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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023076448
(43)【公開日】2023-06-01
(54)【発明の名称】積層体
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/40 20060101AFI20230525BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20230525BHJP
   C08G 18/00 20060101ALI20230525BHJP
   C08G 18/32 20060101ALI20230525BHJP
   C08G 18/75 20060101ALI20230525BHJP
【FI】
B32B27/40
B32B9/00 A
C08G18/00 C
C08G18/32 003
C08G18/75 010
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032718
(22)【出願日】2023-03-03
(62)【分割の表示】P 2020559998の分割
【原出願日】2019-12-05
(31)【優先権主張番号】P 2018231559
(32)【優先日】2018-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】宮永 朋治
(72)【発明者】
【氏名】福田 和幸
(57)【要約】
【課題】高温殺菌処理(レトルト処理)後もガスバリア性に優れる積層体を得ることができるポリウレタンディスパージョン、および、そのポリウレタンディスパージョンを用いて得られる積層体を提供すること。
【解決手段】ポリウレタン樹脂が、水分散されてなるポリウレタンディスパージョンにおいて、ポリウレタン樹脂を、ポリイソシアネート成分と活性水素基含有成分とを少なくとも反応させた反応生成物とし、ポリイソシアネート成分に、炭素環と炭素環に直接結合する少なくとも1つのイソシアネート基とを有するポリイソシアネート化合物を、ポリイソシアネート成分の総量に対して90質量%以上の割合で含有させ、活性水素基含有成分に、炭素数2~4のジオール、および、親水性基を含有する活性水素基含有化合物を含有させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタン樹脂が水分散されてなるポリウレタンディスパージョンであって、
前記ポリウレタン樹脂は、ポリイソシアネート成分と活性水素基含有成分とを少なくとも反応させた反応生成物であり、
前記ポリイソシアネート成分は、
炭素環と、前記炭素環に直接結合する少なくとも1つのイソシアネート基とを有するポリイソシアネート化合物を、前記ポリイソシアネート成分の総量に対して90質量%以上の割合で含有し、
前記活性水素基含有成分は、炭素数2~4のジオール、および、親水性基を含有する活性水素基含有化合物を含有する
ことを特徴とする、ポリウレタンディスパージョン。
【請求項2】
前記ポリイソシアネート化合物が、イソホロンジイソシアネートを含有する
ことを特徴とする、請求項1に記載のポリウレタンディスパージョン。
【請求項3】
さらに、架橋剤を含有する
ことを特徴とする、請求項1に記載のポリウレタンディスパージョン。
【請求項4】
請求項1に記載のポリウレタンディスパージョンの乾燥物を含む第1ポリウレタン層と、
前記第1ポリウレタン層の少なくとも一方側の表面に接触するように配置される無機層とを備える
ことを特徴とする、積層体。
【請求項5】
前記無機層が、酸化アルミニウムおよび/または酸化ケイ素を含有する
ことを特徴とする、請求項4に記載の積層体。
【請求項6】
さらに、前記第1ポリウレタン層の前記無機層が接触する一方側の表面に対する他方側の表面において、第2ポリウレタン樹脂を含有する第2ポリウレタンディスパージョンの乾燥物を含む第2ポリウレタン層を備えており、
前記第2ポリウレタン樹脂は、キシリレンジイソシアネートおよび/または水添キシリレンジイソシアネートを含む第2ポリイソシアネート成分と、炭素数2~4のジオール、および、親水性基を含有する活性水素基含有化合物を含む第2活性水素基含有成分とを少なくとも反応させた反応生成物である
ことを特徴とする、請求項4に記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタンディスパージョンおよび積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、酸素ガスバリア性に優れるフィルムとして、ポリ塩化ビニリデンまたは塩化ビニリデン共重合体(以下、PVDCと略する。)からなるフィルムが知られている。しかし、PVDCは燃焼により有害なガスを生じる。
【0003】
そのため、ポリビニルアルコールや、エチレン・ビニルアルコール共重合体からなるフィルムが知られているが、これらのフィルムのガスバリア性は十分ではない場合がある。
【0004】
そこで、ガスバリア性に優れるフィルムとして、樹脂フィルムなどの基材と、基材の上にポリウレタンディスパージョンを塗布および乾燥して得られるポリウレタン層とを備える積層体が提案されている。
【0005】
ポリウレタンディスパージョンは、例えば、イソシアネート基末端プレポリマーと鎖伸長剤との反応により得られるポリウレタン樹脂が水分散されてなるポリウレタンディスパージョンであり、より具体的には、イソシアネート基末端プレポリマーが、キシリレンジイソシアネートおよび/または水添キシリレンジイソシアネートを含むポリイソシアネート成分と、炭素数2~6のジオール、3価以上の低分子量ポリオール、および、親水性基を含有する活性水素基含有化合物を含むポリオール成分とを少なくとも反応させることにより得られ、鎖伸長剤が、第1級アミノ基、または、第1級アミノ基および第2級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物を含み、ポリオール成分中の水酸基の総モル100%に対する、3価以上の低分子量ポリオール中の水酸基のモル割合が25%未満であるポリウレタンディスパージョンが、提案されている。また、積層体における基材として、金属酸化物がプラスチックフィルムに蒸着された蒸着フィルムが用いられ、その金属蒸着層にポリウレタン層が積層されることも、提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017-222863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方、このような積層体においては、用途に応じて、高温殺菌処理(レトルト処理)後においても、優れたガスバリア性を維持することが要求される。
【0008】
しかし、特許文献1に記載のポリウレタン層を金属蒸着フィルムに積層した場合、得られる積層体を高温殺菌処理(レトルト処理)すると、ポリウレタン層が変形および劣化(白化、膨張など)し、その変形などに応じて金属蒸着層に損傷を生じる場合がある。その結果、上記の積層体では、高温殺菌処理(レトルト処理)後のガスバリア性を、十分に得られない場合がある。
【0009】
本発明は、高温殺菌処理(レトルト処理)後もガスバリア性に優れる積層体を得ることができるポリウレタンディスパージョン、および、そのポリウレタンディスパージョンを用いて得られる積層体である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明[1]は、ポリウレタン樹脂が水分散されてなるポリウレタンディスパージョンであって、前記ポリウレタン樹脂は、ポリイソシアネート成分と活性水素基含有成分とを少なくとも反応させた反応生成物であり、前記ポリイソシアネート成分は、炭素環と、前記炭素環に直接結合する少なくとも1つのイソシアネート基とを有するポリイソシアネート化合物を、前記ポリイソシアネート成分の総量に対して90質量%以上の割合で含有し、前記活性水素基含有成分は、炭素数2~4のジオール、および、親水性基を含有する活性水素基含有化合物を含有する、ポリウレタンディスパージョンを含んでいる。
【0011】
本発明[2]は、前記ポリイソシアネート化合物が、イソホロンジイソシアネートを含有する、上記[1]に記載のポリウレタンディスパージョンを含んでいる。
【0012】
本発明[3]は、さらに、架橋剤を含有する、上記[1]または[2]に記載のポリウレタンディスパージョンを含んでいる。
【0013】
本発明[4]は、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載のポリウレタンディスパージョンの乾燥物を含む第1ポリウレタン層と、前記第1ポリウレタン層の少なくとも一方側の表面に接触するように配置される無機層とを備える、積層体を含んでいる。
【0014】
本発明[5]は、前記無機層が、酸化アルミニウムおよび/または酸化ケイ素を含有する、上記[4]に記載の積層体を含んでいる。
【0015】
本発明[6]は、さらに、前記第1ポリウレタン層の前記無機層が接触する一方側の表面に対する他方側の表面において、第2ポリウレタン樹脂を含有する第2ポリウレタンディスパージョンの乾燥物を含む第2ポリウレタン層を備えており、前記第2ポリウレタン樹脂は、キシリレンジイソシアネートおよび/または水添キシリレンジイソシアネートを含む第2ポリイソシアネート成分と、炭素数2~4のジオール、および、親水性基を含有する活性水素基含有化合物を含む第2活性水素基含有成分とを少なくとも反応させた反応生成物である、上記[4]または[5]に記載の積層体を含んでいる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のポリウレタンディスパージョンでは、活性水素基含有成分は、炭素数2~4のジオール、および、親水性基を含有する活性水素基含有化合物を含有する。
【0017】
このような活性水素基含有成分を用いて得られるポリウレタンディスパージョンによれば、ガスバリア性に優れるポリウレタン層を得ることができる。
【0018】
さらに、本発明のポリウレタンディスパージョンでは、ポリイソシアネート成分が、炭素環と、炭素環に直接結合するイソシアネート基とを有するポリイソシアネート化合物を、ポリイソシアネート成分の総量に対して90質量%以上の割合で含有している。
【0019】
このようなポリウレタンディスパージョンでは、ポリイソシアネート成分において、炭素環に対してイソシアネート基が直接結合しているため、イソシアネート基の自由度、および、ポリウレタン樹脂中でのウレタン結合の自由度が制限される。
【0020】
その結果、高温殺菌処理(レトルト処理)によるポリウレタン層の変形および劣化を抑制することができ、無機層に対してポリウレタン層を積層しても、無機層の破損を抑制できる。
【0021】
そして、本発明の積層体は、上記のポリウレタンディスパージョンの乾燥物が、無機層に対して積層されているため、高温殺菌処理(レトルト処理)によるポリウレタン層の変形および劣化を抑制することができ、高温殺菌処理(レトルト処理)後もガスバリア性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、本発明の積層体の一実施形態を示す概略構成図である。
図2図2は、本発明の積層体の他の実施形態を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明のポリウレタンディスパージョンは、ポリウレタン樹脂(水性ポリウレタン樹脂)を水分散させることにより得られる。
【0024】
ポリウレタン樹脂は、ポリイソシアネート成分と活性水素基含有成分とを少なくとも反応させることにより得られる反応生成物である。
【0025】
ポリイソシアネート成分は、ポリイソシアネート化合物を、主成分として(例えば、ポリイソシアネート成分の総量に対して90質量%以上、好ましくは、95質量%以上の割合で)含有している。
【0026】
好ましくは、ポリイソシアネート成分は、ポリイソシアネート化合物からなる。
【0027】
ポリイソシアネート化合物は、2つ以上のイソシアネート基を有する有機化合物である。
【0028】
ポリイソシアネート化合物として、好ましくは、2つのイソシアネート基を有する有機化合物(ジイソシアネート化合物)が挙げられる。
【0029】
ポリイソシアネート化合物は、必須成分として、炭素環と、炭素環に直接結合する少なくとも1つのイソシアネート(-NCO)基とを有するポリイソシアネート化合物(以下、炭素環直結NCO化合物)を含有している。
【0030】
すなわち、ポリイソシアネート成分は、ポリイソシアネート化合物を含有しており、そのポリイソシアネート化合物は、必須成分として、炭素環直結NCO化合物を含有している。
【0031】
換言すれば、ポリイソシアネート成分は、炭素環直結NCO化合物を含有している。
【0032】
炭素環直結NCO化合物は、炭素環と、2つ以上のイソシアネート基とを有しており、さらに、2つ以上のイソシアネート基のうち少なくとも1つが、炭素環に直接結合している有機化合物である。
【0033】
炭素環直結NCO化合物として、好ましくは、炭素環と、2つのイソシアネート基とを有しており、さらに、2つのイソシアネート基のうち少なくとも1つが、炭素環に直接結合しているジイソシアネート化合物が挙げられる。
【0034】
炭素環直結NCO化合物において、炭素環は、環状の炭化水素基であり、例えば、芳香環、脂環、不飽和炭素環などが挙げられる。
【0035】
炭素環として、より具体的には、例えば、ベンゼン環などの芳香環、例えば、シクロペンタン環、シクロヘキサン環などの脂環、例えば、シクロヘキセン環などの不飽和炭素環などが挙げられる。
【0036】
これら炭素環の、炭素環直結NCO化合物1分子中における含有数は、単数(1つ)であってもよく、複数(2つ以上)であってもよい。
【0037】
また、炭素環直結NCO化合物1分子中における炭素環の含有数が複数である場合、炭素環は、複数の炭素環が一辺を共有するように縮合した多環式炭素環であってもよく、炭素環の中の任意の炭素の間で架橋環が形成された複数式炭素環であってもよい。このような炭素環として、より具体的には、例えば、ナフタレン環などの芳香族多環式炭素環、例えば、ノルボルネン環などの脂環族複数式炭素環などが挙げられる。
【0038】
炭素環直結NCO化合物1分子中における炭素環の含有数は、好ましくは、単数(1つ)である。
【0039】
炭素環直結NCO化合物において、炭素環に直接結合するイソシアネート基とは、炭素環を構成する炭素原子に対して、イソシアネート(-NCO)基中の窒素原子が単結合しているものを示す。
【0040】
なお、炭素環直結NCO化合物が、2つ以上の炭素環を有する場合、少なくとも1つの炭素環に対して、少なくとも1つのイソシアネート基が直接結合していればよい。
【0041】
すなわち、炭素環直結NCO化合物は、少なくとも1つのイソシアネート基が直接結合された炭素環を含有していればよく、イソシアネート基が結合されていない炭素環や、イソシアネート基が間接的に(例えば、アルキレン基、アリーレン基などを介して)結合された炭素環などを含有することができ、また、炭素環に直接結合していないイソシアネート基を含有することができる。
【0042】
炭素環直結NCO化合物として、より具体的には、例えば、イソシアネート基が直接結合した芳香環を有する芳香族ポリイソシアネート(芳香環直結NCO化合物)、イソシアネート基が直接結合した脂環を有する脂環族ポリイソシアネート(脂環直結NCO化合物)などの炭素環直結NCO化合物単量体が挙げられる。
