(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023076439
(43)【公開日】2023-06-01
(54)【発明の名称】含浸用基材フィルム、改良された含浸製品、及び関連方法
(51)【国際特許分類】
C08J 9/42 20060101AFI20230525BHJP
H01M 50/489 20210101ALI20230525BHJP
H01M 50/403 20210101ALI20230525BHJP
H01M 50/414 20210101ALI20230525BHJP
H01M 50/449 20210101ALI20230525BHJP
H01M 50/451 20210101ALI20230525BHJP
H01M 50/443 20210101ALI20230525BHJP
H01M 50/431 20210101ALI20230525BHJP
H01M 50/446 20210101ALI20230525BHJP
H01G 11/52 20130101ALI20230525BHJP
【FI】
C08J9/42 CER
C08J9/42 CEZ
H01M50/489
H01M50/403 D
H01M50/414
H01M50/449
H01M50/403 E
H01M50/451
H01M50/443 M
H01M50/431
H01M50/446
H01G11/52
【審査請求】有
【請求項の数】32
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031206
(22)【出願日】2023-03-01
(62)【分割の表示】P 2020514687の分割
【原出願日】2018-09-12
(31)【優先権主張番号】62/557,424
(32)【優先日】2017-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】598064680
【氏名又は名称】セルガード エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100115679
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 勇毅
(74)【代理人】
【識別番号】100114177
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】近藤 孝彦
(72)【発明者】
【氏名】岡田 賢明
(72)【発明者】
【氏名】ライナルツ,ステファン
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー,ダニエル アール.
(57)【要約】
【課題】
MD割れの低減等、性能が改良された微多孔膜及びそれを作製する方法を提供する。
【解決手段】
本明細書に示すか、特許請求するか、又は記載する、新規な又は改良された、含浸用基材フィルム、含浸された基材フィルム、前記含浸された基材フィルムが組み込まれた製品、及び/又は関連方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム電池、コーティング用基材フィルム、濾過フィルム又は媒体、HVACフィルター、調湿用フィルム、膜、貼合体、又は複合体、燃料電池内のPEM又は調湿膜、経皮パッチ等の医療用膜又はフィルム、繊維製品、衣服の材料又は層、テープ、顔用拭き取りシート(wipe)、複合、貼合、又は多層フィルム用のセパレータとして又はセパレータ中に使用するように構成された、含浸された、コーティングされた、浸漬コーティングされた、浸漬された、湿潤した、水に浸された、充填された、又は処理された膜フィルムを製造するように構成された、乾式法による高分子膜、基材フィルム、基材、又は前駆体であって、前記乾式法による高分子膜、基材フィルム、基材、又は前駆体は、メソ多孔質(最大平均細孔径約2.0umから最大平均細孔径約10.0umまで(即ち、以下))、微多孔質(最大平均細孔径約10.0nm(0.01um)から最大平均細孔径約2.0umまで(即ち、以下))、又はナノ多孔質(最大平均細孔径約10.0nm(0.01um)まで)の少なくとも1種である、含浸された、コーティングされた、浸漬コーティングされた、浸漬された、湿潤された、水に浸された、充填された、又は処理された膜フィルムを含み、
前記高分子膜、基材フィルム、基材、又は前駆体の細孔表面の少なくとも1つの領域は、その上又はその中に、ポリマー樹脂(B)を(例えば、前記高分子膜の厚みの少なくとも約10%の含浸深さで)主成分として少なくとも有する、第1の、含浸物(impregnate)、含浸、コーティング、浸漬コーティング、湿潤、充填、又は処理材料の、第1の、薄層、コーティング、又は堆積物を、少なくとも有し、
及び、任意選択的に、
その上に又はその中に、前記含浸物、含浸、コーティング、浸漬コーティング、湿潤、充填、又は処理材料中の少なくとも1種の溶媒残留成分又は他の添加剤、作用物質、若しくはフィラーを有し、
前記高分子膜、基材フィルム、基材、又は前駆体は:
主成分としてのポリマー樹脂(A)を少なくとも有する、多孔質(最大平均細孔径約0.01um~最大平均細孔径約20um)、マクロ多孔質(最大平均細孔径約10.0um超(を超える))、メソ多孔質(最大平均細孔径約2.0umから最大平均細孔径約10.0umまで(即ち、以下))、又は微多孔質(最大平均細孔径約10.0nm(0.01um)から最大平均細孔径約2.0umまで(以下))の少なくとも1種である、高分子膜、基材フィルム、基材、又は前駆体を備える、乾式法による高分子膜、基材フィルム、基材、又は前駆体。
【請求項2】
前記高分子膜、基材フィルム、基材、又は前駆体中の細孔表面の少なくとも1つの領域は、その上又はその中に、ポリマー樹脂(B)を(例えば、前記高分子膜の厚みの少なくとも約10%の含浸深さで)主成分として少なくとも有する、少なくとも、第1の含浸物(impregnate)、含浸、コーティング、浸漬コーティング、湿潤、充填、又は処理材料の、第1の薄層、コーティング、又は堆積物を、少なくとも有し、及び任意選択的に、その上又はその中に、前記含浸物、含浸、コーティング、浸漬コーティング、湿潤、充填、又は処理材料中の、少なくとも1種の溶媒残留成分又は他の添加剤、作用物質、若しくはフィラーを有する、請求項1に記載の乾式法による高分子膜、基材フィルム、基材、又は前駆体。
【請求項3】
前記樹脂(B)は前記樹脂(A)とは異なる、請求項1に記載の、乾式法による高分子膜、基材フィルム、基材、又は前駆体。
【請求項4】
前記ポリマー樹脂(B)は、前記コーティングされた膜フィルムを、ナノ多孔質に、微多孔質に、メソ多孔質に、より高強度に、より多用途に、疎油性に、親水性に、より高い突刺強度を示すように、より高い温度溶着性を示すように、より高い耐酸化性を示すよう
に、より低いシャットダウン温度を示すように、より低いCOFを示すように、より低いピン引抜力を示すように、より高いコーティング接着性を示すように、及び/又は機能付与性を示すように、向上した破断伸度を示すように、TMA又は圧縮TMA試験において向上した穴形状(破けることなく、円形に)を示すように、向上した釘刺し試験結果(NPT合格)を示すように、向上した横方向(TD)引張強度を示すように、向上したMD及びTD強度特性のバランスを示すように、向上した機能付与性を示すように、向上したイオン伝導度を示すように、シャットダウンを生じるように、粘着性(接着性表面)を示すことができるように、セラミックコーティングすることができるように、IR検出可能となるように、SEM検出可能となるように、触媒とすることができるように、架橋可能となるように、並びに/又は向上した他の性能、機能、及び/又は特徴を示すように、並びに/又はこれらの組合せとなるようにする、薄いコーティングを形成する、請求項1に記載の、乾式法による高分子膜、基材フィルム、基材、又は前駆体。
【請求項5】
前記膜、基材フィルム、基材、又は前駆体の前記細孔は、ポリマー樹脂(B)を含浸又はコーティングする前及び/又は後に、プライマー、堆積物、処理、PVD、ALD、溶媒、コロナ、プラズマ、又はこれらの組合せが施されている、請求項1に記載の、乾式法による高分子膜、基材フィルム、基材、又は前駆体。
【請求項6】
前記膜、基材フィルム、基材、又は前駆体の前記細孔の最小細孔寸法は、ポリマー樹脂(B)の前記コーティングの厚みの2倍を超えるか、又は、最小平均細孔寸法は、ポリマー樹脂(B)の前記コーティングの厚みの2倍を超える、請求項1に記載の、乾式法による高分子膜、基材フィルム、基材、又は前駆体。
【請求項7】
前記コーティング又は含浸された膜フィルムは、少なくとも微多孔質である、請求項1に記載の、乾式法による高分子膜、基材フィルム、基材、又は前駆体。
【請求項8】
ポリマー樹脂(B)の前記コーティングの最小厚みは>0.001umである、請求項1に記載の、乾式法による高分子膜、基材フィルム、基材、又は前駆体。
【請求項9】
ポリマー樹脂(B)の前記コーティングの平均厚みは、>0.01um、又は<0.10um、又は<1.0umである、請求項1に記載の、乾式法による高分子膜、基材フィルム、基材、又は前駆体。
【請求項10】
前記高分子膜、基材フィルム、基材、又は前駆体の前記細孔の最小細孔寸法は、少なくとも、ポリマー樹脂(B)の前記コーティングの厚みの2倍を超え、又はポリマー樹脂(B)の前記コーティングの厚みに、前記細孔の内面上の任意の追加のコーティング、処理、堆積物、及び/若しくは同種のものの厚みを足したものである、請求項1に記載の、乾式法による高分子膜、基材フィルム、基材、又は前駆体。
【請求項11】
前記膜、基材フィルム、基材、又は前駆体の前記細孔の最小細孔寸法は、少なくとも0.20umである、請求項1に記載の、乾式法による高分子膜、基材フィルム、基材、又は前駆体。
【請求項12】
前記膜、基材フィルム、基材、又は前駆体の前記細孔の最大細孔寸法は、15.0um未満である、請求項1に記載の、乾式法による高分子膜、基材フィルム、基材、又は前駆体。
【請求項13】
前記コーティングされた膜、基材フィルム、基材、又は前駆体の前記細孔の少なくとも80%の最小有効断面積(minimum effective cross-sectional area)は、細孔当たり少なくとも7.85×10-7um2である、請求
項1に記載の、乾式法による高分子膜、基材フィルム、基材、又は前駆体。
【請求項14】
前記コーティングされた膜、基材フィルム、基材、又は前駆体の最大ガーレーは、3,000sである、請求項1に記載の、乾式法による高分子膜、基材フィルム、基材、又は前駆体。
【請求項15】
前記コーティングされた膜、基材フィルム、基材、又は前駆体の最小空孔率は少なくとも20であり、又はERは3.0Ω・cm2未満であり、又は曲路率は2.0未満である
、請求項1に記載の、乾式法による高分子膜、基材フィルム、基材、又は前駆体。
【請求項16】
前記コーティングされた膜、基材フィルム、基材、又は前駆体の平均細孔径は0.01umを超え、又は平均細孔径は2.0um未満である、請求項1に記載の、乾式法による高分子膜、基材フィルム、基材、又は前駆体。
【請求項17】
前記膜、基材フィルム、基材、又は前駆体は、円形形状の細孔を有し、又は結果として得られる細孔形状が、コーティングされていない高分子膜、基材フィルム、基材、又は前駆体の細孔形状よりも角に丸みがあり、且つ細孔寸法がより小さく、又は結果として得られる細孔形状が、長円形、卵形(ovoid)、卵形(egg shaped)、楕円形(elliptical)、角の丸い長円形、若しくは細長い長円形である、請求項1に記載の、乾式法による高分子膜、基材フィルム、基材、又は前駆体。
【請求項18】
前記コーティングされた膜、基材フィルム、基材、又は前駆体は、少なくともその片面が、コーティングされる、ポリマーコーティングされる、又はセラミックコーティングされるように構成されている、請求項1に記載の、乾式法による高分子膜、基材フィルム、基材、又は前駆体。
【請求項19】
前記膜、基材フィルム、基材、又は前駆体の前記細孔表面の半分は、前記ポリマー樹脂(B)でコーティングされるか又は処理されており、前記膜、基材フィルム、基材、又は前駆体の前記細孔表面の他の半分は、ポリマー樹脂(C)でコーティングされるか又は処理されており、前記樹脂(C)は前記樹脂(B)とは異なる、請求項1に記載の、乾式法による高分子膜、基材フィルム、基材、又は前駆体。
