(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023076361
(43)【公開日】2023-06-01
(54)【発明の名称】圧電効果を利用したキノコの栽培促進方法及びキノコ栽培用高電圧発生装置
(51)【国際特許分類】
A01G 18/69 20180101AFI20230525BHJP
A01G 18/00 20180101ALI20230525BHJP
【FI】
A01G18/69
A01G18/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021189752
(22)【出願日】2021-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】000154196
【氏名又は名称】株式会社富士セラミックス
(74)【代理人】
【識別番号】100079979
【弁理士】
【氏名又は名称】志水 浩
(72)【発明者】
【氏名】高橋 弘文
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 和孝
【テーマコード(参考)】
2B011
【Fターム(参考)】
2B011GA02
2B011GA06
2B011GA12
(57)【要約】
【課題】正圧電効果を利用したキノコの栽培促進方法及びその生産装置に関する。
【解決手段】本発明は、インパクト法またはスクイズ法によるキノコ栽培において、インパクト法では少なくとも100回以上連続で荷重することによりキノコ培養基へ連続で高電圧を印加させ、または、スクイズ法では、圧電セラミックスとそれを押すハンドルから構成され、圧電セラミックスにテコの原理でハンドルを緩やかに押すことにより、キノコ栽培に高電圧を印加しキノコの発芽の確立を高め、その後の成長を促進させてなる正圧電効果を利用したキノコの栽培促進方法及びその生産装置により提供される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷重を加えて圧電セラミックスにより高電圧発生をさせ、キノコ栽培に該高電圧を印加しキノコの発芽の確立を高め、その後の成長を促進させてなる正圧電効果を利用したキノコの栽培促進方法。
【請求項2】
前記荷重を加える手段として、インパクト法によるキノコ栽培において、少なくとも100回以上連続で荷重を与えることによりキノコ培養基へ連続で高電圧を印加させ、その後の成長を促進させてなる正圧電効果を利用した請求項1記載のキノコの栽培促進方法。
【請求項3】
前記荷重を加える手段として、スクイズ法によるキノコ栽培において、前記高電圧を発生させるため、前記圧電セラミックスにそれを押すハンドル手段を用いて、前記圧電セラミックスにテコの原理でハンドルを緩やかに押すことにより、圧電セラミックスが縦方向に圧縮し、0.1sec~0.3secの長時間高電圧を発生させてなる正圧電効果を利用した請求項1記載のキノコの栽培促進方法。
【請求項4】
インパクト法によるキノコ栽培において、少なくとも100回以上連続で荷重することによりキノコ培養基へ連続で高電圧を印加させ、その後の成長を促進させてなる正圧電効果を利用したキノコの栽培促進方法に用いるため、キノコ栽培用高電圧発生装置は、圧電セラミックスとそれを叩くハンマーで構成され、圧電セラミックスに0.2kN~2kNの荷重を印加することによりスプリングが圧縮され、その力でハンマーが圧電セラミックスを瞬間的に叩き、5kV~30kVの高電圧を発生させるインパクト法利用可能なキノコ栽培用高電圧発生装置。
【請求項5】