【0043】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート(2,4-または2,6-トリレンジイソシアネートもしくはその混合物)(TDI)、フェニレンジイソシアネート(m-、p-フェニレンジイソシアネートもしくはその混合物)、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシネート(4,4’-、2,4’-または2,2’-ジフェニルメタンジイソシネートもしくはその混合物)(MDI)、4,4’-トルイジンジイソシアネート(TODI)、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0044】
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,3-シクロペンテンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(別名:イソホロンジイソシアネート)(IPDI)、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(別名:ビス(イソシアナトシクロヘキシル)メタン)(4,4’-、2,4’-または2,2’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)これらのTrans,Trans-体、Trans,Cis-体、Cis,Cis-体、もしくはその混合物)(H12MDI)、メチルシクロヘキサンジイソシアネート(メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート)などの脂環族ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0045】
また、炭素環直結NCO化合物としては、上記の単量体(炭素環直結NCO化合物単量体)の誘導体が含まれる。
【0046】
上記の単量体の誘導体としては、例えば、上記の単量体の多量体(例えば、2量体、3量体(例えば、イソシアヌレート変性体、イミノオキサジアジンジオン変性体)、5量体、7量体など)、アロファネート変性体(例えば、上記の単量体と、後述する低分子量ポリオールとの反応より生成するアロファネート変性体など)、ポリオール変性体(例えば、上記の単量体と後述する低分子量ポリオールとの反応より生成するポリオール変性体(アルコール付加体)など)、ビウレット変性体(例えば、上記の単量体と、水やアミン類との反応により生成するビウレット変性体など)、ウレア変性体(例えば、上記の単量体とジアミンとの反応により生成するウレア変性体など)、オキサジアジントリオン変性体(例えば、上記の単量体と炭酸ガスとの反応により生成するオキサジアジントリオンなど)、カルボジイミド変性体(上記の単量体の脱炭酸縮合反応により生成するカルボジイミド変性体など)、ウレトジオン変性体、ウレトンイミン変性体などが挙げられる。
【0047】
これらの誘導体は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0048】
これら炭素環直結NCO化合物は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0049】
炭素環直結NCO化合物として、好ましくは、芳香族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネートが挙げられ、より好ましくは、脂環族ポリイソシアネートが挙げられ、さらに好ましくは、イソホロンジイソシアネート(IPDI)が挙げられる。
【0050】
換言すれば、炭素環直結NCO化合物は、好ましくは、イソホロンジイソシアネート(IPDI)を含有する。
【0051】
また、炭素環直結NCO化合物は、炭素環の数に応じて分類することもできる。
【0052】
より具体的には、炭素環直結NCO化合物としては、炭素環を1つ有する炭素環直結NCO化合物(以下、単数炭素環直結NCO化合物)、炭素環を複数有する炭素環直結NCO化合物(以下、複数炭素環直結NCO化合物)が挙げられる。
【0053】
単数炭素環直結NCO化合物としては、例えば、炭素環を1つ有し、炭素環に対してイソシアネート基の1つが直接結合し、かつ、その炭素環に対して残りのイソシアネート基が直接および/またはアルキレン基を介して結合しているポリイソシアネート化合物が挙げられる。
【0054】
そのような単数炭素環直結NCO化合物として、具体的には、1つの芳香環を有し、その芳香環に対してイソシアネート基の1つが直接結合し、かつ、その芳香環に対して残りのイソシアネート基が直接結合しているポリイソシアネート化合物が挙げられる。より具体的には、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、フェニレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0055】
また、単数炭素環直結NCO化合物としては、例えば、1つの脂環を有し、その脂環に対してイソシアネート基の1つが直接結合し、かつ、その脂環に対して残りのイソシアネート基がアルキレン基を介して結合しているポリイソシアネート化合物が挙げられる。より具体的には、例えば、イソホロンジイソシアネート(IPDI)などが挙げられる。
【0056】
これら単数炭素環直結NCO化合物は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0057】
単数炭素環直結NCO化合物として、好ましくは、トリレンジイソシアネート(TDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)が挙げられ、より好ましくは、イソホロンジイソシアネート(IPDI)が挙げられる。
【0058】
一方、複数炭素環直結NCO化合物としては、例えば、炭素環を2つ以上有し、それら炭素環のいずれかに対してイソシアネート基の1つが直接結合し、かつ、それら炭素環のいずれかに対して残りのイソシアネート基が直接および/またはアルキレン基を介して結合しているポリイソシアネート化合物が挙げられる。
【0059】
そのような複数炭素環直結NCO化合物として、具体的には、芳香環を2つ有し、それら芳香環のいずれかに対してイソシアネート基の1つが直接結合し、かつ、それら芳香環のいずれかに対して残りのイソシアネート基が直接および/またはアルキレン基を介して結合しているポリイソシアネート化合物が挙げられる。より具体的には、例えば、ジフェニルメタンジイソシネート(MDI)などが挙げられる。
【0060】
また、複数炭素環直結NCO化合物として、具体的には、脂環を2つ有し、それら脂環のいずれかに対してイソシアネート基の1つが直接結合し、かつ、それら脂環のいずれかに対して残りのイソシアネート基が直接および/またはアルキレン基を介して結合しているポリイソシアネート化合物が挙げられる。より具体的には、例えば、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(H12MDI)などが挙げられる。
【0061】
これら複数炭素環直結NCO化合物は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0062】
複数炭素環直結NCO化合物として、好ましくは、ジフェニルメタンジイソシネート(MDI)、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(H12MDI)が挙げられ、より好ましくは、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(H12MDI)が挙げられる。
【0063】
これら炭素環直結NCO化合物は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0064】
炭素環直結NCO化合物として、耐熱性の向上を図る観点から、好ましくは、単数炭素環直結NCO化合物(好ましくは、TDI、IPDI)と、複数炭素環直結NCO化合物(好ましくは、H12MDI)との併用が挙げられる。
【0065】
これらの併用割合は、単数炭素環直結NCO化合物(好ましくは、TDI、IPDI)と、複数炭素環直結NCO化合物(好ましくは、H12MDI)との総量100質量部に対して、単数炭素環直結NCO化合物(好ましくは、TDI、IPDI)が、例えば、50質量部以上、好ましくは、60質量部以上、より好ましくは、70質量部以上、さらに好ましくは、80質量部以上であり、例えば、95質量部以下、好ましくは、90質量部以下である。また、複数炭素環直結NCO化合物(好ましくは、H12MDI)が、例えば、5質量部以上、好ましくは、10質量部以上であり、例えば、50質量部以下、好ましくは、40質量部以下、より好ましくは、30質量部以下、さらに好ましくは、20質量部以下である。
【0066】
また、ポリイソシアネート成分は、炭素環直結NCO化合物の他、必要に応じて、炭素環に直接結合するイソシアネート基を有してないポリイソシアネート化合物(以下、非炭素環直結NCO化合物)を含有することができる。
【0067】
非炭素環直結NCO化合物としては、例えば、炭素環を有していない鎖状脂肪族ポリイソシアネート(以下、鎖状NCO化合物とする。)、例えば、炭素環を有するが、炭素環に直接結合するイソシアネート基を有していない炭素環間接結合ポリイソシアネート(以下、炭素環間接NCO化合物とする。)などの非炭素環直結NCO化合物単量体が挙げられる。
【0068】
鎖状NCO化合物としては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート(テトラメチレンジイソシアネート、1,2-ブチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート)、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(別名:ヘキサメチレンジイソシアネート)(HDI)、2,4,4-または2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6-ジイソシアネートメチルカプエートなどの鎖状脂肪族ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0069】
炭素環間接NCO化合物としては、例えば、キシリレンジイソシアネート(1,2-、1,3-または1,4-キシリレンジイソシアネートもしくはその混合物(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(1,3-または1,4-テトラメチルキシリレンジイソシアネートもしくはその混合物)(TMXDI)、ω,ω’-ジイソシアネート-1,4-ジエチルベンゼンなどの芳香環にイソシアネート基が間接結合する芳香脂肪族ジイソシアネート、例えば、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(水添キシリレンジイソシアネート(1,2-、1,3-または1,4-水添キシリレンジイソシアネートもしくはその混合物)(HXDI)、ノルボルナンジイソシアネート(2,5-または2,6-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタンもしくはその混合物)(NBDI)などの脂環にイソシアネート基が間接結合する脂環脂肪族ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0070】
また、非炭素環直結NCO化合物には、上記と同種の誘導体が含まれる。
【0071】
誘導体としては、例えば、非炭素環直結NCO化合物単量体の多量体、アロファネート変性体、ポリオール変性体、ビウレット変性体、ウレア変性体、オキサジアジントリオン変性体、カルボジイミド変性体、ウレトジオン変性体、ウレトンイミン変性体などが挙げられる。
【0072】
誘導体は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0073】
これら非炭素環直結NCO化合物は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0074】
非炭素環直結NCO化合物の含有割合は、炭素環直結NCO化合物と非炭素環直結NCO化合物との総量(ポリイソシアネート化合物の総量)に対して、10質量%以下、好ましくは、5質量%以下、より好ましくは、1質量%以下、さらに好ましくは、0質量%である。
【0075】
また、炭素環直結NCO化合物の含有割合が、炭素環直結NCO化合物と非炭素環直結NCO化合物との総量(ポリイソシアネート化合物の総量)に対して、90質量%以上、好ましくは、95質量%以上、より好ましくは、99質量%以上、さらに好ましくは、100質量%である。
【0076】
換言すれば、ポリイソシアネート成分中のポリイソシアネート化合物は、好ましくは、炭素環直結NCO化合物からなる。
【0077】
また、炭素環直結NCO化合物の含有割合は、ポリイソシアネート成分の総量に対して、90質量%以上、好ましくは、95質量%以上、より好ましくは、99質量%以上である。
【0078】
一方、非炭素環直結NCO化合物の含有割合は、ポリイソシアネート成分の総量に対して、10質量%以下、好ましくは、5質量%以下、より好ましくは、1質量%以下である。
【0079】
炭素環直結NCO化合物および非炭素環直結NCO化合物の含有割合が上記範囲であれば、優れた高温殺菌処理(レトルト処理)およびガスバリア性を得ることができる。
【0080】
活性水素基含有成分としては、ポリオール成分が挙げられる。
【0081】
ポリオール成分は、必須成分として、炭素数2~4のジオール、および、親水性基を含有する活性水素基含有化合物を含有している。
【0082】
炭素数2~4のジオールは、分子量(数平均)40以上、300未満、好ましくは、400未満であり、水酸基を2つ有する炭素数2~4の有機化合物であって、具体的には、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,2-ブチレングリコールなどの炭素数2~4のアルカンジオール(炭素数2~4のアルキレングリコール)、例えば、ジエチレングリコールなどの炭素数2~4のエーテルジオール、例えば、1,4-ジヒドロキシ-2-ブテンなどの炭素数2~4のアルケンジオールなどが挙げられる。
【0083】
これら炭素数2~4のジオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0084】
炭素数2~4のジオールとして、ガスバリア性の観点から、好ましくは、炭素数2~4のアルカンジオール、より好ましくは、エチレングリコールが挙げられる。
【0085】
炭素数2~4のジオールの配合割合は、ポリオール成分の総量100質量部に対して、例えば、20質量部以上、好ましくは、30質量部以上であり、例えば、80質量部以下、好ましくは、70質量部以下である。
【0086】
親水性基を含有する活性水素基含有化合物は、ノニオン性基またはイオン性基などの親水性基を含有し、アミノ基または水酸基などの活性水素基を2つ以上含有する化合物であって、具体的には、例えば、ノニオン性基を含有する活性水素基含有化合物、イオン性基を含有する活性水素基含有化合物が挙げられる。
【0087】
ノニオン性基を含有する活性水素基含有化合物としては、例えば、ポリオキシエチレングリコール、片末端封鎖ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシエチレン側鎖を含有するポリオールなどが挙げられる。
【0088】
ポリオキシエチレン側鎖を含有するポリオールは、側鎖にポリオキシエチレン基を含み、2つ以上の水酸基を有する有機化合物であって、次のように合成することができる。
【0089】
