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  • 特開-正極材料および二次電池 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023076343
(43)【公開日】2023-06-01
(54)【発明の名称】正極材料および二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/52 20100101AFI20230525BHJP
【FI】
H01M4/52
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021189717
(22)【出願日】2021-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504224153
【氏名又は名称】国立大学法人 宮崎大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古村 尭大
(72)【発明者】
【氏名】酒井 剛
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA08
5H050BA11
5H050BA13
5H050BA14
5H050CA03
5H050CB11
5H050CB13
5H050CB14
5H050CB16
5H050HA02
5H050HA13
(57)【要約】
【課題】電池性能を向上することができる正極材料および二次電池を提供する。
【解決手段】正極材料は、水酸化ニッケルおよび銅を含有する。正極材料は、ニッケル原子および銅原子の総和に対し、1%以上20%以下の銅原子を含有する。正極材料は、X線回折測定により2θ=12.5°以上25°以下の範囲に発現する2以上のピークを有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸化ニッケルおよび銅を含有する正極材料であって、
ニッケル原子および銅原子の総和に対し、1%以上20%以下の銅原子を含有し、
X線回折測定により2θ=12.5°以上25°以下の範囲に発現する2以上のピークを有する
正極材料。
【請求項2】
前記2以上のピークのうち少なくとも1つのピークが、X線回折測定により14.5°以上18.0°以下の範囲に発現する
請求項1に記載の正極材料。
【請求項3】
前記2以上のピークのうち少なくとも1つのピークが、X線回折測定により20.0°以上22.0°以下の範囲に発現する
請求項1または2に記載の正極材料。
【請求項4】
ニッケル原子および銅原子の総和に対し、5%以上20%以下の銅原子を含有する
請求項1~3のいずれか1つに記載の正極材料。
【請求項5】
硫黄原子をさらに含有する
請求項1~4のいずれか1つに記載の正極材料。
【請求項6】
電解質層と、
前記電解質層を挟んで向かい合う正極および負極と
を備え、
前記正極は、請求項1~5のいずれか1つに記載の正極材料を含む
二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、正極材料および二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水酸化ニッケルを含有する正極を備える二次電池が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7-73877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の二次電池では、例えば放電電圧など、電池性能を向上させる点で検討の余地があった。
【0005】
実施形態の一態様は、上記に鑑みてなされたものであって、電池性能を向上することができる正極材料および二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の一態様に係る正極材料は、水酸化ニッケルおよび銅を含有する。正極材料は、ニッケル原子および銅原子の総和に対し、1%以上20%以下の銅原子を含有し、X線回折測定により2θ=12.5°以上25°以下の範囲に発現する2以上のピークを有する。
【発明の効果】
【0007】
実施形態の一態様の正極材料および二次電池によれば、電池性能を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係る二次電池の概略を示す図である。
図2図2は、銅原子の含有率とXRDによる測定結果との関係を示す図である。
図3図3は、銅原子の含有率と放電電圧との関係を示す図である。
図4図4は、ニッケルおよび銅のモル比とXRDによる測定結果との関係を示す図である。
図5図5は、FTIRによる測定結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本願の開示する正極材料および二次電池の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0010】
まず、実施形態に係る二次電池の構成について、図1を用いて説明する。図1は、実施形態に係る二次電池の概略を示す断面図である。
【0011】
図1に示す二次電池1は、正極2と、電解質層5と、負極6とを備える。二次電池1は、電解質層5を挟んで正極2および負極6が向かい合うように位置している。二次電池1は、必要に応じて、正極2と負極6との間に位置するセパレータを備えてもよい。
【0012】