スクイズ法によるキノコ栽培において、前記荷重を加える手段として、キノコ栽培用高電圧発生装置は、圧電セラミックスとそれを押すハンドルから構成され、圧電セラミックスにテコの原理でハンドルを緩やかに押すことにより、圧電セラミックスが縦方向に圧縮し、0.1sec~0.3secの長時間高電圧を発生させるスクイズ法を利用したキノコ栽培用高電圧発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,キノコの発芽の確立を高め、その後の成長を促進させる栽培促進方法及びキノコ栽培用高電圧発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでキノコの栽培法は、種菌を原木のほだ木、人工栽培用の培養器具等により栽培していた。他方、キノコ生産者の間では原木のほだ木に雷が落ちるとキノコが異常発生することが知られている。この現象を基にこれまでキノコ類に高電圧の電気的刺激を与えるとキノコの発生を促進する効果があることが報告されている。(特許文献1)。このような手段には、高電圧で電気的刺激を発生させる装置は大型のトランスや電子部品を多数使用するために重量が重く、大型化になる為に特に屋外、また森林場所で作業する場合は大重量な装置は作業者への負担が大きく、作業性の悪化になり生産効率が問題となる。
【0003】
また、他の例では、キノコ類に火花放電による高電圧の電気的刺激を与えるとキノコの発生を促進する効果があることが報告されている。これによれば、キノコの培養基としてはほだ木だけでなく年間を通して安定的にキノコ類を供給できることから菌床栽培が盛んになってきている。菌床栽培は屋内で絶縁容器を利用していることから高電圧の電気的刺激を与えることが危険であり効果的に高電圧が印加できない問題も発生している。
しかしながら、高電圧を発生させるために高電流による感電の危険性があり特に屋内で作業する場合はアースの確保は絶対的に必須であり、作業者への負担は相当に大きく量産性の向上を妨げる結果ともなっている(特許文献2)。
【0004】
また、キノコの種菌を接種した培養基を予め電気的刺激を静電気で刺激を加えるキノコ栽培方法に関するものである(特許文献3)。
他の例で、本考案は、キノコ類の生育促進に使用される携帯可能なスパーク放電器に関するものである。さらに、キノコ類の発生と生育期間が大幅に短縮され、収穫量も大幅に増大するとの記載も認められる(特許文献4)。
しかしながら、第1図に見られるように、複雑な回路構成を有するようで、実用上の課題があり、さらに、コストパーフォーマンスにケッてんんが認められる。
さらなる例によれば、キノコ菌を接種した培養基を、交流又は直流電圧下におけるグローコロナ放電現象の出現する以前の電界内に存在させて電場処理を行い、以降常法により栽培することを特徴とするキノコの栽培方法に関するものである{特許文献5)。
ライターを利用した実例が認められる。これにより、圧電セラミックスに外部から荷重を加えることで生じるひずみに応じて高電圧が発生するものであり、正圧電効果としてはガスレンジ、ライター等の着火素子として多様な応用製品に古くから利用されている。キノコ菌を接種した培養基に利用した例ではないが、高電圧を発生させるものである{特許文献6)。
【0005】
以上の従来例では、正圧電効果を利用したキノコ類の栽培の培養基として原木を利用したほだ木、及び人工的な菌床の両方に利用するものではない。本発明にあっては、正圧電効果を利用してキノコの発芽の確立を高め、その後の成長を促進させることができる。また、収穫までの期間を短縮させ生産性を向上することが可能である。本発明ではキノコは主にシイタケで説明するが、これに限られるものではなく、キノコ種類としてはシイタケ、ヒラタケ、ナメコ、クリタケ、キクラゲ、シメジ等にも利用できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012-186885号公報
【特許文献2】特開2012-000054号公報
【特許文献3】特開平2-35023号公報
【特許文献4】実開昭63-75139号公報
【特許文献5】特開昭61-108374号公報
【特許文献6】特開2010-164304号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「伝熱」誌、著者は高木浩一、Vol.51、No.216(2012年7月刊)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
キノコの成長を促進させる方法として多くの従来例があった。高電圧で電気的刺激を発生させてキノコの成長を促進させる方法としては、火花放電、コロナ放電、高電圧パルスがあり、いずれも高電圧を得るために大掛かりな装置が必要であった。