すなわち、まず、上記したジイソシアネートと、片末端封鎖ポリオキシエチレングリコール(例えば、炭素数1~4のアルキル基で片末端封鎖したアルコキシポリオキシエチレンモノオールであって、数平均分子量200~6000、好ましくは300~3000)とを、片末端封鎖ポリオキシエチレングリコールの水酸基に対して、ジイソシアネートのイソシアネート基が過剰となる割合でウレタン化反応させ、必要により未反応のジイソシアネートを除去することにより、ポリオキシエチレン鎖含有モノイソシアネートを得る。
【0090】
次いで、ポリオキシエチレン鎖含有モノイソシアネートと、ジアルカノールアミン(例えば、ジエタノールアミンなど)とを、ジアルカノールアミンの2級アミノ基に対して、ポリオキシエチレン基含有モノイソシアネートのイソシアネート基がほぼ等量となる割合でウレア化反応させる。
【0091】
なお、ノニオン性基を含有する活性水素基含有化合物において、ノニオン性基、具体的には、ポリオキシエチレン基の数平均分子量は、例えば、600~6000である。
【0092】
ポリオキシエチレン側鎖を含有するポリオールを得るためのジイソシアネートとして、好ましくは、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)などの脂肪族ジイソシアネート、1,4-または1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(HXDI)、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(別名:イソホロンジイソシアネート)(IPDI)、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(H12MDI)、2,6-ビス(イソシアナトメチル)ノルボナン(NBDI)などの脂環族ジイソシアネートが挙げられる。
【0093】
イオン性基を含有する活性水素基含有化合物は、例えば、カルボン酸などのアニオン性基、または、4級アミンなどのカチオン性基と、2つ以上の水酸基またはアミノ基などの活性水素基とを併有する有機化合物であって、好ましくは、アニオン性基と2つ以上の水酸基とを併有する有機化合物、より好ましくは、カルボン酸と2つの水酸基とを併有する有機化合物(カルボキシ基を含有する活性水素基含有化合物(例えば、カルボキシ基含有ポリオールなど))が挙げられる。
【0094】
カルボキシ基含有ポリオールとしては、例えば、2,2-ジメチロール酢酸、2,2-ジメチロール乳酸、2,2-ジメチロールプロピオン酸(別名:ジメチロールプロピオン酸)、2,2-ジメチロールブタン酸、2,2-ジメチロール酪酸、2,2-ジメチロール吉草酸などのポリヒドロキシアルカン酸(ジヒドロキシアルカン酸)などが挙げられ、好ましくは、2,2-ジメチロールプロピオン酸が挙げられる。
【0095】
これら親水性基を含有する活性水素基含有化合物は、単独使用または併用することができる。
【0096】
親水性基を含有する活性水素基含有化合物として、好ましくは、イオン性基を含有する活性水素基含有化合物、より好ましくは、カルボキシ基含有ポリオールが挙げられ、さらに好ましくは、ポリヒドロキシアルカン酸、とりわけ好ましくは、ジヒドロキシアルカン酸が挙げられる。
【0097】
ポリヒドロキシアルカン酸を配合することにより、水分散性とともに、ガスバリア性、基材との密着性や、透明性のさらなる向上を図ることができる。
【0098】
親水性基を含有する活性水素基含有化合物の配合割合は、ポリオール成分の総量100質量部に対して、例えば、20質量部以上、好ましくは、30質量部以上であり、例えば、50質量部以下、好ましくは、45質量部以下である。
【0099】
また、ポリオール成分は、さらに、任意成分として、その他の低分子量ポリオール(炭素数2~4のジオール、および、親水性基を含有する活性水素基含有化合物を除く低分子量ポリオール)や、高分子量ポリオールを含有することもできる。
【0100】
その他の低分子量ポリオールとしては、例えば、炭素数5以上のジオール(2価アルコール)、3価以上の低分子量ポリオールが挙げられる。
【0101】
炭素数5以上のジオール(2価アルコール)としては、例えば、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,3-または1,4-シクロヘキサンジオールなどの炭素数5~20のアルカンジオール、例えば、2,6-ジメチル-1-オクテン-3,8-ジオール、1,3-または1,4-シクロヘキサンジメタノールおよびそれらの混合物、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールA、例えば、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどの炭素数5以上のエーテルジオールなども挙げられる。
【0102】
また、炭素数5以上のジオール(2価アルコール)としては、例えば、数平均分子量400以下の、2価のポリアルキレンオキサイドなども挙げられる。そのようなポリアルキレンオキサイドは、例えば、上記した2価アルコールを開始剤として、エチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドを付加反応させることによって、ポリエチレングリコール(ポリオキシエチレンエーテルグリコール)、ポリプロピレングリコール(ポリオキシプロピレンエーテルグリコール)、ポリエチレンポリプロピレングリコール(ランダムまたはブロック共重合体)などとして得ることができる。また、例えば、テトラヒドロフランの開環重合などによって得られる数平均分子量400以下のポリテトラメチレンエーテルグリコールなども挙げられる。
【0103】
3価以上の低分子量ポリオールは、数平均分子量40以上、300未満、好ましくは、400未満であり、1分子中に水酸基を3つ以上有する有機化合物であって、例えば、グリセリン、2-メチル-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、2,4-ジヒドロキシ-3-ヒドロキシメチルペンタン、1,2,6-ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-3-ブタノールなどの3価アルコール(低分子量トリオール)、例えば、テトラメチロールメタン(ペンタエリスリトール)、ジグリセリンなどの4価アルコール、例えば、キシリトールなどの5価アルコール、例えば、ソルビトール、マンニトール、アリトール、イジトール、ダルシトール、アルトリトール、イノシトール、ジペンタエリスリトールなどの6価アルコール、例えば、ペルセイトールなどの7価アルコール、例えば、ショ糖などの8価アルコールなどが挙げられる。
【0104】
また、3価以上の低分子量ポリオールとしては、例えば、数平均分子量40以上、300未満、好ましくは、400未満の、3価以上のポリアルキレンオキサイドなども挙げられる。そのようなポリアルキレンオキサイドは、例えば、上記した3価以上の低分子量ポリオール、または、公知のポリアミンを開始剤として、エチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドを付加反応させることによって、ポリエチレンポリオール、ポリプロピレンポリオール、ポリエチレンポリプロピレンポリオール(ランダムまたはブロック共重合体)などとして得ることができる。
【0105】
これら3価以上の低分子量ポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0106】
3価以上の低分子量ポリオールとして、好ましくは、3価アルコール(低分子量トリオール)、4価アルコールが挙げられ、より好ましくは、3価アルコール(低分子量トリオール)が挙げられ、さらに好ましくは、トリメチロールプロパン、グリセリンが挙げられる。
【0107】
これらその他の低分子量ポリオール(上記した炭素数2~4のジオールおよび親水性基を含有する活性水素基含有化合物を除く低分子量ポリオール)は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0108】
その他の低分子量ポリオールとして、好ましくは、3価以上の低分子量ポリオールが挙げられ、より好ましくは、3価の低分子量ポリオールが挙げられる。ポリオール成分が、3価以上(より好ましくは、3価)の低分子量ポリオールを含有している場合、炭素環直結NCO化合物と相まって、耐熱性の向上を図ることができる。
【0109】
その他の低分子量ポリオール(上記した炭素数2~4のジオール、および、親水性基を含有する活性水素基含有化合物を除く低分子量ポリオール)が含有される場合には、その含有割合は、ポリオール成分の総量100質量部に対して、例えば、30質量部以下、好ましくは、20質量部以下、より好ましくは、10質量部以下であり、例えば、1質量部以上である。
【0110】
また、その他の低分子量ポリオールとして、3価以上の低分子量ポリオールが用いられる場合、炭素数2~4のジオールと3価以上の低分子量ポリオールとの併用割合は、炭素数2~4のジオールと3価アルコールとの総量100質量部に対して、3価以上の低分子量ポリオールが、例えば、1質量部以上、好ましくは、5質量部以上であり、例えば、20質量部以下、好ましくは、10質量部以下である。
【0111】
高分子量ポリオールは、水酸基を2つ以上有する数平均分子量(標準ポリスチレンを検量線とするGPC測定による数平均分子量)300以上、好ましくは、400以上の化合物であって、例えば、ポリエーテルポリオール(例えば、ポリオキシアルキレンポリオール、ポリテトラメチレンエーテルポリオールなど)、ポリエステルポリオール(例えば、アジピン酸系ポリエステルポリオール、フタル酸系ポリエステルポリオール、ラクトン系ポリエステルポリオールなど)、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオール(例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールなどをポリイソシアネートによりウレタン変性したポリオール)、エポキシポリオール、植物油ポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール、ビニルモノマー変性ポリオールなどが挙げられる。
【0112】
これら高分子量ポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0113】
なお、高分子量ポリオールが、活性水素基含有成分に過剰に含有されると、ガスバリア性の低下を惹起する。そのため、ガスバリア性の低下を抑制する観点から、活性水素基含有成分中における高分子量ポリオールの含有割合は、所定値以下に制限される。
【0114】
より具体的には、高分子量ポリオール(すなわち、数平均分子量300以上の高分子量ポリオール)の含有割合は、活性水素基含有成分の総量に対して、40質量%以下、好ましくは、30質量%以下、より好ましくは、20質量%以下、さらに好ましくは、10質量%以下、さらに好ましくは、5質量%以下、とりわけ好ましくは、2質量%以下である。
【0115】
とりわけ、高分子量ポリオールの中でも、数平均分子量1000以上の高分子量ポリオールが、活性水素基含有成分に過剰に含有されると、顕著にガスバリア性の低下を惹起する。そのため、ガスバリア性の低下を抑制する観点から、活性水素基含有成分中における高分子量ポリオールの含有割合は、所定値以下に制限される。
【0116】
より具体的には、数平均分子量1000以上の高分子量ポリオールの含有割合は、活性水素基含有成分の総量に対して、40質量%以下、好ましくは、30質量%以下、より好ましくは、20質量%以下、さらに好ましくは、10質量%以下、さらに好ましくは、5質量%以下、とりわけ好ましくは、2質量%以下である。
【0117】
換言すれば、活性水素基含有成分は、上記の割合で高分子量ポリオールの含有を許容する。
【0118】
なお、ガスバリア性の観点から、好ましくは、活性水素基含有成分(ポリオール成分)は、高分子量ポリオールを含有しない。
【0119】
ポリオール成分は、より好ましくは、上記した炭素数2~4のジオールと、親水性基を含有する活性水素基含有化合物と、3価以上の低分子量ポリオールとからなるか、または、炭素数2~4のジオールと、親水性基を含有する活性水素基含有化合物とからなる。
【0120】
また、活性水素基含有成分は、ポリオール成分の他、さらに、アミノ基含有成分を含むことができる。
【0121】
アミノ基含有成分としては、例えば、芳香族ポリアミン、芳香脂肪族ポリアミン、脂環族ポリアミン、脂肪族ポリアミン、アミノアルコール、ポリオキシエチレン基含有ポリアミン、第1級アミノ基、または、第1級アミノ基および第2級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物(以下、アミノ基含有アルコキシシリル化合物と称する場合がある。)、ヒドラジンまたはその誘導体などのアミノ基含有化合物が挙げられる。
【0122】
芳香族ポリアミンとしては、例えば、4,4’-ジフェニルメタンジアミン、トリレンジアミンなどが挙げられる。
【0123】
芳香脂肪族ポリアミンとしては、例えば、1,3-または1,4-キシリレンジアミンもしくはその混合物などが挙げられる。
【0124】
脂環族ポリアミンとしては、例えば、3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルアミン(別名:イソホロンジアミン)、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン、2,5(2,6)-ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、1,4-シクロヘキサンジアミン、1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、ビス-(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ジアミノシクロヘキサン、3,9-ビス(3-アミノプロピル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,3-および1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンおよびそれらの混合物などが挙げられる。
【0125】
脂肪族ポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、1,3-プロパンジアミン、1,4-ブタンジアミン、1,5-ペンタンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、1,2-ジアミノエタン、1,2-ジアミノプロパン、1,3-ジアミノペンタンなどが挙げられる。
【0126】
アミノアルコールとしては、例えば、2-((2-アミノエチル)アミノ)エタノール(別名:N-(2-アミノエチル)エタノールアミン)、2-((2-アミノエチル)アミノ)-1-メチルプロパノール(別名:N-(2-アミノエチル)イソプロパノールアミン)などが挙げられる。
【0127】
ポリオキシエチレン基含有ポリアミンとしては、例えば、ポリオキシエチレンエーテルジアミンなどのポリオキシアルキレンエーテルジアミンが挙げられる。より具体的には、例えば、日本油脂製のPEG#1000ジアミンや、ハンツマン社製のジェファーミンED―2003、EDR-148、XTJ-512などが挙げられる。
【0128】