【請求項20】
請求項1に記載の乾式法による高分子膜、基材フィルム、基材、又は前駆体を含む電池用セパレータを備えるリチウム電池。
【請求項21】
請求項20に記載のリチウム電池を備える、デバイス、製品、システム、又は乗用車。
【請求項22】
コンデンサ、スーパーキャパシタ、又はキャパシタ電池ハイブリッドであって、請求項1に記載の、含浸された、コーティングされた、又は処理された、高分子膜、基材フィルム、基材、又は前駆体を備えることが改良された、コンデンサ、スーパーキャパシタ、又はキャパシタ電池ハイブリッド。
【請求項23】
請求項1に記載の、含浸された、コーティングされた、又は処理された、高分子膜、基材フィルム、基材、又は前駆体を備える、繊維製品、衣服、拭き取りシート、フィルター、医療用品、HVACフィルター、燃料電池、調湿層、コーティング用基材フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
少なくとも選択された実施形態によれば、本出願又は本発明は、本明細書に示すか、特許請求するか、又は記載する、新規な又は改良された含浸用基材フィルム、含浸された基材フィルム、含浸された基材フィルムが組み込まれた製品、及び/又は関連方法に関する。少なくとも特定の実施形態によれば、本出願又は本発明は、二次リチウムイオン電池用等の電池用セパレータに使用される、並びに繊維製品、濾過、調湿、及び同種のもの等の他の用途に使用される、改良された含浸膜を作製するための、ポリマー含浸用の改良された基材フィルムと、この種の基材フィルム、含浸された基材フィルム、電池用セパレータ、及び/又は同種のもの等を作製及び使用するための関連方法と、に関するか又はこれらを提供する。少なくとも特定の実施形態において、本出願又は本発明は、電池、リチウム電池、鉛蓄電池、コンデンサ、燃料電池用セパレータとして使用するか、若しくはその中に使用することができる新規な及び/又は改良された微多孔質ポリオレフィン膜と、該膜及び/又はセパレータを形成するために使用することができる新規な及び/又は改良された方法と、に関する。
【背景技術】
【0002】
微多孔質高分子膜は公知であり、様々なプロセスにより作製することが可能であり、この膜を作製するプロセスには、膜の物理的属性に影響を与える材料が含まれる可能性がある。例えば、Kesting,Robert E.,Synthetic Polymeric Membranes,A Structural Perspective,Second Edition,John Wiley & Sons,New York,N.Y.,(1985)を参照されたい。微多孔質高分子膜を作製するための3種の異なる公知のプロセスとしては:乾式延伸法(セルガード(CELGARD)法としても知られる)、湿式法、及び粒子延伸法が挙げられる。
【0003】
乾式延伸法(セルガード(CELGARD)法又は乾式法)は、押出しされた非多孔質半結晶性ポリマーの前駆体を、細孔を形成するために縦方向に延伸(MD延伸)した結果として細孔が形成されるプロセスを指す。例えば、Kesting,Ibid.pages 290-297を参照されたい。その内容を参照により本明細書に援用する。この種の乾式延伸法は、湿式法及び粒子延伸法とは異なるものである。一般に、転相法、抽出法、又はTIPS法としても知られる湿式法においては、高分子原料を加工油(可塑剤と称されることもある)と混合し、この混合物を押出した後、加工油を除去することにより細孔が形成される(このフィルムの延伸は油を除去する前又は後に行うことができる)。例えば、Kesting,Ibid.pages 237-286を参照されたい。その内容を参照により本明細書に援用する。湿式法により形成されたフィルムも延伸することができる。
【0004】
程度の差はあるものの、特定の乾式法(セルガード(CELGARD)法及び粒子延伸法及び乾式BOPPを含む)において微多孔膜に認められる問題の1つは、割れ、例えば、MD方向に沿った裂け(splitting)、例えば、破け(tearing)又は裂け(又はMD割れ(splittiness)の問題である。これは、BNBOPP製品においてはさほど大きな問題ではないが、やはり長手方向の破けは依然としてBNBOPPの課題である。薄肉の微多孔膜においては、より厚肉の膜には存在し得る、MD割れを補う「余分な肉厚(extra meat)」が存在しないため、MD割れの問題は深刻化する。
【0005】
乾式法による微多孔膜が薄肉の電池用セパレータとして、又は薄肉の電池シャットダウ
ンセパレータとして使用される場合、MD割れ問題を解決することは特に重要である。微多孔膜電池用セパレータは、電池が占有する空間を最小限に抑えることに加えて、導通抵抗を低減するために薄肉とされる場合がある。微多孔膜セパレータはまた、薄肉であることに加えて、破裂に抵抗する(例えば、突刺強度を向上し、及び/又はMD割れを低減する)のに充分な強度を有するべきである。MD割れ又は破けが発生すると、セパレータの取扱いが、特に電池製造プロセスにおいては困難になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、MD割れの低減等、性能が改良された微多孔膜及びそれを作製するための方法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書において、新規な又は改良された含浸用の基材フィルム、膜、層、若しくはセパレータ、含浸された基材フィルム、膜、層、若しくはセパレータ、含浸された基材フィルム、膜、層、若しくはセパレータが組み込まれた製品、及び/又は関連方法を開示する。含浸された基材フィルム、膜、層、微細層(micro-layer)、又はセパレータは、多層構造又は複合構造の1又は複数の層又は微細層とすることができる。例えば、含浸された基材フィルム、膜、層、微細層、又はセパレータは、1又は複数の、他の含浸された若しくは含浸されていない基材フィルム、膜、層、微細層、及び/若しくはセパレータに、並びに/又は他の基材、材料、層、及び/若しくは同種のものに、貼合(laminate)することができる。また、含浸された基材フィルム、膜、層、微細層、又はセパレータは、完全に含浸されていても、部分的に含浸されていても、第1面が第1材料で含浸され、第2面が第2材料で含浸されていてもよく、第1材料で含浸され、第2材料でその上から(over)含浸されていても、及び/又は同種のものであってもよい。含浸深さは、例えば、これらに限定されるものではないが、基材フィルムの選択、含浸材料の選択、又はその両方により制御することができる。例えば、基材フィルムは、細孔表面又は層が大きくても、細孔表面又は層がより小さくてもよい。他の例として、含浸材料は、高粘度、低粘度、高湿潤性、低湿潤性、良好な浸透性、低い浸透性、及び/又は同種のものを有するように選択、作製、又は混合することができる。少なくとも特定の実施形態によれば、本出願又は本発明は、二次リチウムイオン電池等の電池用セパレータに使用される、並びに、繊維製品、濾過、調湿、及び同種のもの等の他の用途に使用される、改良された含浸膜を作製するための、改良されたポリマー含浸用基材フィルムと、基材フィルム、含浸された基材フィルム、電池用セパレータ、及び/又は同種のもの等を作製及び使用する関連方法と、に関するか又はこれらを提供する。少なくとも選択された実施形態によれば、本出願又は本発明は、電池、リチウム電池、鉛蓄電池、コンデンサ、燃料電池、リチウムイオン電池、ポリマー電池、CE、EDV、ESS、UPS、及び/又はISS電池用のセパレータとして使用することができるか、若しくは該セパレータ中に使用することができる、新規な及び/又は改良された微多孔ポリオレフィン膜と、該膜及び/又はセパレータの形成に使用することができる新規な及び/又は改良された方法と、に関する。少なくとも特定の実施形態によれば、本出願又は本発明は、独自の細孔構造、含浸構造、低減された割れ、例えば、縦方向(MD)割れ、向上した突刺強度、向上した破断伸度、TMA又は圧縮TMA試験における向上した穴形状(裂けることなく、円形である)、向上した釘刺し試験結果(NPT合格)、向上した横方向(TD)引張強度、向上したMD及びTD強度特性のバランス、向上した機能付与性(functionalization)、向上したイオン伝導度を示し、シャットダウンを起こし、粘着性(接着性表面)を有することができ、セラミックコーティングすることができ、IR検出可能であり、SEM検出可能であり、触媒となることができ、架橋を行うことができ、並びに/又は他の向上した性能、機能、及び/若しくは特徴を付与することができる、微多孔膜に関する。本明細書においては、それを作製及び/又は使用する方法も開示する。
【0008】
一態様においては、本明細書において微多孔質高分子膜を形成するための方法を開示する。この方法は、幾つかの実施形態において、次に示すステップ:(1)ポリマーを押出しすることにより、縦方向に配向している非多孔質前駆体フィルムを形成するステップと;(2)縦方向配向非多孔質前駆体フィルムを、温度が5~55摂氏度の間にある低温環境下に延伸することにより、ナノ多孔質前駆体フィルムを形成するステップと;(3)ナノ多孔質前駆体フィルムを、温度が80~200摂氏度の間にある高温環境下に延伸することにより、微多孔質前駆体フィルムを形成するステップと;(4)任意選択で、微多孔質前駆体フィルムに1又は複数の追加のステップを実施するステップと;を含む。幾つかの実施形態において、高温環境下における延伸は、配向している前駆体フィルムを、次に示す方向:縦方向、縦方向と直交する横方向、又は縦方向と90度以外の角度を成して交差する斜め方向、のうちの少なくとも2つに沿って延伸することを、含むか、これらからなるか、又はこれらから基本的になる。この種の延伸の組合せは、径が0.50umを超える細孔等のより大きな細孔を得るためのものである。
【0009】
幾つかの実施形態において、押出ステップは、キャストフィルム押出プロセス、インフレーションフィルム押出プロセス、又は共押出プロセスの一部とすることができる。
【0010】
押出ステップがキャストフィルム押出プロセスの一部である実施形態において、押出しされたポリマーは、ポリオレフィンポリマー、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、又はこれらの混合物を含むか、これらからなるか、又はこれらから基本的になることができ、ポリオレフィンポリマーは、可塑剤、溶媒、又は油剤を使用せずに押出しすることができる。
【0011】
押出ステップがインフレーションフィルム押出プロセスの一部である実施形態において、押出しされたポリマーは、ポリオレフィン、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、又はこれらの混合物を含むか、これらからなるか、又はこれらから基本的になることができる。幾つかの実施形態において、押出しされたポリマーは、0.2~0.5の間にあるメルトインデックス及び/又は450,000以下の重量平均分子量の少なくとも1つを有するポリマーを含むか、これらからなるか、又はこれらから基本的になる。幾つかの実施形態において、押出しされたポリマーは、0.3~0.5の間のメルトインデックス及び/又は400,000以下の重量平均分子量の少なくとも1つを有するポリマーを含むか、これらからなるか、又はこれらから基本的になる。幾つかの実施形態において、押出しされたポリマーは、100万以下の重量平均分子量又は0.02~0.15の間のメルトインデックスを有するポリマーを含むか、これらからなるか、又はこれらから基本的になる。ポリマーは、少なくとも1種の他の成分、例えば、加工油及び/又は有機若しくは無機フィラーと一緒に押出しすることができる。幾つかの実施形態において、ポリマーの押出しは、他の任意の成分を用いずに行われる。例えば、押出しは、加工油又は溶媒を用いずに行われる。
【0012】
インフレーションフィルム押出プロセスの幾つかの実施形態においては、少なくとも1個又は少なくとも2個のエアリングを利用することができる。少なくとも2個のエアリングが用いられる実施形態において、少なくとも2個のエアリングは、共通軸に沿って配置される。インフレーションフィルム押出プロセスの幾つかの実施形態においては、約0.5~7、より好ましくは0.8~1.5のブロー比(BUR)が用いられる。
