(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023076364
(43)【公開日】2023-06-01
(54)【発明の名称】液中立体造形物製造法
(51)【国際特許分類】
B29C 64/118 20170101AFI20230525BHJP
B29C 64/40 20170101ALI20230525BHJP
B29C 64/245 20170101ALI20230525BHJP
B29C 64/209 20170101ALI20230525BHJP
B29C 64/371 20170101ALI20230525BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20230525BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20230525BHJP
B29C 64/295 20170101ALI20230525BHJP
【FI】
B29C64/118
B29C64/40
B29C64/245
B29C64/209
B29C64/371
B33Y10/00
B33Y30/00
B29C64/295
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021202059
(22)【出願日】2021-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】520098730
【氏名又は名称】八賀 祥司
(72)【発明者】
【氏名】八賀 祥司
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AM30
4F213AM35
4F213AR06
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL15
4F213WL29
4F213WL62
4F213WL67
4F213WL73
4F213WL87
4F213WL93
(57)【要約】 (修正有)
【課題】熱溶解積層法おけるオーバーハング部の重力変形の防止、材料がノズル温度から温度降下し凝固するときの温度差によるソリ変形の防止、さらに、積層材料の熱伝導率が高い場合、レイヤー間の積層材料の密着が不完全で微少空隙が残存することの防止のための、積層方法を提供する。
【解決手段】プラットフォームとノズルの空間に液体で満たす容器を構成させ、液体の中で熱溶解積層法による造形物を製造することで、積層物の浮力を利用して重力変形を防止する。さらに、温度管理された液体中で造形することで、ノズルから吐出される材料の凝固速度を最適化させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱溶解積層法の3Dプリンターにおいて、プラットフォームとノズルの空間を温度管理された液体で満たした状態で積層する方法。
【請求項2】
熱溶解積層法の3Dプリンターにおいて、プラットフォームとノズルの空間を温度管理された液体で満たした状態で積層する形態で、ノズル径をΦ10μmからΦ100μmとする極小物を積層する方法。
【請求項3】
熱溶解積層法の3Dプリンターにおいて、プラットフォームとノズルの空間を満たす液体として、水(温水)や油、およびその混合液体を使用し、液体の温度を積層材料の融点あるいは軟化点未満に設定した状態で積層する方法。
【請求項4】
熱溶解積層法の3Dプリンターにおいて、プラットフォームとノズルの空間を満たす液体として、液体に微細なセラミック粉末や金属粉末を浮遊させたコロイド状態を利用して積層する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱溶解積層法による立体造形物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
3Dプリンターは、コンピュータで作成された三次元の造形データを元に、造形材料を順次積層して立体物を造形する装置であり、数種類の方式が知られている。中でも、熱溶解積層法(Material Extrusion)は、プラスチックなどの材料を溶かして3D積層物をレイヤーごとに作成する3D印刷方法である。積層材料はプラスチックだけでなく、金属粉末と樹脂を混錬して作ったフィラメントやペレットあるいはセラミック粉末と樹脂を混錬して作ったフィラメントやペレットが使われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
熱溶解積層法による積層物は、積層形状がオーバーハングする部位には重力変形を阻止するための支え(サポート)を予め設計し、3D積層物と同時に積層する。この支えは最終的には不要物であり、完成した積層物から切断除去あるいは溶解除去させる無駄な作業が発生するという課題があった。
【0004】
熱溶解積層法による積層物は、材料がノズル温度から温度降下して凝固するときに、プラットフォーム近傍の積層物の温度と積層物の上層部の温度に差が生まれ、ソリ変形が発生する課題があった。
【0005】
また、金属粉末と樹脂、あるいはセラミック粉末と樹脂を混錬して作ったフィラメントやペレットを使用する熱溶解積層法においては、積層材料の熱伝導率は金属やセラミックを含むため高く、ノズルから吐出された材料がすぐに冷却凝固し、レイヤー間の積層材料の密着が不完全になることで微少空隙が残存する。これは、後工程の脱脂・焼結でも拡散することはなく、焼結された積層物の中に微小空隙として残り、機械的性質の著しい低下を招くという課題があった。
【0006】
さらに、熱溶解積層法に使用する標準ノズル径はΦ0.25mmが下限であるが、ノズル径をさらに小さくするとノズルから吐出された材料がすぐに冷却凝固し、レイヤー間の積層材料の密着が不完全で微少空隙が残存するだけではなく、全く密着しない状態が発生する。このため、微小物を積層することができない。さらに、積層面の表面粗度はノズル径に依存するため熱溶解積層法の表面粗度実績Ra12を改善させることができないという課題があった。
【0007】
本発明は、上記課題を解決させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、液体の中で熱溶解積層法による造形物を製造する方法を見出した。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、熱溶解積層法の3Dプリンターにおいて、プラットフォームとノズルの空間に液体で満たす容器を構成させる。
【0010】
液体中で造形することで、積層物の浮力を利用することができる。従って材料密度に合致させた液体を使用すれば、積層物の重力による変形が発生しないため、変形防止の支え(サポート)を造形する必要がない。液体は水(温水)や油、およびその混合液体を使用する。さらに微細なセラミック粉末や金属粉末を浮遊させたコロイド液を使用することも選択できる。液体の温度は、積層材料の融点あるいは軟化点未満に設定する。
【0011】
温度を管理された液体中で造形することにより、急激な積層物の凝固が抑えられ部位ごとの収縮差が無くなりソリ変形を防止することができる。また、積層後に液体を徐冷することで積層物全体を均等に冷却し残留応力を緩和することができる。
【0012】
金属粉末と樹脂を混錬して作ったフィラメントやペレットを使用する熱溶解積層法においては、高温の温度管理された液体中で積層することで、ノズルから吐出される材料の凝固する速度を最適化させることができ、その結果、レイヤー間の密着が完全に行われ微少空隙の残存を無くすことができる。その結果、後工程の脱脂および焼結で高い機械的性質の積層物を得ることができる。
また、液体として相溶性の高い油脂を使うことで、レイヤー間の密着力を高めることができる。
さらに、液体にセラミック粉末や金属粉末を浮遊させたコロイド液中で積層させることでレイヤー間の密着面に、使用しているコロイド浮遊物体を挟み込み一体化させることができる。
【0013】
積層材料の融点あるいは軟化点の下方近傍の温度に管理された液体中で造形することにより、極小ノズル径(Φ10μmからΦ100μm)から吐出した材料が急速に凝固することなく極小物を積層することができる。さらに、これにより積層物の表面粗度を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態における立体造形物の製造方法の概念図である。
【実施例0015】
図1に示すように、液体容器1内のプラットフォーム3とノズル5の空間を液体2で満たした状態で、熱溶解積層法による3D積層物4を造形する。液体2は温度コントロール容器6内で温度コントロールユニット7により温度を管理する。プラットフォーム3とノズル5の空間を満たす液体の量は、液体容器1と温度コントロール容器6をつなぐ供給および排出配管を通しポンプ8、9により、積層レイヤーの増加に同調させて増加させる。積層完了後に、液体をすべて容器6へ回収し、積層物を取り出す。