第1級アミノ基、または、第1級アミノ基および第2級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物(アミノ基含有アルコキシシリル化合物)としては、例えば、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシランなどの第1級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物、例えば、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン(別名:N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリエトキシシラン(別名:N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン)、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン(別名:N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン)、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジエトキシシラン(別名:N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン)などの第1級アミノ基および第2級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物などが挙げられる。
【0129】
ヒドラジンまたはその誘導体としては、例えば、ヒドラジン(水和物を含む)、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジドなどが挙げられる。
【0130】
これらアミノ基含有成分は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0131】
アミノ基含有成分として、好ましくは、アミノアルコール、アミノ基含有アルコキシシリル化合物が挙げられ、より好ましくは、2-((2-アミノエチル)アミノ)エタノール(別名:N-(2-アミノエチル)エタノールアミン)、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン(別名:N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)が挙げられる。
【0132】
アミノ基含有成分として、さらに好ましくは、アミノアルコールの単独使用と、アミノアルコールおよびアミノ基含有アルコキシシリル化合物の併用とが挙げられ、とりわけ好ましくは、アミノアルコールおよびアミノ基含有アルコキシシリル化合物の併用が挙げられる。これらが併用される場合、ガスバリア性の観点から、アミノアルコールとアミノ基含有アルコキシシリル化合物との総量100質量部に対して、アミノアルコールが、例えば、50質量部以上、好ましくは、60質量部以上、より好ましくは、70質量部以上であり、例えば、95質量部以下、好ましくは、90質量部以下、より好ましくは、85質量部以下である。また、アミノ基含有アルコキシシリル化合物が、例えば、5質量部以上、好ましくは、10質量部以上、より好ましくは、15質量部以上であり、例えば、50質量部以下、好ましくは、40質量部以下、より好ましくは、30質量部以下である。
【0133】
なお、アミノ基含有成分は、好ましくは、後述するプレポリマー法において、鎖伸長剤として用いられる。
【0134】
活性水素基含有成分が、ポリオール成分とアミノ基含有成分とを併有する場合、活性水素基含有成分の総量100質量部に対して、ポリオール成分の含有割合は、例えば、40質量部以上、好ましくは、50質量部以上であり、例えば、95質量部以下、好ましくは、85質量部以下である。また、アミノ基含有成分の含有割合は、例えば、5質量部以上、好ましくは、15質量部以上であり、例えば、60質量部以下、好ましくは、50質量部以下である。
【0135】
そして、ポリイソシアネート成分と活性水素基含有成分との反応では、例えば、ワンショット法、プレポリマー法などの公知の方法が採用される。好ましくは、プレポリマー法が採用される。
【0136】
ワンショット法では、例えば、上記した各成分を、活性水素基含有成分中の活性水素基(水酸基、アミノ基)に対するポリイソシアネート成分中のイソシアネート基の当量比(NCO/活性水素基)が、例えば、0.8以上、好ましくは、0.9以上、例えば、1.2以下、好ましくは、1.1以下となるように処方(混合)し、バルク重合(後述)や溶液重合(後述)などの公知の重合方法により、例えば、室温~250℃、好ましくは、室温~200℃で、例えば、5分~72時間、好ましくは、4~24時間硬化反応させる。
【0137】
プレポリマー法では、まず、炭素環直結NCO化合物を含むポリイソシアネート成分と、活性水素基含有成分の一部(鎖伸長剤以外の活性水素基含有成分(ポリオール成分))、好ましくは、炭素数2~4のジオール、および、親水性基を含有する活性水素基含有化合物とを少なくとも反応させ、イソシアネート基末端プレポリマーを合成する。
【0138】
この反応において、活性水素基含有成分の一部中の活性水素基、好ましくは、ポリオール成分の活性水素基(水酸基)の総量に対するポリイソシアネート成分中のイソシアネート基の当量比(イソシアネート基/活性水素基)は、例えば、1.2以上、好ましくは、1.3以上、例えば、3.0以下、好ましくは、2.5以下である。そして、この方法では、バルク重合や溶液重合などの公知の重合方法、好ましくは、反応性および粘度の調整がより容易な溶液重合によって、上記各成分を反応させる。
【0139】
バルク重合では、例えば、窒素雰囲気下、上記成分を配合して、反応温度75~85℃で、1~20時間程度反応させる。
【0140】
溶液重合では、例えば、窒素雰囲気下、有機溶媒(溶剤)に、上記成分を配合して、反応温度20~80℃で、1~20時間程度反応させる。
【0141】
有機溶媒としては、イソシアネート基に対して不活性で、かつ、親水性に富む、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、N-メチルピロリドンなどが挙げられる。
【0142】
また、上記重合では、必要に応じて、例えば、アミン系、スズ系、鉛系などの反応触媒を添加してもよく、また、得られるイソシアネート基末端プレポリマーから未反応のポリイソシアネート(炭素環直結NCO化合物を含む)を、例えば、蒸留や抽出などの公知の方法により、除去することもできる。
【0143】
また、上記重合において、例えば、イオン性基が含まれている場合には、好ましくは、中和剤を添加して中和し、イオン性基の塩を形成させる。
【0144】
中和剤としては、イオン性基がアニオン性基の場合には、慣用の塩基、例えば、有機塩基(例えば、第3級アミン類(トリメチルアミン、トリエチルアミンなどの炭素数1~4のトリアルキルアミン、ジメチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミンなどのアルカノールアミン、モルホリンなどの複素環式アミンなど))、無機塩基(アンモニア、アルカリ金属水酸化物(水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)、アルカリ土類金属水酸化物(水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなど)、アルカリ金属炭酸塩(炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなど))が挙げられる。これらの塩基は、単独使用または2種類以上併用できる。
【0145】
中和剤は、アニオン性基1当量あたり、0.4当量以上、好ましくは、0.6当量以上の割合で添加し、また、例えば、1.2当量以下、好ましくは、1当量以下の割合で添加する。
【0146】
このようにして得られるイソシアネート基末端プレポリマーは、その分子末端に、少なくとも1つ、好ましくは、2つ以上の遊離のイソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマーであって、そのイソシアネート基の含有量(溶剤を除いた固形分換算のイソシアネート基含量)が、例えば、0.3質量%以上、好ましくは、0.5質量%以上、より好ましくは、1.0質量%以上であり、また、例えば、15質量%以下、好ましくは、12質量%以下、より好ましくは、10質量%以下である。
【0147】
また、イソシアネート基の平均官能基数は、例えば、1.5以上、好ましくは1.9以上、より好ましくは、2.0以上、さらに好ましくは、2.1以上であり、また、例えば、3.0以下、好ましくは、2.5以下である。
【0148】
イソシアネート基の平均官能基数が上記範囲にあれば、安定したポリウレタンディスパージョンを得ることができ、基材密着性、ガスバリア性などを確保することができる。
【0149】
また、その数平均分子量(標準ポリスチレンを検量線とするGPC測定による数平均分子量)が、例えば、500以上、好ましくは、800以上であり、また、例えば、10000以下、好ましくは、5000以下である。
【0150】
その後、この方法では、上記により得られたイソシアネート基末端プレポリマーと、活性水素基含有成分の残部、すなわち、鎖伸長剤、好ましくは、アミノ基含有成分とを、例えば、水中で反応させ、ポリウレタン樹脂のポリウレタンディスパージョンを得る。
【0151】
イソシアネート基末端プレポリマーと鎖伸長剤とを水中で反応させるには、例えば、まず、水にイソシアネート基末端プレポリマーを添加することにより、イソシアネート基末端プレポリマーを水分散させ、次いで、それに鎖伸長剤を添加して、イソシアネート基末端プレポリマーを鎖伸長剤により鎖伸長する。
【0152】
イソシアネート基末端プレポリマーを水分散させるには、イソシアネート基末端プレポリマー100質量部に対して、水100~1000質量部の割合において、水を攪拌下、イソシアネート基末端プレポリマーを添加する。
【0153】
その後、鎖伸長剤を、イソシアネート基末端プレポリマーが水分散された水中に、攪拌下、イソシアネート基末端プレポリマーのイソシアネート基に対する鎖伸長剤の活性水素基(アミノ基および水酸基)の当量比(活性水素基/イソシアネート基)が、例えば、0.6~1.2の割合となるように、滴下する。
【0154】
鎖伸長剤は、滴下することで反応させ、滴下終了後は、さらに撹拌しつつ、例えば、常温にて反応を完結させる。反応完結までの反応時間は、例えば、0.1時間以上であり、また、例えば、10時間以下である。
【0155】
なお、上記とは逆に、水をイソシアネート基末端プレポリマー中に添加して、イソシアネート基末端プレポリマーを水分散させ、次いで、それに鎖伸長剤を添加して、イソシアネート基末端プレポリマーを鎖伸長剤により鎖伸長することもできる。
【0156】
また、この方法では、必要に応じて、有機溶媒や水を除去することができ、さらには、水を添加して固形分濃度を調整することもできる。
【0157】
得られるポリウレタン樹脂のポリウレタンディスパージョンの固形分濃度は、例えば、10質量%以上、好ましくは、15質量%以上、より好ましくは、20質量%以上であり、また、例えば、60質量%以下、好ましくは、50質量%以下、より好ましくは、40質量%以下である。
【0158】
また、ポリウレタンディスパージョンにおけるポリウレタン樹脂のウレタン基濃度およびウレア基濃度の合計は、例えば、25質量%以上、好ましくは、30質量%以上、より好ましくは、33質量%以上であり、例えば、50質量%以下、好ましくは、47質量%以下、より好ましくは、45質量%以下、さらに好ましくは、40質量%以下である。
【0159】
なお、ウレタン基濃度およびウレア基濃度の合計は、原料成分の仕込み比から算出することができる。
【0160】
また、ポリウレタンディスパージョンは、ガスバリア性および高温殺菌処理(レトルト処理)耐性の観点から、好ましくは、架橋剤(硬化剤)を含有する。
【0161】
架橋剤としては、例えば、エポキシ硬化剤、メラミン硬化剤、カルボジイミド硬化剤、アジリジン硬化剤、オキサゾリン硬化剤、イソシアネート硬化剤などの架橋性硬化剤が挙げられる。この中で、イソシアネート硬化剤については、より具体的には、水分散性のイソシアネート硬化剤(例えば、ブロックイソシアネート(例えば、トリレンジイソシアネート系のブロックイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート系のブロックイソシアネート、キシリレンジイソシアネート系のブロックイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート系のブロックイソシアネートなど)、親水性基を含有する非ブロックポリイソシアネートなど)が挙げられる。
【0162】
架橋剤を配合する場合には、その配合割合は、ポリウレタン樹脂100質量部に対して、架橋剤が、固形分として、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、1質量部以上であり、また、例えば、50質量部以下、好ましくは、30質量部以下である。
【0163】
さらに、ポリウレタンディスパージョンには、必要に応じて、各種の添加剤を配合することができる。添加剤としては、例えば、シランカップリング剤、アルコキシシラン化合物、安定剤(酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤など)、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、界面活性剤、分散安定剤、着色剤(顔料、染料など)、フィラー、コロイダルシリカ、無機粒子、無機酸化物粒子、結晶核剤などが挙げられる。
【0164】
なお、添加剤は、上記各原料成分に予め配合してもよく、また、合成後のイソシアネート基末端プレポリマーや、ポリウレタン樹脂に配合してもよく、さらに、それら各成分の配合時に同時に配合してもよい。
【0165】
また、添加剤の配合割合は、特に制限されず、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0166】
また、必要に応じて、ガスバリア性が損なわれない範囲で、ガスバリア性を有する熱可塑性樹脂を配合してもよい。
【0167】
ガスバリア性を有する熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニリデンまたは塩化ビニリデン共重合体、でんぷん、セルロースなどの多糖類などが挙げられる。
【0168】
そして、このようなポリウレタンディスパージョンでは、活性水素基含有成分は、炭素数2~4のジオール、および、親水性基を含有する活性水素基含有化合物を含有する。
【0169】
このような活性水素基含有成分を用いて得られるポリウレタンディスパージョンによれば、ガスバリア性に優れるポリウレタン層を得ることができる。
【0170】
さらに、本発明のポリウレタンディスパージョンでは、ポリイソシアネート成分が、炭素環と、炭素環に直接結合するイソシアネート基とを有するポリイソシアネート化合物を、ポリイソシアネート成分の総量に対して90質量%以上の割合で含有している。
【0171】
このようなポリウレタンディスパージョンでは、ポリイソシアネート成分において、炭素環に対してイソシアネート基が直接結合しているため、イソシアネート基の自由度、および、ポリウレタン樹脂中でのウレタン結合の自由度が制限される。
【0172】
その結果、高温殺菌処理(レトルト処理)によるポリウレタン層の変形および劣化を抑制することができ、無機層に対してポリウレタン層を積層しても、無機層の破損を抑制できる。
【0173】
そして、本発明の積層体は、上記のポリウレタンディスパージョンの乾燥物が、無機層に対して積層されているため、高温殺菌処理(レトルト処理)によるポリウレタン層の変形および劣化を抑制することができ、高温殺菌処理(レトルト処理)後もガスバリア性に優れる。
【0174】
そのため、上記のポリウレタンディスパージョンは、ガスバリア層としてポリウレタン層を備える積層体の製造において、好適に用いることができる。