【0013】
幾つかの実施形態において、押出しにより形成された非多孔質前駆体フィルムは、低温又は高温環境下で延伸する前にアニール処理され、他の幾つかの実施形態において、非多孔質前駆体フィルムは、アニール処理に付されない。
【0014】
低温環境下で延伸した後の、高温環境下における延伸は、ナノ多孔質前駆体フィルムを、横方向(TD)に変化させるか又は変化させずに、フィルムを縦方向(MD)に50%~500%(0.5×~5×)延伸することを含むか、これらからなるか、又はこれらから基本的になることができる。高温環境下における延伸は、ナノ多孔質前駆体フィルムを、縦方向(MD)に変化させるか又は変化させずに、フィルムを横方向(TD)に100%~1000%(1×~10×)延伸することを含むか、これらからなるか、又はこれらから基本的になることができる。他の実施形態において、高温環境下における延伸は、ナノ多孔質前駆体フィルムを、同時に又は任意の順序で逐次、縦方向に、及び縦方向緩和を制御しながら横方向に、延伸することを、含むか、これらからなるか、又はこれらから基本的になることができる。
【0015】
幾つかの実施形態においては、高温環境下で延伸した後、延伸された多孔質膜をカレンダ加工することにより、カレンダ加工された微多孔質高分子膜を形成する。次いで微多孔質高分子膜の細孔に、ポリマーを任意選択で1~20重量%の量と、溶媒とを含む細孔充填組成物を充填することができる。幾つかの実施形態においては、細孔の壁面を細孔充填組成物でコーティングする。
【0016】
他の態様においては、本明細書に記載する方法に従い作製された微多孔質高分子膜を開示する。微多孔質高分子膜は、幾つかの実施形態において、複合体割れ指数(composite splittiness index)(後述する式2で定められるCSI)は、140超、150超、160超、170超、180超、190超、又は200超である。微多孔膜は、円形又は不規則形状の細孔を有することができる。細孔は、膜全体で比較的均一とすることも、Z方向に対し非対称とすることもでき、円形、長円形(oval)、台形、球形(sphereical)、若しくはスリット様、又はこれらの組合せとすることができる。幾つかの好ましい実施形態において、微多孔膜は、単層、二層、三層、又は多層膜とすることができる。微多孔膜の厚みは、4~40ミクロンの間とすることができる。微多孔膜のTD引張強度は、TD延伸(MD緩和を行うか又は行わない)を追加することにより、及び/又は膜に1種若しくは複数種のポリマーベースの含浸物質を含浸するか若しくはコーティングを施すことにより、向上する。幾つかの実施形態において、膜は、MD及びTD引張強度値のバランスがより優れており、例えば、MD引張強度値対TD引張強度値の比は、好ましくは、可能な限り1:1に接近している。例えば、これを0.98:1~1.7:1の間とすることができる。
【0017】
他の態様においては、本明細書に記載する微多孔膜を備えるか、これらからなるか、又はこれらから基本的になる電池用セパレータを開示する。電池用セパレータは、特に好ましい実施形態において、その少なくとも1つの面にコーティングを有する。コーティングは、好ましくは、ポリマーと有機粒子、無機粒子、又は有機及び無機粒子との混合物を含むか、これらからなるか、又はこれらから基本的になる。
【0018】
他の態様においては、本明細書に記載するセパレータの任意の1種を備える二次リチウムイオン電池を開示する。
【0019】
更なる態様においては、二次リチウムイオン電池用電極と直接接触している本明細書に記載する任意の電池用セパレータを備える複合体を記載する。
【0020】
更なる他の態様においては、本明細書に記載する任意の電池用セパレータを備える乗用車又はデバイスを記載する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は例示的なキャストフィルム押出プロセスを示す。
【
図2】
図2はインフレーションフィルム押出プロセスの例を
図2に示す。
【
図5】
図5は、例示的な縦方向配向非多孔質前駆体のSEMを示す。
【
図6】
図6は押出し及びアニール処理された例示的な縦方向配向非多孔質前駆体フィルムのSEMを示す。
【
図7】
図7は縦方向配向非多孔質前駆体を、延伸する方向である縦方向(A)、縦方向と直交する横方向(B)を示す。
【
図8】
図8はローラの双方向矢印で示される方向を示す。
【
図9】
図9は縦方向にのみ延伸された非多孔質前駆体フィルムの表面のSEMを示す。
【
図10】
図10は縦方向にのみ延伸された非多孔質前駆体フィルムの表面のSEMを示す。
【
図11】
図11は、MD高温延伸のみに付すことにより得られた微多孔質前駆体フィルム(左)並びにMD及びTD高温延伸に付すことにより得られた微多孔質前駆体(右)を示す。
【
図12A】
図12Aは片面コーティングされたセパレータ、基材フィルム、又は膜を示す・
【
図12B】
図12Bは両面コーティングされた電池用セパレータ、基材フィルム、又は膜を示す。
【
図14】
図14はMD延伸された乾式法による膜の一例の表面の走査型電子顕微鏡写真を示す。
【
図15】
図15はMD延伸された乾式法による膜の一例の表面の走査型電子顕微鏡写真を示す。
【
図16】
図16はラメラの配向、隣接するラメラ間のフィブリル又は架橋構造の配向等示す。
【
図17】
図17はラメラの配向、隣接するラメラ間のフィブリル又は架橋構造の配向等示す。
【
図18】
図18は、PO基材フィルム膜(左)及び処理された、細孔充填された、又はポリマーが含浸されたPO膜(右)の略図である。
【
図19】
図19は、細孔充填又はポリマー含浸されたPO膜の表面及び断面SEM像である。
【
図20】
図20は、細孔充填又はポリマー含浸されるように構成されたTDC PP膜の表面SEM像である。
【
図21】
図21は、細孔充填又はポリマー含浸されるように構成されたTDO三層膜(PP/PE/PP)の表面SEM像である。
【
図22】
図22は、細孔充填又はポリマー含浸されるように構成されたTDC三層膜(PP/PE/PP)の表面SEM像である。
【
図23】
図23は、細孔充填又はポリマー含浸されるように構成された9層の微細層を有する三層膜(PP/PP/PP/PE/PE/PE/PP/PP/PP)の表面SEM像である。
【
図24】
図24は、細孔充填又はポリマー含浸されたTDO膜の例示的な円形の穴の穴形状の画像である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(1)非多孔質前駆体フィルムを形成するための押出ステップ
押出ステップは、キャストフィルム押出プロセス、インフレーションフィルム押出プロセス、又は共押出プロセスの一部とすることができる。例示的なキャストフィルム押出プロセスを
図1に示す。
【0023】
インフレーションフィルム押出プロセスの例を
図2に示す。共押出プロセスの例を
図3に示す。
【0024】
【0025】
押出しされたポリマーは、少なくとも1種のポリマーを含むか、これらからなるか、又はこれらから基本的になることができる。好ましい実施形態において、ポリマーは、1種又は複数種のポリオレフィン、例えば、ポリプロピレン又はポリエチレン、コポリマー、ブロックコポリマー、ブレンド、ポリオレフィンブレンド、他のポリマー、材料、若しくは添加剤とのブレンド、又はこれらの組合せである。各層又は微細層は、同一のポリマーとすることも、異なるポリマーのコポリマー、ブロックコポリマー、ブレンド、ポリオレフィンブレンド、他のポリマー、材料、若しくは添加剤とのブレンド、又はこれらの組合せとすることができる。他の好ましい可能性のある実施形態において、ポリオレフィン(PO)は、単独での高分子量又は超高分子量ポリオレフィン、又はより低い分子量のポリオレフィンとの組合せである(他の添加剤、作用物質、又はフィラーも含むことができ、この種の添加剤の1種はエラストマーであり、他はステアレートであり、他は架橋剤、他はポリマー若しくはコポリマー、及び/又は同種のものである)。特定の好ましい可能性のある実施形態において、外側の、材料、表面、層、又は複数の層は、ポリプロピレン(PP)層を含み、任意選択で1種又は複数種の内側の、材料、層、又は複数の層は、ポリエチレン(PE)を含む。
【0026】
幾つかの実施形態において、本明細書に記載するポリオレフィンは、超低分子量、低分子量、中分子量、高分子量、又は超高分子量ポリオレフィン、例えば、中又は高分子量ポリエチレン(PE)又はポリプロピレン(PP)とすることができる。例えば、超高分子量ポリオレフィンの分子量は、450,000(450k)以上、例えば、500k以上、650k以上、700k以上、800k以上等とすることができる。高分子量ポリオレフィンの分子量は、250k~450kの範囲、例えば、250k~400k、250k~350k、又は250k~300kの範囲とすることができる。中分子量ポリオレフィンの分子量は、150~250k、例えば、150k~225k、150k~200k、150k~200k等とすることができる。低分子量ポリオレフィンの分子量は、100k~150kの範囲、例えば、100k~125kの範囲とすることができる。超低分子量ポリオレフィンの分子量は100k未満とすることができる。上述の値は重量平均分子量である。幾つかの実施形態において、本明細書に記載する微多孔膜又はそれを備える電池の強度若しくは他の特性を向上するために、より高分子量のポリオレフィンを使用することができる。改変された乾式法では、少量の溶媒又は油剤を使用することができ、分子量が約600k以上のポリマーを使用することができる。幾つかの実施形態においては、より分子量の低いポリマー、例えば、中、低、又は超低分子量ポリマーが有利となり得る。
【0027】
好ましい乾式法(又は乾式延伸)の実施形態においては、ポリマーの押出しには溶媒又は油剤を使用しない。他の実施形態において、ポリマーは、有機又は無機フィラーを含む1種又は複数種の追加の成分と一緒に押出しすることができる。好ましい実施形態において、押出ステップは、セルガード(CELGARD)(登録商標)法、TD若しくはTDO乾式法、TDC乾式法、BOPP乾式法、二軸延伸乾式法等の乾式法、非常に薄いポリオレフィン膜フィルム、若しくは製品を製造する湿式若しくは乾式法、又はポリマーをβ晶核剤と一緒に押出しするBNBOPP法の一部とすることができる。
【0028】
押出ステップが、例えば、上の
図3及び4に示す共押出プロセスの一部である場合、共押出しされたポリマーは、それぞれ、同一であってもよいし、異なっていてもよい。共押
出しされるポリマーはそれぞれ、本明細書において上に記載したものとすることができる。
【0029】
押出ステップが、例えば、上の
図2及び4に示すインフレーションフィルム押出プロセスの一部である場合、このプロセスは少なくとも1個のエアリング又は少なくとも2個のエアリングを利用することができる。幾つかの実施形態においては、少なくとも2個のエアリングを使用することが好ましい。
【0030】
押出ステップがインフレーションフィルム押出プロセスの一部である他の好ましい実施形態においては、ブロー比を0.5~7とすることができ、好ましい実施形態においては、0.8~1.5とすることができる。ダイの口径又は円筒状フィルムの折り径を変化させることにより、異なるブロー比を達成することができる。ブロー比は次式(1)に従い算出される:
BUR=(0.637×折り径)/ダイ口径 (1)
【0031】
押出ステップにより形成される、縦方向に配向している非多孔質前駆体フィルムはさほど制限されない。フィルムは、1層、1プライ(ply)、単層、2以上の層、2以上のプライ、多層、1若しくは複数の微細層、3以上の微細層、押出し若しくは共押出しされた1若しくは複数のフィルムを備えるか、それからなるか、若しくはそれから基本的になることができ、及び/又は貼合された2以上(可能であれば、好ましくは3以上)の押出し若しくは共押出しされたフィルム(各フィルムは、1又は複数の層、プライ、微細層、又は同種のものを有することができる)を備えるか、それからなるか、若しくはそれから基本的になる複合構造とすることもできる。縦方向配向非多孔質前駆体フィルムは、微細孔を有しない。これは、細孔を形成する延伸が未だ行われていないフィルムであり、例えば、縦方向(MD)又は横方向(TD)の延伸に未だ付されていない。例示的な縦方向配向非多孔質前駆体のSEMを
図5に示す。
