に示すように、撮像された画像901aにおける識別マーク901bが鮮明な画像を得ることができる。
【0047】
本実施形態によれば、搬送部108の構成部品、例えば、チューブ109などの設備部品を用いて拡散光を形成でき、これにより、限られたスペースで適切な間接光を用いて安定した撮像を行うことが可能となる。また、新たな拡散板を設ける必要がなく、新たな拡散板のスペースが不要である。
【0048】
(発明の実施態様)
本発明の第1の実施の態様は、撮像エリアにおいてワークを保持面に接して保持する保持部と、ワークを保持する前記保持面に対向する方向から前記ワークの表面に向けて、前記ワークよりも広範囲に第1照射光を照射する第1照射部と、前記保持部の光透過部を介して前記ワークの識別箇所に向けて、前記ワークの裏面側から第2照射光を照射する第2照射部と、前記第1照射部又は前記第2照射部のいずれか一方から前記ワークに向けて光を照射させる選択部と、前記ワークと対向して配置され、前記ワークによって反射した前記第1照射光を受光して前記ワークの外形を撮像し、前記ワークを透過した前記第2照射光を受光して前記ワークの識別情報を撮像する撮像部と、を備えるワーク撮像システムである。
【0049】
これにより、ワーク撮像システムにおいて、カメラに対する照明の切り替えだけで、ワークの外形および識別情報を取得することが可能となるという効果を奏する。
【0050】
本発明の第2の実施の態様は、第1の実施の態様において、前記撮像エリアにおいて前記保持部によって保持させる搬送部を、をさらに備える。
【0051】
これにより、撮像エリアにおいて搬送部の保持部によってワークを保持させ、ワークを撮像することが可能になるという効果を奏する。
【0052】
本発明の第3の実施の態様は、第2の実施の態様において、前記撮像エリアを内部空間に画定する筐体であって、天板と側板を含む筺体をさらに備え、前記保持面の色と、前記筐体の側板及び天板とは同色であり、前記ワークとのコントラストを生じる色である。
【0053】
これにより、前記保持面の色、前記筐体の側板及び天板の色と、前記ワークとのコントラストを大きくすることができ、ワークの外形の視認性を高められるという効果を奏する。
【0054】
本発明の第4の実施の態様は、第3の実施の態様において、前記筐体の側板及び天板とは、所定の波長の光を反射し且つ残りの波長の光を吸収することにある。
【0055】
これにより、前記筐体の側板及び天板の所定の波長の光の反射光が目に入り、ワークの外形の視認性を高められる効果を奏する。
【0056】
本発明の第5の実施の態様は、第2又は4の実施の態様において、前記第2照射部は、前記搬送部に設置された拡散板を介して前記第2照射光を前記識別箇所に照射することにある。
【0057】
これにより、新たな備品を設置せずに間接光により、識別マークの撮像を安定させることができる効果を奏する。
【0058】
本発明の第6の実施の態様は、第5の実施の態様において、前記拡散板は、前記搬送部の構成部品であることにある。
【0059】
これにより、拡散光を形成でき、限られたスペースで適切な間接光を用いた安定した撮像を行うことが可能という効果を奏する。
【0060】
本発明の第7の実施の態様は、第1乃至第6の実施の態様において、前記保持部の光透過部は開口であることにある。
【0061】
これにより、保持部の開口から、光透過が可能となり、識別マークを認識することができるという効果を奏する。
【0062】
本発明の第8の実施の態様は、第1乃至第7の実施の態様において、前記撮像部の受光面と前記ワークの間に位置し、前記撮像部の光軸上に開口が設けられた反射防止板を備えることにある。
【0063】
これにより、透明板における設備部品などの写り込み防止によって、より鮮明な2値化が実現されるという効果を奏する。
【0064】
本発明の第9の実施の態様は、第1乃至第8の実施の態様において、前記撮像部で撮像された前記ワークの外形から前記ワークの形状、面積、又はアライメント座標を算出し、前記ワークの識別情報から前記ワークの識別を行う演算部を備えることにある。
【0065】
これにより、演算部で、ワークの形状、面積、又はアライメント座標を算出することで、ワークの識別情報から前記ワークの識別が行われる効果を奏する。
【0066】
本発明の第10の実施の態様は、第1乃至第9の実施の態様において、前記第1照射光及び前記第2照射光を透過し、前記撮像部側に向けた前記ワークの移動によって前記ワークが当接する透明板を前記内部空間に備えることにある。
【0067】
これにより、前記透明板に当接するワークの反りが減少し、ワークの反り防止が可能という効果を奏する。
【符号の説明】
【0068】
100 ワーク撮像システム
101 筺体
101a 天板
101b 側板
101c 柱
101d 横枠
102 透明板
103 反射防止板
104 撮像部
105a 第1照射部
105b 第1照射部
106 第2照射部
107 ワーク
107a 大きいサイズのワーク
107b 中サイズのワーク
107c 小サイズのワーク
108 搬送部
108a ロボットアーム
108b 保持部
109 チューブ
110 拡散板
302 保持板
302a 開口
901a 画像
901b 識別マーク