【0175】
図1において、積層体1は、基材2と、基材2の上に積層されるポリウレタン層3とを備えている。
【0176】
基材2は、必須層として、無機層4を備えている。
【0177】
より具体的には、基材2は、無機層4のみを備えるか、または、無機層4と、無機層4を下面から支持する樹脂層5とを備えている。
【0178】
好ましくは、基材2は、無機層4と、無機層4を支持する樹脂層5とを備えている。
【0179】
換言すれば、基材2は、樹脂層5と、樹脂層5に積層される無機層4とを備えている。
【0180】
樹脂層5は、例えば、プラスチック(例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂など)から形成され、好ましくは、熱可塑性樹脂から形成される。
【0181】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレン-エチレン共重合体など)、ポリエステル系樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなど)、ポリアミド系樹脂(例えば、ナイロン6(登録商標)、ナイロン66(登録商標)、ポリメタキシリレンアジパミドなど)、ビニル系樹脂(例えば、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニルなど)、アクリル系樹脂(例えば、ポリメチルメタアクリレート、ポリアクリロニトリルなど)、ポリカーボネート系樹脂(例えば、ビスフェノールA型ポリカーボネートなど)、セルロース系樹脂(例えば、セロファン、酢酸セルロースなど)などが挙げられる。好ましくは、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂が挙げられる。より好ましくは、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン6(登録商標)が挙げられる。
【0182】
樹脂層5は、単層、または、同種または2種以上の積層体からなる。
【0183】
なお、樹脂層5の形状は、特に制限されないが、例えば、フィルム状、シート状、ボトル状、カップ状などが挙げられる。好ましくは、フィルム状が挙げられる。
【0184】
樹脂層5は、無延伸基材、一軸または二軸延伸基材のいずれでもよく、また、樹脂層5には、表面処理(コロナ放電処理など)、アンカーコートまたはアンダーコート処理がなされていてもよい。
【0185】
樹脂層5として、好ましくは、熱可塑性樹脂から形成されるフィルムが挙げられ、より好ましくは、ポリエチレンテレフタレートフィルムが挙げられる。
【0186】
樹脂層5の厚みは、特に制限されないが、例えば、5μm以上、好ましくは、10μm以上であり、例えば、200μm以下、好ましくは、100μm以下である。
【0187】
無機層4は、無機材料からなる層であり、具体的には、無機材料からなる薄膜である。
【0188】
無機材料としては、例えば、周期表(IUPAC Periodic Table of the Elements(version date 22 June 007)に従う。以下同じ。)2族であるマグネシウム、カルシウム、バリウム、4族であるチタン、ジルコニウム、13族であるアルミニウム、インジウム、14族のケイ素、ゲルマニウム、スズなどの金属を含む無機物、例えば、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化インジウム、酸化ケイ素、酸化スズなどの金属酸化物を含む無機酸化物、例えば、酸化窒化ケイ素などの無機窒化酸化物などが挙げられる。
【0189】
ガスバリア性および生産効率の観点から、好ましくは、アルミニウム、ケイ素およびそれらの酸化物が挙げられる。また、これらの金属およびそれらの酸化物は、複数を組み合わせて、金属および/または金属酸化物からなる層を形成してもよい。
【0190】
ガスバリア性および生産効率の観点から、さらに好ましくは、無機層4は、酸化アルミニウムおよび/または酸化ケイ素を含有する。
【0191】
無機層4は、樹脂層5の一方面に、例えば、蒸着法(真空蒸着法、EB蒸着法など)、スパッタリング法、イオンプレーティング法、ラミネート法、プラズマ気相成長法(CVD法)などにより形成される。
【0192】
生産性の観点から、好ましくは、蒸着法が挙げられ、より好ましくは、真空蒸着法が挙げられる。換言すれば、無機層4は、好ましくは、無機蒸着層である。
【0193】
例えば、真空蒸着法では、真空蒸着装置の加熱方式として、好ましくは、電子線加熱方式、抵抗加熱方式および誘導加熱方式が採用される。
【0194】
無機層4の厚みは、無機材料の種類や構成により適宜選択されるが、例えば、1nm以上、好ましくは、2nm以上であり、例えば、500nm以下、好ましくは、300nm以下である。
【0195】
基材2の厚み(樹脂層5および無機層4の総厚み)は、例えば、5μm以上、好ましくは、10μm以上であり、例えば、200μm以下、好ましくは、100μm以下である。
【0196】
ポリウレタン層3は、上記のポリウレタン樹脂(ポリウレタンディスパージョンに含まれる水性ポリウレタン樹脂)から形成されており、より具体的には、ポリウレタン層3は、上記のポリウレタンディスパージョンの乾燥物である。
【0197】
このようなポリウレタン層3は、製造効率の観点から、好ましくは、上記のポリウレタン樹脂を含むポリウレタンディスパージョンを、無機層4の表面(無機層4の樹脂層5との接触面に対する反対側の表面)に塗布および乾燥させることにより、形成されている。
【0198】
より具体的には、ポリウレタン層3を形成するには、上記方法により得られたポリウレタンディスパージョンの濃度を調整してコート剤(コート液)を調製する。そして、得られたコート剤を、無機層4の上に塗布し、乾燥させる。
【0199】
ポリウレタンディスパージョンの濃度調整では、例えば、水や公知の有機溶媒などを添加、または、脱離させるなど、公知の方法を採用することができる。
【0200】
また、コート剤には、無機層4へ濡れ性を付与するためや、コート剤を希釈するために、例えば、モノオールを添加することができる。
【0201】
モノオールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、2-エチルヘキシルアルコール、その他のアルカノール(C5~38)および脂肪族不飽和アルコール(C9~24)、アルケニルアルコール、2-プロペン-1-オール、アルカジエノール(C6~8)、3,7-ジメチル-1,6-オクタジエン-3-オールなどが挙げられる。
【0202】
これらモノオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0203】
モノオールとして、好ましくは、2-プロパノールが挙げられる。
【0204】
モノオールの配合割合は、必要により濃度調整されるコート剤100質量部中に、例えば、1質量部以上、好ましくは、2質量部以上であり、例えば、50質量部以下、好ましくは、35質量部以下である。
【0205】
また、コート剤の固形分濃度は、例えば、0.5質量%以上、好ましくは、1質量%以上であり、また、例えば、30質量%以下、好ましくは、25質量%以下である。
【0206】
また、コート剤の塗布方法としては、特に制限されず、例えば、グラビアコート法、リバースコート法、ロールコート法、バーコート法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ディッピング法などの公知のコーティング方法が挙げられる。
【0207】
また、基材2を作製するときに、インラインで塗布してもよい。
【0208】
具体的には、基材2がフィルム状の場合、フィルム製膜時の縦方向の一軸延伸処理後にグラビアコート法などにより、コート剤を塗布および乾燥した後、二軸延伸処理してポリウレタン層3を無機層4の上に設けることができる。
【0209】
また、基材2がボトル状の場合、ブロー成型前のプリフォームにディッピング法などによりコート剤を塗布および乾燥した後、ブロー成型してポリウレタン層3を無機層4の上に設けることができる。
【0210】
また、乾燥条件は、乾燥温度が、例えば、40℃以上、好ましくは、50℃以上、より好ましくは、90℃以上であり、例えば、200℃以下、好ましくは、180℃以下、より好ましくは、150℃以下である。また、乾燥時間が、例えば、0.1分以上、好ましくは、0.2分以上であり、例えば、10分以下、好ましくは、5分以下である。
【0211】
これにより、無機層4の上に、ポリウレタン樹脂(ポリウレタンディスパージョンの乾燥物)からなるポリウレタン層3を形成することができる。
【0212】
ポリウレタン層3の厚みは、ポリウレタン樹脂(乾燥後)の積層量として、例えば、0.05g/m以上、好ましくは、0.1g/m以上、より好ましくは、0.2g/m以上であり、また、例えば、10g/m以下、好ましくは、7g/m以下、より好ましくは、5g/m以下、さらに好ましくは、3g/m以下、さらに好ましくは、2g/m以下、とりわけ好ましくは、1g/m以下である。
【0213】
そして、上記のように、基材2の無機層4の上にポリウレタン層3を形成することにより、基材2(無機層4)およびポリウレタン層3を備える積層体1を得ることができる。
【0214】
積層体1の厚みは、例えば、5μm以上、好ましくは、10μm以上であり、また、例えば、1mm以下、好ましくは、0.5mm以下である。
【0215】
また、必要に応じて、得られた積層体1を、例えば、30~60℃で、2~5日間程度養生させてもよい。
【0216】
そして、積層体1は、上記のポリウレタン層3を備えており、かつ、そのポリウレタン層3の一方側の表面に接触するように配置される無機層4を備えている。
【0217】
すなわち、このような積層体1では、上記のポリウレタンディスパージョンの乾燥物が、無機層4に対して積層されているため、高温殺菌処理(レトルト処理)によるポリウレタン層3の変形および劣化を抑制することができ、高温殺菌処理(レトルト処理)後もガスバリア性に優れる。
【0218】
また、積層体1では、ガスバリア性の向上を図るため、ポリウレタン層3に、層状無機化合物を分散させることもできる。
【0219】
具体的には、例えば、上記のポリウレタンディスパージョンと、層状無機化合物との混合物を、基材2の無機層4に塗布および乾燥させることにより、層状無機化合物が分散されたポリウレタン層3を形成することができる。
【0220】
層状無機化合物としては、例えば、膨潤性の層状無機化合物、非膨潤性の層状無機化合物などが挙げられる。ガスバリア性の観点から、好ましくは、膨潤性の層状無機化合物が挙げられる。
【0221】
膨潤性の層状無機化合物は、極薄の単位結晶からなり、単位結晶層間に溶媒が配位または吸収・膨潤する性質を有する粘土鉱物である。
【0222】
膨潤性の層状無機化合物として、具体的には、例えば、含水ケイ酸塩(フィロケイ酸塩鉱物など)、例えば、カオリナイト族粘土鉱物(ハロイサイト、カオリナイト、エンデライト、ディッカイト、ナクライトなど)、アンチゴライト族粘土鉱物(アンチゴライト、クリソタイルなど)、スメクタイト族粘土鉱物(モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイトなど)、バーミキュライト族粘土鉱物(バーミキュライトなど)、雲母またはマイカ族粘土鉱物(白雲母、金雲母などの雲母、マーガライト、テトラシリリックマイカ、テニオライトなど)、合成マイカなどが挙げられる。
【0223】
これら膨潤性の層状無機化合物は、天然粘土鉱物であってもよく、また、合成粘土鉱物であってもよい。また、単独または2種以上併用することができ、好ましくは、スメクタイト族粘土鉱物(モンモリロナイトなど)、マイカ族粘土鉱物(水膨潤性雲母など)、合成マイカなどが挙げられ、より好ましくは、合成マイカが挙げられる。
【0224】
層状無機化合物の平均粒径は、例えば、50nm以上、好ましくは、100nm以上であり、また、通常、100μm以下であり、例えば、75μm以下、好ましくは、50μm以下である。また、層状無機化合物のアスペクト比は、例えば、10以上、好ましくは20以上、より好ましくは、100以上であり、また、例えば、5000以下、好ましくは、4000以下、より好ましくは、3000以下である。
【0225】
そして、層状無機化合物が分散されたポリウレタン層3を形成するには、例えば、まず、上記のポリウレタンディスパージョンと、層状無機化合物とを混合し、混合物として、ハイブリッドコート剤を調製する。そして、得られたハイブリッドコート剤を基材2の無機層4の上に塗布し、乾燥させる。
【0226】
混合物(ハイブリッドコート剤)を調製するには、まず、水に層状無機化合物を分散させ、次いで、その分散液に、ポリウレタンディスパージョン(ポリウレタン樹脂を含む)を添加する。
【0227】
ポリウレタン樹脂と層状無機化合物との配合割合は、ポリウレタン樹脂と層状無機化合物との質量の総量100質量部に対して、層状無機化合物が、0.1質量部以上、好ましくは、1質量部以上であり、例えば、50質量部以下、好ましくは、30質量部以下である。
【0228】
ポリウレタン樹脂と層状無機化合物との配合割合が上記範囲であれば、ガスバリア性を維持するとともに、基材との密着性、透明性および低コスト性の向上を図ることができる。
【0229】
得られる混合物(ハイブリッドコート剤)における、ポリウレタン樹脂および層状無機化合物の総濃度は、例えば、0.1質量%以上、好ましくは、0.5質量%以上であり、また、例えば、15質量%以下、好ましくは、12質量%以下である。
【0230】
なお、混合物(ハイブリッドコート剤)において、層状無機化合物は、2次凝集するおそれがあるため、好ましくは、層状無機化合物を溶媒に分散または混合した後、せん断力が作用する機械的な強制分散処理、例えば、ホモミキサー、コロイドミル、ジェットミル、ニーダー、ビーズミル、サンドミル、ボールミル、3本ロール、超音波分散装置などによる分散処理を利用して、分散させる。
【0231】
また、ハイブリッドコート剤の塗布方法としては、特に制限されず、上記した公知のコーティング方法が挙げられる。
【0232】
乾燥条件は、乾燥温度が、例えば、40℃以上、好ましくは、50℃以上であり、例えば、200℃以下、好ましくは、180℃以下である。また、乾燥時間が、例えば、0.1分以上、好ましくは、0.2分以上であり、例えば、10分以下、好ましくは、5分以下である。
【0233】
これにより、基材2の無機層4の上に、ポリウレタン樹脂(ポリウレタンディスパージョンの乾燥物)および層状無機化合物からなるポリウレタン層3を形成することができる。
【0234】
ポリウレタン層3の厚みは、ポリウレタン樹脂および層状無機化合物(乾燥後)の積層量として、例えば、0.1g/m以上、好ましくは、0.2g/m以上、より好ましくは、0.6g/m以上であり、また、例えば、10g/m以下、好ましくは、7g/m以下、より好ましくは、5g/m以下である。
【0235】
そして、上記のように、基材2の無機層4の上にポリウレタン層3を形成することにより、積層体1を得ることができる。
【0236】
積層体1の厚みは、例えば、5μm以上、好ましくは、10μm以上であり、また、例えば、1mm以下、好ましくは、0.5mm以下である。
【0237】
また、積層体1において、層状無機化合物の質量割合は、ポリウレタン層3の総量100質量部に対して、層状無機化合物の質量が、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、0.2質量部以上、より好ましくは、1質量部以上であり、例えば、90質量部以下、好ましくは、70質量部以下、より好ましくは、50質量部以下である。
【0238】
層状無機化合物の質量割合が上記範囲であれば、基材との密着性や、透明性の向上を図るとともに、層状無機化合物の配合割合を少なくできるため、低コスト性の向上も図ることができる。