【0032】
幾つかの実施形態において、縦方向配向非多孔質前駆体フィルムは、低温延伸又は高温延伸を行う前にアニール処理することができる。特定の理論に束縛されることを望むものではないが、アニール処理ステップにより、整列した(row)ラメラ構造を完成させることができると考えられている。例えば、押出し及びアニール処理された例示的な縦方向配向非多孔質前駆体フィルムのSEMを
図6に示す。
【0033】
(2)微多孔膜又はフィルムを形成するための高温延伸ステップ
延伸ステップはさほど制限されず、縦方向配向非多孔質前駆体を、次に示す方向の少なくとも2つに沿って延伸することを含むか、これらからなるか、又はこれらから基本的になることができる:縦方向(
図7のA)、縦方向と直交する横方向(
図7のB)、又は縦方向と交差し、90度以外の角度を成す斜め方向(
図7の他の全ての線)。
【0034】
図7に関しては、斜め方向を示す線は制限されない。縦方向と90度以外の角度を成すとは、斜め方向が、縦方向と直交する(即ち、それと90度を成す)横方向に沿っていない(即ちそれと同一ではない)ことのみを意味する。延伸は、同時に又は逐次、任意の順序で行うことができる。好ましい実施形態において、縦方向配向非多孔質前駆体フィルムは低温延伸され、次いで、縦方向に沿って、並びに横方向及び縦方向と90度以外の任意の角度で交差する斜め方向の少なくとも1つに沿って、同時に又は逐次、任意の順序で高温延伸される。幾つかの実施形態において、高温延伸は次に示すように行うことができる:縦方向に沿って及び横方向に沿って同時に;縦方向に沿って及び斜め方向に沿って同時に;縦方向及び横方向に沿って、逐次、任意の順序で;縦方向に沿って及び斜め方向に沿って、逐次、任意の順序で;縦方向及び2以上の異なる斜め方向に沿って、逐次、任意の順序で;縦方向に沿って、横方向に沿って、及び少なくとも1つの斜め方向に沿って、逐
次、任意の順序で。特定の理論に束縛されることを望むものではないが、縦方向に、及び、縦方向に制御下に緩和しながら横方向又は斜め方向の少なくとも1つの方向に高温延伸を行うことにより、低減された縦方向割れ、向上したTD強度、及び/又は同種のものを含む向上した特性を有する微多孔膜が得られると考えられている。このような高温延伸ステップにより、横方向及び/又は斜め方向の配向性が向上すると共に、縦方向(MD)割れ等の割れの低減に寄与することができると考えられている。
【0035】
延伸は、本明細書に述べた目標と矛盾しない任意の手段で達成することができる。幾つかの実施形態において、延伸は、連続した回転ローラ(sequential speed roller)及び/又はテンターフレーム延伸設備を用いて達成される。斜め方向に沿った延伸は、フィルムがローラに侵入する際にフィルムの縦方向に対し所定の角度に向けられているローラを用いて達成することができる。例えば、ローラは
図8の双方向矢印で示される方向に向けることができる。
【0036】
縦方向にのみ延伸された非多孔質前駆体フィルムの表面のSEMを
図9~10に示す。
【0037】
(3)アニール処理、延伸、次いで熱固定
延伸後に行われる、最終メソ多孔質又は微多孔質フィルムを形成するための熱固定はさほど制限されない。幾つかの実施形態において、熱固定ステップは、例えば、電池用セパレータとして、又はコーティング若しくは含浸される基材フィルムとして使用することができる最終微多孔膜を形成することができる。他の実施形態において、微多孔膜又はフィルムは、電池用セパレータとして使用することができる最終微多孔膜又はナノ多孔膜を形成するために、カレンダ加工や細孔充填等の更なる処理ステップに付される。
【0038】
高温延伸は、80~200摂氏度、90~150摂氏度、100~140摂氏度、105~135摂氏度、110~130摂氏度、又は120~125摂氏度の温度で行うことができる。例えば、高温延伸は、これらの範囲内のいずれかの温度のオーブンで実施することができる。
【0039】
縦方向(MD)延伸、特に初回即ち最初のMD高温延伸により、非多孔質膜前駆体中に細孔を形成することができる。縦方向(MD)高温延伸は、単回のステップとして又は複数回のステップとして実施することができる。一実施形態においては、縦方向の総延伸倍率を50~500%の範囲(即ち0.5~5×)とすることができ、他の実施形態においては、100~300%の範囲(即ち、1~3×)とすることもできる。これは、膜前駆体の幅(MD方向)が、MD高温延伸の最中に、初期幅、即ち、何らかの延伸を行う前と比較して、50~500%又は100~300%増大することを意味する。幾つかの好ましい実施形態において、膜前駆体は、180~250%(即ち1.8~2.5×)の範囲で延伸される。縦方向延伸を行う最中に、前駆体は、横方向に収縮する可能性がある。幾つかの好ましい実施形態において、10~90%TD緩和、20~80%TD緩和、30~70%TD緩和、40~60%TD緩和、少なくとも20%TD緩和、50%等のTD緩和が、MD延伸の最中若しくは後、好ましくは後に、又は、MD延伸の少なくとも1つのステップの最中若しくは後、好ましくは後に実施される。特定の理論に束縛されることを望むものではないが、TD緩和を行いながらMD高温延伸を実施することにより、MD延伸で形成された細孔が小さいまま維持されると考えられている。他の好ましい実施形態において、TD緩和は実施されない。
【0040】
MD高温延伸のみに付された(TD高温延伸に付されていない)膜前駆体のMD引張強度は高く、例えば、150kg/cm2以上又は200kg/cm2以上の高さとすることができる。しかしながら、このようなMD高温延伸のみが行われた膜前駆体のTD引張強度及び突刺強度は理想的でない可能性もある。突刺強度は、例えば、300gf未満とな
り得、TD引張強度は、例えば、200kg/cm2未満又は150kg/cm2未満となり得る。
【0041】
したがって、特に好ましい実施形態は、縦方向及び横方向の両方の高温延伸を実施したものである。
【0042】
前駆体の横方向(TD)高温延伸はさほど制限されず、本明細書に述べる目標と矛盾しない任意の方法で実施することができる。横方向延伸は単回のステップ又は複数回のステップで実施することができる。一実施形態において、横方向高温延伸総倍率は、100~1200%の範囲、200~900%の範囲、450~600%の範囲、400~600%の範囲、400~500%の範囲等とすることができる。一実施形態において、制御下における縦方向緩和は5~80%の範囲とすることができ、他の実施形態においては、15~65%の範囲とすることができる。一実施形態において、TD高温延伸は複数回のステップで実施してもよい。横方向高温延伸の最中に、前駆体を縦方向に収縮させてもよいし、させなくてもよい。横方向高温延伸を複数回のステップで行う一実施形態において、最初の横方向高温延伸ステップは、制御下における縦方向緩和を伴う横方向高温延伸を行い、続いて、横方向及び縦方向延伸を同時に行い、続いて、縦方向延伸も縦方向緩和も行わずに横方向緩和を行うことを含むことができる。例えば、TD高温延伸は、縦方向(MD)緩和を行うか又は行わずに実施することができる。幾つかの好ましい実施形態においては、これは、10~90%MD緩和、20~80%MD緩和、30~70%MD緩和、40~60%MD緩和、少なくとも20%MD緩和、50%等のMD緩和を実施する。
【0043】
横方向(TD)高温延伸は、例えば、製造時にTD高温延伸に付しておらず、縦方向高温延伸のみに付した微多孔膜と比較して、横方向の引張強度を向上させることができ、また、微多孔膜の割れを低減することができる。厚みを低減することも可能であり、これは望ましいことである。しかしながら、TD延伸に付すことにより、JISガーレー(JIS Gurley)の低下も起こり、例えば、JISガーレーが100未満又は50未満となり、また、MD及びTD高温延伸膜の空孔率は、MD高温延伸のみに付された前駆体と比較して上昇する可能性もある。その理由の少なくとも一部は、
図11に示すように、微細孔径(size)がより大きいことにある可能性がある。
図11には、MD高温延伸のみに付すことにより得られた微多孔質前駆体フィルム(左)並びにMD及びTD高温延伸に付すことにより得られた微多孔質前駆体(右)を示す。双方向矢印はMD方向を示す。
【0044】
図11の微多孔質前駆体は、斜め延伸が製造プロセスの一部であった場合、
図11に示したものとは異なる細孔構造を有することになる。例えば、細孔はスリット形状(
図11の左側)又は円形(
図11の右側)ではなく、より不規則な形状を有し得る。
【0045】
(4)任意的な追加ステップ
幾つかの実施形態において、微多孔質前駆体フィルムは最終微多孔膜製品であるが、幾つかの実施形態においては、微多孔質前駆体フィルムを1又は複数の追加ステップに付すことにより、微多孔膜を得ることができる。本明細書に記載する方法は、例えば、微多孔質前駆体フィルムに、次に示す追加ステップの少なくとも1つを実施することを更に含むことができる:(a)カレンダ加工ステップ、(b)本明細書において上に記載した追加の高温又は低温延伸ステップ、(c)本明細書において上に記載した追加の高温TD延伸ステップ(MD緩和を行うか又は行わない)、及び(d)細孔充填又は含浸ステップ。幾つかの実施形態においては、ステップ(a)~(d)の少なくとも2、少なくとも3、又は4つ全てを実施することができる。
【0046】
カレンダ加工ステップはさほど制限されず、本明細書に述べた目標と矛盾しない任意の
方法で実施することができる。例えば、幾つかの実施形態において、カレンダ加工ステップは、微多孔質前駆体フィルムの厚みを低減する手段として、微多孔質前駆体フィルムの空孔率を制御下に低下させるための手段として、及び/又は微多孔質前駆体フィルムの横方向(TD)引張強度若しくは突刺強度を更に向上するための手段として、実施することができる。カレンダ加工はまた、強度、湿潤性、及び/又は均一性を向上させることもでき、また、製造プロセスの最中、例えば、MD及びTD延伸プロセスの最中に入り込む表面層の欠陥を低減することもできる。カレンダ加工された微多孔質前駆体フィルムは、改良されたコーティング性を有することができる。凹凸のある(texturized)カレンダ加工ロールを用いることにより、コーティングの基材膜への接着性の向上を助けることができる。
【0047】
カレンダ加工は、低温(室温未満)、周囲温度(室温)、又は高温(例えば、90℃)で行うことができ、膜又はフィルムの厚みを制御下に低減するための圧力の印加又は熱及び圧力の印加を含むことができる。加えて、カレンダ加工プロセスには、熱の影響を受けやすい材料を高密度化するための熱、圧力、及び速度の少なくとも1つを用いることができる。更に、カレンダ加工プロセスにおいては、熱の影響を受けやすい材料を選択的に高密度化すること、均一又は不均一なカレンダ加工条件を得ること(例えば、平滑なロール、凹凸のあるロール、パターン形状を有するロール、微細パターン形状を有するロール、ナノパターン形状を有するロール、速度変化、温度変化、圧力変化、湿度変化、二段ロールステップ、多段ロールステップ、又はこれらの組合せを用いることによる)、改良された、所望の、又は独自の構造、特徴、及び/又は性能を生じさせること、結果として得られる構造、特徴、及び/又は性能、及び/又は同種のものを生じさせるか又は制御すること、を目的として、均一又は不均一な熱、圧力、及び/又は速度を用いることができる。
【0048】
好ましい実施形態においては、微多孔質前駆体フィルムをカレンダ加工することにより、微多孔質前駆体フィルムの厚みが低減される。幾つかの実施形態において、厚みは、30%以上、40%以上、50%以上、又は60%以上低減される。幾つかの好ましい実施形態において、厚みは、10ミクロン以下、場合によっては9、又は8、又は7、又は6、又は5、又は4ミクロン以下まで低減される。
【0049】
細孔充填、細孔コーティング、又は含浸ステップは、細孔充填組成物を、マクロ多孔質、メソ多孔質、又は微多孔質前駆体フィルムに適用することを含むことができ、細孔充填組成物は、溶媒及びポリマーを細孔充填又はコーティング組成物全体に対し1~20重量%の量で含むことができる。細孔充填組成物は、浸漬コーティング(immersion
coating)、ロールコーティング、ディップコーティング(dip coating)等を含む任意のコーティング方法により適用することができる。
【0050】
微多孔膜