このため、装置の課題が認められる。大型化、重量が大となり、生産者は簡単には使用することへの難、とりわけ、特に森林内に生産拠点がある生産者では持ち運びができず、更に電源の確保ができないために電力を必要とするこれらの装置を利用するのは更にインフラ設備を設置しなければならず大きな障害になっていた。
【0009】
さらに、水分確保への課題もあった。キノコ栽培の培養基としてほだ木及び菌床を利用する際にはほだ木を浸水させたり、菌床に水分を含有させたりする必要があるため、高電圧を印加する際に大電流が発生して作業者が感電する恐れがある。特に、屋内に設置された菌床の培養基の場合は感電する可能性が高く安全な作業場を確保することが難しい。
本発明にあっては、かかる課題を解決するため、圧電セラミックスの利用を鋭意研究して、正圧電効果を利用して高電圧を発生させる装置とそれを利用してキノコ栽培を促進効果を提案するものである。
【0010】
本発明は、インパクト法またはスクイズ法によるキノコ栽培において、インパクト法では少なくとも100回以上連続で荷重することによりキノコ培養基へ連続で高電圧を印加させ、または、スクイズ法では、圧電セラミックスとそれを押すハンドルから構成され、圧電セラミックスにテコの原理でハンドルを緩やかに押すことにより、キノコ栽培に高電圧を印加しキノコの発芽の確立を高め、その後の成長を促進させてなる正圧電効果を利用したキノコの栽培促進方法及びその生産装置により提供される。
【0011】
本発明において用いるインパクト法及びスクイズ法について、以下定義する。
インパクト法とは 分極処理してある圧電セラミックスへ瞬間的に荷重を印加すると、+極と-極の間で高電圧を発生させることが可能な手法である。この高電圧は荷重の大きさ、及び印加時間に依存するが、一般的に0.2kN~2kNで叩く力(インパクト法)では
図2に示すように出力高電圧30kVであり、時間は170μsecで発生させることでキノコの栽培促進方法として、本発明の作用効果が得られた。
印加する荷重(叩く力:インパクト法)は直径3mm、長さ5mmの圧電セラミックスに0.2kNの荷重を印加すれば5kVの電圧が発生し、又直径5mm、長さ20mmの圧電セラミックスに2kNの荷重を印加すれば30kVの高電圧が発生することができ、V=g
33・L/A・Fより算出できる。(株式会社富士セラミックス:テクニカルハンドブック)]
スクイズ法とは 分極処理してある圧電セラミックスに一定荷重を長時間押し続けることにより、+極と-極の間で電圧を発生させることが可能な手法である。ここで、発生電圧はインパクト法より出力電圧は低いが、発生時間が0.1secから0.3sec程度と長いこととでキノコの栽培促進方法として。本発明の作用効果が得られた。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、荷重を加えて圧電セラミックスにより高電圧発生をさせ、キノコ栽培に該高電圧を印加しキノコの発芽の確立を高め、その後の成長を促進させてなる正圧電効果を利用したキノコの栽培促進方法により提供される。
また、本発明は、前記荷重を加える手段として、インパクト法によるキノコ栽培において、少なくとも100回以上連続で荷重与えることによりキノコ培養基へ連続で高電圧を印加させ、その後の成長を促進させてなる正圧電効果を利用した前記記載のキノコの栽培促進方法により提供される。
【0013】
さらに、本発明は、前記荷重を加える手段として、スクイズ法によるキノコ栽培において、前記高電圧を発生させるため、前記圧電セラミックスにそれを押すハンドル手段を用いて、前記圧電セラミックスにテコの原理でハンドルを緩やかに押すことにより、圧電セラミックスが縦方向に圧縮し、0.1sec~0.3secの長時間高電圧を発生させてなる正圧電効果を利用した前記記載のキノコの栽培促進方法により提供される。