【0239】
また、必要に応じて、得られた積層体1を、例えば、30~60℃で、2~5日間程度養生させてもよい。
【0240】
このような積層体1は、上記のポリウレタンディスパージョンを用いて得られるポリウレタン層3を備え、また、そのポリウレタン層3に層状無機化合物が分散されているため、とりわけガスバリア性に優れる。
【0241】
そして、このようにして得られる積層体1は、ガスバリア性のみならず、無機層4に対する密着性にも優れ、さらには、ガスバリア性および密着性を、高温殺菌処理後にも維持することができる。
【0242】
そのため、積層体1は、ガスバリア性フィルムの分野、具体的には、食品・医薬品などの包装フィルム、食品包装容器(ボトルを含む。)、光学フィルム、工業用フィルムなどにおいて好適に使用され、とりわけ、ボイル殺菌、レトルト殺菌などの高温殺菌処理、加熱調理等の加熱処理が必要とされる内容物の食品包装フィルムとして、好適に使用される。
【0243】
また、上記したコート剤や、ハイブリッドコート剤に、顔料などの着色剤を含ませて印刷用インキとして調製し、これをプラスチックフィルム、紙、各種容器などへ塗装することで印刷フィルムや印刷体としても好適に使用することができる。
【0244】
なお、上記した説明では、ポリウレタン層3の一方側の表面にのみ無機層4を接触配置させたが、積層体1では、ポリウレタン層3の少なくとも一方側の表面に無機層4が接触配置されていればよく、例えば、ポリウレタン層3の両面に、無機層4が接触されていてもよい。
【0245】
さらに、この積層体1では、図2に示されるように、ポリウレタン層3の表面に、他のポリウレタン層6を積層することができる。
【0246】
以下において、無機層4に接触配置される上記のポリウレタン層3を、第1ポリウレタン層3と称する。また、第1ポリウレタン層3の形成に用いられた上記ポリウレタンディスパージョンおよび上記ポリウレタン樹脂を、それぞれ、第1ポリウレタンディスパージョンおよび第1ポリウレタン樹脂と称する。
【0247】
また、以下において、第1ポリウレタン層3に積層されるポリウレタン層6を、第2ポリウレタン層6と称する。また、第2ポリウレタン層6の形成に用いられる下記ポリウレタンディスパージョンおよび下記ポリウレタン樹脂を、それぞれ、第2ポリウレタンディスパージョンおよび第2ポリウレタン樹脂と称する。
【0248】
図2において、積層体1は、第1ポリウレタン樹脂を含む第1ポリウレタン層3と、第1ポリウレタン層3の一方側の表面に無機層4が接触するように配置される基材2とを備えている。さらに、積層体1は、第1ポリウレタン層3の無機層4が接触する一方側の表面に対する他方側の表面において、第2ポリウレタン層6が積層されている。
【0249】
第2ポリウレタン層6は、第2ポリウレタン樹脂を含有する第2ポリウレタンディスパージョンの乾燥物である。
【0250】
第2ポリウレタン樹脂は、第2ポリイソシアネート成分と第2活性水素基含有成分とを少なくとも反応させることにより得られる反応生成物である。
【0251】
第2ポリイソシアネート成分は、第2ポリイソシアネート化合物を、主成分として(例えば、第2ポリイソシアネート成分の総量に対して90質量%以上、好ましくは、95質量%以上の割合で)含有している。
【0252】
好ましくは、第2ポリイソシアネート成分は、第2ポリイソシアネート化合物からなる。
【0253】
第2ポリイソシアネート化合物は、例えば、キシリレンジイソシアネートおよび/または水添キシリレンジイソシアネートを含有している。
【0254】
キシリレンジイソシアネート(XDI)としては、1,2-キシリレンジイソシアネート(o-XDI)、1,3-キシリレンジイソシアネート(m-XDI)、1,4-キシリレンジイソシアネート(p-XDI)が、構造異性体として挙げられる。
【0255】
これらキシリレンジイソシアネートは、単独使用または2種類以上併用することができる。キシリレンジイソシアネートとして、好ましくは、1,3-キシリレンジイソシアネート、1,4-キシリレンジイソシアネート、より好ましくは、1,3-キシリレンジイソシアネートが挙げられる。
【0256】
また、水添キシリレンジイソシアネート(別名:ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン)(HXDI)としては、1,2-水添キシリレンジイソシアネート(1,2-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、o-HXDI)、1,3-水添キシリレンジイソシアネート(1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、m-HXDI)、1,4-水添キシリレンジイソシアネート(1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、p-HXDI)が、構造異性体として挙げられる。
【0257】
これら水添キシリレンジイソシアネートは、単独使用または2種類以上併用することができる。水添キシリレンジイソシアネートとして、好ましくは、1,3-水添キシリレンジイソシアネート、1,4-水添キシリレンジイソシアネート、より好ましくは、1,3-水添キシリレンジイソシアネートが挙げられる。
【0258】
また、キシリレンジイソシアネートおよび/または水添キシリレンジイソシアネートとしては、上記と同様の誘導体が含まれる。
【0259】
誘導体としては、例えば、キシリレンジイソシアネートおよび/または水添キシリレンジイソシアネートの多量体、アロファネート変性体、ポリオール変性体、ビウレット変性体、ウレア変性体、オキサジアジントリオン変性体、カルボジイミド変性体、ウレトジオン変性体、ウレトンイミン変性体などが挙げられる。
【0260】
誘導体は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0261】
第2ポリイソシアネート化合物において、好ましくは、キシリレンジイソシアネートが挙げられる。
【0262】
また、第2ポリイソシアネート成分は、必要に応じて、その他のポリイソシアネートを含有することもできる。
【0263】
その他のポリイソシアネートとしては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート(キシリレンジイソシアネートを除く)、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート(水添キシリレンジイソシアネートを除く)などのポリイソシアネートなどが挙げられる。
【0264】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート(2,4-または2,6-トリレンジイソシアネートもしくはその混合物)(TDI)、フェニレンジイソシアネート(m-、p-フェニレンジイソシアネートもしくはその混合物)、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)、ジフェニルメタンジイソシネート(4,4’-、2,4’-または2,2’-ジフェニルメタンジイソシネートもしくはその混合物)(MDI)、4,4’-トルイジンジイソシアネート(TODI)、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0265】
芳香脂肪族ポリイソシアネート(キシリレンジイソシアネートを除く)としては、例えば、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(1,3-または1,4-テトラメチルキシリレンジイソシアネートもしくはその混合物)(TMXDI)、ω,ω’-ジイソシアネート-1,4-ジエチルベンゼンなどの芳香脂肪族ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0266】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート(テトラメチレンジイソシアネート、1,2-ブチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート)、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(別名:ヘキサメチレンジイソシアネート)(HDI)、2,4,4-または2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6-ジイソシアネートメチルカプエートなどの脂肪族ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0267】
脂環族ポリイソシアネート(水添キシリレンジイソシアネートを除く)としては、例えば、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,3-シクロペンテンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート(1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート)、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(別名:イソホロンジイソシアネート)(IPDI)、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(別名:ビス(イソシアナトシクロヘキシル)メタン)(4,4’-、2,4’-または2,2’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)これらのTrans,Trans-体、Trans,Cis-体、Cis,Cis-体、もしくはその混合物)(H12MDI)、メチルシクロヘキサンジイソシアネート(メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート)、ノルボルナンジイソシアネート(各種異性体もしくはその混合物)(NBDI)などの脂環族ジイソシアネートなどが挙げられる。好ましくは、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)が挙げられる。
【0268】
その他のポリイソシアネートには、上記と同種の誘導体が含まれる。
【0269】
これらその他のポリイソシアネートは、単独使用または2種類以上併用することができる。好ましくは、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネートが挙げられ、より好ましくは、脂環族ポリイソシアネート、さらに好ましくは、ビス(イソシアナトシクロヘキシル)メタンが挙げられる。
【0270】
その他のポリイソシアネート(キシリレンジイソシアネートおよび水添キシリレンジイソシアネートを除くポリイソシアネート)が配合される場合には、キシリレンジイソシアネートおよび水添キシリレンジイソシアネート(併用される場合にはそれらの総量)の含有割合が、第2ポリイソシアネート成分の総量に対して、例えば、50質量%以上、好ましくは、60質量%以上、より好ましくは、80質量%以上であり、例えば、99質量%以下である。
【0271】
第2ポリイソシアネート成分として、さらに好ましくは、キシリレンジイソシアネートおよびビス(イソシアナトシクロヘキシル)メタンの併用が挙げられる。
【0272】
キシリレンジイソシアネートおよびビス(イソシアナトシクロヘキシル)メタンを併用することにより、ガスバリア性を損なわずに、水分散性に優れた、平均粒子径の小さいポリウレタンディスパージョンが得られる。
【0273】
キシリレンジイソシアネートおよびビス(イソシアナトシクロヘキシル)メタンを併用する場合、キシリレンジイソシアネートおよびビス(イソシアナトシクロヘキシル)メタンの総量(好ましくは、第2ポリイソシアネート成分)100質量部に対して、キシリレンジイソシアネートが、例えば、60質量部以上、好ましくは、70質量部以上、より好ましくは、80質量部以上であり、例えば、95質量部以下、好ましくは、93質量部以下、より好ましくは、90質量部以下である。また、ビス(イソシアナトシクロヘキシル)メタンが、例えば、5質量部以上、好ましくは、7質量部以上、より好ましくは、10質量部以上であり、例えば、40質量部以下、好ましくは、30質量部以下、より好ましくは、20質量部以下である。
【0274】
第2活性水素基含有成分は、好ましくは、上記と同様のポリオール成分、上記と同様のアミノ基含有化合物が挙げられる。
【0275】
すなわち、第2活性水素基含有成分は、好ましくは、上記ポリオール成分と同様の第2ポリオール成分を含有しており、より具体的には、炭素数2~4のジオール、および、上記親水性基を含有する活性水素基含有化合物を含有している。
【0276】
炭素数2~4のジオールとして、好ましくは、炭素数2~4のアルカンジオール、より好ましくは、エチレングリコールが挙げられる。
【0277】
炭素数2~4のジオールの配合割合は、第2ポリオール成分の総量100質量部に対して、例えば、20質量部以上、好ましくは、30質量部以上、より好ましくは、50質量部以上であり、例えば、80質量部以下、好ましくは、70質量部以下である。
【0278】
また、親水性基を含有する活性水素基含有化合物として、好ましくは、イオン性基を含有する活性水素基含有化合物、より好ましくは、カルボキシ基含有ポリオールが挙げられ、さらに好ましくは、ポリヒドロキシアルカン酸が挙げられる。
【0279】
親水性基を含有する活性水素基含有化合物の配合割合は、第2ポリオール成分の総量100質量部に対して、例えば、20質量部以上、好ましくは、25質量部以上、より好ましくは、30質量部以上であり、例えば、50質量部以下、好ましくは、45質量部以下、より好ましくは、40質量部以下である。
【0280】
また、第2ポリオール成分は、さらに、その他の低分子量ポリオール(上記した炭素数5以上のジオール(2価アルコール)、上記した3価以上の低分子量ポリオールなど)や、上記した高分子量ポリオールを含有することもできる。
【0281】
好ましくは、第2ポリオール成分は、その他の低分子量ポリオールを含有する。
【0282】
その他の低分子量ポリオールとして、好ましくは、3価以上の低分子量ポリオールが挙げられる。
【0283】
その他の低分子量ポリオールが配合される場合には、その配合割合は、第2ポリオール成分の総量100質量部に対して、例えば、30質量部以下、好ましくは、20質量部以下、より好ましくは、10質量部以下であり、例えば、1質量部以上である。
【0284】
また、その他の低分子量ポリオールとして、3価以上の低分子量ポリオールが用いられる場合、炭素数2~4のジオールと3価以上の低分子量ポリオールとの併用割合は、炭素数2~4のジオールと3価アルコールとの総量100質量部に対して、3価以上の低分子量ポリオールが、例えば、1質量部以上、好ましくは、5質量部以上であり、例えば、20質量部以下、好ましくは、10質量部以下である。
【0285】
なお、ガスバリア性の観点から、好ましくは、第2活性水素基含有成分(第2ポリオール成分)は、高分子量ポリオールを含有しない。
【0286】
第2ポリオール成分は、より好ましくは、上記した炭素数2~4のジオールと、親水性基を含有する活性水素基含有化合物と、3価以上の低分子量ポリオールとからなる。
【0287】
また、この積層体1(図2参照)のように、第1ポリウレタン層3の表面に、第2ポリウレタン層6が積層される場合、とりわけ好ましくは、第2ポリウレタン層6の製造原料であるポリオール成分(第2ポリオール成分)は、3価以上の低分子量ポリオールを含有する。一方、第1ポリウレタン層3の製造原料であるポリオール成分(第1ポリオール成分)は、好ましくは、3価以上の低分子量ポリオールを含有しない。