正極2は、正極集電体3と正極活物質層4とを備える。正極集電体3は、正極端子と電気的に接続されている。正極集電体3としては、例えば、ニッケルを用いることができる。
【0013】
正極活物質層4は、実施形態に係る正極材料を含有する。正極材料は、例えば粉末状または粒子状を有しており、正極活物質層4は、例えば、かかる正極材料を加圧して所望の形状に成形したものであってもよい。また、正極活物質層4は、例えばケース状の正極集電体3に収容されたものであってもよい。
【0014】
正極活物質層4を構成する正極材料は、水酸化ニッケルを含有する。水酸化ニッケルは、例えば、β-Ni(OH)である。また、正極活物質層4は、α-Ni(OH)および/またはγ-Ni(OH)を含有してもよい。正極活物質層4は、正極材料の一例である。かかる水酸化ニッケルは、例えば、硫酸ニッケル(NiSO)または塩化ニッケル(NiCl)に由来するものであってもよい。
【0015】
また、正極材料は、銅(Cu)を含有する。かかる銅原子は、水酸化ニッケルを骨格構造として、水酸化ニッケル中のニッケル原子を銅原子に置換した状態と考えられる。かかる銅原子は、水酸化ニッケル中のニッケルとは異なる配位構造を取ることができる。かかる銅原子は、例えば、硫酸銅(CuSO)または塩化銅(CuCl)に由来するものであってもよい。
【0016】
また、正極材料は、硫黄(S)を含有してもよい。正極材料が硫黄を含有することにより、上記した銅原子の配位構造が安定化する場合がある。かかる硫黄原子は、例えば、隣り合う銅原子にそれぞれ配位するOH基の間に位置し、水素原子が離脱されたO-S-O結合を形成するなど、ニッケルの主たる配位子である水酸基とは異なる配位子を導入できる。かかる硫黄原子は、例えば、硫酸銅または硫酸ニッケルに由来するものであってもよい。
【0017】
また、正極材料は、上記した以外の成分、例えば、マグネシウム、ナトリウムなどを含んでもよい。
【0018】
また、正極材料は、X線回折(XRD)測定により2θ=12.5°以上25°以下の範囲に発現する2以上のピークを有する。
【0019】
図2は、銅原子の含有率とXRDによる測定結果との関係を示す図である。図2では、ニッケル原子および銅原子の総和に対し、銅原子の含有率を0%~20%まで変化させた正極材料をそれぞれ測定した結果を示している。銅原子の含有率が0%とは、ニッケル原子が100%、すなわち、水酸化ニッケルのみを含有することを意味している。なお、正極活物質層4中におけるニッケル原子および銅原子の含有率は、ICP-OES(ICP発光分光分析装置)を用いて測定することができる。
【0020】
図2に示すように、銅原子の含有率が0%、すなわち、水酸化ニッケルのみの場合は、2θ=12.5°以上25°以下の範囲に、1つのピークP0のみを有している。これに対し、銅原子の含有率が2%~20%の場合、2θ=12.5°以上25°以下の範囲には、2つのピークP1、P2を有している。このように、正極活物質層4を構成する正極材料が銅原子を含有することにより、銅原子を含有しない場合と比較して内部構造が変化する。一方、2θ=12.5°未満、または25°を超える範囲では、銅原子の含有率が0%の場合と類似した結果が得られた。なお、図示による説明は省略するが、銅原子の含有率が1%の場合にも、2θ=12.5°以上25°以下の範囲には、2つのピークP1、P2を有していることが確認された。
【0021】
実施形態に係る正極材料のXRD測定により2θ=12.5°以上25°以下の範囲に発現する上記したピークP1、P2のうち、ピークP1は、2θ=14.5°以上18.0°以下の範囲に発現してもよい。また、ピークP2は、2θ=20.0°以上22.0°以下の範囲に発現してもよい。
【0022】
また、正極材料は、ニッケル原子および銅原子の総和に対し、1%以上20%以下、さらに5%以上20%以下の銅原子を含有する。上記した範囲で銅原子を含有することにより、二次電池1の電池性能が向上する。
【0023】
図3は、銅原子の含有率と放電電圧との関係を示す図である。図3では、正極活物質層4が有する正極材料において、ニッケル原子および銅原子の総和に対し、銅原子の含有率を0%~20%まで変化させた二次電池1を作製し、放電電圧をそれぞれ測定した結果を示している。なお、図3では、銅原子の含有率が0%の場合を基準とする相対値として放電電圧を示している。
【0024】
図3に示すように、二次電池1の放電電圧は、ニッケル原子および銅原子の総和に対し、銅原子の含有率が15%前後となる正極材料を用いた場合に放電電圧が最大となる。銅原子の含有率が1%以上20%以下、さらに5%以上20%以下の正極材料では、銅原子の含有率が0%の場合と比較して二次電池1の放電性能が向上する。一方、銅原子の含有率が25%の正極材料では、放電電圧は十分に向上しない。また、銅原子の含有率が20%を超える正極材料では、例えば、水酸化ニッケルの結晶構造に不具合が生じ、正極材料の強度が低下する。このため、実施形態に係る正極材料は、ニッケル原子および銅原子の総和に対し、銅原子を1%以上20%以下、さらに5%以上20%以下の範囲で含有する。
【0025】
図4は、ニッケルおよび銅のモル比とXRDによる測定結果との関係を示す図である。図4では、正極活物質層4が有する正極材料として、含有するニッケル原子および銅原子のモル比が異なる試料1~8を作製し、XRD測定をそれぞれ行った。なお、図4中に示すニッケルおよび銅のモル比は、正極材料が含有するニッケル原子および銅原子のモル量の総和に対し、ニッケル原子および銅原子が占める割合をそれぞれ示したものである。