他の態様において、本明細書に記載する微多孔膜は、複合体割れ指数(CSI)として知られる試験により測定される割れが改良されている。CSIは、CSI値を式2(後述)で定めるように考案されたものであり、CSIは、突刺強度試験時に測定される第1ピーク荷重、第2ピーク荷重、TD引張強度、MD引張強度、及びTD伸度の関数である。
【0051】
CSI=(A-|B-A|1.8)×C×(D×E)/106 (2)
式中:
A=第1ピーク荷重/(厚み×(1-空孔率(%)));
B=第2ピーク荷重/厚み;
C=TD伸度;
D=MD引張強度;
E=TD引張強度;
であり、ここで、第1及び第2ピーク荷重はグラム重単位であり、厚みの値はミクロン単位であり、MD及びTD引張強度はグラム重単位であり、TD伸びは百分率で表される。CSI値が高ければ、微多孔膜が、リチウムイオン電池内において、製造プロセスにおける電池セルの巻取ステップにおいても、電池の使用期間全体を通して繰り返される充電・放電サイクルの間に起こり得る膜の膨張及び収縮においても、優れた強度性能を示すことができると予測される。
【0052】
本明細書に記載する微多孔膜のCSI値は、140超、150超、160超、170超、180超、190超、200超又は250超である。
【0053】
微多孔膜は、本明細書に開示する方法のいずれか1つに従い作製することができる。幾つかの好ましい実施形態において、微多孔膜は、表面コーティング、例えば、その特性を向上させることができるセラミックコーティングを追加しなくてさえも、優れた特性を有する。
【0054】
幾つかの好ましい実施形態において、例えば、その上に追加の表面コーティングを有しない微多孔膜又は細孔がコーティングされた膜自体の厚みは、2~50ミクロンの範囲、4~40ミクロンの範囲、4~30ミクロンの範囲、4~20ミクロンの範囲、4~10ミクロンの範囲にあるか、又は10ミクロン未満である。厚み、例えば、10ミクロン以下の厚みは、カレンダ加工ステップに付しても付さなくても達成することができる。厚みは、Emveco Microgage 210-Aマイクロメーター厚み試験器及びASTM D374の試験手順を用いて、マイクロメートル、μm、ミクロン、又はum単位で測定することができる。一部の用途には薄い微多孔膜が好ましい。例えば、電池用セパレータとして使用される場合、より薄いセパレータ膜を使用することによって、電池により多くのアノード及びカソードを使用することが可能になり、結果として、エネルギー密度がより高く、及び出力密度がより高い電池が得られる。
【0055】
幾つかの好ましい実施形態においては、微多孔膜のJISガーレーを、50~300、75~300、及び/又は100~300の範囲とすることができる。しかしながら、JISガーレー値はさほど制限されず、より高くても、例えば、300を超えても、より低くても、例えば、50未満であってもよく、JISガーレー値は各種目的に望ましいものとすることができる。本明細書におけるガーレーは、日本工業規格(JISガーレー)として定義され、本明細書においては、王研透気度試験機を用いて測定される。JISガーレーは、4.9インチ(12.5cm)の一定圧力を水に印加した場合に、1平方インチ(6.5cm2)のフィルムに100ccの空気を通過させるのに必要な時間の秒数とし
て定義される。微多孔膜全体又は微多孔膜の個々の層、例えば、三層膜の個々の層のJISガーレーを測定することができる。本明細書において特段の指定がない限り、報告するJISガーレー値は微多孔膜の値である。少なくとも一つの実施形態においては、所望の強度及び/又は他の性能を有する、ガーレーの低い膜が提供される。少なくとも他の実施形態においては、所望の強度及び/又は他の性能(例えば、所望の破断伸度、突刺強度、収縮、低減された割れ、落下試験に合格する性能、釘刺し試験に合格する性能、及び/又は同種のもの)を有する、薄肉の、ガーレーが低い膜が提供される。
【0056】
幾つかの好ましい実施形態において、微多孔膜の突刺強度は、正規化を行わない場合は250(gf)超、又は厚み/空孔率に関し正規化した場合、例えば、厚み14ミクロン及び空孔率50%に正規化した場合は、300超、350超、若しくは400超(gf)である。場合によっては、突刺強度は、300~700(gf)の間、300~600(gf)の間、300~500(gf)の間、300~400(gf)の間等である。幾つかの実施形態において、特定の用途に所望される場合、突刺強度は、300gf未満又は600gf超とすることができるが、開示した微多孔膜を使用することができる1つの様
式である電池用セパレータ用として良好に作用する範囲は、300(gf)~700(gf)の範囲である。突刺強度は、ASTM D3763に基づき、インストロン(Instron)型式4442を使用して測定される。測定は、微多孔膜の幅方向に亘り実施する。突刺強度は試験片を突き破るのに必要な力と定義される。
【0057】
任意の微多孔膜(例えば、何らかの空孔率又は厚みを有する)の突刺強度及び厚みの測定値を、厚み14ミクロン及び空孔率50%に対し正規化する場合は、次式(3)を用いて行う:
[突刺強度の測定値(gf)・14ミクロン]/[厚みの測定値(ミクロン)・空孔率50%] (3)
【0058】
測定された突刺強度値を正規化することにより、より厚い又はより薄い微多孔膜を一緒に比較することが可能になる。より薄い対応物と同一の方式で作製されたより厚い微多孔膜は、多くの場合、その厚みがより厚いことに起因して、突刺強度を有することになる。
【0059】
幾つかの好ましい実施形態において、微多孔膜の空孔率、例えば、表面空孔率は、約20~約90%、場合により約30~約80%、場合により約40~約70%、場合により約45~約65%等である。幾つかの実施形態において、特定の用途に所望される場合、空孔率は、70%超又は40%未満とすることができるが、開示した微多孔膜を使用することができる1つの様式である電池用セパレータ用として作用する範囲は、40~70%の範囲である。空孔率はASTM D-2873を用いて測定され、基材の縦方向(MD)及び横方向(TD)に測定した場合の、微多孔膜領域内の空隙、例えば、細孔の割合として定義される。微多孔膜全体又は微多孔膜の個々の層、例えば、三層膜の個々の層の空孔率を測定することができる。本明細書において特段の指定がない限り、報告する空孔率の値は微多孔膜の値である。
【0060】
幾つかの好ましい実施形態において、微多孔膜は、高い縦方向(MD)及び横方向引張強度を有する。縦方向(MD)及び横方向(TD)引張強度は、インストロン(Instron)型式4201を用いてASTM-882の手順に従い測定される。幾つかの実施形態において、TD引張強度は、250kg/cm2以上であり、場合により300kg
/cm2以上であり、場合により400kg/cm2以上であり、場合により500kg/cm2以上である。MD引張強度に関しては、MD引張強度は、場合により500kg/
cm2以上、600kg/cm2以上、700kg/cm2以上、800kg/cm2以上、900kg/cm2以上、又は1000kg/cm2以上である。MD引張強度は2000kg/cm2と高くすることもできる。
【0061】
幾つかの好ましい実施形態においては、微多孔膜の縦方向(MD)及び横方向(TD)の収縮を、例えコーティングを、例えばセラミックコーティングを適用しなくてさえも、低下させることができる。例えば、105℃におけるMD収縮率を20%以下又は15%以下とすることができる。120℃におけるMD収縮率を、35%以下、29%以下、25%以下等とすることができる。105℃におけるTD収縮率を、10%以下、9%以下、8%以下、7%以下、6%以下、5%以下、又は4%以下とすることができる。120℃におけるTD収縮率は、12%以下、11%以下、10%以下、9%以下、又は8%以下とすることができる。収縮率は、試験片、例えば、その上にコーティングを有しない微多孔膜を2枚の紙のシートの間に配置し、次いでこれを、紙の間に試験片を保持するように一緒に挟み、オーブン内に吊るすことにより測定される。105℃で試験する場合、試験片を105℃のオーブンに所定の時間、例えば、10分間、20分間、又は1時間放置する。オーブン内で規定の時間が経過した後、各試験片を取り出し、平らな台の上に、試験片の長さ及び幅を正確に測定するためにシワを伸ばして平らに均し、両面粘着テープを使用して貼り付ける。収縮を、MD方向、即ちMD収縮を測定するため、及び、TD方向
(MD方向と直交する方向)、即ちTD収縮を測定するために、両方向で測定し、MD収縮率(%)及びTD収縮率(%)として表す。
【0062】
幾つかの好ましい実施形態において、微多孔膜の平均絶縁破壊は900~2000ボルトの間にある。絶縁破壊電圧の測定は、微多孔膜の試験片を、それぞれ直径2cmの円形の平らな先端部を有する2本のステンレス鋼ピンの間に配置し、Quadtech Model Sentry 20ハイポットテスターを使用してピンの間に印加する電圧を増大させることにより実施し、表示された電圧(電流が試験片を通過して放電した電圧)を記録した。
【0063】
幾つかの好ましい実施形態において、コーティングを適用していない微多孔膜又は何らかのコーティング、例えば、セラミックコーティングを適用する前の微多孔膜は、次に示す各特性を有する:TD引張強度が250kg/cm2超;正規化後又は正規化前の突刺
強度が300gf超;及びJISガーレーが50超。幾つかの実施形態において、JISガーレーは、50~300の間、又は100~300の間にあり、TD引張強度は250kg/cm2超であり、突刺強度は300gf超である。幾つかの実施形態において、正
規化前又は厚み及び空孔率に対し、例えば、厚み14ミクロン及び空孔率50%に対し正規化した後の突刺強度は、300~600(gf)の間にあり、場合によっては、正規化前又は厚み及び空孔率に対し、例えば、厚み14ミクロン及び空孔率50%に対し正規化した後の突刺強度は400~600(gf)の間にあり、TD引張強度は250kg/cm2超であり、JISガーレーは50超である。幾つかの実施形態において、TD引張強
度は250kg/cm2~600kg/cm2の間、250~590kg/cm2の間、又
は250~500kg/cm2の間にあり、JISガーレーは50超であり、突刺強度は
300(gf)超である。
【0064】
幾つかの好ましい実施形態において、MD/TD引張強度比は、1~5、1.45~2.2、1.5~5、2~5等とすることができる。
【0065】
本明細書に開示する微多孔膜及びセパレータは、例えば、高温先端部による穴拡大試験(hot tip hole propagation study)において所望の挙動を示す、向上した耐熱性を有することができる。高温先端部による試験は、点加熱条件下における微多孔膜の寸法安定性を測定するものである。この試験には、セパレータに高温の半田ごての先端を接触させ、結果として生じた穴を測定することが含まれる。一般に、穴がより小さいものがより望ましい。幾つかの実施形態において、高温先端部から拡大した値は、2~5mm、2~4mm、2~3mm又はこれらの値未満とすることができる。
【0066】
幾つかの実施形態において、曲路率(tortuosity)は、1超、1.5超、又は2超、又はそれを超える値とすることができるが、好ましくは1~2.5の間にある。電池の電極間に曲路率が高い微多孔質セパレータ膜を有することは、電池の破損を回避するために有利であることが見出された。真っ直ぐな貫通孔を有する膜は、単調な捻れ(tortuosity of unity)を有すると定義される。デンドライトの成長が阻止される少なくとも特定の好ましい電池用セパレータ膜には、曲路率の値が1を超えることが好ましい。曲路率の値が1.5を超えることがより好ましい。一層好ましくは、セパレータの曲路率の値は2を超える。特定の理論に束縛されることを望むものではないが、少なくとも特定の好ましい乾式及び/又は湿式法により得られるセパレータ(例えば、セルガード(Celgard)(登録商標)電池用セパレータ)の微多孔構造の捻れは、デンドライトの成長の制御及び阻止において重要な役割を果たすことができる。少なくとも特定のセルガード(Celgard)(登録商標)微多孔質セパレータ膜の細孔は、デンドライトがアノードからセパレータを通してカソードまで成長することを制限する、相