さらにまた、本発明は、インパクト法によるキノコ栽培において、少なくとも100回以上連続で荷重することによりキノコ培養基へ連続で高電圧を印加させ、その後の成長を促進させてなる正圧電効果を利用したキノコの栽培促進方法に用いるため、キノコ栽培用高電圧発生装置は、圧電セラミックスとそれを叩くハンマーで構成され、圧電セラミックスに0.2kN~2kNの荷重を印加することによりスプリングが圧縮され、その力でハンマーが圧電セラミックスを瞬間的に叩き、5kV~30kVの高電圧を発生させるインパクト法利用可能なキノコ栽培用高電圧発生装置により提供される。
【0014】
また、前記荷重を加える手段として、スクイズ法によるキノコ栽培において、キノコ栽培用高電圧発生装置は、圧電セラミックスとそれを押すハンドルから構成され、圧電セラミックスにテコの原理でハンドルを緩やかに押すことにより、圧電セラミックスが縦方向に圧縮し、0.1sec~0.3secの長時間高電圧を発生させるスクイズ法を利用したキノコ栽培用高電圧発生装置により提供される。
【発明の効果】
【0015】
キノコの収穫量が3倍以上に増加し、特に大きなキノコの栽培ができる。
高電圧を利用しない一般的なキノコ栽培の成長に比べ1/5時間(35日に対して7日)で成長する。ほだ木栽培での再利用では利用回数は6回と言われているが本発明の正圧電効果を利用した装置では同じほだ木で生産数量を減少させずに6回以上利用することができる。
【0016】
菌床栽培では再利用の利用回数は2、3週間休ませて3回程度利用できるが、正圧電効果を利用した高電圧を印加したものは休ませずに連続して3回以上利用することができる。圧電セラミックスの形状と荷重量及び連結方法で高電圧、発生時間を容易に設計することができ用途にあった小型の装置を製造できる。
【0017】
本発明の各装置にあっては、正圧電効果は圧電セラミックスを容易、繰り返し、安全、場所を選ばない低コストで提供できる。他方、緩やかに荷重を加えるスクイズ法キノコ栽培装置Bでは、発生時間を長くすることができ、同様な作用効果が期待できる。
本発明の正圧電効果は圧電セラミックスを叩くインパクト法以外にも、緩やかに荷重を加えるスクイズ法でも、高電圧を発生させることができ、更に発生時間を長くすることができる。正圧電効果を利用すればインパクト法でもスクイズ法でもキノコ栽培の効果が得られる。キノコ培養基としてのほだ木、及び菌床共に水に浸水または含水を併用することでその効果は大きくなる。
【0018】
本発明にあっては、正圧電効果により高電圧のみを発生することができ、昨今のキノコ栽培の生産者は高齢化し例えば心臓にペースメーカー等が導入している場合でも安心して利用できる。
また、大規模な設備は必要なく、これまでの大規模な電源を利用した装置に比べ圧電セラミックスだけで設計できるため安価な装置を提供することが可能である。圧電セラミックスは半永久的に利用できるためメンテナンスの必要もない。
【0019】
本発明にあっては、圧電効果を利用したキノコの栽培用生産装置が提供できた。これにより、正圧電効果を利用して高電圧を発生する装置は小型化で軽量化することができた。 また、高電圧を発生するための駆動電力を必要としない。とりわけ、キノコの栽培地である森林場所等では電気提供手段を用意なしに作業することができる。
さらに、高電圧を発生する従来の装置は培養基に水を利用するキノコ栽培であった。このため、絶縁の確保、アースの設置が必須であり、感電の危険性があったが、本発明の圧電セラミックスは電流がほとんど流れないため、感電の危険もなく安全に作業ができるキノコ栽培用装置を提供できた。
【0020】
高電圧を発生させるためにはインパクト法だけでなく、スクイズ法による方法でも同様の効果が得られるため、どちらを利用するかは生産する環境によって選択でき。
とりわけ、特にスクイズ法は小型携帯用として利用できることが利点である。さらに、正圧電効果を利用したキノコ栽培における高電圧を印加しない場合に比べて、例えば菌床では連続で複数回栽培することが可能である。
【0021】
本発明装置の製造時における正圧電効果が得られる圧電セラミックスは、これと同様な圧電単結晶及び圧電高分子ポリマーなどのの機能材料も利用可能である。これらを以下一括して圧電セラミックスとして説明する。印加する高電圧値としては、インパクト法の場合は5kVの高電圧を発生させ最低100回以上、30kVなら50回以上連続で荷重する。荷重はインパクト法でもスクイズ法でもどちらでも同様の効果が得られた。