【0288】
このように、第2ポリウレタン層6の製造原料であるポリオール成分が3価以上の低分子量ポリオールを含有し、第1ポリウレタン層3の製造原料であるポリオール成分が3価以上の低分子量ポリオールを含有していなければ、耐熱性の向上を図ることができる。
【0289】
また、第2活性水素基含有成分は、第2ポリオール成分の他、さらに、第2アミノ基含有成分として、上記したアミノ基含有成分を含むことができる。
【0290】
第2アミノ基含有成分として、好ましくは、アミノアルコール、アミノ基含有アルコキシシリル化合物が挙げられ、より好ましくは、2-((2-アミノエチル)アミノ)エタノール(別名:N-(2-アミノエチル)エタノールアミン)、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン(別名:N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)が挙げられる。
【0291】
第2アミノ基含有成分として、さらに好ましくは、アミノアルコールの単独使用と、アミノアルコールおよびアミノ基含有アルコキシシリル化合物の併用とが挙げられ、とりわけ好ましくは、アミノアルコールとアミノ基含有アルコキシシリル化合物との併用が挙げられる。これらが併用される場合、ガスバリア性の観点から、アミノアルコールとアミノ基含有アルコキシシリル化合物との総量100質量部に対して、アミノアルコールが、例えば、50質量部以上、好ましくは、60質量部以上、より好ましくは、66質量部以上であり、例えば、95質量部以下、好ましくは、90質量部以下、より好ましくは、85質量部以下である。また、アミノ基含有アルコキシシリル化合物が、例えば、5質量部以上、好ましくは、10質量部以上、より好ましくは、15質量部以上であり、例えば、50質量部以下、好ましくは、40質量部以下、より好ましくは、30質量部以下である。
【0292】
なお、第2アミノ基含有成分は、好ましくは、プレポリマー法において、鎖伸長剤として用いられる。
【0293】
第2活性水素基含有成分が、第2ポリオール成分と第2アミノ基含有成分とを併有する場合、活性水素基含有成分の総量100質量部に対して、第2ポリオール成分の含有割合は、例えば、50質量部以上、好ましくは、60質量部以上であり、例えば、80質量部以下、好ましくは、70質量部以下である。また、第2アミノ基含有成分の含有割合は、例えば、5質量部以上、好ましくは、10質量部以上であり、例えば、40質量部以下、好ましくは、30質量部以下である。
【0294】
そして、第2ポリイソシアネート成分と第2活性水素基含有成分との反応では、例えば、上記したワンショット法、上記したプレポリマー法などの公知の方法が採用される。
【0295】
好ましくは、上記したプレポリマー法と同様の方法により、第2ポリウレタン樹脂を含む第2ポリウレタンディスパージョンが得られる。
【0296】
より具体的には、ワンショット法では、例えば、上記した各成分を、第2活性水素基含有成分中の活性水素基(水酸基、アミノ基)に対する第2ポリイソシアネート成分中のイソシアネート基の当量比(NCO/活性水素基)が、例えば、0.8以上、好ましくは、0.9以上、例えば、1.2以下、好ましくは、1.1以下となるように処方(混合)し、上記バルク重合や上記溶液重合などの公知の重合方法により、例えば、室温~250℃、好ましくは、室温~200℃で、例えば、5分~72時間、好ましくは、4~24時間硬化反応させる。
【0297】
プレポリマー法では、まず、第2ポリイソシアネート成分と、第2活性水素基含有成分の一部(鎖伸長剤以外の活性水素基含有成分(第2ポリオール成分))を少なくとも反応させ、イソシアネート基末端プレポリマーを合成する。
【0298】
この反応において、第2活性水素基含有成分の一部中の活性水素基、好ましくは、第2ポリオール成分の活性水素基(水酸基)の総量に対する第2ポリイソシアネート成分中のイソシアネート基の当量比(イソシアネート基/活性水素基)は、例えば、1.2以上、好ましくは、1.3以上、例えば、3.0以下、好ましくは、2.5以下である。そして、この方法では、上記バルク重合や上記溶液重合などの公知の重合方法、好ましくは、反応性および粘度の調整がより容易な溶液重合によって、上記各成分を反応させる。
【0299】
また、上記重合では、必要に応じて、例えば、アミン系、スズ系、鉛系などの反応触媒を添加してもよく、また、得られるイソシアネート基末端プレポリマーから未反応のポリイソシアネートを、例えば、蒸留や抽出などの公知の方法により、除去することもできる。
【0300】
また、上記重合において、例えば、イオン性基が含まれている場合には、好ましくは、上記した中和剤を添加して中和し、イオン性基の塩を形成させる。
【0301】
その後、この方法では、上記により得られたイソシアネート基末端プレポリマーと、第2活性水素基含有成分の残部、すなわち、鎖伸長剤、好ましくは、アミノ基含有成分とを、例えば、水中で反応させ、第2ポリウレタン樹脂の第2ポリウレタンディスパージョンを得る。
【0302】
イソシアネート基末端プレポリマーと鎖伸長剤とを水中で反応させるには、上記と同様に、鎖伸長剤を、イソシアネート基末端プレポリマーが水分散された水中に、攪拌下、イソシアネート基末端プレポリマーのイソシアネート基に対する鎖伸長剤の活性水素基(アミノ基および水酸基)の当量比(活性水素基/イソシアネート基)が、例えば、0.6~1.2の割合となるように、滴下する。
【0303】
なお、水をイソシアネート基末端プレポリマー中に添加して、イソシアネート基末端プレポリマーを水分散させ、次いで、それに鎖伸長剤を添加して、イソシアネート基末端プレポリマーを鎖伸長剤により鎖伸長することもできる。
【0304】
また、この方法では、必要に応じて、有機溶媒や水を除去することができ、さらには、水を添加して固形分濃度を調整することもできる。
【0305】
得られる第2ポリウレタン樹脂の第2ポリウレタンディスパージョンの固形分濃度は、例えば、10質量%以上、好ましくは、15質量%以上、より好ましくは、20質量%以上であり、また、例えば、60質量%以下、好ましくは、50質量%以下、より好ましくは、45質量%以下である。
【0306】
また、第2ポリウレタンディスパージョンにおける第2ポリウレタン樹脂のウレタン基濃度およびウレア基濃度の合計は、例えば、25質量%以上、好ましくは、30質量%以上、より好ましくは、33質量%以上であり、例えば、50質量%以下、好ましくは、47質量%以下、より好ましくは、45質量%以下である。
【0307】
また、第2ポリウレタンディスパージョンには、必要に応じて、上記した架橋剤(硬化剤)を配合することができる。
【0308】
架橋剤を配合する場合には、その配合割合は、第2ポリウレタン樹脂100質量部に対して、架橋剤が、固形分として、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、1質量部以上であり、また、例えば、50質量部以下、好ましくは、30質量部以下である。
【0309】
さらに、第2ポリウレタンディスパージョンには、必要に応じて、各種の添加剤を配合することができる。添加剤としては、例えば、シランカップリング剤、アルコキシシラン化合物、安定剤(酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤など)、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、界面活性剤、分散安定剤、着色剤(顔料、染料など)、フィラー、コロイダルシリカ、無機粒子、無機酸化物粒子、結晶核剤などが挙げられる。
【0310】
なお、添加剤は、上記各原料成分に予め配合してもよく、また、合成後のイソシアネート基末端プレポリマーや、第2ポリウレタン樹脂に配合してもよく、さらに、それら各成分の配合時に同時に配合してもよい。
【0311】
また、添加剤の配合割合は、特に制限されず、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0312】
また、第2ポリウレタンディスパージョンには、必要に応じて、ガスバリア性が損なわれない範囲で、ガスバリア性を有する熱可塑性樹脂を配合してもよい。
【0313】
ガスバリア性を有する熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニリデンまたは塩化ビニリデン共重合体、でんぷん、セルロースなどの多糖類などが挙げられる。
【0314】
そして、このような第2ポリウレタンディスパージョンを、第1ポリウレタン層3の表面に塗布および乾燥することにより、第2ポリウレタン層6が形成される。
【0315】
より具体的には、第2ポリウレタン層6を形成するには、上記した方法により、第2ポリウレタンディスパージョンの濃度を調整して第2コート剤(第2コート液)を調製する。そして、得られた第2コート剤を、第1ポリウレタン層3の上に塗布し、乾燥させる。
【0316】
また、第2コート剤には、第1ポリウレタン層3へ濡れ性を付与するためや、コート剤を希釈するために、例えば、上記したモノオールを上記の割合で添加することができる。
【0317】
また、第2コート剤の固形分濃度は、例えば、0.5質量%以上、好ましくは、1質量%以上であり、また、例えば、30質量%以下、好ましくは、25質量%以下である。
【0318】
また、第2コート剤の塗布方法としては、特に制限されず、上記と同様の方法が挙げられる。
【0319】
また、乾燥条件は、乾燥温度が、例えば、40℃以上、好ましくは、50℃以上、より好ましくは、80℃以上であり、例えば、200℃以下、好ましくは、180℃以下、より好ましくは、150℃以下である。また、乾燥時間が、例えば、0.1分以上、好ましくは、0.2分以上であり、例えば、10分以下、好ましくは、5分以下である。
【0320】
これにより、第1ポリウレタン層3の上に、第2ポリウレタン樹脂からなる第2ポリウレタン層6を形成することができる。
【0321】
また、積層体1では、ガスバリア性の向上を図るため、第2ポリウレタン層6に、層状無機化合物を分散させることもできる。
【0322】
第2ポリウレタン層6の厚みは、第2ポリウレタン樹脂(乾燥後)の積層量として、例えば、0.05g/m以上、好ましくは、0.1g/m以上、より好ましくは、0.2g/m以上であり、また、例えば、10g/m以下、好ましくは、7g/m以下、より好ましくは、5g/m以下、さらに好ましくは、3g/m以下、さらに好ましくは、2g/m以下、とりわけ好ましくは、1g/m以下である。
【0323】
そして、上記のように、基材2の無機層4の上にポリウレタン層3を形成し、さらに、第1ポリウレタン層3の上に第2ポリウレタン層6を形成することにより、基材2(無機層4)、第1ポリウレタン層3および第2ポリウレタン層6が順次積層された積層体1を得ることができる。
【0324】
積層体1の厚みは、例えば、5μm以上、好ましくは、10μm以上であり、また、例えば、1mm以下、好ましくは、0.5mm以下である。
【0325】
また、必要に応じて、得られた積層体1を、例えば、30~60℃で、2~5日間程度養生させてもよい。
【0326】
このようにして得られる積層体1も、上記のポリウレタン層3を備えており、かつ、そのポリウレタン層3の一方側の表面に接触するように配置される無機層4を備えている。
【0327】
すなわち、このような積層体1では、上記のポリウレタンディスパージョンの乾燥物が、無機層4に対して積層されているため、高温殺菌処理(レトルト処理)による第1ポリウレタン層3の変形および劣化を抑制することができ、高温殺菌処理(レトルト処理)後もガスバリア性に優れる。
【0328】
さらに、上記の積層体1では、第1ポリウレタン層3の上に、さらに、第2ポリウレタン層6が形成されているため、とりわけ優れたガスバリア性を発現することができる。
【0329】
また、第2ポリウレタン層6によりガスバリア性を担保できるため、第1ポリウレタン層3の処方を、高温殺菌処理(レトルト処理)による変形および劣化の抑制を重視した処方とすることができる。
【0330】
その結果、ガスバリア性と高温殺菌処理(レトルト処理)耐性とを、とりわけ良好に両立することができる。
【0331】
なお、上記した説明では、第1ポリウレタン層3(および必要により積層される第2ポリウレタン層6)は、基材2の表面にのみ積層されているが、例えば、図示しないが、基材2の表面および裏面の両面に第1ポリウレタン層3(および必要により積層される第2ポリウレタン層6)が積層されていてもよく、さらには、基材2の表面および/または裏面の全面に積層されていてもよく、一部にのみ積層されていてもよい。
【0332】
そして、このような積層体1は、ガスバリア性および高温殺菌処理(レトルト処理)耐性に優れるため、必要に応じて、上記した熱可塑性樹脂フィルム(例えば、未延伸ポリプロピレンフィルムなど)とラミネートフィルムを形成し、ガスバリア性が要求される各種包装用途、具体的には、食品・医薬品などの包装フィルム、食品包装容器(ボトルを含む。)、光学フィルム、工業用フィルムなどにおいて好適に使用され、とりわけ、ボイル殺菌、レトルト殺菌などの高温殺菌処理、加熱調理等の加熱処理が必要とされる内容物の食品包装フィルムとして、好適に使用される。
【0333】
また、上記したコート剤や、ハイブリッドコート剤に、顔料などの着色剤を含ませて印刷用インキとして調製し、これをプラスチックフィルム、紙、各種容器などへ塗装することで印刷フィルムや印刷体としても好適に使用することができる。
【実施例0334】
次に、本発明を、実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は、これらによって限定されるものではない。なお、「部」および「%」は、特に言及がない限り、質量基準である。また、以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
【0335】
1.ポリウレタン層が単層の形態
<ポリウレタンディスパージョン(PUD-A)の調製>
実施例1~3および比較例1~6(PUD-A1~A9)
表1に記載の処方で、ポリイソシアネート成分と、ポリオール成分と、溶剤としてのメチルエチルケトン(MEK)とを混合し、窒素雰囲気下65~70℃で、所定のNCO%(2~11%以下)になるまで反応させ、イソシアネート基末端プレポリマーを含む反応液を得た。
【0336】
次いで、得られた反応液を40℃まで冷却し、その後、トリエチルアミン(TEA)にて中和させた。
【0337】
次いで、反応液をイオン交換水にホモディスパーにより分散させ、イオン交換水に2-((2-アミノエチル)アミノ)エタノールを溶解したアミン水溶液を、鎖伸長剤として添加した。さらに、必要によりN-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(商品名;KBM-603、信越化学社製)を、鎖伸長剤として添加した。
【0338】
その後、1時間反応させ、メチルエチルケトンとイオン交換水をエバポレーターにて留去し、固形分25質量%となるようにイオン交換水にて調整することにより、ポリウレタンディスパージョン-A1~A9(PUD-A1~A9)を得た。
【0339】
仕込み計算によるウレタン基濃度およびウレア基濃度の合計を、表1に示す。
【0340】
【表1】
【0341】
なお、表中の略号の詳細を下記する。
m-XDI:タケネート500、1,3-キシリレンジイソシアネート、m-XDI、三井化学社製(非炭素環直結NCO化合物)
IPDI:VestanatIPDI、イソホロンジイソシアネート、IPDI、エボニック社製(炭素環直結NCO化合物)
TDI:コスモネートT-80、2,4-トリレンジイソシアネート、TDI、三井化学社製(炭素環直結NCO化合物)