互に連結した捻れた経路の網目を生成することができる。孔の網目が曲がりくねっているほど、セパレータ膜の曲路率は高くなる。好ましい可能性のあるセルガード(Celgard)(登録商標)膜は、Celgard(登録商標)Zシリーズの膜、又は他のセルガード(Celgard)(登録商標)膜、又はある程度TD延伸された(MD緩和されているか又はされていない)セパレータであり得る。
【0067】
幾つかの実施形態において、静止摩擦係数(COF)は、1未満、0.9未満、0.8未満、0.7未満、0.6未満、0.5未満、0.4未満、0.3未満、0.2未満等とすることができる。静止COF(摩擦係数)は、「紙及び板紙-静及び動摩擦係数の測定方法(Method for Determining Coefficient of
Friction of Paper and Board)」と題したJIS P8147に準拠して測定される。
【0068】
ピン引抜力は1000グラム重(gf)未満、900gf未満、800gf未満、700gf未満、600gf未満等とすることができる。ここでピン引抜き試験を次に説明する:
電池巻取装置を使用してセパレータ(その少なくとも1つの面にコーティング層が適用された多孔質基材を備えるか、これらからなるか、又はこれらから基本的になる)をピン(又は芯材又は心棒)の周りに巻取った。ピンは、平滑な外面を有する2つの半割部からなる直径0.16インチ(0.41cm)の円柱形の心棒である。これらの半割部はそれぞれ半円形の断面を有する。後に検討するセパレータをピンに巻取る。セパレータに印加する初期力(接線方向)を0.5kgfとし、その後、セパレータを、24秒間で10インチ(25.4cm)の速度で巻取る。巻取りを行う間、心棒に巻取られるセパレータをテンションローラに係合させる。テンションローラは、セパレータ供給側の反対側に位置する直径5/8インチ(1.6cm)のローラと、1バールの空気圧が印加される(連動時)3/4インチ(1.9cm)のエアシリンダと、ローラ及びシリンダを相互に連結する1/4インチ(0.64cm)のロッドとを備える。
【0069】
セパレータは2枚の30mm(幅)×10インチ(25.4cm)の膜の試験片から構成される。これらのセパレータ5組を試験し、結果を平均し、平均値を報告する。巻取装置のセパレータ供給ロール上で各試験片を1インチ(2.5cm)重ねて継ぎ合わせる。セパレータの自由端、即ち、継ぎ合わせた端部の遠位端から1/2インチ(1.3cm)及び7インチ(17.8cm)の場所にインクで印を付ける。1/2インチ(1.3cm)の印をピンの向こう側(即ち、テンションローラに隣接している側)に合わせ、セパレータをピンの半割部の間に噛ませ、テンションローラを係合させて巻取りを開始する。7インチ(17.8cm)の印がゼリーロール(jelly roll)(ピンに巻取られたセパレータ)から約1/2インチ(1.3cm)の位置に来たら、セパレータをその印の位置で切断し、セパレータの自由端をゼリーロールに接着テープ片で固定する(幅1インチ(2.5cm)、1/2インチ(1.3cm)重ねる)。ゼリーロール(即ち、セパレータを巻付けたピン)を巻取装置から取り外す。許容されるゼリーロールは、シワが寄っておらず、入れ子状(telescoping)になっていないものである。
【0070】
ゼリーロールをロードセル(50ポンド×0.02ポンド;Chatillon DFGS50)を取付けた引張強度試験機(即ち、ノースカロライナ州グリーンズボロ(Greensboro,N.C.)のシャチロン・インコーポレーテッド(Chatillon Inc.)からのChatillon Model TCD500-MS)に取付ける。ひずみ速度を2.5インチ(6.4cm)毎分とし、ロードセルからのデータを100点毎秒の割合で記録する。力のピークをピン引抜力として報告する。
【0071】
電池用セパレータ
他の態様においては、本明細書に開示する少なくとも1種の微多孔膜を備えるか、これらからなるか、又はこれらから基本的になる電池用セパレータについて説明する。幾つかの実施形態において、少なくとも1種の微多孔膜は、片面又は両面コーティングされた電池用セパレータを形成するために片面又は両面をコーティングすることができる。本明細書における幾つかの実施形態による片面コーティングされたセパレータ、基材フィルム、又は膜、及び両面コーティングされた電池用セパレータ、基材フィルム、又は膜を
図12に示す。
【0072】
コーティング層は、任意のコーティング組成物又は堆積物(例えば、有機、無機、ポリマー、ゲル、セラミック、金属、クレー、充填、非充填、接着性、導電性、非導電性、多孔質、非多孔質、連続、不連続、又はこれらの組合せ)を備えるか、これらからなるか、若しくはこれから基本的になるか、及び/又はこれらから形成することができる。例えば、米国特許第6,432,586号明細書に記載されている任意のコーティング組成物を使用することができる。コーティング層は、湿潤、乾燥、架橋、未架橋等とすることができる。
【0073】
一態様において、コーティング層はセパレータの最外コーティング層とすることができ、例えば、その上に他の異なる層が形成されていなくてもよいし、或いは、コーティング層の上に少なくとも1つの他の異なるコーティング層が形成されていてもよい。例えば、幾つかの実施形態においては、多孔質基材の少なくとも1つの面上に形成されたコーティング層の上に又はその最上部に異なるポリマーコーティング層をコーティングすることができる。幾つかの実施形態において、その異なるポリマーコーティング層は、ポリビニリデンジフルオリド(PVdF)又はポリカーボネート(PC)の少なくとも1種を含むか、これらからなるか、又はこれらから基本的になることができる。
【0074】
幾つかの実施形態において、コーティング層は、微多孔膜の少なくとも片面に既に適用されている1又は複数の他のコーティング層の上に適用される。例えば、幾つかの実施形態において、微多孔膜に既に適用されているこれらの層は、無機材料、有機材料、導電性材料、半導電性材料、非導電性材料、反応性材料、又はこれらの混合物の少なくとも1種の、薄層、非常に薄い層、又は超薄層である。幾つかの実施形態において、これらの層は、金属又は金属酸化物含有層である。幾つかの好ましい実施形態において、金属含有層及び金属酸化物含有層、例えば、金属含有層に使用される金属の金属酸化物は、多孔質基材上に、本明細書に記載するコーティング組成物を含むコーティング層を形成する前に形成される。場合によっては、これらの既に適用された1又は複数の層の全体の厚みは、5ミクロン未満、場合によっては4ミクロン未満、場合によっては3ミクロン未満、場合によっては2ミクロン未満、場合によっては1ミクロン未満、場合によっては0.5ミクロン未満、場合によっては0.1ミクロン未満、場合によっては0.05ミクロン未満である。
【0075】
幾つかの実施形態において、本明細書において上に記載したコーティング組成物、例えば、米国特許第8,432,586号明細書に記載されているコーティング組成物から形成されたコーティング層の厚みは、約12μm未満、場合によっては10μm未満、場合によっては9μm未満、場合によっては8μm未満、場合によっては7μm未満、場合によっては5μm未満である。少なくとも特定の選択された実施形態において、コーティング層は、4μm未満、2μm未満、又は1μm未満である。
【0076】
コーティング方法はさほど制限されず、本明細書に記載するコーティング層は、例えば、本明細書に記載する多孔質基材上に、次に示すコーティング方法の少なくとも1つによりコーティングすることができる:押出コーティング、ロールコーティング、グラビアコーティング、印刷、ナイフコーティング、エアナイフコーティング、スプレーコーティン
グ、ディップコーティング、又はカーテンコーティング。コーティングプロセスは室温又は高温で実施することができる。
【0077】
コーティング層は、非多孔質、ナノ多孔質、微多孔質、メソ多孔質、又はマクロ多孔質のいずれかとすることができる。コーティング層のJISガーレーは、700以下、場合によっては600以下、500以下、400以下、300以下、200以下、又は100以下とすることができる。非多孔質コーティング層の場合、JISガーレーは、800以上、1,000以上、5,000以上、又は10,000以上(即ち「無限(infinite)ガーレー」)とすることができる。非多孔質コーティング層の場合、コーティングは、乾燥時は非多孔質であるが、特に電解質で湿潤した場合に良好なイオン伝導体となる。
【0078】
複合体又はデバイス
本明細書において上に記載したいずれかの電池用セパレータと、それと直接接触するように設けられた1又は複数の電極、例えば、アノード、カソード、又はアノード及びカソードと、を備える複合体又はデバイス。電極の種類はさほど制限されない。例えば、電極はリチウムイオン二次電池に使用するのに適したものとすることができる。
【0079】
本明細書における幾つかの実施形態によるリチウムイオン電池を
図13に示す。
【0080】
任意のカソード及びアノードが想定されるが、好ましい可能性のあるアノードは、エネルギー容量を372mAh/g以上、好ましくは≧700mAh/g、最も好ましくは≧1000mAH/gとすることができる。アノードはリチウム金属箔又はリチウム合金箔(例えば、リチウムアルミニウム合金)、又は金属リチウム及び/若しくはリチウム合金と、炭素(例えば、コークス、グラファイト)、ニッケル、銅等の材料との混合物から構成される。アノードはリチウムを含む層間化合物又はリチウムを含む挿入化合物のみから作製されていてもよいし、そうでなくてもよい。
【0081】
好適なカソードは、アノードと適合性を有する任意のカソードとすることができ、層間化合物、挿入化合物、又は電気化学活性ポリマーを含むことができる。好適な層間化合物材料としては、例えば、MoS2、FeS2、MnO2、TiS2、NbSe3、LiCoO2、LiNiO2、LiMn2O4、V6O13、V2O5、及びCuCl2が挙げられる。好適な
ポリマーとしては、例えば、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリアニリン、及びポリチオペン(polythiopene)が挙げられる。
【0082】
本明細書において上に記載した任意の電池用セパレータは、任意の乗用車、例えば、電気自動車、又はデバイス、例えば、完全に又は一部電池駆動式の携帯電話又はラップトップ型コンピュータに組み込むことができる。
【0083】
新規な又は改良された含浸用基材フィルム、含浸された基材フィルム、含浸された基材フィルムが組み込まれた製品、及び/又は関連方法を、本明細書に示し、特許請求し、又は本明細書に記載する。
【0084】
以下に幾つかの異なる種類の乾式延伸微多孔膜:MD延伸のみ;MD+TD延伸(TD)(又はTDO)(TD延伸中にMD緩和を行うことが好ましい可能性がある);MD+TD延伸+カレンダ加工(TDC);について説明し、図示する。
【0085】
MDのみ(TDなし、Cなし):
図14は、MD延伸された乾式法による膜の一例の表面の走査型電子顕微鏡写真であり、微多孔質構造が、整列した核形成した結晶性ラメラから構成され得ることを示しており、結晶性ラメラは、結晶性ラメラを互いに連結している
フィブリルのタイチェーン様(tie chain-like)構造を有する。細孔は、乾式法によるMD延伸された微多孔膜に特徴的な長方形の細長いスリット形状を有する。
【0086】
セパレータ用のMD延伸された多孔質ポリマーの単層又は多層膜を製造するための方法又はプロセスは:ポリマーを押出しすることにより非多孔質の前駆体膜、層、又は材料を形成することと、非多孔質膜をMDに一軸延伸することにより、MD延伸物を形成することと、を含み、該膜は、スリット様細孔構造を有する少なくとも1つの外面又は表面層を有し、細孔は、隣接するラメラ間の開口部又は空間であり、ラメラは、その片面又は両面が、隣接するラメラ間のフィブリル又は架橋構造により結合され得、膜の少なくとも一部は、隣接するラメラ間の細孔群をそれぞれ含み、ラメラは実質的に横方向に沿って配向しており、隣接するラメラ間のフィブリル又は架橋構造は実質的に縦方向に沿って配向している。
【0087】
MDのみ(TDなし、Cなし):
図15は、MD延伸された乾式法による膜の一例の表面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真像であり、微多孔構造が、整列した核形成した結晶性ラメラから構成され得ることを示しており、結晶性ラメラは、結晶性ラメラを互いに連結しているフィブリルのタイチェーン様構造を有する。細孔は、乾式法によるMD延伸された微多孔膜に特徴的な長方形の細長いスリット形状を有する。