【0022】
他方、スクイズ法の場合はインパクト法と同形状の圧電セラミックスを縦方向に圧縮し、0.1sec~0.3secの長時間高電圧を発生させてなる正圧電効果を利用するため、インパクト法の場合である5kVの高電圧を発生させ最低100回以上とする高電圧を発生させる必要が無い特徴がある。
【0023】
高電圧を発生させるためにはインパクト法、スクイズ法による方法のいずれかを選択でき同様の効果が得られるため、どちらを利用するかは生産する環境によって選択できる。
特にスクイズ法は小型携帯用として利用できることが利点である。
正圧電効果を利用したキノコ栽培は高電圧を印加しない場合に比べて、例えば菌床では連続で複数回栽培することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は圧電セラミックスへの分極処理の説明図である。
【
図2】
図2は正電圧効果による出力電圧波形図である。
【
図3】
図3はインパクト法によるキノコ栽培用高電圧発生装置
図Aである。
【
図4】
図4はスクイズ法によるキノコ栽培用高電圧発生装置
図Bである。
【
図5】
図5はインパクト法による発生時間と高電圧との関係図である。
【
図6】
図6はインパクト法による第1波の出力電圧波形図である。
【
図7】
図7はスクイズ法による発生時間と出力電圧の関係図である。
【
図8】
図8は高電圧を印加した場合のシイタケの収穫状態図である。
【
図9】
図9は高電圧を印加しない場合のシイタケの収穫状態図である。
【
図10】
図10は2回目の高電圧を印加した場合の収穫状態図である。
【
図11】
図11は2回目の高電圧を印加しなかった場合の収穫状態図である。
【
図12】
図12は3回目の高電圧を印加した場合の収穫状態図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される構成、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施をするための形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【実施例0026】
実施例1について、本発明の装置、インパクト法によるキノコ栽培用高電圧発生装置A及びその製法について説明する。
図1に示すように、圧電セラミックス1の特性から述べる。圧電セラミックス1において正圧電効果を発生させるため予め分極方向2に沿って分極処理を施す。圧電セラミックス1の素材としては、チタン酸ジルコン酸鉛材料のC-23材(株式会社富士セラミックス製)を利用した。これに限らず、他の素材として、圧電単結晶、圧電高分子ポリマーなどの機能材料を利用することができる。
【0027】
図2は圧電セラミックス1の正圧電効果を発生させた状態での経過特性を示した。横軸は経過時間(μsec)、縦軸は出力電圧(kV)、曲線はその発生された波形を示す。
正圧電効果とは分極してある圧電セラミックスに荷重2を印加すると、後述する
図4に示す、+電極17と-電極18の間で高電圧が発生することである。このメカニズムは出力電圧波形からも分かるように、圧電セラミックスの形状にもよるが一般的には印加時間と共に出力電圧が上昇しピークを迎え減少する。高電圧は山なりの波形で100μsecから300μsecの時間で発生する。
【0028】
図3は圧電セラミックス1に荷重2を加える具体例であるインパクト法によるキノコ栽培用高電圧発生装置Aの断面図を示す。装置の構成は、実施例では、縦方向10cm 横方向で最大幅3cm、外形は5cmほどの筒状形状や角柱形状が望ましい。これら素材は使用する各部の形態にあわせ加工後に専用治具を用いて一定荷重を加えながら組み立てられる。この装置の理解を容易にするため縦方向の断面図を示したものである。
【0029】
導電性素材の電極板3の上側に、PTFE素材(ポリテトラフルオロエチレン、例えばテフロン(登録商標))からなる円柱状の内ケース5を設ける。