【0026】
図4に示すように、ニッケル原子のみを含有し、銅原子を含有しない正極材料では、XRD測定によって得られる、2θ=12.5°以上25°以下の範囲に発現するピーク数は1であった(試料1参照)。
【0027】
また、ニッケル原子および銅原子を所定のモル比で含有する正極材料では、XRD測定によって得られる、2θ=12.5°以上25°以下の範囲に発現するピーク数はいずれも2であった(試料2~7参照)。試料2~7に示すように、銅原子の由来物質(銅源)がCuSOの場合には、ニッケル原子の由来物質(ニッケル源)がNiSOおよびNiClのいずれであっても2θ=12.5°以上25°以下の範囲に発現するピーク数は同じであった。これに対し、ニッケル源がNiClであり、銅源がCuClである試料8は、ニッケル原子および銅原子を含有しているものの、2θ=12.5°以上25°以下の範囲に発現するピーク数は1であった。かかる結果より、所定の割合でニッケル原子および銅原子を含有する正極材料であっても、例えば由来物質の組み合わせ等に応じて正極材料の内部構造や充放電による挙動等が相違することがあり、電池性能に差異が生じうることが示唆された。
【0028】
図5は、FTIRによる測定結果の一例を示す図である。図5では、実施形態に係る正極材料の測定結果であるラインL1を、同じ条件で測定したNi(OH)(ラインL2)およびCu(OH)(ラインL3)と並べて示している。なお、ラインL1は、ニッケル原子および銅原子の総和に対し、銅原子の含有率を10%とした正極材料の測定結果を示したものである。
【0029】
図5に示すように、ラインL1は、ラインL2におけるピークP21、P22にそれぞれ対応するピークP11、P12を有している。一方、ラインL1は、ラインL3におけるピークP31、P32に対応するピークを有していない。これにより、実施形態に係る正極材料は、Ni(OH)に対応する構造を有している一方、Cu(OH)に対応する構造は有していないことが推察される。
【0030】
図1に戻り、電解質層5は、イオン伝導性を有する電解質を有する。イオン伝導性を有する電解質としては、例えば、固体電解質を使用することができる。
【0031】
また、電解質層5は、水を含有してもよい。電解質層5は、電解質が溶解した電解質溶液を含有してもよい。また、電解質層5は、例えば、ポリマーでゲル化されたゲル電解質を含有してもよく、多孔質電解質を含有してもよい。また、水系電解質は、例えば、アルカリ水溶液であってもよい。アルカリ水溶液は、例えば、アルカリ金属を含んでいてもよい。アルカリ金属は、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウムから少なくとも1つが含まれていてもよい。リチウムまたはナトリウムが水酸化リチウムまたは水酸化ナトリウムとして添加されていると、酸素が発生する可能性を低減することができる。また、アルカリ水溶液のアルカリ金属の濃度は、例えば、6mol・dm-3であってもよい。
【0032】
また、電解質層5は、不織布および樹脂フィルムのうち少なくとも1つをさらに有してもよい。
【0033】
負極6は、負極活物質層7と負極集電体8とを備える。負極6は、正極2よりも電位の低い電極である。
【0034】
負極活物質層7は、負極活物質を含む。負極活物質は、例えば、水素吸蔵合金、カドミウム、鉄、亜鉛であってもよい。また、負極活物質層7は、負極集電体8に収容されていてもよい。
【0035】
負極集電体8は、負極端子と電気的に接続されている。負極集電体8としては、例えば、ステンレス鋼、チタン、銅、ニッケルなどを用いることができる。
【0036】
以上、本開示について詳細に説明したが、本開示は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0037】
以上のように、実施形態に係る正極材料は、水酸化ニッケルおよび銅を含有する。正極材料は、ニッケル原子および銅原子の総和に対し、1%以上20%以下の銅原子を含有し、X線回折測定により2θ=12.5°以上25°以下の範囲に発現する2以上のピークを有する。これにより、電池性能を向上することができる。
【0038】
また、実施形態に係る正極材料は、2以上のピークのうち少なくとも1つのピークが、X線回折測定により2θ=14.5°以上18.0°以下の範囲に発現する。これにより、電池性能を向上することができる。
【0039】
また、実施形態に係る正極材料は、2以上のピークのうち少なくとも1つのピークが、X線回折測定により2θ=20.0°以上22.0°以下の範囲に発現する。これにより、電池性能を向上することができる。
【0040】
また、実施形態に係る正極材料は、ニッケル原子および銅原子の総和に対し、5%以上20%以下の銅原子を含有する。これにより、電池性能をさらに向上することができる。
【0041】
また、実施形態に係る正極材料は、硫黄原子をさらに含有する。これにより、正極材料を安定化させることができる。
【0042】
また、実施形態に係る二次電池1は、電解質層5と、電解質層5を挟んで向かい合う正極2および負極6とを備える。正極2は、上記した正極材料を含む。これにより、電池性能を向上することができる。
【0043】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 二次電池
2 正極
3 正極集電体
4 正極活物質層
5 電解質層
6 負極
7 負極活物質層
8 負極集電体
図1
図2
図3
図4
図5