【0088】
セパレータ用のMD延伸された多孔質ポリマーの単層又は多層膜を製造するための方法又はプロセスは:ポリマーを押出しすることにより非多孔質の前駆体膜、層、又は材料を形成することと、非多孔質膜をMDに一軸延伸することにより、MD延伸物を形成することと、を含み、該膜はスリット様細孔構造を有する少なくとも1つの外面又は表面層を有し、細孔は、隣接するラメラ間の開口部又は空間であり、ラメラは、その片面又は両面が、隣接するラメラ間のフィブリル又は架橋構造により結合され得、膜の少なくとも一部は、隣接するラメラ間の細孔群をそれぞれ含み、ラメラは実質的に横方向に沿って配向しており、隣接するラメラ間のフィブリル又は架橋構造は実質的に縦方向に沿って配向している。
【0089】
MD+TD(MD>MD緩和を伴うTD):セパレータ用二軸延伸多孔質ポリマーの単層又は多層膜を製造するための方法又はプロセスは:ポリマーを押出しすることにより非多孔質の前駆体膜、層、又は材料を形成することと、二軸延伸膜を形成するために、非多孔質の膜、層、又は材料を逐次及び/又は同時に二軸延伸することにより、MD+TD延伸多孔質膜を形成することと、を含み、該膜は、独自の丸みのある又は円形の細孔構造を有する少なくとも1つの外面又は表面層を有し、細孔は隣接するラメラ間の開口部又は空間であり、ラメラは、その片面又は両面が、隣接するラメラ間のフィブリル又は架橋構造により結合され得、膜の少なくとも一部は、隣接するラメラ間の細孔群をそれぞれ含み、ラメラは実質的に横方向に沿って配向しており、隣接するラメラ間のフィブリル又は架橋構造は実質的に縦方向に沿って配向している(
図16参照)。
【0090】
TDC(MD>MD緩和を伴うTD>C):セパレータ用の二軸延伸及びカレンダ加工された多孔質ポリマーの単層又は多層膜を製造するための方法又はプロセスは:ポリマーを押出しすることにより非多孔質の前駆体膜、層、又は材料を形成することと、非多孔質膜、層、又は材料を逐次及び/又は同時に二軸延伸することにより、中間体である延伸された多孔質膜を形成することと、中間体である延伸された多孔質膜をカレンダ加工することにより、二軸延伸及びカレンダ加工された膜を形成することと、を含み、該膜は、独自の細孔構造を有する少なくとも1つの外面又は表面層を有し、細孔は隣接するラメラ間の開口部又は空間であり、ラメラは、その片面又は両面が、隣接するラメラ間のフィブリル又は架橋構造により結合され得、膜の少なくとも一部は、隣接するラメラ間の細孔群をそれぞれ含み、ラメラは実質的に横方向に沿って配向しており、隣接するラメラ間のフィブ
リル又は架橋構造は実質的に縦方向に沿って配向しており、ラメラの少なくとも一部の外面は、実質的に平坦化されているか又は平面上である(
図17参照)。
【0091】
少なくとも一実施形態において、本発明のPO浸漬(PO-dipped)膜は、作製後に、他のPO浸漬されていない支持体(他のMD延伸膜、不織(NW)膜、メッシュ、網、又はガラスマット等のマットとすることができる)に貼合することができる。この場合、PO浸漬は二重の機能:強度の向上及び層同士の接着、を果たすことができる。
【0092】
少なくとも他の実施形態において、PO浸漬又は含浸は、勾配をかけた(gradient)又は制御下の含浸又はコーティングとすることができる(例えば、一部を予め湿潤させた膜にPO浸漬液をコーティングする場合)。この場合、コーティングは、膜の一部のみに含浸される。例えば、PO浸漬材料が2種のポリマー樹脂のブレンドであり、一方が他方(こちらが表面付近に残ることになる)よりも膜に容易に浸透する場合、制御下における含浸となり得る。
【0093】
膜又はセパレータは、裁断片(cut piece)、細片(slit)、薄片(leaf)、スリーブ(sleeve)、ポケット(pocket)、包被(envelope)、包装体(wrap)、Z折り、つづら折り(serpentine)、及び/又は同種のものとすることができる。膜又はセパレータは、平坦なシート、テープ、細片、不織物、織物、メッシュ、編物、中空繊維、及び/又は同種のものとすることができる。膜又はセパレータは、電気化学デバイス、電池(battery)、単電池(cell)、ESS、UPS、コンデンサ、スーパーキャパシタ、二重層キャパシタ、燃料電池(PEM、調湿膜等)、触媒担体、担体、パンケーキ状電池(pancake)(アノード、セパレータ、カソード)、基材フィルム、コーティングされた基材フィルム、繊維製品、繊維製品のバリア層、化学防護服、化学防護服のバリア層、防血材(blood barrier)、防水材、濾過媒体、血液、血液成分、血液酸素付加材(blood oxygenator)、使い捨てライター、及び/又は同種のものに使用するように構成することができる。
【0094】
この電池用セパレータは、共押出しされた多層電池用セパレータとすることができる。共押出とは、複数のポリマーが押出しダイ中に同時に運ばれて合一され、ダイから排出されるプロセスを指し、この場合は、少なくとも2種の別個の層の界面で、例えば、この別個の層の界面を形成するポリマーを混ぜ合わせることにより、別個の層が一体化されている、略平面構造形態で排出される。押出しダイは平坦なシート(又はスロット)ダイ又はブローフィルム(又は環状)ダイのいずれかとすることができる。以下に共押出プロセスをより詳細に説明することとする。多層とは、セパレータが少なくとも2つの層を有することを指す。多層はまた、3、4、5、6、7、又はそれを超える数の層を有する構造も指すことができる。各層は、別々のポリマー流れを押出ダイに供給することにより形成される。層は厚みが異なっていてもよい。ほとんどの場合、少なくとも2つの供給流れは、異種のポリマーである。異種のポリマーとは、次を指す:化学的性質の異なるポリマー(例えば、PE及びPP、又はPE及びPEのコポリマーが、化学的性質の異なるポリマーである);及び/又は化学構造が同一であるが、性質が異なるポリマー(例えば、異なる性質を有する2種のPE(例えば、密度、分子量、分子量分布、レオロジー、添加剤(組成及び/又は比率)等))。しかしながら、ポリマーは、同一(same、identical)であってもよい。
【0095】
この電池用セパレータに使用することができるポリマーは押出可能なものである。この種のポリマーは、通常、熱可塑性ポリマーと称される。例示的な熱可塑性ポリマーとしては、これらに限定されるものではないが:ポリオレフィン、ポリアセタール(又はポリオキシメチレン)、ポリアミド、ポリエステル、ポリスルフィド、ポリビニルアルコール、
ポリビニルエステル、及びポリビニリデンが挙げられる。ポリオレフィンとしては、これらに限定されるものではないが:ポリエチレン(例えば、LDPE、LLDPE、HDPE、UHDPEを含む)、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリメチルペンタン、そのコポリマー、及びそのブレンドが挙げられる。ポリアミド(ナイロン)としては、これらに限定されるものではないが:ポリアミド6、ポリアミド66、ナイロン10,10、ポリフタルアミド(PPA)、そのコポリマー、及びそのブレンドが挙げられる。ポリエステルとしては、これらに限定されるものではないが:ポリエステルテレフタルタレート、ポリブチルテレフタレート、そのコポリマー、及びそのブレンドが挙げられる。ポリスルフィドとしては、これらに限定されるものではないが、ポリフェニルスルフィド、そのコポリマー、及びそのブレンドが挙げられる。ポリビニルアルコールとしては、これらに限定されるものではないが:エチレン-ビニルアルコール、そのコポリマー、及びそのブレンドが挙げられる。ポリビニルエステルとしては、これらに限定されるものではないが、ポリ酢酸ビニル、エチレン酢酸ビニル、そのコポリマー、及びそのブレンドが挙げられる。ポリビニリデンとしては、これらに限定されるものではないが:フッ化ポリビニリデン(例えば、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン)、そのコポリマー、及びそのブレンドが挙げられる。
【0096】
ポリマーに様々な材料を添加することができる。これらの材料は、セパレータの個々の層又は全体の性能又は特性を修正又は向上させる目的で添加される。
【0097】
ポリマーの溶融温度を低下させるための材料を添加することができる。典型的には、多層セパレータは、その細孔を予め定められた温度で閉鎖して、電池の電極間のイオンの流れを遮断するように設計された層を含む。この機能は一般に「シャットダウン」と呼ばれる。実施形態において、三層セパレータは、中央にシャットダウン層を有する。層のシャットダウン温度を低下させるために、それを混合するポリマーよりも溶融温度が低い材料を該ポリマーに添加することができる。この種の材料としては、これらに限定されるものではないが:溶融温度が125℃未満の材料、例えば、ポリオレフィン又はポリオレフィンオリゴマーが挙げられる。この種の材料としては、これらに限定されるものではないが:ポリオレフィンワックス(ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、ポリブテンワックス、及びこれらのブレンド)が挙げられる。この種の材料は、ポリマーにポリマーの5~50重量%の比率で添加することができる。一実施形態においては140℃未満のシャットダウン温度を達成することができる。他の実施形態においては130℃未満のシャットダウン温度を達成することができる。
【0098】
膜の溶着性(melt integrity)を向上させるための材料を添加することができる。溶着性とは、電極が物理的に分離したままとなるように、高温下で膜の物理的寸法が縮小又は変化することを制限する能力を指す。この種の材料としては、無機フィラーが挙げられる。無機フィラーとしては、これらに限定されるものではない:タルク、カオリン、合成シリカ、珪藻土、雲母、ナノクレー、窒化ホウ素、二酸化ケイ素、二酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等、及びこれらのブレンドが挙げられる。この種の材料としては、これらに限定されるものではないが、微小繊維も挙げることができる。微小繊維としては、ガラス繊維及び裁断された高分子短繊維(chopped polymer fiber)が挙げられる。充填率は、層のポリマーの1~60重量%の範囲にある。この種の材料としては、高融点又は高粘度有機材料、例えば、PTFE及びUHMWPEも挙げることができる。この種の材料としては、架橋剤又はカップリング剤も挙げることができる。
【0099】
膜の強度又は靭性を向上させるための材料を添加することができる。この種の材料としては、エラストマーが挙げられる。エラストマーとしては、これらに限定されるものではないが:エチレン-プロピレン(EPR)、エチレン-プロピレン-ジエン(EPDM)
、スチレン-ブタジエン(SBR)、スチレンイソプレン(SIR)、エチリデンオルボルネン(ENB)、エポキシ、及びポリウレタン、並びにそのブレンドが挙げられる。この種の材料としては、これらに限定されるものではないが、微小繊維も挙げることができる。微小繊維としては、裁断された高分子短繊維が挙げられる。充填率は、層のポリマーの2~30重量%の範囲にある。この種の材料としては、架橋剤又はカップリング剤又は高融点材料も挙げることができる。
【0100】
膜の帯電防止性を向上するための材料を添加することができる。この種の材料としては、例えば、帯電防止剤が挙げられる。帯電防止剤としては、これらに限定されるものではないが、モノステアリン酸グリセロール、エトキシ化アミン、ポリエーテル(例えば、日本国サンヨー化学株式会社(Sanyo Chemical Industrial)から市販されているPelestat 300)が挙げられる。充填率は、層のポリマーの0.001~10重量%の範囲にある。
【0101】
セパレータ表面の湿潤性を向上するための材料を添加することができる。この種の材料としては、例えば、湿潤剤が挙げられる。湿潤剤としては、これらに限定されるものではないが、エトキシ化アルコール、1級高分子カルボン酸、グリコール(例えば、ポリプロピレングリコール及びポリエチレングリコール)、無水マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸グリシジルで修飾されたポリオレフィンが挙げられる。充填率は、層のポリマーの0.01~10重量%の範囲にある。