H6XDI:タケネート600、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,3-HXDI、三井化学社製(非炭素環直結NCO化合物)
NBDI:ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナン、NBDI、三井化学社製(非炭素環直結NCO化合物)
H12MDI:VestanatH12MDI、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート、エボニック社製(炭素環直結NCO化合物)
EG:エチレングリコール
TMP:トリメチロールプロパン
DMPA:ジメチロールプロピオン酸
U-7020:タケラックU-7020、ポリエステルポリオール、数平均分子量2000、三井化学社製
U-9025:タケラックU-9025(ポリエステルポリオール、数平均分子量2500、三井化学社製
MEK:メチルエチルケトン
TEA:トリエチルアミン
AEA:2-((2-アミノエチル)アミノ)エタノール
KBM-603:N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(商品名;KBM-603、信越化学社製
<コート液の調製>
調製例1~21(コート剤-A1~A21)
表2~表3に記載の処方に従って、ポリウレタンディスパージョン(PUD)をマグネチックスターラーにて混合し、これにイオン交換水およびイソプロパノールを徐々に添加し、さらに、必要に応じて、架橋剤を添加して撹拌した。これにより、コート剤-A1~21を得た。
【0342】
【表2】
【0343】
【表3】
【0344】
なお、表中の略号の詳細を下記する。
IPA:イソプロパノール
タケネートWD-726:水分散ポリイソシアネート(架橋剤)、固形分濃度80質量%、三井化学社製
KBM-403:3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(架橋剤)、信越化学社製
カルボジライトV-02:ポリカルボジイミド化合物(架橋剤)、日清紡ケミカル社製
<積層体の作成>
実施例4~12および比較例7~18
・積層体-A1~A21
表4~表5に記載の処方に従って、各調製例で得られたコート剤を、基材としてのアルミナ蒸着PETフィルム(バリアロックス1011HG(#12)、東レフィルム加工社製)のアルミナ蒸着面に、乾燥厚み0.5g/mとなるようにバーコーターを用いてコーティングし、110℃に設定した乾燥オーブンに投入して1分間乾燥させ、基材のアルミナ蒸着面の表面に、ポリウレタン層を形成した。その後、50℃で2日間養生した。
【0345】
これにより、基材のアルミナ蒸着面に、ポリウレタン層が積層された積層体-A1~A21を得た。
【0346】
<<評価>>
<ラミネートフィルムの作成>
各積層体のポリウレタン層に、ドライラミネート用接着剤としてタケラックA-310(三井化学社製)とタケネートA-3(三井化学社製)との混合物(タケラックA-310/タケネートA-3=10/1(質量比))を、乾燥厚み3g/mとなるようにバーコーターにて塗布し、ドライヤーで乾燥させた。
【0347】
その後、未延伸ポリプロピレンフィルム(トーセロCP RXC-22(CPPフィルム、#60)、三井化学東セロ社製)を、上記の接着剤を介して各積層体にラミネートして、40℃で3日間養生し、ラミネートフィルムを得た。
【0348】
<熱水殺菌(レトルト)試験>
ラミネートフィルムを、120℃×30分間、0.2MPaの加圧下で、熱水滅菌処理した。その後の外観を目視で評価し、白化の有無を確認した。なお、白化がないものは「○」と評価した。
【0349】
<密着性(ラミネート強度)の測定>
レトルト試験前後の各ラミネートフィルムにおいて、各積層体の基材(アルミナ蒸着面)と、ポリウレタン層との間のラミネート強度を、JIS K 6854に準拠したT字剥離試験(15mm幅)にて測定した。なお、測定中にアルミナ蒸着PETフィルムが切れたものは、「MF」とした。
【0350】
<酸素透過度(OTR)の測定>
レトルト試験前後の各ラミネートフィルムにおいて、酸素透過測定装置(OX-TRAN2/20、MOCON社製)を用いて、20℃、相対湿度80%(80%RH)での1m、1日および1気圧当たりの酸素透過量(OTR)を測定した。
【0351】
また、レトルト試験前後のOTR変化率(レトルト試験後OTR/レトルト試験前OTR)を算出した。
【0352】
【表4】
【0353】
【表5】
【0354】
2.ポリウレタン層が2層の形態
<ポリウレタンディスパージョン(PUD)の調製>
実施例13~15および比較例19~20(PUD-B1~B5)
表6に記載の処方で、ポリイソシアネート成分と、ポリオール成分と、溶剤としてのメチルエチルケトン(MEK)またはアセトニトリルとを混合し、窒素雰囲気下65~70℃で、所定のNCO%(6~11%以下)になるまで反応させ、イソシアネート基末端プレポリマーを含む反応液を得た。
【0355】
次いで、得られた反応液を40℃まで冷却し、その後、トリエチルアミン(TEA)にて中和させた。
【0356】
次いで、反応液をイオン交換水にホモディスパーにより分散させ、イオン交換水に2-((2-アミノエチル)アミノ)エタノールを溶解したアミン水溶液を、鎖伸長剤として添加した。さらに、必要によりN-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(商品名;KBM-603、信越化学社製)を、鎖伸長剤として添加した。
【0357】
その後、1時間反応させ、メチルエチルケトンとイオン交換水をエバポレーターにて留去し、固形分25質量%となるようにイオン交換水にて調整することにより、ポリウレタンディスパージョン-B1~B5(PUD-B1~B5)を得た。
【0358】
仕込み計算によるウレタン基濃度およびウレア基濃度の合計を、表6に示す。
【0359】
【表6】
【0360】
なお、表中の略号は、上記と同じである。
【0361】
<コート液の調製>
調製例22~35(コート剤-B1~B14)
表7~表8に記載の処方に従って、ポリウレタンディスパージョン(PUD)をマグネチックスターラーにて混合し、これにイオン交換水およびイソプロパノールを徐々に添加し、さらに、必要に応じて、架橋剤を添加して撹拌した。これにより、コート剤-B1~14を得た。
【0362】
【表7】
【0363】
【表8】
【0364】
なお、表中の略号は、上記と同じである。
【0365】
また、表中、Bhydul 3100とは、水分散ポリイソシアネート(架橋剤、Bayhydur3100、Bayer社製)を示す。
【0366】
<積層体の作成>
実施例16~23および比較例21~31
・積層体-B1~B19
表9~表10に記載の処方に従って、各調製例で得られたコート剤を、基材としてのアルミナ蒸着PETフィルム(バリアロックス1011HG(#12)、東レフィルム加工社製)のアルミナ蒸着面に、乾燥厚み0.5g/mとなるようにバーコーターを用いてコーティングし、110℃に設定した乾燥オーブンに投入して1分間乾燥させ、基材のアルミナ蒸着面の表面に、第1ポリウレタン層を形成した。その後、50℃で2日間養生した。
【0367】
さらに、表9~表10に記載の処方に従って、各調製例で得られたコート剤を、第1ポリウレタン層の表面に、乾燥厚み0.5g/mとなるようにバーコーターを用いてコーティングし、110℃に設定した乾燥オーブンに投入して1分間乾燥させ、第1ポリウレタン層の表面に、第2ポリウレタン層を形成した。その後、50℃で2日間養生した。
【0368】
これにより、基材のアルミナ蒸着面に、第1ポリウレタン層が積層され、さらに、第1ポリウレタン層に第2ポリウレタン層が積層された積層体-B1~B19を得た。
【0369】
<<評価>>
<ラミネートフィルムの作成>
各積層体のポリウレタン層に、ドライラミネート用接着剤としてタケラックA-310(三井化学社製)とタケネートA-3(三井化学社製)との混合物(タケラックA-310/タケネートA-3=10/1(質量比))を、乾燥厚み3g/mとなるようにバーコーターにて塗布し、ドライヤーで乾燥させた。
【0370】
その後、未延伸ポリプロピレンフィルム(トーセロCP RXC-22(CPPフィルム、#60)、三井化学東セロ社製)を、上記の接着剤を介して各積層体にラミネートして、40℃で3日間養生し、ラミネートフィルムを得た。
【0371】
<熱水殺菌(レトルト)試験>
ラミネートフィルムを、120℃×30分間、0.2MPaの加圧下で、熱水滅菌処理した。
【0372】
<密着性(ラミネート強度)の測定>
レトルト試験前後の各ラミネートフィルムにおいて、各積層体の基材(アルミナ蒸着面)と、第1ポリウレタン層との間のラミネート強度を、JIS K 6854に準拠したT字剥離試験(15mm幅)にて測定した。なお、測定中にアルミナ蒸着PETフィルムが切れたものは、「MF」とした。
【0373】
<酸素透過度(OTR)の測定>
レトルト試験前後の各ラミネートフィルムにおいて、酸素透過測定装置(OX-TRAN2/20、MOCON社製)を用いて、20℃、相対湿度80%(80%RH)での1m、1日および1気圧当たりの酸素透過量(OTR)を測定した。
【0374】
また、レトルト試験前後のOTR変化率(レトルト試験後OTR/レトルト試験前OTR)を算出した。
【0375】
【表9】
【0376】
【表10】
【0377】
なお、上記発明は、本発明の例示の実施形態として提供したが、これは単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。当該技術分野の当業者によって明らかな本発明の変形例は、後記特許請求の範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0378】
本発明のポリウレタンディスパージョンおよび積層体は、例えば、食品・医薬品などの包装フィルム、食品包装容器(ボトルを含む。)、光学フィルム、工業用フィルムなどに、好適に使用される。
【符号の説明】
【0379】
1 積層体
2 基材
3 ポリウレタン層
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2023-03-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リウレタンディスパージョンの乾燥物を含む第1ポリウレタン層と、
前記第1ポリウレタン層の少なくとも一方側の表面に接触するように配置される無機層とを備え
前記ポリウレタンディスパージョンは、
ポリウレタン樹脂が水分散されてなるポリウレタンディスパージョンであって、
前記ポリウレタン樹脂は、ポリイソシアネート成分と活性水素基含有成分とを少なくとも反応させた反応生成物であり、
前記ポリイソシアネート成分は、
炭素環と、前記炭素環に直接結合する少なくとも1つのイソシアネート基とを有するポリイソシアネート化合物を、前記ポリイソシアネート成分の総量に対して90質量%以上の割合で含有し、
前記活性水素基含有成分は、炭素数2~4のジオール、および、親水性基を含有する活性水素基含有化合物を含有し、
さらに、前記第1ポリウレタン層の前記無機層が接触する一方側の表面に対する他方側の表面において、第2ポリウレタン樹脂を含有する第2ポリウレタンディスパージョンの乾燥物を含む第2ポリウレタン層を備えており、
前記第2ポリウレタン樹脂は、キシリレンジイソシアネートおよび/または水添キシリレンジイソシアネートを含む第2ポリイソシアネート成分と、炭素数2~4のジオール、および、親水性基を含有する活性水素基含有化合物を含む第2活性水素基含有成分とを少なくとも反応させた反応生成物である
ことを特徴とする、積層体。
【請求項2】
前記無機層が、酸化アルミニウムおよび/または酸化ケイ素を含有する
ことを特徴とする、請求項に記載の積層体。
【請求項3】
前記ポリイソシアネート化合物が、イソホロンジイソシアネートを含有する
ことを特徴とする、請求項4に記載の積層体。
【請求項4】
前記ポリウレタンディスパージョンが、さらに、架橋剤を含有する
ことを特徴とする、請求項4に記載の積層体。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0335
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0335】
1.ポリウレタン層が単層の形態
<ポリウレタンディスパージョン(PUD-A)の調製>
参考例1~3および比較例1~6(PUD-A1~A9)
表1に記載の処方で、ポリイソシアネート成分と、ポリオール成分と、溶剤としてのメチルエチルケトン(MEK)とを混合し、窒素雰囲気下65~70℃で、所定のNCO%(2~11%以下)になるまで反応させ、イソシアネート基末端プレポリマーを含む反応液を得た。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0340
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0340】
【表1】
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0342
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0342】
【表2】
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0344
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0344】
なお、表中の略号の詳細を下記する。
IPA:イソプロパノール
タケネートWD-726:水分散ポリイソシアネート(架橋剤)、固形分濃度80質量%、三井化学社製
KBM-403:3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(架橋剤)、信越化学社製
カルボジライトV-02:ポリカルボジイミド化合物(架橋剤)、日清紡ケミカル社製
<積層体の作成>
参考例4~12および比較例7~18
・積層体-A1~A21
表4~表5に記載の処方に従って、各調製例で得られたコート剤を、基材としてのアルミナ蒸着PETフィルム(バリアロックス1011HG(#12)、東レフィルム加工社製)のアルミナ蒸着面に、乾燥厚み0.5g/m2となるようにバーコーターを用いてコーティングし、110℃に設定した乾燥オーブンに投入して1分間乾燥させ、基材のアルミナ蒸着面の表面に、ポリウレタン層を形成した。その後、50℃で2日間養生した。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0352
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0352】
【表4】
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0354
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0354】
2.ポリウレタン層が2層の形態
<ポリウレタンディスパージョン(PUD)の調製>
参考例13~15および比較例19~20(PUD-B1~B5)
表6に記載の処方で、ポリイソシアネート成分と、ポリオール成分と、溶剤としてのメチルエチルケトン(MEK)またはアセトニトリルとを混合し、窒素雰囲気下65~70℃で、所定のNCO%(6~11%以下)になるまで反応させ、イソシアネート基末端プレポリマーを含む反応液を得た。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0359
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0359】
【表6】