内ケース5の形状は、縦方向2cm横方向2cmの角筒形状が望ましい。内ケース5の下面にドーナツ状の電極板3を導電性状態となるよう貼り付け、さらに、鉄素材からなる円柱形状の座金ブロック6を接着貼り付ける。図に示すように内ケース5内に圧電セラミックス1に、絶縁体のシリコンオイルを塗布し、加圧しながら 取り付ける。
【0030】
前記構造の内ケース5の上部に鉄素材からなる円柱形状の金属ハンマー9を設置する。戻しスプリング8はステンレス素材からなるバネを内ケース5の周面に沿って、巡回設置させる。
また、ステンレスバネ素材からなるハンマースプリング10は、PTFE素材からなる角柱の外ケース12内にハンマーピン11を内ケース5の加工溝に沿って配置して、外ケース12の上蓋21とで挟まれ装着されている。
電極取り出し口7は、外ケース12の先端部分に内ケース5に加工溝に沿って設置され電極板3とに生じた高電圧を取り出すよう配置した。
【0031】
以下、インパクト法によるキノコ栽培用高電圧発生装置Aの動作を説明する。
基本動作は、荷重2を図の下側から上向きに加えると、ハンマースプリング10が押され、ハンマー9が圧電セラミックス1を叩き、高電圧が発生するような構造にした。
ここで、
図3は荷重2を加える前の状態を示した表示である。これを前提として以下説明する。
【0032】
内ケース5の底には電極板3が配置されている。
図3の下側から荷重2を印加すると内ケース5の周面にある戻しスプリング8及びハンマースプリング10が内ケース5の先端、すなわち、上蓋21に到達するまで収縮され、ハンマー9が外れて落下し、圧電セラミックスを叩く。
叩いた後は、ハンマー9は圧電セラミックス1の上に載っている状態となる。その後、戻しスプリング8により元の位置、
図3の状態に戻る。
叩いた(インパクト)時に発生する圧電セラミックスにおける高電圧は、瞬間的にハンマー9と接している電極取出し部7から出力される。
【0033】
圧電セラミックスを利用した正圧電効果は圧電セラミックス1の形状、連結方法は中央に電極取出し部に対して圧電セラミックスの+極側が並列になるように配置、外側が-極とする。及びハンマースプリング10の荷重量、例として2kNであり、高電圧値や残留振動(リンギング)を含んだ発生時間を容易に設計できる。ここで、残留振動(リンギング)とは、ハンマー9が圧電セラミックス叩いた際の残留振動。この残留振動は回数を重ねることに小さくなる。これは、ハンマー9が圧電セラミックス1を瞬間的に叩くため、ハンマー9に戻る力が生じ、それをハンマースプリング10が再度押すため残留振動が生じることによる。
2組からなる圧電セラミックス1は直列でも良いが並列の方が高電圧の発生時間がより長くさせることができる。並列の作用効果である。圧電セラミックスを直列で接続した場合、V=g33・L/A・Fの式より、並列接続に比べ長さ(L)が2倍になるため、発生電圧は並列よりも高くなる。しかし、直列接続は並列接続に比べ、静電容量(単位面積当たりの貯えれれる量)が小さくなるため、実際には理論通りの電圧が発生せず、低くなる。そのため、並列接続の方が直列接続よりも高電圧が発生すると考えられる。 圧電セラミックス1は並列に連結して全体を絶縁剤で電気的なシールドをする。絶縁剤は圧電セラミックスの収縮・膨張に影響がないように柔らかいシリコンやゴム系樹脂を選択するのが望ましい。
ハンドル押引印方向16は右に押すことで、圧電セラミックス1に緩やかに荷重が印加される。他方のハンドルを元に戻すと、圧電セラミックス1に対し荷重が解放される。圧縮されていた圧電セラミックス1は圧縮前に戻るため逆極性の高電圧が+極と-極の間で発生する。その作用の特徴は、発生する高電圧はインパクト法に比べて発生時間は1000倍以上になる。
インパクト法に比べ電圧値は8kVと低いが、発生時間はおよそ0.3secと長いことが認められた。他方、またハンドルを元に戻すと荷重が解放されて収縮していた圧電セラミックスが元の形状に戻る時、逆の電圧が同じ時間程度発生する。
高電圧はどちらの極性でも本発明の効果に問題はないのでスクイズ法は長時間高電圧を発生させる効果として期待できる。
その作用の特徴は、発生する電圧値はインパクト法に比べて発生時間は1000倍以上にも達することができた。