【0102】
セパレータの表面摩擦性能を向上させるための材料を添加することができる。この種の材料としては、潤滑剤が挙げられる。潤滑剤としては、例えば、フッ素ポリマー(例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、低分子量フッ素ポリマー)、スリップ性向上剤(例えば、オレアミド、ステアラミド、エルカミド、Kemamide(登録商標)、ステアリン酸カルシウム、シリコーン)が挙げられる。充填率は、層のポリマーの0.001~10重量%の範囲にある。
【0103】
ポリマーの加工性を向上するための材料を添加することができる。この種の材料としては、例えば、フッ素ポリマー、窒化ホウ素、ポリオレフィンワックスが挙げられる。充填率は、層のポリマーの100ppm~10重量%の範囲にある。
【0104】
膜の難燃性を向上するための材料を添加することができる。この種の材料としては、例えば、フッ素系難燃剤、リン酸アンモニウム、水酸化アンモニウム、アルミナ三水和物、及びリン酸エステルが挙げられる。
【0105】
ポリマーの核形成を促進するための材料を添加することができる。この種の材料としては、核形成剤が挙げられる。核形成剤としては、これらに限定されるものではないが、安息香酸ナトリウム、ジベンジリデンソルビトール(DBS)、及びその化学的誘導体が挙げられる。充填率は従来通りである。
【0106】
層を着色するための材料を添加することができる。この種の材料は従来通りである。
【0107】
この電池用セパレータの製造において、ポリマーを共押出しすることにより、多層非多孔質前駆体が形成され、次いで前駆体を加工することにより微細孔が形成される。微細孔は「湿式」法又は「乾式」法により形成される。湿式法(溶媒抽出、転相、熱誘起相分離(TIPS)、又はゲル抽出とも称される)は、一般に、次を含む:除去可能な材料を、前駆体を形成する前に添加し、次いでその材料を、例えば、抽出法により除去することによって細孔を形成する。乾式法(セルガード(Celgard)法とも称される)は、一般に、次を含む:前駆体(細孔形成のために除去される材料を含まない)を押出しするこ
と;前駆体をアニール処理すること;前駆体を延伸することにより微細孔を形成すること。本発明を乾式法に関し次に述べる。
【0108】
この共押出しされた多層電池用セパレータに均一な寸法特性を付与するために、特定の剪断速度を有する押出ダイを使用した。ダイの剪断速度は、層当たりの処理量18~100lbs/hr(8.2~45.4Kg/hr)で、最低4/secでなければならないと定めた。一実施形態において、剪断速度は、層当たりの処理量18~100lbs/hr(8.2~45.4Kg/hr)で8/sec以上である。他の全てのパラメータは従来知られているものとする。
【0109】
本発明の様々な実施形態を、本発明の様々な目的を果たすことにより説明してきた。これらの実施形態は本発明の原理の単なる例示であることを認識すべきである。当業者には本発明の趣旨及び範囲から逸脱しない多くの修正及び改変が容易に理解されるであろう。
【手続補正書】
【提出日】2023-03-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティング用基材フィルム、濾過フィルム若しくは媒体、経皮パッチ中の医療用膜若しくはフィルム、若しくは繊維製品として又はその中で使用するための処理された膜フィルムの製造のための、乾式法による高分子膜であって、
前記乾式法による高分子膜は、メソ多孔質、微多孔質、又はナノ多孔質の少なくとも1種である含浸された膜フィルムを含み、
前記高分子膜の細孔表面の少なくとも1つの領域は、ポリマー樹脂(B)をその主成分として含む、少なくとも第1の含浸物(impregnate)材料の第1の薄層を有し、且つ前記含浸物が前記高分子膜の厚みの少なくとも10%の含浸深さを有し、
前記膜フィルムは、主成分としてポリマー樹脂(A)を少なくとも有する、多孔質膜、マクロ多孔質膜、メソ多孔質膜、又は微多孔質膜の少なくとも1種である高分子膜を有し、
前記乾式法による高分子膜の複合体割れ指数(CSI)は、140超であり、前記CSIは、次の式により定められ、かつ突刺強度試験時に測定される第1ピーク荷重、第2ピーク荷重、TD引張強度、MD引張強度、及びTD伸度の関数であって、次の式中において、
A=第1ピーク荷重/(厚み×(1-空孔率(%)));
B=第2ピーク荷重/厚み;
C=TD伸度;
D=MD引張強度;
E=TD引張強度;
であり、第1及び第2ピーク荷重はグラム重単位であり、厚みの値はum単位であり、MD及びTD引張強度はグラム重単位であり、TD伸びは百分率で表される、前記乾式法による高分子膜。
CSI=(A-|B-A|
1.8
)×C×(D×E)/10
6
【請求項2】
前記乾式法による高分子膜が、基材フィルム、基材、若しくは前駆体であり、
前記処理された膜フィルムが、含浸された、コーティングされた、浸漬コーティングされた、浸漬された、湿潤した、水に浸された、若しくは充填されたフィルムであり、
前記コーティング用基材フィルムが、リチウム電池用のセパレータ、燃料電池内のPEM若しくは調質膜であり、
前記濾過フィルム若しくは媒体が、HVACフィルターに使用されており、
前記濾過フィルム若しくは媒体が、濾過膜、複合体、若しくは貼合体であり、
前記繊維製品が、衣類の材料又は層、テープ、顔用拭き取りシート(wipe)、複合、貼合、又は多層フィルムであり、及び/又は
前記含浸物が、溶媒残留成分又は添加剤、作用物質、若しくはフィラーの少なくとも1つをさらに有する、
請求項1に記載の乾式法による高分子膜。
【請求項3】
前記樹脂(B)は前記樹脂(A)とは異なる、請求項1に記載の乾式法による高分子膜。
【請求項4】
前記ポリマー樹脂(B)は、前記コーティングされた膜フィルムを、ナノ多孔質に、微多孔質に、メソ多孔質に、より高強度に、より多用途に、疎油性に、親水性に、より高い突刺強度を示すように、より高い温度溶着性を示すように、より高い耐酸化性を示すように、より低いシャットダウン温度を示すように、より低いCOFを示すように、より低いピン引抜力を示すように、より高いコーティング接着性を示すように、及び/又は機能付与性を示すように、向上した破断伸度を示すように、TMA又は圧縮TMA試験において破れることなく向上した穴形状を示すように、向上した釘刺し試験結果を示すように、向上した横方向(TD)引張強度を示すように、向上したMD及びTD強度特性のバランスを示すように、向上した機能付与性を示すように、向上したイオン伝導度を示すように、シャットダウンを生じるように、粘着性を示すように、セラミックコーティングするように、IR検出可能となるように、SEM検出可能となるように、触媒となるように、架橋可能になるように、並びに/又はこれらの組合せとなるようにする、薄いコーティングを形成する、請求項1に記載の乾式法による高分子膜。
【請求項5】
前記高分子膜の前記細孔は、ポリマー樹脂(B)を含浸する前及び/又は後に、プライマー、堆積物、処理、PVD、ALD、溶媒、コロナ、プラズマ、又はこれらの組合せが施されている、請求項1に記載の乾式法による高分子膜。
【請求項6】
前記膜、基材フィルム、基材、又は前駆体の前記細孔の最小細孔寸法は、ポリマー樹脂(B)の前記含浸物の厚みの2倍を超えるか、又は、最小平均細孔寸法は、ポリマー樹脂(B)の前記コーティングの厚みの2倍を超える、請求項1に記載の乾式法による高分子膜。
【請求項7】
前記含浸された膜フィルムは、少なくとも微多孔質である、請求項1に記載の乾式法による高分子膜。
【請求項8】
ポリマー樹脂(B)の前記含浸物の最小厚みは>0.001umである、請求項1に記載の乾式法による高分子膜。
【請求項9】
ポリマー樹脂(B)の前記含浸物の平均厚みは、>0.01um、又は<0.10um、又は<1.0umである、請求項1に記載の乾式法による高分子膜。
【請求項10】
前記高分子膜の前記細孔の最小細孔寸法は、少なくとも、ポリマー樹脂(B)の前記含浸物の厚みの2倍を超えるか、又はポリマー樹脂(B)の前記コーティングの厚みに前記細孔の内面上の任意の追加のコーティング、処理、及び/若しくは堆積物を足したものである、請求項1に記載の乾式法による高分子膜。
【請求項11】
前記高分子膜の前記細孔の最小細孔寸法は、少なくとも0.20umである、請求項1に記載の乾式法による高分子膜。
【請求項12】
前記高分子膜の前記細孔の最大細孔寸法は、15.0um未満である、請求項1に記載の乾式法による高分子膜。
【請求項13】
前記コーティングされた高分子膜の前記細孔の少なくとも80%の最小有効断面積(minimum effective cross-sectional area)は、細孔当たり少なくとも7.85×10-7um2である、請求項1に記載の乾式法による高分子膜。
【請求項14】
前記コーティングされた高分子膜の最大ガーレーは、3,000sである、請求項1に記載の乾式法による高分子膜。
【請求項15】
前記コーティングされた高分子膜の最小空孔率は少なくとも20であり、又はERは3.0Ω・cm2未満であり、又は曲路率は2.0未満である、請求項1に記載の乾式法による高分子膜。
【請求項16】
前記コーティングされた高分子膜の平均細孔径は0.01umを超え、又は平均細孔径は2.0um未満である、請求項1に記載の乾式法による高分子膜。
【請求項17】
前記高分子膜は、円形形状の細孔を有し、又は結果として得られる細孔形状が、コーティングされていない高分子膜の細孔形状よりも角に丸みがあり、且つ細孔寸法がより小さく、又は結果として得られる細孔形状が、長円形、卵形(ovoid)、又は角の丸い長円形である、請求項1に記載の乾式法による高分子膜。
【請求項18】
前記コーティングされた高分子膜は、少なくともその片面が、コーティングされるように構成されている、請求項1に記載の乾式法による高分子膜。
【請求項19】
前記高分子膜の前記細孔表面の半分は、前記ポリマー樹脂(B)でコーティングされるか又は処理されており、前記高分子膜の前記細孔表面の他の半分は、ポリマー樹脂(C)でコーティングされるか又は処理されており、前記樹脂(C)は前記樹脂(B)とは異なる、請求項1に記載の乾式法による高分子膜。
【請求項20】
前記メソ多孔質の最大平均細孔径が2.0umから10.0um以下であり、
前記微多孔質の最大平均細孔径が10.0nm又は0.01umから2.0um以下であり、且つ、
前記ナノ多孔質の最大平均細孔径が10.0nm又は0.01um未満である、
請求項1に記載の乾式法による高分子膜。
【請求項21】
前記穴形状が破れることなく円形であり、
前記釘刺し試験結果がNPT合格であり、及び/又は、
前記粘着性が接着性表面を対象とするものである、
請求項4に記載の乾式法による高分子膜。
【請求項22】
長円形の前記細孔形状が細長い長円形であり、
長円形の前記細孔形状が楕円形(elliptical)であり、及び/又は、
卵型(ovoid)の前記細孔形状が卵型(egg shaped)である、請求項17に記載の乾式法による高分子膜。
【請求項23】
前記コーティングが、ポリマーコーティング又はセラミックコーティングである、請求項18に記載の乾式法による高分子膜。
【請求項24】
請求項1に記載の乾式法による高分子膜を含む電池用セパレータを備えるリチウム電池。
【請求項25】
請求項24に記載のリチウム電池を備えるシステム。
【請求項26】
前記システムは電池を備えるデバイスであるか、又は前記システムは電池を備える製品である、請求項25に記載の電池を備えるシステム。
【請求項27】
請求項24に記載のリチウム電池を備える乗用車。
【請求項28】
請求項1に記載の含浸された高分子膜を備えるコンデンサ。
【請求項29】
前記コンデンサが、スーパーキャパシタ、又はキャパシタ電池ハイブリッドである、請求項28に記載のコンデンサ。
【請求項30】
請求項1に記載の含浸された高分子膜を備える、繊維製品。
【請求項31】
前記繊維製品が、衣服、拭き取りシート、フィルター、医療用品、燃料電池、調湿層、又はコーティング用基材フィルムである、請求項30に記載の繊維製品。
【請求項32】
前記フィルターがHVACフィルターである、請求項31に記載の繊維製品。